【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、とりわけ怪我のリスクを最小限に抑えるために、シート占有状態の自動検出を可能にすることである。
【0006】
この目的は、シートの占有を検出するためのシステムであって、
上部と少なくとも1つのサスペンションダンパシステムとを備える運転者用の車両シートを備えており、
加速度センサが前記上部に配置され、時間の関数としての前記上部の加速度の特性を記録するように設計されており、
前記加速度の前記特性の評価を生成し、随意により信号を上位の制御ユニットへと送信するように設計された評価ユニットが設けられ、この評価ユニットが、前記評価を、現時点において前記車両シートを占有している物体の質量の値に割り当てるようにさらに設計されている、システムによって達成される。
【0007】
本発明は、例えば、古典的にスプリング式であり、例えば上部が下部に対して弾性的に取り付けられている車両シートに使用することが可能である。例えば、上部が下部に対して弾性的には取り付けられていない車両シートにおいても使用可能である。とくに明記しない限り、以下の説明は両方の場合に当てはまる。
【0008】
車両シートは、例えば加速度センサの下方にサスペンションダンパシステムを有する。古典的なスプリング式シートの場合、これは、例えば、少なくとも1つのばねおよび/または少なくとも1つのダンパを好ましくは上部と下部との間に配置して備えるサスペンションユニットによって形成され、このスプリングダンパシステムが、シザー型フレームによって支持される。上部が下部に対して弾性的には支持されていないシートの場合、このサスペンションダンパ要素が、例えば、クッション部分および/または布張り部分の発泡体によって形成される。
【0009】
すべての車両シートで、加速度は、例えば上部の布張り部分の表面など、上部において測定される。
【0010】
時間につれての加速度の特性を、振動図と称することもできる。振動は、一般に、系の状態変数の時間的変動の繰り返しと称される。変動を、平均からのずれと理解すべきである。状態変数は、例えば、振動系のシステムのたわみ(経路)、速度、または加速度であってよい。
【0011】
この割り当てにより、シートが占有されているか否かをすでに判断することができる。シートが占有されていると認識された場合、例えば、対応する信号が評価ユニットから上位の制御ユニットへと送信され、さらには/あるいは機械のアクチュエータをそのまま動作させておくことができる。シートが占有されていないと認識された場合、例えば、対応する信号が上位の制御ユニットへと送信され、制御ユニットが機械のアクチュエータをオフにすることができる。これにより、運転者の安全性が向上する。
【0012】
これは、振動図の基になるパラメータが、シートの振動状態の特性であるという事実を利用している。
【0013】
周期的な振動は、それらの関数値が一定の間隔で繰り返されるという特性を有する。同じ関数値の出現間隔は、周期と呼ばれる。例えば、加速度が周期的に振動する場合、一周期の時間の後に同じ加速度値に再び到達する。周期Tの逆数1/Tが、周波数fである(単位はヘルツまたはHzであり、1Hz=1/sである)。発生する最大変動は、振幅Aと呼ばれる。
【0014】
占有されていない車両シートの場合(ケース2)、例えば、車両のエンジンが動作しているときに、エンジンに由来する結果としての振動が、サスペンションによって減衰されないシートの上部へと導入されることを観測することができる。シートは、特定の周波数f2および振幅A2で周期的に振動する。シートが運転者によって占有されている場合(ケース1)、簡略化されたやり方で、シートが振幅A1および周期的な周波数f1で振動すると仮定することができる。運転者が自身の質量によって振動を減衰させ、したがって振動の振幅が小さくなる(例えば、A1がA2よりも小さくなる)と考えられる。また、周波数も低下し、f1がf2よりも小さくなると考えられる。
【0015】
次に、非生物の質量がシートに置かれた場合(ケース3)、簡略化されたやり方で、シートが振幅A3および周期的な周波数f3で振動すると仮定することができる。非生物の質量が実際に振動を減衰させ、したがってケース2と比較して振動の振幅が小さくなる(例えば、A3がA2よりも小さくなる)と考えられる。また、周波数も低下し、f3がf2よりも小さくなると考えられる。しかしながら、例えば約20kgである箱の質量は、運転者の質量よりも小さいため、ケース3における振幅の減少および周波数の低下は、ケース1よりも小さいと考えられる。したがって、A1<A3<A2およびf1<f3<f2が当てはまる。
【0016】
同時に、運転者の挙動は、非生物の質量の挙動とは異なると考えられる。とくには、もたらされた振動は、運転者の手足および筋肉によって減衰させられる。さらに、運転者は、ハンドルまたはアームレスト表面を支えにする可能性があり、これにより、振動挙動における運転者の質量の影響が小さくなる。さらに、運転者が急な動作を行う可能性があり、これが振動図に急な加速度として反映される。
【0017】
