特許第6979089号(P6979089)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979089
(24)【登録日】2021年11月16日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】加速度信号によるシートの占有の検出
(51)【国際特許分類】
   G01G 19/44 20060101AFI20211125BHJP
   G01G 19/52 20060101ALI20211125BHJP
   G01G 3/16 20060101ALI20211125BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20211125BHJP
【FI】
   G01G19/44 Z
   G01G19/52 F
   G01G3/16
   B60N2/90
【請求項の数】6
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-10689(P2020-10689)
(22)【出願日】2020年1月27日
(65)【公開番号】特開2020-144106(P2020-144106A)
(43)【公開日】2020年9月10日
【審査請求日】2020年5月26日
(31)【優先権主張番号】10 2019 102 102.2
(32)【優先日】2019年1月29日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512112699
【氏名又は名称】グラマー アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ローランド ユーベラッカー
(72)【発明者】
【氏名】フーベルト ヴィットマン
(72)【発明者】
【氏名】トビアス シュタール
【審査官】 谷垣 圭二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−032312(JP,A)
【文献】 独国実用新案第202018104878(DE,U1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0061102(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G 19/44−19/48
G01G 19/52
G01G 19/12
G01G 3/16
B60N 2/90
B60R 21/015
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部(2)と少なくとも1つのサスペンションダンパシステム(5)とを備える運転者(F)用の車両シート(1)と、
前記上部(2)に配置され、時間(t)の関数としての前記上部(2)の加速度(a)の特性(a(t))を検出するように設計された加速度センサ(10)と
を含んでおり、
前記加速度(a)の前記特性(a(t))の評価を生成し、随意により信号を上位の制御ユニット(CU)へと送信するように設計された評価ユニット(11)を備えている、シートの占有を検出するためのシステム(S)であって、
前記評価ユニット(11)は、前記評価を、前記車両シート(1)の占有状態(J1)および非占有状態(J2)を含むグループから選択されるいくつかの状態(J1、J2)のうちの1つに割り当てるようにさらに設計されており、
前記評価ユニット(11)は、前記評価を、前記運転者(F)の前記車両シート(1)への着席(V1)および前記車両シート(1)からの離席(V2)を含むグループから選択されるいくつかの過程(V1、V2)のうちの1つに割り当てるようにさらに構成されている、ことを特徴とするシステム(S)。
【請求項2】
前記評価は、前記加速度(a)の前記特性の振幅スペクトル(a(f))を含み、前記評価ユニット(11)は、前記振幅スペクトル(ai(f))を少なくとも1つの時間において先行する振幅スペクトル(ai−1(f))および/または少なくとも1つの所定の振幅スペクトル(a0(f))と比較するようにさらに設計されている、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム(S)。
【請求項3】
前記評価ユニット(11)は、前記割り出された振幅スペクトル(a(f))の最大ピーク(amax)に割り当てることができる第1の周波数(f1)と、前記比較される振幅スペクトル(a(f))の最大ピーク(amax)に割り当てることができる第2の周波数(f2)との間のずれを検出するようにさらに設計されている、ことを特徴とする請求項に記載のシステム(S)。
【請求項4】
