【実施例】
【0039】
以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例における各性能評価は、以下の方法により行った。
【0040】
(編地密度)
JIS−L1096 8.6.2 編物の密度に準拠して、編地のコース密度(個/2.54cm)、ウェール密度(個/2.54cm)を測定した。目視で測定する際、ウエール方向(又はコース方向)に組織図上で最もニットループが多いところを選んで、そのニットループ数を測定して密度とした。
【0041】
(編地の目付)
JIS−L1096 8.3.2A法の標準状態における単位面積当たりの質量に準拠して編地の目付を測定した。
【0042】
(編地の厚み)
JIS−L1096 8.4A法の厚さに準拠して編地の厚みを測定した。なお、測定条件における一定圧力は、23.5kPaに設定した。
【0043】
(通気度)
JIS−L−1096 8.26.1に規定されている通気度(フラジール形法 A法)に準拠して編地の通気度を測定した。
【0044】
(力学特性)
編地の力学特性は、KES(Kawabata’s Evaluation System for Fabrics)に従った。編地の伸長率(EMT)は、カトーテック社製KES−FB1で測定された。伸長率(EMT)の測定は、20cm×20cmの試料を間隔5cmのチャックに把持し、4.00×10
−3/secの歪み速度で最大荷重250gf/cmまで引っ張って行った。伸びにくい生地はEMT値が低くなる。
【0045】
曲げ特性は、カトーテック株式会社製KES−FB2を用いて、各サンプルの所定領域の1cm幅を試料として1cm間隔のチャック間に固定し、最大曲率+2.5cm
−1まで表側に曲げ、次に、最大曲率−2.5cm
−1まで裏側に曲げた後に元に戻すことによって測定した。曲げ剛性(B)[
gf・cm
2/cm]は、表側に曲げはじめて曲率に対する曲げモーメントの傾きがほぼ一定になったときの傾きから算出した。また、曲げ回復性(2HB)[
gf・cm/cm]は、そのヒステリシス幅から求めた。B値が大きい程曲げ硬く、ハリが高い傾向がある。2HB値が大きい程曲げ戻り性が悪く、コシが少ない傾向を示す。
【0046】
(ハリ及びコシの官能評価)
手で生地を触ったときのハリ・コシの風合い評価として、綿ブロードを「ハリ・コシ」の最高ランク5とし、最低ランクを1として、1〜5の表示で5段階評価を行った。判定は、風合の熟練者1名にて行った。
【0047】
(透け感)
一般財団法人ボーケン品質評価機構のボーケン規格BQE A038透け防止性試験を用いて評価した。試験片の肌側に白色板を重ね、外側面の可視光線(380nm〜780nm)の反射率(RS−white)を測定する。同様に黒色板を重ね、反射率(Rs−black)を測定し、透け防止度を算出する。透け防止度が74以上であればドレスシャツとして透け感を気にせず使用できる。
透け防止度=Rs−black/Rs−white×100
【0048】
(編地のW&W性)
アパレル製品等品質性能対策協議会法に従ってドレスシャツの形態安定性(W&W性)を評価した。判定は、AATCC 124−1984に規定する判定標準立体レプリカを用いて行った。判定は、5級(良好)〜1級(不良)で表示した。
【0049】
(製品の保形性)
JIS−L1060:2012の編物のプリーツ性試験方法を用いて、洗濯後のプリーツの形状の立体感にて保形性の代用評価とした。洗濯前のプリーツ形状、及び洗濯操作、乾燥操作を5回繰り返した後のプリーツ形状を判定基準によって等級を判定した。プリーツ判定用標準は、AATCC TestMethod 88Cに規定する5段階の判定標準立体レプリカを用いた。判定は、5級(良好)〜1級(不良)で表示した。
【0050】
(ドレスシャツを着用したときの上半身の動きやすさ)
生地を首回り41cmと裄丈84cmの長袖ドレスシャツに縫製した後、中肉中背の30才男性が着用して、両手を横に拡げて、背骨を軸に両手/両肩を水平に回旋したときの動きやすさ(動きに対する生地の抵抗)を感覚値として、動きやすい:○>△>×:動きにくいの順で三段階評価を行った。
【0051】
(洗濯後の帯電電荷量)
