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特許6979111スクラッチカード及びスクラッチカードの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6979111
(24)【登録日】2021年11月16日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】スクラッチカード及びスクラッチカードの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/27 20140101AFI20211125BHJP
   A63F 1/02 20060101ALI20211125BHJP
   B32B 33/00 20060101ALI20211125BHJP
【FI】
   B42D25/27
   A63F1/02 J
   A63F1/02 M
   B32B33/00
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-182097(P2020-182097)
(22)【出願日】2020年10月30日
【審査請求日】2021年3月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003584
【氏名又は名称】株式会社タカラトミー
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】羽柴 健太
(72)【発明者】
【氏名】後藤 悠太
【審査官】 藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−157266(JP,A)
【文献】 特開2011−245834(JP,A)
【文献】 実開昭60−147479(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 1/00−25/485
A63F 1/00− 5/04
G09F 1/00− 5/04
G06K 19/00−19/18
B41M 1/00− 3/18
B41M 7/00− 9/04
B32B 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード基材と、
前記カード基材の上に設けられ、少なくとも第1絵柄が描画された第1絵柄層と、
前記第1絵柄を隠蔽するように前記第1絵柄層の上に設けられたスクラッチ層と、
少なくとも前記スクラッチ層の外周端面を含む外周端部を隠蔽するように前記スクラッチ層の上に設けられ、第2絵柄が描画された第2絵柄層と、を備え、
前記第1絵柄層は、
前記第1絵柄の周囲に第1領域を備え、
前記第2絵柄層は、
周縁に前記第1領域と同じ色彩の配列を有する第2領域を備え、
前記第1領域と、前記第2領域と、における同色の部分が隣接して配されるようにしたことを特徴とするスクラッチカード。
【請求項2】
前記第1絵柄層は、
前記第1絵柄を囲むように所定幅の前記第1領域を備え、
前記第2絵柄層は、
周縁に所定幅の前記第2領域を備え、
前記スクラッチ層の外周端部は、
前記第1領域の幅内に位置するとともに、前記第2領域の幅内に位置することを特徴とする請求項1に記載のスクラッチカード。
【請求項3】
前記第2絵柄層は、
前記スクラッチ層よりも広く、外周端部が前記第1領域において前記スクラッチ層が存在しない位置にあることを特徴とする請求項1又は2に記載のスクラッチカード。
【請求項4】
前記第2絵柄層は、
前記スクラッチ層の全体を覆うように前記スクラッチ層の上に設けられることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のスクラッチカード。
【請求項5】
前記第1絵柄層には、各々が周囲に前記第1領域を備えた複数の前記第1絵柄が描画され、
複数の前記第1絵柄のうち、一部の前記第1絵柄に重ねて前記スクラッチ層及び前記第2絵柄層が設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のスクラッチカード。
【請求項6】
