特許第6979119号(P6979119)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979119
(24)【登録日】2021年11月16日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】注射器の遅延式カートリッジ穿孔機構
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/145 20060101AFI20211125BHJP
   A61M 5/158 20060101ALI20211125BHJP
【FI】
   A61M5/145 510
   A61M5/158 500Z
【請求項の数】13
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-506916(P2020-506916)
(86)(22)【出願日】2018年8月2日
(65)【公表番号】特表2020-530336(P2020-530336A)
(43)【公表日】2020年10月22日
(86)【国際出願番号】US2018044993
(87)【国際公開番号】WO2019032374
(87)【国際公開日】20190214
【審査請求日】2020年3月4日
(31)【優先権主張番号】62/543,725
(32)【優先日】2017年8月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518123372
【氏名又は名称】ウェスト ファーマ サービシーズ イスラエル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】特許業務法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バルエル ヨッシ
(72)【発明者】
【氏名】イーガル ギル
(72)【発明者】
【氏名】フィルマン リューベン ワイ
【審査官】 鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/196934(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0320990(US,A1)
【文献】 特表2016−516553(JP,A)
【文献】 特表2013−504405(JP,A)
【文献】 特表2012−516737(JP,A)
【文献】 カナダ国特許出願公開第02990453(CA,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/145
A61M 5/158
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投与される物質を収めたカートリッジを受容可能に構成され、前記カートリッジが穿孔可能な隔壁により封止された開口を有する注射器であって、
注射器ハウジングと、
前記注射器ハウジングに対して移動可能に取り付けられた起動ボタンアセンブリであって、非作動位置から作動位置へ移動可能な起動ボタンアセンブリと、
退避位置と注射位置との間を移動可能な注射針であって、前記退避位置では、当該注射針の少なくとも先端が前記注射器ハウジングの内部に収まり、前記注射位置では、当該注射針の少なくとも前記先端が前記注射器ハウジングから突出可能に構成された注射針と、
開放端と、前記カートリッジを受容可能に構成された内部チャンネルと、前記内部チャンネルのなかに設けられ、前記注射針と流体接続されたカートリッジ穿孔針であって、前記カートリッジの前記穿孔可能な隔壁を完全に貫通して、前記カートリッジのなかの前記物質を前記注射針と流体接続可能に構成されたカートリッジ穿孔針と、を備え、前記注射器ハウジングに対し、開いた位置と閉じた位置との間を移動可能に取り付けられたカートリッジドアと、
前記カートリッジドアの前記内部チャンネルへの、前記カートリッジ穿孔針が前記穿孔可能な隔壁を完全には貫通しないシール位置に向けた前記カートリッジの挿入深さを制限するように設定された休止位置を有する偏向可能な干渉部材と、
を備え、
前記カートリッジドアは、前記カートリッジの前記シール位置において、前記閉じた位置へ移動可能であり、
前記カートリッジドアの前記閉じた位置での、前記非作動位置から前記作動位置への前記起動ボタンアセンブリの移動により、前記干渉部材がその休止位置から偏向させられ、前記カートリッジドアの前記内部チャンネルへの、前記カートリッジ穿孔針が前記穿孔可能な隔壁を完全に貫通するシール解除位置に向けた前記カートリッジの更なる前進が許容され、
前記干渉部材は、片持ちアームを備え、
前記片持ちアームは、前記カートリッジドアに接続された第1端を有するとともに、前記カートリッジドアの前記開放端に近い第2自由端に向けて延在する、
注射器。
【請求項2】
前記カートリッジに対し、当該カートリッジから前記物質を排出させるように係合可能な駆動アセンブリであって、前記起動ボタンアセンブリと動作係合し、前記非作動位置から前記作動位置への前記起動ボタンアセンブリの移動に際して前記シール位置から前記シール解除位置へ前記カートリッジを駆動するように構成された駆動アセンブリをさらに備える、
請求項1に記載の注射器。
【請求項3】
前記内部チャンネルは、前記カートリッジの長さを超える長さを有する、
請求項1または2に記載の注射器。
【請求項4】
