【文献】
坂本 真樹,オノマトペ分布図を利用した触感覚の個人差可視化システム,日本バーチャルリアリティ学会論文誌 ,日本,特定非営利活動法人日本バーチャルリアリティ学会 ,2016年07月01日,第21巻 第2号 ,213−216ページ
【文献】
望月 理香,色弁別閾値を基準とした新しい色弱補正法の提案 ,電子情報通信学会論文誌,日本,社団法人電子情報通信学会 ,第J94-A巻 第2号 ,127-137ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記表示部は、複数の前記素材または前記画像に対する前記基準となる評価値と前記対象者の評価値とをそれぞれ主成分分析を行って得た上位の所定数の主成分を軸とした分布図上に質感表現の位置記号を配置して表示する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の質感表現評価装置。
前記表示部は、前記基準となる評価値に対応する質感表現の位置記号と前記対象者の評価値に対応する質感表現の位置記号とを、一つの分布図または並べた2つの分布図のそれぞれに表示する
ことを特徴とする請求項4に記載の質感表現評価装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態につき説明する。なお、質感表現のうちの音象徴語についてはオノマトペを例とする。
【0015】
<第1の実施形態>
[構成]
図1は本発明の第1の実施形態にかかる質感表現評価装置1の構成例を示す図である。
図1において、質感表現評価装置1は、機能部として、インタフェース部11と質感表現取得部12と質感表現解析部13と可視化部14とを備えている。これらの機能部は、質感表現評価装置1を構成するコンピュータのCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のハードウェア資源上で実行されるコンピュータプログラムによって実現されるものである。各部は、単一のコンピュータ上に配置される必要はなく、必要に応じて複数のコンピュータ上に分散される形態であってもよい。コンピュータプログラムは、CD−ROM等の記録媒体からインストールされたものであってもよいし、インターネット等を介して通信可能に接続されたサーバ(図示せず)の記憶装置からダウンロードされ、インストールされたものであってもよい。
【0016】
また、質感表現評価装置1は、処理に際して参照・更新するデータベースとして、画像データベース101と比較用データベース102と選択候補データベース103と形態データベース104と定量評価データベース105とを備えている。これらのデータベースは、質感表現評価装置1内のHDD(Hard Disk Drive)等の記憶媒体上の記憶領域に所定のデータを体系的に保持するものである。これらのデータベースは、単一のコンピュータ上に配置される必要はなく、必要に応じて複数のコンピュータ上に分散される形態であってもよい。
【0017】
インタフェース部11は、グラフィカルユーザインタフェース部111を備え、ユーザUとの間で対話的に情報の入力(質感表現の入力等)および出力(評価結果の画面表示、印刷等)を行う機能を有している。なお、グラフィカルユーザインタフェース部111は、音声インタフェースを備えてもよく、音声ガイド等を出力したり、マウス・キーボード入力に代わる音声入力を行えるようにしてもよい。また、インタフェース部11は、スタンドアロン型として質感表現評価装置1を利用するユーザUと入出力を行うだけでなく、ネットワークを介して接続された端末装置を利用するユーザとの間で情報の入出力を行うようにしてもよい。
【0018】
質感表現取得部12は、健常者または診断の対象者に人為的な処理により提示される素材や、画像データベース101から取得されて提示される画像に対する、健常者または対象者からの質感表現を取得する機能を有している。すなわち、認知症の疑いがある対象者を評価する際の比較に用いられる基準となる健常者のデータや、オノマトペを回答できない対象者への選択候補となるオノマトペを事前に取得して、比較用データベース102、選択候補データベース103に格納するとともに、診断時に対象者からの質感表現を取得する機能を有している。画像データベース101、比較用データベース102、選択候補データベース103のデータ構造およびそれらを用いた処理の詳細については後述する。
【0019】
質感表現解析部13は、解析・評価管理部131と形態解析部132と定量評価部133とを備え、ユーザUから入力された質感表現を解析する機能を有している。すなわち、質感表現がオノマトペで与えられた場合には、そのオノマトペを複数の形容詞対評価尺度について定量評価を行う。質感表現が形容詞表現で与えられた場合であって、形容詞対(例えば、「かたい−やわらかい」)の程度が数値で示される場合には直接的に評価値とし、文字列(例えば、「やわらかい」)で示される場合には言語解析等を行って評価値を得る。
【0020】
