特許第6979058号(P6979058)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イーエルシー マネージメント エルエルシーの特許一覧

特許6979058化粧用処方を備える構築材料から三次元化粧用物品を印刷するためのデバイス
<>
  • 特許6979058-化粧用処方を備える構築材料から三次元化粧用物品を印刷するためのデバイス 図000003
  • 特許6979058-化粧用処方を備える構築材料から三次元化粧用物品を印刷するためのデバイス 図000004
  • 特許6979058-化粧用処方を備える構築材料から三次元化粧用物品を印刷するためのデバイス 図000005
  • 特許6979058-化粧用処方を備える構築材料から三次元化粧用物品を印刷するためのデバイス 図000006
  • 特許6979058-化粧用処方を備える構築材料から三次元化粧用物品を印刷するためのデバイス 図000007
  • 特許6979058-化粧用処方を備える構築材料から三次元化粧用物品を印刷するためのデバイス 図000008
  • 特許6979058-化粧用処方を備える構築材料から三次元化粧用物品を印刷するためのデバイス 図000009
  • 特許6979058-化粧用処方を備える構築材料から三次元化粧用物品を印刷するためのデバイス 図000010
  • 特許6979058-化粧用処方を備える構築材料から三次元化粧用物品を印刷するためのデバイス 図000011
  • 特許6979058-化粧用処方を備える構築材料から三次元化粧用物品を印刷するためのデバイス 図000012
  • 特許6979058-化粧用処方を備える構築材料から三次元化粧用物品を印刷するためのデバイス 図000013
  • 特許6979058-化粧用処方を備える構築材料から三次元化粧用物品を印刷するためのデバイス 図000014
  • 特許6979058-化粧用処方を備える構築材料から三次元化粧用物品を印刷するためのデバイス 図000015
  • 特許6979058-化粧用処方を備える構築材料から三次元化粧用物品を印刷するためのデバイス 図000016
  • 特許6979058-化粧用処方を備える構築材料から三次元化粧用物品を印刷するためのデバイス 図000017
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979058
(24)【登録日】2021年11月16日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】化粧用処方を備える構築材料から三次元化粧用物品を印刷するためのデバイス
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/118 20170101AFI20211125BHJP
   A61K 8/00 20060101ALI20211125BHJP
   A61Q 1/06 20060101ALI20211125BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20211125BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20211125BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20211125BHJP
   B29C 64/245 20170101ALI20211125BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20211125BHJP
   B29C 64/227 20170101ALI20211125BHJP
【FI】
   B29C64/118
   A61K8/00
   A61Q1/06
   B33Y30/00
   B33Y80/00
   B29C64/209
   B29C64/245
   B29C64/393
   B29C64/227
【請求項の数】31
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-507340(P2019-507340)
(86)(22)【出願日】2017年8月4日
(65)【公表番号】特表2019-534803(P2019-534803A)
(43)【公表日】2019年12月5日
(86)【国際出願番号】US2017045498
(87)【国際公開番号】WO2018031405
(87)【国際公開日】20180215
【審査請求日】2019年4月3日
(31)【優先権主張番号】62/374,153
(32)【優先日】2016年8月12日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513161449
【氏名又は名称】イーエルシー マネージメント エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グレイ,ティモシー パトリック
(72)【発明者】
【氏名】コーエン,アイザック デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】マーティンズ,アゴスティンホ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクター,ブルース ローレンス
(72)【発明者】
【氏名】カーティス,チャールズ アーロン
(72)【発明者】
【氏名】パッパス,マダリン エリス
【審査官】 田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】 特表2000−500709(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/119161(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/118
A61K 8/00
A61Q 1/06
B33Y 30/00
B33Y 80/00
B29C 64/209
B29C 64/245
B29C 64/393
B29C 64/227
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧用処方を備える構築材料から三次元化粧用物品を印刷するためのデバイスであって、
押出機であって、
シリンダを画成している内壁を有するバレルであって、前記シリンダが第1の端部及び第2の端部を有する、バレルと、
