特許第6979118号(P6979118)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979118
(24)【登録日】2021年11月16日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】流体ダイ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20211125BHJP
   B41J 2/045 20060101ALI20211125BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20211125BHJP
【FI】
   B41J2/14 603
   B41J2/14 607
   B41J2/045
   B41J2/14 605
   B41J2/18
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-506154(P2020-506154)
(86)(22)【出願日】2017年9月20日
(65)【公表番号】特表2020-529938(P2020-529938A)
(43)【公表日】2020年10月15日
(86)【国際出願番号】US2017052519
(87)【国際公開番号】WO2019059905
(87)【国際公開日】20190328
【審査請求日】2020年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】511076424
【氏名又は名称】ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,シ−ラム
(72)【発明者】
【氏名】チェン,チエン−フア
(72)【発明者】
【氏名】カンビー,マイケル,ダブリュー
【審査官】 佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−124615(JP,A)
【文献】 特表2013−501655(JP,A)
【文献】 特表2016−508460(JP,A)
【文献】 特表2013−532594(JP,A)
【文献】 特開2015−180551(JP,A)
【文献】 特開2002−192723(JP,A)
【文献】 特開2017−144634(JP,A)
【文献】 特開2017−001247(JP,A)
【文献】 米国特許第06055002(US,A)
【文献】 特開2014−237323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体ダイであって:
流体ダイの長さに沿って画定された少なくとも1つの流体流路を包含している流体流路層;および
流体流路層に結合された介在層を含み、介在層は:
介在層に画定され、少なくとも1つの流体流路の各々を流体源へと流体的に結合する多数の流入ポート;および
介在層に画定され、少なくとも1つの流体流路の各々を流体源へと流体的に結合する多数の流出ポートを含み、
多数の流入ポートおよび多数の流出ポートは流体ダイの長さに沿って配置され、少なくとも1つの流体流路の各々において流体ダイの長さに沿って流体の流れを生じさせる、流体ダイ。
【請求項2】
介在層に画定された流入ポートおよび流出ポートは流体ダイの長さに沿って交互に配置されて流体流路層内部の流体流動の一様性を増大させる、請求項1の流体ダイ。
【請求項3】
介在層に結合されたキャリア基板を含み、キャリア基板は、流入ポートおよび流出ポートに対応して画定された多数の開口部を含む、請求項1または2の流体ダイ。
【請求項4】
流体ダイの長さに沿って画定された少なくとも1つの流体流路は少なくとも2つの流体流路を含み、
この少なくとも2つの流体流路はそれらの間にリブを画定し、そして
リブは流体流路の長さにわたって延伸し、または長さに沿って断続的である、請求項1から3のいずれか1の流体ダイ。
【請求項5】
少なくとも1つの流体流路の内部の流体の流れは、流入ポートおよび流出ポートの内部の流体の流れに対して垂直である、請求項1から4のいずれか1の流体ダイ。
【請求項6】
流体ダイは液体吐出デバイスであって、
流体吐出デバイスから流体を吐出する流体吐出ダイを含み:
流体流路層は流体吐出ダイ内部に画定された多数の流体供給孔を介して流体ダイへと流体的に結合されている、請求項1から5のいずれか1の流体ダイ。
【請求項7】
流体供給孔の内部に配置された多数の微小流体ポンプを含む、請求項6の流体ダイ。
【請求項8】
流体吐出デバイスの少なくとも一部は成形可能な材料の内部にオーバーモールドされている、請求項またはの流体ダイ。
【請求項9】
流体ダイの内部で流体を再循環させるためのシステムであって:
流体リザーバ;
流体リザーバに流体的に結合された流体ダイを含み、流体ダイは:
流体ダイの長さに沿って画定された少なくとも1つの流体流路を包含している流体流路層;および
流体流路層に結合された介在層を含み、介在層は:
介在層に画定され、少なくとも1つの流体流路の各々を流体源へと流体的に結合する多数の流入ポート;および
介在層に画定され、少なくとも1つの流体流路の各々を流体源へと流体的に結合する多数の流出ポートを含み、多数の流入ポートおよび多数の流出ポートは流体ダイの長さに沿って配置され、少なくとも1つの流体流路の各々において流体ダイの長さに沿って流体の流れを生じさせ;そして
流体リザーバおよび流体ダイに流体的に結合され、流入ポートおよび流出ポートを通して流体を移動させるのに十分な圧力差を作用させる外部ポンプを含む、システム。
【請求項10】
流体ダイは:
流体吐出ダイ内部に画定された多数の流体供給孔を介して流体流路層に流体的に結合された流体吐出ダイを含み、流体吐出ダイは:
多数のノズル;および
ノズルへと流体的に結合されてノズルを通して流体を吐出する、流体噴射チャンバのアレイを含み、
