(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を具体的に説明する。
【0021】
図1に本発明のX線検査装置100の機能ブロック図を示す。X線検査装置100は、X線照射手段110、搬送手段120、X線検出手段130、段特定手段140、表示手段151、入力手段152、及び画像処理手段160を備える。
【0022】
X線照射手段110は、対向する搬送手段120の搬送面120aに載置された被測定物Wに向けてX線を照射する。搬送手段120は、載置された被測定物Wを所定の搬送方向に搬送する搬送面120aを備える。搬送手段120は、例えばX線の透過性が高いベルトコンベアである。ベルトコンベアを例にとると、搬送面120aはリング状のベルトの外面におけるX線照射手段110と対向する部分である。ベルトコンベアにおいてはリング状のベルトが移動することでベルトの外面に載置された被測定物Wが搬送される。すなわち、リング状のベルトの外面におけるX線照射手段110と対向する部分(搬送面120a)は、ベルトそのものに着目すると、ベルトの移動にしたがってリング状のベルトの外面を移動していく領域であって、固定的な領域ではない。
【0023】
X線照射手段110から被測定物Wに向けて照射されたX線は、被測定物Wと搬送手段120による吸収を受けつつこれらを透過した後、X線検出手段130に到達する。
【0024】
X線検出手段130は、搬送手段120の搬送面を挟んでX線照射手段110に対向して被測定物Wの移動方向に沿って直線状に配列された複数段の検出素子からなる検出素子群130pを備える。
図2はX線検出手段130の構成例を示す平面図である。この構成例では検出素子群130pが8段の検出素子130p1〜130p8からなり、このような検出素子群130pが並列に8列配置されている場合を示しているが、検出素子の段数や検出素子群の列数は任意である。各検出素子は、シンチレータとフォトダイオードとで構成した間接変換方式のものでも、テルル化カドミウム(CdTe)のような半導体を用いた直接変換方式のものでも構わない。
【0025】
それぞれの検出素子群130pを構成する複数の検出素子のうち、少なくとも所定の2以上の段の検出素子が、被測定物の移動に従い被測定物の略同一の領域を透過したX線を順次検出する。
図3は、検出素子群130pの上部を移動する被測定物Wの各領域を透過したX線を各検出素子が検出する様子を説明する図である。検出素子群130pが被測定物Wのいくつの領域からX線を検出するかは、検出素子群130p上を通過する被測定物Wの長さに依存する。ここではAからFの6つの領域から検出する例を示す。紙面右方向に移動する被測定物Wが、固定された検出素子群130p上に差し掛かっていない状態(
図3(a))から検出素子群130p上に差し掛かると、まず、右端の領域Aを透過したX線の検出データa
1が検出素子群130pの左端の検出素子130p1で検出される(
図3(b))。被測定物Wが更に移動すると、領域Bを透過したX線の検出データb
1が検出素子130p1で検出されるとともに、領域Aを透過したX線の検出データa
2が検出素子130p1に隣接する検出素子130p2で検出される(
図3(c))。被測定物Wが更に移動すると、領域Cを透過したX線の検出データc
1が検出素子130p1で検出されるとともに、領域Bを透過したX線の検出データb
2が検出素子130p1に隣接する検出素子130p2で、また、領域Aを透過したX線の検出データa
3が検出素子130p2に隣接する検出素子130p3で検出される(
図3(d))。このようにして、各領域を透過したX線を順次各検出素子において検出することができる。
【0026】
領域Aを透過したX線について、例えば、検出素子130p1〜130p8のすべての段で検出することとした場合、検出素子としてCCDを用いたTDIセンサでは、各検出素子のX線検出データをバケツリレー式で転送するというCCDの性質上、検出素子群130pを構成する検出素子のすべての段を使用する必要がある。そのため、領域AのX線検出データは、a
1、a
2、・・・、a
8のすべてを積分したものとしてしか得ることができない。
【0027】
