(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上流側に位置する第一移送管の内部及び下流側に位置する第二移送管の内部に溶融ガラスを流通させることにより、前記溶融ガラスを移送する工程を含むガラス物品の製造方法であって、
前記第一移送管及び前記第二移送管は、白金又は白金合金により構成されており、
前記第一移送管は、前記溶融ガラスを流通させる管状部と、前記溶融ガラスが流出する開口部を有するフランジ部とを備えており、
前記管状部の内面における頂部と、前記第一移送管の前記開口部における上端部とが一致しており、
前記第二移送管は、前記第一移送管から流出する前記溶融ガラスが流入する開口部を有するフランジ部と、前記溶融ガラスを流通させる管状部とを備えており、
前記第一移送管の前記開口部と、前記第二移送管の前記開口部とが重ねられており、
前記第一移送管の前記管状部の内径は、前記第二移送管の前記管状部の内径と異なり、
前記第二移送管における前記開口部の上端部を、前記第一移送管における前記開口部の上端部よりも上方に配置することを特徴とするガラス物品の製造方法。
前記溶融ガラスを移送する工程は、前記第一移送管及び前記第二移送管の内面全てに前記溶融ガラスを接触させた状態で、前記溶融ガラスを移送する請求項4に記載のガラス物品の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の板ガラス製造方法では、移送管で移送される溶融ガラスからガス(泡)が発生する。このガスによって移送管の内部にガス溜まりが形成されると、ガラス供給管等を構成する白金材料の酸化が進行し、白金酸化物が溶融ガラスに混入する。その結果、製造される板ガラスにブツ等の異常が発生し、品質の低下や製品不良となる。
【0006】
このガス溜りは、清澄槽へ溶融ガラスを供給する移送管の下流側連結部で発生しやすい。このガス溜まりの発生原因について、
図10及び
図11を参照しながら説明する。
図10に示すように、移送管P1の開口部O1と、清澄槽Cの開口部O2とが一致している場合には、溶融ガラスGMは、ガス溜まりを発生させることなく、移送管P1及び清澄槽Cの内部を流通する。
【0007】
しかしながら、例えば1450℃〜1600℃程度の高温の溶融ガラスGMが流通することから、当該溶融ガラスGMの移送中に移送管P1はその長手方向に膨張することになる。この膨張により、
図11に示すように、移送管P1の開口部O1が上方に移動し、清澄槽Cの開口部O2との位置ずれが生じてしまう。これにより、移送管P1の下流側連結部の上側に溶融ガラスGMが停滞する部分が発生し、当該部分にガス溜まりGAが生じることとなる。
【0008】
また、清澄槽を構成する移送管に溶融ガラスを充満させる場合、すなわち当該移送管に気相空間を設けることなく溶融ガラスを移送する場合には、清澄槽を構成する移送管の下流側連結部でガス溜りが発生し易い。
【0009】
このガス溜まりの発生原因について
図12を参照しながら説明する。
図12に示すように、清澄槽Cの下流側端部の下側部分(底部)に後続の移送管P2が接続されている。清澄槽Cの下流側端部の底部に開口部O3が形成されている。移送管P2は、その開口部O4が清澄槽Cの開口部O3に一致するように当該清澄槽Cに接続される。移送管P2が清澄槽Cの底部に形成される開口部O3に接続されていることから、清澄槽Cの下流側連結部の上側に溶融ガラスGMが停滞する部分が発生し、当該部分にガス溜まりGAが生じることとなる。また、ガス溜まりGAの発生は、例えば1500℃〜1650℃程度の高温の溶融ガラスGMが清澄槽C内を流通することにも因る。
【0010】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、溶融ガラスを流通させる移送管の内部でガス溜まりが発生することを防止できるガラス物品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、上流側に位置する第一移送管の内部及び下流側に位置する第二移送管の内部に溶融ガラスを流通させることにより、前記溶融ガラスを移送する工程を含むガラス物品の製造方法であって、前記第一移送管及び前記第二移送管は、白金又は白金合金により構成されており、前記第一移送管は、前記溶融ガラスを流通させる管状部と、前記溶融ガラスが流出する開口部を有するフランジ部とを備えており、前記