特許第6979258号(P6979258)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6979258プロテクタ付ワイヤーハーネスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979258
(24)【登録日】2021年11月17日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】プロテクタ付ワイヤーハーネスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/012 20060101AFI20211125BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20211125BHJP
   H01B 7/24 20060101ALI20211125BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20211125BHJP
   F16L 57/00 20060101ALI20211125BHJP
【FI】
   H01B13/012 Z
   H01B7/00 301
   H01B7/24
   H02G3/04 087
   F16L57/00 A
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-185749(P2017-185749)
(22)【出願日】2017年9月27日
(65)【公開番号】特開2019-61864(P2019-61864A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2020年8月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(72)【発明者】
【氏名】牧 秀憲
【審査官】 神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−206314(JP,A)
【文献】 特開平08−340616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/012
H01B 7/00
H01B 7/24
H02G 3/04
F16L 57/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーハーネスと、立体的に組み立てられるプロテクタ部を備えるプロテクタ付ワイヤーハーネスの製造方法であって、
前記プロテクタ部は、
前記ワイヤーハーネスを支持する複数の支持部と、隣り合う前記支持部を連結し、屈曲可能な連結部とを備え
前記複数の支持部のうち、少なくとも一つの支持部貫通孔又は切欠設けられており、
前記プロテクタ部を用意し、前記連結部を屈曲させずに前記複数の支持部を平坦な状態に配置する工程と、
前記貫通孔又は前記切欠にピンを挿通し、前記貫通孔又は前記切欠からピンを突出させた状態とする工程と、
前記平坦な状態の前記支持部に前記ワイヤーハーネスを載置すると共に、前記ワイヤーハーネス前記ピン係止させて、前記プロテクタ部を立体的に組み立てたときの余長を形成する工程と、
前記余長の形成後に前記貫通孔又は前記切欠から前記ピンを抜き取る工程と、
前記ピンが抜き取られた状態の前記プロテクタ部を立体形状となるように変形する工程とを備える
プロテクタ付ワイヤーハーネスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネスと、このワイヤーハーネスの一部を支持し、屈曲されて立体的に組み立てられるプロテクタ部とを備えるプロテクタ付ワイヤーハーネスを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に配置されるワイヤーハーネスに対して、機械的に保護すると共に、設置経路の三次元形状に応じて所定の方向に曲げられた状態を保持するプロテクタを取り付けることがなされている。特許文献1,2は、プロテクタとして、ワイヤーハーネスを支持する複数の板材と、板材同士を連結し、屈曲可能な連結部又はヒンジとを備えるものを開示する。このプロテクタを屈曲させず平坦な状態にして(特許文献1,2の図2)、治具板上に配置する(特許文献1の図2)。この状態でプロテクタにワイヤーハーネスを配置して、両者をテープ等で固定する(特許文献2)。この状態で連結部又はヒンジを屈曲して、プロテクタを所定の立体形状に組み立てる(特許文献1,2の図3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−098523号公報