解析・評価管理部131は、質感表現解析部13における総合的な管理を行う機能を有している。形態解析部132は、事前に健常者から取得されたオノマトペの文字列または対象者から入力されたオノマトペの文字列から、形態データベース104を参照して形態解析を行い、オノマトペの内部表現であるオノマトペ表現データを生成する機能を有している。定量評価部133は、オノマトペ表現データに基づき、定量評価データベース105を参照して複数の形容詞対評価尺度に対する評価値を算出する機能を有している。形態データベース104および定量評価データベース105のデータ構造およびそれらを用いた処理の詳細については後述する。
【0021】
可視化部14は、可視化管理部141と評価結果画像生成部142とを備え、評価結果を示す画像を生成する機能を有している。可視化管理部141は、可視化部14における総合的な管理を行う機能を有している。評価結果画像生成部142は、健常者から得られた評価値と対象者から得られた評価値とを比較可能な画像を生成する機能を有している。生成された画像は、インタフェース部11を介してユーザUに提供される。
【0022】
図2は質感表現評価装置1のハードウェア構成例を示す図であり、一般的なコンピュータの構成である。
図2において、質感表現評価装置1は、システムバス1001に接続されたCPU(Central Processing Unit)1002、ROM(Read Only Memory)1003、RAM(Random Access Memory)1004、NVRAM(Non-Volatile Random Access Memory)1005を備えている。また、質感表現評価装置1は、I/F(Interface)1006と、I/F1006に接続された、I/O(Input/Output Device)1007、HDD(Hard Disk Drive)1008、NIC(Network Interface Card)1009と、I/O1007に接続されたモニタ1010、キーボード1011、マウス1012等を備えている。I/O1007にはCD/DVD(Compact Disk/Digital Versatile Disk)ドライブ等を接続することもできる。
【0023】
[動作]
図3は第1の実施形態の処理例を示すフローチャートであり、質感表現取得部12による事前データ取得の処理例を示している。
【0024】
図3において、質感表現取得部12が処理を開始すると、素材の場合は人為的な処理により、画像の場合は画像データベース101から取り出した画像をインタフェース部11から画面表示することにより、予め選定された個々の健常者に対して素材または画像を一つずつ提示する。そして、健常者が想起した質感表現を、健常者自身または担当者からインタフェース部11により入力し、入力した質感表現の生データを比較用データベース102に格納する(ステップS11)。素材や画像の提示と質感表現の入力は、個々の健常者に対して予め用意された複数の素材や画像について完了するまで繰り返して行い、完了した場合には次の処理に移行する。
【0025】
素材としては、「スライム」「人工芝」「アルミ板」等の、多様な質感を網羅し、健常者であれば問題なく質感の違いを判断できるものを予め選定して用意しておく。例えば、本発明者が触感を表すオノマトペを基準に作成した50素材「触感サンプルセット」(Maki Sakamoto, Junya Yoshino, and Junji Watanabe, 2013, Development of Tactile Materials Representing Human Basic Tactile Sensations, Proceedings of the 5th International Congress of International Association of Societies of Design Research (IASDR 2013), 1068-1074)を用いることができる。
【0026】
ほかにも、素材は、例えば、「アルミ」、「ゲル球入り素材」、「綿」、「砂利」、「防振パット」、「毛皮」、「ヘチマ」または「ゲルシート」等である。
【0027】
「スライム」には、例えば、「グニャグニャ」及び「サラサラ」等のオノマトペが選択肢として提示される。「人工芝」には、例えば、「ゴワゴワ」及び「モフモフ」等のオノマトペが選択肢として提示される。「ゲル球入り素材」には、例えば、「スベスベ」及び「フニフニ」等のオノマトペが選択肢として提示される。「綿」には、例えば、「モフモフ」及び「ペタペタ」等のオノマトペが選択肢として提示される。「砂利」には、例えば、「ゴツゴツ」及び「モコモコ」等のオノマトペが選択肢として提示される。「防振パット」には、例えば、「ボコボコ」及び「カサカサ」等のオノマトペが選択肢として提示される。「毛皮」には、例えば、「フサフサ」及び「グニャグニャ」等のオノマトペが選択肢として提示される。「ヘチマ」には、例えば、「シャリシャリ」及び「フカフカ」等のオノマトペが選択肢として提示される。「ゲルシート」には、例えば、「ペタペタ」及び「ツルツル」等のオノマトペが選択肢として提示される。
【0028】
画像としては、「水面の波紋の画像」「ビニールボールの画像」「花の画像」等の、素材と同様に、多様な質感を網羅し、健常者であれば問題なく質感の違いを判断できるものを予め選定して画像データベース101に格納しておく。例えば、MIT(Massachusetts Institute of Technology)で開発された、ガラスなど10カテゴリ画像1000枚収録のFMD(Flickr Material Database)を用いることができる。