多数の流体供給孔は噴射チャンバのアレイに流体的に結合されている、請求項9のシステム。
【請求項11】
介在層に結合されたキャリア基板を含み、キャリア基板は、流入ポートおよび流出ポートに対応して画定された多数の開口部を含む、請求項9または10のシステム。
【請求項12】
流体流動構造であって:
流体流動構造の長さに沿って画定された少なくとも1つの流体流路を包含している流体流路層;および
流体流路層に結合された介在層を含み、介在層は:
介在層に画定され、少なくとも1つの流体流路の各々を流体源へと流体的に結合する多数の流入ポート;および
介在層に画定され、少なくとも1つの流体流路の各々を流体源へと流体的に結合する多数の流出ポートを含み、
多数の流入ポートおよび多数の流出ポートは流体ダイの長さに沿って配置され、少なくとも1つの流体流路の各々において流体ダイの長さに沿って流体の流れを生じさせる、流体流動構造。
【請求項13】
介在層に結合されたキャリア基板を含み、キャリア基板は、流入ポートおよび流出ポートに対応して画定された多数の開口部を含む、請求項12の流体流動構造。
【請求項14】
介在層に画定された流入ポートおよび流出ポートは流体ダイの長さに沿って交互に配置されて流体流路層内部の流体流動の一様性を増大させる、請求項12または13の流体流動構造。
【請求項15】
流体流路層および介在層は成形可能な材料中に圧縮成形されている、請求項12から14のいずれか1の流体流動構造。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
流体カートリッジまたはプリントバーにある流体吐出ダイは、シリコン基板の表面上に、複数の流体吐出素子を含んでいてよい。流体吐出素子を賦活することにより、流体は基板上に印刷されうる。流体吐出ダイは、流体が流体吐出ダイから吐出されるようにするために用いられる、抵抗素子または圧電素子を含んでいてよい。流体は、流体吐出素子が存在しているチャンバと流体的に結合されているスロットおよび流路(チャネル)を通じて、流体吐出素子へと流れるようにされる。
【図面の簡単な説明】
【0002】
添付図面は本願に記載の原理の種々の例を説明するものであり、明細書の一部をなしている。説明される例は単に例示のために与えられるものであり、特許請求の範囲を限定するものではない。
【0003】
図1Aは、本願に記載の原理の例に従う流体流動構造の斜視図である。
【0004】
図1Bは、本願に記載の原理の例に従う図1Aの流体流動構造の、図1AのA−A線に沿って示した断面図である。
【0005】
図1Cは、本願に記載の原理の例に従う図1Aの流体流動構造の、図1AのB−B線に沿って示した断面図である。
【0006】
図2は、本願に記載の原理の例に従う図1Aの流体流動構造の展開図である。
【0007】
図3は、キャリアに結合された、本願に記載の原理の例に従う図1Aの流体流動構造の等測図である。
【0008】
図4は、本願に記載の原理の例に従う図1Aの流体流動構造を含む、印刷流体カートリッジのブロック図である。
【0009】
図5は、本願に記載の原理の例に従う、基材幅のプリントバー中にある多数の流体流動構造を含む印刷装置のブロック図である。
【0010】
図6は、本願に記載の原理の例に従う、多数の流体流動構造を含むプリントバーのブロック図である。
【0011】
図7は、本願に記載の原理の例に従う、流体流動構造を形成するための方法の流れ図である。
【0012】
図面全体を通して、同一の参照番号は類似した、しかし必ずしも同一ではない要素を指定している。図面は必ずしも縮尺通りではなく、幾つかの部品の大きさは、図示の例をより明確に説明するために誇張されている場合がある。さらにまた、図面は詳細な説明と首尾一貫した例および/または実施形態を提示している;しかしながら詳細な説明は、図面に提示された例および/または実施形態に限定されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0013】
印刷で用いられる流体には、顔料を含有するインクおよび他の流体が含まれてよい。顔料を含有している流体は、顔料の沈降による不具合を受ける場合がある。顔料はインクビヒクルのような印刷可能な流体中に不溶性であってよく、印刷可能な流体中で安定化されていない場合には、集塊形成または凝集を行う個別の粒子を形成してよい。顔料の沈降速度は、顔料の大きさ、密度、形状、または凝集の度合いの相違に基づくものであってよい。顔料が印刷可能な流体から凝集したり沈降したりすることを防止するために、顔料は印刷可能な流体中に均一に分散されてよく、そして印刷可能な流体が印刷に使用されるときまで、分散形態で安定化されてよい。顔料は印刷可能な流体中に、ある粒径分布でもって存在してよいが、これは特に、安定性、光沢、および光学密度(「OD」)といった動作性能に基づいて選択されてよい。
【0014】
さらに、顔料が沈降する場合には、印刷可能な流体がその顔料と共に、望ましくない印刷エラーを生ずることなく印刷を行う準備ができていることを確実にするために、デキャップを用いてよい。顔料の沈降は、流体吐出素子が印刷可能な流体を吐出するために使用するノズルの閉塞を惹き起こし、結果的に、例えば最適未満の高さを有するプリント幅などの、最適ではない印刷性能に帰着する。この顔料沈降が壊滅的でなければ、ノズルは関連する印刷装置において、デキャップ処理の形でペン(プリントヘッド)の保守を行う連続工程によって回復されうる。しかしながら、印刷可能な流体の吐出が意図したように行われることを確保するためにデキャップ処理を使用してよいとは言え、そうした処理を行うには時間がかかり、また印刷製品の生成速度は低下する。
【0015】
