特許第6979056号(P6979056)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6979056遷移金属系触媒用の担体としての表面修飾炭酸カルシウム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979056
(24)【登録日】2021年11月16日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】遷移金属系触媒用の担体としての表面修飾炭酸カルシウム
(51)【国際特許分類】
   B01J 27/185 20060101AFI20211125BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20211125BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20211125BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20211125BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20211125BHJP
   C07C 15/14 20060101ALI20211125BHJP
   C07C 1/32 20060101ALI20211125BHJP
   C07C 31/20 20060101ALI20211125BHJP
   C07C 29/157 20060101ALI20211125BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20211125BHJP
【FI】
   B01J27/185 Z
   B01J37/04 102
   B01J37/08
   B01J35/10 301G
   B01J32/00
   C07C15/14
   C07C1/32
   C07C31/20
   C07C29/157
   !C07B61/00 300
【請求項の数】21
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2019-503674(P2019-503674)
(86)(22)【出願日】2017年7月17日
(65)【公表番号】特表2019-523127(P2019-523127A)
(43)【公表日】2019年8月22日
(86)【国際出願番号】EP2017067974
(87)【国際公開番号】WO2018019630
(87)【国際公開日】20180201
【審査請求日】2020年6月22日
(31)【優先権主張番号】16181100.5
(32)【優先日】2016年7月25日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】62/369,290
(32)【優先日】2016年8月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505018120
【氏名又は名称】オムヤ インターナショナル アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゲイン,パトリック・エイ・シー
(72)【発明者】
【氏名】レンチュ,サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】ウェルケール,マチアス
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/113289(WO,A1)
【文献】 特開2000−271488(JP,A)
【文献】 特開2014−184349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
C07C 15/14
C07C 1/32
C07C 31/20
C07C 29/157
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体担体上に遷移金属化合物を含む触媒系であって、前記触媒系は、不均一触媒作用下の水素化分解反応及びC−Cクロスカップリング反応から選択される反応を触媒し、前記固体担体は、粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)及び炭酸カルシウム以外の少なくとも1つの水不溶性カルシウム塩を含む表面反応炭酸カルシウムであり、前記表面反応炭酸カルシウムが、
(i)窒素及びISO 9277:2010に従うBET法を用いて測定される場合15〜200m/gの比表面積;
(ii)水銀ポロシメトリー測定から計算される場合0.1〜2.3cm/gの範囲の粒子内圧入比細孔容積;及び
(iii)重量で、1:99〜99:1の範囲の、前記少なくとも1つの水不溶性カルシウム塩とカルサイト、アラゴナイト及び/又はバテライトとの比、
を示し、前記遷移金属が、チタン、ジルコニウム、ルテニウム、パラジウム、銀、オスミウム、パラジウム、金及びそれらの混合物から選択され、並びに前記遷移金属化合物が、分子遷移金属化合物、遷移金属塩、元素状遷移金を含む金属性遷移金属化合物又は遷移金属錯体である、触媒系。
【請求項2】
前記少なくとも1つの水不溶性カルシウム塩が、リン酸オクタカルシウム、ヒドロキシルアパタイト、クロルアパタイト、フルオロアパタイト、カーボネートアパタイト及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の触媒系。
【請求項3】
前記少なくとも1つの水不溶性カルシウム塩と、カルサイト、アラゴナイト及び/又はバテライトとの前記比が、重量で、1:9〜9:1の範囲である、請求項1又は2に記載の触媒系。
【請求項4】
前記遷移金属化合物が、パラジウム化合物、白金化合物及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の触媒系。
【請求項5】
前記遷移金属化合物が、元素状パラジウム、Pd(acac)、NaPdCl、Pd(OAc)、Pd(PPh、PdCl(PPh、(dppf)PdCl、(dppe)PdCl、(dppp)PdCl、(dppb)PdCl、PdCl、(CPdCl)、ビス(アセテート)−トリフェニル−ホスフィン−パラジウム(II)、Pd(dba)、Pd(HNCHCHNH)Cl、元素状白金、NaPtClPt(acac)、NaPtCl、HPtCl、(NH[PtCl]、PtO・HO、PtCl及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の触媒系。
【請求項6】
前記表面反応炭酸カルシウムが、
(i)窒素及びISO 9277:2010に従うBET法を用いて測定される場合27〜180m/gの範囲の比表面積;
(ii)1〜75μmの範囲の体積メジアン粒径d50(体積);
(iii)2〜150μmの範囲のトップカット粒径d98(体積);及び/又は
(iv)水銀ポロシメトリー測定から計算される場合0.2〜2.0cm/gの範囲の粒子内圧入比細孔容積、
を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の触媒系。
【請求項7】
前記触媒系が、遷移金属化合物と表面反応炭酸カルシウムとの反応生成物1つ以上をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の触媒系。
【請求項8】
前記遷移金属化合物及び/又は前記1つ以上の反応生成物の含有量が、前記触媒系の総重量あたりの前記遷移金属化合物の重量に基づいて、0.1〜60重量%の範囲である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の触媒系。
【請求項9】
固体担体上に遷移金属化合物を含む触媒系を製造するための方法であって、
(a)粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)及び炭酸カルシウム以外の少なくとも1つの水不溶性カルシウム塩を含む少なくとも1つの表面反応炭酸カルシウムを提供する工程;
(b)少なくとも1つの遷移金属化合物を提供する工程;及び
(c)液体媒体中、工程(a)で提供される前記表面反応炭酸カルシウム及び工程(b)で提供される前記遷移金属化合物を接触させて、表面反応炭酸カルシウム及び遷移金属化合物を含む混合物を得る工程;
を含み、
前記表面反応炭酸カルシウムは、
(i)窒素及びISO9277:2010に従うBET法を用いて測定される場合15〜200m/gの比表面積;
(ii)水銀ポロシメトリー測定から計算される場合0.1〜2.3cm/gの範囲の粒子内圧入比細孔容積;及び
(iii)重量で1:99〜99:1の範囲の、前記少なくとも1つの水不溶性カルシウム塩とカルサイト、アラゴナイト及び/又はバテライトとの比
を示し、前記遷移金属が、チタン、ジルコニウム、ルテニウム、パラジウム、銀、オスミウム、パラジウム、金及びそれらの混合物から選択され、並びに前記遷移金属化合物が、分子遷移金属化合物、遷移金属塩、元素状遷移金を含む金属性遷移金属化合物又は遷移金属錯体である、方法。
【請求項10】
(i)工程(a)の前記少なくとも1つの表面反応炭酸カルシウムが、懸濁液の形態で液体媒体中に提供される;及び/又は
(ii)工程(b)の前記少なくとも1つの遷移金属化合物が、溶液又は懸濁液の形態で液体媒体中に提供される、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が、工程(c)の前記混合物に含有される前記液体媒体の少なくとも一部を蒸発及び/又は濾過によって除去して濃縮混合物を得る工程(d)をさらに含む、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記方法が、工程(c)の混合物又は工程(d)の濃縮混合物を、400℃未満の温度で熱処理する工程(e)をさらに含む、請求項9〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記遷移金属化合物が、パラジウム化合物、白金化合物及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項9〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記遷移金属化合物が、元素状パラジウム、Pd(acac)、NaPdCl、Pd(OAc)、Pd(PPh、PdCl(PPh、(dppf)PdCl、(dppe)PdCl、(dppp)PdCl、(dppb)PdCl、PdCl、(CPdCl)、ビス(アセテート)−トリフェニル−ホスフィン−パラジウム(II)、Pd(dba)、Pd(HNCHCHNH)Cl、元素状白金、NaPtClPt(acac)、NaPtCl、HPtCl、(NH[PtCl]、PtO・HO、PtCl及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項9〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記液体媒体が、非極性溶媒、極性溶媒又はそれらの混合物である、請求項9〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記遷移金属化合物が、NaPdCl及び/又はNaPtClであり、前記液体媒体が極性溶媒であり;及び/又は前記遷移金属化合物がPd(acac)及び/又はPt(acac)であり、前記液体媒体は非極性溶媒である、請求項9〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
(a)1つ以上の反応物を提供する工程;
(b)請求項1〜8のいずれか一項に記載の前記触媒系を提供する工程;
(c)工程(b)で提供される前記触媒系の存在下で、工程(a)で提供される前記1つ以上の反応物を化学反応に供する工程、
を含む方法における請求項1〜8のいずれか一項に記載の触媒系の使用。
【請求項18】
前記方法が、工程(c)の前記化学反応の後に前記触媒系を回収し、前記遷移金属をリサイクルする工程(d)をさらに含む、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
工程(c)の前記化学反応が、水素化分解反応、C−Cカップリング及びC−Cクロスカップリング、C−Nクロスカップリング、C−Oクロスカップリング、C−Sクロスカップリング、付加環化反応、アルケン水素化及びアルキン水素化、アリル置換、ニトロ基の還元及びハロゲン化アリールのヒドロカルボニル化の反応タイプの1つ以上から選択される、請求項17又は18に記載の使用。
【請求項20】
遷移金属系触媒用の担体としての、請求項1〜3又は6のいずれか一項に記載の表面反応炭酸カルシウムの使用。
【請求項21】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の触媒系を含む顆粒、成形品又は押出物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面反応炭酸カルシウムである固体担体上に遷移金属化合物を含む触媒系及びこの触媒系を製造する方法に関する。本発明はさらに、顆粒又は成形品におけるこの触媒系の使用に関する。触媒系及び対応する顆粒又は成形品は、様々な遷移金属触媒作用反応に使用され得る。
【背景技術】
【0002】
組み合わせた担体/触媒系は、不均一触媒作用において広く使用されており、いくつかの利点を有する。例えば、そのような触媒系の取り扱い及び同様に反応生成物の単離は、従来の均一系と比較してより安価である。さらに、所与の反応における触媒系の活性及び効率は、担体の特定の構造特性を選択することによって制御され得る。
【0003】
元素状遷移金属及び対応する化合物、例えば遷移金属塩又は錯体は周知の触媒であり、多くの反応、例えばアルケン又はアルキンの水素化又はエポキシ化に適用され得る。最も頻繁に使用される遷移金属には白金、パラジウム及び銅が含まれる。
【0004】
不均一遷移金属触媒用の一般的な担体材料は、活性炭、カーボンブラック/グラファイト、アルミナ、硫酸バリウム及び炭酸カルシウムである(The Catalyst Technical Handbook,Johnson Matthey Co.,2005)。
【0005】
例えば、US5,965,480及びUS5,703,254は、エポキシドの形成を選択的に触媒するための、炭酸カルシウムなどのアルカリ土類金属炭酸塩含有担体上の銀触媒を用いるプロピレンのプロピレンオキシドへの直接酸化を開示する。
【0006】