管状部の内面における頂部と、前記第一移送管の前記開口部における上端部とが一致しており、前記第二移送管は、前記第一移送管から流出する前記溶融ガラスが流入する開口部を有するフランジ部を備えており、前記第一移送管の前記開口部と、前記第二移送管の前記開口部とが重ねられており、前記第二移送管における前記開口部の上端部を、前記第一移送管における前記開口部の上端部よりも上方に配置することを特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、下流側に位置する開口部の上端部を、上流側に位置する開口部の上端部よりも上方に配置することで、上流側の開口部から下流側の開口部へと溶融ガラスが流入する場合に、下流側の開口部の上端部が溶融ガラスの流入を阻害するといった事態を防止できる。これにより、溶融ガラスを移送管の内部で滞留させることなく移送できる。したがって、移送管の内部におけるガス溜まりの発生を効果的に防止できる。
【0013】
前記第二移送管の前記開口部に係る開口面積は、前記第一移送管の前記開口部に係る開口面積よりも大きく設定されており、前記第一移送管に係る前記開口部の全体を、前記第二移送管の前記開口部における開口範囲内に重なるように配置することが望ましい。
【0014】
かかる構成によれば、上流側の開口部から流出する溶融ガラスの流れは、下流側の開口部によって阻害されることがなくなる。これにより、移送管の内部におけるガス溜まりの発生を効果的に防止できる。
【0015】
また、前記第一移送管は、清澄槽を構成し、前記溶融ガラスを移送する工程は、前記第一移送管及び前記第二移送管の内面全てに前記溶融ガラスを接触させた状態で、前記溶融ガラスを移送することが望ましい。高温の溶融ガラスを移送する清澄槽ではガス溜りが発生しやすいので、かかる構成によれば、移送管の酸化による異物の発生を防止できる効果がより顕著となる。
【0016】
或いは、前記第二移送管は、清澄槽を構成し、前記第一移送管は、前記清澄槽に向かって上方に傾斜することが望ましい。清澄槽の上流側に位置する第一移送管では、高温の溶融ガラスを移送すると共に、熱膨張による位置ズレが大きいので、ガス溜りが発生しやすい。このため、上記構成によれば、移送管の酸化による異物の発生を防止できる効果がより顕著となる。上記構成において、前記溶融ガラスを移送する工程は、前記第一移送管及び前記第二移送管の内面全てに前記溶融ガラスを接触させた状態で、前記溶融ガラスを移送することが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、溶融ガラスを流通させる移送管の内部でガス溜まりが発生することを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
図1乃至
図9は、本発明に係るガラス物品の製造方法及び製造装置の一実施形態を示す。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係るガラス物品の製造装置は、上流側から順に、溶解槽1と、清澄槽2と、均質化槽(攪拌槽)3と、ポット4と、成形体5と、これらの各構成要素1〜5を連結するガラス供給路6a〜6dとを備える。この他、製造装置は、成形体5により成形された板ガラスGR(ガラス物品)を徐冷する徐冷炉(図示せず)及び徐冷後に板ガラスGRを切断する切断装置(図示せず)を備える。
【0021】
溶解槽1は、投入されたガラス原料を溶解して溶融ガラスGMを得る溶解工程を行うための容器である。溶解槽1は、ガラス供給路6aによって清澄槽2に接続されている。
【0022】
清澄槽2は、溶融ガラスGMを移送しながら清澄剤等の作用により脱泡する清澄工程を行う。清澄槽2は、ガラス供給路6bによって均質化槽3に接続されている。清澄槽2は、白金材料(白金又は白金合金)により構成される移送管からなる。
図2に示すように、清澄槽2は、管状部7と、当該管状部7の両端部に設けられるフランジ部8a,8bとを備える。
【0023】
なお、
図2において、溶融ガラスGMの流れる方向を符号Fで示す。以下、各構成要素の位置を説明する場合に、溶融ガラスGMの流れる方向Fに基づいて、「上流側」、「下流側」の語を用いる。
【0024】
