(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
回転軸と、前記回転軸の周りに接続され、第1翼上面と第1翼下面とを有し後退角を有する第1回転翼部と、第2翼上面と第2翼下面とを有し前進角を有する第2回転翼部とを有し、前記第2翼上面が前記第1翼下面に連なり、前記第2翼下面が前記第1翼上面に連なり、前記第1回転翼部と前記第2回転翼部とによってループ形状が形成された回転翼とを具備するプロペラの設計方法であって、
前記回転翼は、プロペラに適用され、前記回転軸の軸方向をZ軸方向、前記Z軸方向に直交し前記回転軸から前記ループ形状の先端に向かう方向をX軸方向、前記Z軸方向及び前記X軸方向に直交する方向をY軸方向とした場合、
前記回転翼が前記回転軸を中心に回転したときに形成される前記回転翼の中心線の任意の位置において、前記回転翼の前記X軸方向に働く張力のみと前記X軸方向に働く遠心力とが調和し、前記回転翼の前記Y軸方向に働く張力のみと前記Y軸方向に働く遠心力とが調和した懸垂線形状とする
プロペラの設計方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。各図面には、XYZ軸座標が導入される場合がある。
【0022】
図1は、本実施形態に係るプロペラの一例を示す模式的斜視図である。
図2(a)は、本実施形態に係るプロペラの一例を示す模式的上面図である。
図2(b)は、本実施形態に係るプロペラの一例を示す模式的側面図である。
【0023】
本実施形態では、XYZ軸座標として、回転軸10の軸方向をZ軸方向、Z軸方向に直交し回転軸10から回転翼20の先端201に向かう方向をX軸方向(第1方向)、Z軸方向及びX軸方向に直交する方向をY軸方向(第2方向)とする。
【0024】
本実施形態のプロペラ100は、回転軸10と、回転軸10に接続された一対の回転翼20とを具備する。一対の回転翼20は、回転軸10の中心軸10cを中心に、例えば、点対象に配置される。プロペラ100は、一対の回転翼20によって8字形状の翼が構成される。回転軸10は、図示しない外部駆動系によって、中心軸10cを軸として反時計回りに回転し、一対の回転翼20が回転軸10を中心に反時計回りに回転する。一対の回転翼20は、例えは、ポリアミド系樹脂等により構成され、軽量且つ可撓性を有する。
【0025】
一対の回転翼20のそれぞれは、回転翼部21(第1回転翼部)と、回転翼部22(第2回転翼部)とを有する。回転翼部21は、翼上面211(第1翼上面)と、翼下面212(第1翼下面)とを有する。回転翼部22は、翼上面221(第2翼上面)と、翼下面(第2翼下面)222とを有する。回転翼部21は、回転軸10を中心とする同心円に沿って徐々に後退する後退角を有する。回転翼部22は、回転軸10を中心とする同心円に沿って徐々に前進する前進角を有する。
【0026】
回転翼20においては、回転翼部21と回転翼部22とによってループ形状が形成される。すなわち、回転翼20においては、回転軸10から離れるほど、回転翼部21と回転翼部22との間の距離が徐々に広がり、該距離が一旦最大となった後に該距離が狭くなる。回転軸10から二股に分かれた回転翼部21と回転翼部22とは、回転翼20の先端201において接続されている。また、回転翼20においては、翼主面がループ形状の先端201付近でねじり返され、翼上面221が翼下面212と連なり、翼下面222が翼上面211と連なっている。
【0027】
プロペラ100では、回転翼20が回転することにより、回転翼部21の翼上面211付近と翼下面212付近とに圧力差が生じ、回転翼部22の翼上面221付近と翼下面222付近とに圧力差が生じる。これにより、回転翼20に揚力が生まれ、プロペラ100は、空気が流れる方向とは逆の方向に移動する。
【0028】
但し、回転翼20に揚力が生まれるのと同時に、後退角を持つ回転翼部21は、空気からねじり下げの空気力(ねじりモーメント)を受け、前進角を持つ回転翼部22は、空気からねじり上げの空気力を受ける。
【0029】
しかし、プロペラ100では、回転翼部21と、回転翼部22とが回転翼20の先端201で繋がれている。また、XY軸平面では、回転翼部21の中心線21Lと、回転翼部22の中心線22Lとが回転翼20の中心軸20cに対して、線対称に配置されている。これにより、回転翼20内でねじり上げの空気力とねじり下げの空気力とが互いに相殺され、回転翼20が細長く軽量な構成であったとしても、回転翼20においては、空気力による変形が起きにくくなっている。