前記評価ユニット(11)は、ピークの数(n)および/または該ピークに割り当てることができる周波数について、前記割り出された振幅スペクトル(a(f))と前記比較される振幅スペクトル(a(f))との間のずれを検出するようにさらに構成されている、ことを特徴とする請求項またはに記載のシステム(S)。
【請求項5】
前記評価ユニット(11)は、前記加速度(a)の前記特性(ai(t))を評価して、少なくとも1つの先行の特性(ai−1(t))および/または少なくとも1つの所定の特性(a0(t))と比較するようにさらに構成されている、ことを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のシステム(S)。
【請求項6】
上部(2)と少なくとも1つのサスペンションダンパシステム(5)とを備える運転者(F)用の車両シート(1)と、前記上部(2)に配置された加速度センサ(10)と、評価ユニット(11)とを備えるシステム(S)において、シートの占有を検出するための方法(100)であって、
・前記加速度センサ(10)によって時間(t)の関数としての前記上部(2)の加速度(a)の特性(a(t))を検出するステップ(101)と、
・前記評価ユニット(11)によって前記加速度(a)の前記特性(a(t))の評価(a’)を生成するステップ(102)と、
・前記評価(a’)を時系列において先行する特性(a(t))の評価(a−1’)または所定の評価(a0’)と比較するステップ(103)と、
・前記評価(a’)を、前記運転者(F)の前記車両シート(1)への着席(V1)および前記車両シート(1)からの離席(V2)を含むグループから選択されるいくつかの過程(V1、V2)のうちの1つに割り当て(104)、あるいは前記評価(a’)を、前記車両シート(1)の占有状態(J1)および非占有状態(J2)を含むグループから選択されるいくつかの状態(J1、J2)のうちの1つに割り当てるステップ(105)と、
・予め定めることができる終了基準までステップ(101)〜(105)を繰り返すステップ(106)と
を含む方法(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの占有を検出するためのシステムであって、上部と少なくとも1つのサスペンションダンパシステムとを有する運転者用の車両シートを含んでおり、加速度センサが、前記上部に配置され、検出すべき時間の関数としての前記上部の加速度の特性を割り出すように設計されており、前記加速度の前記特性の評価を生成し、随意により信号を上位の制御ユニットへと送信するように設計された評価ユニットが設けられている、システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両の床、下部、および/または車両の直下の地面に対する車両シートの上部の振動が、車両シートおよび/または該当の車両が動作しているときに、ほとんど常に発生する。これらの振動は、例えば、車両に属するコンポーネント(例えば、エンジン)の振動および車両の直下の地面の状態(例えば、くぼみ)によって影響される。簡単にするために、以下では、車両シートの高さ方向(z方向)の一軸の加速度および振動のみを考慮するが、根底にある考え方は、多軸の振動プロセスにも同様に当てはまる。
【0003】
また、シートが占有されていない場合に、車両あるいは車両に配置されたアクチュエータまたはアセンブリを作動させず、あるいはスタンバイ状態に切り替えるように要求する安全規則が存在する。そのようなアセンブリは、例えば、コンバインハーベスタの刈り取り機である。この背景は、シートが占有されていない場合、運転者がメンテナンス作業を行うために依然として動作中のモジュールに容認できないほどに接近している可能性があり、怪我のリスクがきわめて高いという懸念である。例えば、刈り取り機が依然として動作しているときに、運転者が怪我をする可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、とりわけ怪我のリスクを最小限に抑えるために、シート占有状態の自動検出を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、シートの占有を検出するためのシステムであって、
上部と少なくとも1つのサスペンションダンパシステムとを有する運転者用の車両シートを含んでおり、
加速度センサが、前記上部に配置され、時間の関数としての前記上部の加速度の特性を検出するように設計されており、
前記加速度の前記特性の評価を生成し、随意により信号を上位の制御ユニットへと送信するように構成された評価ユニットが設けられ、
前記評価ユニットは、前記評価を前記車両シートの占有状態および非占有状態を含むグループから選択されるいくつかの状態のうちの1つに関連付けるようにさらに構成されている、システムによって達成される。