管状部7は、円管状にされるが、この構成に限定されない。管状部7の内径は、100mm以上300mm以下とされることが望ましい。管状部7の肉厚は、0.3mm以上3mm以下とされることが望ましい。管状部7の長さは、300mm以上10000mm以下とされることが望ましい。これらの寸法は、上記の範囲に限定されず、溶融ガラスGMの種別、温度、製造装置の規模等に応じて適宜設定される。
【0025】
管状部7は、溶融ガラスGM中に発生するガスを排出するためのベント部7aを備える。また、管状部7は、溶融ガラスGMが流れる方向を変更するための仕切り板(邪魔板)を内部に備えてもよい。
【0026】
図1及び
図2に示すように、溶解槽1における溶融ガラスGMの液面(この液面の高さ位置を二点鎖線GSで示す)は、管状部7における内面の頂部(頂点)7bよりも上方位置又はこの頂部7bと同じ位置に設定される。その高低差Hは、0mm以上200mm以下とされるが、この範囲に限定されるものではない。この設定により、管状部7の内部空間は全て、溶解槽1から流入した溶融ガラスGMによって満たされる。すなわち、管状部7の内部では、当該管状部7の上部内面と溶融ガラスGMとが離間することなく、当該内面全てに溶融ガラスGMが接触する(
図2参照)。このように、管状部7の内面全てに溶融ガラスGMが接触することで、管状部7に気相空間が形成されず、管状部7の内面の酸化を防止できる。なお、各ガラス供給路6a〜6dを構成する全ての移送管の位置についても、溶融ガラスGMの液面GSよりも下方に設定される。
【0027】
清澄槽2のフランジ部8a,8bは、円形に構成されるが、この形状に限定されない。フランジ部8a,8bの上部には、電極を支持するための板状の突起部を形成してもよい。フランジ部8a,8bは、電源装置(図示せず)に接続される。清澄槽2は、各フランジ部8a,8bを介して管状部7に電流を流すことで生じる抵抗加熱(ジュール熱)によって、当該管状部7の内部を流れる溶融ガラスGMを加熱する。
【0028】
フランジ部8a,8bは、清澄槽2(管状部7)の上流側端部に設けられる第一フランジ部8aと、清澄槽2(管状部7)の下流側端部に設けられる第二フランジ部8bとを含む。
【0029】
第一フランジ部8aは、管状部7に溶融ガラスGMを流入させる第一開口部9aを有する。第二フランジ部8bは、管状部7から溶融ガラスGMを流出させる第二開口部9bを有する。第一開口部9a及び第二開口部9bは、円形状に構成される。各開口部9a,9bの直径は、管状部7の内径よりも小さく設定される。
【0030】
図2に示すように、第一開口部9aは、管状部7の下部に対応して形成される。すなわち、第一開口部9aにおいて最も下方に位置する部分(以下「下端部」という。他の開口部においても同じ)9aDは、管状部7の底部7cと一致している。また、第二開口部9bは、管状部7の上部に対応して形成される。すなわち、第二開口部9bにおいて最も上方に位置する部分(以下「上端部」という。他の開口部においても同じ)9bUは、管状部7の頂部7bに一致している。
【0031】
溶解槽1と清澄槽2とを接続するガラス供給路6aは、白金材料(白金又は白金合金)により構成される移送管からなる。移送管10は、管状部11と、当該管状部11の両端部(上流側端部及び下流側端部)に設けられるフランジ部12a,12bとを有する。
【0032】
ガラス供給路6aを構成する移送管10の管状部11の内径は、100mm以上300mm以下とされることが望ましい。管状部11の肉厚は、0.3mm以上3mm以下とされることが望ましい。これらの寸法は、上記の範囲に限定されず、溶融ガラスGMの種別、温度、製造装置の規模等に応じて適宜設定される。本実施形態において、管状部11の内径は、清澄槽2に係る管状部7の内径よりも小さく設定されている。管状部11は、溶解槽1から清澄槽2に向かって上方に傾斜する。管状部11の水平方向に対する傾斜角度は、例えば3°以上30°以下に設定される。
【0033】
各フランジ部12a,12bは、開口部13a,13bを有する。移送管10の下流側端部に設けられるフランジ部12bは、清澄槽2の第一フランジ部8aに対向して接触する。このフランジ部12bにおける開口部13bは、清澄槽2の第一フランジ部8aにおける第一開口部9aに重ねられる。この開口部13bの開口面積は、第一開口部9aの開口面積よりも小さく設定される。各開口部13a,13bは、上下方向に長い楕円状に構成されている(
図3参照)。各開口部13a,13bにおける長軸の長さDLは、管状部11の内径D(