前記カートリッジドアは、側壁を有し、前記片持ちアームが、前記カートリッジドアの側壁の偏向可能な部分を形成する、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の注射器。
【請求項5】
前記片持ちアームは、前記カートリッジドアの側壁と一体的に形成された、
請求項に記載の注射器。
【請求項6】
前記カートリッジドアの側壁は、前記片持ちアームが前記休止位置にあるときに、前記片持ちアームの前記第2自由端に、第1内周を画成するとともに、前記カートリッジドアの側壁は、前記片持ちアームが前記休止位置から偏向させられたときに、前記片持ちアームの前記第2自由端に、第2内周を画成し、前記第1内周は、前記内部チャンネルに挿入可能な前記カートリッジの最大の外周よりも小さく、これにより、前記カートリッジドアの前記内部チャンネルへの前記カートリッジの挿入深さが制限され、前記第2内周は、前記カートリッジの前記最大の外周よりも大きく、これにより、前記カートリッジドアの前記内部チャンネルへの前記カートリッジの更なる前進を可能とする、
請求項4または5に記載の注射器。
【請求項7】
前記起動ボタンアセンブリは、当該アセンブリから、テーパ面を有する末端へ延在するポストを備え、前記ポストは、前記ポストが前記起動ボタンアセンブリの非作動位置から前記起動ボタンアセンブリの作動位置へ移動する際に沿うポスト経路を有し、前記片持ちアームは、当該アームから前記ポスト経路に向けて横方向に延在するタブを備え、前記タブは、前記ポストの前記テーパ面に向くフック状の端部を有し、前記カートリッジドアの前記閉じた位置での、前記非作動位置から前記作動位置への前記起動ボタンアセンブリの移動により、前記ポストが前記タブと係合させられ、前記テーパ面が、前記フック状の端部と係合し、これを横方向に移動させて、前記片持ちアームを前記休止位置から離れるように偏向させる、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の注射器。
【請求項8】
前記起動ボタンアセンブリは、前記注射針と動作接続され、前記非作動位置から前記作動位置への前記起動ボタンアセンブリの移動が、前記注射針を、前記退避位置から前記注射位置へ移動させる、
請求項1〜のいずれか一項に記載の注射器。
【請求項9】
前記カートリッジドアは、前記注射器ハウジングに対し、前記開放端とは反対側の前記カートリッジドアの端部において、枢動可能に取り付けられた、
請求項1〜のいずれか一項に記載の注射器。
【請求項10】
注射器ハウジングと、
退避位置と注射位置との間を移動可能な注射針であって、前記退避位置では、当該注射針の少なくとも先端が前記注射器ハウジングの内部に収まり、前記注射位置では、当該注射針の前記少なくとも先端が前記注射器ハウジングから突出可能に構成された注射針と、
前記注射器ハウジングに対して移動可能に取り付けられるとともに、前記注射針に対して動作接続され、非作動位置から作動位置へ移動して、前記注射針を、前記退避位置から前記注射位置へ駆動可能に構成された起動ボタンアセンブリと、
前記注射器ハウジングに対し、開いた位置と閉じた位置との間を移動可能に取り付けられたカートリッジドアと、
偏向可能な干渉部材と
を備え、
前記カートリッジドアは、
開放端と、
内部にカートリッジが取り付けられ、前記カートリッジが、投与される物質を収容するとともに、穿孔可能な隔壁により封止された開口を当該カートリッジの前端に、フランジをその後端に、夫々有する内部チャンネルと、
前記内部チャンネルのなかに取り付けられ、前記注射針と流体接続され、前記カートリッジの前記穿孔可能な隔壁を完全に貫通して、前記カートリッジのなかの前記物質を前記注射針と流体接続させるように構成されたカートリッジ穿孔針と
備え、
前記干渉部材は、休止位置で前記カートリッジの後端の前記フランジに係合し、前記カートリッジドアの前記内部チャンネルへの前記カートリッジの挿入深さをシール位置に制限し、
前記カートリッジ穿孔針は、前記シール位置では、前記穿孔可能な隔壁を完全には貫通せず、
前記カートリッジドアは、前記カートリッジの前記シール位置において、前記閉じた位置へ移動可能であり、
前記カートリッジドアの前記閉じた位置での、前記非作動位置から前記作動位置への前記起動ボタンアセンブリの移動により、前記干渉部材が、前記カートリッジの後端の前記フランジとの係合状態から偏向させられ、前記カートリッジドアの前記内部チャンネルへの、前記カートリッジ穿孔針が前記穿孔可能な隔壁を完全に貫通するシール解除位置に向かう前記カートリッジの更なる前進が許容され、
前記干渉部材は、片持ちアームを備え、
前記片持ちアームは、前記カートリッジドアに接続された第1端を画成し、前記カートリッジドアの前記開放端に近い第2自由端に向けて延在する、
注射器。
【請求項11】
前記カートリッジドアは、側壁を有し、前記片持ちアームは、前記カートリッジドアの側壁の偏向可能な部分を形成する、
請求項10に記載の注射器。
【請求項12】
前記カートリッジドアの側壁は、前記片持ちアームが前記休止位置にあるときに、前記片持ちアームの前記第2自由端に、第1内周を画成するとともに、前記カートリッジドアの側壁は、前記片持ちアームが前記休止位置から偏向させられたときに、前記片持ちアームの前記第2自由端に、第2内周を画成し、前記第1内周は、前記内部チャンネルに挿入可能な前記カートリッジの前記フランジの外周よりも小さく、これにより、前記カートリッジドアの前記内部チャンネルへの前記カートリッジの挿入深さが制限され、前記第2内周は、前記カートリッジの前記フランジの外周よりも大きく、これにより、前記カートリッジドアの前記内部チャンネルへの前記カートリッジの更なる前進を可能とする、