【0006】
本発明は、例えば、古典的にスプリング式であり、例えば上部が下部に対して弾性的に取り付けられている車両シートに使用することが可能である。例えば、上部が下部に対して弾性的には支持されていない車両シートにも使用可能である。とくに明記しない限り、以下の説明は両方の場合に当てはまる。
【0007】
車両シートは、例えば加速度センサの下方にサスペンションダンパシステムを有する。古典的なスプリング式シートの場合、これは、例えば、少なくとも1つのばねおよび/または少なくとも1つのダンパを好ましくは上部と下部との間に配置して備えるサスペンションユニットによって形成され、このサスペンションダンパシステムが、シザー型フレームによって支持される。上部が下部に対して弾性的には支持されていないシートにおいては、このサスペンションダンパ要素が、例えば、布張り部分および/または布張り部分の発泡体によって形成される。
【0008】
すべての車両シートで、加速度は、例えば上部の布張り部分の表面など、上部において測定される。
【0009】
時間につれての加速度の特性を、振動図と称することもできる。振動は、一般に、系の状態変数の時間的変動の繰り返しと称される。変動を、平均からのずれと理解すべきである。状態変数は、例えば、振動系のシステムのたわみ(経路)、速度、または加速度であってよい。
【0010】
この関連性で、シートが占有されているか否かをすでに判断することができる。シートが占有されていると認識された場合、例えば、対応する信号が評価ユニットから上位の制御ユニットへと送信され、さらには/あるいは機械のアクチュエータをそのまま動作させておくことができる。シートが占有されていないと認識された場合、例えば、対応する信号が上位の制御ユニットへと送信され、制御ユニットが機械のアクチュエータをオフにすることができる。これにより、運転者の安全性が向上する。
【0011】
これは、振動図の基になるパラメータが、シートの振動状態の特性であるという事実を利用している。
【0012】
周期的な振動は、それらの関数値が一定の間隔で繰り返されるという特性を有する。同じ関数値の出現間隔は、周期と呼ばれる。例えば、加速度が周期的に振動する場合、一周期の時間の後に同じ加速度値に再び到達する。周期Tの逆数1/Tが、周波数fである(単位はヘルツまたはHzであり、1Hz=1/sである)。発生する最大変動は、振幅Aと呼ばれる。
【0013】
占有されていない車両シートの場合(ケース2)、例えば、車両のエンジンが動作しているときに、これによって引き起こされる振動が、サスペンションによって減衰されないシートの上部へと導入されることを観測することができる。シートは、特定の周波数f2および振幅A2で周期的に振動する。シートが運転者によって占有されている場合(ケース1)、簡略化されたやり方で、シートが振幅A1および周期的な周波数f1で振動すると仮定することができる。運転者が自身の質量によって振動を減衰させ、したがって振動の振幅が小さくなる(例えば、A1がA2よりも小さくなる)と考えられる。また、周波数も低下し、f1がf2よりも小さくなると考えられる。
【0014】
次に、非生物の質量がシートに置かれた場合(ケース3)、簡略化されたやり方で、シートが振幅A3および周期的な周波数f3で振動すると仮定することができる。非生物の質量が振動を減衰させ、したがってケース2と比較して振動の振幅が小さくなる(例えば、A3がA2よりも小さくなる)と考えられる。また、周波数も低下し、f3がf2よりも小さくなると考えられる。しかしながら、例えば約20kgである箱の質量は、運転者の質量よりも小さいため、ケース3における振幅の減少および周波数の低下は、ケース1よりも小さいと考えられる。したがって、A1<A3<A2およびf1<f3<f2が当てはまる。
【0015】
同時に、運転者の挙動は、非生物の質量の挙動とは異なると考えられる。とくには、もたらされた振動は、運転者の手足および筋肉によって減衰させられる。さらに、運転者は、ハンドルまたは腕支持面に支えられる可能性があり、これにより、振動挙動における運転者の質量の影響が小さくなる。さらに、運転者が急な動作を行う可能性があり、これが振動図に急な加速度として反映される。
【0016】
したがって、非生物の質量の振動と人間である運転者の振動とは、両者の重量が同じでも異なると考えられる。
【0017】
例えば、評価は、加速度の特性の振幅スペクトルを含み、評価ユニットは、振幅スペクトルを少なくとも1つの時間において先行する振幅スペクトルおよび/または少なくとも1つの所定の振幅スペクトルと比較するようにさらに設計される。
【0018】
とくには、「評価」という用語は、振動図a(t)に基づく評価および/または関連の振幅スペクトルa(f)に基づく評価を意味すると理解されるべきである。
【0019】