JIS L1094−5.2 摩擦帯電電荷法に準拠して測定した。測定環境は、20℃40%RHとした。洗濯は、JIS L0217 103法に準拠して洗濯20回行ない、最後に吊り干し乾燥した。
【0052】
(
参考例1)
30インチ,36ゲージのシングル丸編機(福原精機製作所製 VXC−3FA)を用いて
図2に示す完全組織F1からF24の24給糸からなるウエルトニット組織100%のストライプ編地になる生機を製編した。その際、給糸口F3,4,7,8,11,12,15,16,19、20,23,24に酸化チタン微粒子を1.5重量%練りこんだ丸断面糸である84dtex(T),48filament(f)のポリエチレンテレフタレート仮撚糸(Z撚)(糸1)を用いた。ストライプ部として、給糸口F2,6,10,14,18,22にはカチオン染料可染性の丸断面糸である84T36fの仮撚加工糸(S撚)(糸2)を用いた。また、給糸口F1,5,9,13,17には、酸化チタン微粒子を0.1重量%含有したポリエチレンテレフタレート生糸56T6f(糸3)を用い、F21には22T3fの制電糸生糸(KBセーレン製ベルトロンB68タイプ 抵抗値10
8〜10
10Ω/cm)(糸4)と酸化チタン微粒子を0.1重量%含有したポリエチレンテレフタレート生糸56T6f(糸3)を引き揃えて用いた。このとき、糸1の混率は54.2重量%、糸2の混率は27.1重量%、糸3の混率は17.5%、そして糸4の混率は1.2重量%であった。太繊度糸の混率は18.7重量%、制電糸の混率は1.2重量%であった。
【0053】
出来上がった生機に対してヒラノテクシード製ピンテンターを用いて160℃×2分のプリセットを行い、その後、下記の処方で精練、染色、仕上げ加工を行なった。
精練処方:日阪製作所製液流染色機NSタイプを用いて里田加工 ノニゾールN 1g/l、日華化学 ネオクリスタル CG1000 0.5g/l、ソーダ灰0.5g/l、浴比1:15、95℃×30分。
染色処方:日阪製作所製液流染色機NSタイプ、浴比1:15 130℃×45分で酢酸0.2g/l pH=4、明成化学 ディスパーN 700 0.5g/l、日華化学 ネオクリスタル GC1000 0.5g/l、高松油脂 SR1800 1.5%owf、分散型カチオン染料Kayacryl Ligt Blue4GSL−ED 1.0%omf染色後、遠心脱水、乾燥(120℃×3分)を行ない、以下の条件で仕上げ剤を付与した。仕上げ剤のピックアップは70%であった。
サンスタット ES−11(三洋化成工業製 帯電防止剤)1% ows(on the weight of solution)
その後、最終セットをピンテンター160℃×2分の条件で行ない、性量調整し、最終生地を得た。その際にもテンター幅は編地の皺を取る程度の幅として、仕上げた編地を縦横に極力引っ張らないように注意した。出来上がった仕上編地の詳細な構成と評価結果を表1に示す。
【0054】
(
参考例2)
30インチ,36ゲージのシングル丸編機(福原精機製作所製3FA)を用いて
図3に示す完全組織F1からF14からなるウエルトニットをベースとした異色染めでヨコボーダー柄になる生機を製編した。その際、地部となる糸として給糸口F6,8,10,12,14に酸化チタン微粒子を1.5重量%練りこんだ丸断面糸である84T48fのポリエチレンテレフタレート仮撚糸(Z撚)(糸1)を、F7,9,11,13に酸化チタン微粒子を1.5重量%練りこんだ丸断面糸である84T48fのポリエチレンテレフタレート仮撚糸(S撚)(糸5)を用いた。また、ボーダー部として、給糸口F2,3,4、5にはカチオン染料可染性の丸断面糸の84T36fの仮撚加工糸(S撚)(糸2)を用いた。F1には単糸繊度が太いフルダル丸断面のポリエステル長繊維の生糸56T6と22T3fの制電糸生糸(KBセーレン製ベルトロンB68タイプ 抵抗値10
8〜10
10Ω/cm)をS撚200t/mで合撚した糸(糸6)を用いた。このとき、糸1の混率は35.7重量%、糸5の混率は28.6重量%、糸2の混率は28.6重量%、太繊度糸として糸6の混率は7.1重量%であった。制電糸の混率は2.0重量%であった。
【0055】
出来上がった生機に対し、
参考例1と同様の染色加工を行い、最終編地を得た。出来上がった仕上編地の詳細な構成と評価結果を表1に示す。
【0056】
(
参考例3)
30インチ,28ゲージのシングル丸編機(福原精機製作所製 VXC−3FA)を用いて