顔料の沈降および続いてのノズルのキャップ化(閉塞)が生じないか、または緩和されることが確実になるように、印刷可能な流体の微小再循環を使用してよい。微小再循環プロセスは、プリントヘッドの噴射チャンバ、流体吐出素子、およびノズルの内部にまたは隣接して、多数の微小再循環流路を形成することを含んでいる。印刷可能な流体を微小再循環流路を介して移動させるために、多数の外部ポンプおよび/または内部ポンプを使用してよい。微小再循環流路は、バイパス流体経路として役立ち、そして内部ポンプおよび外部ポンプと共に、印刷可能な流体を噴射チャンバを通して再循環させる。しかしながら、抵抗素子の形態であってよい、微小再循環ポンプによって発生される廃熱が、印刷可能な流体中にとどまり、例えばプリントヘッドダイ内部のシリコン層を含めて、プリントヘッドダイの温度を上昇させる。この温度の上昇は、印刷媒体に、ユーザーが知覚可能な熱的欠陥を生成する。このことは、微小再循環の広範な使用、および顔料の沈降およびノズルのキャップ化を低減または排除するというその利点に対する制約となりうる。
【0016】
幾つかのプリントヘッドおよびプリントヘッドダイアーキテクチャは低い作動温度を維持することが可能であるが、内部の抵抗器ベースのポンプを含む微小再循環システムからの廃熱は、所望とする作動温度を超えて廃熱を上昇させうる。さらに、幾つかのプリントヘッドおよびプリントヘッドダイアーキテクチャにおいては、マクロ、メソ、および微小(ミクロ)再循環システムの設計上、微小流路が流体供給孔(例えば、インク供給孔(IFH))、噴射チャンバ、流体吐出素子、ノズル、またはこれらの組み合わせから離れて配置されることがあり、ダイを効果的に冷却することができない。
【0017】
本願に記載された例は、流体ダイの長さに沿って画定された少なくとも1つの流体流路を包含している流体流路層を含む、流体ダイを提供する。この流体ダイはまた、流体流路層に結合された介在層を含んでいる。介在層は、介在層に画定された多数の流入ポートを含んでおり、少なくとも1つの流路層を流体源へと流体的に結合し、また介在層に画定された多数の流出ポートを含んでおり、少なくとも1つの流路層を流体源へと流体的に結合する。
【0018】
介在層に画定される流入ポートおよび流出ポートの数は、最小限の流体経路に基づいていてよい。最小限の流体経路は、流体流路層内部の流体流動の一様性を増大させるために、介在層に画定される流入ポートおよび流出ポートの数によって規定されてよい。
【0019】
流体ダイは、介在層に結合されたキャリア基板を含んでいてよい。キャリア基板は、流入ポートおよび流出ポートに対応して画定された、多数の開口部を含んでいてよい。
【0020】
流体ダイはまた、流体供給孔の内部に配置された、多数の微小流体ポンプを含んでいてよい。また、少なくとも1つの流体流路の内部の流体の流れは、流入ポートおよび流出ポートの内部の流体の流れに対して垂直であってよい。流体ダイは、流体吐出デバイスから流体を吐出する流体吐出ダイを含む、流体吐出デバイスであってよい。流体流路層は、流体吐出ダイの内部に画定された多数の流体供給孔を経由して、流体吐出ダイに流体的に結合されてよい。また、流体吐出デバイスの少なくとも一部は、成形可能な材料の内部にオーバーモールドされていてよい。
【0021】
本願に記載の例はまた、流体ダイの内部で流体を再循環させるためのシステムを提供する。このシステムは、流体リザーバ、および流体リザーバに流体的に結合された流体ダイを含んでいてよい。流体ダイは、流体流路層を含んでいてよい。流体流路層は、流体ダイの長さに沿って画定された少なくとも1つの流体流路、および流体流路層に結合された介在層を含んでいてよい。介在層は、介在層に画定された多数の流入ポートを含んでいてよく、少なくとも1つの流路層を流体源へと流体的に結合し、また介在層に画定された多数の流出ポートを含んでいてよく、少なくとも1つの流路層を流体源へと流体的に結合する。システムはまた、流体リザーバおよび流体ダイに流体的に結合された外部ポンプを含んでいてよく、流入ポートおよび流出ポートを通して流体を移動させるのに十分な圧力差を作用させる。
【0022】
流体吐出ダイは、流体吐出ダイ内部に画定された多数の流体供給孔を介して流体流路層へと流体的に結合された、流体吐出ダイを含んでいてよい。この流体吐出ダイは、多数のノズル、およびノズルへと流体的に結合された流体噴射チャンバのアレイを含んでいてよく、ノズルを通して流体を吐出する。多数の流体供給孔は、噴射チャンバのアレイへと流体的に結合されている。
【0023】
システムはまた、介在層に結合されたキャリア基板を含んでいてよい。キャリア基板は、流入ポートおよび流出ポートに対応して画定された、多数の開口部を含んでいてよい。また、流体吐出デバイスの少なくとも一部は、成形可能な材料の内部にオーバーモールドされていてよい。
【0024】
本願に記載の例はまた、流体流動構造を提供する。この流体流動構造は、流体吐出デバイスの長さに沿って画定された少なくとも1つの流体流路を含有する、流体流路層を含んでいてよい。流体流動構造はまた、流体流路層に結合された介在層を含んでいてよい。この介在層は、介在層に画定された多数の流入ポートを含んでいてよく、少なくとも1つの流路層を流体源へと流体的に結合し、また介在層に画定された多数の流出ポートを含んでいてよく、少なくとも1つの流路層を流体源へと流体的に結合する。
【0025】
流体流動構造はまた、介在層に結合されたキャリア基板を含んでいてよく、このキャリア基板は、流入ポートおよび流出ポートに対応して画定された、多数の開口部を含む。介在層に画定される流入ポートおよび流出ポートの数は、最小限の流体経路に基づいていてよい。最小限の流体経路は、流体流路層内部の流体流動の一様性を増大させるために、介在層に画定される流入ポートおよび流出ポートの数によって規定されてよい。また、1つの例においては、流体流動構造の流体流路層および介在層は、成形可能な材料中に圧縮成形されていてよい。