ここで、振動の振幅スペクトルから高調波振動成分を比較的良好に読み取ることができるという事実が利用される。この目的のために、振幅スペクトル(周波数スペクトルとも呼ばれる)を、振動の特性の評価として、例えばフーリエ変換または高速フーリエ変換(FFT、Fast Fourier Transformation)によって決定することができる。振動信号は、基本的に、種々の個別の信号の重ね合わせとして解釈される。したがって、結果として得られる振幅スペクトルは、周波数に対してプロットされ、例えばさまざまなスペクトルライン(ピーク)を有し、それぞれのスペクトルラインが、対象期間内の個々の信号の振幅および周波数の程度を表す。FFTの基礎としての数学は、先行技術から知られており、本発明の範囲においてさらに詳細に考慮される必要はない。
【0020】
最も単純な場合、単純な正弦波の振幅スペクトルは、ただ1つのピークまたは隣接するより小さいピークを持つ最大ピークを有する。
【0021】
例えば、システムは、データメモリをさらに含む。例えば、データメモリには、波形a0(t)およびa60(t)ならびに関連の振幅スペクトルa0(f)およびa60(f)が格納され、それぞれの場合において、添え字0は非占有のシートであり、添え字60は60kgの運転者が占有しているシートである。
【0022】
また、データメモリが、振動a(t)、非占有のシートの振幅の目標値A00、および60kgの運転者によって占有された座席の振幅の目標値A60に関して、これらの所定の振動特性および関連の振幅スペクトルからすでに分析された種々の特性値を有してもよい。さらに、振幅スペクトルa(f)に関して、データメモリは、非占有のシートの周波数の目標値f00と、体重60kgの運転者によって占有されたシートの周波数の目標値f60とを含む。仕様a(t)およびa(f)のピークの数およびそれらの間隔(a(t)における時間間隔またはa(f)における周波数間隔)を保存することも可能である。
【0023】
シートの占有または非占有を判断するために、評価ユニットは、例えば、特定の時間期間における加速度a(t)の最大ふれ(振幅A’)をデータメモリに保存された振幅の以前の値または公称値と比較するa(t)の第1の評価を実行することができる。評価ユニットが振幅A’と目標値A00とが同じであると判断した場合、シートは占有されていないと考えられる。評価ユニットが振幅A’と目標値A60が同じであると判断した場合、シートは占有されていると考えられる。
【0024】
さらに、評価ユニットは、振幅スペクトルの比較を提供するa(t)の第2の評価を実行することができる。最大ピークおよび関連の周波数が考慮される。したがって、第2の評価は、例えば、特定の時間期間内の最大ピークに属する振幅スペクトルa(f)の周波数(f’)を、データメモリに格納された周波数の以前の値または目標値と比較する。評価ユニットが周波数f’と目標値f00とが同じであると判断した場合、シートは占有されていないと考えられる。評価ユニットが周波数f’と目標値f60とが同じであると判断した場合、シートは占有されていると考えられる。
【0025】
第1および/または第2の評価において、2つの異なる時間t1およびt2の振動図の比較を実行することも可能である。例えば、t1=0であり、t2=10sであるとする。これらの2つの図の間で上述した振幅および/または周波数の比較を実行することも可能である。
【0026】
当然ながら、第1の評価および第2の評価の両方について、例えばA’の実際の値が(1−p)*A00〜(1+p)*A00の範囲内であるならば評価ユニットの部分において条件A’=A00が認められるように、比較を特定の許容範囲を伴って行うことを可能にしてもよい。例えば、pは0.01〜0.1の範囲内であり、例えばp=0.05である。
【0027】
したがって、上述のように、好ましい実施形態によれば、評価ユニットが、割り出された振幅スペクトルの最大ピークに割り当てることができる第1の周波数と、比較される振幅スペクトルの最大ピークに割り当てることができる第2の周波数との間のずれを判断するようにさらに構成されると、好都合である。これは、例えば、非占有のシートと占有されているシートとを区別する場合に有用である。
【0028】
シートの占有の検出をさらに速くするために、本システムの好ましい変形例によれば、評価ユニットが、評価を運転者の車両シートへの着席および車両シートからの離席を含むグループから選択されるいくつかの過程のうちの1つに割り当てるようにさらに構成される。
【0029】
このような過程が生じているか否かを割り当てることにより、シートが現時点において占有されているか、あるいは占有されていないのかを結論付けることができる。したがって、シートの状態をここからも導き出すことができる。
【0030】