図2参照)より大きく設定される。また、各開口部13a,13bにおける長軸の長さDLは、第一開口部9aの直径よりも小さく設定される。また、下流側のフランジ部12bに形成される開口部13bの上端部13bUは、管状部11の内面における頂部11aと一致している。
【0034】
移送管10における下流側の開口部13bは、
図3において二点鎖線で示すように、その全体が第一開口部9aの開口範囲内に含まれるように、当該第一開口部9aに重ねられる。これにより、清澄槽2の第一開口部9aに係る上端部9aUは、移送管10の開口部13bの上端部13bUよりも上方に配置される。また、移送管10における開口部13bの下端部13bDは、第一開口部9aの下端部9aDと一致するように配置される。
【0035】
清澄槽2と均質化槽3とを接続するガラス供給路6bは、白金材料(白金又は白金合金)により構成される移送管からなる。
図2及び
図4に示すように、移送管14は、管状部15と、当該管状部15の両端部(上流側端部及び下流側端部)に設けられるフランジ部16a,16bとを有する。
【0036】
ガラス供給路6bを構成する管状部15の内径は、100mm以上300mm以下とされることが望ましい。管状部15の肉厚は、0.3mm以上3mm以下とされることが望ましい。これらの寸法は、上記の範囲に限定されず、溶融ガラスGMの種別、温度、製造装置の規模等に応じて適宜設定される。本実施形態において、管状部15の内径は、清澄槽2に係る管状部7の内径よりも小さく設定されている。
【0037】
各フランジ部16a,16bは、円板状に構成される。各フランジ部16a,16は、開口部17a,17bを有する。各開口部17a,17bは、円形状に構成される。開口部17a,17bの開口面積は、第二フランジ部8bの第二開口部9bの開口面積と等しい。なお、開口部17a,17bの開口面積は、第二フランジ部8bの第二開口部9bの開口面積よりも大きくてもよい。開口部17a,17bの直径は、管状部15の内径と等しい。上流側のフランジ部16aの開口部17aは、清澄槽2の第二開口部9bに重ねられる。この場合において、開口部17aの上端部17aUは、清澄槽2の第二開口部9bにおける上端部9bUよりも上方に配置される。また、本実施形態において、開口部17aの下端部17aDは、第二開口部9bの下端部9bDよりも上方に配置される。
【0038】
各移送管10,14の各フランジ部12a,12b,16a,16bは、電源装置(図示せず)に接続される。各ガラス供給路6a,6bでは、清澄槽2と同様に、各フランジ部12a,12b,16a,16bを介して各管状部11,15に電流を流すことで生じる抵抗加熱(ジュール熱)によって、当該移送管10,14の内部を流れる溶融ガラスGMを加熱する(他のガラス供給路6c,6dにおいて同じ)。
【0039】
均質化槽3は、清澄された溶融ガラスGMを攪拌し、均一化する工程(均質化工程)を行うための白金材料製の容器である。均質化槽3は、攪拌翼を有するスターラ3aを備える。均質化槽3は、ガラス供給路6cによってポット4に接続されている。このガラス供給路6cは、上記のガラス供給路6a、6bと同様に、白金材料(白金又は白金合金)により構成される移送管からなる。
【0040】
ポット4は、溶融ガラスGMを成形に適した状態に調整する状態調整工程を行うための容器である。ポット4は、溶融ガラスGMの粘度調整及び流量調整のための容積部として例示される。ポット4は、ガラス供給路6dによって成形体5に接続されている。このガラス供給路6dは、上記のガラス供給路6a〜6cと同様に、白金材料(白金又は白金合金)により構成される移送管からなる。
【0041】
成形体5は、溶融ガラスGMを所望の形状に成形する。本実施形態では、成形体5は、オーバーフローダウンドロー法によって溶融ガラスGMを板状に成形する。詳細には、成形体5は、断面形状(
図1の紙面と直交する断面形状)が略楔形状を成しており、この成形体5の上部には、オーバーフロー溝(図示せず)が形成されている。
【0042】
成形体5は、溶融ガラスGMをオーバーフロー溝から溢れ出させて、成形体5の両側の側壁面(紙面の表裏面側に位置する側面)に沿って流下させる。成形体5は、流下させた溶融ガラスGMを側壁面の下頂部で融合させる。これにより、帯状の板ガラスGRが成形される。なお、成形体5は、スロットダウンドロー法などの他のダウンドロー法を実行するものであってもよい。
【0043】