【特許文献2】特開2007−259572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のように平坦な状態のプロテクタにワイヤーハーネスを固定した後、プロテクタを屈曲すると、ワイヤーハーネスに局所的な張力が加わるという問題がある。ワイヤーハーネスの長さは、プロテクタの屈曲前ではプロテクタの長さと等しいが、屈曲後では曲がり部分を含むプロテクタの長さよりも短いからである。そのため、ワイヤーハーネスにおけるプロテクタの屈曲箇所及びその近傍は、上記曲がり部分に応じて引っ張られる。
【0005】
そこで、本発明の目的の一つは、立体的に組み立てられるプロテクタ部に支持されたワイヤーハーネスに局所的な張力が加わることを防止できるプロテクタ付ワイヤーハーネスを製造できるプロテクタ付ワイヤーハーネスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るプロテクタ付ワイヤーハーネスの製造方法は、
立体的に組み立てられるプロテクタ部を備えるプロテクタ付ワイヤーハーネスを製造する方法であって、
前記プロテクタ部として、前記ワイヤーハーネスを支持する複数の支持部と、隣り合う前記支持部を連結し、屈曲可能な連結部とを備えるものを用意し、前記連結部を屈曲させずに前記複数の支持部を平坦な状態に配置する工程と、
前記複数の支持部のうち、少なくとも一つの支持部に設けられた貫通孔又は切欠からピンを突出させた状態とし、前記ピンに前記ワイヤーハーネスを係止させて、前記プロテクタ部を立体的に組み立てたときの余長を形成する工程とを備える。
【発明の効果】
【0007】
上記のプロテクタ付ワイヤーハーネスの製造方法は、プロテクタ部が立体的に組み立てられる前であって平坦な状態に配置されているときに、ワイヤーハーネスの余長を形成する。この余長形成後にプロテクタ部を立体的に組み立てることでプロテクタ部の長さが変わっても、ワイヤーハーネスは、余長を有しており、プロテクタ部の長さ変動に追従できる。そのため、ワイヤーハーネスにおいて組立後のプロテクタ部に支持される箇所が局所的に引っ張られない。従って、上記のプロテクタ付ワイヤーハーネスの製造方法は、立体的に組み立てられるプロテクタ部を備えるものの、ワイヤーハーネスに局所的な張力が加わることを防止でき、健全なワイヤーハーネスを備えるプロテクタ付ワイヤーハーネスを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態のプロテクタ付ワイヤーハーネスの製造方法に利用するプロテクタ部の一例を示す概略斜視図である。
図2】実施形態のプロテクタ付ワイヤーハーネスの製造方法を説明する工程説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明のプロテクタ付ワイヤーハーネスの製造方法を具体的に説明する。図面において、同一符号は同一名称物を示す。
【0010】
[実施形態1]
図1図2を参照して、実施形態1のプロテクタ付ワイヤーハーネスの製造方法を説明する。図1は、ワイヤーハーネス10を収納可能な筒状のプロテクタ部1を例示する。図2はプロテクタ部1について蓋部23を省略し、主として支持部2を示す。図2(A),(C)は上面図、(B),(D)は側面図である。
【0011】
(全体構成)
実施形態1のプロテクタ付ワイヤーハーネスの製造方法(以下、本製法と呼ぶことがある)は、ワイヤーハーネス10と、立体的に組み立てられるプロテクタ部1とを備えるプロテクタ付ワイヤーハーネス100(図2(D))を製造する。プロテクタ付ワイヤーハーネス100は、例えば自動車に備えられる電装品と電源との間に設けられて、電装品への電力供給に利用される。
【0012】
プロテクタ部1は、ワイヤーハーネス10を支持する複数の支持部2と、隣り合う支持部2,2を連結し、屈曲可能な連結部3とを備える。このプロテクタ部1は、連結部3を屈曲して変形することで所定の立体形状、即ち非平坦な状態に組み立てられると共に、連結部3を屈曲させないことで、複数の支持部2が同一平面上に配置された平坦な状態(図2(B)も参照)とすることができる。
【0013】
上述の変形可能なプロテクタ部1を平坦な状態に配置しておき、このプロテクタ部1にワイヤーハーネス10を載置した後、プロテクタ部1を所定の立体形状に組み立てることで、プロテクタ付ワイヤーハーネス100を製造できる。特に、本製法では、プロテクタ部1として、複数の支持部2のうち、少なくとも一つの支持部2(図1では2b)に貫通孔4が設けられたものを用意する。そして、プロテクタ部1を屈曲する前に、貫通孔4からピン5を突出させて(図2(B))、このピン5を利用して、プロテクタ部1の屈曲に伴う長さ変動に追従できるように、ワイヤーハーネス10の余長11(図2(C))を形成する。