【0030】
例えば、回転軸10に直交するXY軸平面(回転面)に対し、回転翼部21と回転翼部22とは、同じ迎角を有している。これにより、空気から受ける回転翼部21のねじれ力と、空気から受ける回転翼部22のねじれ力との大きさが略同じになって、それらが相殺される。
【0031】
なお、回転翼をねじり変形を受けないような強い剛体で構成することも可能である。しかし、このような剛性を備えた回転翼は、必然的に重量が増し、軽量化を図ることができない。
【0032】
また、空気中でプロペラ100が回転すると、回転翼20には空気力よりも遠心力が強く働く。プロペラ100においては、遠心力によっても回転翼20が変形しにくくなるような構成が望まれる。本実施形態に係るプロペラ100では、回転時に回転翼20に働く遠心力と、回転翼20内の張力とがつり合った懸垂線形状をループ形状として導入する。
【0033】
例えば、回転翼20が回転軸10を中心に回転したときに形成される中心線21L、22Lの少なくとも一部の形状が中心線21L、22Lの少なくとも一部の任意の位置において、回転翼20のX軸方向に働く張力とX軸方向に働く遠心力とが調和するとともに、回転翼20のY軸方向に働く張力とY軸方向に働く遠心力とが調和した懸垂線形状となる。これにより、プロペラ100は、曲げモーメントが働かない軽量な構造を持つことになる。
【0034】
また、プロペラ100においては、回転翼部21が回転軸10に接続された接続箇所11(第1接続箇所)と、回転翼部21が回転軸10に接続された接続箇所12(第2接続箇所)とが回転軸10の軸方向にずれている。さらに、プロペラ100においては、回転方向Rにおいて、後退角を持つ回転翼部21の後方に前進角を持つ回転翼部22が配置されている。すなわち、接続箇所11は、接続箇所12よりも空気の流れ方向の下流側に位置している。これにより、回転時には、回転翼部21が放つウィーク領域が回転翼部22の下方に位置することになり、回転翼部22が回転翼部21が放つウィーク領域に当たりにくい構成になる。
【0036】
本実施形態では、回転翼20が回転軸10を中心に回転したときに形成されるループ形状の中心線21L、22Lの少なくとも一部の形状が、中心線21L、22Lの少なくとも一部の任意の位置において、回転翼20のX軸方向に働く張力とX軸方向に働く遠心力とが調和するとともに、回転翼20のY軸方向に働く張力とY軸方向に働く遠心力とが調和した懸垂線形状から採用される。
【0037】
例えば、回転翼部21、22の中心線21L、22Lを求めるために、回転翼20に働く遠心力と、回転翼20内の張力とが調和した微分方程式を立てて、微分方程式を積分することにより、中心線21L、22Lのループ形状を求める。
【0038】
図3は、本実施形態に係るプロペラ設計方法のフローチャートの一例である。
図4は、本実施形態に係るプロペラ設計方法の一例を示す模式図である。
【0039】
まず、
図3に示すように、プロペラ100の半径R、プロペラ100の回転軸10(ハブ)の直径R1、半径位置毎の翼型(翼断面形状)、翼弦長、及び回転面とのなす角(迎角)を予め決定する(ステップS101)。以下の微分方程式を立てる。
【0040】
例えば、
図4には、回転翼部21をケーブルに見立てた例が示されている。ここで、XY軸平面において、回転軸10の中心軸10cから回転翼部21の中心線21Lにまで延びるベクトルをrとする。また、X軸方向における位置パラメータをx、Y軸方向における位置パラメータをy、Z軸方向における位置パラメータをzとする。
【0041】
さらに、回転翼部21が回転軸10の中心軸10cの周りを回転する角速度をω、回転翼20の材料密度をρ、回転翼20の線密度をρ
line、ベクトルrに対して垂直に切断された回転翼部21の翼断面定義平面21wの面積をS、翼断面定義平面21wとケーブルの線方向(中心線21L)とがなす角度をξとする。翼断面定義平面21wは、回転軸10に対して平行であり、直交に配置された面である。
【0042】
ここで、面積Sを持つ翼断面定義平面21wと、高さhとからなる微小体積v(ドットが付された部分)は、v=S・hで表され、微小体積vの重量は、ρ・v(=ρ・S・h)で表される。さらに、ケーブルの線方向に沿った長さの微分量をdsとした場合、hは、ds・sinξで表される。これにより、ds方向の線密度ρ