これに対し本発明では、検出素子群130pを構成する検出素子の一部の段に限定してX線検出データを利用することが可能な検出素子を用いてセンサを構成することで、所定の2以上の段の検出素子のX線検出データを足し合わせて領域AのX線検出データとして出力することを可能とする。
【0028】
X線検出データの足し合わせに際し、X線検出データは検出素子からデジタルデータで出力されるのが望ましい。検出素子群130pを構成する検出素子の一部の段に限定してX線検出データを利用することができ、かつX線検出データをデジタルデータで出力可能な検出素子としては、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサやCdTeなどの半導体センサが挙げられる。CMOSセンサの場合、X線をシンチレータで可視光に変換した上でフォトダイオードで受光して光電変換し、得られた電荷量をデジタルデータ化することができる。CdTeセンサの場合、入射されたX線量をそのままデジタルデータ化することができる。
【0029】
被測定物Wの或る領域を透過したX線を、各検出素子が検出してそれぞれ出力したX線検出データの足し合わせは、例えば、リングバッファなどの任意の記録手段であるメモリ130mに、各検出素子から出力されたX線検出データを蓄積していくことにより行う。具体的には例えば次のように行う。
【0030】
メモリ130mは、少なくとも被測定物Wの領域の個数以上の、複数のメモリ領域を備える。例えば、領域が6個の場合、被測定物Wの領域A、領域B、領域C、領域D、領域E、及び領域Fを透過し各検出素子から出力されたX線データが、それぞれメモリ領域130m1、メモリ領域130m2、メモリ領域130m3、メモリ領域130m4、メモリ領域130m5、及びメモリ領域130m6に記録されることとする。
【0031】
被測定物Wが、固定された検出素子群130p上に差し掛かっていない位置関係(
図3(a))では、検出素子130p1〜130p8からはX線検出データは出力されないため、各メモリ領域には何も記録されていないか又は初期値の0が記録されている。
【0032】
被測定物Wが移動し
図3(b)の位置関係になると、被測定物Wの領域Aを透過したX線を検出素子130p1が検出してX線検出データa
1を出力し、これがメモリ領域130m1に記録される。
【0033】
被測定物Wが更に移動し
図3(c)の位置関係になると、被測定物Wの領域Aを透過したX線を検出素子130p2が検出してX線検出データa
2を出力し、これがメモリ領域130m1に既に記録されたX線検出データa
1と足し合わせて記録される。また、被測定物Wの領域Bを透過したX線を検出素子130p1が検出してX線検出データb
1を出力し、これがメモリ領域130m2に記録される。
【0034】
被測定物Wが更に移動し
図3(d)の位置関係になると、被測定物Wの領域Aを透過したX線を検出素子130p3が検出してX線検出データa
3を出力し、これがメモリ領域130m1に既に記録されたX線検出データa
1+a
2に足し合わせて記録される。また、被測定物Wの領域Bを透過したX線を検出素子130p2が検出してX線検出データb
2を出力し、これがメモリ領域130m2に既に記録されたX線検出データb
1に足し合わせて記録される。また、被測定物Wの領域Cを透過したX線を検出素子130p1が検出してX線検出データc
1を出力し、これがメモリ領域130m3に記録される。
【0035】
このようにして、被測定物Wの領域ごとに透過したX線のそれぞれについて、各検出素子がそれぞれ検出し出力したX線検出データを足し合わせていくことができる。
【0036】
個別にX線検出データを出力することができる検出素子を採用することで、各検出素子から出力されたX線検出データの一部を足し合わせの対象から除外したり、特定の検出素子からのX線検出データの出力を止めて当該検出素子からのX線検出データを0にして足し合わせたりすることができる。
【0037】
例えば、
図3に示した例において、検出素子130p2から出力されるX線検出データを加算から除外する場合を
図4に示す。
図4において、被測定物Wと検出素子130pとの位置関係は
図3と同じである。しかし、メモリ130mへの記録状態は、
図3(c),(d)と