【0026】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用するところでは、用語「アクチュエータ」は、ノズルから流体を吐出させる任意のデバイス、または任意の他の非吐出型のアクチュエータを指している。例えば、流体吐出ダイのノズルから流体を吐出するよう動作するアクチュエータは、例えばキャビテーション気泡を生成して流体を吐出させる抵抗器または流体吐出ダイのノズルから流体を押し出す圧電アクチュエータであってよい。非吐出型のアクチュエータの例である再循環ポンプは、流体吐出ダイ内部の通路、流路、および経路を通して流体を移動させ、そして任意の抵抗デバイス、圧電デバイス、または他の微小流体ポンプデバイスであってよい。
【0027】
また、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用するところでは、用語「ノズル」は、表面上へと流体を分配する、流体吐出ダイの個々の部品を指している。ノズルは、少なくとも1つの吐出チャンバ、およびノズルの開口を通して流体を吐出チャンバ外へと押し出すのに使用されるアクチュエータと関連していてよい。
【0028】
また、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用するところでは、用語「流体印刷カートリッジ」は、印刷媒体上へとインクのような流体を吐出するのに使用される任意のデバイスを指してよい。一般に、印刷流体カートリッジは、インク、ワックス、ポリマー、生物流体、反応物質、被分析物、薬剤、または他の流体といった、流体を分配する流体吐出デバイスであってよい。流体印刷カートリッジは、少なくとも1つの流体吐出ダイを含んでいてよい。幾つかの例では、流体印刷カートリッジは例えば、印刷装置、3次元(3D)印刷装置、グラフィックプロッター、コピー機およびファクシミリ装置において使用されてよい。これらの例において、流体吐出ダイはインクまたは別の流体を、紙のような媒体上へと吐出して所望のイメージを形成してよく、または他の場合には所定量の流体を印刷媒体のデジタル的にアドレス指定された部分に配置してよい。
【0029】
また、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用するところでは、用語「長さ」は示された物体の長い方の、または最も長い寸法を指しており、これに対して「幅」は示された物体の短い方の、または最も短い寸法を指している。
【0030】
さらにまた、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用するところでは、用語「多数の」またはこれに類する言い回しは、1から無限までを含む任意の正の数として、広義に解されることを意図している。
【0031】
さて添付図面を参照すると、図1Aから図1Cは、流体吐出層(101)、流体流路層(140)および介在層(150)を含む、本願に記載の原理の例に従う流体吐出ダイ(100)の図である。特定的には、図1Aは、本願で流体吐出ダイ(100)として参照される、本願に記載の原理の例に従う流体流動構造の斜視図である。図1Bは、図1Aに示されたA−A線に沿って取った、本願に記載の原理の例に従う図1Aの流体吐出ダイ(100)の断面図である。図1Cは、図1Aに示されたB−B線に沿って取った、本願に記載の原理の例に従う図1Aの流体吐出ダイ(100)の断面図である。
【0032】
印刷媒体のような基材上に流体を吐出するために、流体吐出ダイ(100)は、流体吐出サブ(部分)アセンブリ(102)のアレイを含んでいる。簡単化のために、図1Aにおいては、1つの流体吐出サブアセンブリ(102)が、そして特にそのノズル開口部(122)が、図1Aにおける参照番号で示されている。さらにまた、流体吐出サブアセンブリ(102)および流体吐出ダイ(100)の相対的な大きさは縮尺通りではなく、流体吐出サブアセンブリ(102)が説明の目的で拡大されていることに留意すべきである。流体吐出ダイ(100)の流体吐出サブアセンブリ(102)は列またはアレイをなして配列されていてよく、かくして流体吐出サブアセンブリ(102)からの流体の、適切に順序付けられた吐出は、流体吐出ダイ(100)と印刷媒体が相互に相対的に移動されるにつれて、文字、符号、および/または他のグラフィックスまたはイメージが、印刷媒体上に印刷されるようにする。
【0033】
1つの例においては、アレイ内の流体吐出サブアセンブリ(102)は、さらにグループ化してよい。例えば、アレイ内の流体吐出サブアセンブリ(102)の第1のサブセット(部分集合)は、インクの1つの色、または1組の流体特性を有する流体の1つの種類に関連していてよく、これに対してアレイ内の流体吐出サブアセンブリ(102)の第2のサブセットは、インクの別の色、または流体特性の異なる組を有する流体に関連していてよい。流体吐出ダイ(100)はコントローラに結合されていてよく、コントローラは流体を流体吐出サブアセンブリ(102)から吐出するについて、流体吐出ダイ(100)を制御する。例えばコントローラは、文字、符号、および/または他のグラフィックスまたはイメージを印刷媒体上に形成する、吐出流体液滴のパターンを画定する。吐出流体液滴のパターンは、コンピューティング装置から受け取った、印刷ジョブコマンド、および/またはコマンドパラメータによって決定される。
【0034】
図1Bおよび図1Cは、A−A線およびB−B線のそれぞれに沿う、流体吐出ダイ(100)の断面図である。図1Bおよび図1Cにおける参照番号104は、内蔵された横断流路を指しており流体流動を指すものではなく、流体流動は点線の矢印によって示されている。また、図面内または紙面内に向かう流体流動の表示は、中に十字を有する円によって示されており、これに対して、図面外または紙面外に向かう流体流動の表示は(もし存在するとすれば)、中に点を有する円によって示される。また、矢尻のついた引き出し線は、矢尻のない引き出し線と対照的に、空所または他の空白部分を示している。
【0035】