請求項11に記載の注射器。
【請求項13】
前記起動ボタンアセンブリは、当該アセンブリから、テーパ面を有する末端へ延在するポストを備え、前記ポストは、前記ポストが前記起動ボタンアセンブリの非作動位置から前記起動ボタンアセンブリの作動位置へ移動する際に沿うポスト経路を有し、前記片持ちアームは、当該アームから前記ポスト経路に向けて横方向に延在するタブを備え、前記タブは、前記ポストの前記テーパ面に向くフック状の端部を有し、前記カートリッジドアの前記閉じた位置での、前記非作動位置から前記作動位置への前記起動ボタンアセンブリの移動により、前記ポストが前記タブと係合させられ、前記テーパ面が、前記フック状の端部と係合し、これを横方向に移動させて、前記片持ちアームを前記休止位置から離れるように偏向させる、
請求項10〜12のいずれか一項に記載の注射器。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、2017年8月10日付けで提出された米国仮特許出願第62/543725号(発明の名称「カートリッジ装填時における刺入の防止」)に基づく優先権を主張し、その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、概して、カートリッジ装填式の注射器に関し、より具体的には、カートリッジを、当該装置が使用のために起動させられるまで、シール状態で装填されたままに維持するように構成されたカートリッジ装填式の注射器に関する。
【0003】
例えば、薬剤注射器等の注射器は、投与される物質を収めたカートリッジが装填されるのが一般的である。カートリッジは、使用者に対する投与に先立って予め充填しておくことが可能であるし、使用前に使用者が充填することも可能である。概して、カートリッジは、注射器への充填、つまり、挿入前に封止され、注射器への装填中に封が解除されて、カートリッジのなかの物質を、注射器の注射針と流体接続状態に置く。
【0004】
このような手順の1つの欠点は、装填後のカートリッジが、装置の起動、つまり、使用者に対する物質の注射前に、過度に長い期間に亘ってシール解除状態で放置されかねないことである。封が解除されたカートリッジは、漏れおよび/または汚染を受け易く、少なくともそのカートリッジを、使用に適さないものにする。または、封が解除されたカートリッジのなかの物質は、注射針に続く流体経路に流れ込むとともに、装置の起動前に乾燥または固化することで、流体経路を潜在的に塞ぎ、注射器を使用不能とする可能性がある。さらに、カートリッジは、その封が一度解除されると、再度使用することができない。よって、使用者がカートリッジを注射器に装填するのが早過ぎたり、さもなければ注射が実行されなかったりすると(例えば、装置の不具合)、封が解除されたカートリッジが無駄になる。
【0005】
よって、装置が使用のために起動させられるまで、カートリッジをシール状態で装填されたままに維持可能に構成された注射器を作製することに利点がある。
【発明の概要】
【0006】
簡潔にいえば、本開示の一態様は、投与される物質を収めたカートリッジを受容可能に構成され、カートリッジが穿孔可能な隔壁により封止された開口を有する注射器に関する。注射器は、注射器ハウジングと、注射器ハウジングに対して移動可能に取り付けられた起動ボタンアセンブリと、を備え、起動ボタンアセンブリは、非作動位置から作動位置へ移動可能である。注射針は、退避位置と注射位置との間を移動可能であり、退避位置では、当該注射針の少なくとも先端が注射器ハウジングの内部に収まり、注射位置では、当該注射針の少なくとも先端が注射器ハウジングから突出する。カートリッジドアは、注射器ハウジングに対し、開いた位置と閉じた位置との間を移動可能に取り付けられる。カートリッジドアは、開放端と、カートリッジを受容可能に構成された内部チャンネルと、内部チャンネルのなかに設けられ、注射針と流体接続されたカートリッジ穿孔針と、を備える。カートリッジ穿孔針は、カートリッジの穿孔可能な隔壁を完全に貫通して、カートリッジのなかの物質を注射針と流体接続可能に構成される。偏向可能な干渉部材は、カートリッジドアの内部チャンネルへの、カートリッジ穿孔針が穿孔可能な隔壁を完全には貫通しないシール位置に向けたカートリッジの挿入深さを制限するように設定された休止位置を有する。カートリッジドアは、カートリッジのシール位置において、閉じた位置へ移動可能であり、カートリッジドアの閉じた位置での、非作動位置から作動位置への起動ボタンアセンブリの移動により、干渉部材がその休止位置から偏向させられ、カートリッジドアの内部チャンネルへの、カートリッジ穿孔針が穿孔可能な隔壁を完全に貫通するシール解除位置に向けたカートリッジの更なる前進が許容される。
【0007】
