(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979071
(24)【登録日】2021年11月16日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】アキュムレータ
(51)【国際特許分類】
F15B 1/14 20060101AFI20211125BHJP
【FI】
F15B1/14
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-532640(P2019-532640)
(86)(22)【出願日】2018年7月24日
(86)【国際出願番号】JP2018027726
(87)【国際公開番号】WO2019022080
(87)【国際公開日】20190131
【審査請求日】2021年1月19日
(31)【優先権主張番号】特願2017-143584(P2017-143584)
(32)【優先日】2017年7月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(72)【発明者】
【氏名】吉原 永朗
【審査官】
北村 一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−100853(JP,A)
【文献】
特開2003−161301(JP,A)
【文献】
実開昭58−149601(JP,U)
【文献】
特開2007−270872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 1/00−1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス封入口とオイルポートとを設けたアキュムレータハウジングと、
アキュムレータハウジングの内部に設けられ、前記アキュムレータハウジングの内部空間を前記ガス封入口に通じるガス封入室と前記オイルポートに通じるフルード室とに仕切る可撓性を有するダイアフラムと、
前記ガス封入口を閉塞して、前記ガス封入室内に封入したガスを密封する密栓と、
を備え、
前記ガス封入口内の前記密栓の内側に、前記ガス封入室に連絡する空間部が設けられており、
前記ダイアフラムは、端部を前記ガス封入口の側に向けて前記アキュムレータハウジングに固定される環状の外周取付部と、可撓部と、前記外周取付部と前記可撓部とを連絡する断面U字形を呈する環状の反転部とを樹脂又はゴムの積層構造で一体に有しているアキュムレータにおいて、
圧力変動に応じて変形する前記ダイアフラムが前記ガス封入口の開口周縁部に接触した状態で、前記ガス封入口内の前記空間部と前記ガス封入室とを連通させる連通路を備えることを特徴とするアキュムレータ。
【請求項2】
前記連通路は、前記ダイアフラムに設けられた凹凸形状によって生成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のアキュムレータ。
【請求項3】
前記連通路は、前記ガス封入口の開口周縁部に設けられた凹凸形状によって生成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のアキュムレータ。
【請求項4】
前記連通路は、前記ダイアフラムと前記ガス封入口の開口周縁部との双方に設けられた凹凸形状によって生成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のアキュムレータ。
【請求項5】
前記凹凸形状は、複数個が放射状に設けられている、
ことを特徴とする請求項2ないし4のいずれか一に記載のアキュムレータ。
【請求項6】
前記凹凸形状は、突起の形状を有している、
ことを特徴とする請求項2ないし4のいずれか一に記載のアキュムレータ。
【請求項7】
前記凹凸形状は、溝の形状を有している、
ことを特徴とする請求項2ないし4のいずれか一に記載のアキュムレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アキュムレータに係り、詳しくは、アキュムレータハウジングの内部に可撓性を備えるダイアフラムを設けたダイアフラム型アキュムレータに関する。本発明のアキュムレータは例えば、自動車用車載アキュムレータとして用いられる。
【背景技術】
【0002】
ダイアフラム型アキュムレータは、例えば
図4に示すように、アキュムレータハウジング21の内部に、可撓性を備えるダイアフラム41を設けている。ダイアフラム型アキュムレータ11のアキュムレータハウジング21は、ガス封入口22およびオイルポート23を設けている。ダイアフラム41は、アキュムレータハウジング21の内部空間をガス封入口22に通じるガス封入室24と、オイルポート23に通じるフルード室25とに仕切っている。