lineは、ρ・S・sinξで表される。なお、dsは、後述する積分の刻み値に相当し、ds<0.01Rに設定される(ステップS102)。
【0043】
次に、デカルト座標(x、y、z)における張力と遠心力のつり合いから、次の常微分方程式が立てられる。ここで、Tは、回転翼部21内に働く張力である。
【0049】
ここで、(1)、(2)、(3)のそれぞれの左辺は、X軸、Y軸、Z軸の単位長さ当たりに働く力であり、fx、fy、fzに相当する。
【0050】
また、上記(3)式から、Z軸方向に張力T
zについては、事前に、初期値として、
【0051】
【数6】
・・・(6)
が導かれる。
【0052】
上記(1)〜(6)式から、適切な初期値を決めることにより、次の連立常微分方程式を立てて、例えば、Runge−Kutta法を用いて、ループ形状を求める。
【0059】
例えば、RをXY軸平面における回転軸10の中心軸10cからループ形状の先端201までの距離とする。また、T
zをZ軸方向に働く張力とする。(x、y、z)=(R、0、0)の位置を線積分の始点の初期値(s=0)とする。(x、y、z)=(0、0、0)を線積分における終点とする。Q
0(初期値)をs=0でのY軸方向に働く張力とする(ステップS103)。ここで、線積分の初期条件を
【0061】
【数14】
・・・(14)
と置く(ステップS104、ステップS105)。
【0062】
また、ループ形状の対称性から、s=0では、dx/ds=0と置くことができる。さらに、翼型(翼断面形状)、翼弦長、及び回転面とのなす角を考慮して、回転翼20の線密度ρ
line(ループ形状の線に沿った方向の材料密度)を所望の値に設定する(ステップS106)。
【0063】
これら(6)〜(12)の連立常微分方程式を例えば、Runge−Kutta法を用いて、sについて始点から終点まで線積分し、XY軸平面におけるxとyとの関係を求める。例えば、この積分では、ds分の長さだけが積分される(ステップS107)。次に、終点の位置(到達位置)が回転軸10の直径R1より内側にあるか否かの判断がなされる(ステップS108)。終点の位置が回転軸10に到達したら、積分は終了とする。仮に、終点の位置が回転軸10の直径R1より内側でない場合は、ステップS106の前まで遡り、翼型(翼断面形状)、翼弦長、及び回転面とのなす角を考慮した、回転翼20の線密度ρ
lineを所望の値に設定する動作が繰り返される。これにより、ループ形状の仮想線が求まる。
【0064】
図5(a)は、XY軸平面に投影したループ形状の仮想線の一例を示すグラフ図である。
図5(b)は、YZ軸平面に投影したループ形状の仮想線の一例を示すグラフ図である。
【0065】
ここで、Q
0、T
zを張力パラメータと見立てると、Q
0、T
zには自由度があり、Q
0、T
zからNewton反復法等によって、Y軸方向またはZ軸方向における、所望のケーブルの形状(Y軸方向またはZ軸方向の膨らみ)を決めることができる。
【0066】
例えば、
図5(a)に示すように、Q
0を大きく設定すると、X軸方向とケーブルの線方向とがなす角度θを大きく設定することができ、Q
0を小さく設定することにより、角度θを小さく設定することができる。角度θが目的値であるか否かの判断がなされた後(ステップS109)、角度θが目的値でない場合には、Newton法により、Q
0が修正されて(ステップS110)、ステップS104の前に遡り、修正されたQ
0が初期値となって、Runge−Kutta法による積分が再び行われる。
【0067】
また、回転翼部21の中心線21Lと回転翼部22の中心線22Lとは、中心軸20cを中心に線対称に配置されていることから、中心線21Lの奇跡を求めた後、第1象限に描いた仮想線とX軸線対称となる線を第4象限に描くことにより、回転翼部22の中心線22Lの仮想線も決定する。
【0068】
本実施形態では、微分方程式から導かれたループ形状の仮想線の少なくとも一部を回転翼20の中心線21L、22Lとする。
【0069】
一方、
図5(b)に示すように、T
zを調整することにより、Z軸方向における中心線21Lと中心線22Lとのずれ量(シフト量)Z
1を調整することができる。例えば、Tzを大きく設定することにより、Z軸方向における中心線21Lと中心線22Lとのずれ量Z
1を大きく設定することができる。また、T
zを小さく設定することにより、Z軸方向における中心線21Lと中心線22Lとのずれ量Z
1を小さく設定することができる。ずれ量Z