図4に示す完全組織F1からF20からなるビザルカノコ柄の生機を製編した。その際、給糸口F4,5,F9,10,14,15,19,20に酸化チタン微粒子を1.5重量%練りこんだ丸断面糸である110T48fのポリエチレンテレフタレート仮撚糸(糸8)を用いた。次に給糸口F2,3,F7,8,12,13,17,18には、高圧カチオン可染ポリエステルの丸断面糸である84T36fの仮撚加工糸(糸2)を用いた。そして、給糸口F1,6,11には酸化チタン微粒子を0.4重量%含有した扁平横断面(経緯比1:5)のセミダル糸である56T6fの太繊度糸(糸7)を用いた。更にF16には上記56T6fの太繊度糸(糸7)とポリエステル制電糸28T2f(クラカーボKC−220 抵抗値10
7〜10
8Ω/cm)(糸9)を引き揃えて編み立てた。編地中の糸8の混率は56.6重量%、糸2の混率は35.4重量%、糸7の混率は7.6重量%、そして糸9の混率は0.4重量%であった。
【0057】
出来上がった生機を開反し、下記の処方で精練、染色を行なった。
精練処方:日阪製作所製液流染色機NSタイプを用いて里田加工 ノニゾールN 1g/l、日華化学 ネオクリスタル CG1000 0.5g/l、ソーダ灰0.5g/l、浴比1:15、95℃×30分。
染色処方:日阪製作所製液流染色機NSタイプ、浴比1:15 130℃×45分で酢酸0.2g/l pH=4、明成化学 ディスパーN 700 0.5g/l、日華化学 ネオクリスタル GC1000 0.5g/l、高松油脂 SR1800 1.5%owf、分散型カチオン染料Kayacryl Ligt Blue4GSL−ED 1.0%omf染色後、遠心脱水、乾燥(120℃×3分)を行ない、以下の条件で仕上げ剤を付与して乾燥した。仕上げ剤のピックアップ率は90%であった。
サンスタット ES−11(三洋化成工業製 帯電防止剤)1% ows(on the weight of solution)
その後、最終セットをピンテンター160℃×2分の条件で行ない、性量調整し、最終生地を得た。仕上げでは縦に若干引っ張って仕上げた。出来上がった仕上編地の詳細な構成と評価結果を表1に示す。
【0058】
(実施例4)
33インチ,28ゲージのダブル丸編機(福原精機製作所製 V−4AL)を用いて、インターロックゲージングで
図5に示す完全組織F1からF18からなるピンヘッド柄の生機を製編した。その際、給糸口F1、3,4,5,7,9,10,11,13,15,16及び17に酸化チタン微粒子を1.5重量%練りこんだ丸断面糸である84T48fのポリエチレンテレフタレート仮撚糸(FD)(糸1)を用いた。次に給糸口F6,12,18には、高圧カチオン可染ポリエステルの丸断面糸である84T36fの仮撚加工糸(CD)(糸2)を用いた。更にF2,8には太繊度糸56T24f(糸10)、及び生糸56T6fのSD生糸(糸7)を引き揃えて用いた。そしてF14には太繊度糸56T24f(糸10)と制電糸22T3f(糸4)を引き揃えて用いた。編地中の糸1の混率は58.5重量%、糸2の混率は13.5重量%、糸10の混率は14.8重量%、糸7の混率は11.0重量%、そして糸4の混率は2.2重量%であった。この編地の太繊度糸の混率は13.2重量%である。
【0059】
出来上がった生機を開反し、ヒラノテクシード製ピンテンターを用いて160℃×2分のプリセットを行い、その後、下記の処方で精練、染色、仕上げ加工を行なった。
精練処方:日阪製作所製液流染色機NSタイプを用いて里田加工 ノニゾールN 1g/l、日華化学 ネオクリスタル CG1000 0.5g/l、ソーダ灰0.5g/l、浴比1:15、95℃×30分。
染色処方:日阪製作所製液流染色機NSタイプ、浴比1:15 130℃×45分で酢酸0.2g/l pH=4、明成化学 ディスパーN 700 0.5g/l、日華化学 ネオクリスタル GC1000 0.5g/l、高松油脂 SR1800 1.5%owf、分散型カチオン染料Kayacryl Ligt Blue4GSL−ED 0.5%owfで染色後、遠心脱水、乾燥(120℃×3分)を行ない、以下の条件で仕上げ剤を付与した。仕上げ剤のピックアップは70%であった。
サンスタット ES−11(三洋化成工業製 帯電防止剤)1% ows(on the weight of solution)