前記第1領域と前記第2領域は、同色の単色であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のスクラッチカード。
【請求項7】
カード基材の表面に、周囲に第1領域を備えた第1絵柄が描画された第1絵柄層を形成する第1工程と、
スクラッチ層を、前記第1絵柄を隠蔽し、外周端部が前記第1領域内に位置するように形成する第2工程と、
前記第1領域と同じ色彩の配列を有する第2領域を周囲に設けた第2絵柄層を、少なくとも前記スクラッチ層の外周端面を含む外周端部を隠蔽するとともに、前記第1領域と、前記第2領域と、における同色の部分が隣接するように形成する第3工程と、を含むことを特徴とするスクラッチカードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクラッチカード及びスクラッチカードの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絵柄を描画したカード基材の上にスクラッチ層を形成して絵柄を隠蔽し、スクラッチ層を削り取ることでカード基材に描画された絵柄が視認可能となるスクラッチカードが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−126607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなスクラッチカードにおいては、スクラッチ層の印刷のずれが発生するとスクラッチ層で隠蔽すべき絵柄の一部が視認可能となってしまい、装飾性及び削り取ることが可能な領域を探るという遊びの楽しさに欠けるものであった。
また、一般的にスクラッチ層は銀色の塗料により構成されているが、カード基材の絵柄に対してスクラッチ層が目立ってしまいスクラッチ層の範囲が明確に把握できてしまうので、装飾性及び削り取ることが可能な領域を探るというスクラッチ遊びの楽しさに欠けるものであった。本発明の目的は、スクラッチカードの装飾性及びスクラッチ遊びの楽しさを向上することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため第1の手段は、スクラッチカードにおいて、
カード基材と、
前記カード基材の上に設けられ、少なくとも第1絵柄が描画された第1絵柄層と、
前記第1絵柄を隠蔽するように前記第1絵柄層の上に設けられたスクラッチ層と、
少なくとも前記スクラッチ層の外周端面を含む外周端部を隠蔽するように前記スクラッチ層の上に設けられ、第2絵柄が描画された第2絵柄層と、を備え、
前記第1絵柄層は、
前記第1絵柄の周囲に第1領域を備え、
前記第2絵柄層は、
周縁に前記第1領域と同じ色彩の配列を有する第2領域を備え、
前記第1領域と、前記第2領域と、における同色の部分が隣接して配されるようにしたことを特徴とする。
【0006】
第2の手段は、第1の手段において、
前記第1絵柄層は、
前記第1絵柄を囲むように所定幅の前記第1領域を備え、
前記第2絵柄層は、
周縁に所定幅の前記第2領域を備え、
前記スクラッチ層の外周端部は、
前記第1領域の幅内に位置するとともに、前記第2領域の幅内に位置することを特徴とする。
【0007】
第3の手段は、第1の手段又は第2の手段において、
前記第2絵柄層は、
前記スクラッチ層よりも広く、外周端部が前記第1領域において前記スクラッチ層が存在しない位置にあることを特徴とする。
【0008】
第4の手段は、第1の手段から第3の手段のいずれか一の手段において、
前記第2絵柄層は、
前記スクラッチ層の全体を覆うように前記スクラッチ層の上に設けられることを特徴とする。
【0009】
第5の手段は、第1の手段から第4の手段のいずれか一の手段において、
前記第1絵柄層には、各々が周囲に前記第1領域を備えた複数の前記第1絵柄が描画され、
複数の前記第1絵柄のうち、一部の前記第1絵柄に重ねて前記スクラッチ層及び前記第2絵柄層が設けられていることを特徴とする。
【0010】
第6の手段は、第1の手段から第5の手段のいずれか一の手段において、
前記第1領域と前記第2領域は、同色の単色であることを特徴とする。
【0011】
第7の手段は、スクラッチカードの製造方法であって、