既知のように、着席および離席は強い振動を発生させるため、このような振動の最大振幅は、非占有またはすでに占有されているシート、すなわち定常状態のシートの最大振幅とは大きく異なる。
【0031】
さらに、評価ユニットが、ピークの数およびこれらのピークに割り当てることができる周波数について、割り出された振幅スペクトルと比較される振幅スペクトルとの間のずれを明らかにするようにさらに設計されると、好都合である。これは、「着席」過程および「離席」過程のうちの少なくとも一方を車両シートの「占有状態」および「非占有状態」のうちの少なくとも一方から区別するうえでとくに有用であり、なぜならば、これら2つの過程の各々は、例えば異なる周波数にいくつかのより小さなピークを示す振幅スペクトルを呈し、これは1つのピークまたは周囲のピークを有する最大ピークで明確に区別できるからである。したがって、評価ユニットは、例えば、現在の振幅スペクトルのピークの数n’が数n0(非占有のシートの振幅スペクトル)よりも大きく、かつ数n60(体重60kgの運転者によって占有されたシートの振幅スペクトル)よりも大きい場合、2つの過程のいずれかが生じていると考える。
【0032】
したがって、評価ユニットが、加速度の特性を評価して、少なくとも1つの以前の特性および/または少なくとも1つの所定の特性と比較するようにさらに設計されると、好都合である。この曲線a(t)から、さまざまな状態を判断することができる。例えば、特定の時間期間内の振幅の最大値を、さまざまな図において比較することができ、あるいは(上述の手順と同様に)目標値と比較することができる。また、ピークの値に応じてピークの時間間隔に基づいて2つの過程「着席」および「離席」を区別することも可能であり、例えば、「着席」過程の図a(t)においては、いくつかの小さなピークの前に最大ピークが発生すると考えられる。また、「離席」過程の図a(t)においては、いくつかの小さなピークの前に最大ピークが発生すると考えられる。
【0033】
上述の割り当てを容易にするために、評価は、特性a(t)の包絡線の作成を含むこともできる。次に、この包絡線を、上述のように指定の包絡線または以前の包絡線と比較することができる。包絡線は、「エンベロープ」とも呼ばれ、振動の場合の振幅の特性を表す。例えば、振動a(t)の最大値を表す振幅における特性a(t)の値が、ポイントとしてマークされる(最初は最小値は無視される)。次に、これらのポイントが次々に接続され、包絡線がもたらされる。包絡線を、例えば、その特性(特定の時間期間において低下し、例えば「着席」時に低下し、「離席」時に増加する)に関して比較することができ、あるいはその安定性(上述の状態において安定であり、上述の過程において安定でない)に関して比較することができる。ここで、「連続性」という表現は、その数学的解釈に関して解釈されるべきであり、明確に表現すると、関数は「ジャンプ」しない場合に連続である。
【0034】
本発明の目的は、上部と少なくとも1つのサスペンションダンパシステムとを備える運転者用の車両シートと、前記上部に配置された加速度センサと、評価ユニットとを備えるシステムにおいて、シートの占有を検出するための方法であって、
・前記加速度センサによって時間の関数としての前記上部の加速度の特性を検出するステップ(101)と、
・前記評価ユニットによって前記加速度の前記特性の評価を生成するステップ(102)と、
・前記評価を以前の特性の評価または所定の評価と比較するステップ(103)と、
・前記評価を、前記運転者の前記車両シートへの着席および前記車両シートからの離席を含むグループから選択される複数の過程のうちの1つに割り当て(104)、あるいは前記評価を、前記車両シートの占有状態および非占有状態を含むグループから選択される複数の状態のうちの1つに割り当てるステップ(105)と、
・予め定めることができる終了基準までステップ(101)〜(105)を繰り返すステップ(106)と
を含む方法によっても達成される。
【0035】
本発明による方法は、とくには、システムの請求項のうちの1つに記載のシステムに適用される。本発明によるシステムに関連して説明される例示の実施形態およびそれらの利点はすべて、本発明による方法にも好都合に当てはまる。
【0036】
用語「座る」および「着席する」の各々が、運転者がシートに座る同じ過程を表していることに注意すべきである。また、用語「離席する」および「立ち上がる」の各々が、運転者がシートを離れる同じ過程を表していることに注意すべきである。
【0037】
本発明のさらなる利点、目標、および特徴が、本発明による車両シートの種々の実施形態を例として図示および説明する添付の図面および以下の説明を参照して解説される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1a】車両シートとアクチュエータとを備える車両の概略図を示している。