図4(c),(d)とで異なる。
【0038】
図4(c)に示す被測定物Wと検出素子群130pとの位置関係においては、被測定物Wの領域Bを透過したX線を検出素子130p1が検出してX線検出データb
1を出力し、これがメモリ領域130m2に記録される。一方、被測定物Wの領域Aを透過したX線を検出素子130p2が検出してX線検出データa
2を出力するが、
図3(c)の場合と異なりX線検出データa
2は、メモリ領域130m1に既に記録されたX線検出データa
1との足し合わせの対象にならない。そのため、メモリ領域130m1に記録されているX線検出データはa
1のままである。
【0039】
被測定物Wが移動し
図4(d)の位置関係になると、被測定物Wの領域Aを透過したX線を検出素子130p3が検出してX線検出データa
3を出力し、これがメモリ領域130m1に既に記録されたX線検出データa
1と足し合わせて記録される。また、被測定物Wの領域Bを透過したX線を検出素子130p2が検出してX線検出データb
2を出力するが、
図3(d)の場合と異なりX線検出データb
2は、メモリ領域130m2に既に記録されたX線検出データb
1との足し合わせの対象にならない。そのため、メモリ領域130m2に記録されているX線検出データはb
1のままである。また、被測定物Wの領域Cを透過したX線を検出素子130p1が検出してX線検出データc
1を出力し、これがメモリ領域130m3に記録される。
【0040】
各検出素子が個別にX線検出データを出力できることで、X線検出データの足し合わせの対象とする所定の2以上の段の検出素子を、検出素子130p1〜p3というように連続して設定することもできるし、検出素子130p1、130p4、130p5、130p8というように断続的に設定することもできる。X線検出データの足し合わせの対象とする検出素子の位置についても130p1〜p3というように左寄り集中、130p3〜p6というように中央集中、130p5〜p8というように右寄り集中など、任意に設定することもできる。
【0041】
また、各検出素子が個別にX線検出データを出力することができることで、
図2に示すように並列に複数配列された検出素子群130pにおいて、X線検出データの足し合わせの対象とする2以上の段の検出素子を、検出素子群130pごとに相違させることもできる。
図5に、具体的な設定の一例を示す。○印と×印は、それぞれX線検出データを足し合わせの対象とする検出素子とX線検出データを足し合わせの対象としない検出素子を示す。すなわち、1列目、2列目、7列目、及び8列目の検出素子群130pについては、検出素子130p1〜p8から出力されるX線検出データの全てについて足し合わせの対象としない(0を出力するか、又は結果自体を出力しない)こととする。一方、3〜6列目の検出素子群130pについては、検出素子130p3〜p6から出力されるX線検出データについては足し合わせの対象とする一方、残りの4段の検出素子から出力されるX線検出データについては足し合わせの対象としない。
【0042】
所定の2以上の段の段数については、多く設定するほど各X線検出データに基づき描画した際にコントラストの高い画像を得ることができるが、反面、後述のように空間分解能が低下するため、所望の空間分解能の範囲に収まる段数で設定するとよい。
【0043】
例えば、
図6に示す位置関係でX線照射手段110とX線検出手段130とが配置され、その間を被測定物Wが移動していく場合、
図6(a)に示すようにX線が被測定物Wの移動方向に対して垂直に被測定物Wに入射したときには、被測定物Wの移動方向における入射位置と出射位置とにズレは無い。しかし、被測定物Wが更に移動して、
図6(b)に示すようにX線が被測定物Wの移動方向に対して傾斜を持って被測定物Wに入射したときには、被測定物Wの移動方向における入射位置と出射位置とにズレg1が生じ、空間分解能の低下が生じる。このズレg1は、検出素子群130pのX線照射手段110からのX線が垂直に照射される部分から遠い検出素子ほど大きくなる。
図6の例では、例えば検出素子130p7より検出素子130p8においてズレg1がより大きくなる。また、点線に示すように被測定物Wの厚さが厚いほど大きくなる(ズレg2>ズレg1)。そのため、このような状況を考慮して、検出素子群130pのX線照射手段110からのX線が垂直に照射される部分を中心として2以上の段を所望の空間分解能の範囲に収まる段数で設定することで、空間分解能の低下を抑えることができる。