図4は画像データベース101のデータ構造例を示しており、画像を識別する画像IDと、画像データ本体または画像データ本体へのリンクとが含まれている。
【0029】
図5および
図6は比較用データベース102のデータ構造例を示しており、個々の健常者から取得した生データと、生データから後述する処理により取得する評価値を素材・画像毎および健常者属性毎に統計処理(平均処理等)した統計データとを含んでいる。生データは、素材・画像を識別する素材ID/画像ID(素材名/画像名)と、性別・年齢層等の健常者属性と、オノマトペ・形容詞表現等の質感表現とを含んでいる。統計データは、素材・画像を識別する素材ID/画像ID(素材名/画像名)と、性別・年齢層等の健常者属性と、オノマトペ・形容詞表現等の評価値の統計値とを含んでいる。統計値には、最も回答頻度の高かった代表オノマトペ等も含めてある。
【0030】
図3に戻り、質感表現取得部12は、入力した質感表現から質感表現解析部13により評価値を取得し(ステップS12)、素材・画像毎および健常者属性毎に評価値の統計値を取得し、比較用データベース102に統計データとして格納する(ステップS13)。質感表現解析部13は、質感表現がオノマトペで与えられた場合には、そのオノマトペを複数の形容詞対評価尺度について定量評価を行う。質感表現が形容詞表現で与えられた場合であって、形容詞対(例えば、「かたい−やわらかい」)の程度が数値で示される場合には直接的に評価値とし、文字列(例えば、「やわらかい」)で示される場合には言語解析を行って評価値を得る。その処理の詳細については後述する。
【0031】
次いで、質感表現取得部12は、素材または画像から想定されるオノマトペの候補を運用担当者から取得し、選択候補データベース103に格納する(ステップS14)。オノマトペの候補は、健常者が回答するものと想定されるオノマトペと、認知症者が回答するものと想定されるオノマトペとが含まれるようにする。健常者により想定されるオノマトペは、比較用データベース102の生データにおいて多く回答されているオノマトペが参考になる。認知症者により想定されるオノマトペは、健常者により想定されるオノマトペとは異なる質感を表現するオノマトペが参考になる。例えば、素材「スライム」について、対象者が健常者である場合を想定したオノマトペ「グニャグニャ」に対し、認知症者を想定したオノマトペは「サラサラ」等がある。なお、予め認知症者についても健常者と同様の実験(
図3のステップS11、S12)を行い、そこで多く回答されているオノマトペを参考にすることもできる。
図7は選択候補データベース103のデータ構造例を示しており、素材・画像を識別する素材ID/画像ID(素材名/画像名)と、性別・年齢層等の対象者属性と、複数のオノマトペ候補とを含んでいる。
【0032】
なお、素材・画像毎および健常者属性や対象者属性毎に各種の情報を取得するものとしたが、健常者属性や対象者属性毎を問わない場合には、健常者属性や対象者属性毎を考慮しなくてもよい。
【0033】
図8は質感表現解析部13によるオノマトペからの評価値の取得の処理例を示すフローチャートである。
【0034】
図8において、質感表現解析部13の解析・評価管理部131は、比較用データベース102の生データからオノマトペを取得すると(ステップS21)、形態解析部132は、形態データベース104を参照して各オノマトペを形態解析し、オノマトペ表現データを生成する(ステップS22)。
【0035】
図9は形態データベース104のデータ構造例を示す図であり、「ひらがな・カタカナ」と「音素」と「形態」とが対応付けて保持されている。なお、母音、子音、小母音の音素の例を示しているが、その他に、拗音付き子音(/ky/等)、促音(/Q/)、撥音(/N/)、長音(/R/)、「り」(/ri/)等が存在する。
【0036】
形態解析部132は、取得された各オノマトペの文字列を先頭から形態データベース104の形態データと照合し、音素および形態を得る。
【0037】
また、形態解析部132は、
図10に示すようなルールに従い、オノマトペの1モーラ目と2モーラ目について「子音」「濁音」「拗音」「母音」「小母音」「特殊音(2モーラ目は「特殊語尾」)」について図示のカテゴリのいずれか(例えば、「濁音」については「なし」「濁音」「半濁音」のいずれか)および反復の有無を解析し、
図11に示すような形式のオノマトペ表現データを生成する。なお、「モーラ」とは、日本語リズムにおける拍数を指すものである。例えば、「ズキッ」というオノマトペの場合、「ズ」が第1モーラ、「キッ」が第2モーラに該当する。
【0038】
次いで、
図8に戻り、定量評価部133は、形態解析部132により生成された各オノマトペ表現データに基づき、定量評価データベース105を参照して定量評価(複数の形容詞対評価尺度に対する評価値の算出)を行う(ステップS23)。
【0039】