カード基材の表面に、周囲に第1領域を備えた第1絵柄が描画された第1絵柄層を形成する第1工程と、
スクラッチ層を、前記第1絵柄を隠蔽し、外周端部が前記第1領域内に位置するように形成する第2工程と、
前記第1領域と同じ色彩の配列を有する第2領域を周囲に設けた第2絵柄層を、少なくとも前記スクラッチ層の外周端面を含む外周端部を隠蔽するとともに、前記第1領域と、前記第2領域と、における同色の部分が隣接するように形成する第3工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1の手段によれば、第1絵柄の周囲に第1領域を備えるので、第1領域の分だけスクラッチ層の印刷のずれを許容できて第1絵柄が視認可能となってしまうことを防止でき、スクラッチカードの装飾性を向上することができるとともに、スクラッチ層を見つけるというスクラッチ遊びの楽しさを向上することができる。
また、少なくともスクラッチ層の外周端部を第2絵柄層により隠蔽することができ、さらに第1領域と第2領域の同色の部分が隣接して配されるので、境界をわかりにくくすることができ、スクラッチカードの装飾性を向上することができるとともに、削り取ることが可能な領域を探るというスクラッチ遊びの楽しさを向上することができる。
【0013】
第2の手段によれば、スクラッチ層により第1の絵柄を確実に隠蔽できるとともに、第1領域とスクラッチ層とが重複する分だけスクラッチ層の印刷のずれを許容できて第1絵柄が視認可能となってしまうことを防止でき、スクラッチカードの装飾性を向上することができるとともに、スクラッチ層を見つけるというスクラッチ遊びの楽しさを向上することができる。
また、第2絵柄にスクラッチ層の外周端部がかかることを防止でき、スクラッチ層の有無が第2絵柄の色彩に影響しないようにすることで第2絵柄の装飾性を向上でき、スクラッチカードの装飾性を向上することができるとともに、削り取ることが可能な領域を探るというスクラッチ遊びの楽しさを向上することができる。
【0014】
第3の手段によれば、スクラッチ層の外周端部を第2絵柄層により確実に隠蔽できるので、スクラッチカードの装飾性を向上することができ、さらに、第2絵柄層の外周端部は第1領域内にあるので、第1領域と第2領域の同色の部分が必ず隣接するようになり、第2絵柄層の境界をわかりにくくすることができ、スクラッチカードの装飾性を向上することができるとともに、削り取ることが可能な領域を探るというスクラッチ遊びの楽しさを向上することができる。
【0015】
第4の手段によれば、スクラッチ層を第2絵柄層により完全に隠蔽できるので、スクラッチカードの装飾性を向上することができるとともに、削り取ることが可能な領域を探るというスクラッチ遊びの楽しさを向上することができる。
【0016】
第5の手段によれば、多彩なスクラッチ層の配置を実現でき、スクラッチカードの装飾性を向上することができるとともに、削り取ることが可能な領域を探るというスクラッチ遊びの楽しさを向上することができる。
【0017】
第6の手段によれば、第1領域と第2領域の境界をわかりにくくすることができるので、スクラッチカードの装飾性を向上することができるとともに、削り取ることが可能な領域を探るというスクラッチ遊びの楽しさを向上することができる。
【0018】
第7の手段によれば、スクラッチ層を第2絵柄層により隠蔽し、さらに第1領域と第2領域の境界をわかりにくくしたスクラッチカードを製造できるので、スクラッチカードの装飾性を向上することができるとともに、削り取ることが可能な領域を探るというスクラッチ遊びの楽しさを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】スクラッチカードの正面図である。
図2】スクラッチカードの断面図である。
図3】第1絵柄層、スクラッチ層及び第2絵柄層の形成態様の変形例を説明するための図である。
図4】第1領域及び第2領域における色彩の配列の変形例を説明するための図である。
図5】スクラッチカードの収納方法の一例を説明するための図である。
図6】スクラッチカードの製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1には、スクラッチカードの正面図を示した。