WO2004/030813A1は、(a)少なくとも1つのアルカリ土類金属炭酸塩、液体媒体、銀結合性添加剤及び少なくとも1つの押出助剤及び/又は任意選択的にバーンアウト添加剤の均一混合物を有するペーストを調製する工程;(b)このペーストから1つ以上の成形粒子を形成する工程;(c)この粒子を乾燥及び焼成する工程;並びに(e)この乾燥及び焼成粒子を銀化合物を含有する溶液に含浸させる工程を含む触媒の調製方法に関する。このアルカリ土類金属炭酸塩は炭酸カルシウムであり得る。
【0007】
WO96/01242A1は、ドーピング剤として銅及び亜鉛又は銀及び亜鉛を添加したパラジウム触媒を使用して、1,4−ブチンジオールを1,4−ブテンジオールに選択的に水素化する方法を開示している。触媒は固体支持体上に提供され得る。支持体材料は炭酸カルシウム、例えば沈降炭酸カルシウムであり得る。
【0008】
WO2013/190076A1は、リンドラータイプの触媒である触媒系に関し、ここで支持体材料(炭酸カルシウム)は10μmを超える平均粒径(d50)を有する。それはさらに、炭素−炭素三重結合の二重結合への部分水素化のためのそのような触媒系の使用を開示している。担体材料の具体例としては、沈降炭酸カルシウムが挙げられる。
【0009】
しかしながら、遷移金属及び対応する塩の毒性が一般的な欠点であり、従って遷移金属触媒作用反応における触媒充填量は可能な限り低く保つべきである。遷移金属のさらなる欠点は、天然資源が稀にしか手に入らないこと及び可能である場合に調達及びリサイクルのためのコストが高いことに見られ得る。従って、前述の欠点の1つ以上を克服するための触媒系の改善に対する継続的な必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,965,480号明細書
【特許文献2】米国特許第5,703,254号明細書
【特許文献3】国際公開第2004/030813号
【特許文献4】国際公開第96/01242号
【特許文献5】国際公開第2013/190076号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】The Catalyst Technical Handbook,Johnson Matthey Co.,2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の1つの目的は、触媒作用中の触媒充填量及び遷移金属の全体的消費量を低減できる、より効率的な触媒系の提供に見られ得る。
【0013】
本発明のさらなる目的は、より高いターンオーバーレートを有する時間を節約する触媒系を提供することに見られ得る。
【0014】
さらにもう1つの目的は、遷移金属の全体的消費量を低減するために容易にリサイクル可能な触媒系を提供することに見られ得る。
【0015】
従って、さらなる1つの目的は、より環境的に適合性のある触媒系を提供することに見られ得る。
【0016】
最後に、本発明のさらなる1つの目的は、より費用効果の高い触媒反応系を提供することに見られ得る。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前述及び他の目的は、独立請求項において本明細書で定義されるような主題によって解決され得る。
【0018】
これに関して、本発明の第1の態様は、固体担体上に遷移金属化合物を含む触媒系に関し、固体担体は、粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)及び炭酸カルシウム以外の少なくとも1つの水不溶性カルシウム塩を含む表面反応炭酸カルシウムであり、この表面反応炭酸カルシウムは、
(i)窒素及びISO 9277:2010に従うBET法を用いて測定される場合15〜200m/gの比表面積;
(ii)水銀ポロシメトリー測定から計算される場合0.1〜2.3cm/gの範囲の粒子内圧入比細孔容積;及び
(iii)1:99〜99:1の範囲の、少なくとも1つの水不溶性カルシウム塩とカルサイト、アラゴナイト及び/又はバテライトとの比、
を示す。
【0019】
本願の発明者らは、驚くべきことに、遷移金属触媒作用における触媒担体としての表面反応炭酸カルシウム(SRCC)の使用がいくつかの利点をもたらすことを見出した。表面反応炭酸カルシウムは、CO及び1つ以上のHイオン供与体で処理された粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)の反応生成物であり、ここでこのCOは、Hイオン供与体処理によってインサイチュで形成される。追加的又は代替的に、COは外部供給源から供給されてもよい。GNCC又はPCCとCO及び1つ以上のHイオン供与体との反応のために、SRCCは、粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)及び前述の反応から得られる炭酸カルシウム以外の少なくとも1つの水不溶性カルシウム塩を含む。驚くべきことに、この材料は特定の表面特性を有し、不均一触媒における担体材料として有用であることを見出した。
【0020】
例えば、C−Cクロスカップリング反応におけるより高い転化率及びグリセロール水素化分解におけるより高い触媒活性が、本発明による触媒系を用いて達成された。さらに、本発明の触媒系は、回収が容易であり、例えば第2の触媒サイクルにおいて、慣用の担体系と比較してより高い収率が達成された。
【0021】
本発明の別の態様は、固体担体上に遷移金属化合物を含む触媒系を製造するための方法に関し、この方法は、
(a)粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)及び炭酸カルシウム以外の少なくとも1つの水不溶性カルシウム塩を含む少なくとも1つの表面反応炭酸カルシウムを提供する工程;
(b)少なくとも1つの遷移金属化合物を提供する工程;及び
(c)液体媒体中、工程(a)で提供される表面反応炭酸カルシウム及び工程(b)で提供される遷移金属化合物を接触させて、表面反応炭酸カルシウム及び遷移金属化合物を含む混合物を得る工程、
を含み、
この表面反応炭酸カルシウムは、
(i)窒素及びISO9277:2010に従うBET法を用いて測定される場合15〜200m/gの比表面積;
(ii)水銀ポロシメトリー測定から計算される場合0.1〜2.3cm/gの範囲の粒子内圧入比細孔容積;及び
(iii)1:99〜99:1の範囲の、少なくとも1つの水不溶性カルシウム塩とカルサイト、アラゴナイト及び/又はバテライトとの比、
を示す。
【0022】
本発明のさらに別の態様は、前述の方法に従って得ることができる本発明の触媒系に関する。
【0023】
本発明のさらに別の態様は、
(a)1つ以上の反応物を提供する工程;
(b)本発明の触媒系を提供する工程;
(c)工程(b)で提供される触媒系の存在下で、工程(a)で提供される1つ以上の反応物を化学反応に供する工程、
を含む方法におけるこの触媒系の使用に関する。
【0024】
本発明のさらに別の態様は、遷移金属系触媒用の担体としての、本明細書に記載されるような表面反応炭酸カルシウムの使用に関する。
【0025】
最後に、本発明の別の態様は、本発明の触媒系を含む顆粒、成形品又は押出物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の目的のために、以下の用語は以下の意味を有することが理解されるべきである:
本発明の意味において「粉砕天然炭酸カルシウム」(GNCC)は、天然源、例えば石灰岩、大理石、又はチョークから得られ、湿式及び/又は乾式処理、例えば粉砕、スクリーニング及び/又は分別、例えばサイクロン又は分類機によるものを通して加工処理された炭酸カルシウムである。
【0027】
本発明の意味において「沈降炭酸カルシウム」(PCC)は、一般に、水性環境での二酸化炭素及び水酸化カルシウム(消石灰)の反応の後の沈殿、又は水中のカルシウム源及び炭酸塩源の沈殿によって得られる合成された材料である。加えて、沈降炭酸カルシウムはまた、カルシウム塩及び炭酸塩、例えば塩化カルシウム及び炭酸ナトリウムの、水性環境中への導入生成物であることができる。PCCは、バテライト、カルサイト又はアラゴナイトの結晶形態を有し得る。PCCは、例えば、EP2447213A1、EP2524898A1、EP2371766A1、EP2840065A1、又はWO2013/142473A1に記載されている。
【0028】
本発明に従う「表面反応炭酸カルシウム」は、CO及び1つ以上のHイオン供与体で処理された粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)の反応生成物であり、ここでこのCOは、Hイオン供与体処理によってインサイチュで形成され及び/又は外部供給源から供給される。本発明の文脈におけるHイオン供与体は、ブレンステッド酸及び/又は酸塩である。
【0029】
本明細書における表面反応炭酸カルシウムの「粒径」は、体積に基づく粒径分布d(体積)として記載される。ここで値d(体積)は、粒子のx体積%がd(体積)未満の直径を有する直径を表す。これは、例えば、d20(体積)値が、全粒子の20体積%がその粒径よりも小さい粒径であることを意味する。従って、d50(体積)値は「体積メジアン粒径」であり、すなわち全粒子の50体積%がその粒径より小さく、d98(体積)値は、全粒子の98体積%がその粒径よりも小さい粒径である。
【0030】
本明細書における表面反応炭酸カルシウム以外の粒状材料の「粒径」は、その粒径分布d(重量)によって記載される。ここで値d(重量)は、粒子のx重量%がd(重量)未満の直径を有する直径を表す。これは、例えば、d20(重量)値が、全粒子の20重量%がその粒径よりも小さい粒径であることを意味する。故にd50(重量)値は、重量メジアン粒径であり、すなわち全粒子の50重量%が、その粒径よりも小さい。
【0031】
本明細書を通して、表面反応炭酸カルシウム又は他の材料の「比表面積」(m/g単位)は、当業者に周知のBET法(吸着ガスとして窒素を使用)を用いて決定される(ISO 9277:2010)。
【0032】
本発明の目的のために、「多孔度」又は「細孔容積」は、粒子内圧入比細孔容積を指す。この多孔度又は細孔容積は、Micromeritics Autopore V 9620水銀ポロシメータを使用して測定される。
【0033】
「水不溶性」材料は、100gのこの材料を100gの脱イオン水と混合し、0.2μmの孔径を有するフィルタ上で20℃で濾過して液体濾液を回収する場合に、この液体濾液100gを周囲圧力にて95〜100℃で蒸発させた後に回収された固体材料が1g以下である材料として定義される。従って「水溶性」材料は、100gのこの材料を100gの脱イオン水と混合し、0.2μmの孔径を有するフィルタ上で20℃で濾過して液体濾液を回収する場合に、この液体濾液100gを周囲圧力にて95〜100℃で蒸発させた後に回収された固体材料が1gを超える材料として定義される。
【0034】
本発明の意味において「懸濁液」又は「スラリー」は、不溶性固形分及び液体媒体、例えば水、並びに任意選択的にさらなる添加剤を含み、普通は多量の固形分を含有し、故にそれが形成される液体よりも粘稠であり、より高い密度を有し得る。
【0035】
本発明による「固体」という用語は、298.15K(25℃)の温度及び正確に1barの絶対圧力を指す標準周囲温度及び圧力(SATP)下で固体である材料を指す。固体は、粉末、錠剤、顆粒、フレークなどの形態であり得る。従って、「液体媒体」という用語は、298.15K(25℃)の温度及び正確に1barの絶対圧力を指す標準周囲温度及び圧力(SATP)下で液体である材料を指す。
【0036】
用語「含む(comprising)」が本説明及び特許請求の範囲で使用される場合、主要な又は主要ではない機能的な重要性を有する他の非特定要素を排除しない。本発明の目的のために、用語「からなる」は、用語「含む」の好ましい実施形態であると考慮される。この後、群が少なくとも特定数の実施形態を含むように定義される場合に、これはまた、これらの実施形態のみからなるのが好ましい群を開示することも理解されるべきである。
【0037】
用語「含む(including)」又は「有する(having)」が使用されるときはいつでも、これらの用語は、上記で定義されるような「含む(comprising)」と等価であることを意図する。
【0038】
不定冠詞又は定冠詞、例えば「1つの(a)」、「1つの(an)」又は「この(the)」が単数名詞について言及するときに使用される場合、これは他に特に記述されない限り、その名詞の複数を含む。
【0039】
「得ることができる」又は「定義できる」及び「得られる」又は「定義される」という用語は、交換可能に使用される。例えばこれは、文脈上明確に示されない限り、用語「得られる」は、例えばある実施形態が、例えば用語「得られる」に続く一連の工程によって得られなければならないことを示す意図はないが、こうした限定的な理解は、好ましい実施形態として用語「得られる」又は「定義される」によって常に含まれることを意味する。
【0040】
本発明の触媒系の有利な実施形態、この触媒系の対応する製造方法及びこの触媒系の使用は、対応する従属請求項と同様に以下に定義される。
【0041】
本発明による一実施形態では、少なくとも1つの水不溶性カルシウム塩は、リン酸オクタカルシウム、ヒドロキシルアパタイト、クロルアパタイト、フルオロアパタイト、カーボネートアパタイト及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは少なくとも1つの水不溶性カルシウム塩がヒドロキシルアパタイトである。
【0042】
さらなる実施形態では、少なくとも1つの水不溶性カルシウム塩と、カルサイト、アラゴナイト及び/又はバテライト、好ましくはカルサイトとの比は、重量で、1:9〜9:1、好ましくは1:7〜8:1、より好ましくは1:5〜7:1、さらにより好ましくは1:4〜7:1である。
【0043】
別の実施形態によれば、遷移金属化合物は、パラジウム化合物、白金化合物、銅化合物及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0044】