したがって、非生物の質量の振動と人間である運転者の振動とは、両者の重量が同じでも異なると考えられる。これらの違いを、本発明によるシステムおよび本発明による方法によって好都合に検出することができ、したがって、ここでどの物体(運転者または非生物の質量)が車両シートを占有しているのかについても割り当てを行うことができる。
【0018】
例えば、評価は、加速度の特性の振幅スペクトルを含み、評価ユニットは、振幅スペクトルを少なくとも1つの時間において先行する振幅スペクトルおよび/または少なくとも1つの所定の振幅スペクトルと比較するようにさらに設計される。
【0019】
とくには、「評価」という用語は、振動図a(t)に基づく評価および/または関連の振幅スペクトルa(f)に基づく評価を意味すると理解されるべきである。
【0020】
ここで、振動の振幅スペクトルから高調波振動成分を比較的良好に読み取ることができるという事実が利用される。この目的のために、振幅スペクトル(周波数スペクトルとも呼ばれる)を、振動の特性の評価として、例えばフーリエ変換または高速フーリエ変換(FFT)によって決定することができる。振動信号は、基本的に、この場合には種々の個別の信号の重ね合わせとして解釈される。したがって、結果として得られる振幅スペクトルは、周波数に対してプロットされ、例えばさまざまなスペクトルライン(ピーク)を有し、それぞれのスペクトルラインが、対象期間内の個々の信号の振幅および周波数の程度を表す。FFTの基礎としての数学は、先行技術から知られており、本発明の範囲においてさらに詳細に考慮される必要はない。
【0021】
最も単純な場合、単純な正弦波の振幅スペクトルは、ただ1つのピークまたは隣接するより小さいピークを持つ最大ピークを有する。
【0022】
例えば、システムは、データストアをさらに含む。例えば、データメモリには、波形a0(t)、a20(t)、およびa60(t)、ならびに関連の振幅スペクトルa0(f)、a20(f)、およびa60(f)が格納され、添え字0は非占有のシートに関し、添え字20は20kgの非生物の質量によって占有されたシートに当てはまり、添え字60は60kgの運転者が占有しているシートに当てはまる。言うまでもなく、上述の質量の代わりに、他の質量の特性値を使用することも可能である。一般に、例えば、運転者が少なくとも50kgの質量を有すると仮定することができ、したがって対応する添え字50の特性値も賢明に格納および比較することができる。
【0023】
また、データメモリが、振動a(t)、非占有のシートの振幅の目標値A00、20kgの非生物の質量によって占有された座席の振幅の目標値A20、および60kgの運転者によって占有された座席の振幅の目標値A60に関して、これらの所定の振動特性および関連の振幅スペクトルからすでに分析された種々の特性値を有してもよい。さらに、振幅スペクトルa(f)に関して、データメモリは、非占有のシートの周波数の設定点f00と、非生物の質量によって占有されたシートの周波数の設定点f20と、60kgの運転者によって占有されたシートの周波数の設定点f60とを含む。仕様a(t)およびa(f)のピークの数およびそれらの間隔(a(t)における時間間隔またはa(f)における周波数間隔)を保存することも可能である。
【0024】
シートの占有または非占有を判断するために、評価ユニットは、例えば、特定の時間期間における加速度a(t)の最大ふれ(振幅A’)をデータメモリに保存された振幅の以前の値または目標値と比較するa(t)の第1の評価を実行することができる。評価ユニットが振幅A’と目標値A00とが同じであると判断した場合、シートは占有されていないと考えられる。評価ユニットが振幅A’と目標値A20とが同じであると判断した場合、シートは20kgの質量によって占有されていると考えられる。これら2つのケースでは、制御ユニットがアクチュエータをオフにすることができる。評価ユニットが振幅A’と目標値A60とが同じであると判断した場合、シートは運転者によって占有されていると考えられる。したがって、この場合には、制御ユニットは、アクチュエータをオフにすることを控えることができる。
【0025】
さらに、評価ユニットは、振幅スペクトルの比較を提供するa(t)の第2の評価を実行することができる。最大ピークおよび関連の周波数が考慮される。したがって、第2の評価においては、例えば、最大ピークに属する振幅スペクトルa(f)の周波数(f’)が、特定の時間期間におけるデータメモリに保存された以前の値または周波数設定点と比較される。評価ユニットが周波数f’と目標値f00とが同じであると判断した場合、シートは占有されていないと考えられる。評価ユニットが周波数f’と設定点f20とが同じであると判断した場合、シートは非生物の質量によって占有されていると考えられる。これら2つのケースでは、制御ユニットがアクチュエータをオフにすることができる。評価ユニットが周波数f’と設定点f60とが同じであると判断した場合、シートは運転者によって占有されていると考えられる。したがって、この場合には、制御ユニットは、アクチュエータをオフにすることを控えることができる。
【0026】
第1および/または第2の評価において、2つの異なる瞬間t1およびt2の振動図の比較を実行することも可能である。例えば、t1=0であり、t2=10sであるとする。これらの2つの図の間で上述した振幅および/または周波数の比較を実行することも可能である。