図1(a)に示すように本実施形態のスクラッチカード10は、矩形板状のカードであって様々な絵柄などが印刷されたものである。このスクラッチカード10の中央部分は、第2絵柄31が印刷された部分を削り取ることができ、削り取ることで図1(b)に示すように下層の第1絵柄21が視認可能となるようにされている。
【0021】
図1(b)に示すように第1絵柄21の周囲には所定幅の第1領域22が設けられている。なお、第1領域22で囲まれた領域の外側には図示を省略するが背景絵柄やその他の絵柄が描画されている。
また、図1(a)に示すように第2絵柄31の周囲であって第2絵柄層14の外周部には所定幅の第2領域32が設けられている。
この第1領域22と第2領域32は同じ色彩の配列とされており、ここではいずれも同色の単色とされている。
よって、図1(a)に示す状態では、第1領域22と第2領域32が一体となって一本の円環状の領域のように見え、第2絵柄層14の存在がわかりにくく、削り取ることが可能な領域が認識し難くなっている。
【0022】
また、本実施形態のスクラッチカード10は、温度により色彩が変化する温度変化領域40を有している。この温度変化領域40では、図1(b)に示すように下層の第1絵柄21の上に温度が高くなることで不透明な状態から透明な状態に変化する塗料によって図1(a)に示すように第2絵柄31が印刷されている。
図1(a)に示すように室温では、上層の第2絵柄31が視認可能であり下層の第1絵柄21は視認できない状態となっている。そして、摩擦などによって温度を上げることで塗料が透明となり図1(b)に示すように下層の第1絵柄21が視認可能となる。再び室温に戻すことで塗料が不透明となり図1(a)に示すように上層の第2絵柄31が視認可能な状態に戻る。
【0023】
図2には図1(a)に示すA−A断面を示した。なお、説明を容易にするために厚さ方向に拡大した状態で示している。
図2(a)に示すようにスクラッチカード10は、紙やプラスチックなどからなるカード基材11を備え、カード基材11の表面には第1絵柄21が描画された第1絵柄層12が設けられている。また、カード基材11の裏面には所定の絵柄が描画された裏面絵柄層15が設けられている。
第1絵柄層12における第1絵柄21が描画された部分の上には、第1絵柄21を隠蔽するとともに削り取ることが可能なスクラッチ層13が設けられている。さらに、スクラッチ層13の上には、スクラッチ層13とともに削り取ることが可能な、第2絵柄31が描画された第2絵柄層14が設けられている。
【0024】
図2(b)には、図2(a)におけるスクラッチ層13の外周端部付近の拡大図を示した。
第1絵柄層12における第1絵柄21の周囲に設けられた第1領域22は、図中にXで示す幅を有している。また、第2絵柄層14における第2絵柄31の周囲に設けられた第2領域32は、図中にYで示す幅を有している。
この第2領域32の外周端部は第1領域22の幅内に位置するようになっており、第1領域22と第2領域32とにおける同色の部分が隣接するようになっている。
これにより、第1領域22と第2領域32の境界がわかりにくくなり、削り取ることが可能な部分を認識することが困難となるので、削り取ることが可能な部分を探すという興趣を持たせることができ、スクラッチ遊びの楽しさを向上することができる。
また、第1絵柄層12に対する第2絵柄層14の印刷のずれが生じても、幅Xの範囲内であれば、第1領域22と第2領域32とにおける同色の部分が隣接するので、第1領域22と第2領域32の境界がわかりにくい状態となり、印刷のずれによる装飾性の低下や削り取ることが可能な領域を探るという遊びの興趣の低下を防止できる。
【0025】
第2絵柄層14の面積はスクラッチ層13の面積よりも広いものとされている。また、第2絵柄層14の外周端部は、スクラッチ層13の外周端部よりも外側に位置し、第1領域22においてスクラッチ層13が存在しない位置にあるようにされている。すなわち、少なくともスクラッチ層13の外周端部は第2絵柄層14により完全に覆われた状態となっており、この例ではスクラッチ層13の全体が第2絵柄層14により覆われた状態となっている。