特に、図1Bおよび図1Cは、アレイの流体吐出サブアセンブリ(102)を示している。簡単化のために、図1Bおよび図1Cにおいては、1つの流体吐出サブアセンブリ(102)が参照番号で示されている。流体を吐出するために、流体吐出サブアセンブリ(102)は多数の部品を含んでいる。例えば、流体吐出サブアセンブリ(102)は、吐出する所定量の流体を保持する吐出チャンバ(110)、所定量の流体を吐出するノズル開口部(112)、および吐出チャンバ(110)内に配置され、所定量の流体をノズル開口部(112)を通じて吐出する流体吐出アクチュエータ(114)を含んでいてよい。吐出チャンバ(110)およびノズル開口部(112)は、流体吐出層(101)の流体供給孔基板(118)の上部に配置される、流体吐出層(101)のノズル基板(116)に画定されていてよい。幾つかの例においては、ノズル基板(116)はSU−8または他の材料で形成されていてよい。
【0036】
流体吐出アクチュエータ(114)について見ると、流体吐出アクチュエータ(114)は、噴射抵抗器または他のサーマルデバイス、圧電素子、または吐出チャンバ(110)から流体を吐出するための他の機構を含んでいてよい。例えば、流体吐出アクチュエータ(114)は噴射抵抗器であってよい。噴射抵抗器は印加された電圧に応じて加熱される。噴射抵抗器が加熱されると、吐出チャンバ(110)内にある流体の一部が気化してキャビテーション気泡を形成する。このキャビテーション気泡は流体をノズル開口部(112)から、印刷媒体上へと押し出す。気化された流体の気泡が破裂すると、流体は流体供給孔(108)から吐出チャンバ(110)へと引き込まれ、この過程が繰り返される。この例においては、流体吐出ダイ(100)はサーマルインクジェット(TIJ)流体吐出ダイ(100)であってよい。
【0037】
別の例においては、吐出流体アクチュエータ(114)は圧電デバイスであってよい。電圧が印加されるにつれて、圧電デバイスは形状を変化させ、これが吐出チャンバ(110)内に圧力パルスを生成して、流体をノズル開口部(112)から、印刷媒体上へと押し出す。この例においては、流体吐出ダイ(100)はピエゾ電気型インクジェット(PIJ)流体吐出ダイ(100)であってよい。
【0038】
流体吐出ダイ(100)はまた、流体供給孔基板(118)に形成された多数の流体供給孔(108)を含んでいる。流体供給孔(108)は流体を、対応する吐出チャンバ(110)へ、また対応する吐出チャンバ(110)から配送する。幾つかの例においては、流体供給孔(108)は流体供給孔基板(118)の穿孔された膜に形成される。例えば、流体供給孔基板(118)はシリコンから形成されていてよく、そして流体供給孔(108)は、流体供給孔基板(118)の一部を形成する、穿孔されたシリコン膜に形成されていてよい。すなわち、この膜には孔が穿孔されていてよく、この孔はノズル基板(116)と接合された場合に吐出チャンバ(110)と整列して、吐出過程において流体が流入および流出する経路を形成する。図1Bおよび図1Cに示されているように、各々の吐出チャンバ(110)には2つの流体供給孔(108)が対応していてよく、これらの図面において飛び出したウィンドウに描かれた矢印によって示されているように、この対のうち1つの流体供給孔(108)は吐出チャンバ(110)への入口となり、他方の流体供給孔(108)は吐出チャンバ(110)からの出口となる。幾つかの例においては、流体供給孔(108)は円形の孔、角が丸められた正方形の孔、または他の種類の通路であってよい。
【0039】
流体吐出ダイ(100)はまた、流体流路層(140)に画定された多数の流体流路(104)を含んでいてよい。流体流路(104)は、流体吐出デバイスの長さに沿って、流体流路層(140)の内部に画定される。流体流路(104)は、流体供給孔基板(118)の背面側と流体的に連絡するように形成されてよく、そして流体供給孔基板(118)の内部に画定された流体供給孔(108)に流体を配送し、またそこから流体を配送する。1つの例においては、各々の流体流路(104)は、流体供給孔(108)のアレイの多数の流体供給孔(108)へと、流体的に結合されている。すなわち、流体は流体流路(104)に流入し、流体流路(104)を通って流動し、それぞれの流体供給孔(108)へと通過し、次いで流体供給孔(108)から流体流路(104)内へと出て、関連する流体配送システムにある他の流体と混合される。幾つかの例においては、流体流路(104)を通る流体経路は、矢印によって示されているように、流体供給孔(108)を通る流れに対して垂直である。すなわち、流体は流入口に入り、流体流路(104)を通って流動し、それぞれの流体供給孔(108)へと通過し、次いで流出口から出て、関連する流体配送システムにある他の流体と混合される。流入口、流体流路(104)、および流出口を通る流れは、図1Bおよび図1Cにおいて矢印によって示されている。
【0040】
流体の流路(104)は、任意の数の表面によって画定されている。例えば、流体流路(104)の1つの表面は、流体供給孔(108)が画定されている流体供給孔基板(118)の膜部分によって画定されていてよい。別の表面は少なくとも部分的に、介在層(150)によって画定されていてよい。
【0041】
アレイの個々の流体流路(104)は流体供給孔(108)および特定の行の対応する吐出チャンバ(110)に対応していてよい。例えば、図1Aに描かれているように、流体吐出サブアセンブリ(102)のアレイは複数の行をなして配列されてよく、そして各々の流体流路(104)は行と整列されてよく、かくしてある行にある流体吐出サブアセンブリ(102)は、同じ流体流路(104)を共有してよい。図1Aは流体吐出サブアセンブリ(102)の行を直線で描いているが、流体吐出サブアセンブリ(102)の行は傾斜状、湾曲状、山形状、互い違い状、またはその他の配向または配列であってよい。従ってこれらの例においては、流体流路(104)は同様に、傾斜状、湾曲状、山形状、またはその他の配向または配列であって、流体吐出サブアセンブリ(102)の配置と整列してよい。別の例においては、特定の行の流体供給孔(108)は、複数の流体流路(104)に対応していてよい。すなわち、この行は直線状であってよいが、流体流路(104)は傾斜状であってよい。流体吐出サブアセンブリ(102)の2行に対応している流体流路(104)について特定的に参照したが、流体吐出サブアセンブリ(102)のより多くの行、またはより少ない行が、単一の流体流路(104)に対応していてよい。