本発明の触媒系のさらに別の実施形態によれば、遷移金属化合物は、元素状パラジウム、Pd(acac)、NaPdCl、Pd(OAc)、Pd(PPh、PdCl(PPh、(dppf)PdCl、(dppe)PdCl、(dppp)PdCl、(dppb)PdCl、PdCl、(CPdCl)、ビス(アセテート)−トリフェニル−ホスフィン−パラジウム(II)、Pd(dba)、Pd(HNCHCHNH)Cl、元素状白金、NaPtClPt(acac)、NaPtCl、HPtCl、(NH[PtCl]、PtO・HO、PtCl、元素状銅、CuO、CuS、銅(I)−チオフェン−2−カルボキシレート、CuBr、CuCN、CuCl、CuF、CuI、CuH、CuSCN、CuBr、CuCO、CuCl、CuF、Cu(NO、Cu(PO、CuO、CuO、Cu(OH)、CuI、CuS、CuSO、Cu(OAc)及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは遷移金属化合物は、元素状パラジウム、Pd(acac)、NaPdCl、Pd(OAc)、Pd(PPh、PdCl(PPh、(dppf)PdCl、(dppe)PdCl、(dppp)PdCl、(dppb)PdCl、PdCl、(CPdCl)、ビス(アセテート)−トリフェニル−ホスフィン−パラジウム(II)、Pd(dba)、Pd(HNCHCHNH)Cl、元素状白金、NaPtClPt(acac)、NaPtCl、HPtCl、(NH[PtCl]、PtO・HO、PtCl及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0045】
さらに別の実施形態によれば、表面反応炭酸カルシウムは以下を有する:
(i)窒素及びISO 9277:2010によるBET法を用いて測定される場合27〜180m/g、好ましくは25〜160m/g、より好ましくは30〜150m/gの範囲の比表面積;
(ii)1〜75μm、好ましくは2〜50μm、より好ましくは3〜40μm、さらにより好ましくは4〜30μm、最も好ましくは5〜15μmの範囲のd50(体積);
(iii)2〜150μm、好ましくは4〜100μm、より好ましくは6〜80μm、さらにより好ましくは8〜60μm、最も好ましくは10〜30μmの範囲のd98(体積);及び/又は
(iv)水銀ポロシメトリー測定から計算される場合0.2〜2.0cm/g、好ましくは0.4〜1.8cm/g、最も好ましくは0.6〜1.6cm/gの範囲の粒子内圧入比細孔容積。
【0046】
さらに別の実施形態では、本発明の触媒は、遷移金属化合物及び表面反応炭酸カルシウムとの反応によって得られる1つ以上の反応生成物をさらに含む。
【0047】
さらに別の実施形態によれば、遷移金属化合物及び/又はその1つ以上の反応生成物の含有量は、触媒系の総重量あたりの遷移金属化合物の重量に基づいて、0.1〜60重量%、好ましくは0.1〜30重量%、より好ましくは0.1〜20重量%、さらにより好ましくは0.1〜10重量%、最も好ましくは0.2〜5重量%の範囲である。
【0048】
本発明による方法の一実施形態では、この方法は以下のことを特徴とする:
(i)工程(a)の少なくとも1つの表面反応炭酸カルシウムは懸濁液の形態で液体媒体中に提供される;及び/又は
(ii)工程(b)の少なくとも1つの遷移金属化合物は、溶液又は懸濁液の形態で、好ましくは溶液の形態で液体媒体中に提供される。
【0049】
さらなる実施形態では、工程(a)〜(c)を含む方法は、工程(c)の混合物に含有される液体媒体の少なくとも一部を蒸発及び/又は濾過によって除去して濃縮混合物を得る工程(d)をさらに含む。
【0050】
別の実施形態によれば、本発明の方法は、工程(c)の混合物又は工程(d)の濃縮混合物を400℃以下の温度で、好ましくは170℃〜400℃、より好ましくは200℃〜300℃、さらにより好ましくは250℃〜310℃、最も好ましくは280℃〜320℃の範囲の温度で熱処理する工程(e)をさらに含む。
【0051】
本発明の方法のさらに別の実施形態によれば、遷移金属化合物はパラジウム化合物、白金化合物、銅化合物及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0052】
本発明による方法のさらに別の実施形態では、遷移金属化合物は、元素状パラジウム、Pd(acac)、NaPdCl、Pd(OAc)、Pd(PPh、PdCl(PPh、(dppf)PdCl、(dppe)PdCl、(dppp)PdCl、(dppb)PdCl、PdCl、(CPdCl)、ビス(アセテート)−トリフェニル−ホスフィン−パラジウム(II)、Pd(dba)、Pd(HNCHCHNH)Cl、元素状白金、NaPtClPt(acac)、NaPtCl、HPtCl、(NH[PtCl]、PtO・HO、PtCl、元素状銅、CuO、CuS、銅(I)−チオフェン−2−カルボキシレート、CuBr、CuCN、CuCl、CuF、CuI、CuH、CuSCN、CuBr、CuCO、CuCl、CuF、Cu(NO、Cu(PO、CuO、CuO、Cu(OH)、CuI、CuS、CuSO、Cu(OAc)及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは遷移金属化合物は、元素状パラジウム、Pd(acac)、NaPdCl、Pd(OAc)、Pd(PPh、PdCl(PPh、(dppf)PdCl、(dppe)PdCl、(dppp)PdCl、(dppb)PdCl、PdCl、(CPdCl)、ビス(アセテート)−トリフェニル−ホスフィン−パラジウム(II)、Pd(dba)、Pd(HNCHCHNH)Cl、元素状白金、NaPtClPt(acac)、NaPtCl、HPtCl、(NH[PtCl]、PtO・HO、PtCl及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0053】
本発明の方法の別の実施形態では、液体媒体は非極性溶媒、極性溶媒又はそれらの混合物であり、好ましくは非極性溶媒は、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、1,4−ジオキサン、クロロホルム、ジエチルエーテル、ジクロロメタン及びそれらの混合物からなる群から選択され、及び/又は極性溶媒は、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ニトロメタン、プロピレンカーボネート、ギ酸、n−ブタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、エタノール、メタノール、酢酸、水及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0054】
さらに別の実施形態では、遷移金属化合物はNaPdCl及び/又はNaPtClであり、液体媒体は極性溶媒、好ましくは水であり;及び/又は遷移金属化合物はPd(acac)及び/又はPt(acac)であり、液体媒体は非極性溶媒、好ましくはトルエンである。
【0055】
別の実施形態によれば、本発明の触媒系は、工程(a)〜(c)を含む触媒方法において使用され、この方法は、触媒系を回収及びリサイクルする工程(d)をさらに含む。
【0056】
別の実施形態によれば、本発明の触媒系は、以下の反応タイプの1つ以上から選択される化学反応を含む触媒方法に使用される:水素化分解反応、C−Cカップリング及びC−Cクロスカップリング、C−Nクロスカップリング、C−Oクロスカップリング、C−Sクロスカップリング、付加環化反応、アルケン水素化及びアルキン水素化、アリル置換、ニトロ基の還元及びハロゲン化アリールのヒドロカルボニル化、好ましくは水素化分解、C−Cカップリング及びC−Cクロスカップリング。
【0057】
上述したように、本発明の触媒系を提供する方法は工程(a)〜(c)を含む。この方法は任意選択的に工程(d)及び(e)をさらに含む。本発明の方法は連続法として又はバッチ法として行われてもよいことを理解すべきである。好ましくは、本発明の方法は連続法として行われる。
【0058】
以下では、本発明のさらなる詳細、特に表面反応炭酸カルシウムの表面処理のための本発明の方法の前述の工程について言及する。
【0059】
工程(a):少なくとも1つの表面反応炭酸カルシウムを提供する工程
本発明の方法の工程(a)によれば、表面反応炭酸カルシウムが提供される。表面反応炭酸カルシウムはまた、官能化炭酸カルシウム(FCC)とも呼ばれる。
【0060】
表面反応炭酸カルシウムは、1つ以上の表面反応炭酸カルシウムであり得ることが理解される。
【0061】
本発明の一実施形態では、表面反応炭酸カルシウムは、1種類の表面反応炭酸カルシウムを含み、好ましくはそれからなる。代替的に、表面反応炭酸カルシウムは、2種類以上の表面反応炭酸カルシウムを含む、好ましくはそれからなる。例えば、表面反応炭酸カルシウムは、2又は3種類の表面反応炭酸カルシウムを含み、好ましくはそれらからなる。
【0062】
好ましくは、表面反応炭酸カルシウムは、1種類の表面反応炭酸カルシウムを含み、より好ましくはそれからなる。
【0063】
表面反応炭酸カルシウムは、CO及び1つ以上のHイオン供与体で処理された粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)の反応生成物であり、ここでこのCOは、Hイオン供与体処理によってインサイチュで形成され及び/又は外部供給源から供給される。粉砕天然炭酸カルシウム又は沈降炭酸カルシウムとCO及び1つ以上のHイオン供与体との反応のために、表面反応炭酸カルシウムは、GNCC又はPCC及び少なくとも1つの水不溶性カルシウム塩を含む。
【0064】
好ましい実施形態では、この表面反応炭酸カルシウムは、GNCC又はPCCと、このGNCC又はPCCの表面の少なくとも一部に存在する少なくとも1つの水不溶性カルシウム塩とを含む。
【0065】
本発明の文脈におけるHイオン供与体は、ブレンステッド酸及び/又は酸塩である。
【0066】
本発明の好ましい実施形態によれば、表面反応炭酸カルシウムは、以下の工程を含む方法によって得られる:
(a)粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)の懸濁液を提供する工程;
(b)工程(a)で提供される懸濁液に、20℃で0以下のpK値を有する又は20℃で0〜2.5のpK値を有する少なくとも1つの酸を添加する工程;及び
(c)工程(a)で提供される懸濁液を工程(b)の前、工程(b)の間又は工程(b)の後にCOで処理する工程。
【0067】
別の実施形態によれば、表面反応炭酸カルシウムは、以下の工程を含む方法によって得られ:
(a)粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)を提供する工程;
(b)少なくとも1つの水溶性酸を提供する工程;
(c)ガス状のCOを提供する工程;及び
(d)工程(a)で提供されるこのGNCC又はPCC、工程(b)で提供される少なくとも1つの酸及び工程(c)で提供されるガス状COを接触させる工程;
(i)工程(b)で提供される少なくとも1つの酸が、その第1の利用可能な水素のイオン化に関連して、20℃で2.5を超えて7以下のpKを有し、対応するアニオンが、水溶性カルシウム塩を形成でき、この第1の利用可能な水素の損失時に形成されること;及び(ii)工程(b)で提供される少なくとも1つの水溶性酸と工程(a)で提供されるGNCC又はPCCとを接触させた後、水素含有塩の場合この第1の利用可能な水素のイオン化に関連して、20℃で7を超えるpKを有し、その塩アニオンが水不溶性カルシウム塩を形成できる少なくとも1つの水溶性塩がさらに提供されることを特徴とする。
【0068】
炭酸カルシウムの供給源、例えば「粉砕天然炭酸カルシウム」(GNCC)は、好ましくは、大理石、チョーク、石灰石及びそれらの混合物を含む群から選択される炭酸カルシウム含有鉱物から選択される。天然炭酸カルシウムは、天然成分、例えば炭酸マグネシウム、アルミノケイ酸塩などをさらに含んでいてもよい。一実施形態によれば、天然炭酸カルシウム、例えばGNCCは、炭酸カルシウムのアラゴナイト、バテライト又はカルサイト鉱物結晶形又はそれらの混合物を含む。
【0069】
一般に、粉砕天然炭酸カルシウムの粉砕は乾式又は湿式粉砕方法において行われてもよく、いずれかの従来の粉砕デバイスを用いて、例えば、粉砕が、主として二次本体との衝突からもたらされる条件下、すなわち、ボールミル、ロッドミル、振動ミル、ロールクラッシャー、遠心衝撃ミル、垂直ビーズミル、アトリションミル、ピンミル、ハンマーミル、粉砕機、シュレッダー、デ−クランパー、ナイフカッター、又は当業者に既知の他のこうした設備の1つ以上において、行われてもよい。粉砕天然炭酸カルシウムが湿式粉砕炭酸カルシウム含有材料を含む場合、粉砕工程は、自己粉砕が行われるような条件下で及び/又は水平ボールミル粉砕によって及び/又は当業者に既知の他のこのような方法によって行われてもよい。このようにして得られた湿式加工処理された粉砕天然炭酸カルシウムは、周知の方法、例えば乾燥前の、凝集、濾過又は強制蒸発によって洗浄及び脱水されてもよい。乾燥の次の工程(必要により)は、噴霧乾燥のような単一工程で、又は少なくとも2つの工程で行われてもよい。また、このような鉱物材料が不純物を除去するための選鉱工程(浮選、漂白又は磁気分離工程など)を受けることも一般的である。
【0070】
本発明の意味において「沈降炭酸カルシウム」(PCC)は、一般に、水性環境でのCO及び水酸化カルシウムの反応の後の沈殿、又はカルシウム及び炭酸塩イオン、例えばCaCl及びNaCOの溶液からの沈殿によって得られる合成された材料である。PCCを製造するさらなる可能な方法は、石灰ソーダ方法、又はPCCがアンモニア製造の副生成物であるソルベイ方法である。沈降炭酸カルシウムは、3つの主要な結晶形態:カルサイト、アラゴナイト及びバテライトで存在し、これらの結晶形態のそれぞれについて多くの異なる多形体(晶癖)がある。カルサイトは、偏三角面体形(scalenohedral)(S−PCC)、りょう面体形(R−PCC)、六方晶系角柱、卓面体、コロイド状(C−PCC)、立方体及び角柱状(P−PCC)のような典型的な晶癖を有する三方晶構造を有する。アラゴナイトは、双晶六方晶系角柱結晶の典型的な晶癖を有する斜方晶系構造であり、並びに薄く細長い角柱、湾曲ブレード状、急勾配のピラミッド状、チゼル形結晶、分岐樹木状及びサンゴ又は虫様形態の多様な分類を有する。バテライトは六方晶系に属する。得られた水性PCCスラリーは、機械的に脱水し、乾燥させることができる。
【0071】
本発明の一実施形態によれば、沈降炭酸カルシウムは、アラゴナイト、バテライト又はカルサイト鉱物結晶形態の炭酸カルシウム又はそれらの混合物を含む。
【0072】
沈降炭酸カルシウムは、天然炭酸カルシウムを粉砕するために使用されるのと同じ手段によって、上記で記載されるように、CO及び少なくとも1つのHイオン供与体で処理する前に粉砕されてもよい。
【0073】
本発明の一実施形態によれば、天然又は沈降炭酸カルシウムは、0.05〜10.0μm、好ましくは0.2〜5.0μm、より好ましくは0.4〜3.0μm、最も好ましくは0.6〜1.2μm、特に0.7μmの重量メジアン粒径d50(重量)を有する粒子の形態である。本発明のさらなる実施形態によれば、天然又は沈降炭酸カルシウムは、0.15〜55μm、好ましくは1〜40μm、より好ましくは2〜25μm、最も好ましくは3〜15μm、特に4μmのトップカット粒径d98(重量)を有する粒子の形態である。