前記シリンダ内で前進及び後退できるように、前記シリンダの前記第1の端部に取り付けられたピストンであって、前記ピストンが、外側に向いた側壁によって連結された前方壁及び後方壁を有しており、前記側壁が、前記シリンダ内で嵌合するように形状設定及び寸法設定されており、前記ピストンの前記前方壁が、前記シリンダの前記第2の端部に向いている、ピストンと、
前記シリンダの第2の端部に固定された押出しノズルと、
ある量の前記構築材料を受けるためのリザーバであって、前記リザーバが、前記ピストンの前記前方壁と前記ノズルとの間の前記シリンダの一部分によって画成されており、前記ピストンは、前記シリンダ内で前記ピストンが前進させられたときに、前記構築材料に圧力を加えて、前記構築材料を前記ノズルを通して押し出し、前記シリンダ内で前記ピストンが後退させられたときに、前記構築材料に吸引力を加えるように配置され、前記構築材料を前記ノズル内に引き込むように適合されている、リザーバと、
前記ノズルから前記構築材料が押し出される前に前記リザーバから、液体化した前記構築材料を受けるように配置された半球状チャンバと、
前記ピストンを前進及び後退させるために前記ピストンに連結されたモータと、
を含む押出機と、
前記ノズルの下に位置付けられた構築プレートと、
前記化粧用物品を支持するための基板であって、前記ノズルからの前記液体化した構築材料を受けるために、前記構築プレートと前記ノズルとの間で前記構築プレート上に取り外し可能に固定される基板と、
前記構築プレートに対して前記ノズルを位置決めする位置決め組立体と、
前記押出機及び前記位置決め組立体と通信する関係で結合されたコントローラであって、前記液体化した構築材料が前記ノズルを通って選択的に前進させられて、前記基板上に堆積され、前記化粧用物品を三次元形状に製作するように、前記構築プレートに対して前記ノズルを位置決めし、前記液体化した構築材料を前進又は後退させるようにプログラムされたコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、前記モータを制御することにより、前記ピストンを後退させ、印刷されている前記化粧用物品に過剰な液体化した構築材料が落ちないように、または添加されないように、前記液体化した構築材料を、前記吸引力で前記ノズルの出口内に後退させるデバイス。
【請求項2】
前記構築材料が予め形成されたスティックを備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記ピストンを、雄ねじを有する駆動ロッドに連結するリンク部をさらに備え、前記駆動ロッドが前記モータのスピンドルに連結されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記リンク部に固定取付けされた駆動ナットであって、前記駆動ロッドの前記雄ねじに協同して係合する雌ねじを有する駆動ナットをさらに備える、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記リンク部に固定され、前記駆動ロッドの少なくとも一部分を受けるロッドベアリングであって、前記ピストンに対する前記駆動ロッドの位置合わせを保証するように適合されたロッドベアリングをさらに備える、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記モータがステッパモータである、請求項4に記載のデバイス。
【請求項7】
前記モータがステッパモータである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記ピストンの前記側壁と前記シリンダの前記内壁との間の封止部をさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記封止部がエラストマーOリングである、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記ノズルの近位に固定された加熱要素であって、前記構築材料を、前記ノズルからの押出し前に融解するように適合された加熱要素をさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記構築材料が堆積された後に、前記構築材料を冷却し、融着させ、固めるために、印刷されている前記化粧用物品の周囲周りに、環状の空気流を提供するための手段をさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
前記冷却するための手段が、空気入口、ダクト、及び空気出口と流体連通しているファンであって、前記ファンが前記空気入口からの空気を前記ダクトを通して前記空気出口に誘導し、前記空気出口が、印刷されている前記化粧用物品の周囲周りに環状に前記空気を導くように適合されている、ファンを含む、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記空気出口は丸い構成を有し、前記ノズル周りで同軸上に位置決めされている、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記バレルが、熱伝導の低い材料から作られる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
前記熱伝導率が、3Btu/(ft h °F)未満である、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
化粧用処方を備える構築材料から三次元化粧用物品を印刷するためのデバイスであって、
前記構築材料を加熱し、融解した状態で押出しノズルを通して、連結されたモータによりピストンを前進させることで前記構築材料を押し出すように適合された押出機と、
前記ノズルの下に位置付けされた構築プレートと、
前記化粧用物品を支持するための基板であって、前記ノズルから前記構築材料を受けるために、前記構築プレートと前記ノズルとの間で前記構築プレート上に選択的に固定される基板と、
前記構築プレートに対して前記ノズルを位置決めする位置決め組立体と、
前記押出機及び前記位置決め組立体と通信する関係で結合されたコントローラであって、前記化粧用物品を三次元形状に製作するように前記基板上に前記構築材料を堆積させるために、前記構築プレートに対して前記ノズルを位置決めし、前記構築材料を前進させて前記ノズルに通すようにプログラムされたコントローラと、