1が目的値であるか否かの判断がなされた後(ステップS111)、ずれ量Z
1が目的値でない場合には、Newton法により、ずれ量Z
1が修正されて(ステップS112)、修正されたずれ量Z
1が初期値となって、Runge−Kutta法による積分が再び行われる。
【0070】
ここで、所望のずれ量Z
1としては、複数の回転翼から発するウェーク領域ができる限り等間隔となるように設定されることが望ましい。
【0071】
図6は、一般的な回転翼が発するウェーク領域の模式図である。
【0072】
一般的に、回転中の回転翼BLの後流(回転方向Rの後流)には、回転翼BLと空気との摩擦等によって生じた渦状のウェーク領域WRが存在する場合がある。
【0073】
ウェーク領域WRでは、空気の速度エネルギーが減少し、回転方向Rにおいて、先の回転翼が発したウェーク領域が後から来る回転翼に当たると、後から来る回転翼にとっては負荷になる。従って、各回転翼は、先に回転する回転翼から生じるウェーク領域を避けるように、配置されることが望ましい。
【0074】
例えば、回転翼における空気の流れの平均速度をVとすると、1つの回転翼が一周する間の空気の移動距離Lは、
【0075】
【数15】
・・・(15)
で表される。
【0076】
従って、プロペラにおける回転翼の枚数がBのとき、Z軸方向におけるウェーク領域間隔がL/Bとなるように、各回転翼を配置すれば、回転時に各回転翼がウェーク領域に当たりにくくなる。
【0077】
例えば、プロペラ100においては、一対の回転翼20のそれぞれが2組の回転翼部21、22を有するので、実質的に4枚翼となる。従って、Z軸方向におけるウェーク領域間隔の最適値はL/4となる。
【0078】
複数の回転翼BLが回転方向Rに一定角度で配置されている場合には(4枚の回転翼BLならば、π/2間隔)、複数の回転翼BLのそれぞれをZ軸方向においてずらすことなく(ずれ量Z
1=0)、複数の回転翼BLをXY軸平面に配置することにより、最適ウェーク間隔で、4枚の回転翼の場合に、L/4が保たれる。
【0079】
一方、複数の回転翼BLが回転方向Rで同じ位置にあるときに、ウェーク領域間隔をL/Bにするには、複数の回転翼BLのそれぞれをZ軸方向にL/Bだけずらす必要がある。
【0080】
回転翼BLのXY軸平面における間隔が、その中間の角度φ(rad)の場合には、Z
1の最適値は、次式で表される。ここで、0<φ<π/2とする。
【0082】
プロペラ100が2組の回転翼部21、22とは限らず、B'組の回転翼部を持つ場合には、Z
1の最適値は、次式で表される。
【0084】
直線翼とは異なり、回転翼20が曲線で構成されているプロペラ100では、ウェーク間隔が中心軸10cからの位置で異なる。このため、本実施形態では、回転翼部21(回転翼部22)の幅が最大となる位置(中心軸10cから距離Rの70%の位置)でウェーク領域間隔が最適になるように、ずれ量(Z
1)を定める。例えば、ずれ量(Z
1)は、張力パラメータT
zに基づいて決定してもよい。
【0085】
このように、中心線21L、22Lの膨らみ(θの大きさ)と、中心線21L、22Lのずれ量Z
1は、(Q
0、T
z)を用いて決定される。また、上記の設計手順は、コンピュータを用いてコンピュータープログラムによって自動的に実行される。さらに、このプロペラ設計方法プログラムは、ハードディスク、光ディスク、USBメモリ、メモリーカード等の情報記憶媒体に記憶される。
【0086】
次に、ループ形状の中心線が決定した後、中心線に沿って断面を並べていく。
【0087】
図7は、回転翼の断面を決定する方法の概念を示す模式図である。
図7には、ベクトルrに向かって、回転翼部21を目視した場合の座標系(破線内)も表示されている。
【0088】
中心線21L、22Lが決定された後、中心線21L、22Lに沿って2次元の翼断面を並べることで、回転翼20が決定される。
【0089】
翼断面は、翼断面における空気の流れ方向であるX''軸と、X''軸に直交するY''軸とを用いて、X''Y''軸平面における2次元形状として定義される。本実施形態では、翼断面を定められたねじり角α分、X''Y''軸平面で回転し、α分だけ回転した後の単位ベクトルx'、y'によって決定される翼断面定義断面20sが導入される。
【0090】
例えば、x'をベクトルrに垂直で、プロペラ回転面(XY平面)となす角がαの単位ベクトルとして定義する。なお、X''軸は、XY平面に平行である。次に、中心線21Lの方向を示す単位ベクトルをl'とする。さらに、x'及びl'に垂直な単位ベクトルをy'として次のように定義する。なお、単位ベクトルx'に平行な軸をX'軸、単位ベクトルy'に平行な軸をY'軸とする。