図12は定量評価データベース105のデータ構造例を示す図であり、評価尺度となる形容詞対(「暖かい−冷たい」等)に対し、オノマトペ表現データの項目(アイテム)に対応した数値が設定されている。なお、図示のデータは一部を示したものであり、評価尺度や項目は図示のものに限られず、2モーラ目についての数値も存在する。定量評価データは、想定される音素をカバーする複数のオノマトペについて、人間による心理実験を行い、各評価尺度に対する感じ方の回答から数量化理論I類等の手法により各項目のカテゴリによる影響を数値化したものである。
【0040】
そして、定量評価部133は、
図13に示すような、音韻の項目に対応した変数X
1〜X
13の値を
図12に示した定量評価データから評価尺度毎に取得し、
図14に示すような数式により評価尺度毎の評価値Yを算出する。nはモーラ数であり、Const.は定数項である。例えば、評価尺度「暖かい−冷たい」につき、1モーラ目の子音が「カ行」である場合、変数X
1は「0.16」となる。なお、数式において、モーラ数nで割り、「×2」としているのは、2モーラ以上で構成されるオノマトペが入力された場合でも、2モーラと同等に正規化され、出力される評価値の範囲を補正するためである。
【0041】
次に、認知症の疑いがある対象者の診断時の処理について
図15に沿って説明する。
【0042】
図15において、処理を開始すると、素材の場合は人為的な処理により、画像の場合は画像データベース101から取り出した画像をインタフェース部11から画面表示することにより、認知症の疑いがある対象者に対して素材または画像を一つずつ提示する。そして、対象者が想起した質感表現を、対象者自身または付添者・担当者からインタフェース部11により入力する(ステップS31)。オノマトペによる回答を行う際に、対象者が回答に困る場合に備え、選択候補データベース103から提示する素材・画像および対象者属性に対応するオノマトペの候補を提示し、選択させることもできる。入力した質感表現は、履歴情報として、素材ID/画像IDや、患者ID、氏名、性別・年齢層等の健常者属性とともに保存してもよい。素材や画像の提示と質感表現の入力は、対象者に対して予め用意された複数の素材や画像について完了するまで繰り返して行い、完了した場合には次の処理に移行する。
【0043】
なお、質感表現評価装置1のインタフェース部11を通して質感表現を入力する場合について説明したが、診断の現場において特別な装置を置いたり、その操作を必要としたりすることを避けることが望まれる場合に、例えば、紙ベースの質感表現回答シートを用いることができる。
図16は質感表現回答シートの例を示しており、用紙上に、回答の対象となる画像と、画像IDと、指示のメッセージと、複数の質感表現の選択肢とが印刷されている。なお、質感表現を文字で記入する欄を設けてもよい。また、1つの用紙に1つの画像と選択肢を記載した例を示したが、回答に混乱をきたさない態様で、1つの用紙に複数の画像と選択肢を記載してもよい。複数の質感表現の選択肢は、回答の対象となる画像について健常者が回答するものと想定される代表的な質感表現とそれ以外の1以上の質感表現との組み合わせからなる。質感表現回答シートを用いる場合、質感表現回答シートの回収後に、担当者により質感表現評価装置1への入力が行われる。質感表現回答シートの記載内容の質感表現評価装置1への入力は、光学式読取等により自動化してもよい。
【0044】
また、上述の対象者による直接操作等を避けることが望まれる場合以外であっても、上述の質感表現回答シートを利用することは有用である。この場合、上述の質感表現回答シートは紙ベースのものに限定されず、質感表現評価装置1のグラフィカルユーザインタフェース部111を構成するタブレット端末等のタッチパネルディスプレイ上に表示されたものであってもよい。例えば、付添者・担当者の指導により対象者がタッチパネルディスプレイ上に表示された質感表現回答シートに回答することで、つまり、
図15のステップS31の操作を行うことで、上述の担当者による入力の操作が不要となり集計・評価を効率的に行うことができる。また、上述のとおり、質感表現回答シートへの回答は対象者が直接行う必要はなく、対象者の回答を確認した付添者・担当者が行ってもよい。
【0045】
次いで、質感表現取得部12は、入力した質感表現から質感表現解析部13により評価値を取得する(ステップS32)。評価値を取得する処理は、
図8〜
図14において説明したのと同様である。
【0046】
次いで、
図15に戻り、可視化部14の評価結果画像生成部142は、素材・画像毎に対象者属性と共通する健常者属性の統計データを比較用データベース102から取得する(ステップS33)。
【0047】
そして、評価結果画像生成部142は、健常者の統計データと対象者の評価値とを比較可能に配置した画像を生成し、インタフェース部11により表示する(ステップS34)。なお、評価結果画像生成部142は、画像の生成にあたり、予め定められたルール(例えば、評価値に何パーセントの違いがある場合に異常と判定する等)に基づき、注意を行うべき評価値に対して強調表示やコメントを付加することができる。
【0048】