前記構築材料が堆積された後に、前記構築材料を冷却し、融着させ、固めるために、印刷されている前記化粧用物品の周囲周りに環状に冷却空気流を提供するための手段と、
前記ノズルから前記構築材料が押し出される前に、前記構築材料のリザーバから前記構築材料を受けるように配置された半球状チャンバと、を備え、
前記コントローラは、前記モータを制御することにより、前記ピストンを後退させ、印刷されている前記化粧用物品に過剰な液体化した前記構築材料が落ちないように、または添加されないように、前記液体化した構築材料を、前記押出機内の吸引力で前記ノズルの出口内に後退させるデバイス。
【請求項17】
前記冷却するための手段が、空気入口、ダクト、及び空気出口と流体連通しているファンであって、前記ファンが、前記空気入口からの空気を前記ダクトを通して前記空気出口に誘導し、前記空気出口が、印刷されている前記化粧用物品の周囲周りに環状に前記空気を導くように適合されている、ファンを含む、請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
前記空気出口が、丸い構成を有し、前記ノズルの周囲周りに位置決めされており、前記空気が下向きに導かれる、請求項17に記載のデバイス。
【請求項19】
前記半球状チャンバが、融解チャンバである、請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
前記基板が、プレート、カップ、及び皿のうちの一つから選択される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項21】
前記ダクトが、前記空気出口からの均一な流出を作り出すように適合された内部バッフルをさらに備える、請求項17に記載のデバイス。
【請求項22】
前記空気出口が丸い構成を有している、請求項17に記載のデバイス。
【請求項23】
前記ファンが可変速度ファンであり、前記デバイスが、印刷されている前記物品の冷却速度を調節するために前記ファンの速度を選択するためのスイッチをさらに備えている、請求項17に記載のデバイス。
【請求項24】
化粧用処方を備える構築材料から三次元化粧用物品を印刷するためのデバイスであって、
押出機であって、
シリンダを画成している内壁を有するバレルであって、前記シリンダが第1の端部及び第2の端部を有する、バレルと、
前記シリンダ内で前進及び後退できるように、前記シリンダの前記第1の端部に取り付けられたピストンであって、前記ピストンが、外側に向いた側壁によって連結された前方壁及び後方壁を有しており、前記側壁が、前記シリンダ内で嵌合するように形状設定及び寸法設定されており、前記ピストンの前記前方壁が、前記シリンダの前記第2の端部に向いている、ピストンと、
前記シリンダの前記第2の端部に固定されたネイルであって、前記シリンダと流体連通している半球状チャンバを画成しているネイルと、
ネイルに固定された押出しノズルであって、前記押出しノズルが、遠位端部のノズル出口及び近位端部のノズル入口を有しており、前記半球状チャンバが前記ノズル入口と流体連通しており、前記ノズル入口が、ノズルダクトを介して前記ノズル出口と流体連通している、押出しノズルと、
ある量の前記構築材料を受けるためのリザーバであって、前記リザーバが、前記ピストンの前記前方壁と前記ノズルの半球状チャンバとの間の前記シリンダの一部分によって画成されており、前記ピストンは、前記シリンダ内で前記ピストンが前進させられたときに、前記構築材料に圧力を加えて、前記構築材料を前記リザーバから前記半球状チャンバ内に前進させ、前記構築材料を前記ノズル出口を通して押し出し、前記シリンダ内で前記ピストンが後退させられたときに、前記構築材料に吸引力を加えるように配置され、前記構築材料を前記ノズル出口内に引き込むように適合されている、リザーバと、
前記ピストンを前進及び後退させるために前記ピストンに連結されたモータと、
を含む押出機と、
前記ノズルの下に位置付けられた構築プレートと、
前記化粧用物品を支持するための基板であって、前記ノズルから前記構築材料を受けるために、前記構築プレートと前記ノズルとの間で前記構築プレート上に選択的に固定される基板と、
前記構築プレートに対して前記ノズルを位置決めする位置決め組立体と、
前記押出機及び前記位置決め組立体と通信する関係で結合されたコントローラであって、前記化粧用物品を三次元形状に製作するように前記基板上に前記構築材料を堆積させるために、前記構築プレートに対して前記ノズルを位置決めし、前記構築材料を前進させて前記ノズルに通すようにプログラムされたコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、前記モータを制御することにより、前記ピストンを後退させ、印刷されている前記化粧用物品に過剰な液体化した構築材料が落ちないように、または添加されないように、前記液体化した構築材料を、前記吸引力で前記ノズルの出口内に後退させるデバイス。
【請求項25】
前記ノズルの近位にあり、前記構築材料を、前記半球状チャンバ内で融解するように適合された加熱要素をさらに備える、請求項20に記載のデバイス。
【請求項26】
化粧用処方を備える構築材料から三次元化粧用物品を印刷するためのデバイスであって、
前記構築材料を加熱し、融解した状態で押出しノズルを通して、連結されたモータによりピストンを前進させることで前記構築材料を押し出すように適合された押出機と、
前記ノズルの下に位置付けられた構築プレートと、
前記化粧用物品を支持するための基板であって、前記ノズルから前記構築材料を受けるために、前記構築プレートと前記ノズルとの間で前記構築プレート上に選択的に固定される基板と、
前記構築プレートに対して前記ノズルを位置決めする位置決め組立体と、
前記押出機及び前記位置決め組立体と通信する関係で結合されたコントローラであって、前記化粧用物品を三次元形状に製作するように前記基板上に前記構築材料を堆積させるために、前記構築プレートに対して前記ノズルを位置決めし、前記構築材料を前進させて前記ノズルに通すようにプログラムされたコントローラと、
前記ノズルから前記構築材料が押し出される前に、前記構築材料のリザーバから前記構築材料を受けるように配置された半球状チャンバと、を備え、
前記コントローラは、前記モータを制御することにより、前記ピストンを後退させ、印刷されている前記化粧用物品に過剰な液体化した前記構築材料が落ちないように、または添加されないように、前記液体化した構築材料を、前記押出機内の吸引力で前記ノズルの出口内に後退させるデバイス。
【請求項27】
前記基板が、プレート、カップ、及び皿のうちの一つから選択される、請求項26に記載のデバイス。