【0027】
当然ながら、第1の評価および第2の評価の両方について、例えばA’の実際の値が(1−p)*A00〜(1+p)*A00の範囲内であるならば評価ユニットによって条件A’=A00が認められるように、比較を特定の許容範囲を伴って行うことが可能である。例えば、pは0.01〜0.1の範囲内であり、例えばp=0.05である。
【0028】
したがって、上述のように、好ましい実施形態によれば、評価ユニットが、割り出された振幅スペクトルの最大ピークに割り当てることができる第1の周波数と、比較される振幅スペクトルの最大ピークに割り当てることができる第2の周波数との間のずれを判断するようにさらに構成されると、好都合である。これは、例えば、「シートが占有されていない」状態と、「シートが非生物の質量によって占有されている」状態と、「シートが運転者によって占有されている」状態との区別に有用である。
【0029】
したがって、評価ユニットが、加速度の特性を評価して、少なくとも1つの時間において先行する特性および/または少なくとも1つの所定の特性と比較するようにさらに設計されると、好都合である。この曲線からさまざまな声明を行うことができる。例えば、特定の時間期間内の振幅の最大値を、さまざまな図において比較することができ、あるいは(上述の手順と同様に)目標値と比較することができる。
【0030】
上述の割り当てを容易にするために、評価は、特性a(t)の包絡線の作成を含むこともできる。次に、このエンベロープを、上述のように指定の包絡線または以前の包絡線と比較することができる。包絡線は、「エンベロープ」とも呼ばれ、振動の場合の振幅の特性を表す。例えば、振動a(t)の最大値を表す振幅における特性a(t)の値が、ポイントとしてマークされる(最初は最小値は無視される)。次に、これらのポイントが次々に接続され、包絡線がもたらされる。包絡線を、例えば、その特性(例えば、「着席」時に所定の時間期間において低下し、「離席」時に増加する)に関して比較することができ、あるいはその連続性(上述の状態において安定であり、上述の過程において安定でない)に関して比較することができる。ここで、「連続性」という表現は、その数学的解釈に関して解釈されるべきであり、明確に表現すると、関数は「ジャンプ」しない場合に連続である。
【0031】
したがって、評価ユニットが、少なくとも1つの包絡線を加速度の特性に割り当て、少なくとも1つの包絡線の特性を評価するようにさらに設計されると、好都合である。
【0032】
ここでは、運転者が、多くの場合に、少なくとも長時間にわたっては、ただ1つの周波数を有する完全に周期的な引き起こすことがないという事実が使用され、むしろ反対に、対応する特性a(t)が、多くの場合に、運転者の動きに起因するより小さなピークまたはより大きなピークを有することが実務から知られている。しかしながら、非生物の質量はそのような動きをすることがなく、したがって包絡線はほぼ一定のままである。したがって、例えば、包絡線の勾配および/または連続性を検査することができる。勾配がゼロに等しい場合、ならびに/あるいは連続性が所定の時間期間にわたって保証される場合、シートは非生物の質量によって占有されていると考えられる。勾配がゼロでなく、もしくはほとんどゼロというわけではなく、さらには/あるいは所定の時間期間にわたって連続性が保証されず、もしくはほとんど保証されない場合、シートは運転者によって占有されていると考えられる。この検査を、周波数の比較と並行して行うことができ、あるいは周波数の比較の代わりとして行うことができる。
【0033】
本発明の目的は、上部と少なくとも1つのサスペンションダンパシステムとを備える運転者用の車両シートと、前記上部に配置された加速度センサと、評価ユニットとを備えるシステムにおいて、シートの占有を検出するための方法であって、
・前記加速度センサによって時間の関数としての前記上部の加速度の特性を検出するステップ(101)と、
・前記評価ユニットによって前記加速度の前記特性の評価を生成するステップ(102)と、
・前記評価を時間において先行する特性の評価または所定の評価と比較するステップ(103)と、
・前記評価を、占有状態と、前記車両シートの非占有状態と、前記車両シートが非生物の質量によって占有されている状態とを含むグループから選択される複数の状態のうちの1つに割り当てるステップ(104)と、
・予め定めることができる終了基準に達するまでステップ(101)〜(104)を繰り返すステップ(105)と
を含む方法によっても達成される。
【0034】
本発明による方法は、とくには、システムの請求項のうちの1つに記載のシステムに適用される。本発明によるシステムに関連して説明される例示の実施形態およびそれらの利点はすべて、本発明による方法にも好都合に当てはまる。
【0035】
用語「座る」および「着席する」の各々が、運転者がシートに座る同じ過程を表していることに注意すべきである。また、用語「離席する」および「立ち上がる」の各々が、運転者がシートを離れる同じ過程を表していることに注意すべきである。
【0036】
本発明のさらなる利点、目標、および特徴が、本発明による車両シートの種々の実施形態を例として図示および説明する添付の図面および以下の説明を参照して解説される。