図17は評価結果画面の例を示しており、提示した画像と、健常者の代表的な回答と、診断の対象者の回答と、各評価尺度についての評価値を示す棒グラフと、コメントとが含まれている。なお、片側を起点とする棒グラフによる場合を示したが、評価尺度の中点を起点として、プラス側とマイナス側に伸びる棒グラフにより表示するようにしてもよい。また、評価値を棒グラフとともに、または、棒グラフに代えて、数値で表示してもよい。更に、コメントとして有意な差があることを明示するものを例示したが、どういった認知機能に異常が見られるかの可能性を明示するものとしてもよい。医師等は、評価結果の表示から、認知機能の低下を判断することができ、認知症の診断に役立てることができる。
【0049】
<第2の実施形態>
第1の実施形態では個々の素材や画像に対する健常者の評価値と診断の対象者の評価値とを棒グラフ等により表示する場合について説明したが、第2の実施形態では評価値を主成分分析した上位の主成分を軸とした分布図上に表示するようにしている。これにより、複数の素材や画像に対する複数の回答を一覧的に比較することができる。なお、第1の実施形態における表示と併用してもよい。
【0050】
[構成]
図18は本発明の第2の実施形態にかかる質感表現評価装置1の構成例を示す図である。
図18においては、
図1に示した構成と比較して、可視化部14の構成が変更されており、可視化部14において参照される関連性データベース106が追加されている。また、質感表現評価装置1のハードウェア構成は
図2に示したものと同様である。
【0051】
図18において、可視化部14は、可視化管理部141と主成分分析・位置配置部143と関連度領域配置部144と対象者評価配置部145とを備えている。可視化部14は、健常者から得た複数の素材・画像に対する複数のオノマトペ等についての複数の形容詞対評価尺度に対する評価値を主成分分析して得た上位の主成分を軸とした分布図上に、形容詞対の位置記号、オノマトペ等の位置記号、素材・画像の名称、関連度領域(例えば、視覚が優位な領域、触覚が優位な領域等)、および、診断の対象者から得たオノマトペ等の位置記号を配置する機能を有している。位置記号は、形容詞対またはオノマトペ等の分布図上での相対的な位置を示す点や見出し文字列等であり、形容詞対については、対峙する2つの形容詞の位置を示す点等をつなぐ線も含まれる。なお、健常者と対象者との比較のためには、健常者から得たオノマトペ等の位置記号と対象者から得たオノマトペ等の位置記号の表示は必須であるが、その他の形容詞対の位置記号、素材・画像の名称、関連度領域の表示は適宜に省略してもよい。
【0052】
可視化管理部141は、可視化部14における総合的な管理を行う機能を有している。主成分分析・位置配置部143は、健常者から得た複数のオノマトペ等についての複数の形容詞対評価尺度に対する評価値を主成分分析し、上位の主成分を軸とした分布図上に、形容詞対の位置記号、オノマトペ等の位置記号、素材・画像の名称とを配置する機能を有している。関連度領域配置部144は、分布図の各位置について主成分得点を取得し、取得した主成分得点に基づいて形容詞対の評価値を算出し、算出した評価値と形容詞対毎の感覚関連度とに基づいて各位置の感覚毎の関連度を算出し、所定値を境界とする領域を分布図上に配置する機能を有している。この処理において用いられる関連性データベース106のデータ構造およびそれらを用いた処理の詳細については後述する。
【0053】
対象者評価配置部145は、対象者から取得した評価値を主成分分析し、健常者と同じ分布図または新たな分布図に、上位の所定数の主成分を軸として、主成分得点に基づいてオノマトペの位置記号を配置する機能を有している。
【0054】
[動作]
図19は第2の実施形態の処理例を示すフローチャートであり、質感表現取得部12による事前データ取得の処理例を示している。
【0055】
図19において、質感表現取得部12が処理を開始すると、素材の場合は人為的な処理により、画像の場合は画像データベース101から取り出した画像をインタフェース部11から画面表示することにより、予め選定された個々の健常者に対して素材または画像を一つずつ提示する。そして、健常者が想起した質感表現を、健常者自身または担当者からインタフェース部11により入力し、入力した質感表現の生データを比較用データベース102に格納する(ステップS41)。素材や画像の提示と質感表現の入力は、個々の健常者に対して予め用意された複数の素材や画像について完了するまで繰り返して行い、完了した場合には次の処理に移行する。画像データベース101、比較用データベース102の生データについては、
図4〜
図6に示したものと同様である。
【0056】
図19に戻り、質感表現取得部12は、入力した質感表現から質感表現解析部13により評価値を取得し(ステップS42)、素材・画像毎、健常者属性毎および質感表現毎に評価値の統計値を取得し、比較用データベース102に統計データとして格納する(ステップS43)。評価値を取得する処理は、
図8〜
図14において説明したのと同様である。
図20は統計データのデータ構造例を示しており、素材・画像を識別する素材ID/画像ID(素材名/画像名)と、性別・年齢層等の健常者属性と、質感表現(文字列)と、質感表現の評価値の統計値とを含んでいる。
【0057】
図19に戻り、質感表現取得部12は、素材または画像から想定されるオノマトペの候補を運用担当者から取得し、選択候補データベース103に格納する(ステップS44)。なお、選択候補データベース103については、