【請求項28】
前記構築プレートが、前記基板を受けるように協同した形状に設定された基板凹所をさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項29】
化粧用処方を備える構築材料から三次元化粧用物品を印刷するためのデバイスであって、
前記構築材料を加熱し、融解した状態で押出しノズルを通して、連結されたモータによりピストンを前進させることで前記構築材料を押し出すように適合された押出機と、
前記ノズルの下に位置付けられた構築プレートと、
前記化粧用物品を支持するための基板であって、形状及び寸法を有しており、前記ノズルから前記構築材料を受けるために、前記ノズルの下で前記構築プレート上に選択的に固定される基板と、
前記構築プレートに対して前記ノズルを位置決めする位置決め組立体と、
前記押出機及び前記位置決め組立体と通信する関係で結合されたコントローラであって、前記化粧用物品を三次元形状に製作するように前記基板上に前記構築材料を堆積させるために、前記構築プレートに対して前記ノズルを位置決めし、前記構築材料を前進させて前記ノズルに通すようにプログラムされたコントローラと、
前記構築プレート内のサイズ調整凹所であって、前記サイズ調整凹所が、前記基板よりも大きくなるように形状設定及び寸法設定されており、前記サイズ調整凹所が、対応して形状設定及び寸法設定されたサイズ調整インサートを受けるように形状設定及び寸法設定されており、前記インサートが、前記構築プレートに固定され、前記インサートが、対応して形状設定及び寸法設定された基板を受けるように共同した形状および寸法に設定された基板空所を有する、サイズ調整凹所と、を備え、
前記コントローラが、前記モータを制御することにより、前記押出機のシリンダ内でピストンが後退させられたときに、前記構築材料に吸引力が加えられ、
前記吸引力により、前記ノズルと該ノズルに連通した球状チャンバの内部に前記構築材料を吸引し、これにより、前記化粧用物品に過剰に構築材料が落ちること、または、添加されることを防止するデバイス。
【請求項30】
前記スティックが、0.125インチ〜3インチの範囲の幅、及び0.5インチ〜12インチの範囲の長さを有する、請求項2に記載のデバイス。
【請求項31】
前記スティックが、丸い断面、0.5インチの幅、及び4インチの長さを有する、請求項2に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元印刷のためのデバイスに関する。特に本発明は、化粧用処方を備える構築材料から三次元化粧用物品を熱溶解積層によって印刷するためのデバイスを対象とする。
【背景技術】
【0002】
積層造形のための三次元(「3D」)プリンタがよく知られている。そのようなプリンタの例は、メイヤー(Mayer)の米国特許第8,529,240号において開示されている。メイヤー(Mayer)によって開示されたデバイスは、コントローラ及び他のハードウェア、ステッパモータを有する位置決めアセンブリ、押出機、並びに構築プレートを使用して、プラスチック構築材料の積層堆積により3Dコンピュータモデルから物品を製作する。比較的剛性の高いプラスチックフィラメント構築材料が、ステッパモータによってスプールから押出機に供給され、ここで構築材料はヒータによって融解され、ノズルを通って押し出される。メイヤー(Mayer)は、構築材料を前進させるためのピストンを開示していない。
【0003】
チェ(Choi)の米国特許出願公開第2015/0314141号は、化粧用成分を受け取り、加工するように修正されたプリンタを開示している。プリンタは、下にある基板の非常に限られたロケーションに物質(染料、顔料など)を堆積させて、基板上に形成される選択された所望の色を生成するデバイスとして記述されている。基板は、化粧用材料の既存の供給品又は物品である。言い換えれば、チェ(Choi)は、既存の化粧用処方の基板又は物品に選択的に色を印刷するためのプリンタを開示しているが、化粧用処方を備える構築材料から三次元化粧用物品を印刷することは開示していない。
【0004】
サルシアリニ(Salciarini)の米国特許第8,172,473号は、流動性構築材料をスライス状に凝固させるためにレーザ光による光重合又は焼結を用いて、化粧用アプリケータを製造するための方法を開示している。生産された物品は化粧用アプリケータ(マスカラブラシ、くしなど)であって、化粧用処方を備えた構築材料から作られた化粧用物品ではない。
【0005】
ジョネ(Jaunet)らのWO/2016/020435は、化粧用成分を備える3D物体を直接投射により積層造形するための方法を開示しているが、この方法は、化粧用構築材料の連続した層を噴射(直接投射)するためのポンプ(図示も記述もされていない)を含むものとして記述されている。構築材料は、比較的小さいサイズの液滴で噴射されて、薄い連続層が形成される。参照には、比較的分厚い層で構築材料を押し出すための押出機は含まれていない。
【0006】
ジョネ(Jaunet)らのWO/2016/020442は、化粧用成分を備える3D物体を直接投射により積層造形するための方法を開示しているが、この方法は、光活性可能材料と、光活性可能材料を活性化するための照明とを使用するものとして記述されている。ジョネ(Jaunet)らのWO/2016/020454は、化粧用成分を備える3D物体を、粉末結合活性剤を塗布することによって積層造形するための方法を開示している。ジョネ(Jaunet)らのWO/2016/020447は、化粧用成分を備える3D物体を、粉末に光活性可能材料を塗布することによって積層造形するための方法を開示している。本発明は、光活性可能材料、粉末結合活性剤、又は粉末への光活性可能材料の塗布を含んでいない。
【0007】
知られている3Dプリンタは、化粧用処方を備える構築材料から、熱溶解積層による連続した分厚い層で3D物品を生産するには適していない。化粧用処方を備える構築材料はシリコーン及びワックスなどの成分を含んでおり、それらの成分は、知られている3D印刷技術を用いて分厚い層で印刷することが容易ではない。そのような成分は、特に比較的分厚い連続層で印刷されるときに、化粧用処方を備える構築材料を、3D印刷に使用される典型的な比較的硬いプラスチック構築材料に比べて、構築前及び構築後状態において柔らかくし、構築工程中には異なる態様で流れ、固まり、冷めるようにし得る。
【0008】