【0074】
天然又は沈降炭酸カルシウムは、乾燥又は水中に懸濁させて使用されてもよい。好ましくは、対応する水性スラリーは、このスラリーの総重量に基づいて、1〜90重量%、より好ましくは3〜60重量%、さらにより好ましくは5〜40重量%、最も好ましくは10〜25重量%の範囲の天然又は沈降炭酸カルシウム含有量を有する。
【0075】
表面反応炭酸カルシウムの調製に使用される1つ以上のHイオン供与体は、調製条件下でHイオンを生成する任意の強酸、中強酸又は弱酸、又はそれらの混合物であり得る。本発明によれば、少なくとも1つのHイオン供与体はまた、調製条件下でHイオンを生成する酸塩であることができる。
【0076】
一実施形態によれば、少なくとも1つのHイオン供与体は、20℃で0以下のpKを有する強酸である。
【0077】
別の実施形態によれば、少なくとも1つのHイオン供与体は、20℃で0〜2.5のpK値を有する中強酸である。20℃におけるpKが0以下である場合、酸は、好ましくは、硫酸、塩酸、又はそれらの混合物から選択される。20℃におけるpKが0〜2.5である場合、Hイオン供与体は、好ましくは、HSO、HPO、シュウ酸、又はそれらの混合物から選択される。少なくとも1つのHイオン供与体はまた、酸塩、例えばLi、Na若しくはKなどの対応するカチオンによって少なくとも部分的に中和されるHSO若しくはHPO、又はLi、Na、K、Mg2+若しくはCa2+などの対応するカチオンによって少なくとも部分的に中和されるHPO2−であることができる。少なくとも1つのHイオン供与体はまた、1つ以上の酸と1つ以上の酸塩との混合物であることもできる。
【0078】
さらに別の実施形態によれば、少なくとも1つのHイオン供与体は、第1の利用可能な水素のイオン化に関連して、20℃で測定される場合、2.5を超えて7以下のpK値を有し、対応するアニオンを有し、これが水溶性カルシウム塩を形成できる弱酸である。続いて、水素含有塩の場合には、第1の利用可能な水素のイオン化に関連して、20℃で測定される場合に7を超えるpKを有し、その塩アニオンが水不溶性カルシウム塩を形成できる少なくとも1つの水溶性塩がさらに提供される。より好ましい実施形態によれば、弱酸は、20℃で2.5を超えて5までのpK値を有し、より好ましくは、弱酸は、酢酸、ギ酸、プロパン酸及びそれらの混合物からなる群から選択される。この水溶性塩の例示的なカチオンは、カリウム、ナトリウム、リチウム及びそれらの混合物からなる群から選択される。より好ましい実施形態において、このカチオンはナトリウム又はカリウムである。この水溶性塩の例示的なアニオンは、リン酸塩、リン酸二水素塩、リン酸一水素塩、シュウ酸塩、ケイ酸塩、それらの混合物及びそれらの水和物からなる群から選択される。より好ましい実施形態において、このアニオンは、リン酸塩、リン酸二水素塩、リン酸一水素塩、それらの混合物及びそれらの水和物からなる群から選択される。最も好ましい実施形態において、このアニオンは、リン酸二水素、リン酸一水素、それらの混合物及びそれらの水和物からなる群から選択される。水溶性塩の添加は、滴下又は一工程で行われてもよい。滴下添加の場合、この添加は好ましくは10分以内に行われる。一工程でこの塩を添加することがより好ましい。
【0079】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つのHイオン供与体は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、クエン酸、シュウ酸、酢酸、ギ酸及びそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、少なくとも1つのHイオン供与体は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、シュウ酸、HPO(Li、Na又はKのような対応するカチオンによって少なくとも部分的に中和される)、HPO2−(Li、Na、K、Mg2+、又はCa2+のような対応するカチオンによって少なくとも部分的に中和される)及びそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは少なくとも1つの酸は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、シュウ酸又はそれらの混合物からなる群から選択される。特に好ましいHイオン供与体はリン酸である。
【0080】
1つ以上のHイオン供与体は、濃縮溶液又はより希釈された溶液として懸濁液に添加することができる。好ましくは、Hイオン供与体と天然又は沈降炭酸カルシウムとのモル比は0.01〜4、より好ましくは0.02〜2、さらにより好ましくは0.05〜1、最も好ましくは0.1〜0.58である。
【0081】
別の好ましい実施形態では、少なくとも1つのHイオン供与体は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、クエン酸、シュウ酸、酢酸、ギ酸及びそれらの混合物からなる群から選択され、Hイオン供与体と天然又は沈降炭酸カルシウムとのモル比は、0.01〜4、より好ましくは0.02〜2、さらにより好ましくは0.05〜1、最も好ましくは0.1〜0.58である。
【0082】
特に好ましい実施形態では、少なくとも1つのHイオン供与体はリン酸及びクエン酸の混合物であり、より好ましくはHイオン供与体と天然又は沈降炭酸カルシウムとのモル比は0.01〜4、より好ましくは0.02〜2、さらにより好ましくは0.05〜1、最も好ましくは0.1〜0.58である。
【0083】
上記で既に示したように、少なくとも1つのHイオン供与体及びCOによるGNCC又はPCCの処理は、少なくとも1つの水不溶性カルシウム塩の形成をもたらし得る。従って、表面反応炭酸カルシウムは、GNCC又はPCC及び炭酸カルシウム以外の少なくとも1つの水不溶性カルシウム塩を含む。一実施形態において、この少なくとも1つの水不溶性カルシウム塩は、このGNCC又はPCCの表面の少なくとも一部に存在する。
【0084】
イオン供与体としてのリン酸、HPO又はHPO2−の使用は、ヒドロキシルアパタイトの形成をもたらし得る。従って、好ましい実施形態では、少なくとも1つの水不溶性カルシウム塩はヒドロキシルアパタイトである。
【0085】
表面反応炭酸カルシウム中に存在する少なくとも1つの水不溶性カルシウム塩の量は、リートベルト法を用いてGNCC又はPCC中に存在するカルサイト、アラゴナイト及び/又はバテライトの量に対するXRDによって定量され得る。
【0086】
より好ましい実施形態では、少なくとも1つの水不溶性カルシウム塩はヒドロキシルアパタイトであり、ここで表面反応炭酸カルシウムは、重量で1:99〜99:1の範囲の、ヒドロキシルアパタイトとカルサイト、アラゴナイト及び/又はバテライト、好ましくはカルサイトとの比を与える。さらにより好ましくは、表面反応炭酸カルシウムは、重量で1:9〜9:1、好ましくは1:7〜8:1、より好ましくは1:5〜7:1、最も好ましくは1:4〜7:1の範囲の、ヒドロキシルアパタイトとカルサイト、アラゴナイト及び/又はバテライト、好ましくはカルサイトとの比を与える。
【0087】
同様の様式で、他のHイオン供与体の使用は、表面反応炭酸カルシウムの表面の少なくとも一部に、炭酸カルシウム以外の対応する水不溶性カルシウム塩の形成をもたらし得る。従って、一実施形態では、少なくとも1つの水不溶性カルシウム塩は、リン酸オクタカルシウム、ヒドロキシルアパタイト、クロルアパタイト、フルオロアパタイト、カーボネートアパタイト及びそれらの混合物からなる群から選択され、ここで表面反応炭酸カルシウムは、重量で1:99〜99:1、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは1:7〜8:1、さらにより好ましくは1:5〜7:1、最も好ましくは1:4〜7:1の範囲の、少なくとも1つの水不溶性カルシウム塩とカルサイト、アラゴナイト及び/又はバテライト、好ましくはカルサイトとの比を示す。
【0088】
代替として、天然又は沈降炭酸カルシウムが懸濁される前にHイオン供与体を水に添加することも可能である。
【0089】
次の工程では、天然又は沈降炭酸カルシウムをCOで処理する。天然又は沈降炭酸カルシウムのHイオン供与体処理のために強酸、例えば硫酸又は塩酸を使用する場合、COが自動的に形成される。代替的又は追加的に、COは外部供給源から供給することができる。
【0090】
イオン供与体処理及びCOによる処理は、強酸又は中強酸を使用する場合に同時に行うことができる。例えば20℃で0〜2.5の範囲のpKを有する中強酸を用いて、最初にHイオン供与体処理を行うことも可能であり、ここでCOがインサイチュで形成されるので、Hイオン供与体処理と同時にCO処理が自動的に行われ、続いて、外部供給源から供給されたCOによる追加処理が行われる。
【0091】
好ましくは、懸濁液中のガス状COの濃度は、体積で、比(懸濁液の体積):(ガス状COの体積)が1:0.05〜1:20、さらにより好ましくは1:0.05〜1:5となるような濃度である。
【0092】
好ましい実施形態において、Hイオン供与体処理工程及び/又はCO処理工程は、少なくとも1回、より好ましくは数回繰り返される。一実施形態によれば、少なくとも1つのHイオン供与体は、少なくとも約5分間、好ましくは少なくとも約10分間、典型的には約10〜約20分間、より好ましくは約30分間、さらにより好ましくは約45分間、時には約1時間以上の期間にわたって添加される。
【0093】
イオン供与体処理及びCO処理に続いて、20℃で測定される場合に水性懸濁液のpHは、当然、6.0を超える、好ましくは6.5を超える、より好ましくは7.0を超える、さらにより好ましくは7.5を超える値に達するので、6.0を超える、好ましくは6.5を超える、より好ましくは7.0を超える、さらにより好ましくは7.5を超えるpHを有する水性懸濁液として表面反応した天然又は沈降炭酸カルシウムを調製する。
【0094】
表面反応天然炭酸カルシウムの調製についてのさらなる詳細は、WO00/39222A1、WO2004/083316A1、WO2005/121257A2、WO2009/074492A1、EP2264108A1、EP2264109A1及びUS2004/0020410A1に開示され、これら参照文献の内容は、本特許出願に含まれる。
【0095】
同様に、表面反応沈降炭酸カルシウムが得られ得る。WO2009/074492A1から詳細に理解されるように、表面反応沈降炭酸カルシウムは、沈降炭酸カルシウムを、Hイオン及び水性媒体中に溶解し、水不溶性カルシウム塩を形成できるアニオンと水性媒体中で接触させて、表面反応沈降炭酸カルシウムのスラリーを形成することによって得られ、ここでこの表面反応沈降炭酸カルシウムは、沈降炭酸カルシウムの少なくとも一部の表面に形成されるこのアニオンの不溶性の少なくとも部分的に結晶性のカルシウム塩を含む。
【0096】
この可溶化されたカルシウムイオンは、Hイオンによる沈降炭酸カルシウムの溶解時に天然に生成される可溶化されたカルシウムイオンと比較して過剰の可溶化カルシウムイオンに相当し、ここでこのHイオンは、アニオンに対する対イオンの形態でのみ、すなわち酸又は非カルシウム酸塩の形態のアニオンの添加を介して、任意のさらなるカルシウムイオン又はカルシウムイオン発生源の不存在下で、提供される。
【0097】
この過剰の可溶化カルシウムイオンは、好ましくは、可溶性中性又は酸性カルシウム塩の添加によって、又は可溶性中性又は酸性カルシウム塩をインサイチュで生成する酸又は中性又は酸性非カルシウム塩の添加によって提供される。
【0098】
このHイオンは、酸又はこのアニオンの酸塩の添加、又はこの過剰の可溶化カルシウムイオンのすべて又は一部を提供するのに同時に働く酸又は酸塩の添加によって提供され得る。
【0099】
表面反応天然又は沈降炭酸カルシウムの調製のさらに好ましい実施形態では、天然又は沈降炭酸カルシウムを、ケイ酸塩、シリカ、水酸化アルミニウム、アルカリ土類アルミン酸塩、例えばアルミン酸ナトリウム又はアルミン酸カリウム、酸化マグネシウム、硫酸アルミニウム又はそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物の存在下で、酸及び/又はCOと反応させる。好ましくは、少なくとも1つのケイ酸塩は、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、又はアルカリ土類金属ケイ酸塩から選択される。
【0100】
別の好ましい実施形態において、この少なくとも1つの化合物は、硫酸アルミニウム十六水和物である。特に好ましい実施形態では、この少なくとも1つの化合物は、硫酸アルミニウム十六水和物であり、ここでこの少なくとも1つのHイオン供与体は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、クエン酸、シュウ酸、酢酸、ギ酸及びそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくはHイオン供与体と天然又は沈降炭酸カルシウムとのモル比は、0.01〜4、より好ましくは0.02〜2、さらにより好ましくは0.05〜1、最も好ましくは0.1〜0.58である。
【0101】
前述の成分は、酸及び/又はCOを添加する前に、天然又は沈降炭酸カルシウムを含む水性懸濁液に添加することができる。
【0102】
代替的に、天然又は沈降炭酸カルシウムと酸及びCOとの反応が既に開始されている間に、前述の成分を、天然又は沈降炭酸カルシウムの水性懸濁液に添加することができる。少なくとも1つのケイ酸塩及び/又はシリカ及び/又は水酸化アルミニウム及び/又はアルカリ土類アルミン酸塩成分の存在下での表面反応天然又は沈降炭酸カルシウムの調製に関するさらなる詳細は、WO2004/083316A1に開示され、この参考文献の内容は、本出願に含まれる。
【0103】
表面反応炭酸カルシウムは懸濁液中に保つことができ、任意選択的に分散剤によりさらに安定化することができる。当業者に既知の従来の分散剤を使用することができる。好ましい分散剤は、ポリアクリル酸及び/又はカルボキシメチルセルロースからなる。
【0104】
代替的に、上記で記載された水性懸濁液を乾燥させ、それにより、固体(すなわち、乾燥しているか、又は流体形態でない程に水をほとんど含有しない)表面反応天然又は沈降炭酸カルシウムを顆粒又は粉末の形態で得ることができる。
【0105】
表面反応炭酸カルシウムは、例えば、バラ、ゴルフボール及び/又は脳の形状など、異なる粒子形状を有していてもよい。
【0106】