本開示の他の形態は、注射器ハウジングと、退避位置と注射位置との間を移動可能な注射針と、を備える注射器に関する。注射針は、退避位置において、少なくともその先端が注射器ハウジングの内部に収まり、注射位置において、少なくともその先端が注射器ハウジングから突出する。起動ボタンアセンブリは、注射器ハウジングに対して移動可能に取り付けられるとともに、注射針に対して動作接続され、非作動位置から作動位置へ移動して、注射針を、退避位置から注射位置へ駆動可能に構成される。カートリッジドアは、注射器ハウジングに対し、開いた位置と閉じた位置との間を移動可能に取り付けられる。カートリッジドアは、開放端と、内部にカートリッジが取り付けられ、カートリッジが、投与される物質を収容するとともに、穿孔可能な隔壁により封止された開口を当該カートリッジの前端に、フランジをその後端に、夫々有する内部チャンネルと、内部チャンネルのなかに取り付けられ、注射針と流体接続されたカートリッジ穿孔針と、を備える。カートリッジ穿孔針は、カートリッジの穿孔可能な隔壁を完全に貫通して、カートリッジのなかの物質を注射針と流体接続させるように構成される。偏向可能な干渉部材は、当該干渉部材の休止位置において、カートリッジの後端フランジと係合して、カートリッジドアの内部チャンネルへの、カートリッジ穿孔針が穿孔可能な隔壁を完全には貫通しないシール位置に向かうカートリッジの挿入深さを制限可能に構成される。カートリッジドアは、カートリッジのシール位置において、閉じた位置へ移動可能であり、カートリッジドアの閉じた位置での、非作動位置から作動位置への起動ボタンアセンブリの移動により、干渉部材が、カートリッジの後端フランジとの係合状態から偏向させられ、カートリッジドアの内部チャンネルへの、カートリッジ穿孔針が穿孔可能な隔壁を完全に貫通するシール解除位置に向かうカートリッジの更なる前進が許容される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示の幾つかの態様に係る以下の詳細な説明は、添付の図面を参照しながら読むことで、より充分に理解される。しかし、本開示について、これが図示の正確な構成および手段に限定されるものではないことが理解されるべきである。
【0009】
図1図1は、本開示の一実施形態に係るウェアラブル注射器の上方および前方斜視図である。
図2図2は、図1の注射器の、図1に示す断面線2−2に沿った断面図であり、起動ボタンアセンブリが非作動位置にあり、注射針が退避位置にある。
図3図3は、図1の注射器の、図1に示す断面線2−2に沿った断面図であり、起動ボタンアセンブリが作動位置にあり、注射針が注射位置にある。。
図4図4は、図1の注射器の異なる要素の間の動作接続を示す模式図であり、注射器の起動に際して開始される動作接続を、点線により示す。
図5図5は、図1の注射器の上方、前方および左側方斜視図であり、注射器の上部カバーが取り外され、起動ボタンアセンブリが非作動位置にあり、カートリッジドアが開いた位置にあり、封止されたカートリッジが挿入されている。
図6図6は、図1の注射器の上方、前方および左側方斜視図であり、注射器の上部カバーが取り外され、起動ボタンアセンブリが非作動位置にあり、カートリッジドアが閉じた位置にあり、封止されたカートリッジが挿入されている。
図7図7は、図1の注射器の上方および右側方斜視図であり、注射器の上部カバー、駆動アセンブリおよびアクチュエータが取り外され、カートリッジドアが閉じた位置にあり、起動ボタンアセンブリが作動位置にあることで、カートリッジドアへのカートリッジの挿入深さを制限する干渉要素が曲げられている。
図8図8は、図1の注射器の上方、前方および左側方斜視図であり、注射器の上部カバーが取り外され、カートリッジドアが閉じた位置にあり、起動ボタンアセンブリが作動位置にあり、駆動アセンブリがカートリッジをシール解除位置にカートリッジドアのなかへさらに前進させている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明では、便宜上の理由のみにより、限定を目的とせずに幾つかの用語法が用いられる。「より低い」、「底部」、「より高い」および「上部」といった単語は、参照されるべき図面での方向を示す。「内方に」、「外方に」、「上方に」および「下方に」といった単語は、本開示に従い、注射器の幾何学的な中心およびその指定された部分に向けた方向およびそれらの中心ないし部分から離れる方向を夫々示す。特に言及されない限り、「a」、「an」および「the」といった用語は、単一の要素に限定されず、むしろ、「少なくとも1つ」を意味するものとして理解されるべきである。用語法は、以上で示した単語以外に、その派生語および類義の言葉を含む。
【0011】
本開示に係る要素の寸法または特徴について述べる際に本明細書で使用される「約」、「およそ」、「概して」および「実質的に」等の用語は、開示される寸法/特徴が厳格な境界またはパラメータではなく、機能的な近似性を損なわない僅かな差異を排斥するものではないことを示すものと理解されるべきである。最低限でも、数値的なパラメータを含む記載は、本技術分野で受け入れられている数学的または工業的な原理(例えば、四捨五入、計測または他のシステム上の誤差、製作公差等)を用いて少なくとも有効数字の変化を伴わない差異を包含する。
【0012】
図面を詳細に参照すると、全体を通じて同一の符号により同一の要素を示し、図1から図8は、本開示の一実施形態に係る注射器を、全体として符号10により示す。図示の実施形態では、注射器10は、限定的でない単なる例として、ウェアラブル薬剤注射器等のウェアラブル注射器(パッチ注射器)の形態であるが、本開示は、そのように限定されるものではない。本技術分野の当業者により理解されるように、注射器10は、概して、使用者、例えば、患者の皮膚表面(図示せず)と接触するように構成された第1表面14を有するハウジング12を備え、第1表面14は、開口14aを有する。図示の実施形態では、第1表面14は、注射器ハウジング12の基面を形成するが、本開示は、そのように限定されるものではない。ハウジング12はまた、第1表面14とは反対側の第2表面16を有する。図示の実施形態では、第2表面16は、注射器ハウジング12の上部外面を形成するが、本開示は、そのように限定されるものではない。
【0013】