しがたって、化粧用処方を備える構築材料から三次元化粧用物品を印刷するためのデバイスであって、構築材料の連続層を押し出すための押出機を含むデバイスが必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、化粧用処方を備える構築材料から三次元化粧用物品を印刷するためのデバイスを提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、化粧用処方を備える構築材料から三次元化粧用物品を印刷するためのデバイスのための構築材料押出機を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、化粧用処方を備える構築材料から三次元化粧用物品を印刷するためのデバイスのための環状冷却手段を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、化粧用処方を備える構築材料から三次元化粧用物品を印刷するためのデバイスのための半球状チャンバを含む改善されたノズルを提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、3D印刷で典型的に使用されるポリマーよりも幅広いガラス転移温度範囲を有する構築材料の印刷を容易にするデバイスを提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のデバイスが組み込まれた3Dプリンタの前方、上方、及び左側の斜視図である。
図2】デバイスの前方、上方、及び左側の拡大斜視図である。
図3】デバイスの押出機の拡大図である。
図4図3に示された押出機の断面図である。
図5図3に示された押出機の断面図である。
図6】デバイスの構築プレートの分解斜視図である。
図7図6の構築プレートの組立斜視図である。
図8】構築プレート用の代替的なインサートを示している、デバイスの構築プレートの分解斜視図である。
図9】ファン組立体の上方、前方、及び左側の斜視図である。
図10図9に示されているファン組立体の下方、前方、及び左側の斜視図である。
図11図9及び図10に示されている組立体のファンダクトの上方、前方、及び左側の斜視図である。
図12図9及び図10に示されている組立体のファンダクトの上方、後方、及び右側の斜視図である。
図13図9及び図10に示されている組立体のファンダクトの上方、前方、及び左側の分解図である。
図14】デバイスの下方及び前方の斜視図である。
図15】構築材料スティックの様々な実施形態の前方及び上方の斜視図及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ここで図1図15を参照すると、化粧用処方を備える構築材料から三次元物品を印刷するためのデバイスが、全体的に参照符号2で示されている。印刷ヘッド組立体129は、例えばメーカーボット リプリケータ(MakerBot Replicator) 2又は同様のプリンタなどのベース機械130に支持される。ベース機械は、印刷ヘッド組立体129を支持及び位置決めするための、上枠レール131、x軸支持プラットフォーム132、及びガントリレール134を含む位置決め組立体(全体的に27で示されている)を有する。可撓性の配線シース135が、印刷ヘッド組立体129を、電気通信するようにベース機械130に接続している。印刷ヘッド組立体129は、シリンダ6を画成している内壁5を有するバレル105のある押出機4を含んでいる。シリンダ6は、第1の端部7及び第2の端部8を有している。ピストン104は、シリンダ6内でピストン104が前進及び後退できるように、シリンダ6の第1の端部7に取り付けられている。ピストン104は、外側に向いた側壁11によって連結された前方壁9及び後方壁10を有している。側壁11は、シリンダ6に受けられ、嵌合するように形状設定及び寸法設定されている。ピストン104の前方壁9は、シリンダ6の第2の端部8の方を向いている。ピストンは、任意の適切な材料から作られてもよいが、好ましい材料は6061アルミニウムである。ピストン104の側壁11とシリンダ6の内壁5との間に封止部106が設けられてもよい。封止部は、好ましくは、ピストン104の側壁11内の周囲溝3に固定されたエラストマーOリングである。封止部は、好ましくは、耐油性のブナN材料である。
【0016】
シリンダ6の第2の端部8において、ネイル113がバレル105に固定されている。ネイル113は、任意の適切な材料から作られてもよいが、好ましい材料は6061アルミニウムである。ネイル113は、シリンダ6と流体連通している中空部分12を有している。シリンダ6とは反対のネイルの端部において、中空部分12は、好ましくは半球状チャンバ111で終端する。ネイル113の反対側の端部には押出ノズル112も固定されている。ノズル112は、真ちゅうから作られた4mmのノズルである。押出ノズル112は、ノズルダクト14によって流体連通するように連結された、遠位端部のノズル出口13及び近位端部のノズル入口15を有している。ネイル113の半球状チャンバ111は、ノズル入口15と流体連通しており、ノズル入口15は、ノズルダクト14を介してノズル出口13と流体連通している。
【0017】
ある量の構築材料を受けるためのリザーバ16が、ネイル113の中空部分12及び半球状チャンバ111を含むピストン104の前方壁9とノズル112との間で、シリンダ6の一部分によって画成されている。構築材料は、好ましくは、スティック115の形状でリザーバ16に提供される。ピストン104は、シリンダ6内でピストン104が前進させられたときに、リザーバ16内の構築材料スティック115に圧力を加えて、構築材料をノズル112を通して押し出し、シリンダ6内でピストン104が後退させられたときに、構築材料スティック115に吸引力を加えて、構築材料をノズル112内に引き込むように構成されている。
【0018】