【0042】
さらに、図1Bおよび図1Cに描かれているように、複数の流体流路(104)はリブ(141)によって隔てられていてよい。リブ(141)は、流体吐出層(101)のノズル基板(116)および流体供給孔基板(118)を含む層を、流体流路層(140)の上側に支持するのに役立ちうる。1つの例においては、リブ(141)は流体流路(104)の長さにわたって、隣接する流体流路(104)の間を延伸する。別の例においては、リブ(141)は流体流路(104)の長さに沿って断続的であってよい。
【0043】
幾つかの例においては、流体流路(104)は流体を、流体供給孔(108)のアレイの異なるサブセットの行へと配送する。例えば、図1Bに描かれているように、複数の流体流路(104)は流体を第1のサブセット(122−1)にある流体吐出サブアセンブリ(102)の行へと配送してよく、また第2のサブセット(122−2)にある流体吐出サブアセンブリ(102)の行に配送してよい。この例においては、1つの種類の流体、例えば第1の色の1つのインクを、第1のサブセット(122−1)へと対応する流体流路(104)を経由して提供してよく、また第2の色のインクを、第2のサブセット(122−2)へと対応する流体流路(104)を経由してい提供してよい。具体的な例においては、モノクロの流体吐出ダイ(100)は、少なくとも1つの流体流路(104)を、流体吐出サブアセンブリ(102)の複数のサブセット(122)にわたって実装してよい。こうした流体吐出ダイ(100)は、多色の印刷流体カートリッジにおいて使用してよい。
【0044】
これらの流体流路(104)は、流体吐出ダイ(100)を通過する流体流動の増大を促進する。例えば、流体流路(104)がなければ、流体吐出ダイ(100)の背面側を通過する流体は、流体供給孔(108)に十分近接して流動しない可能性があり、流体吐出サブアセンブリ(102)を介して流れる流体と十分に混合されない。しかしながら、流体流路(104)は流体を流体吐出サブアセンブリ(102)付近に引き入れ、かくしてより大きな流体混合を促進する。増大された流体流動はまた、使用済みの流体が流体吐出サブアセンブリ(102)から取り出されることによってノズルの健全性を改善させるが、この使用済みの流体は、流体吐出サブアセンブリ(102)の全体にわたって再使用された場合には、流体吐出サブアセンブリ(102)に損傷を与える可能性がある。
【0045】
さらに、より冷たい流体が流体流路(104)を通過し、流体供給孔(108)の中へ、そして流体流路(104)へと戻って移動するにつれて、この冷たい流体は、流体吐出アクチュエータ(114)から熱伝達を通じて熱を取り去ることにより、流体吐出アクチュエータ(114)が冷却されるようにする。かくして、流体吐出サブアセンブリ(102)によって吐出される流体はまた、流体吐出ダイ(100)の内部で流体吐出アクチュエータ(114)を冷却する冷却剤としても役立ち、次いで流体吐出ダイ(100)を全体として冷却する。
【0046】
しかしながら、流体が流体吐出ダイ(100)の長さに沿って、第1の流体吐出アクチュエータ(114)を越えて流動するにつれて、流体はそれが第1の流体吐出アクチュエータ(114)へと導入された時点よりも相対的に高温になる。流体は、それが連続する第1の流体吐出アクチュエータ(114)を越えて通過されるにつれて、段々と高温になる。このことは、流体が流体吐出ダイ(100)の一端から他端へと流体吐出アクチュエータ(114)の行を辿って移動するにつれて、その冷却剤としての効果を段々と小さくさせるものであり、流体が最初に流体流路(104)へと導入される流体吐出ダイ(100)の第1の端部が、流体が流体流路(104)から出て行く流体吐出ダイ(100)の第2の端部よりも相対的に冷たいという熱勾配を、流体吐出ダイ(100)の長さに沿って生成させる。流体吐出ダイ(100)におけるこの熱勾配を低減させまたは排除するために、流体流路層(140)の流体吐出層(101)とは反対側に、流体流路層(140)に隣接して介在層(150)を含めてよい。
【0047】
介在層(150)は、多数の流入ポート(151)および流出ポート(152)を含んでいてよい。1つの例においては、流入ポート(151)と流出ポート(152)は、ほぼ3.8ミリメートル(mm)のピッチで離隔されていてよい。介在層(150)に画定された流入ポート(151)および流出ポート(152)の大きさ、数、および位置は、流体流路(104)内部での流体流動の所望の速度に基づいていてよく、流体流路(104)内部での圧力を最適化することを考慮に入れてよい。かくして、任意の数の流入ポート(151)および流出ポート(152)を介在層(150)内部に画定してよい。さらに、流入ポート(151)および流出ポート(152)の大きさは、流体流路(104)内部の局在圧力を最適化するために、お互いに異なっていてよい。かくして、流入ポート(151)および流出ポート(152)の大きさ、および流入ポート(151)および流出ポート(152)の各々に提供される流体の圧力は、設計の最適化を可能にするため、相互に異なっていてよい。
【0048】
流体流路(104)が流体吐出ダイ(100)の長さの大部分を通って延びているとすると、流入ポート(151)および流出ポート(152)は、他の場合には流体流路(104)を介して生じうる圧力降下を管理するのに役立つ。1つの例においては、流体流路(104)の厚さおよび幅は、流体流路(104)内部における圧力降下を最小限とするために、増大または低減されてよい。
