特許第6979100号(P6979100)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979100
(24)【登録日】2021年11月16日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】鍼治療用補助具
(51)【国際特許分類】
   A61H 39/08 20060101AFI20211125BHJP
【FI】
   A61H39/08 H
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-53319(P2020-53319)
(22)【出願日】2020年3月24日
(65)【公開番号】特開2020-116403(P2020-116403A)
(43)【公開日】2020年8月6日
【審査請求日】2021年1月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】520102912
【氏名又は名称】宮沢 希
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮沢 希
【審査官】 菊地 牧子
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−59645(JP,U)
【文献】 特表2010−537709(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第108635224(CN,A)
【文献】 実開昭57−154431(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0112708(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 39/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒体に形成され、第1端部から第2端部に向けて鍼管を差し込み可能な鍼管差込部と、
前記鍼管差込部と一体形成された鍔部と、を有し、
前記第2端部には前記鍼管の貫通を防止するストッパと前記鍼管に挿入された鍼の鍼挿通孔が形成され、
前記鍔部は、前記第2端部から前記第1端部に向けて所要長さ離れた位置に形成されており、
前記鍔部から前記ストッパまでの範囲における前記鍼管差込部の内径が徐々に縮径する逆円錐台部に形成されていることを特徴とする鍼治療用補助具。
【請求項2】
前記鍼挿通孔の径寸法が前記鍼の鍼柄の外径寸法よりも小さく形成されていることを特徴とする請求項1記載の鍼治療用補助具。
【請求項3】
前記ストッパおよび前記鍼挿通孔は、前記鍼管差込部の前記第2端部に一体形成された有孔板により形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の鍼治療用補助具。
【請求項4】
前記鍼管差込部は、前記鍔部から前記第2端部における外径が徐々に縮径していることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項記載の鍼治療用補助具。
【請求項5】
前記鍼管差込部には少なくとも前記第2端部に角丸部が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項記載の鍼治療用補助具。
【請求項6】
前記鍔部は、前記鍔部を平面視した際における前記鍼管差込部からの縦方向及び横方向の突出寸法がそれぞれ異なる扁平形状に形成されていることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項記載の鍼治療用補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鍼治療を行う際において鍼と共に用いられる鍼治療用補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
鍼治療の施術者は、衛生上の観点から鍼に直接触れることのないように手袋や指サックを装着した状態で鍼管に収容されている鍼を用いた施術を行うことがある。さらに近年においては、施術者が鍼に直接触れることなく患者に鍼治療を行うことを可能にした鍼治療用補助具の提案がなされている。このような鍼治療用補助具としては例えば特許文献1(公開特許公報特開2002−126038号公報)に開示されているような構成のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】公開特許公報特開2002−126038号公報(請求項1、第1図〜第3図等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている鍼治療用補助具200の構成は、図9に示すように、鍼管241に収容された鍼231を挿入可能な筒状体であって、側面の高さ方向に縦断するスリット215が形成された本体211と、本体211の一端部に配設され、スリット215に連通する切込み223が形成された鍔221を有している。このような鍼治療用補助具200を用いることにより、鍼管241と鍼231とを分離させた後であっても、施術者は鍼231に直接触れることなく施術を行うことができる。