その後、最終セットをピンテンター160℃×2分の条件で行ない、性量調整し、最終生地を得た。仕上げでは縦に若干引っ張って仕上げた。出来上がった仕上編地の詳細な構成と評価結果を表1に示す。
【0060】
(実施例5)
33インチ,28ゲージのダブル丸編機(福原精機製作所製 V−4AL)を用いて、リブゲージングにて
図6に示す完全組織F1〜F28からなるブライトスクエア柄の生機を製編した。その際、給糸口F1,4,7,10,13,15,18,21,24,27に酸化チタン微粒子を1.5重量%練りこんだ丸断面糸である84T48fのポリエチレンテレフタレート仮撚糸(FD)(糸1)を用いた。次に給糸口F3,6,9,12、17、20,23及び26には、酸化チタン微粒子を0.1重量%練り混んだ丸断面糸である84T36fの仮撚加工糸(BR)(糸11)を用いた。また、給糸口F2及び16には、酸化チタン微粒子を0.1重量%練り混んだ丸断面糸である56T24fのポリエチレンテレフタレート仮撚加工糸(SD)(糸10)を用いた。更に給糸口F5,8,11,14,19,22及び25には、酸化チタン微粒子を0.5重量%練り混んだ丸断面糸である56T6fのポリエチレンテレフタレート生糸の太繊度糸(SD)(糸7)を用いた。そして給糸口F28には生糸56T6fとポリエステル制電糸22T3fの合撚糸(糸6)を用いた。編地中の糸1の混率は43.8重量%、糸11の混率は36.4重量%、糸7の混率は12.1重量%、糸10の混率は5.7重量%、そして糸6の混率は2.0%であった。このうち制電糸の混率は0.6重量%であった。
【0061】
出来上がった生機に対し、
参考例1と同様に染色加工して仕上げた。出来上がった仕上編地の詳細な構成と評価結果を表1に示す。
【0062】
(参考例6)
33インチ,28ゲージのダブル丸編機(福原精機製作所製 V−4AL)を用いて、リブゲージングにて、実施例5と同様にして
図6に示す完全組織からなるブライトスクエア柄の生機を製編した。但し、給糸口F2,5,8,11,14,16,19,22,25及び28には、酸化チタン微粒子を0.5重量%練り混んだ丸断面糸である56T6fのポリエチレンテレフタレート生糸の太繊度糸(SD)(糸7)を用いた。また、この編地に制電糸は使わなかった。
【0063】
(比較例1)
参考例1と同様の編機を用いて
図7に示す天竺の生機を製編した。使用した糸は、酸化チタン微粒子を0.4重量%練りこんだセミダル丸断面糸である84T48fのポリエチレンテレフタレート仮撚糸(Z撚)(糸12)を用いた。
【0064】
出来上がった生機に対し、
参考例2と同様に加工を行って仕上編地を得た。出来上がった仕上編地の詳細な構成と評価結果を表1に示す。
【0065】
(比較例2)
実施例4と同じ編機を用いて、
図8に示すインターロックの生機を製編した。使用した糸は、酸化チタン微粒子を1.5重量%練りこんだ丸断面フルダル糸である84T48fのポリエチレンテレフタレート仮撚糸(FD)(糸1)を用いた。
【0066】
出来上がった生機に対し、
参考例2と同様に加工を行って仕上編地を得た。出来上がった仕上編地の詳細な構成と評価結果を表1に示す。
【0067】
(比較例3)
オーストラリア綿(マイクロネアー:4.0〜4.6、平均繊維長:1.12〜1.21インチ、強度:30〜34g/tex)と、ポリエステル短繊維(繊度1.5dtex、繊維長38mm)を各50重量%の割合で混綿して、一般的な紡績の前紡工程(混綿−梳綿−練条−粗紡)を経て120ゲレン/15ydロービングを作成、豊田紡織株式会社製リング紡績装置RX−240(リンクコーナー)により、撚係数k=3.7でトータルドラフト38.4、ブレーキドラフト1.40で40Ne(英式綿番手)の紡績糸(糸13)を製造した。経糸及び緯糸にこの紡績糸を用い、経密度127本/2.54cm、緯密度70本/2.54cmの平織物を製織し、通常の方法により、毛焼、糊抜き、連続精練・漂白、シルケットを行い、更に分散染料と反応染料にて連続精練染色してサックス色に染めたのち、テンターにて柔軟剤を付与して仕上げた。仕上密度は経129本/2.54cm、緯72本/2.54cmであった。出来上がった仕上織物の詳細な構成と評価結果を表1に示す。
【0068】
【表1】