【0092】
この単位ベクトルx'、y'を用いて翼断面定義断面20sを決定し、翼断面定義断面20sの重心が中心線21L、22Lを通るように翼断面定義断面20sを配置する(ステップS113)。これにより、ループ形状をした回転翼20の断面形状が決定される。すなわち、ベクトルrに直交する単位ベクトルx'と、単位ベクトルx'及び単位ベクトルl'に直交する単位ベクトルy'とを用いることにより、回転翼20がループ形状を描いたとしても、中心線21L、22Lと直交する断面が(x'、y')によって決定される。なお、n'は、翼断面定義断面20sの法線ベクトルである。
【0093】
次に、単位ベクトルx'、y'を用いて作成した翼断面定義断面20sのキャンバーラインの修正を行う。
【0094】
図8(a)〜
図8(e)は、翼断面定義断面のキャンバーラインを修正する方法の概念を示す模式図である。
【0095】
翼断面定義断面20sのキャンバーCは、
図8(a)に示すように、キャンバーラインCL(翼上面の線と翼下面の線を平均した線)と、翼弦線(翼断面定義断面20sの前縁から後縁に引かれた線)との距離で示される。本実施形態では、X'軸が翼弦線に相当する。従って、キャンバーCは、X'軸からのキャンバーラインCL上の任意点との距離になる。従って、キャンバーCは、x'の関数となり、C=C(x')で表せる。なお、キャンバーラインCLから翼上面までの距離を厚みt/2、キャンバーラインCLから翼下面までの距離を厚みt/2とする。これにより、翼断面定義断面20sの翼上面のラインは、C(x')+t/2となり、翼断面定義断面20sの翼下面のラインは、C(x')−t/2となる。なお、X'軸における0からX'軸とキャンバーラインCLとの交点までの距離が翼弦長に相当する。
【0096】
本実施形態では、ベクトルrと、翼断面定義断面20sの法線ベクトルn'との内積をC(x)に乗じてキャンバーを中心線に沿って修正する(ステップS114)。修正後のキャンバーは、C=(r・n')・C(x)で表される。
【0097】
例えば、
図8(b)に示す回転翼20の位置P1では、rとn'とが略同じ向きなり、(r・n')が「1」になる。これにより、キャンバーラインは、修正されず、C=C(x)になる(
図8(c))。一方、回転翼20の位置P2では、rとn'とが直交し、(r・n')が「0」になる。これにより、キャンバーは、「0」になる(
図8(d))。すなわち、ループ形状の先端201では、キャンバーが直線となって、回転翼20における翼弦線とキャンバーラインとが一致する。これにより、回転翼20の先端部201付近では、揚力が生じず、その幅が狭くなっても変形しにくくなる。さらに、回転翼20の位置P3では、(r・n')がおよそ「−1」になり、キャンバーは、位置P1におけるキャンバーがX'軸を中心に線対称に配置した形状になる(
図8(e))。
【0098】
また、上記の中心線に沿った断面の並べ方、キャンバーの修正もコンピュータを用いてコンピュータープログラムによって自動的に実行される。さらに、このプログラムも情報記憶媒体に記憶される。
【0099】
また、回転翼20をケーブルと仮定すると、回転翼20内に走る横波の局所速度は
【0100】
【数19】
・・・(19)
で与えられる。遠心力による応力は、密度に比例することから、横波の速度は周速に比例し、振動数は回転数に比例する。従って、ある回転数で安定であれば、どの速度でも形状は、安定である。
【0101】
例えば、回転翼20の形状安定性は、縄跳びを回転したときの縄跳びの形状安定性、投げ縄の形状安定性等に類似する。例えば、回転する縄跳びは、地面に当たり大きく変形しても、即座に元の形状に復帰する。従って、回転翼20は、非回転時(例えば、静止時)に懸垂形状でなくとも、回転時に懸垂形状を維持する材料で構成されることも可能である。
【0102】
また、プロペラ100は、F−W&H(Ffowcs. Williams-Hawkings)方程式による解析結果により、高周波音を大幅に低減できることが示されている。
【0103】
一方、基本周波数に近い低周波音は、位相差同期回転によって低減することができる。これは、位相差を持って同方向に同期回転するプロペラから発生する波の干渉により空力音をキャンセルするものであり、等間隔に配置された回転翼がB枚のときに、基本角振動数がB倍となることと原理的に同じである。