【0003】
ダイアフラム41は一般的に、樹脂またはゴムの積層構造を有しており、外周取付部42と、可撓部43と、ポペット取付部46とを一体に有している。外周取付部42は、アキュムレータハウジング21の側部内面に設けたダイアフラム保持部29に保持される。可撓部43は、アキュムレータハウジング21の内部の圧力変動に応じて変形する。ポペット取付部46は、可撓部43の平面中央に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−270872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図4に示すアキュムレータ11には、以下の点で改良の余地がある。
【0006】
ダイアフラム41は、アキュムレータハウジング21の内部に圧力変動が生じると、圧力均衡点を求めて変形する。フルード室25側の圧力(液圧)が極端に大きくなると、
図5に示すように、ダイアフラム41は、ガス封入口22の開口周縁部22aに接触する。ガス封入口22は、ガス封入後に密栓30で閉塞され、閉塞後も、密栓30の内側に空間部32を残す。
【0007】
ダイアフラム41は、ガス封入口22の開口周縁部22aに接触するとシール作用を発揮し、ガス封入口22に設けられた空間部32とガス封入室24との連通を遮断する。その結果、連通を遮断された空間部32とガス封入室24との間に差圧が発生し、大きな差圧が発生するとダイアフラム41が破損することがある。
【0008】
近年、アキュムレータ11は、高圧縮対応のために、球体ではなく、扁平化構造のアキュムレータハウジング21を用いることが多い。扁平化構造のアキュムレータハウジング21では特に、ダイアフラム41がガス封入口22の開口周縁部22aに密着しやすい。このためこの種のアキュムレータハウジング21では、差圧の発生によるダイアフラム41の破損を防止することが強く望まれる。
【0009】
本発明の課題は、ダイアフラムがガス封入口の開口周縁部に接触したときに、ダイアフラムが破損するのを防止することができるアキュムレータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ガス封入口とオイルポートとを設けたアキュムレータハウジングと、アキュムレータハウジングの内部に設けられ、前記アキュムレータハウジングの内部空間を前記ガス封入口に通じるガス封入室と前記オイルポートに通じるフルード室とに仕切る可撓性を有するダイアフラムと、前記ガス封入口を閉塞して、前記ガス封入室内に封入したガスを密封する密栓と、を備え、前記ガス封入口内の前記密栓の内側に、前記ガス封入室に連絡する空間部が設けられて
おり、前記ダイアフラムは、端部を前記ガス封入口の側に向けて前記アキュムレータハウジングに固定される環状の外周取付部と、可撓部と、前記外周取付部と前記可撓部とを連絡する断面U字形を呈する環状の反転部とを樹脂又はゴムの積層構造で一体に有しているアキュムレータにおいて、圧力変動に応
じて変形する前記ダイアフラムが前記ガス封入口の開口周縁部に接触した状態で、前記ガス封入口内の前記空間部と前記ガス封入室とを連通させる連通路を備える。
【発明の効果】
【0011】
ダイアフラムがガス封入口の開口周縁部に接触してもガス封入口内の空間部とガス封入室とは連通した状態に維持され、ガス封入口内の空間部とガス封入室との間に差圧が発生せず、差圧の発生によりダイアフラムが破損するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の一形態を示すアキュムレータの断面図。
【
図2】(A)はアキュムレータにおけるダイアフラムに設けられる突起を示す平面図、(B)はその断面図。
【
図3】アキュムレータの作動状態を示す要部断面図。
【
図4】背景技術として示すアキュムレータの断面図。
【
図5】アキュムレータの作動状態を示す要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、実施の一形態のアキュムレータ11の全体断面図を示している。アキュムレータ11は、アキュムレータハウジング21の内部に可撓性を備えるダイアフラム41を設けたダイアフラム型アキュムレータである。
【0014】