図2および図3に示されるように、例えば、ポリマーまたは金属材料またはそれらの組み合わせの材料等で構成される針ハブ18は、注射器ハウジング12の内部に移動可能に取り付けられ、注射針20は、可動針ハブ18により、本技術分野の当業者により充分に理解される方法で支持される。図示の実施形態では、針ハブ18および注射針20は、注射針20の少なくとも先端20aが注射器ハウジング12の内部に収められる退避位置(図2)と、注射針20の少なくとも先端20Aが開口14aを介して注射器ハウジング12から突出する注射位置(図3)と、の間を、第1表面14に対して実質的に垂直な方向に延びる針軸A(図2)に沿って軸方向に移動可能である。しかし、本技術分野の当業者により理解されるように、針軸Aは、第1表面14に対して90°以外の角度で配置することも可能である。同様に、注射針20は、注射器ハウジング12の内部で、針ハブ18とは異なる機構により移動可能に取り付けることも可能である。
【0014】
例えば、ポリマーまたは金属材料またはそれらの組み合わせの材料等で構成される押込可能な起動ボタンアセンブリ22は、注射器ハウジング12に対して移動可能に取り付けられ、注射針20に対して動作接続される。起動ボタンアセンブリ20は、注射器10を起動させるため、非作動位置(図1、2)から作動位置(図3)へ、本技術分野の当業者により充分に理解される方法でボタン軸B(図2)に沿って移動可能、つまり、押込可能である。図示の実施形態では、ボタン軸Bは、針軸Aに対して平行であるが、本開示は、そのように限定されるものではない。注射器20の起動は、例えば、退避位置から注射位置へ注射針20を駆動して、注射を実行することを含むものである。
【0015】
図2および図3に示されるように、付勢部材24は、起動ボタンアセンブリ22および注射針20と動作接続されるが、本開示は、そのように限定されるものではない。代替的な例として、付勢部材24は、第2表面16および注射針20と接続することも可能である。付勢部材24は、起動ボタンアセンブリ22の非作動位置(図2)において、エネルギ貯蔵状態で安定しており、起動ボタンアセンブリ22が作動位置(図3)に移動させられたときに、エネルギ解放状態に解放され、退避位置から注射位置へ、針軸Aに沿って注射針20を駆動する。本技術分野の当業者により理解されるように、付勢部材24のエネルギ貯蔵状態は、付勢部材24が少なくとも幾らかのポテンシャルエネルギを貯蔵する状態である。付勢部材24のエネルギ解放状態は、エネルギ貯蔵状態から付勢部材24が以前に貯蔵していたポテンシャルエネルギの少なくとも幾らかを解放する状態である。
【0016】
図示の実施形態では、付勢部材24は、針ハブ18と起動ボタンアセンブリ22との間に取り付けられたコイルばねの形態であり、換言すれば、コイルばね24は、一端で起動ボタンアセンブリ22と接触し、他端で針ハブ18と接触する。エネルギ貯蔵状態では、コイルばね24は、少なくとも部分的に圧縮される。エネルギ解放状態では、コイルばね24は、(少なくとも部分的に圧縮されたエネルギ貯蔵状態に対して)伸張し、針ハブ18および注射針20を注射位置へ駆動する。しかし、当業者に理解されるように、付勢部材24は、エネルギを貯蔵しおよび解放することのできる他の部材の形態を代わりにとることも可能である。限定的でない例には、他のばね(例えば、トーションばねまたはリーフばね)および弾性バンド等がある。これに代え、付勢部材24は、起動ボタンアセンブリ22が作動位置に押し込まれたときに、過渡的な力を注射針20に印加可能に構成されたアクチュエータの形態であってもよい。
【0017】
注射器10は、カートリッジ28(図5〜8)を、例えば、摺動式に受容するための開放端26aと、カートリッジ28を収容するための内部チャンネル26bと、を画成するカートリッジドア26をさらに備える。内部チャンネル26bは、カートリッジ28を安定して収容することのできる寸法および形状が付与される。これに代え、内部チャンネル26bは、内部チャンネル26bにおけるカートリッジ28の収納および安定化のため、カートリッジクレイドル、カートリッジトラック、個別の安定化部材またはこれらの組み合わせ(図示せず)を備えてもよい。
【0018】
理解されるように、カートリッジ28は、第1開口28bおよび第2開口28cを有するリザーバ28aを備える。リザーバ28aは、物質(図示せず)、例えば、注射器10から注射針20を介して投与される薬剤を収容する。図示の実施形態では、カートリッジ28の第1開口28bは、遠位側の開口であるが、その位置は、そのように限定されるものではない。第1開口28bは、貫通可能な隔壁29により、本技術分野の当業者により充分に理解される方法で封止される。図示の実施形態では、カートリッジ28の第2開口28cは、近位側の開口であるが、その位置も、そのように限定されるものではない。第2開口28cは、リザーバ28aの内部に移動可能に設けられ、リザーバ28aの内部壁面と密閉式に係合するピストン27により、本技術分野の当業者により充分に理解される方法で封止される。リザーバ28aの内部の物質は、ピストン27と隔壁29との間に封入される。
【0019】
カートリッジ28の第2開口28cは、横方向に張り出したフランジ28dを備える。図示の実施形態では、フランジ28dは、環状のフランジであり、つまり、第2開口28cの全周から横方向に延在するが、本開示は、そのように限定されるものではない。理解されるように、フランジ28dは、第2開口28cの全周の一部(全体に満たない部分)のみから張り出させることも可能であるし、カートリッジ28の長さの方向のいずれかの箇所から横方向に張り出させることも可能である。図示のように、カートリッジ28のフランジ28dの外周は、カートリッジ28の最大の外周を形成する。図示の実施形態では、カートリッジ28の形状は、一連のおよそ円筒状の部分、例えば、円筒状の首部、本体およびフランジにより決定され、カートリッジ28のフランジ28dは、カートリッジ28の最大の外周を形成する(ただし、本開示は、そのように限定されるものではない)。