【0005】
一般的には施術者が患者に鍼を刺した(切皮・弾入をした)後は、利き手ではない方の手の指でツボの位置の皮膚を押し開くようにする押手を行いながら、利き手で鍼をツボに差し込む動作が行われる。特許文献1に開示されている鍼治療用補助具200には本体211にはスリット215が形成されていると共に鍔221には切込み223が形成されているため、押手をしようとすると本体211と鍔221が広がり、ツボに当接させた鍼管が位置ずれすると共に押手による鍼の保持が不十分になるといった課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明は、施術者が押手を行う際において鍼に直接触れることなく適切な押手を行うことができ、かつ、位置決めした鍼管の位置ずれを防止可能な鍼治療用補助具の提供を目的としている。
【0007】
すなわち本発明は、筒体に形成され、第1端部から第2端部に向けて鍼管を差し込み可能な鍼管差込部と、前記鍼管差込部と一体形成された鍔部と、を有し、前記第2端部には前記鍼管の貫通を防止するストッパと前記鍼管に挿入された鍼の鍼挿通孔が形成され、前記鍔部は、前記第2端部から前記第1端部に向けて所要長さ離れた位置に形成されており、前記鍔部から前記ストッパまでの範囲における前記鍼管差込部の内径が徐々に縮径する逆円錐台部に形成されていることを特徴とする鍼治療用補助具である。
【0008】
これにより、施術者は鍔部をツボに押圧すれば鍔部から先の第2端部が患者のツボに食い込むことになり、鍼に直接触れることなくツボに対して十分な押手を行うことが可能になる。また、押手を行っても鍼管が動いてしまうことがなく、鍼管をツボの位置に正確に位置決めした状態を維持することができる。
【0009】
また、前記鍼挿通孔の径寸法が前記鍼管に収容されている鍼の鍼柄の外径寸法よりも小さく形成されていることが好ましい。
【0010】
これにより、鍼管を取り去った後であっても鍼治療用補助具が鍼から分離せずツボに残った状態になり、鍼を刺した位置を明確にすることができ、施術後の鍼の抜き忘れ事故を防止することができる。また、パルス治療を行う際に鍼にクリップ状の電極を装着する際に皮膚や体毛を巻き込むことがない。
【0011】
また、前記ストッパおよび前記鍼挿通孔は、前記鍼管差込部の前記第2端部に一体形成された有孔板により形成されていることが好ましい。
【0012】
これにより、ストッパと鍼挿通孔を簡易な構造で成し得ることができ、低コストでありながらも信頼性の高い鍼治療用補助具を提供することができる。
【0013】
また、前記鍼管差込部は、前記鍔部から前記第2端部における外径が徐々に縮径していることが好ましい。
【0014】
これにより、より確実にツボに対する押手を行うことができる。
【0015】
また、前記鍼管差込部には少なくとも前記第2端部に角丸部が形成されていることが好ましい。
【0016】
これにより、ツボに押手による痕を残さないようにすることができる。
【0017】
また、前記鍔部は、前記鍔部を平面視した際における前記鍼管差込部からの縦方向及び横方向の突出寸法がそれぞれ異なる扁平形状に形成されていることが好ましい。
【0018】
これにより、鍼治療用補助具の小型化が可能になる。また、母指と示指による鍼治療用補助具の固定が容易に行える。
【発明の効果】
【0019】
本発明における鍼治療用補助具の構成によれば、施術者がツボの位置で鍔部を押圧するだけで鍔部から突出している第2端部を患者のツボに適度に食い込ませることができ、ツボに対する十分な押手を行うことが可能になる。これにより刺手をする際におけるツボの状態を理想的な状態にすることができるため、施術者は患者に痛みを伴わせることなくツボに鍼を打つことができる。また、鍼管は施術者により押手が行われても逆円錐台部により位置決めされた状態を維持することができ、鍼管がツボからずれてしまうことがなく、ツボに対して正確に鍼打ちを行うことができる。そして、施術者が鍼に直接触れずに鍼の取り扱いをすることができるため、同一人物に対して鍼を繰り返し使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態における鍼治療用補助具の斜視図である。