アキュムレータ11は、ガス封入口22およびオイルポート23を中心軸線上に設けたアキュムレータハウジング21を有している。アキュムレータハウジング21の内部には、ダイアフラム41が設けられている。ダイアフラム41は、アキュムレータハウジング21の内部空間を、ガス封入口22に通じるガス封入室(ガス室)24とオイルポート23に通じるフルード室(液室)25とに仕切る。
【0015】
アキュムレータハウジング21の内面は、金属部品の絞り加工によってシェル26を形成することから、断面円弧形の曲面27,28の組み合わせ形状を有している。アキュムレータハウジング21の最大内径部には、ダイアフラム41を保持するための断面L字のフック状を呈する環状のダイアフラム保持部(ホルダ)29が設けられている。ハウジング21内面に形成される曲面は、ガス封入口側の曲面27とオイルポート側の曲面28との組み合わせ形状を有している。曲面27は、ガス封入口22側からオイルポート23側へかけて内径寸法が徐々に拡大する向きに生成されている。曲面28は反対に、オイルポート23側からガス封入口22側へかけて内径寸法が徐々に拡大する向きに生成されている。オイルポート側の曲面28は、円筒面からの絞り加工によって形成されている。
【0016】
ガス封入口22はガス封入後、密栓30で閉塞され、外側にカバー31が被せられている。密栓30による閉塞後も、密栓30の内側には、空間部32が設けられている。
【0017】
ダイアフラム41は、樹脂またはゴムの積層構造を有している。ダイアフラム41は、環状の外周取付部42と、可撓部43と、断面略U字形を呈する環状の反転部44とを一体に有している。外周取付部42は、ダイアフラム保持部29に保持される。可撓部43は、アキュムレータハウジング21内部の圧力変動に応じて変形する。反転部44は、外周取付部42と可撓部43との間に設けられ、可撓部43と共に変形する。可撓部43は、その平面中央に、ダイアフラム41がオイルポート23の透孔にはみ出すのを抑制するポペット45を取り付けたポペット取付部46を設けている。ダイアフラム41は、ブラダとも称される。
【0018】
ポペット取付部46のガス封入室24側の面(図における上面)は、平面状に形成されるのが一般である。この面が平面状に形成された場合には上記したように、アキュムレータ11の作動時、フルード室25側の圧力(液圧)が極端に大きくなったときに、ポペット取付部46がガス封入口22の開口周縁部22aに接触してシール作用をなす。この場合、ガス封入口22による空間部32とガス封入室24との連通が遮断され、差圧を発生させることがある。
【0019】
本実施の形態のアキュムレータ11は、ダイアフラム41がガス封入口22の開口周縁部22aに接触した状態で、ガス封入口22による空間部32とガス封入室24とを連通させる連通路51を設けている。この連通路51は、ダイアフラム41に設けた凹凸形状、より詳細には突起52によって生成されている。
【0020】
図2(A)(B)に示すように、ダイアフラム41は、ポペット取付部46の平面上にリブ状を呈する突起52を複数(図では4等配)放射状に一体に形成している。互いに隣り合う突起52間の空間は、ガス封入口22による空間部32とガス封入室24とを連通させる連通路51を構成する。
【0021】
作用として、
図3に示すように、ダイアフラム41がガス封入口22の開口周縁部22aに接触したとき、連通路51は、ガス封入口22による空間部32とガス封入室24とを連通させる。このためガス封入口22による空間部32とガス封入室24とは、ダイアフラム41がガス封入口22の開口周縁部22aに接触しても、連通したままの状態を維持する。その結果ガス封入口22による空間部32とガス封入室24との間に差圧が発生するのを抑制することでき、差圧の発生によりダイアフラム41が破損するのを防止することができる。このような作用を奏するアキュムレータ11は、近年におけるハウジング扁平化構造にも対応することができる。
【0022】
別の実施の形態として、凹凸形状として設けられた突起52は、ガス封入口22の開口周縁部22aに設けても良く、ダイアフラム41およびガス封入口22の開口周縁部22aの双方に設けても良い。
【0023】
さらに別の実施の形態として、凹凸形状は、突起52の代わりに、溝(図示せず)であっても良い。
【符号の説明】
【0024】
11 アキュムレータ
21 アキュムレータハウジング
22 ガス封入口
22a 開口周縁部
23 オイルポート
24 ガス封入室
25 フルード室
26 シェル
27,28 曲面
29 ダイアフラム保持部
30 密栓
31 カバー
32 空間部
41 ダイアフラム
42 外周取付部
43 可撓部
44 反転部
45 ポペット
46 ポペット取付部
51 連通路
52 突起