【0020】
カートリッジドア26は、注射器ハウジング20に対し、開いた位置(例えば、図5)と閉じた位置(例えば、図1、6〜8)との間で移動可能に取り付けられる。閉じた位置では、内部チャンネル26bは、注射器ハウジング12の外側からアクセス不能である。例えば、図示の実施形態では、カートリッジドア26の開放端26aは、注射器ハウジング12の部分により、内部チャンネル26bへのアクセスを阻害するのに充分なほどに覆われている。開いた位置では、カートリッジドア26の開放端26aは、少なくとも一部が覆われていない状態にあり、内部チャンネル26bは、少なくとも一部で開放端26aからアクセス可能である。カートリッジドア26が完全に開いた位置では、図5に示されるように、カートリッジドア26の開放端26aは、開放端26aを介しておよび内部チャンネル26bのなかへカートリッジ28を挿入可能とするのに充分なだけ露出させられる。
【0021】
図示の実施形態では、カートリッジドア26は、注射器ハウジング10に対し、例えば、内部チャンネル26bの閉じた、開放端26aとは反対側の遠位端の近くで、ピン接続具30を介して枢動可能に取り付けられるが、本開示は、そのように限定されるものではない。図5に示されるように、カートリッジドア26は、開いた位置において、注射器ハウジング12から離れるように枢動させられ、これにより、内部チャンネル26bが、カートリッジドア26の開放端26aからアクセル可能となる。注射器ハウジング12に対して移動可能に取り付けられるカートリッジドア26の限定的でない他の例は、米国特許出願公開第2018/0154081号(発明の名称:「投薬装置へのカートリッジの挿入」)に開示されており、その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0022】
カートリッジドア26は、内部チャンネル26bのなかに取り付けられたカートリッジ穿孔針26cをさらに備える。図4に図解によりされるように、カートリッジ穿孔針26cは、注射針20に対し、本技術分野の当業者により充分に理解される方法、例えば、穿孔針26cから注射針20へ延びる柔軟チューブ(図示せず)を介して流体接続される。図示の実施形態では、カートリッジ穿孔針26cは、内部チャンネル26bの閉じた、開放端26aとは反対側の遠位端の近くに配置される。カートリッジ穿孔針26cは、内部チャンネル26bのなかへ内方に延在し、カートリッジ28がカートリッジドア26に挿入されたときに、カートリッジ28の穿孔可能な隔壁29と向き合いかつこれと整列するように配置される、針26cの先端で終結する。カートリッジ穿孔針26cは、カートリッジ28の穿孔可能な隔壁29を貫通し、注射器10が起動させられたときに、以下により詳細に述べられるように、カートリッジ28のなかの物質を注射針20と流体接続するように構成される。
【0023】
注射器10は、装置の起動に続いて(カートリッジドア26の開放端26aおよびカートリッジ28の第2開口28cを介して)ピストン27と係合し、以下により詳細に説明されるように、物質をカートリッジ28から排斥するように配置されおよび構成された駆動アセンブリ32(図5、6および8、さらに、図解的に図4)をさらに備える。限定的でない例では、駆動アセンブリ32は、入れ子式の駆動アセンブリ、つまり、入れ子式の方法で互いに螺合させられ、これにより、少なくとも一方のシャフトの回転により少なくとも他方のシャフトを線形的に移動させる複数のねじ付きのシャフトの形態であることが可能であるが、本開示は、そのように限定されるものではない。入れ子式の駆動アセンブリの例は、米国特許出願公開第2016/0346478号(発明の名称:「入れ子式のシリンジストッパ・ドライバ駆動アセンブリの線形回転スタビライザ」)に開示されており、その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0024】
駆動アセンブリ32は、起動ボタンアセンブリ22と動作係合させられる。限定的でない例では、図4に図解により示されるように、注射器10は、非作動位置から作動位置への起動ボタンアセンブリ22の動作により(先に説明されたように)生ぜしめられる、退避位置から注射位置への注射針20の動きを(本技術分野の当業者により充分に理解される方法で)検出可能に構成されたセンサ34、例えば、光学位置センサを備えることが可能である。これに代えまたはこれに加え、センサ34は、非作動位置から作動位置への起動ボタンアセンブリ22自体の動きを検出するように構成することも可能である。センサ34は、制御アセンブリ36、例えば、プロセッサに接続し、プロセッサに対し、注射針20が注射位置に配置されることを示す出力信号を、(本技術分野の当業者により充分に理解される方法で)送信するように構成することも可能である。応答として、制御アセンブリ36を、アクチュエータ38を(本技術分野の当業者により充分に理解される方法で)起動させるように構成してもよい。アクチュエータ38の限定的でない例には、モータ、ばね作動式のアクチュエータ、ガス作動式のアクチュエータ、化学作動式のアクチュエータ、電動式のアクチュエータ、電気機械作動式のアクチュエータおよびそれらの組み合わせ等がある。起動に際し、アクチュエータ38は、駆動アセンブリ32を、ピストン27と未係合の初期位置からピストン27と係合した状態へ、(本技術分野の当業者により充分に理解される方法で)、例えば、相互結合された一連の回転可能なギアを介して駆動するように構成される。