好ましい実施形態では、表面反応炭酸カルシウムは、窒素及びISO 9277:2010に従うBET法を用いて測定される場合、15〜200m/g、好ましくは27〜180m/g、より好ましくは25〜160m/g、さらにより好ましくは30〜150m/g、最も好ましくは48〜140m/gの比表面積を有する。さらなる実施形態では、表面反応炭酸カルシウムは、窒素及びISO 9277:2010に従うBET方法を用いて測定される場合、120m/g以下、より好ましくは60〜120m/g、最も好ましくは70〜105m/gの比表面積を有する。例えば、表面反応炭酸カルシウムは、窒素及びISO 9277:2010に従うBET法を用いて測定される場合、75〜100m/gの比表面積を有していてもよい。
【0107】
さらに、表面反応炭酸カルシウム粒子が、1〜75μm、好ましくは2〜50μm、より好ましくは3〜40μm、さらにより好ましくは4〜30μm、最も好ましくは5〜15μmの体積メジアングレイン直径d50(体積)を有することが好ましい場合がある。別の好ましい実施形態によれば、表面反応炭酸カルシウム粒子は、1.5〜12μm、好ましくは2〜5μm、又は6〜10μmの体積メジアングレイン直径d50(体積)を有する。
【0108】
さらに、表面反応炭酸カルシウムは、2〜150μm、好ましくは4〜100μm、より好ましくは6〜80μm、さらにより好ましくは8〜60μm、最も好ましくは10〜30μmのグレイン直径d98(体積)を有することが好ましい場合がある。別の好ましい実施形態によれば、表面反応炭酸カルシウム粒子は、5〜20μm、好ましくは8〜12μm、又は13〜18μmの体積メジアングレイン直径d98(体積)を有する。
【0109】
別の好ましい実施形態によれば、表面反応炭酸カルシウムは、水銀ポロシメトリー測定から計算される場合、0.1〜2.3cm/g、より好ましくは0.2〜2.0cm/g、特に好ましくは0.25〜1.8cm/g、最も好ましくは0.3〜1.6cm/gの範囲の粒子内圧入比細孔容積を有する。
【0110】
表面反応炭酸カルシウムの粒子内孔径は、水銀ポロシメトリー測定により決定される場合、好ましくは0.004〜1.6μmの範囲、より好ましくは0.005〜1.3μmの範囲、特に好ましくは0.006〜1.15μm、最も好ましくは0.007〜1.0μm、例えば0.004〜0.50μmの範囲である。
【0111】
上記で既に示されたように、比細孔容積は、Micromeritics Autopore V 9620水銀ポロシメータを用いた水銀圧入ポロシメトリー測定を用いて測定することができる。
【0112】
本発明の工程(a)の目的のためには、表面反応炭酸カルシウムは、乾燥形態で又は適切な液体媒体中の懸濁液として提供されてもよい。他に特定されない限り、用語「乾燥した」又は「乾燥」は、150℃で一定の重量を有する材料を指し、ここで一定の重量は、サンプル5gあたり30秒間で1mg以下の重量変化を意味する。
【0113】
好ましい実施形態において、表面反応炭酸カルシウムは液体媒体中の懸濁液の形態で提供される。
【0114】
表面反応炭酸カルシウムが懸濁液又はスラリーとして工程(a)で提供される場合、懸濁液又はスラリーは適切な液体媒体を含有する。この液体媒体は、少なくとも1つの遷移金属化合物を溶液又は懸濁液の形態で提供するのに適した液体媒体として以下に記載される液体媒体とは異なり得る。しかしながら、好ましい実施形態において、少なくとも1つの表面反応炭酸カルシウムを提供するための液体媒体及び少なくとも1つの遷移金属化合物を提供するための液体媒体は同じである。
【0115】
一般に、この液体媒体は非極性溶媒、極性溶媒又はそれらの混合物であってもよく、好ましくは非極性溶媒は、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、1,4−ジオキサン、クロロホルム、ジエチルエーテル、ジクロロメタン及びそれらの混合物からなる群から選択され、及び/又は極性溶媒は、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ニトロメタン、プロピレンカーボネート、ギ酸、n−ブタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、エタノール、メタノール、酢酸、水及びそれらの混合物からなる群から選択される。より好ましくは、液体媒体は水、エタノール、エタノール/水混合物及びトルエンから選択される。
【0116】
このスラリーは、スラリーの総重量に基づいて1〜90重量%、好ましくは3〜60重量%、より好ましくは5〜40重量%、最も好ましくは10〜25重量%の範囲の固形分含有量を有していてもよい。
【0117】
工程(b):少なくとも1つの遷移金属化合物を提供する工程
本発明による製造方法の工程(b)において、少なくとも1つの遷移金属化合物が提供される。
【0118】
本発明の意味における「遷移金属」は、周期表のdブロック中の任意の元素である。
【0119】
好ましくは、遷移金属は化学反応において触媒活性を示す。従って、遷移金属は、以下の金属から選択され得る:チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、パラジウム、銀、オスミウム、白金、金、水銀及びそれらの混合物。
【0120】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、遷移金属は、銅、パラジウム、白金及びそれらの混合物、好ましくはパラジウム及び白金から選択される。特に好ましい実施形態では、遷移金属はパラジウムである。
【0121】
本発明の意味における用語「化合物」は、元素形態を含む化学結合を介して結び付いたあらゆる種類の化合物、すなわち金属結合を介して結び付いた元素遷移金属を含むものとする。
【0122】
原理的には、構成原子がどのように共に保持されているかによって、4つのタイプの化合物が存在する:共有結合によって共に保持されている分子、イオン結合によって共に保持されている塩、金属結合によって共に保持されている金属間化合物及び配位共有結合によって共に保持されている特定の錯体。従って、遷移金属化合物は、分子遷移金属化合物、遷移金属塩、金属性遷移金属化合物(元素状遷移金属を含む)又は遷移金属錯体であり得る。
【0123】
本発明の好ましい実施形態によれば、遷移金属化合物は遷移金属塩又は遷移金属錯体である。
【0124】
本発明による別の好ましい実施形態では、遷移金属塩は、1つ以上の以下の対イオンを含む:水素化物、酸化物、水酸化物、硫化物、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、炭酸塩、酢酸塩、シアン化物、チオシアネート、硝酸塩、リン酸塩及び硫酸塩。
【0125】
別の好ましい実施形態では、遷移金属錯体は、以下のリガンドの1つ以上を含む:アセチルアセトネート(acac)、塩化物、アセテート、トリフェニルホスフィン、1,1’−ビス−(ジフェニル−ホスフィノ)−フェロセン(dppf)、1,2−ビス−(ジフェニル−ホスフィノ)−エタン(dppe)、1,3−ビス−(ジフェニル−ホスフィノ)−プロパン(dppp)、1,4−ビス−(ジフェニル−ホスフィノ)−ブタン(dppb)、アリル、ジベンジリデン−アセトン又はジベンザル−アセトン(dba)及びエチレンジアミン。
【0126】
従って、別の実施形態によれば、遷移金属は、周期表のdブロック中の元素であり、好ましくはチタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、パラジウム、銀、オスミウム、白金、金、水銀及びそれらの混合物から選択され、遷移金属化合物は、分子遷移金属化合物、遷移金属塩、金属性遷移金属化合物(元素状遷移金属を含む)又は遷移金属錯体である。
【0127】
好ましい実施形態では、遷移金属は、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、パラジウム、銀、オスミウム、白金、金、水銀及びそれらの混合物、好ましくは銅、パラジウム、白金及びそれらの混合物、より好ましくはパラジウム、白金及びそれらの混合物、最も好ましくはパラジウムから選択され、遷移金属化合物は遷移金属塩又は遷移金属錯体である。さらに好ましい実施形態では、前述の遷移金属塩は、1つ以上の以下の対イオン:水素化物、酸化物、水酸化物、硫化物、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、炭酸塩、酢酸塩、シアン化物、チオシアネート、硝酸塩、リン酸塩及び硫酸塩を含み、及び/又は前述の遷移金属錯体は、1つ以上の以下のリガンド:acac、塩化物、酢酸塩、トリフェニルホスフィン、dppf、dppe、dppp、dppb、アリル、dba及びエチレンジアミンを含む。
【0128】
別の実施形態によれば、遷移金属化合物は、元素状パラジウム、Pd(acac)、NaPdCl、Pd(OAc)、Pd(PPh、PdCl(PPh、(dppf)PdCl、(dppe)PdCl、(dppp)PdCl、(dppb)PdCl、PdCl、(CPdCl)、ビス(アセテート)−トリフェニル−ホスフィン−パラジウム(II)、Pd(dba)、Pd(HNCHCHNH)Cl、元素状白金、NaPtClPt(acac)、NaPtCl、HPtCl、(NH[PtCl]、PtO・HO、PtCl、元素状銅、CuO、CuS、銅(I)−チオフェン−2−カルボキシレート、CuBr、CuCN、CuCl、CuF、CuI、CuH、CuSCN、CuBr、CuCO、CuCl、CuF、Cu(NO、Cu(PO、CuO、CuO、Cu(OH)、CuI、CuS、CuSO、Cu(OAc)及びそれらの混合物から選択され、好ましくは遷移金属化合物は、元素状パラジウム、Pd(acac)、NaPdCl、Pd(OAc)、Pd(PPh、PdCl(PPh、(dppf)PdCl、(dppe)PdCl、(dppp)PdCl、(dppb)PdCl、PdCl、(CPdCl)、ビス(アセテート)−トリフェニル−ホスフィン−パラジウム(II)、Pd(dba)、Pd(HNCHCHNH)Cl、元素状白金、NaPtClPt(acac)、NaPtCl、HPtCl、(NH[PtCl]、PtO・HO、PtCl及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0129】
本発明のなお別の実施形態によれば、遷移金属化合物は、Pd(acac)、Pt(acac)、NaPdCl、NaPtCl及びそれらの混合物から選択され、好ましくはPd(acac)、Pt(acac)から選択され、より好ましくは遷移金属化合物はPd(acac)である。
【0130】
工程(b)の目的のために、遷移金属化合物は原則として任意の形態で提供されてもよく、これは遷移金属化合物がニートな化合物として提供されてもよく、又は溶液若しくは懸濁液の形態で液体媒体中に提供されてもよいことを意味する。
【0131】
液体媒体中での提供は、後続の工程のいずれかにおいて、例えば触媒系を製造するための本発明の方法の接触工程(c)においてより均質な混合物をもたらし得るので、好ましい場合がある。同じ理由で、懸濁液よりも溶液の方が好ましい場合がある。従って、好ましい実施形態では、工程(b)の遷移金属化合物は、溶液又は懸濁液の形態で、好ましくは溶液の形態で液体媒体中に提供される。
【0132】
一般に、プロトン性及び非プロトン性溶媒又は極性及び非極性溶媒を使用することが可能である。従って、適切な液体媒体の非限定的な例としては、水、エタノール及びC3−5アルキルアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、ジクロロメタン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ベンゼン、トルエン及びそれらの混合物が挙げられる。当業者は、適切な溶媒及びそれらの混合物を選択する方法を知っている。
【0133】
好ましい実施形態では、遷移金属化合物はパラジウム化合物、白金化合物、銅化合物及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは遷移金属化合物は遷移金属塩又は遷移金属錯体であり、より好ましくは遷移金属化合物はPd(acac)及び/又はPt(acac)であり、ここで工程(b)の遷移金属化合物は、溶液又は懸濁液の形態、好ましくは溶液の形態で液体媒体中に提供される。
【0134】
別の実施形態によれば、液体媒体は非極性溶媒、極性溶媒又はそれらの混合物であり、好ましくは非極性溶媒は、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、1,4−ジオキサン、クロロホルム、ジエチルエーテル、ジクロロメタン及びそれらの混合物からなる群から選択され、及び/又は極性溶媒は、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ニトロメタン、プロピレンカーボネート、ギ酸、n−ブタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、エタノール、メタノール、酢酸、水及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0135】
本発明のさらに別の実施形態によれば、液体媒体は水、エタノール、エタノール/水混合物及びトルエンから選択される。
【0136】
さらに別の実施形態によれば、遷移金属は、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、パラジウム、銀、オスミウム、白金、金、水銀及びそれらの混合物から選択され、ここで遷移金属化合物は遷移金属塩又は遷移金属錯体であり、ここで遷移金属化合物は溶液又は懸濁液の形態で、好ましくは溶液の形態で液体媒体中に提供される。さらに好ましい実施形態では、前述の遷移金属塩は、1つ以上の以下の対イオン:水素化物、酸化物、水酸化物、硫化物、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、炭酸塩、酢酸塩、シアン化物、チオシアネート、硝酸塩、リン酸塩及び硫酸塩を含み、及び/又は前述の遷移金属錯体は、1つ以上の以下のリガンド:acac、塩化物、酢酸塩、トリフェニルホスフィン、dppf、dppe、dppp、dppb、アリル、dba及びエチレンジアミンを含む。
【0137】