図2図1に示す鍼治療用補助具の平面図である。
図3図2中のIII−III線における断面図である。
図4図2中のIV−IV線における断面図である。
図5】鍼治療用補助具への鍼管の差し込み状態を示す説明断面図である。
図6】鍼治療用補助具への鍼管の差し込み状態を示す説明断面図である。
図7】他の実施例を示す説明正面図である。
図8】他の実施例を示す平面図である。
図9】従来技術における鍼治療用補助具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1図2に示すように、本実施形態における鍼治療用補助具100は、筒体に形成された鍼管差込部10と、鍼管差込部10の外周面から鍼管差込部10の径外方向に突出する板状の鍔部20とを有している。鍼管差込部10には鍼60が収容された鍼管50が差し込まれる。本実施形態においては鍼管50の内部空間に鍼60が鍼柄62の部分で仮固定されたものを用いているが、鍼管50と鍼60はこの形態に限定されるものではない。本実施形態における鍔部20は、鍼管差込部10の第2端部14から第1端部12に向けて所要長さ離れた位置において、鍼管差込部10に一体形成されている。本実施形態においては、鍔部20からの第2端部14の突出量を4mmとしている。
【0022】
本実施形態における鍔部20は図2に示すように、平面視した際における鍼管差込部10の外周面からの縦方向における突出寸法と横方向における突出寸法が異なる扁平形状に形成されている。このような扁平形状をなす鍔部20を採用することにより、押手を行う際における鍔部20への指位置を適切な状態にすることができる点で好都合である。本実施形態における鍔部20は図2における横方向の突出量を8mmとし、図2における縦方向の突出量を1mmとしている。また、鍔部20の板厚寸法は1.8mmとしている。
【0023】
図3図4に示すように、鍔部20と第2端部14までの範囲のうちの鍔部20の側の半分の範囲における鍼管差込部10の外径寸法は、第1端部12から鍔部20の範囲(ここでは18mmとしている)における鍼管差込部10の外径寸法と同一径寸法に形成されている。本実施形態においては鍼管差込部10の外径寸法を6mmとした。これに対して鍔部20と第2端部14までの範囲のうちの第2端部14の側の半分の範囲における鍼管差込部10の外径寸法は、第2端部14に接近するに伴って徐々に縮径する縮径部16に形成されている。このような縮径部16を形成することで、施術者が患者のツボに鍔部20を押圧するだけでツボに適切な押手をすることができる点において好都合である。
【0024】
また、鍼管差込部10における鍔部20よりも第2端部14の側の範囲と縮径部16との接続部分、および、縮径部16と第2端部14の先端面(鍼挿通孔32の形成面、すなわちツボとの当接面)との接続部分は曲面部18(角丸部)によって接続されている。このような角丸部としての曲面部18を形成することにより、患者のツボ(皮膚)に鍼治療用補助具100を押圧すれば適切な押手をすることができる。また押手をした後のツボ(皮膚)の表面に押圧痕を付き難くすることができる。なお、第2端部14の先端面のみに曲面部18を形成した形態を採用することもできる。
【0025】
また、鍼管差込部10の内部空間における第2端部14の位置には第2端部14からの鍼管50の貫通を防止するためのストッパ30と鍼挿通孔32が配設されている。本実施形態においては第2端部14の先端面において鍼管差込部10と一体形成された有孔板によってストッパ30と鍼挿通孔32が構成されている。本実施形態においては有孔板の板厚寸法を0.8mmとしている。また、本実施形態における鍼挿通孔32の径寸法は、鍼管50に収容されている鍼60の鍼柄62の径寸法よりも小径に形成されている。本実施形態においては鍼柄62(図5参照)の外径寸法を2mmとし、鍼挿通孔32の径寸法を0.7mmとした。このような鍼挿通孔32の形態によれば、鍼60をツボに刺した後においても、鍼治療用補助具100を鍼60から離反させずに鍼位置の目印として使用することができる点において好都合である。
【0026】
本実施形態における鍼治療用補助具100は、鍔部20からストッパ30までの範囲における鍼管差込部10の内径寸法が徐々に縮径する漏斗状の逆円錐台部19に形成されていると共にストッパ30の位置においては鍼管50の外径寸法以上の径寸法に形成されている。ここでは、鍼管50の外径寸法が4mm、鍔部20の位置における鍼管差込部10の内径寸法が4.4mm、ストッパ30の上面における鍼管差込部10の内径寸法が4.1mmである。これにより図5に示すように、鍼管50を第1端部12から単純に差し込むだけで、鍼管50が逆円錐台部19により平面位置がガイドされた状態でストッパ30に当接させることができる。