モータ108(図3図5)は、シリンダ6内でピストン104を前進及び後退させるように、ピストン104に連結されている。モータ108は、例えばメーカーボット リプリケータ(MakerBot Replicator) 2/2X NEMA 17ハイブリッドステッパモータとすることができる。モータ108及びバレル105は、支持上側シャシ109に取り付けられている。シャシは、任意の適切な金属又はプラスチック材料から作られてもよい。或いは、シャシはPLA構築材料から3D印刷されてもよい。モータ108は、好ましくはステッパモータである。モータ108は、リンク部100及び駆動ロッド101を介して、ピストンに連結されていてもよい。リンク部は、アルミニウム若しくは別の適切な金属若しくはプラスチックから作られ、又は、PLA構築材料から3D印刷されてもよい。駆動ロッドは、好ましくは、耐久性を得るために鋼から作られる。駆動ロッド101は、スリーブ状コネクタ107によってモータ108のスピンドル17に連結されている。駆動ロッド101は、モータ108のスピンドル17の回転運動が、駆動ロッド101に直接伝達されるように、モータ108に連結されている。駆動ロッドは雄ねじ18を有している。駆動ナット103は、リンク部100に固定取付けされている。駆動ナット103は、駆動ロッド101の雄ねじ18に協同して係合する雌ねじ19を有している。駆動ナット103内で駆動ロッド101が回転することによって、モータの回転運動がリンク部100の線形運動に変換され、その線形運動によって、ピストン104がシリンダ6内で線形に移動する。モータスピンドルが第1の方向に回転すると、ロッドの回転運動は、駆動ナット及びリンク部、ひいてはピストンの線形運動に変換され、それによりシリンダ内でピストンが前進する(ピストンの前方壁が、シリンダの第1の端部から離れシリンダの第2の端部に向かうように移動する)。モータが反対方向に回転すると、ピストンはシリンダ内で後退する(ピストンの前方壁が、シリンダの第2の端部から離れるように移動する)。駆動ロッドを回すことによって手動でピストンを前進及び後退させることができるように、駆動ロッド101にハンドル119が設けられている。
【0019】
好ましくは、リンク部100にロッドベアリング102が固定されている。駆動ロッド101の少なくとも一部分は、ロッドベアリング102のボア20を貫通している。ロッドベアリング102のボア20は、駆動ロッド101の雄ねじ18に協同して係合する雌ねじ21を有していてもよい。或いは、ボアは滑らかな壁(図示せず)を有してもよい。ロッドベアリングは、駆動ロッド101及びリンク部100の、押出機構造部及び構成要素の他の部分に対する位置合わせを保証するように、位置決め及び適合されている。駆動ナット及びロッドベアリングは、任意の適切な金属又はプラスチック材料から作られる。本事例では、駆動ナット及びロッドベアリングは真ちゅうから作られている。
【0020】
構築プレート123(図1図2図7、及び図8)は、ノズル112の下に位置付けられている。
【0021】
化粧用物品を支持するための基板121は、ノズル112から構築材料を受けるために、構築プレート123とノズル112との間で構築プレート123上に取り外し可能に固定される。基板は、PLA構築材料から3D印刷されてもよく、又は化粧用処方に適合性のある任意の他の適切な金属若しくはプラスチック材料であってもよい。好ましくは、構築プレート123は、印刷プロセスを通して基板121を確実に受け、位置決めするように協調同した形状に設定された基板凹所124を有している。基板凹所124は、印刷動作中に基板121を確実に定位置に保持する。好ましくは、モジュール設計の構築プレート123が提供されて、構築プレート123をほとんど又は全く設備更新又は修正することなく、異なる形状、厚さ、及びサイズを有する基板を挿入し、構築プレートによって保持することを可能にする。図6図7、及び図8に示されているように、基板121よりも大きく寸法設定されたサイズ調整凹所128が設けられて、サイズ調整インサート122、126a、126bが収容されてもよい。デバイス2を使用して、異なるサイズ及びタイプの化粧用物品を3D印刷することができる。例えば、デバイス2を使用して、それぞれが異なる形状及び/又は寸法の基板121を必要とするリップスティック、リップバーム、アイシャドウ、アイブロウカラー、チークメイクアップ、スティック形状若しくはブレット(bullet)形状の保湿剤若しくは防臭剤、又は(コンパクトに挿入できるように)ケーキ形状のファンデーション若しくはカラーメイクアップを、3D印刷することができる。サイズ調整インサート122、126a、126bは、必要に応じて基板凹所124のサイズを変えることが求められる基板の形状及び/又は寸法ごとに、提供されてもよい(例えば図8のサイズ調整インサート122、126a、及び126bを参照)。それぞれのサイズ調整インサート122、126a、126bは、(以下で議論する基板凹所124に対応した)基板空所26を有している。基板空所26は、対応して形状設定及び寸法設定された基板121を受けるように協同した形状および寸法に設定されている。基板空所26は、印刷動作中、サイズ調整インサート内で確実に基板121を定位置に保持し、サイズ調整インサートは構築プレートに固定されている。サイズ調整インサート122、126a、126bを構築プレート123に固定するために、ねじ127が提供されてもよい。インサート凹所128にサイズ調整インサート122、126a、126bが提供されると、サイズ調整インサート126内の基板空所26によって基板凹所124が画成される。印刷工程が完了した後に、3D印刷された物品を含む基板121の取外しを容易にするために、インサートに追加的なクリアランス125が設けられてもよい。インサートシステムは、基板保持プラットフォームの切替えを簡単にし、促進する。インサートシステムは、異なる基板サイズ又は形状ごとに特殊化され機械加工された構築プレートに勝る利点を提供する。インサートは、3D印刷され、又は他の態様で廉価に製造されて、開発及び製作を促し、完全な大きい構築プレートではなく簡単な軽い部分の輸送を可能にすることができる。インサートは、完全な構築プレートよりも早く作ることができる。インサートシステムによって、様々な基板厚さの調節を早くすることができる。
【0022】
位置決め組立体27は、ノズル112を構築プレート123に対して水平及び垂直方向に位置決めするために設けられる。
【0023】
コントローラ28は、配線シース135を介して、押出機4及び位置決め組立体27と通信する関係で結合されている。コントローラ28は、構築材料がノズル112を通って選択的に前進させられて、基板上に堆積され、化粧用物品を三次元形状に製作するように、構築プレートに対してノズルを位置決めし、構築材料スティック115を前進又は後退させるようにプログラムされる。
【0024】
好ましくは、構築材料は、予め形成されたスティック115を備えている(図4では、ノズル112を通って部分的に押し出されているのが示されており、図15では、参照符号144〜147で示されている)。構築材料の処方の例は以下の通りである。
【0025】
【表1】
【0026】