図7に示したものと同様である。
【0058】
次に、認知症の疑いがある対象者の診断時の処理について
図21に沿って説明する。
【0059】
図21において、処理を開始すると、素材の場合は人為的な処理により、画像の場合は画像データベース101から取り出した画像をインタフェース部11から画面表示することにより、認知症の疑いがある対象者に対して素材または画像を一つずつ提示する。そして、対象者が想起した質感表現を、対象者自身または付添者・担当者からインタフェース部11により入力する(ステップS51)。オノマトペによる回答を行う際に、対象者が回答に困る場合に備え、選択候補データベース103から提示する素材・画像および対象者属性に対応するオノマトペの候補を提示し、選択させることもできる。入力した質感表現は、履歴情報として、素材ID/画像IDや、患者ID、氏名、性別・年齢層等の健常者属性とともに保存してもよい。素材や画像の提示と質感表現の入力は、対象者に対して予め用意された複数の素材や画像について完了するまで繰り返して行い、完了した場合には次の処理に移行する。なお、質感表現回答シート(
図16)を介した入力としてもよい。
【0060】
次いで、質感表現取得部12は、入力した質感表現から質感表現解析部13により評価値を取得する(ステップS52)。評価値を取得する処理は、
図8〜
図14において説明したのと同様である。
【0061】
次いで、
図21に戻り、可視化部14の主成分分析・位置配置部143は、対象者属性と共通する健常者属性のオノマトペ毎の統計データを比較用データベース102から取得する(ステップS53)。
【0062】
次いで、可視化部14の主成分分析・位置配置部143は、取得した複数のオノマトペについての複数の形容詞対評価尺度に対する評価値を主成分分析する(ステップS54)。主成分分析は、直交回転を用いて変数間に相関がある元の観測値を、相関の無い主成分とよばれる値に変換するための数学的な処理であり、多変量データを統合し、新たな総合指標を作り出すために用いられる。
【0063】
図22〜
図24は主成分分析の結果の例を示す図であり、
図22では、主成分PC1〜PC8につき、固有値と寄与率と累積寄与率が示されている。なお、主成分分析においては、各主成分についての固有ベクトルも併せて取得される。固有値は、各主成分が元の尺度何個分に相当する情報量を持っているかを意味する。寄与率は、固有値を元の尺度の数で割った値であり、各主成分が持つ情報量の全体における割合を示している。累積寄与率は、寄与率の高い順に寄与率を累積したものである。この例では、第2主成分までの累積寄与率は77%であるため、第1主成分と第2主成分を用いることで、2次元の分布図を作成することが可能であり、作成される分布図は全体の77%の情報を持っていると考えることができる。なお、分布図の表示上の工夫は必要となるが、第3主成分以下も用いることにより、3次元以上の分布図とすることもできる。
【0064】
図23は、評価尺度の各形容詞対について、第1・第2主成分に対する主成分負荷量の例を示している。主成分負荷量は、各形容詞対と主成分の相関係数である。この値から、各形容詞対と各主成分がどの程度関連しているかを知ることができる。
【0065】
図24は、オノマトペについて、第1・第2主成分に対する主成分得点の例を示している。主成分得点は、各形容詞対と主成分との相関を表しており、オノマトペと主成分の関係性を示している。
【0066】
次いで、
図21に戻り、可視化部14の主成分分析・位置配置部143は、主成分分析の結果に基づき、上位の所定数の主成分を軸とした分布図上に、形容詞対の主成分負荷量に基づいて形容詞対の位置記号を配置し、オノマトペの主成分得点に基づいてオノマトペの位置記号を配置し、素材・画像の名称を配置する(ステップS55)。
【0067】
図25は形容詞対の位置の配置例を示す図であり、第1主成分と第2主成分を用い、横軸を第1主成分に対する主成分負荷量とし、縦軸を第2主成分に対する主成分負荷量とし、各形容詞対を構成する形容詞を両端に、位置をプロットしたものである。
【0068】
図26はオノマトペの位置および素材・画像の名称の配置例を示す図であり、第1主成分と第2主成分を用い、横軸を第1主成分に対する主成分得点とし、縦軸を第2主成分に対する主成分得点とし、各オノマトペの位置をプロットしたものである。なお、ここでは繰り返しであるABAB型(「ふわふわ」等)のオノマトペに限ったため、見やすさを考慮し、繰り返さずに表記している(例えば、オノマトペ「ふわふわ」は「ふわ」と表記)。また、代表的なオノマトペの想起の元となった素材・画像の名称を付加している。
【0069】
図27は形容詞対の位置とオノマトペの位置とを重ねて配置した例を示す図であり、
図25と
図26の各軸の最大値が同等となるようにスケールを合わせている。
【0070】
次いで、
図21に戻り、可視化部14の関連度領域配置部144は、分布図上の所定間隔の各位置について主成分得点を取得(2次元の分布図の場合は横軸方向および縦軸方向の座標位置から主成分得点を直接に取得)し、取得した主成分得点に基づいて各形容詞対に対する評価値を算出し、算出した評価値と形容詞対毎の感覚関連度とに基づいて当該位置の感覚毎の関連度を算出し、所定値を境界とする領域を分布図上に配置する(ステップS56)。