図1b】本発明によるシステムの概略図を示している。
図2】特性a(t)の例を示している。
図3a】過程「着席」の特性a(t)を示している。
図3b図3aからの特性のうちの1つの図を関連の包絡線とともに示している。
図3c】過程「着席」の特性a(t)を示している。
図4a】「離席」過程の特性a(t)を示している。
図4b図4aからの特性のうちの1つの図を関連の包絡線とともに示している。
図4c】「離席」過程の特性a(t)を示している。
図5図2の特性からもたらされる振幅スペクトルa(f)を示している。
図6】本発明による方法の好ましいシーケンスを示している。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1aによれば、車両シート1とアクチュエータ20とを備えた車両Mが、きわめて簡略化された様相で示されている。例えば、車両Mは、コンバインハーベスタであり、アクチュエータ20は、関連の刈り取り機である。
【0040】
図1bは、上部(2)とサスペンションダンパシステム(5)とを備えた運転者(F)用の車両シート(1)を含むシート占有認識システム(S)を示している。この場合に、上部(2)は、例えばサスペンションダンパシステム(5)のサスペンション要素および減衰要素(図示せず)によって支持されたシザー型フレーム4によって車両シート(1)の下部(3)に対して弾性的に支持されている。また、シザー型フレーム(4)を省き、上部(2)の布張り部分(6)によってサスペンションダンパシステム(5)を形成することも、考えられるであろう。
【0041】
説明の目的で、軸1x(シートの長さ方向)、1y(シートの幅方向)、および1z(シートの高さ方向)によるデカルト座標系が示されている。
【0042】
加速度センサ(10)が、上部2(この場合には、上部2の布張り部分(6))に配置され、時間(t)の関数としての上部(2)の加速度(a)の特性を検出するように設計されている。得られる構成の例が、図30に示されている。この場合に、この加速度センサ(10)は、検出された特性を評価ユニット(11)へと送信する。
【0043】
この場合、評価ユニット(11)は、加速度(a)の特性(a(t))の評価(a’)を生成し、上位レベルの制御ユニット(CU)へと信号を送信するように設計されている。この場合、評価は、振幅スペクトルa(f)として設計され、図40に例として示されている。
【0044】
評価ユニット(11)は、今や評価(a’)をいくつかの状態(J1、J2)のうちの1つに割り当てるように設計され、状態(J1、J2)は、車両シート(1)の占有状態(J1)および非占有状態(J2)を含むグループから選択される。例えば、評価ユニットは、この場合に、車両シート1が質量60kgの運転者Fによって占有されていると認識する。
【0045】
評価ユニット11からの信号に基づいて、制御ユニット(CU)は、アクチュエータ20の状態を変更する信号をアクチュエータ20に送信するか否かを決定することができる。この場合に、運転者Fは車両シート1に位置しており、したがってアクチュエータ20の危険ゾーンの外側に位置しているため、例えば、アクチュエータ20への制御ユニット(CU)からの信号は存在せず、あるいはアクチュエータ20を作動させることができる信号が存在する。
【0046】
次に、図2が、評価後に状態J2またはJ1ならびに過程V1に割り当てることができる3つの時間的に異なる部分を有する振動特性a(t)を示している。例えば、第1の部分は、状態J2、すなわち非占有の車両シートに割り当てられる。シート1は、基本的に、特定の周波数f2および振幅A2で周期的に振動している。第3の部分においては、シート1は運転者Fによって占有されており、したがってシート1は、振幅A1および周期的な周波数f1で振動する。ここで、図からすぐに読み取ることができるとおり、A1がA2よりも小さく、f1がf2よりも小さいことが重要である(ここで、評価について図5も参照されたい)。
【0047】
ここで、中央部分は、最大のピーク40を有し、時系列にていくつかのより小さなピーク41〜44を有する。この特定のパターンに基づいて、評価ユニット11は、今やこの中央部分を過程V1、すなわち運転者Fのシート1への着席に割り当てることができる。
【0048】
次に、図3aおよび図4aが、着席時(図3a)または離席時(図4a)にそれぞれ生じて検出されるいくつかの特性ai(t)およびaj(t)を示している。図3bおよび図4bはそれぞれ、これらの特性ai(t)およびaj(t)のa1(t)、a10(t)を示し、それらの最大値(「正の振幅」)についての包絡線h1およびh3ならびに最小値(「負の振幅」)についての包絡線h3およびh4を示している。
【0049】