【0027】
鍼管50の差込側先端部がストッパ30に当接した状態においては、図6に示すように鍼管50の開口部52の位置を鍼挿通孔32の位置に正確に位置合わせすることができる。鍼管50の差込側先端部はストッパ30の上面の位置で安定した状態(ほぼ拘束された状態)で鍼管差込部10により保持されることになるため、鍼60をツボに刺す際(切皮する際)の操作安定性を高めることができる。
【0028】
施術者は、図6に示した状態において鍼管50に付着により仮固定されている鍼柄62を鍼管50の中心に向けて押圧することで鍼60を鍼管50から分離させる。鍼柄62の外径寸法は鍼管50の内径寸法と同一径寸法または僅かに小径寸法に形成されているので、鍼60は鍼管50と平行な状態になり、鍼60を鍼挿通孔32の位置に位置合わせすることができる。鍼挿通孔32の径寸法は鍼柄62の外径寸法よりも小径であるから、施術者がツボに鍼60を刺した後に鍼治療用補助具100から鍼管50を取り去っても、鍼治療用補助具100をツボに残しておくことができる。これにより鍼管50が取り去られた状態であっても施術者が鍼60に直接触れることなく施術を行うことができ、かつ、パルス治療を行う際に電極による皮膚や体毛の巻き込みを防止することができる。
【0029】
以上に説明した鍼治療用補助具100によれば、施術者による患者への鍼治療を容易かつ正確に実施することができる。また、極めてシンプルかつコンパクトな形状であるため操作性に優れ、低コストでの提供が可能になる点で好都合である。
【0030】
以上に説明したとおり本願発明にかかる鍼治療用補助具100について実施形態に基づいて説明を行ったが、本願発明は以上の実施形態に限定されるものではない。以上の実施形態においては、各部に具体的な寸法を記載しているが各部の寸法は記載した寸法に限定されるものではない。また、発明の技術的思想を変更しない範囲において各部の具体的な形態を変更することも可能である。例えば、以上の実施形態においては、鍼管50と鍼60が鍼柄62の部分で仮固定されている形態について説明しているが、鍼管50と鍼60は別体のものを用いることもできる。
【0031】
また、図7に示すような鍼治療用補助具100の形態を採用することもできる。具体的には、鍼管差込部10の第1端部12をラッパ形状にすることもできる。これにより鍼管差込部10を母指と示指でつまみ易くなり、かつ、鍼管差込部10への鍼管50の差し込みが容易になると共に、鍼管差込部10への鍼管50の差し込み時において鍼管50が鍼管差込部10をつまんでいる母指と示指に触れにくくすることができる。また、鍔部20から第2端部14の範囲における鍼管差込部10の外径寸法を同一径寸法に形成することもできる。さらには、ストッパ30の上面側における鍼挿通孔32の開口寸法をストッパ30の下面側における鍼挿通孔32の開口寸法よりも大きくし、ストッパ30の上面から下面に進むに伴って徐々に縮径させた形状にすることもできる。この場合、ストッパ30の上面における鍼挿通孔32の開口寸法は鍼管50の外径寸法未満にする。
【0032】
また、図8に示すように鍼管差込部10の外周面から鍼管差込部10の径外方向への突出量を均一にした鍔部20を採用することもできる。さらに、第2端部14の内周面から鍼管差込部10の中心軸に向かって延設された複数の突出片によりストッパ30を形成することもできる。なお、図8においては、複数の突出片によるストッパ30を識別しやすくするために突出片のそれぞれにハッチングをしている。
【0033】
図7および図8に示す鍼治療用補助具100であっても本願発明としての最低限の作用効果を備えつつ、鍼治療用補助具100の形状をより簡略化でき、製造コストをさらに低減させることができる。また、図7および図8の第2端部14の形状を一直線状または階段状の母線を有する逆円錐台状(先細り形状)に形成してもよい。
【0034】
また、以上に説明した本実施形態の構成に対し、明細書中に記載されている変形例や、他の公知の構成を適宜組み合わせた形態を採用することもできる。
【符号の説明】
【0035】
10 鍼管差込部
12 第1端部
14 第2端部
16 縮径部
18 曲面部(角丸部)
19 逆円錐台部
20 鍔部
30 ストッパ
32 鍼挿通孔
50 鍼管
52 開口部
60 鍼
62 鍼柄
100 鍼治療用補助具
200 鍼治療用補助具
211 本体
215 スリット
221 鍔
223 切込み
231 鍼
241 鍼管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9