【0071】
図28は感覚関連度の算出式の例を示す図である。先ず、分布図上の所定間隔の各位置の座標位置に対応する主成分得点に各主成分の固有ベクトルを乗算したものの総和をとり、これに評価尺度の形容詞対毎の標準偏差を乗算し、評価尺度の形容詞対毎の平均を加えることにより、評価値を得る。
図28には各形容詞対に対する標準偏差と平均の例を示してある。次いで、このようにして算出した各形容詞対の評価値の絶対値に各形容詞対の感覚関連度を乗算して総和をとることにより、感覚毎の感覚関連度を算出する。なお、評価値を絶対値にしているのは、形容詞対の両端において感覚関連度は高く作用するからである。各形容詞対の感覚関連度は関連性データベース106から取得する。
【0072】
図29は関連性データベース106のデータ構造例を示す図であり、各形容詞対に対して、この例では視覚と触覚の感覚関連度を保持している。関連性データは、各形容詞対について、人間による心理実験を行い、各形容詞対のこの例では視覚または触覚に対する感じ方の回答から数量化理論I類等の手法により各感覚への影響を数値化したものである。
【0073】
次いで、関連度領域配置部144は、感覚毎の感覚関連度から、所定の閾値(例えば、25パーセンタイル)となる領域の境界を特定し、分布図上に配置する。
【0074】
図30〜
図32は視覚と触覚の関連度領域の配置例を示す図であり、
図30は視覚が優位となる視覚関連領域(格子がある部分が視覚関連領域)を示し、
図31は触覚が優位となる触覚関連領域(格子がある部分が触覚関連領域)を示し、
図32は両者を重ねて示したものである。
図32において、領域Iは、視覚・触覚両方の関連を捉えられず、現時点ではどちらかに分類することはできない領域である。領域IIは、触覚に強い関連を持つ領域である。領域IIIは、視覚に強い関連を持つ領域である。領域IVは、視覚・触覚両方に強い関連を持つ領域である。なお、領域の違いを格子の有無で示したが、実際の画面や用紙等への表示については、色の違いやハッチング模様等の違いにより領域を区別して表示することができる。また、質感に対応する感覚として視覚と触覚を取り上げたが、他の感覚についても同様に可視化することが可能である。
【0075】
図33は形容詞対およびオノマトペの位置と視覚および触覚の関連度領域とを重ねて配置した例を示す図である。すなわち、
図27と
図32とを重ねて表示したものである。この分布図からは、所望のオノマトペがどの位置に存在するかを見ることで、そのオノマトペの持つ質感印象と視覚・触覚との関連性を把握することができる。例えば、「つやのある−つやのない」・「なめらかな−粗い」・「凸凹な−平らな」という次元で特徴付けられるオノマトペは視覚優位であり、「滑る」と評価されるオノマトペは触覚優位であることが分かる。従って、オノマトペを用いて質感を考察する場合、分布図によりそのオノマトペの意味する可能性を理解することが容易となる。
【0076】
次いで、
図21に戻り、対象者評価配置部145は、対象者から取得した評価値を主成分分析し、健常者と同じ分布図または新たな分布図に、上位の所定数の主成分を軸として、主成分得点に基づいてオノマトペの位置記号を配置して表示する(ステップS57)。主成分分析については、対象者から取得した評価値が対象となるほかは既に説明したものと同様である。上位の所定数の主成分を軸として、主成分得点に基づいてオノマトペの位置記号を配置する点についても、既に説明したものと同様である。
【0077】
図34は健常者と同じ分布図上に対象者から取得したオノマトペを配置して表示した例を示しており、符号Dで示すように、オノマトペ「さらさら」の位置が「×」で示す位置に変化していることを示している。なお、実際の診断においては、対象者から得られた複数のオノマトペについて同時に表示が行われる。
【0078】
健常者の評価値から得られる主成分と認知症の対象者から得られる主成分とは異なると考えられ、健常者の評価値から得られる分布図と認知症の対象者から得られる評価値から得られる分布図とでは、同じオノマトペに対する位置が異なることから、認知症の可能性を知ることができる。
【0079】
なお、診断時に健常者の統計データについて主成分分析を行う場合について説明したが、健常者のデータに変化がない場合には健常者属性毎に1回行えばよい処理であるため、事前処理(
図3)において、健常者属性毎に対象者の位置記号の配置の手前までの処理(
図21のステップS53〜S56)を行って結果を保存しておき、診断時にその結果を読み出して用いてもよい。
【0080】
また、質感表現として対象者からオノマトペが入力された場合について主に説明したが、質感表現として形容詞表現が入力された場合についても適用が可能である。形容詞表現の場合は、定量評価を行うことなく評価値が直接的に得られるほか、分布図への配置においては、入力された形容詞表現を配置することができる。
【0081】
[応用例]
認知症の診断を直接の目的としたものではないが、複数の素材・画像から回答された若年者と高齢者の分布図の例を
図35に示している。これによれば、若年者と高齢者の触感覚を比較することができ、加齢によって触感覚がどのように変化するかを把握することができる。処理としては、健常者を若年者とし、対象者を高齢者(複数または単数)とすることで、上述したのと同じ仕組で行うことができる。