これにより、一般的に銀色などの目立つ色彩であるスクラッチ層13が露出しないようになり、装飾性を高めることができる。特に、スクラッチ層13の外周端部が露出しないようにしたことで、スクラッチ層13の範囲がどこまで広がっているのかが把握し難くなり、削り取ることが可能な領域を探るという遊びの興趣を向上することができる。
また、第2絵柄層14の外周端部は第1領域22内にあるので、第1領域22と第2領域32の同色の部分が必ず隣接するようになり、境界をわかりにくくすることができる。よって、削り取ることが可能な部分を認識することが困難となるので、削り取ることが可能な部分を探すという興趣を持たせることができ、スクラッチ遊びの楽しさを向上することができる。
【0026】
また、スクラッチ層13の外周端部は、第1領域22の幅内に位置するとともに、第2領域32の幅内に位置するようになっている。
スクラッチ層13の外周端部が第1領域22の幅内に位置することで、第1絵柄21を完全に覆うことができ、第1絵柄21が見えてしまうことを防止できて装飾性の低下を防止できる。
また、スクラッチ層13の外周端部が第2領域32の幅内に位置することで、第2絵柄31の装飾性が低下しないようにすることができる。すなわち、スクラッチ層13は銀色などの濃色であるため、第2絵柄31の色彩や模様によってはわずかに透けて見えてしまうおそれがある。スクラッチ層13の外周端部が、第2絵柄31が描画されている部分に位置すると、第2絵柄31においてスクラッチ層13の有無による色彩の差異が生まれてしまい装飾性が低下してしまうおそれがあるが、スクラッチ層13の外周端部が第2領域32の幅内に位置することで、第2絵柄31に影響しないようにすることができる。
【0027】
第1領域22の幅Xは、印刷時にスクラッチ層13及び第2絵柄層14が第1絵柄層12に対して想定される最大幅でずれた場合でも、スクラッチ層13の外周端部が第1領域22に収まって第1絵柄21を覆うとともに、第2絵柄層14の外周端部が第1領域22に収まるように設定されている。
また、第2領域32の幅Yは、印刷時にスクラッチ層13及び第2絵柄層14が第1絵柄層12に対して想定される最大幅でずれた場合でもスクラッチ層13の外周端部が第2領域32に収まるように設定されている。
よって、印刷時にスクラッチ層13及び第2絵柄層14が第1絵柄層12に対して想定される最大幅でずれた場合でも、第1領域22、第2領域32及びスクラッチ層13の外周端部の関係性は図2(b)に示したような関係性となるようにされている。
これにより、印刷のずれが生じたとしても第1絵柄21が視認可能となってしまうことを防止でき、また、第1領域22と第2領域32とにおける同色の部分が隣接するので、第1領域22と第2領域32の境界がわかりにくくなり、スクラッチカードの装飾性を向上することができるとともに、削り取ることが可能な領域を探るというスクラッチ遊びの楽しさを向上することができる。
【0028】
図3には第1絵柄層12、スクラッチ層13及び第2絵柄層14の形成態様の変形例を示した。
図3(a)に示すように、第1領域22を円形と五芒星の形状を組み合わせた形状とし、これらにより囲まれた領域a〜領域kの11個の領域に第1絵柄21を描画する。すなわち、第1絵柄層12に複数の第1絵柄21を描画し、各々の第1絵柄が第1領域22で囲まれるようにする。そして、この複数の第1絵柄21のうちの一部に重ねてスクラッチ層13及び第2絵柄層14を形成するようにしても良い。
【0029】
例えば、図3(b)に示すように領域i及び領域jに重ねてスクラッチ層13及び第2絵柄層14を形成することや、図3(c)に示すように領域a、領域b、領域d及び領域eに重ねてスクラッチ層13及び第2絵柄層14を形成することが可能である。
また、図3(d)に示すように離隔した領域c及び領域hに重ねてスクラッチ層13及び第2絵柄層14を形成することが可能である。このようにスクラッチ層13及び第2絵柄層14を形成する箇所が離隔した2以上の複数の領域であっても良い。
また、図3(e)に示すように第1絵柄層12の第1絵柄21をなすキャラクタを組み合わせ、キャラクタの輪郭を第1領域22として使用するようにしても良い。
【0030】