予め形成された構築材料スティック115は、好ましくは0.125インチ〜3インチの範囲の幅を有し、0.5インチ〜12インチの範囲の長さを有する。好ましいスティックは断面が丸く、直径0.5インチ、長さ4インチを有する。スティックの寸法を決定する際に、スティック形状の構築材料を駆動する、前進させる、後退させる、及び押し出すために必要な力を考慮しなくてはならない。したがって、寸法は、構築材料の処方及び組成に応じて必然的に変わることになる。上記のサイズ範囲内のスティックは、ステッパモータ108によって生み出されるトルクを含め、本明細書において開示されるデバイスの動作に適合性のあることが見出されている。印刷機構全体が急で反復的な動作で動くことから、可動部分(例えば押出機及び関連部分)の量を最小に保つことが、主要な関心事である。例えば、構築材料のより大きいスティックを収容するように寸法設定された押出機ほど、大きい機械構成要素を有し、駆動に必要なトルクが大きくなり、したがってより重いモータが必要になる。好ましい構築材料のスティックの比較的小さいサイズ、幅0.5インチ、長さ4インチが、プラスチックフィラメント供給原料(例えばメーカーボット(MakerBot)プリンタ)用に最適化された既存のハードウェア及びソフトウェアで使用するのに適している。この好ましいサイズによって、化粧用構築材料の印刷を可能にするように既存の3Dプリンタハードウェア及びソフトウェアを修正することが可能になる。例えばリップスティックなどの化粧品は全体的に脆い。したがって好ましいサイズは、現実的な印刷用途に必要とされる必要な強度、剛性、圧縮可能度、及び妥当な嵩を提供するのに適している。また好ましいサイズは、スティックを、特に消費者又はビューティアドバイザにとって、現実的に取り扱い、装填、及び保管しやすいものにする。それに加えて、スティックの好ましいサイズは、知られているリップスティックブレットのサイズに近く、したがって同じ機械及び施設を使用して構築材料スティックを鋳造することができる。
【0027】
スティックは、挿入を補助し各印刷サイクルの開始を促すために、一方の端部が半球形状29(図15を参照)を有するように成形されてもよい。半球形状の端部は、好ましくは、ネイル113の半球状チャンバ111の形状に合致する。
【0028】
コイルとして描かれている加熱要素110が、ノズル112の近位に固定されている。加熱要素110は、ノズル112からの押出し前に、構築材料115を融解するように位置決め及び適合されている。図示されているように、加熱要素110は、ノズルに隣接したネイル113の一部分を囲んでいる。熱は、半球状チャンバ111の近傍で、加熱要素によってネイルに加えられる。したがって半球状チャンバ111は、構築材料のための加熱チャンバになる。好ましくは、固体又は半固体の構築材料の融解は、ネイル113のリザーバの一部分、すなわち半球状チャンバ111及びノズル112に制限される。任意の所与の時間に融解される構築材料115の量を制限することによって、過剰に融解された構築材料が、重力によってノズルから漏れるのが防止される。任意の所与の時間に融解される構築材料の量を制限することによって、押出し工程をよりよく制御し、精度を高めることができるようになる。構築材料の融解を制限しやすくするために、バレル105は、熱伝導性率の低いポリカーボネイトプラスチック材料から作られる。好ましくは、バレル105は、非熱伝導性の、又は熱伝導性率が非常に低いプラスチック材料から作られる。好ましくは、バレル105の材料は、3Btu/(ft h °F)未満である熱伝導性率を有する。
【0029】
ピストン104がシリンダの6内で前進すると、スティックの形状の構築材料115は、リザーバ16からネイル113の半球状チャンバ111内に押し込まれ、ここで加熱され融解される。融解された構築材料は、ノズル入口15に押し込まれ、ノズルダクト14を通り、ノズル出口13を通って構築材料のビード116として押し出される。スティック115のまだシリンダ6内にある部分は、バレル105が熱伝導性率の低い材料から作られているので、融解されない。ネイル113、ひいては半球状チャンバ111に加えられる熱は、バレル105、又はシリンダ6内に残っている構築材料には伝達されない。ピストン104がシリンダ6内で後退したとき、特に構築材料が固体又は半固体のスティック形状である場合に、構築材料115に吸引力が加えられる。この吸引力は、次に半球状チャンバ111及びノズル112内の液体化した構築材料に加えられる。したがって、液体化した構築材料は、印刷されている物体25に過剰な構築材料が落ちないように、又は添加されないように、ノズル出口13内に十分に後退する。従来の3D印刷ソフトウェアと同様に、コントローラ28は、通常の動作中に構築材料の後退を生じさせて、工具経路又は印刷ヘッド組立体の非印刷動作中に、融解した構築材料の液滴が押し出され続けるのを防止するようにプログラムされる。バレル105の内壁5とピストン104との間のOリング封止部106によって、ピストンの後退中にリザーバの内側で部分的減圧が生じ、それによりピストンに沿って構築材料が後退する。正確な印刷動作を実行するために、これは好ましい。ピストン後退の減圧によって、構築材料をピストンに機械的に固定する、又は構築材料をリザーバに機械的に(例えば弁によって)固定する必要がなくなる。
【0030】
本発明の重要な態様は、構築材料が押し出され、印刷されている物品上に融着された後に、構築材料に適切な冷却プロファイルを提供することである。したがって、構築材料が押し出され、物品上に堆積した後に、構築材料を冷却し、融着させ、固めるために、印刷されている化粧用物品の周囲周りに、環状の空気流(図4で下向きの矢印117によって示されている)が提供される。冷却するための手段は、例えばメーカーボット リプリケータ(MakerBot Replicator) 2用のシャークパーツ(Shark Parts)100706送風機などのファン118を含む。ファン118は、空気入口22、ダクト114、及び空気出口139と流体連通している。ファンは、入口22からの空気を、ダクト114を通して出口139に誘導する。ダクトは、下半分141と上半分142の二つの部分から形成されてもよい。ダクト部分は、任意の知られている方法によって、適切なプラスチック又は他の材料から作られてもよい。或いは、ダクト部分は、PLA構築材料から3D印刷されてもよい。ダクト114は、ダクトをファンハウジング23に固定するためのフランジ137(図9図13を参照)を備えている。ダクト114の下端部には、ノズル112をダクト114に通して挿入するための上開口部138が設けられている。上開口部138の反対側は、下開口部又は出口139である。ノズル112は、ダクト114の下に露出するように、上開口部138及び出口139を通って突出している。ネイル113の本体は、上開口部138を実質的に覆い、閉じている。それとは対照的に、図10に最もよく示されているように、出口139は、ノズル112よりも実質的に直径が大きい。したがって、ダクトに通された空気は、ノズル112と出口139の周囲との間の隙間を容易に通過する。