さらに別の実施形態によれば、遷移金属化合物は、パラジウム化合物、白金化合物、銅化合物及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは遷移金属化合物は遷移金属塩又は遷移金属錯体であり、より好ましくは遷移金属化合物は、元素状パラジウム、Pd(acac)、NaPdCl、Pd(OAc)、Pd(PPh、PdCl(PPh、(dppf)PdCl、(dppe)PdCl、(dppp)PdCl、(dppb)PdCl、PdCl、(CPdCl)、ビス(アセテート)−トリフェニル−ホスフィン−パラジウム(II)、Pd(dba)、Pd(HNCHCHNH)Cl、元素状白金、NaPtClPt(acac)、NaPtCl、HPtCl、(NH[PtCl]、PtO・HO、PtCl、元素状銅、CuO、CuS、銅(I)−チオフェン−2−カルボキシレート、CuBr、CuCN、CuCl、CuF、CuI、CuH、CuSCN、CuBr、CuCO、CuCl、CuF、Cu(NO、Cu(PO、CuO、CuO、Cu(OH)、CuI、CuS、CuSO、Cu(OAc)及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは遷移金属化合物は、元素状パラジウム、Pd(acac)、NaPdCl、Pd(OAc)、Pd(PPh、PdCl(PPh、(dppf)PdCl、(dppe)PdCl、(dppp)PdCl、(dppb)PdCl、PdCl、(CPdCl)、ビス(アセテート)−トリフェニル−ホスフィン−パラジウム(II)、Pd(dba)、Pd(HNCHCHNH)Cl、元素状白金、NaPtClPt(acac)、NaPtCl、HPtCl、(NH[PtCl]、PtO・HO、PtCl及びそれらの混合物からなる群から選択され、遷移金属化合物が液体媒体中に溶液又は懸濁液の形態で、好ましくは溶液の形態で提供され、液体媒体が有機溶媒、好ましくはトルエンであり、又は液体媒体は、水性溶媒、好ましくは水であり、又は液体媒体は、有機溶媒と水との混合物、好ましくはエタノールと水との混合物である。
【0138】
好ましい実施形態では、遷移金属化合物はパラジウム化合物、白金化合物、銅化合物及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは遷移金属化合物は遷移金属塩又は遷移金属錯体であり、より好ましくは遷移金属化合物はPd(acac)及び/又はPt(acac)であり、液体媒体は有機溶媒、好ましくはベンゼン又はトルエン、より好ましくはトルエンである。
【0139】
別の好ましい実施形態では、遷移金属化合物はパラジウム化合物、白金化合物、銅化合物及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは遷移金属化合物は遷移金属塩又は遷移金属錯体であり、より好ましくは遷移金属化合物はNaPdCl及び/又はNaPtClであり、ここで液体媒体は水性溶媒、好ましくは水である。
【0140】
工程(b)で提供される遷移金属化合物の量は様々であり得、特定の必要性に合わせて調整され得る。本発明の一実施形態によれば、工程(b)で提供される遷移金属化合物の量は、表面反応炭酸カルシウムの総重量あたりの遷移金属の重量に基づいて0.1〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.2〜5重量%の範囲である。
【0141】
当業者は、工程(b)で提供される遷移金属化合物が、後続の工程(c)〜(e)のいずれかの間に少なくとも部分的に化学変換を受け得ることを理解する。従って一実施形態では、遷移金属化合物と表面反応炭酸カルシウムとの反応によって得られる1つ以上の反応生成物が、工程(c)で得られる混合物及び/又は工程(e)で得られる濃縮混合物及び/又は工程(e)で得られる生成物中に存在し得る。
【0142】
工程(c):表面反応炭酸カルシウムと遷移金属化合物とを接触させる工程
本発明による製造方法の工程(c)では、工程(a)で提供される表面反応炭酸カルシウム及び工程(b)で提供される遷移金属化合物を液体媒体中で接触させて、表面反応炭酸カルシウム及び遷移金属化合物を含む混合物を得る。
【0143】
表面反応炭酸カルシウムと遷移金属化合物とを接触させる工程(c)は、表面反応炭酸カルシウムのアクセス可能な表面の少なくとも一部を遷移金属化合物で含浸させて、固体担体上に遷移金属化合物を有する触媒系を提供するように働く。
【0144】
工程(a)で提供される少なくとも1つの表面反応炭酸カルシウムと工程(b)で提供される少なくとも1つの遷移金属化合物との接触は、当業者に知られている任意の従来の手段によって達成することができる。
【0145】
本発明の一実施形態によれば、工程(c)は、工程(a)で提供される少なくとも1つの表面反応炭酸カルシウムを第1の工程で提供し、次いで後続工程において工程(b)で提供される少なくとも1つの遷移金属化合物を添加する工程を含む。本発明の別の実施形態によれば、工程(c)は、最初に工程(b)で提供される少なくとも1つの遷移金属化合物を提供し、続いて工程(a)で提供される少なくとも1つの表面反応炭酸カルシウムを添加する工程を含む。さらに別の実施形態によれば、工程(a)で提供される少なくとも1つの表面反応炭酸カルシウム及び工程(b)で提供される少なくとも1つの遷移金属化合物が同時に提供され接触させられる。
【0146】
工程(a)で提供される少なくとも1つの表面反応炭酸カルシウムが第1工程として提供される場合、工程(b)で提供される少なくとも1つの遷移金属化合物を一度に添加することが可能であり、又はいくつかの等しい若しくは等しくない部分で、すなわちより大きな部分及びより小さな部分で添加され得る。
【0147】
本発明の方法の接触工程(c)中に、工程(a)の表面反応炭酸カルシウムと工程(b)の遷移金属化合物とを含む混合物が得られる。この混合物は、液体媒体中の懸濁液又はスラリーであり得る。
【0148】
本発明による方法の一実施形態では、(i)工程(a)の少なくとも1つの表面反応炭酸カルシウムは懸濁液の形態で液体媒体中に提供される;及び/又は(ii)工程(b)の少なくとも1つの遷移金属化合物は、溶液又は懸濁液の形態で、好ましくは溶液の形態で液体媒体中に提供される。
【0149】
好ましい実施形態では、表面反応炭酸カルシウムは液体媒体中の懸濁液として提供され、ここで遷移金属化合物は液体媒体中に溶液又は懸濁液の形態で、好ましくは溶液の形態で提供される。
【0150】
上記で既に記載されるように、表面反応炭酸カルシウムは懸濁液又はスラリーとして工程(a)で提供され得、その場合、懸濁液又はスラリーは適切な液体媒体を含有する。一般に、この液体媒体は、工程(b)において少なくとも1つの遷移金属化合物を溶液又は懸濁液の形態で提供するのに適した液体媒体として本明細書に記載される液体媒体とは異なり得る。
【0151】
しかしながら、好ましい実施形態において、少なくとも1つの表面反応炭酸カルシウムを提供するための液体媒体及び少なくとも1つの遷移金属化合物を提供するための液体媒体は同じである。
【0152】
工程(c)で得られる混合物は、上に開示された液体媒体のいずれかを含んでいてもよく、例えば液体媒体は非極性溶媒、極性溶媒又はそれらの混合物であってもよく、好ましくは非極性溶媒は、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、1,4−ジオキサン、クロロホルム、ジエチルエーテル、ジクロロメタン及びそれらの混合物からなる群から選択され、及び/又は極性溶媒は、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ニトロメタン、プロピレンカーボネート、ギ酸、n−ブタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、エタノール、メタノール、酢酸、水及びそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、工程(c)で得られる混合物は、水、エタノール、エタノール/水混合物、トルエン及びそれらの混合物をさらに含む。
【0153】
接触工程(c)は、当技術分野において既知の任意の手段によって行うことができる。例えば、工程(a)の少なくとも1つの表面反応炭酸カルシウムと工程(b)の遷移金属化合物とを噴霧及び/又は混合により接触させることができる。噴霧又は混合のための適切なデバイスは当業者に既知である。
【0154】
本発明の一実施形態によれば、工程(c)は噴霧によって行われ得る。好ましくは、工程(c)は混合により行われる。
【0155】
工程(c)における混合は、当業者に既知の任意の従来の手段によって達成することができる。当業者であれば、自身の方法装置に応じて、混合速度、分割及び温度などの混合条件を適合させる。さらに、混合は、均質化及び/又は粒子分割条件下で行われてもよい。
【0156】
例えば、混合及び均質化は、プラウシェアミキサーを使用して実施されてもよい。プラウシェアミキサーは、機械的に製造された流動床の原理によって機能する。プラウシェアブレードは、水平円筒形ドラムの内壁の近くで回転し、それによって混合物の成分を生成物床から開放した混合空間に運ぶ。この流動床は、非常に短時間でさらに大きなバッチの強力な混合を確実にする。チョッパー及び/又は分散機は、乾いた操作モードの場合に塊を分散させるために使用される。本発明の方法において使用され得る装置は、例えば、Gebruder Lodige Maschinenbau GmbH,Germany又はVISCO JET Ruhrsysteme GmbH,Germanyから市販されている。
【0157】
本発明の別の実施形態によれば、工程(c)は少なくとも1秒、好ましくは少なくとも1分(例えば10分、30分又は60分)間行われる。好ましい実施形態によれば、工程(c)は、1秒〜60分間の範囲の期間、好ましくは15分〜45分間の範囲の期間にわたって行われる。例えば、混合工程(d)は、30分±5分間行われる。
【0158】
例えば表面反応炭酸カルシウムが乾燥形態で提供され、遷移金属化合物がニートな形態で提供される場合、又は混合物の固形分含有量若しくはブルックフィールド粘度を特定の値に調整することを意図している場合、上記で記載されるような好適な液体媒体が方法工程(c)の間に添加されてもよいことも本発明の範囲内である。
【0159】
本発明の一実施形態によれば、工程(c)で得られる混合物は、この混合物の総重量に基づいて、1〜90重量%、好ましくは3〜60重量%、より好ましくは5〜40重量%、最も好ましくは10〜25重量%の範囲の固形分含有量を有する。
【0160】
工程(d):液体媒体を除去する工程
本発明による方法は、工程(c)で得られる混合物から液体媒体を除去する工程(d)を任意選択的に含んでもよい。
【0161】
既に上記で論じたように、接触工程(c)で得られる混合物は、例えば工程(a)の少なくとも1つの表面反応炭酸カルシウムが懸濁液又はスラリーとして提供される場合、又は工程(b)における少なくとも1つの遷移金属化合物が溶液又は懸濁液の形態で提供される場合、液体媒体を含み得る。これに加えて、接触工程(c)で得られる混合物は、例えばこの混合物の固形分含有量を調整するために、接触工程(c)中に液体媒体が添加される場合、工程(d)で除去されるようにこの液体媒体を含み得る。
【0162】
工程(d)は、接触工程(c)で得られる混合物よりも少ない液体媒体を含有する濃縮混合物を生じる。原則として、濃縮工程(d)は、当業者に既知の任意の従来の手段によって、例えば液体媒体の蒸発によって又は濾過によって達成することができる。
【0163】
従って、本発明による一実施形態では、工程(c)の混合物中に含有される液体媒体の少なくとも一部は蒸発及び/又は濾過によって除去される。
【0164】
工程(d)における最適の方法は、工程(c)の混合物に含有される液体媒体の性質に依存し得る。例えば、プロトン性溶媒(例えば、エタノール又は水)を好ましくは濾過により除去することができる一方、非プロトン性溶媒(例えば、トルエン)を蒸発によって除去することが好ましい場合がある。さらなる例では、減圧(真空)下での残留液体媒体の後続の蒸発と組み合わせた初期濾過が好ましい場合がある。
【0165】
本発明の一実施形態によれば、本発明の方法はさらに、工程(c)の混合物中に含まれる液体媒体の少なくとも一部を蒸発によって除去する工程(d)をさらに含む。例えば、液体媒体の蒸発は、蒸発器内で熱及び/又は減圧の適用によって行われてもよい。
【0166】
本発明の別の実施形態によれば、本発明の方法は、工程(c)の混合物中に含まれる液体媒体の少なくとも一部を濾過によって除去する工程(d)をさらに含む。例えば、濾過は、ドラムフィルタ又はフィルタプレスを用いて、又はナノ濾過を用いて行われてもよい。
【0167】
本発明のさらに別の実施形態によれば、本発明の方法は、工程(c)の混合物に含有される液体媒体の少なくとも一部を濾過及び蒸発によって、好ましくは濾過及び後続の蒸発によって除去する工程(d)をさらに含む。
【0168】
工程(d)で得られる濃縮混合物は、工程(c)の混合物中に含有される液体媒体の少なくとも一部を除去した後の濃縮混合物である。好ましい実施形態では、この濃縮混合物は、この混合物の総重量に基づいて、少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%の固形分含有量を有する。例えば、この濃縮混合物は、この混合物の総重量に基づいて95重量%の固形分含有量を有していてもよい。
【0169】
本発明の方法のさらに別の実施形態によれば、工程(c)の混合物中に含まれる液体媒体を工程(d)で除去して乾燥混合物を得る。
【0170】
工程(e):熱処理
本発明の触媒系を製造する方法の工程(e)によれば、工程(c)の混合物又は任意の工程(d)の濃縮混合物は、400℃以下、好ましくは約170℃〜400℃、より好ましくは200℃〜300℃、さらにより好ましくは250〜310℃、最も好ましくは280℃〜320℃の温度で熱処理される。
【0171】
用語「加熱」は、本発明による方法を、混合物の温度が外部熱源を介してエネルギーを加えることによって規定の温度範囲に能動的に調整される方法に限定しない。この用語はまた、特定の期間中、例えば接触工程(c)における発熱反応において到達した温度を維持することを含む。
【0172】
工程(e)で行われる熱処理は、触媒系の性能をさらに向上させ得ると考えられる。例えば、触媒活性、ターンオーバーレート又は生成物収率に関してさらなる改善が認められ得る。例えば、本発明の触媒系の回収及び第2の触媒サイクル又はさらなる触媒サイクルにおけるリサイクルに関して、さらなる改善が認められ得る。
【0173】
上記の利点は、熱処理が特定の期間行われる場合に特に顕著であり得る。従って、一実施形態では、工程(e)は少なくとも10分間、好ましくは0.5時間から24時間、より好ましくは1時間〜5時間、最も好ましくは2.5〜3.5時間行われる。
【0174】