【0014】
以下、ワイヤーハーネス10、プロテクタ部1、貫通孔4及びピン5をそれぞれ説明し、次に図2を主に参照して、本製法の製造過程をより詳細に説明する。
【0015】
(ワイヤーハーネス)
ワイヤーハーネス10は、両端部にコネクタが取り付けられた1本以上の電線、代表的には複数の電線を束ねた電線束を備えるものであり、図1図2では簡略化して示す。各電線は、銅等の金属からなる導体線と、導体線の外周に設けられた絶縁被覆とを備える。ワイヤーハーネス10は、電線束の少なくとも一部を収納する保護チューブ(図示せず)を備えることができる。
【0016】
(プロテクタ部)
プロテクタ部1は、ワイヤーハーネス10を機械的に保護する部材である。また、プロテクタ部1は、上述のように所定の立体形状に組み立てられて、車両等のワイヤーハーネス10の取付対象に設置される。そのため、このプロテクタ部1は、その立体形状に対応した所定の方向にワイヤーハーネス10を沿わせる部材としても機能する。図2(D)では、側面視台形状であり、自動車のフロアパネルのトンネル箇所等を乗り越えられるように組み立てられたプロテクタ部1を例示する。
【0017】
この例のプロテクタ部1は、三つの支持部2a,2b,2cと、二つの連結部3a,3bとを備える。各連結部3a,3bは、隣り合う支持部2a,2b間、支持部2b,2c間を連結する。各支持部2a〜2cは、ワイヤーハーネス10を支持する台座20と、台座20の縁部から立設される一対の側壁21,21とを備える。更に、この例のプロテクタ部1は、立体形状に組み立てられたときに筒状になるように支持部2a〜2cに組み付けられる蓋部23を備える。
【0018】
各台座20は、ワイヤーハーネス10の設置経路の立体形状やワイヤーハーネス10の大きさ(外径等)に応じて種々の平面形状、大きさ(幅、長さ等)とすることができる。ここでは、各台座20の平面形状を長方形とし、いずれの台座20も同じ大きさとするが、ワイヤーハーネス10を支持可能な範囲で適宜変更できる。異なる形状や大きさの台座20を含むこともできる。例えば、台座20の平面形状を設置経路に応じた湾曲形状や屈曲形状等とすることができる。
【0019】
各側壁21の平面形状や台座20からの立設高さ、形成長さ等も、ワイヤーハーネス10を支持可能な範囲で適宜選択できる。ここでは、各側壁21の平面形状を長方形とし、上記立設高さをワイヤーハーネス10の外径以上、上記形成長さを台座20の縁部の全長に等しい大きさとするが、適宜変更できる。一対の側壁21,21を備えることで、ワイヤーハーネス10が台座20から脱落することを防止できる。
【0020】
連結部3は、例えば台座20をなす平板材よりも厚さが薄いことで可撓性に優れる薄肉部材(図2(B))や、ヒンジ等が利用できる。
【0021】
この例の蓋部23は、側面視台形状である立体的な成形体である。蓋部23は、プロテクタ部1が立体的に組み立てられた状態において、各支持部2a,2b,2cの台座20に対向配置され(図2(D))、台座20との間にワイヤーハーネス10を挟む蓋本体230と、蓋本体230の縁部から立設され、上述の側壁21に重ね合わされる壁部231とを備える。この例では、壁部231の一部と支持部2aの一方の側壁21とが屈曲可能な蓋連結部22によって連結されることで、蓋部23は、支持部2a〜2cに対して開閉可能である。蓋連結部22には、上述の連結部3で説明した薄肉部材やヒンジ等が利用できる。
【0022】
この例では、蓋本体230の幅が台座20の幅よりも若干広く、蓋部23を閉じた状態では、支持部2の側壁21の外側に蓋部23の壁部231が重なる。更に、この例では、各支持部2の側壁21と蓋部23の壁部231とは互いに係合する係合部(図示せず、例、差込片と係止枠等)を有しており、係合状態では独立して筒状に保持可能な構成である。
【0023】
この例のように立体的に組み立てられた状態が筒状のプロテクタ部1は、その内部にワイヤーハーネス10を挿通状態で収納できるため、ワイヤーハーネス10の全周を保護できる。例えば、設置経路に上述のトンネル箇所を乗り越える領域がある場合に、この領域に配置されるワイヤーハーネス10が上述の筒状のプロテクタ部1を備えていれば、乗員の足で踏まれる等しても、絶縁被覆の損傷等を防止できる。また、筒状のプロテクタ部1であれば、支持部2にワイヤーハーネス10をテープ等で固定しなくても、プロテクタ部1にワイヤーハーネス10が収納された状態を維持できる。
【0024】
(貫通孔及びピン)