過程V1がはるかに「落ち着かない」振動特性をもたらし、すなわち運転者Fの質量が長い時間にわたって振動し、したがって特定の時間区間の後でなければ定常状態に達しないことに注意すべきである。正のピーク40、42、44の互いの差および負のピーク41、43、45の互いの差が、比較的大きい。2つの包絡線h1およびh2は、均等に下降または上昇するようには設計されていない。
【0050】
また、過程V2がはるかに「滑らかな」振動曲線をもたらし、すなわち運転者Fの質量がシート1を離れるとすぐに、シートが時間的にすぐに状態J2へと変化することに注意すべきである。正のピーク50、52、54、56、58、60の互いの差および負のピーク51、53、55、57、59の互いの差が、より小さい。最大のピーク50およびピーク51から、2つの包絡線h3およびh4は基本的に下降(h3)または上昇(h4)している。
【0051】
図3cおよび図4cが、やはり過程V1(図3c)およびV2(図4c)の特性を示している。
【0052】
FFTを使用して、図2による曲線の特性から振幅スペクトルa(f)(部分V1は考慮せず)を計算し、図5に従って表した。いくつかのピークが2つの周波数f1およびf2の周囲に集まっていることを見て取ることができる。これも、非占有状態のシートの周波数f2が占有状態のシートの周波数f1から大きく異なることを明確に示しており、したがって評価ユニット11による両者の比較が、状態の割り当ての決定を行うための根拠として機能することができる。
【0053】
図6が、上部(2)および少なくとも1つのサスペンションダンパシステム(5)を備える運転者(F)用の車両シート(1)と、上部(2)に配置された加速度センサ(10)と、評価ユニット(11)とを含むシステム(S)においてシートの占有を検出するための本発明による方法100の好ましい特徴を示している。エンジンの始動後に、図示の方法100の実施形態は、以下のステップ、すなわち
・加速度センサ(10)によって時間(t)の関数としての上部(2)の加速度(a)の特性(a(t))を検出するステップ(101)と、
・評価ユニット(11)によって加速度(a)の特性(a(t))の評価(a’)を生成するステップ(102)と、
・評価(a’)を時系列において先行する特性(a(t))の評価(a−1’)または所定の評価(a0’)と比較するステップ(103)と、
・評価(a’)を、運転者(F)の車両シート(1)への着席(V1)および車両シート(1)からの離席(V2)を含むグループから選択されるいくつかの過程(V1、V2)のうちの1つに割り当て(104)、あるいは評価(a’)を、車両シート(1)の占有状態(J1)および非占有状態(J2)を含むグループから選択されるいくつかの状態(J1、J2)のうちの1つに割り当てるステップ(105)と、
・予め定めることができる終了基準までステップ(101)〜(105)を繰り返すステップ(106)と
を含む。
【0054】
この場合に、まず、離席V2が検出されたか否かがチェックされる。いいえの場合、着席V1が検出されたか否かがチェックされる。いいえの場合、状態「占有J1」が認識されたか否かがチェックされる。あるいは、ステップ105において、「非占有J2」状態が認識された否かをチェックしてもよい。
【0055】
また、「離席」の判断の後に、例えばくぼみを乗り越える走行が誤って離席の過程V2に割り当てられることがないように保証する目的のステップ(107)が示されている。このステップ(107)は、「シート占有、J1」が認識されたか否かをチェックする。いいえの場合、以前の仮定は正しく、シートは実際に占有されていない。はいの場合、割り当てが誤っていたと考えられ、状態J1であると判断される。
【0056】
上記で説明した実施形態が、本発明によるシステムSおよび本発明による方法100の初期構成にすぎないことを理解すべきである。この点において、本発明の構成は、この実施形態に限定されない。
【0057】
出願書類に開示されるすべての特徴が、単独または組み合わせにて先行技術に対して新規である限りにおいて、本発明に不可欠であると主張される。
【符号の説明】
【0058】
1 車両シート
1x シートの長さ方向
1y シートの幅方向
1z シートの高さ方向
2 上部
3 下部
4 シザー型フレーム
5 サスペンションダンパシステム
6 布張り部分
10 加速度センサ
11 評価ユニット
20 アクチュエータ
30,40 図
40−44,50−60 ピーク
100 方法
101−107 ステップ
a,a(t),ai(t),aj(t),a1(t),a10(t) 加速度
a’ 評価
CU 制御ユニット
f 周波数
F 運転者
h1−h4 包絡線
J1,J2 状態
M 車両
S システム
t 時間
図1a
図1b
図2
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
図4c
図5
図6