このようにして得られた板ガラスGRは、例えば、厚みが0.01〜10mmであって、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ、有機EL照明、太陽電池などの基板や保護カバーに利用される。本発明に係るガラス物品は、板ガラスGRに限定されず、ガラス管その他の各種形状を有するものを含む。例えば、ガラス管を形成する場合には、成形体5に代えてダンナー法を利用する成形装置が配備される。
【0044】
板ガラスGRの材料としては、ケイ酸塩ガラス、シリカガラスが用いられ、好ましくはホウ珪酸ガラス、ソーダライムガラス、アルミノ珪酸塩ガラス、化学強化ガラスが用いられ、最も好ましくは無アルカリガラスが用いられる。ここで、無アルカリガラスとは、アルカリ成分(アルカリ金属酸化物)が実質的に含まれていないガラスのことであって、具体的には、アルカリ成分の重量比が3000ppm以下のガラスのことである。本発明におけるアルカリ成分の重量比は、好ましくは1000ppm以下であり、より好ましくは500ppm以下であり、最も好ましくは300ppm以下である。
【0045】
以下、上記構成の製造装置によってガラス物品(板ガラスGR)を製造する方法について説明する。
図5に示すように、本方法は、予熱工程S1、組立工程S2、溶解工程S3、溶融ガラス供給工程S4、成形工程S5、徐冷工程S6、及び切断工程S7を主に備える。
【0046】
予熱工程S1では、製造装置の各構成要素1〜5,6a〜6dを個別に分離した状態で、これらを昇温する。以下では、予熱工程S1の例として、清澄槽2を昇温する場合、及び清澄槽2に接続されるガラス供給路6a,6bの移送管10,14を昇温する場合について説明する。
【0047】
予熱工程S1では、清澄槽2の管状部7を昇温するため、フランジ部8a,8bを介して管状部7に電流を流す。同様に、移送管10,14を昇温するため、各フランジ部12a,12b,16a,16bを介して各管状部11,15に電流を流す。この加熱により、
図6及び
図7において二点鎖線で示すように、清澄槽2及び各移送管10,14の各管状部7,11,15は、その軸心方向(長手方向)に膨張する。また、各管状部7,11,15及びフランジ部8a,8b,12a,12b,16a,16bは、半径方向に膨張する。
【0048】
各管状部7,11,15が所定の温度にまで到達すると、予熱工程S1が終了し、組立工程S2が実行される。組立工程S2では、加熱されて膨張した後の複数の移送管を連結することにより、各ガラス供給路6a〜6dが組み立てられる。具体的には、各移送管のフランジ部同士を突き合わせることにより各移送管を接続する。
【0049】
同様に、清澄槽2に移送管10及び移送管14を接続する。清澄槽2に移送管10を接続する場合、移送管10のフランジ部12bと、清澄槽2の第一フランジ部8aとを対向させ、相互に接触させる。このとき、清澄槽2の第一開口部9aの上端部9aUが移送管10の開口部13bにおける上端部13bUよりも上方に位置するように、そして、開口部13bの全体が第一開口部9aの開口範囲内に位置するように、各フランジ部8a,12bを重ね合わせる。
【0050】
清澄槽2に移送管14を接続する場合、移送管14のフランジ部16aと、清澄槽2の第二フランジ部8bとを対向させ、相互に接触させる。このとき、移送管14における開口部17aの上端部17aUが、清澄槽2における第二開口部9bの上端部9bUよりも上方に位置するように、各フランジ部8b,16aを重ね合わせる。
【0051】
さらに、溶解槽1、清澄槽2、均質化槽3、ポット4、成形体5、及びガラス供給路6a〜6dを接続することで、製造装置が組み立てられる。以上により、組立工程S2が終了する。
【0052】
溶解工程S3では、溶解槽1内に供給されたガラス原料が加熱され、溶融ガラスGMが生成される。なお、製造装置の立ち上げ期間を短縮するため、組立工程S2以前に溶解槽1内で予め溶融ガラスGMを生成してもよい。
【0053】
溶融ガラス供給工程S4では、溶解槽1の溶融ガラスGMを、各ガラス供給路6a〜6dを介して、清澄槽2、均質化槽3、ポット4、そして成形体5へと順次移送する。溶融ガラス供給工程S4では、溶融ガラスGMが清澄槽2の管状部7内を流通する際、ガラス原料に配合された清澄剤の作用により溶融ガラスGMからガス(泡)が発生する。このガスは、清澄槽2のベント部7aから外部に排出される(清澄工程)。また、均質化槽3において、溶融ガラスGMは、攪拌されて均質化される(均質化工程)。溶融ガラスGMがポット4、ガラス供給路6dを通過する際には、その状態(例えば粘度や流量)が調整される(状態調整工程)。