【0031】
出口139は、印刷されている物品の周囲周りに、空気を環状に下向きに導くように形状設定され適合されている(図4において117で示されている矢印を参照)。好ましくは、出口139は丸い構成を有し、上に記述され図10に示されているように、ノズル112周りで同軸上に位置決めされている。こうして、出口139から来る環状の空気流117は、印刷されている物品(図示せず)の周囲周りで下向きに導かれる。丸いダクトからの環状の空気流を保証するために、少なくとも一つの内部バッフル140がダクトに設けられて、空気出口139からの均一な流出が作り出される。
【0032】
ノズル112に対してダクトを安定させるために、ダクト支持部136がダクト114に設けられている。ダクト支持部136は、下側シャシ120の底部143に当接している(図14を参照)。ダクト支持部136は、押出機構造部の他の構成要素に対してダクト114及びファン118を安定させる。
【0033】
物品が印刷される基板121は、印刷された物体の一体部分になってもよい。基板は、構築プレートから物品が取り外されるときに物品を支持し、引き続き、例えばリップスティックケース又は化粧用コンパクトなどの一次包装内に物品が固定されるときに、物品を支持してもよい。基板は、図示されているように平板の形状であってもよく、又は代替的に、リップスティック上昇機構にリップスティックブレットを保持するカップ、又はコンパクトにカラー化粧品のケーキを保持する皿などのカップ又は皿(図示せず)であってもよい。基板121は、例えば紙、フォイル、プラスチックシート、板紙、成形プラスチック片、金属などの任意の適切な材料から作られてもよい。
【0034】
デバイスの冷却性能をさらに強化するために、ファンは可変速度ファンであり、デバイスは、印刷されている物品の冷却速度を調節するために可変速度ファンの速度を選択するためのスイッチ24を有している。例えば、ファン速度は、より多くの又はより少ない冷却空気を必要とする特定の部分形状又は部分サイズを有する物品の印刷に合わせて、選択的に調節されてもよい。ファン速度は、より多くの又はより少ない冷却空気を必要とする処方を有する構築材料の印刷に合わせて、調節されてもよい。特定の処方、サイズ、形状などに合わせて温度を自動的に調節するために、センサ(図示せず)がデバイスに設けられてもよい。
【0035】
特許請求されるデバイスは、少なくとも以下の利点を提供する。デバイスは、3D印刷又は熱溶解積層法(FDM)で典型的に使用されるポリマーよりも非常に幅広いガラス転移温度範囲を有する構築材料の印刷を可能にする。従来型の3D又はFDM印刷で使用されるABS、ナイロン、PET、及びPLAなどの従来型のポリマーは、厳密に定義されたガラス転移温度があることから、迅速に予測通りに融解及び凝固するようにそれらの性能に合わせて正確に選択及び処方される。それとは対照的に、はるかに幅広いガラス転移温度、又はさらには複数のガラス転移温度を、化粧用処方を含む構築材料に与える例えばワックス、オイル、シリコーン、及び他の原材料を、化粧用製品は典型的に有する。これらの構築材料のうちのいくつかは、ほとんど、ワックスオイルゲルと呼ばれる構造を形成する固体ワックス及び液体オイルから構成されている。特許請求されるデバイスは、ワックスオイルゲルが、滴点及び標準的な処理温度よりも低い温度で印刷されることを可能にする。化粧用材料の低い温度での3D又はFDM印刷によって、材料が完全に液体化しないことから、標準的な加工温度で実現されるような高い印刷精度が可能になる。印刷に有用なガラス転移範囲は、典型的には、典型的な3D又はFDM印刷のポリマー構築材料に関しては10℃にわたる。それとは対照的に、例えばワックスオイルゲルを含む化粧用処方ベースの構築材料に関する、印刷に有用なガラス転移範囲は、典型的には20℃以上にわたる。
【0036】
従来型の3D又はFDM印刷で使用されるABS、ナイロン、PET、及びPLAなどの従来型のポリマーは、迅速に予測通りに融解及び凝固するようにそれらの性能に合わせて正確に選択及び処方される。このことは、これらの材料がフィラメント供給原料として形成され、連続した糸として融解ゾーンに供給されることから、必要である。フィラメント供給原料システムには現実的な利点があるが、それらの供給原料駆動機構では、フィラメント供給原料の側部に摩擦力を加えることによって糸を前進させるために、供給原料が剛性で硬いことが必要である。それとは対照的に、リップスティックなどの化粧用ベースの構築材料、及び他の比較的柔らかい化粧用材料は、フィラメント供給原料として効果的に印刷するには展性が高すぎる。本デバイスのピストン駆動押出機は、特にシステムの前進及び後退機能を強化するために構築材料の予め形成されたスティックとともに使用されるとき、化粧用ベースの構築材料を熱溶解積層法のために供給するという問題を解決する。ピストン押出機は、化粧用物品を3D印刷するために化粧用ベースの構築材料を供給するための新規で唯一の方法を提供する。デバイスは、構築材料がリザーバ内で完全に融解される、チョコレート及び他の消耗品用にすでに開発されたシステムとも区別される。本発明では、特に化粧用構築材料の予め形成されたスティックとともに使用されるときに、ピストンが、ノズル内の構築材料の前後動作を正確に制御する。ノズル内での構築材料の正確な前後運動は、正確な印刷物を作り出し、過剰な材料押出しを回避するために必要である。したがってデバイスは、完全に融解した構築材料を有するシステムよりもさらに正確である。
【0037】
また供給原料が押出し点まで固形のままであり得ることから、完全に融解した供給システムで生じ得るような、より重い処方原材料がリザーバ内で分離するということがない。このことは、密度の高い鉱物が処方の重要な成分であり得、処方の早すぎる分離が問題になることの多い化粧用製品にとって、非常に重要である。
【0038】
以下の特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な部分の特定の形状及び構成に、様々な修正及び変更を加えることできることが、理解される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15