【0049】
さらに、流入ポート(151)および流出ポート(152)は、新鮮な冷たい流体を流体流路(104)および流体吐出層(101)へと提供するのに役立ち、かくして他の場合には流体吐出ダイ(100)の長さに沿って存在しうる何らかの温度勾配は、低減または排除されてよい。1つの例においては、多数の外部ポンプが、流体流路(104)、流入ポート(151)、および流出ポート(152)へと流体的に結合されてよい。流体流動の矢印によって示されているように、外部ポンプは、流体が流入ポート(151)および流出ポート(152)内外へと流動するようにし、並びに流体流路(104)の内外へと流動するようにする。冷たい流体が流入ポート(151)、流体流路(104)、そして流体吐出サブアセンブリ(102)の流体供給孔(108)および吐出チャンバ(110)へと常時流入していれば、新鮮な冷たい流体が流体吐出層(101)に利用可能とされる。さらに、流体吐出サブアセンブリ(102)の流体吐出アクチュエータ(114)によって加熱された流体を、流体吐出層(101)および流体流路(104)から流出ポート(152)を用いて引き出すことによって、熱はシステムから連続的に取り去られ、そして流体吐出ダイ(100)に沿った熱勾配は形成されない。
【0050】
1つの例においては、添付図面は流体流路(104)、流入ポート(151)、および流出ポート(152)の側壁を真っ直ぐに描いているが、幾つかの例においては、側壁は、ジグザグの側壁のような、起伏のある、または真っ直ぐでない側壁を含んでいてよい。さらに、柱または他の構造体を含めて、微小流路に乱流を生成してよく、流体供給孔(108)を通る流体の微小再循環の、流体流路(104)、流入ポート(151)、および流出ポート(152)を通る流体のマクロ再循環への結合を促進してよい。
【0051】
1つの例においては、多数の内部ポンプを使用して、流体供給孔(108)および吐出チャンバ(110)を含む微小再循環流路、並びに流体流路(104)、流入ポート(151)、および流出ポート(152)のような相対的により大きなマクロ再循環流路を通して、流体を移動させてよい。これらの内部ポンプは、再循環ポンプの形態であってよく、これは流体吐出ダイ(100)の内部で経路、流路、および他の通路を通して流体を移動させる、非吐出型のアクチュエータの1つの例である。再循環ポンプは、任意の抵抗性デバイス、圧電デバイス、または他の微小流体ポンプデバイスであってよい。
【0052】
図2は、本願に記載の原理の例に従う、図1Aの流体吐出ダイ(100)の展開図である。任意の製造プロセスを使用して、流体吐出層(101)は、流体流路層(140)内部に画定された流体流路(104)が流体吐出層(101)の多数の流体吐出サブアセンブリ(102)と整列するように、流体流路層(140)に結合される。介在層(150)は、介在層(150)の画定された流入ポート(151)および流出ポート(152)が、流体流路層(140)内部に画定された流体流路(104)と整列するように、流体流路層(140)と整列される。
【0053】
図3は、本願に記載の原理の例に従う、キャリア基板(300)に結合された、図1Aの流体吐出ダイ(100)の等測図である。キャリア基板(300)は、そこに画定された多数のキャリア開口部(301)を含んでいてよく、それらは介在層(150)に画定された流入ポート(151)および流出ポート(152)と整列する。また、多数の電気接触パッド(302−1、302−2)が、流体吐出ダイ(100)およびキャリア基板(300)のそれぞれに含まれていてよい。多数の電気トレース(303)が、これらの電気接触パッド(302−1、302−2)を相互に電気的に結合してよい。電気接触パッド(302−1、302−2)および電気トレース(303)は、流体が制御装置によって命令された通りに分配されるように、流体吐出サブアセンブリ(102)の流体吐出アクチュエータ(114)に賦活パルスを提供するのに役立つ。
【0054】
1つの例においては、流体吐出ダイ(100)の少なくとも一部は、成形可能な材料の内部にオーバーモールドされてよい。1つの例においては、成形可能な材料は、流体吐出層(101)の吐出側を除いて、流体吐出ダイ(100)の全ての側を覆って成形されてよい。また、成形可能な材料は、電気接触パッド(302−1、302−2)および電気トレース(303)を覆って成形されてよく、これらの要素が環境または他の要素、或いは力と接触することがないように保護を行う。成形可能な材料はまた、流体流路(104)、流体吐出層(101)に画定された流入ポート(151)および流出ポート(152)、並びにキャリア基板(300)に画定された開口部(301)を除いて、流体吐出ダイ(100)およびキャリア基板(300)を部分的に覆ってよい。
【0055】
図4は、本願に記載の原理の例に従う、図1Aの流体吐出ダイ(100)を含む印刷流体カートリッジ(400)のブロック図である。印刷流体カートリッジ(400)は、流体吐出ダイ(100)に流体を再循環させるための任意のシステムであってよく、少なくとも1つの流体吐出ダイ(100)を収容するハウジング(401)を含んでいてよい。ハウジング(401)はまた、流体吐出ダイ(100)と流体的に連結され、流体を流体吐出ダイ(100)へと提供する流体リザーバ(450)を収容してよい。
【0056】
多数の外部ポンプ(460)が、ハウジング(401)の内側および/または外側に配置されていてよい。流体リザーバ(450)に結合された外部ポンプ(460、470)は、流体流路(104)並びに流入ポート(151)および流出ポート(152)を通して流体を移動させるのに十分な圧力差を発生させることにより、流体が流体流路(104)並びに流入ポート(151)および流出ポート(152)の内外へと移動するに際して、流体を流体吐出ダイ(100)の内外へと給送するのに役立つ。
【0057】