この例では、複数の支持部2のうち、一つの支持部2bの台座20に、その表裏に貫通する貫通孔4が設けられている。貫通孔4は、図2(B),(C)に示すように、プロテクタ部1が立体的に組み立てられる前にピン5が挿通される。ピン5は、その先端部が貫通孔4から突出された状態に配置される。この貫通孔4から突出するピン5をワイヤーハーネス10の余長11の形成に利用する。
【0025】
ここで、平坦な状態に配置されたプロテクタ部1の長手方向に沿って、図2(C)に二点鎖線で仮想的に示すようにワイヤーハーネス10を直線的に配置した場合を考える(特許文献1,2の図2も参照)。この場合、ワイヤーハーネス10におけるプロテクタ部1に載置された箇所の長さは、プロテクタ部1の長さ(この例では三つの支持部2a〜2cの長さと二つの連結部3a,3bの長さとの合計長さL(図2(A)))に等しく、最短長さとすることができる。しかし、この状態でプロテクタ部1を立体的に組み立てると、ワイヤーハーネス10の長さは、図2(D)に示す立体形状のプロテクタ部1の長さよりも、曲げられた状態の連結部3の長さ分(この例では、曲げられた状態の二つの連結部3a,3bの合計長さ分)だけ短い。そこで、本製法では、ワイヤーハーネス10の長さが、上述の最短長さ(=合計長さL)に加えて、立体状態(非平坦状態)のプロテクタ部1の長さLと平坦な状態のプロテクタ部1の長さLとの差(L−L)以上の余長11を有するように、ワイヤーハーネス10を平坦な状態のプロテクタ部1に載置する。
【0026】
貫通孔4は、ピン5と共に、上述したプロテクタ部1の長さ差(L−L)以上の余長11を形成できるように、複数の支持部2のうち、少なくとも一つの支持部2に設けられる。一つの支持部2に設けられる貫通孔4の個数、形成位置等は、上述の差(L−L)に応じて適宜選択できる。ここでは、一つの支持部2に一つの貫通孔4を備える場合を例示するが、適宜変更できる。例えば、複数の支持部2のうち、一つの支持部2にのみ貫通孔4を備える場合、比較的大きな余長11を形成するために、複数の貫通孔4を設けることが挙げられる。複数の貫通孔4は、離間して直線状や円弧等の曲線状、千鳥状に設けることが挙げられる。複数の貫通孔4が直線状等に配置される場合、例えば複数のピン5を蛇行して渡るようにワイヤーハーネス10を係止させれば、一つのピン5にワイヤーハーネス10を係止させる場合よりも余長11を長くできる。複数の貫通孔4が千鳥状に配置される場合、各ピン5にワイヤーハーネス10を蛇行させて係止すれば、余長11を長くできる。
【0027】
貫通孔4の開口形状、開口部の大きさ等は、ピン5を挿通可能であり、支持部2の台座20がワイヤーハーネス10を支持可能な範囲で適宜選択できる。代表的な貫通孔4として、内周形状が円形である円孔が挙げられる。複数の貫通孔4を備える場合、開口形状や開口部の大きさが異なる貫通孔4を含むこともできる。
【0028】
ピン5は、貫通孔4から突出された先端部にワイヤーハーネス10が係止されることで上述の余長11を形成する部材である。ピン5の断面形状、大きさ(断面積、長さ等)は、貫通孔4に挿通可能であり、ワイヤーハーネス10を係止可能な範囲で適宜選択できる。代表的なピン5として、貫通孔4の内周形状に相似な外形を有する棒状体、例えば丸棒等が挙げられる。丸棒等の曲面形状であれば、係止したワイヤーハーネス10にキズがつくことを回避できる。貫通孔4の内周形状とは非相似な外形を有する棒状体をピン5に利用することもできる。
【0029】
ピン5は、ワイヤーハーネス10を所定の設置経路に対応した形状に組み立てるための作業に用いる治具板200(図2(B))に固定された固定形態、治具板200に手動で、又は自動で抜き差し可能に取り付けられる可動形態等が挙げられる。
【0030】
上述の固定形態では、治具板200の所定の位置に立設されるピン5に、プロテクタ部1の貫通孔4を挿通して、プロテクタ部1を治具板200に載置すれば、貫通孔4からピン5が突出した状態にすることができる。プロテクタ部1を治具板200から取り外せば、貫通孔4からピン5が抜き取られた状態にすることができる。
【0031】
上述の可動形態では、プロテクタ部1を治具板200に載置し、作業者が貫通孔4にピン5を差し込んだり、駆動機構によってピン5を上昇させて貫通孔4に挿通させたりすることで、上述の突出状態にすることができる。作業者がピン5を抜き取ったり、駆動機構によってピン5を下降させたりすることで、上述の抜取状態にすることができる。駆動機構によってピン5の昇降を自動的に行えば、プロテクタ部1を治具板200に載置したり、治具板200から取り外したりし易く、プロテクタ付ワイヤーハーネス100の製造作業性を向上できる。
【0032】
(本製法の製造過程)