図3(a)〜(e)の構成とする場合には、図3(a)のように第1領域22が配置された絵柄を複数のスクラッチカード10で共通する絵柄として使用し、各スクラッチカード10において図3(b)〜(e)のように削り取ることが可能な領域が異なるようにすることで、削り取ることが可能な部分を探すという興趣を持たせることができ、スクラッチ遊びの楽しさを向上することができる。
また、図3(b)、(c)ように隣り合う複数の領域に跨ってスクラッチ層13及び第2絵柄層14を形成する場合に、スクラッチ層13及び第2絵柄層14により隠蔽される第1領域22に対応する絵柄を第2絵柄層14に描画することで、一見して削り取ることが可能な領域がわからないようにすることができる。
【0031】
また、図3(f)に示すようにキャラクタの一部を第1絵柄21としても良い。ここではキャラクタの顔を第1絵柄21とし、顔の輪郭に沿った部分を第1領域22としている。そして、図3(g)に示すようにスクラッチ層13及び第2絵柄層14を形成し、削り取ることで顔の表情が変化するようにしても良い。
【0032】
図4には第1領域22及び第2領域32における色彩の配列の変形例を示した。
図4(a)に示すように第1領域22を複数の色彩で構成しても良い。ここでは円環状の第1領域22の上半部と下半部で異なる色彩としている。そして、図4(b)に示すように第2領域32も同じ色彩の配列とし、図4(c)に示すように同色の部分が隣接して配されるように第2絵柄層14を形成する。
このような色彩の配列とした場合には、印刷時のずれによって色彩が切り替わる部分で第1領域22と第2領域32の色彩が一致しない箇所が発生するおそれがあるが、わずかな領域のみであり大部分は同色の部分が隣接して配されるため装飾性には影響しない。
【0033】
また、図4(d)に示すように第1領域22を複数の色彩で構成するとともにグラデーションとしても良い。ここでは円環状の第1領域22の上端から下端に向けて徐々に色彩が変化するグラデーションとしている。そして、図4(e)に示すように第2領域32も同じ色彩の配列とし、図4(f)に示すように同色の部分が隣接して配されるように第2絵柄層14を形成する。
このように色彩の配列をグラデーションとすることで、印刷時にずれが発生しても第1領域22と第2領域32との色彩の不一致がわかりにくくなり、装飾性の低下を防止することができる。
【0034】
本実施形態のスクラッチカード10は、遊戯者が互いにスクラッチカード10を提示し合って勝敗を決めるゲームに用いるものとなっている。
図5(a)に示すように、透明な袋状のリフィル51にスクラッチカード10を収納した状態で遊戯を行うことも可能である。
また、図5(b)に示すように、リフィル51に温度変化領域53を設け、リフィル51に収納したスクラッチカード10の能力を増強させるためのアイテムとして使用できるようにしても良い。
【0035】
このリフィル51は端部にリングファイル54への取り付けを可能とする取付部52が形成されており、図5(c)に示すようにリフィル51に収納したスクラッチカードをリングファイル54で複数管理することが可能である。
また、図5(a)に示すようにリフィル51の取付部52は、リフィル51の端部に開口しており、リングファイル54のリングを開閉することなくリングファイル54に着脱可能となっている。
これにより、遊戯中においてはリフィル51をリングファイル54に取り付けた状態で相手に提示するスクラッチカード10を選択し、リフィル51を引っ張ることで取り外してリフィル51に収納された状態のままスクラッチカード10を提示することが可能である。
また、リングファイル54の表面などに図5(b)に示したような温度変化領域53を設け、スクラッチカード10の能力を増強させるためのアイテムとして使用できるようにしても良い。
【0036】
次に、以上のようなスクラッチカードの製造方法について説明する。
まず、図6(a)に示すような紙やプラスチックからなるカード基材11の表面に、図6(b)に示すように第1絵柄21及び第1領域22が描画された第1絵柄層12を形成する第1工程を行う。第1絵柄層12の形成は、カード基材11の表面に直接印刷することにより行っても良いし、第1絵柄層12をなすフィルム等をカード基材11の表面に張り付けることにより行っても良い。なお、カード基材11の裏面に裏面絵柄層15を形成する工程も同様の工程で行う。