好ましい実施形態では、工程(c)の混合物又は任意の工程(d)の濃縮混合物は、400℃以下、好ましくは170℃〜400℃の範囲、より好ましくは200℃〜300℃、さらにより好ましくは250〜310℃、最も好ましくは280℃〜320℃の温度で熱処理され、ここでこの熱処理は少なくとも10分間、好ましくは0.5時間〜24時間、より好ましくは1時間〜5時間、最も好ましくは2.5〜3.5時間行われる。
【0175】
触媒系
本発明による触媒系は固体担体上の遷移金属化合物を含み、ここで固体担体は粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)及び炭酸カルシウム以外の少なくとも1つの水不溶性カルシウム塩を含む表面反応炭酸カルシウムである。この表面反応炭酸カルシウムは、CO及び1つ以上のHイオン供与体で処理された粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)の反応生成物であり、ここでこのCOは、Hイオン供与体処理によってインサイチュで形成され及び/又は外部供給源から供給される。
【0176】
一般に、本発明の触媒系は、この担体材料のアクセス可能な表面の少なくとも一部に存在する遷移金属化合物を有する粒状固体担体材料(表面反応炭酸カルシウム)から構成される。
【0177】
表面反応炭酸カルシウムの具体的な実施形態は、本発明の方法の工程(a)の下で既に上記で記載されており、それに応じて本発明の触媒系の表面反応炭酸カルシウムに適用するものとする。
【0178】
例えば、Hイオン供与体としてのリン酸、HPO又はHPO2−の使用は、ヒドロキシルアパタイトの形成をもたらし得る。従って、好ましい実施形態では、少なくとも1つの水不溶性カルシウム塩はヒドロキシルアパタイトである。
【0179】
より好ましい実施形態では、少なくとも1つの水不溶性カルシウム塩はヒドロキシルアパタイトであり、ここで表面反応炭酸カルシウムは、重量で1:99〜99:1の範囲の、ヒドロキシルアパタイトとカルサイト、アラゴナイト及び/又はバテライト、好ましくはカルサイトとの比を与える。さらにより好ましくは、表面反応炭酸カルシウムは、重量で1:9〜9:1、好ましくは1:7〜8:1、より好ましくは1:5〜7:1、最も好ましくは1:4〜7:1の範囲の、ヒドロキシルアパタイトとカルサイト、アラゴナイト及び/又はバテライト、好ましくはカルサイトとの比を与える。
【0180】
同様の様式で、他のHイオン供与体の使用は、表面反応炭酸カルシウムの表面の少なくとも一部に、炭酸カルシウム以外の対応する水不溶性カルシウム塩の形成をもたらし得る。従って、一実施形態では、少なくとも1つの水不溶性カルシウム塩は、リン酸オクタカルシウム、ヒドロキシルアパタイト、クロルアパタイト、フルオロアパタイト、カーボネートアパタイト及びそれらの混合物からなる群から選択され、ここで表面反応炭酸カルシウムは、重量で1:99〜99:1、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは1:7〜8:1、さらにより好ましくは1:5〜7:1、最も好ましくは1:4〜7:1の範囲の、少なくとも1つの水不溶性カルシウム塩とカルサイト、アラゴナイト及び/又はバテライト、好ましくはカルサイトとの比を示す。
【0181】
本発明による触媒系は遷移金属化合物をさらに含む。この遷移金属化合物の具体的な実施形態もまた、工程(b)の下で上記に記載されており、それに応じて触媒系の遷移金属化合物に適用するものとする。
【0182】
例示的な一実施形態では、固体担体上に遷移金属化合物を含む触媒系が提供され、固体担体は、粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)及び炭酸カルシウム以外の少なくとも1つの水不溶性カルシウム塩を含む表面反応炭酸カルシウムであり、この表面反応炭酸カルシウムは以下を示す:
(i)窒素及びISO 9277:2010に従うBET法を用いて測定される場合15〜200m/gの比表面積;
(ii)水銀ポロシメトリー測定から計算される場合0.1〜2.3cm/gの範囲の粒子内圧入比細孔容積;及び
(iii)重量で、1:99〜99:1の範囲の、少なくとも1つの水不溶性カルシウム塩とカルサイト、アラゴナイト及び/又はバテライトとの比。
【0183】
従って、別の例示的な実施形態において、本発明による触媒系は、固体担体上に遷移金属化合物を含み、固体担体は、CO及び1つ以上のHイオン供与体で処理された粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)の反応生成物である表面反応炭酸カルシウムであり、COは、Hイオン供与体処理によってインサイチュで形成され及び/又は外部供給源から供給され、この表面反応炭酸カルシウムは、粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)及び炭酸カルシウム以外の少なくとも1つの水不溶性カルシウム塩を含み、この表面反応炭酸カルシウムは以下を有する:
(i)窒素及びISO 9277:2010に従うBET法を用いて測定される場合15〜200m/gの比表面積;
(ii)水銀ポロシメトリー測定から計算される場合0.1〜2.3cm/gの範囲の粒子内圧入比細孔容積;及び
(iii)重量で1:99〜99:1の範囲の、少なくとも1つの水不溶性カルシウム塩とカルサイト、アラゴナイト及び/又はバテライトとの比。
【0184】
さらに別の例示的な実施形態によれば、固体担体上に遷移金属化合物を含む触媒系が提供され、固体担体は、粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)及び炭酸カルシウム以外の少なくとも1つの水不溶性カルシウム塩を含む表面反応炭酸カルシウムであり、この表面反応炭酸カルシウムは以下を示し:
(i)窒素及びISO 9277:2010に従うBET法を用いて測定される場合15〜200m/gの比表面積;
(ii)水銀ポロシメトリー測定から計算される場合0.1〜2.3cm/gの範囲の粒子内圧入比細孔容積;及び
(iii)重量で、1:99〜99:1の範囲の、少なくとも1つの水不溶性カルシウム塩とカルサイト、アラゴナイト及び/又はバテライトとの比、
ここで遷移金属化合物は、パラジウム化合物、白金化合物、銅化合物及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは遷移金属化合物は遷移金属塩又は遷移金属錯体である。
【0185】
従って、さらに別の例示的な実施形態によれば、本発明による触媒系は、固体担体上に遷移金属化合物を含み、固体担体は、CO及び1つ以上のHイオン供与体で処理された粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)の反応生成物である表面反応炭酸カルシウムであり、COは、Hイオン供与体処理によってインサイチュで形成され及び/又は外部供給源から供給され、この表面反応炭酸カルシウムは、粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)及び炭酸カルシウム以外の少なくとも1つの水不溶性カルシウム塩を含み、この表面反応炭酸カルシウムは以下を有し:
(i)窒素及びISO 9277:2010に従うBET法を用いて測定される場合15〜200m/gの比表面積;
(ii)水銀ポロシメトリー測定から計算される場合0.1〜2.3cm/gの範囲の粒子内圧入比細孔容積;及び
(iii)重量で1:99〜99:1の範囲の、少なくとも1つの水不溶性カルシウム塩とカルサイト、アラゴナイト及び/又はバテライトとの比、
遷移金属化合物は、パラジウム化合物、白金化合物、銅化合物及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは遷移金属化合物は、遷移金属塩又は遷移金属錯体である。
【0186】
前述の例示的な実施形態のいずれにおいても、遷移金属化合物は、好ましくは元素状パラジウム、Pd(acac)、NaPdCl、Pd(OAc)、Pd(PPh、PdCl(PPh、(dppf)PdCl、(dppe)PdCl、(dppp)PdCl、(dppb)PdCl、PdCl、(CPdCl)、ビス(アセテート)トリフェニル−ホスフィン−パラジウム(II)、Pd(dba)、Pd(HNCHCHNH)Cl、元素状白金、NaPtClPt(acac)、NaPtCl、HPtCl、(NH[PtCl]、PtO・HO、PtCl、元素状銅、CuO、CuS、銅(I)−チオフェン−2−カルボキシレート、CuBr、CuCN、CuCl、CuF、CuI、CuH、CuSCN、CuBr、CuCO、CuCl、CuF、Cu(NO、Cu(PO、CuO、CuO、Cu(OH)、CuI、CuS、CuSO、Cu(OAc)及びそれらの混合物からなる群から選択され得、好ましくは遷移金属化合物は、元素状パラジウム、Pd(acac)、NaPdCl、Pd(OAc)、Pd(PPh、PdCl(PPh、(dppf)PdCl、(dppe)PdCl、(dppp)PdCl、(dppb)PdCl、PdCl、(CPdCl)、ビス(アセテート)−トリフェニル−ホスフィン−パラジウム(II)、Pd(dba)、Pd(HNCHCHNH)Cl、元素状白金、NaPtClPt(acac)、NaPtCl、HPtCl、(NH[PtCl]、PtO・HO、PtCl及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0187】
当業者は、工程(b)で提供される遷移金属化合物が、後続の工程(c)〜(e)のいずれかの間に少なくとも部分的に化学変換を受け得ることを理解する。従って一実施形態では、遷移金属化合物と表面反応炭酸カルシウムとの反応によって得られる1つ以上の反応生成物が、工程(c)で得られる混合物及び/又は工程(e)で得られる濃縮混合物及び/又は工程(e)で得られる生成物に存在し得る。
【0188】
従って、一実施形態では、触媒系はまた遷移金属化合物と表面反応炭酸カルシウムとの反応によって得られる1つ以上の反応生成物をさらに含む。本発明の好ましい実施形態において、この1つ以上の反応生成物は、この遷移金属の炭酸水素塩、炭酸塩、水酸化物及び酸化物、並びにこの遷移金属の元素形態を含む。
【0189】
遷移金属化合物及び/又はその1つ以上の反応生成物の含有量は、触媒系の総重量あたりの遷移金属化合物の重量に基づいて、0.1〜60重量%、好ましくは0.1〜30重量%、より好ましくは0.1〜20重量%、さらにより好ましくは0.1〜10重量%、最も好ましくは0.2〜5重量%の範囲であってもよい。
【0190】
不均一触媒作用における本発明の触媒系の使用
本発明の触媒系は、多くの触媒反応において特に有用であることがわかった。例えば、C−Cクロスカップリング反応におけるより高い転化率及びグリセロール水素化分解におけるより高い収率が達成された。
【0191】
従って、本出願の一態様は、以下の工程を含む方法における本発明の触媒系の使用に関する:
(a)1つ以上の反応物を提供する工程;
(b)本発明の触媒系を提供する工程;
(c)工程(b)で提供される触媒系の存在下で、工程(a)で提供される1つ以上の反応物を化学反応に供する工程。
【0192】
本発明の触媒系はより容易に回収でき、従来の担体系と比較して第2の触媒サイクルにおいてより高い収率が達成され得ることが見出されたので、本発明の好ましい実施形態は、前述の態様に従う方法における本発明の触媒系の使用に関し、この方法は、工程(c)の化学反応の後に触媒系を回収し、遷移金属をリサイクルする工程(d)をさらに含む。用語「リサイクル」は、完全触媒系のリサイクルを含む任意の形態での遷移金属のリサイクルを包含すると理解されるべきである。
【0193】
本発明の好ましい実施形態では、工程(c)の化学反応は不均一触媒作用を含む。より好ましい実施形態では、工程(c)の化学反応は、以下の反応タイプの1つ以上から選択され得る:水素化分解反応、C−Cカップリング及びC−Cクロスカップリング、C−Nクロスカップリング、C−Oクロスカップリング、C−Sクロスカップリング、付加環化反応、アルケン水素化及びアルキン水素化、アリル置換、ニトロ基の還元及びハロゲン化アリールのヒドロカルボニル化、好ましくは水素化分解、C−Cカップリング及びC−Cクロスカップリング。
【0194】
本発明の触媒系はまた、この触媒系を含む顆粒、成形品又は押出物の形態でも使用され得る。典型的な形状には、球、小球、ミニリス、ハニカム、リングなどが含まれる。
【0195】
顆粒は、所望のサイズを得るためにゲルを破砕し、ふるいにかけることによって、又は結合剤と共に沈殿したペーストを乾燥することによって製造される。任意選択的に、造粒方法は特定の物理的特性を達成するための熱処理をさらに含む。顆粒の粒径は典型的には40μm〜1cmまでの範囲である。
【0196】
成形品は、可鍛性状態にあるものから得られる特定の形状を有する中空形態である。
【0197】
押出物は、ペーストをダイに通して押し込み、所定の長さに切断し、乾燥し、場合により焼成することにより形成される。
【実施例】
【0198】
A)分析方法
本願を通じて定義され、以下の実施例において決定されるパラメータは、以下の測定方法に基づく:
固形分含有量
懸濁液固形分含有量(「乾燥重量」としても知られている)を、以下の設定を伴ったMoisture Analyser MJ33(Mettler−Toledo,Switzerland)を使用して決定した:150℃の乾燥温度、質量が30秒間にわたって1mg超えて変化しない場合に自動でスイッチオフ、5gの懸濁液の標準乾燥。
【0199】
粒状材料の粒径分布
本明細書における表面反応炭酸カルシウムの粒径は、体積に基づく粒径分布d(体積)として記載される。Malvern Mastersizer 2000 Laser Diffraction System(Malvern Instruments Plc.,Great Britain)を用いて、体積で決定されたメジアン粒径d50(体積)及び体積で決定されたトップカット粒径d98(体積)を評価した。d50(体積)又はd98(体積)の値は、粒子のそれぞれ50体積%又は98体積%がこの値未満の直径を有するような直径値を示す。測定によって得られた生データは、1.57の粒子屈折率及び0.005の吸収指数で、ミー理論を使用して分析された。方法及び機器は、当業者に既知であり、充填剤及び顔料の粒径分布を決定するために一般に使用される。
【0200】
表面反応炭酸カルシウム以外の粒状材料の粒径は、本明細書では重量基準粒径分布d(体積)として記載される。重量で決定されたメジアン粒径d50(重量)は、沈降法によって測定され、これは、重力場における沈降挙動の分析である。測定は、Micromeritics Instrument Corporation,USAのSedigraph(商標)5100又は5120を用いて行った。この方法及び装置は当業者に知られており、充填剤及び顔料の粒径分布を決定するために一般的に使用される。測定は、0.1重量%Naの水溶液中で行われた。サンプルを高速度撹拌機を用いて分散させ、超音波処理した。