【0044】
所定の2以上の段は段特定手段140が特定し、これに基づきX線検出手段130が検査を実行する。段特定手段140は例えば、入力インタフェースを液晶ディスプレイなどの任意の表示手段151に表示し、装置利用者がキーボードやマウスなどの任意の入力手段152から入力インタフェースに直接入力された情報に基づき、所定の2以上の段を特定する。そして、この特定した段を任意のメモリに書き込み、X線検出手段130がこれを読み出して検査を実行する。メモリは必ずしも段特定手段140の構成要素として備える必要はなく、X線検出手段130が備えてもよいし、その他の構成要素として備えてもよい。
【0045】
入力インタフェースの構成は任意である。例えば、
図7(a)に示すような直接段番号の入力を受け付けるインタフェースを表示手段に表示する。この入力インタフェース上で、装置利用者がキーボードから例えば6を入力してOKボタンをマウスでクリックすると、
図7(b)に示すように6段目が特定される。この例の場合、このような入力操作を、特定する段数分繰り返し行う必要があるため、省力化するために、例えば3段目から2段分と指定して入力する方法を採用してもよい。
【0046】
特定する段をマウス操作のみにより入力できるグラフィカルな入力インタフェースを採用してもよい。一例としては、
図8(a)に示す入力インタフェースを表示手段に表示する。この入力インタフェース上で、装置利用者がマウスを操作して例えば6段目をなぞると、
図8(b)に示すように6段目が特定される。別の例としては、
図9(a)に示す入力インタフェースを表示手段に表示する。この入力インタフェース上で、装置利用者がマウスを操作して例えば1段と6段をクリックすると、
図9(b)に示すように1段目と6段目が特定される。なお、このようなグラフィカルなインタフェースを採用した場合には、入力された情報を段番号に変換してメモリに書き込むとよい。
【0047】
段特定手段140が特定した段をメモリに書き込むタイミング及びメモリに書き込まれた段をX線検出手段130が読み出すタイミングは任意である。例えば、段特定手段140が特定した段をメモリに書き込んだことをトリガに、メモリに書き込まれた段をX線検出手段130が読み出して検査を実行する。また例えば、検査の実行に先立ち予めメモリに所定の2以上の段を書き込んでおき、検査を実行する際にX線検出手段130が読み出すように構成してもよい。メモリに予め段を書き込んでおくことで、検査実施時に段の入力が不要になる。
【0048】
段特定手段140による所定の2以上の段の特定は、上記の直接的な入力方法のほか、例えば、以下の3つの方法により行うことができる。
【0049】
第1の方法として、X線照射手段110によるX線の照射強度に基づく方法が挙げられる。例えば、
図10に示すようにX線照射手段110によるX線の照射強度を入力する照射強度入力手段170と、照射強度に応じた所定の2以上の段を記憶する記憶手段191と、を更に備え、段特定手段140が、記憶手段191を参照し照射強度入力手段170に入力された照射強度に対応する所定の2以上の段を特定するように構成する。記憶手段191に予め記憶しておく、照射強度と使用する2以上の段との対応関係を示すテーブルの一例を
図11(a)に示す。この例では照射強度が3段階であるが、段階数は任意である。
【0050】
照射強度入力手段170への照射強度の入力方法は任意であり、一例として、段特定手段140が表示手段151に入力インタフェースを表示し、装置利用者が独自に把握したX線の照射強度を、キーボードやマウスなどで構成した照射強度入力手段170から数値、文字、又は提示された選択肢の選択により入力する方法が挙げられる。また別の例として、X線照射手段110によるX線の照射強度を検出する照射強度検出手段171を更に備え、照射強度検出手段171で検出された照射強度を入力する方法が挙げられる。
【0051】
第2の方法として、被測定物Wの厚さに基づく方法が挙げられる。例えば、