【0037】
次に、図6(c)に示すようにスクラッチ層13を第1絵柄層12の上に形成する第2工程を行う。この第2工程では、スクラッチ層13が第1絵柄21を隠蔽し、外周端部が第1領域22に位置するように形成する。
第1領域22は一定の幅を有するように設けられているので、スクラッチ層13を形成する際に多少のずれが生じても外周端部を第1領域22の幅内に収めることが可能である。
よって、印刷の際における位置合わせを必要以上に精密に行う必要はなく、スクラッチカード10の製造工程を簡単なものとすることができて、製造のコストを削減することができる。
【0038】
そして、図6(d)に示すように第2絵柄31及び第2領域32が描画された第2絵柄層14をスクラッチ層13の上に形成する第3工程を行う。この第3工程では、スクラッチ層13の外周端部が第2絵柄層14に設けた第2領域32の幅内に位置するように形成し、第2絵柄層14の外周端部が第1領域22においてスクラッチ層が存在しない位置に配されるようにする。
第2領域32は一定の幅を有するように設けられているので、第2絵柄層14を形成する際に多少のずれが生じてもスクラッチ層13の外周端部を第2領域32の幅内に収めることが可能である。
また、第1領域22は一定の幅を有するように設けられているので、第2絵柄層14を形成する際に多少のずれが生じても第2絵柄層14の外周端部を第1領域22の幅内に収めることが可能である。
よって、印刷の際における位置合わせを必要以上に精密に行う必要はなく、スクラッチカード10の製造工程を簡単なものとすることができて、製造のコストを削減することができる。
【0039】
また、第1絵柄層12の第1領域22と第2絵柄層14の第2領域32は、同じ色彩の配列となるようにされており、第2絵柄層14を形成する際には、第1領域22と、第2領域32と、における同色の部分が隣接して配されるようにする。
図1に示した第1領域22と第2領域32を有するスクラッチカード10では、第1領域22と第2領域32をいずれも同色の単色としており、第1絵柄層12に対する第2絵柄層14の角度がずれたとしても第1領域22と第2領域32における同色の部分が隣接して配される。
【0040】
図4に示した第1領域22と第2領域32を有するスクラッチカード10では、第1絵柄層12に対する第2絵柄層14の角度を合わせる必要があるが、上述したように多少のずれが生じても装飾性に大きな影響はないため、印刷の際における位置合わせを必要以上に精密に行う必要はなく、スクラッチカード10の製造工程を簡単なものとすることができて、製造のコストを削減することができる。
【0041】
以上のようなスクラッチカード10の製造によれば、第1領域22と第2領域32が同じ色彩の配列であって同色の部分が隣接して配されるようにするので、第1絵柄層12に対して第2絵柄層14がわずかにずれたとしても、第1領域22と第2領域32とで構成される領域の幅がわずかに変化する程度となるので、印刷のずれが装飾性に大きな影響を与えることを防止できる。
【0042】
なお、第1領域22の幅は、印刷工程において発生する可能性がある第1絵柄層12に対するスクラッチ層13や第2絵柄層14のずれ幅よりも広い幅とすることが好ましい。
また、第2領域32の幅は、印刷工程において発生する可能性があるスクラッチ層13に対する第2絵柄層14のずれ幅よりも広い幅とすることが好ましい。
【0043】
また、上述した工程の他に、スクラッチ層13の剥離を容易とするとともに第1絵柄層12を保護するための透明な保護層を第1絵柄層12とスクラッチ層13の間に形成する工程を含んでも良い。
この透明な保護層を形成した際には、第2絵柄層14の外周端部が保護層の外周端部と一致するか、第2絵柄層14の外周端部の方が保護層の外周端部よりも外側に位置して保護層を完全に覆うようにしても良い。透明な保護層は光を反射しやすいため、保護層が露出していると第2絵柄層14との反射率の違いから削り取ることが可能な領域がわかってしまうおそれがあるが、第2絵柄層14により完全に覆うようにすることで削り取ることが可能な領域がわかりにくくすることができる。
【0044】