【0104】
但し、波の干渉を用いるので、場所によっては、波が強めあう場合もあるものの、低周波ではプロペラのサイズに比べて波長が十分長い。これにより、角度が違っても位相は、大きくは変わらず、広い範囲でキャンセルされる。
【0105】
例えば、回転翼がB枚、角振動数ωのプロペラから発生する空力音のフーリエ成分は、複素数表示で次のように現せる。
【0108】
これに対し、角度φの位相差を保って同期回転するプロペラは、時刻がφ/ωだけずれて回転するとみなせるので、そのフーリエ成分は、
【0109】
【数21】
・・・(21)
となる。
【0110】
m枚の回転翼が等間隔の位相差を持つとすると、
【0111】
【数22】
・・・(22)
である。
【0113】
【数23】
・・・(23)
である。
【0114】
ここでn=m・l+j、0≦j≦m−1と表すと(j:nを整数mで除算したときの余り)、
【0115】
【数24】
・・・(24)
となる。
【0116】
右辺の第2項はj=0の場合以外は、0となるので、mの整数倍の高調波以外は、キャンセルされる。すなわち、プロペラ100から発せられる音は、極めて小さくなる。
【0118】
図9は、本実施形態の第1変形例のプロペラを示す模式的斜視図である。
【0119】
図9に示すプロペラ101は、プロペラ100のほかに、円筒形のダクト部材30を具備する。プロペラ100は、ダクト部材30内に設けられる。プロペラ100の中心軸10cは、ダクト部材30の中心軸30cに一致する。
【0120】
このような構成であれば、プロペラ100が回転したときに、プロペラ100から発せられる気流がダクト部材30の中心軸30cの方向に整流される。これにより、風力のエネルギー効率が増加する。また、ダクト部材30がプロペラ100を包囲することにより、プロペラ100から発せられる音の漏れが抑制される。
【0122】
図10は、本実施形態の第2変形例のプロペラを示す模式的斜視図である。
【0123】
回転翼20は、回転軸10の周りに2個とは限らず、3個以上配置されてもよい。例えば、
図10に示すプロペラ102では、3個の回転翼20が等間隔に配置されている。
【0124】
このような構成であれば、回転翼20の数が増加したことにより、プロペラ102が発する風力がプロペラ100に比べて増加する。
【0126】
図11は、本実施形態の第3変形例のプロペラを示す模式的斜視図である。
【0127】
図11に示すプロペラ103においては、Z軸方向における、接続箇所11と接続箇所12とのずれがプロペラ100に比べて小さい。例えば、接続箇所11と接続箇所12とは、同じXY軸平面に位置する。
【0128】
このような構成であっても、回転翼20は、遠心力と張力とがつり合った懸垂線を基に設計されているので、回転時にはループ形状が維持される。
【0130】
図12は、本実施形態の第4変形例のプロペラを示す模式的斜視図である。
【0131】
本実施形態では、懸垂線形状をループ形状の中心線の少なくとも一部に適用することから、ループ形状の一部を剛体部としてもよい。このような剛体部がループ形状に一部に含まれることにより、回転翼20は、曲げモーメントの影響をより受けにくくなる。例えば、
図12に示すプロペラ104では、先端部201付近にカウンターウェイトとしても機能する延在部204が設けられている。
【0133】
図13は、本実施形態の第5変形例のプロペラを示す模式的斜視図である。
【0134】
剛体部については、
図13に示すプロペラ105のように、平坦部205としてもよい。このような構成であれば、プロペラ105は、プロペラ104と同じ効果を奏する。さらに、プロペラ105をダクト部材30に取り付けた場合、先端部201が平坦部205で構成されているので、ダクト部材30との形状親和性が向上する。
【0136】
図14は、本実施形態の第6変形例のプロペラを示す模式的斜視図である。
【0137】
図14には、回転軸10の周辺が示されている。剛体部は、回転翼20の先端部201付近でなく、回転軸10近傍に設けてもよい。このような構成であれば、断面積が大きく剛性の高い回転翼20の根元部分が剛体部となり、回転翼20の機械的強度が増加する。
【0138】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。各実施形態は、独立の形態とは限らず、技術的に可能な限り複合させることができる。