【0025】
注射器10は、休止位置(図5、6)を有する偏向可能な干渉部材40をさらに備え、休止位置において、干渉部材40は、カートリッジドア26の内部チャンネル26bへのカートリッジ28の挿入深さを制限する。休止位置にある場合に、干渉部材40は、カートリッジ28が装填されるものの封止されたままとされる封止位置に至る、ドア26の内部チャンネル26bへのカートリッジ28の挿入を許容する。つまり、干渉部材40は、カートリッジ28が、穿孔針26cが穿孔可能な隔壁29を完全に貫通することにより、カートリッジ28のなかの物質を注射針20と流体接続する位置に達するのを阻害する。図示の実施形態では、カートリッジ穿孔針26cは、カートリッジ28の封止位置では、隔壁29とは係合しない。これに代え、カートリッジ穿孔針26cを、カートリッジ28の封止位置で、隔壁29を完全には貫通せず、部分的に貫通させるようにしてもよい。図5に最もよく示されるように、カートリッジドア26の内部チャンネル26bは、カートリッジ28の長さを超える長さを有する。よって、干渉部材40の休止位置では、カートリッジ28は、カートリッジドア26の内部チャンネル26bに対し、封止状態のままにありながら、閉じた位置へのカートリッジドア26の動きを許容するのに充分なほどに挿入可能である(図5および6)。
【0026】
図示の実施形態では、偏向可能な干渉部材40は、カートリッジドア26の側壁の偏向可能な部分を形成する、片持ち式の腕状部(アーム)または指状部の形態である。つまり、片持ちアーム40は、カートリッジドア26の側壁と一体的に形成、例えば、カートリッジドア26の側壁と同時成型され、第1端部でカートリッジドア26に接続され、(側壁の偏向可能な部分として)カートリッジドア26の開放端26aに近い第2自由端部40aへ延在する。しかし、本開示は、そのように限定されるものではなく、片持ちアーム40は、別個または個々に形成し、カートリッジドア26に直接的または間接的に接続するか、取り付けることが可能である。これに代え、偏向可能な干渉部材40は、限定するものではなく、例えば、ばね作動式の偏向可能な干渉部材等、本明細書で開示される干渉部材40の機能を発揮することのできる他の形態であってもよい。カートリッジドア26および偏向可能な干渉部材40は、例えば、いずれもポリマーまたは金属材料またはそれらの組み合わせ等から構成することが可能である。
【0027】
図5および6に示されるように、片持ちアーム40が休止位置にある場合に、片持ちアーム40の第2自由端部40aにおけるカートリッジドア26の内径D26は、後部フランジ28dにおけるカートリッジ28の外径D28よりも小さい。既に説明されたように、後部フランジ28dは、カートリッジ28の最大の外周を画成する。よって、片持ちアーム40の休止位置では、片持ちアーム40の第2自由端部40aにおけるカートリッジドア26の内周は、後部フランジ28dにおけるカートリッジ28の外周よりも小さい。カートリッジを挿入するためにカートリッジドア26が開けられたときに、片持ちアーム40は、休止位置に配置される。よって、片持ちアーム40の第2自由端部40aは、カートリッジドア26の内部チャンネル26bへのカートリッジ28の挿入の間に、カートリッジ28の後部フランジ28dと係合し、内部チャンネル26bへのカートリッジ28の更なる前進を阻害する。カートリッジドア26および穿孔針26cは、カートリッジ28が片持ちアーム40の第2自由端部40aにより係止されたときの内部チャンネル26bでの位置において、穿孔針26cがカートリッジ28の隔壁29を完全には貫通しない大きさであり、寸法が付与される。
【0028】
図5から図8に最もよく示されるように、起動ボタンアセンブリ22は、当該ボタン22から延在するポスト42を備える。図示の実施形態では、ポスト42は、起動ボタンアセンブリ22のカバー22aから下方に(つまり、ボタン軸Bに対して平行に)延在するが、本開示は、そのように限定されるものではない。図6および7に最もよく示されるように、ポスト42は、カバー22aとは反対側の末端に向けて先細りの形状である。ポスト42は、その長さの方向に沿って少なくとも部分的に窄まり始める。つまり、ポスト42は、ポスト42の全長の少なくとも一部に沿ったテーパ面42aを画成し、結果として、末端に向かう方向に徐々にポスト42が細くなる(違う見方をすれば、カバー22aに向かう方向に末端から徐々にポスト42が太くなる)。理解されるように、ポスト42は、その全長に亘って先細りとしてもよいし、その一部の長さに沿って先細りとしてもよい。ポスト42は、ボタン軸Bに対して平行なポスト経路Cを形成し、非作動位置から作動位置への起動ボタンアセンブリ22の動作の間に、このポスト経路Cに沿って移動する。
【0029】