本製法では、まず、上述のように平坦状態と非平坦状態とに変形可能であり、支持部2に貫通孔4を有するプロテクタ部1を用意する。図2(A),(B)に示すように、連結部3を屈曲させずに、複数の支持部2を平坦な状態にして、このプロテクタ部1を治具板200に配置する。
【0033】
図2(B)に示すように、支持部2に設けられた貫通孔4からピン5を突出させた状態とする。ピン5を突出状態にする手法については、上述の固定形態、可動形態で説明した通りである。固定形態や、駆動機構を利用する可動形態では、平坦な状態のプロテクタ部1を治具板200に載置する前に、ピン5を治具板200から突出した状態にできる。そのため、治具板200にプロテクタ部1を載置する際のガイドとして突出状態のピン5を利用できる。ピン5において、治具板200に載置された支持部2からの突出高さは、ワイヤーハーネス10を係止可能な範囲で選択できる。上記突出高さが、例えばワイヤーハーネス10の外径以上であれば、係止したワイヤーハーネス10がピン5から外れ難い。
【0034】
次に、図2(C)に示すように、貫通孔4から突出するピン5にワイヤーハーネス10を係止させて、プロテクタ部1を平坦な状態から立体的に組み立てたときの余長11を形成する。上述のようにワイヤーハーネス10の長さが、最短長さに加えて、プロテクタ部1の長さ差(L−L)を含む長さとなるように、貫通孔4の個数や形成位置等が選択されている。そのため、このような貫通孔4から突出するピン5にワイヤーハーネス10を係止させるという単純な作業によって、所定の余長11を容易に形成できる。また、ピン5に係止されたワイヤーハーネス10は、余長11を有した状態を維持できる。
【0035】
次に、貫通孔4からピン5が抜き取られた状態とする。こうすることで、プロテクタ部1及び余長11は、変形可能な状態となる。この抜取状態で、プロテクタ部1を平坦な状態から所定の立体形状となるように変形する。例えば、図2(D)に示すように、連結部3a,3bを山折りして、支持部2a〜2cを台形状に変形する。このプロテクタ部1の変形に追従して余長11が変形する。そのため、ワイヤーハーネス10は、プロテクタ部1の屈曲箇所及びその近傍が局所的に引っ張られることが無い。なお、この例では、上述の立体形状への変形後に蓋部23を閉める。
【0036】
(主要な効果)
実施形態1のプロテクタ付ワイヤーハーネスの製造方法では、屈曲可能なプロテクタ部1が立体的に変形される前の平坦な状態にあるときにワイヤーハーネス10の余長11を形成する。そのため、ワイヤーハーネス10は、上述のようにプロテクタ部1の変形に伴って余長11が変形できて、局所的に引っ張られない。従って、本製法によれば、平坦状態から非平坦状態に変形可能なプロテクタ部1を備えるものの、ワイヤーハーネス10に局所的な張力が加わることを防止でき、健全なワイヤーハーネス10を備えるプロテクタ付ワイヤーハーネス100を製造できる。また、本製法は、貫通孔4が設けられた支持部2とピン5とを用意して、貫通孔4から突出させたピン5にワイヤーハーネス10を係止するという単純な構成でありながら、余長11を適切に形成できて実施し易い。
【0037】
[変形例]
実施形態1のワイヤーハーネスの製造方法に対して、以下の少なくとも一つの変更が可能である。
(1)プロテクタ部1を、筒状体とせず、蓋部23を有しておらず、台座20と、少なくとも一つの側壁21とを備え、上部が開放されたものとする(特許文献1参照)。
この形態では、平坦な状態のプロテクタ部1にワイヤーハーネス10を載置した後、余長11が変形可能な範囲で、支持部2にワイヤーハーネス10をテープ等で適宜固定すると、ワイヤーハーネス10がプロテクタ部1から脱落することを防止できる。この形態は、蓋部23の省略による軽量化を図ることができる。
(2)プロテクタ部1を、部分的に筒状体とする。例えば、支持部2にのみ蓋部が連結され、連結部3は蓋部で覆われないものとする(特許文献2参照)。
この形態では、ワイヤーハーネス10は、連結部3に支持される箇所が露出されるものの、その他の箇所が筒状の支持部2で覆われて保護される。この形態は、蓋部を単純な形状にし易い。
(3)貫通孔4を切欠に代える。例えば、上述の(1)の形態では、台座20の縁部のうち、側壁21が設けられていない箇所に開口する切欠を設けることが挙げられる。切欠の形状としては、例えばU字状が挙げられる。
【符号の説明】
【0038】
1 プロテクタ部
2,2a,2b,2c 支持部
20 台座、21 側壁、22 蓋連結部、23 蓋部、230 蓋本体
231 壁部
3,3a,3b 連結部
4 貫通孔
5 ピン
10 ワイヤーハーネス、11 余長
100 プロテクタ付ワイヤーハーネス
200 治具板
図1
図2