【0201】
ポロシメトリー
比細孔容積は、ラプラススロート直径0.004μm(〜nm)に等しい水銀414MPa(60000psi)の最大印加圧力を有するMicromeritics Autopore V 9620水銀ポロシメータを使用する水銀圧入ポロシメトリー測定を用いて測定される。各圧力工程で使用される平衡時間は20秒である。サンプル材料を、分析のために3cmチャンバ粉末ペネトロメータに密封する。データは、ソフトウェアPore−Compを用いて、水銀圧縮、ペネトロメータ拡張及びサンプル材料圧縮について補正する(Gane,P.A.C.,Kettle,J.P.,Matthews,G.P.and Ridgway,C.J.,「Void Space Structure of Compressible Polymer Spheres and Consolidated Calcium Carbonate Paper−Coating Formulations」,Industrial and Engineering Chemistry Research,35(5),1996,p1753−1764)。
【0202】
累積圧入データに見られる総細孔容積は2つの領域に分離することができ、214μmから約1から4μmまでの圧入データは、強く寄与する任意の凝集塊構造間でのサンプルの粗充填を示す。これらの直径未満では、粒子自体の微細な粒子間充填が存在する。それらがまた粒子内細孔も有する場合、この領域は双峰性を示し、モード転換点より微細な細孔、すなわち双峰性変曲点よりも微細な細孔へ水銀圧入された比細孔容積を得ることにより、比粒子内細孔容積を定義する。これらの3つの領域の合計は、粉末の全体的な総細孔容積を与えるが、この分布の粗い細孔端における粉末の元のサンプル圧縮/沈降に強く依存する。
【0203】
累積圧入曲線の一次導関数を得ることによって、必然的に細孔遮蔽を含む等価なラプラス直径に基づく細孔径分布が明らかになる。微分曲線は、粗い凝集塊の細孔構造領域、粒子間の細孔領域及び存在する場合粒子内細孔領域を明らかに示す。粒子内細孔直径範囲を知ることにより、総細孔容積から残りの粒子間及び凝集塊細孔容積を差し引いて、単位質量あたりの細孔容積(比細孔容積)に関して内部細孔のみの所望の細孔容積を得ることが可能である。当然のことながら、同じ減算の原理は、対象とする他の細孔径領域のいずれかを単離するために適用される。
【0204】
材料のBET比表面積(SSA)
本明細書を通して、表面反応炭酸カルシウム又は他の材料の比表面積(m/g)は、当業者に周知のBET法(吸着ガスとして窒素を使用)を用いて決定する(ISO 9277:2010)。次いで、充填剤材料の総表面積(m単位)は、処理対応サンプルの比表面積及び質量(g単位)との乗算によって得られる。
【0205】
X線回折(XRD)
XRD実験は、回転可能なPMMAホルダーリングを用いてサンプルに対して実施される。サンプルは、Braggの法則に従うBruker D8 Advance粉末回折計で分析される。この回折計は、2.2kWのX線管、サンプルホルダー、θ−θゴニオメータ及びVANTEC−1検出器からなる。ニッケルフィルタCu Kα線をすべての実験に用いる。プロファイルは2θで毎分0.7°の走査速度を用いて自動的に記録されたチャートである。得られた粉末回折パターンを、ICDD PDF 2データベースの基準パターンに基づいて、DIFFRACsuiteソフトウェアパッケージEVA及びSEARCHを用いて鉱物含有量によって容易に分類できる。
【0206】
回折データの定量分析は、多相サンプル中の異なる相の量の決定を指し、DIFFRACsuiteソフトウェアパッケージTOPASを用いて行われてきた。詳細には、定量分析は、実験データ自体から定量化可能な数値精度で構造的特徴及び相比率を決定することを可能にする。これは、計算されたパターンが実験的なものと重複するように、リートベルト法を用いて全回折パターンをモデル化することを含む。
【0207】
HPLCクロマトグラフィ
Suzuki反応:サンプルを、Dionex UVD3400検出器、Dionex ASi−100オートサンプラ(10μL注入)、Dionex TCC−100 HPLCカラムサーモスタット(40℃)及びDG1210脱ガス装置を備えたDionex P680 HPLCポンプ(1.0ml・分−1)を用いて、Waters Symmetry Shield(商標)カラム(RP−8、3.5μM、4.6x50mM)で分析した。水相中の0〜100%のアセトニトリルの勾配(脱塩水中の0.1%ギ酸及び5%アセトニトリル)を溶離剤として使用した。
【0208】
水素化分解反応:サンプルを、ERC RefractoMax 520検出器、Dionex ASi−100オートサンプラ(10μL注入)及びDionex TCC−100 HPLCカラムサーモスタット(70℃)を備えたDionex P680 HPLCポンプ(0.8ml・分−1)を用いて、Waters Symmetry Shield(商標)カラム(RP−8、3.5μM、4.6x50mM)で分析した。脱塩水中の5mMのHSO(pH1.5)を溶離剤として使用した。
【0209】
B)担体の調製(MCC)
SRCC1(d50(体積)=4.4μm、d98(体積)=8.6μm、SSA=39.9m−1
SRCC1は、沈降法によって決定される場合に2μm未満の90%の質量基準の粒径分布を有するHustadmarmor,Norwayからの粉砕大理石炭酸カルシウムの固形分含有量を、水性懸濁液の総重量に基づいて15重量%の固形分含有量が得られるように調整することによって、混合容器中で粉砕炭酸カルシウムの水性懸濁液10リットルを調製することによって得られた。加えて、30重量%のリン酸を含有する溶液を調製した。スラリーを混合しながら、0.83kgのリン酸溶液を70℃の温度で10分間かけてこの懸濁液に添加した。最後に、リン酸を添加した後、スラリーを容器から取り出し、濾過し、乾燥する前に、スラリーをさらに5分間撹拌した。
【0210】
SRCC2(d50(体積)=8.3μm、d98(体積)=19.5μm、SSA=74.4m−1
SRCC2は、沈降法によって決定される場合に2μm未満の90%の質量基準の粒径分布を有するHustadmarmor,Norwayからの粉砕大理石炭酸カルシウムの固形分含有量を、水性懸濁液の総重量に基づいて15重量%の固形分含有量が得られるように調整することによって、混合容器中で粉砕炭酸カルシウムの水性懸濁液10リットルを調製することによって得られた。加えて、希リン酸と硫酸アルミニウム十六水和物とをブレンドすることによって溶液を調製したが、ここで、リン酸は30重量%の濃度を有し、硫酸アルミニウム十六水和物はニートなリン酸の質量5%で投与した。スラリーを混合しながら、1.7kgのリン酸/硫酸アルミニウム溶液を70℃の温度で10分間かけてこの懸濁液に添加した。最後に、リン酸を添加した後、スラリーを容器から取り出し、濾過し、乾燥する前に、スラリーをさらに5分間撹拌した。
【0211】
SRCC3(d50(体積)=8.2μm、d98(体積)=16.7μm、SSA=90.0m−1
SRCC3は、沈降法によって決定される場合に2μm未満の90%の質量基準の粒径分布を有するHustadmarmor,Norwayからの粉砕大理石炭酸カルシウムの固形分含有量を、水性懸濁液の総重量に基づいて10重量%の固形分含有量が得られるように調整することによって、混合容器中で粉砕炭酸カルシウムの水性懸濁液10リットルを調製することによって得られた。加えて、希リン酸とクエン酸とをブレンドすることによって溶液を調製し、ここでリン酸は29重量%の濃度を有し、クエン酸はニートなリン酸の質量10%で投与された。スラリーを混合しながら、1.65kgのリン酸/クエン酸溶液を70℃の温度で10分間かけてこの懸濁液に添加した。最後に、リン酸を添加した後、スラリーを容器から取り出し、濾過し、乾燥する前に、スラリーをさらに5分間撹拌した。
【0212】
SRCC4(d50(体積)=6.7μm、d98(体積)=12.9μm、SSA=146.5m−1
SRCC4は、沈降法によって決定される場合に2μm未満の90%の質量基準の粒径分布を有するHustadmarmor,Norwayからの粉砕大理石炭酸カルシウムの固形分含有量を、水性懸濁液の総重量に基づいて10重量%の固形分含有量が得られるように調整することによって、混合容器中で粉砕炭酸カルシウムの水性懸濁液10lを調製することによって得られた。加えて、30重量%のリン酸を含有する溶液を調製し、一方5重量%のクエン酸を含有する別の溶液を調製した。スラリーを混合しながら、1.60kgのリン酸溶液を70℃の温度で10分間かけてこの懸濁液に添加した。また、リン酸添加開始から2分後から0.05kgのクエン酸溶液もスラリーに添加した。最後に、リン酸を添加した後、スラリーを容器から取り出し、濾過し、乾燥する前に、スラリーをさらに5分間撹拌した。
【0213】
SRCC5(d50(体積)=7.1μm、d98(体積)=13.5μm、SSA=119.2m−1
SRCC5は、沈降法によって決定される場合に2μm未満の90%の質量基準の粒径分布を有するHustadmarmor,Norwayからの粉砕大理石炭酸カルシウムの固形分含有量を、水性懸濁液の総重量に基づいて10重量%の固形分含有量が得られるように調整することによって、混合容器中で粉砕炭酸カルシウムの水性懸濁液10リットルを調製することによって得られた。加えて、30重量%のリン酸を含有する溶液を調製し、一方5重量%のクエン酸を含有する別の溶液を調製した。スラリーを混合しながら、1.60kgのリン酸溶液を70℃の温度で10分間かけてこの懸濁液に添加した。また、リン酸添加開始から3分後から0.05kgのクエン酸溶液もスラリーに添加した。最後に、リン酸を添加した後、スラリーを容器から取り出し、濾過し、乾燥する前に、スラリーをさらに5分間撹拌した。
【0214】
【表1】
【0215】
【表2】
【0216】
C)触媒の調製
方法1:エタノール中の非水性含浸
担体(0.5g)のスラリーを、金属塩が既に溶解している有機溶媒(20ml)中で調製する。次いでスラリーを撹拌し(18時間)、濾過し、真空下に周囲温度で18時間乾燥する。この手順は、触媒充填量を増やすために一度繰り返すことができる。
【0217】
方法2:トルエン中の非水性含浸
担体(2g)のスラリーを、金属塩も溶解している有機溶媒(25ml)中で調製する。次いで、溶媒を一定の撹拌下で蒸発させて触媒を担体上に含浸させ、均一な粉末を得る。次いで、この材料を周囲温度で18時間真空下で乾燥し、300℃で焼成する。
【0218】
方法3:水性含浸
金属の水溶性塩を最初に水(4ml)に溶解し、NaHCO(飽和)を使用することによりpHを5.5〜6に調整する。溶液を水(8〜12ml)中の担体(1.8〜2.0g)のスラリーに添加する。混合物を30〜90分間70℃に加熱し、次いで室温に冷却する。触媒を濾別し、水(3×4ml)ですすぎ、周囲温度で18時間真空乾燥し、次いで300℃で3時間焼成する。この手順は、触媒充填量を増やすために数回繰り返すことができる。
【0219】
【表3】
【0220】
触媒充填量の評価:
水性含浸物C19(SRCC4)からの濾液溶液を、すべての可溶性金属塩が黒色物質として沈殿するまで(すなわち、溶液の完全な脱色まで)静置した。沈殿物を計量し、触媒充填量をこの値から計算して4.6重量%のPtとした。計算は金属白金から行った。
【0221】
D)適用例
Suzuki反応(実施例A1〜A10、比較例CA1〜CA5)
ヨードベンゼンとフェニルボロン酸との間のカップリング反応は、様々な触媒充填量及び触媒タイプを用いて、Letters in Organic Chemistry,4,2007,13−15に従って行われた。典型的な反応では、0.45gのフェニルボロン酸(1.5当量、3.7mmol)を100mlの丸底フラスコに計量した。炭酸カリウム(2.9当量、7.3mmol、1.0g)を80mLの溶媒(水中40%エタノール)と共に混合物に添加した。フラスコをセプタムで閉じ、撹拌を開始し、フラスコを窒素流でパージした。次いでヨードベンゼン(0.50g、2.5mmol)を添加し、続いて予め計量した触媒を加えた(密閉バイアル中)。窒素パージを10〜15分間続けた。アリコート(約0.5ml)を混合物から一定間隔で取り出し、1mlのヘプタンで抽出し、UVダイオードアレイ検出器(238nm)を用いてHPLCによって分析した。転化率を表4にまとめる。
【0222】
反応終了時に、ヘプタンを反応混合物に添加し、内容物を250mlの分液漏斗に移す前に約15分間撹拌し、相を分離し、有機相をNaSOで約12時間乾燥し、濾過した。透明な有機層を、ロータリーエバポレータを使用して、風袋を量った丸底フラスコ中で濃縮乾固させた。丸底フラスコを計量して反応の収率を決定した。触媒を含有する抽出物からの水層をフリットガラスフィルタを使用して真空濾過により単離した(多孔度3)。フィルタケーキを脱イオン水、エタノール及びヘプタンで洗浄した。フィルタケーキを含有するフィルタを真空オーブンに入れ、20℃で全真空下で24時間を超えて乾燥させた。乾燥後、乾燥触媒をフィルタから回収し、スクリューキャップガラスバイアルに計量して回収触媒量を決定した。
【0223】
【表4】
【0224】
上記の表4は、市販のPd/CaCO触媒よりも本発明に従って調製された触媒の改善された効率を示す。触媒の調製は表3に見出すことができる。
【0225】
【表5】
【0226】
上記の表5は、回収された触媒の良好な効率、及びそれらが市販のサンプルからの市販の触媒よりも回収が容易であることを示している。
【0227】
グリセロールの水素化分解(実施例A11〜A21)
反応は、Catalysis Communications,13,2011,1−5に従って実施した。水(100mM)中の触媒(グリセロールに対して5モル%の活性金属)と20mlのグリセロールとの混合物を40バールの水素圧下に置き、次いで800rpmで撹拌しながら18時間200℃に加熱した。室温に冷却した後、サンプルを分析のために採取した。サンプルを濾過し、等量の5mMのHSOと混合した。触媒を濾別し、水(3×1ml)ですすぎ、真空乾燥した。反応混合物をHPLCにより分析して、出発材料(グリセロール)の量及び4つの主要反応生成物;乳酸(LA)、1,2−プロパンジオール(12−PD)、エチレングリコール(EG)及びエタノール(EtOH)の量を決定した。すべての場合において、これらの化合物は総ピーク面積の95%以上を占める。結果を表6にまとめる。
【0228】
【表6】
【0229】
表6は、本発明によるすべての触媒が比較例として使用された市販の触媒よりも高い活性を示したことを示す。