図12に示すように被測定物Wの厚さを入力する厚さ入力手段180と、被測定物Wの厚さに応じた所定の2以上の段を記憶する記憶手段192と、を更に備え、段特定手段140が、記憶手段192を参照し厚さ入力手段180に入力された厚さに対応する所定の2以上の段を特定するように構成する。記憶手段192に予め記憶しておく、被測定物Wの厚さと使用する2以上の段との対応関係を示すテーブルの一例を
図13(a)に示す。この例では厚さの段階が6段階であるが、段階数は任意である。
【0052】
厚さ入力手段180への厚さの入力方法は任意であり、一例として、段特定手段140が表示手段151に入力インタフェースを表示し、装置利用者が独自に把握した被測定物Wの厚さを、キーボードやマウスなどで構成した厚さ入力手段180から数値や提示された選択肢の選択により入力する方法が挙げられる。また別の例として、被測定物Wの厚さを検出する厚さ検出手段181を更に備え、厚さ検出手段181で検出された被測定物Wの厚さを入力する方法が挙げられる。
【0053】
第3の方法として、被測定物Wに基づく方法が挙げられる。例えば、
図14に示すように、被測定物Wに応じた所定の2以上の段を記憶する記憶手段193を更に備え、段特定手段140が、被測定物Wを示す情報の入力に基づき記憶手段193を参照して、被測定物Wに対応する所定の2以上の段を特定するように構成する。記憶手段193に予め記憶しておく、被測定物Wと所定の2以上の段との対応関係を示すテーブルの一例を
図15(a)に示す。ここでは、検査に使用する段がそれぞれ異なる被測定物Wが7つある場合を例示しており、異なる被測定物Wは便宜的に0から6の数字で表している。
【0054】
なお、第3の方法でいう被測定物Wは、特定の被測定物W(例えば鯖)である場合のほか、被測定物Wを含む分類(例えば魚)である場合も含む。被測定物Wを含む分類である場合、記憶手段193は被測定物Wを含む分類に応じた所定の2以上の段を記憶する。記憶手段193に予め記憶しておく、被測定物Wを含む分類と所定の2以上の段との対応関係を示すテーブルの一例を
図15(b)に示す。この例では分類が魚と肉の2種類であるが、分類の個数は任意である。
【0055】
記憶手段193に予め記憶しておく、被測定物Wと所定の2以上の段との対応関係を示すテーブルの構成は任意であり、
図15に示した構成以外では、例えば以下の3つの構成が挙げられる。
【0056】
1つ目は、使用する2以上の段の組み合わせごとに番号(使用段No)を付与するテーブル(
図16(a))と、被測定物Wと使用段Noとを対応付けるテーブル(
図16(b))を用意し、使用段Noにより2つのテーブルのリレーションをとることで、検査対象の被測定物Wの入力により所定の2以上の段を特定することができる。
【0057】
2つ目は、X線の照射強度と使用する2以上の段とを対応付けるテーブル(
図11(a))と、被測定物Wと照射強度とを対応付けるテーブル(
図11(b))を用意し、照射強度により2つのテーブルのリレーションをとることで、検査対象の被測定物Wの入力により所定の2以上の段を特定することができる。
【0058】
3つ目は、被測定物Wの厚さと使用する2以上の段とを対応付けるテーブル(
図13(a))と、被測定物Wと厚さとを対応付けるテーブル(
図13(b))を用意し、厚さにより2つのテーブルとのリレーションをとることで、検査対象の被測定物Wの入力により所定の2以上の段を特定することができる。
【0059】
被測定物Wを示す情報の入力方法は任意である。例えば、段特定手段140が入力インタフェースを任意の表示手段151に表示し、装置利用者が表示された入力インタフェースにキーボードやマウスなどの任意の入力手段152から入力する。
【0060】
入力インタフェースの構成は任意である。例えば、被測定物Wの名称や分類を、文字や提示された選択肢の選択により入力可能とする構成や、
図17(a)に示すような被測定物Wの商品番号の入力を受け付ける構成などが挙げられる。商品番号の入力を受け付ける構成にする場合には、例えば、
図17(b)に示すような商品番号と所定の2以上の段とを対応付けるテーブルを記憶手段193に予め記憶しておけばよい。
【0061】