片持ちアーム40は、カートリッジドア26の側壁からポスト経路Cに向けて横方向に延びるフック状のタブ44を形成する。カートリッジドア26の閉じた位置では、フック状のタブ44は、ポスト経路Cを通じて延在する(図6)。よって、カートリッジドア26の閉じた位置での、非作動位置から作動位置への起動ボタンアセンブリ22の動作により、ポスト42が、フック状のタブ44と係合させられる。ポスト42は、ポスト42のテーパ面42aがタブ44のフック端に向きかつカートリッジドア26から離れる方向に面した状態で、フック状のタブ44の中央孔部44aを介して摺動する。先細りのポスト42がタブ44の中央孔部44aを介して下方に移動するのに従い、ポスト42は、(逆テーパにより)その太さが増すことによりタブ44のフック端と係合し、これを横方向に移動させる。ポスト42のテーパ面42aは、その末端からカバー22aへ向けて、カートリッジドア26から離れる方向に傾けられている。よって、タブ44のフック端は、カートリッジドア26から離れるように横方向に動かされ、これにより、片持ちアーム40を、カートリッジドア26から離れる方向に休止位置を逸脱するように湾曲させる。理解されるように、ポスト42は、フック状のタブ44とのポスト42の係合により片持ちアーム40に湾曲が生じるように、片持ちアーム40よりも大きな曲げ剛性、つまり、曲げ変形/湾曲に対する抵抗を発揮するように構成することが可能である。このような特性は、ポスト42と片持ちアーム40との間の相対的な材料特性だけでなく、ポスト42と片持ちアーム40との間の相対的な寸法またはそれらの組み合わせによっても達成可能である。
【0030】
図7に示されるように、片持ちアーム40の湾曲位置において、片持ちアーム40の第2自由端部40aにおけるカートリッジドア26の内径D26は、後部フランジ28dにおけるカートリッジ28の外径D28よりも大きい。つまり、片持ちアーム40の湾曲位置では、片持ちアーム40の第2自由端部40aにおけるカートリッジドア26の内周は、後部フランジ28dにおけるカートリッジドア26の外周よりも大きい。図7に示されるように、片持ちアーム40の第2自由端部は、カートリッジ28の後部フランジ28dを越えて延在する。よって、(カートリッジドア26が閉じた位置にある状態で)起動ボタン22が非作動位置から作動位置へ押し込まれると、ポスト42により片持ちアーム40が湾曲させられた状態となり、カートリッジ28に対する妨害が解除され、カートリッジドア26の内部チャンネル26bへのカートリッジ28の更なる前進が可能となる。
【0031】
使用に際し、カートリッジドア26が開けられ、カートリッジ28の後部フランジ28dが休止位置にある片持ちアーム40の第2自由端部40aと係合するまで、カートリッジ28がカートリッジドア26の内部チャンネル26bに挿入される(図5)。カートリッジ28が封止されたままである点で有利である。その後、カートリッジドア26が閉じた位置へ動かされ、カートリッジドア26(およびその内部のカートリッジ28)が、注射器ハウジング20の内部に設置された駆動アセンブリ32と整列させられる。使用の準備が整うと、起動ボタンアセンブリ22が非作動位置から作動位置へ動かされ、既に説明されたように片持ちアーム40を湾曲させて、これをその休止位置から逸脱させ、カートリッジ28をカートリッジドア26の内部チャンネル26bへさらに前進自在とする。既に説明されたように、起動ボタンアセンブリ22が駆動アセンブリ32と動作接続されていることで、作動位置への起動ボタンアセンブリ22の移動により駆動アセンブリが前進し、ピストン27と係合する(図8)。駆動アセンブリ32とピストン27との間の初めの接触に際し、カートリッジ28は、封止されたままである。よって、ピストン27にかかる駆動アセンブリの駆動力によりカートリッジ28全体が前方に動かされることで、隔壁29が穿孔針26cにより完全に貫通され、カートリッジ28の封が解除される。
【0032】
一実施形態では、カートリッジ28は、停止面(図示せず)に達するまで前方へ駆動される。例えば、停止面は、カートリッジドア26の内壁から横方向かつ内方に突出し、穿孔針26cにより隔壁29が完全に貫通される際にカートリッジ28の後部フランジ28dと接触するように構成され、例えば、配置されかつ寸法が付与された段差部(図示せず)の形態であることが可能である。よって、カートリッジ28のなかの物質は、隔壁29の貫通をもって注射針20と流体接続するようになり、カートリッジ28の更なる前進が停止される。カートリッジ28の封が解除され、カートリッジ28が停止されると、ピストン27にかかる駆動アセンブリ32の更なる駆動力により、ピストン27がカートリッジ28のリザーバ28aを通じて前進させられ、リザーバ28aのなかの物質が穿孔針26cを介して注射針20へ流入し、注射針20から投与される。
【0033】
カートリッジ28は、起動ボタン22が作動位置に動かされるまで干渉部材40がカートリッジ28の完全な挿入を阻害するので、注射器10が使用のために起動させられるまで封止状態のまま維持される点で有利である。よって、注射器10の起動前に、注射器10に漏れ、汚染または流れの詰まりが生じることが回避される。さらに、注射器10が損傷を受けるか、そうでなければ、初めのカートリッジ28の装填と起動ボタンアセンブリ22の作動との間にエラーが発生しかつ認識されるなどして注射が行われない場合に、カートリッジ28は、封止されたままとなり、他の注射器10で使用することが可能である。
【0034】
以上で述べられた実施形態に対し、その広義の発明概念から逸脱することなく変更を加え得ることが、本技術分野の当業者により理解される。よって、本開示は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、本開示の精神および範囲における、添付の請求の範囲に記載される種々の変更例を含むことが意図されたものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8