図5は、本願に記載の原理の例に従う、基材幅のプリントバーに多数の流体吐出ダイ(100)を含む印刷装置(500)のブロック図である。この印刷装置(500)は、印刷基材(536)の幅にわたるプリントバー(534)、プリントバー(534)と関連された多数のフローレギュレータ(538)、基材搬送機構(540)、流体リザーバ(図4、450)のような印刷流体供給部(542)、およびコントローラ(544)を含んでいてよい。コントローラ(544)は、プログラミング、プロセッサ(単数または複数)、および関連のメモリを、印刷装置(500)の作動素子を制御する他の電子回路および部品と共に表している。プリントバー(534)は、流体をカットシートまたは連続紙、或いはまたは他の印刷基材(536)上へと分配するための、流体吐出ダイ(100)の配列を含んでいてよい。各々の流体吐出ダイ(100)は流体を、流体供給部(542)からフローレギュレータ(538)内を通って延びる流体経路を通して、そしてプリントバー(534)に画定された多数のトランスファー成形された流体流路(546)を通して受け取る。
【0058】
図6は、本願に記載の原理の例に従う、多数の流体吐出ダイ(100)を含むプリントバー(600)のブロック図である。幾つかの例においては、流体吐出ダイ(100)は、上述したように、細長い一体型のモールド(650)に埋め込まれている。流体吐出ダイ(100)は端から端まで、多数の行(648−1、648−2、648−3、648−4、ここではまとめて648として示す)で配置されている。1つの例においては、流体吐出ダイ(100)は互い違い状の構成で配置されていてよく、そこにおいては各々の行にある流体吐出ダイ(100)は、同じ行(648)にある別の流体吐出ダイ(100)と重なり合う。この配置において、流体吐出ダイ(100)の各々の行は、図6において点線で示されているように、少なくとも1つの流体流路(104)から流体を受け取る。図6は、互い違い状の流体吐出ダイ(100)の第1の行(648−1)に供給している4つの流体流路(104)を描いている。しかしながら、各々の行はそれぞれ、少なくとも1つの流体流路(104)を含んでいてよい。1つの例においては、プリントバー(600)は、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックのような4つの異なる色の流体またはインクを印刷するように設計されていてよい。この例では、異なる色の流体は、個々の流体流路(104)へと分配または給送されていてよい。
【0059】
図7は、本願に記載の原理の例に従う、流体吐出ダイ(100)を形成するための方法(700)の流れ図である。この方法(700)によれば、ノズルサブアセンブリ(図1、102)および流体供給孔(図1、108)のアレイが形成(ブロック701)されて、流体吐出層(101)が生成される。幾つかの例においては、流体供給孔(図1、108)は、穿孔されたシリコン膜の一部であってよい。ノズルサブアセンブリ(図1、102)、またはより正確にはノズルサブアセンブリ(図1、102)のノズル開口部(図1、112)および吐出チャンバ(図1、110)は、SU−8のようなノズル基板(図1、116)に画定されてよい。従って、流体供給孔(図1、108)を含めてノズルサブアセンブリ(図1、102)のアレイを形成すること(ブロック701)は、穿孔されたシリコン膜をSU−8のノズル基板(図1、116)と接合することを含んでいてよい。
【0060】
多数の流体流路(図1、104)を形成(ブロック702)してよい。この流体流路(図1、104)を形成すること(ブロック702)は、数ある製造プロセスの中でも、トランスファー成形プロセス、材料堆積プロセス、または材料融除プロセスを含んでいてよい。流体流路(図1、104)が流路層(140)に形成され、そしてノズルサブアセンブリ(図1、102)が流体吐出層(101)に形成されたなら、多数の流入ポート(151)および流出ポート(152)を介在層(150)に形成してよい(ブロック703)。流体吐出層(101)、流体流路層(140)、および介在層(150)は、図1Aから図1Cに示されているように、相互に結合されてよく、または多数の材料堆積または融除工程を使用して形成されてよく、流体吐出ダイ(100)が形成される。
【0061】
明細書および図面では、流体吐出デバイスの長さに沿って画定された少なくとも1つの流体流路を含む流体流路層を含有する流体ダイが記載されている。この流体ダイはまた、流体流路層に結合された介在層を含んでいる。介在層は、介在層に画定された多数の流入ポートを含み、少なくとも1つの流路層を流体源へと流体的に結合し、そして介在層に画定された多数の流出ポートを含み、少なくとも1つの流路層を流体源へと流体的に結合する。
【0062】
こうした流体吐出ダイを使用すると、特に、1)流体中の水分濃度を維持することによってノズルの閉塞の蓋然性が低減され、デキャップ処理が低減または排除され、2)噴射チャンバおよびノズルに対するより効率的な微小再循環が促進され、3)ノズルの健全性が改善され、4)ダイ近傍での流体の混合がもたらされて印刷品質が向上され、そして5)流体吐出ダイが対流によって冷却される。本願に開示されたデバイスは、多くの技術分野における他の事項および不具合に対処してよいと考えられる。かくしてこの流体吐出ダイは、本願に記載されたプリントヘッドダイアーキテクチャのすべての利点を提供し、そして同時に、顔料の沈降および熱的欠陥の問題に対処する。
【0063】
以上の記載は、記載された原理の例を説明および記述するために提示されたものである。この記載は完全であることを意図したものではなく、またこれらの原理を開示された任意の形態だけに限定することを意図したものでもない。上記の教示に照らして、多くの修正および変形が可能である。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7