【0054】
成形工程S5では、溶融ガラス供給工程S4を経て溶融ガラスGMが成形体5に供給される。成形体5は、溶融ガラスGMをオーバーフロー溝から溢れ出させ、その側壁面に沿って流下させる。成形体5は、流下させた溶融ガラスGMを下頂部で融合させることで、帯状の板ガラスGRを成形する。
【0055】
その後、帯状の板ガラスGRは、徐冷炉による徐冷工程S6、切断装置による切断工程S7を経て、所定寸法の板ガラスが切り出される。以上により、ガラス物品としての板ガラスが完成する。或いは、切断工程S7で板ガラスGRの幅方向の両端を除去した後に、帯状の板ガラスGRをロール状に巻き取り、ガラス物品としてのガラスロールを得てもよい(巻取工程)。
【0056】
以上説明した本実施形態に係るガラス物品の製造方法によれば、下流側に位置する清澄槽2(第二移送管)の第一開口部9aの上端部9aUを、上流側に位置する移送管10(第一移送管)の開口部13bの上端部13bUよりも上方に配置することで、上流側の開口部13bから下流側の第一開口部9aへと溶融ガラスGMが流入する場合に、下流側の第一開口部9aの上端部9aUが溶融ガラスGMの流入を阻害することがない。したがって、溶融ガラスGM及び発生したガスは、滞留することなく第一移送管としての移送管10から第二移送管としての清澄槽2へと移動する。これにより、移送管10と清澄槽2との連結部分(境界部分)においてガス溜まりを発生させることなく、溶融ガラスGMを好適に移送できる。なお、移送管10で発生したガスは、清澄槽2のベント部7aから排出される。
【0057】
同様に、下流側に位置する移送管14(第二移送管)における開口部17aの上端部17aUを、上流側に位置する清澄槽2(第一移送管)における第二開口部9bの上端部9bUよりも上方に配置することで、上流側の第二開口部9bから下流側の開口部17aへと溶融ガラスGMが流出する場合に、開口部17aの上端部17aUが溶融ガラスGMの流出を阻害することがない。したがって、溶融ガラスGMは、滞留することなく第一移送管としての清澄槽2から移送管14へと移動する。また、清澄槽2で発生したガスの大部分は、ベント部7aから排出され、残りのガスは、溶融ガラスGMと共に移送管14へと移動する。これにより、清澄槽2と移送管14との連結部分(境界部分)において溶融ガラスGMの滞留によるガス溜まりを発生させることなく、溶融ガラスGMを好適に移送できる。なお、移送管14へ移動したガスは、例えば均質化槽3に設けられた開口部(図示なし)から排出される。
【0058】
図8及び
図9は、清澄槽2及び移送管10の他の例を示す。
図8に示す例において、清澄槽2の第一フランジ部8aは、上下方向に長い楕円状の第一開口部9aを有する。第一開口部9aの開口面積は、移送管10に係る開口部13bの開口面積よりも大きく設定されている。第一フランジ部8aの第一開口部9aに重ねられる移送管10の開口部13bは、第一フランジ部8aの第一開口部9aの開口範囲内にその全体が含まれるように位置付けられる(
図8において二点鎖線で示す)。
図9に示す例では、移送管10の開口部13bと、清澄槽2の開口部9aとの位置関係が上記の例と異なる。すなわち、移送管10の開口部13bにおける下端部13bDは、清澄槽2の開口部9aにおける下端部9aDよりも下方に位置する。
【0059】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0060】
上記の実施形態では、清澄槽2及び各移送管10,14に形成される開口部9a,9b,13a,13b,17a,17bとして、円形又は楕円形のものを例示したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。開口部の形状は、半円形、多角形その他の各種形状に構成され得る。
【0061】
上記の実施形態では、ガラス供給路6aの移送管10と清澄槽2の移送管の連結部、及び、清澄槽2の移送管とガラス供給路6bの移送管14の連結部の両方に本発明を適用したが、ガラス供給路6aの移送管10と清澄槽2の移送管の連結部、及び、清澄槽2の移送管とガラス供給路6bの移送管14の連結部のいずれか一方のみに本発明を適用してもよい。あるいは、別の移送管の連結部に本発明を適用してもよい。