【0082】
図35において、左側は若年者の分布図、右側は高齢者の分布図であり、丸付き数字は両方の分布図における同じ位置を示している。丸付き数字からの変位から分かるように、同じオノマトペであっても若年者と高齢者とでは位置が異なっている。例えば、若年者と高齢者とでは指先の温度に年齢差があり、高齢者の方が指先の温度が低いために素材の温かさを感じやすいと考えられる。また、指先の乾燥度や敏感さにも年齢性があり、その結果、「温かい−冷たい」、「滑らかな−粗い」、「滑る−粘つく」、「硬い−柔らかい」等の感じ方が変化している可能性がある。
【0083】
<第4の実施形態>
第4の実施形態では、更に記憶力がチェックされてもよい。
【0084】
図36は、本発明の第4の実施形態にかかる質感表現回答シートの例を示す図である。以下、図示するように、第4の実施形態では、複数の質感表現回答シートが用いられる。具体的には、まず、被験者には、1度答えた回答を再度回答しないようルールを説明しておく。
【0085】
そして、説明後、質感表現評価装置は、まず、被験者に第1シートOUT1を出力する。次に、第1シートOUT1に対しての回答が終了後、質感表現評価装置は、第2シートOUT2を出力する。このように、複数の質感表現回答シートを用いることで、素材または画像が複数提示される。
【0086】
第1シートOUT1と、第2シートOUT2とを比較すると、シート上に表示される画像が第1画像IMG1であるのに対して、第2シートOUT2では、第2画像IMG2が表示される点が異なる。そして、被験者には、第1シートOUT1が表示する第1画像IMG1に対して回答してもらう。
【0087】
以下、被験者が第1画像IMG1に対して、被験者が「ごつごつ」というオノマトペWD1を回答した例で説明する。そして、質感表現評価装置は、第1シートOUT1に対する被験者の回答、すなわち、「ごつごつ」のオノマトペWD1を記憶する。
【0088】
続いて、質感表現評価装置は、第2シートOUT2において、以前に第1シートOUT1で回答された「ごつごつ」のオノマトペWD1を選択肢の1つに含ませて出力する。
【0089】
そして、質感表現評価装置は、第2シートOUT2に対する回答が第1シートOUT1に対する回答結果、すなわち、以前に回答された回答結果でないか判定する。
【0090】
健常者、すなわち、記憶力が正常である場合には、事前に説明されるルールに基づいて、被験者は、1度回答した回答結果を以後は回答しない。一方で、記憶力が衰えている場合には、1度回答した回答であっても、被験者は、以前に回答した回答結果を覚えていないため、事前に説明されるルールがあっても、2度以上回答してしまう場合がある。
【0091】
以上のように、同じ回答を再度回答しないようにする等のようにルールを設定した上で、再度同じ回答がされないかをチェックすることで、質感表現評価装置は、被験者の記憶力等をチェックすることができる。
【0092】
なお、素材または画像の数は、2つに限られない。すなわち、質感表現回答シートは、3種類以上用いられてもよい。さらに、素材、画像またはオノマトペの提示は、質感表現回答シートで表示するに限られない。
【0093】
また、回答は、図示するような選択肢が与えられる形式でなく、文字等を記載して回答する、いわゆる自由回答形式等でもよい。
【0094】
なお、各実施形態では、質感表現評価装置は、評価の尺度として形容詞対評価尺度を用いているが、形容詞1つを評価の尺度とし、段階的又は連続的な評価値を取得してもよい。例えば、「粗い」という形容詞1つに対して、評価の尺度の例となる「粗さ度」が、「1、2、3、4、5、6、7」のように設定される。このように、1つの形容詞「粗い」に該当する度合いで評価し、評価値が取得されてもよい。
【0095】
したがって、本発明では、各実施形態の通り、評価の尺度に、形容詞対を用いる場合と、上述の通り、評価の尺度に、形容詞1つを用いる場合とがあり、「形容詞評価尺度」に対しての評価値は、どちらの方法で取得された値でもよい。
【0096】
<総括>
以上説明したように、本実施形態によれば、対象者から入力した質感表現を適切に評価することができる。
【0097】
具体的には、認知症の早期診断・進行度推定、認知症の予防、健常者の感性能力維持と向上のためのトレーニング、感性トレーニングアプリ開発(ネットやスポーツジムなど日常で活用可)、感性トレーニング用マスコットづくり等に役立てることができる。
【0098】
以上、本発明の好適な実施の形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に定義された本発明の広範な趣旨および範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正および変更を加えることができることは明らかである。すなわち、具体例の詳細および添付の図面により本発明が限定されるものと解釈してはならない。
【0099】
本国際出願は、2016年10月21日に出願された日本国特許出願2016‐207213号に基づく優先権を主張するものであり、その全内容を本国際出願に援用する。