また、スクラッチ層13と第2絵柄層14の間に、スクラッチ層13が透けることを防止し、第2絵柄の発色や装飾性を向上するための隠蔽層を形成する工程を含んでも良い。隠蔽層は第2絵柄層14を形成する範囲と同じ範囲に形成するようにする。
隠蔽層の色彩はどのようなものでも良いが、例えば不透明な白色とすることで、スクラッチ層13を確実に隠蔽できるとともに第2絵柄層14の発色に影響しないようにすることができる。また、隠蔽層の外周部分を第1領域22や第2領域32と同じ色彩の配列とし、第1領域22や第2領域32に対して同色の部分が隣接して配されるようにすることで、隠蔽層と第2絵柄層14との印刷のずれが生じて隠蔽層が露出した場合に目立たないようにすることができる。
【0045】
また、温度変化領域40を設けるために、温度により色彩が変化する塗料による印刷を行う工程を含んでも良い。
温度変化領域40は、複数種類のスクラッチカード10のうちの全てのスクラッチカード10に設けるようにしても良いし、一部のスクラッチカード10にのみ設けるようにしても良い。また、温度変化領域40を設ける場所や記載する情報は任意に設定可能である。
【0046】
また、以上の実施形態では、スクラッチカード10の表面の一部にスクラッチ層13を形成するようにしたが、周囲に第1領域22を有する第1絵柄21をスクラッチカード10の全面に描画し、当該第1絵柄21を隠蔽するようにスクラッチ層13を形成するようにしても良い。また、スクラッチカード10の両面にスクラッチ層13を形成するようにしても良い。
また、第1領域22は所定の幅を有する線状の領域としたが、これに限られるものではなく、第1絵柄21の周囲に第1領域22が存在していれば良く、第1絵柄21の背景全体が第1領域22をなすようにしても良い。第2領域32についても所定の幅を有する線状の領域としたが、これに限られるものではなく、第2絵柄31の周囲に第2領域32が存在していれば良く、第2絵柄31の背景全体が第2領域32をなすようにしても良い。
【0047】
また、以上の実施形態では、第2絵柄層14がスクラッチ層13を完全に隠蔽するようにしたが、第2絵柄層14が少なくともスクラッチ層13の外周端部を隠蔽していれば、削り取ることが可能な領域の外縁が把握しにくくなり、削り取ることが可能な領域を探るというスクラッチ遊びの楽しさを向上することができる。
例えば、第2絵柄層14においてスクラッチ層13の外周端部を覆う部分を除く一部にスクラッチ層13を覆わない開口部を設け、開口部からスクラッチ層13が露出するようにしても良く、第2絵柄層14を、スクラッチ層13の外周端部のみを覆うような円環状に形成し、円環状の第2絵柄層14の中央部分からスクラッチ層13が露出するようにしても良い。
この場合でも第2絵柄層14の外周部分では第1領域22と、第2領域32と、における同色の部分が隣接して配されるので境界をわかりにくくすることができ、開口部の存在からスクラッチ層13が存在することは容易に把握できるが、どの範囲まで削り取ることができるのかがわかりにくくなり、スクラッチ遊びの楽しさを向上することができる。
なお、第2絵柄層14に設ける開口部を透明な塗料で印刷することで構成し、開口部からスクラッチ層13が透けて見えるようにしても良い。
【符号の説明】
【0048】
10 スクラッチカード
11 カード基材
12 第1絵柄層
13 スクラッチ層
14 第2絵柄層
21 第1絵柄
22 第1領域
31 第2絵柄
32 第2領域
【要約】      (修正有)
【課題】カードの装飾性及びスクラッチ遊びの楽しさを向上することが可能なスクラッチカードを提供する。
【解決手段】スクラッチカード10は、カード基材と、カード基材の上に設けられ、少なくとも第1絵柄21が描画された第1絵柄層と、第1絵柄21を隠蔽するように第1絵柄層の上に設けられたスクラッチ層と、少なくともスクラッチ層の外周端部を隠蔽するようにスクラッチ層の上に設けられ、第2絵柄31が描画された第2絵柄層と、を備える。第1絵柄層は、第1絵柄の周囲に第1領域22を備え、第2絵柄層は、周縁に第1領域と同じ色彩の配列を有する第2領域32を備える。第1領域と、第2領域と、における同色の部分が隣接して配されるようにする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6