入力手段152としてキーボードやマウスを用いる以外の入力方法としては、例えば、入力手段152としてコードリーダを用いて、被測定物Wを示すバーコードやQRコード(登録商標)等を読み取る方法が挙げられる。この場合には、例えば、読み取られたコードから特定される番号等と所定の2以上の段とを対応付けるテーブルを記憶手段193に予め記憶しておけばよい。
【0062】
段特定手段140が所定の2以上の段を特定する上記の各方法は、個別に適用してもよいし、組み合わせて適用してもよい。
【0063】
以上のようにX線検出手段130により得られた被測定物Wの各領域からのX線検出データをもとに、画像処理手段160が、X線透過画像を生成して表示手段151に表示するなど、所定の処理を行う。
【0064】
本発明のX線検査装置100によれば、検出データを足し合わせる検出素子の段や段数をX線の照射強度、被測定物の厚さ、及びX線照射手段と検出素子との位置関係などに応じて柔軟に変更することが可能となる。これにより、検出素子の飽和や空間分解能の低下を生じさせることなく被測定物を検査することが可能となる。
【0065】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。すなわち、本発明において表現されている技術的思想の範囲内で適宜変更が可能であり、その様な変更や改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含む。
【0066】
各検出素子が個別にX線検出データを出力できることで、X線検出データを検出素子ごとに補正することができるため、X線検査装置にX線検出データの補正機能を追加してもよい。
図18(a)は、4段の検出素子130p1〜130p4を備える検出素子群130pが4列並列に配置されて構成されたX線検出手段130において、各検出素子それぞれが出力するX線検出データの値の一例を示したものである。このとき、例えば予め2列目の検出素子群130pの3段目の検出素子130p3が故障していることがわかっている場合に、この検出素子のX線検出データ(ここでは180)の値を補正する。補正方法は任意であるが、例えば、故障した検出素子に隣接する検出素子が出力するX線検出データの値に基づく算出値により、故障した検出素子のX線検出データの値を置き換える。具体的には故障した検出素子に隣接する検出素子が出力するX線検出データの値が100、80、80、60なので、例えばこれらの総和の平均から算出値80を得て、この値で故障した検出素子のX線検出データの値を置き換える(
図18(b))。
【0067】
また、特定の段の検出素子の故障が複数の検出素子群130pにおいて生じていた場合に、例えばすべての検出素子群130pにおいて当該段の検出素子のX線検出データを足し合わせの対象としないという補正機能を追加してもよい。
図19(a)は、4段の検出素子130p1〜130p4を備える検出素子群130pが4列並列に配置されて構成されたX線検出手段130において、各検出素子それぞれが出力するX線検出データの値の一例を示したものである。このとき、予め2列目と4列目の検出素子群130pの3段目の検出素子130p3が故障していることがわかっている場合に、すべての検出素子群130pの検出素子130p3について、例えば
図19(b)に示すようにX線検出データの値を0に補正する。
【0068】
補正機能は具体的には、例えばX線検査装置100に補正内容特定手段165を更に設けることにより実現する。まず、補正内容特定手段165が、
図2に示すような検出素子マップを表示手段151に表示し、装置利用者が入力手段から対象の検出素子の部分をマウスクリックするなどによりいずれの前記検出素子が検出したX線検出データに対して補正を施すかを特定する。そして、X線検出手段130が、X線検出データの足し合わせに先立ち補正内容特定手段165で特定された検出素子のX線検出データに対して所定の補正を施す。なお、本発明でいう所定の補正は任意であり、
図18に示す方法などにより、補正内容特定手段165で特定された検出素子のX線検出データの値の補正を行う場合のほか、
図19に示すように、補正内容特定手段165で特定された検出素子(及びその検出素子と同じ段の他の列の検出素子)のX線検出データを足し合わせの対象から除外するといった処理を行う場合も含む。