特許第6979281号(P6979281)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6979281誘導モータの速度推定方法およびそれを用いた電力変換装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979281
(24)【登録日】2021年11月17日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】誘導モータの速度推定方法およびそれを用いた電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 21/24 20160101AFI20211125BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20211125BHJP
【FI】
   H02P21/24
   H02M7/48 E
【請求項の数】11
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-83412(P2017-83412)
(22)【出願日】2017年4月20日
(65)【公開番号】特開2018-182989(P2018-182989A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】戸張 和明
(72)【発明者】
【氏名】岩路 善尚
(72)【発明者】
【氏名】金子 悟
(72)【発明者】
【氏名】大橋 敬典
(72)【発明者】
【氏名】中村 敦彦
(72)【発明者】
【氏名】小沼 雄作
(72)【発明者】
【氏名】杉本 卓也
【審査官】 佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−057963(JP,A)
【文献】 特開平04−304183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 21/00−21/36
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導モータを速度センサレスベクトル制御により駆動する電力変換装置であって、
指令値あるいは検出値を、一次電流の方向とそれより90度遅れた方向を回転座標系とした制御軸に変換する座標変換部と、
該座標変換部で変換された指令値あるいは検出値に基づいて前記誘導モータの速度推定値を演算する速度推定演算部を有し、
該速度推定値に基づいて出力周波数値を制御し、
前記座標変換部は、前記誘導モータのq軸の電流指令値あるいは電流検出値をd軸の電流指令値あるいは電流検出値で除算し該除算した値の逆正接信号を90度から減算した減算値の正弦信号および余弦信号と、前記d軸およびq軸の電流指令値あるいは電流検出値および電圧指令値を用いて、一次電流の方向とするt軸と該t軸より90度遅れた方向のm軸の電流指令値あるいは電流検出値および電圧指令値を演算し、
前記速度推定演算部は、前記誘導モータの漏れインダクタンス値とd軸電流を乗算した値と相互インダクタンスを二次インダクタンスで除算してd軸二次磁束を乗算した値を加算し、該加算した値に出力周波数値あるいは速度指令値を乗算した値の絶対値が、一次抵抗値とq軸電流を乗算した値の絶対値よりも小さくなる低速域では、前記m軸の電圧指令値と、前記m軸およびt軸の電流指令値と電流検出値と、正弦信号と、前記誘導モータの回路定数と、出力周波数値および、すべり周波数指令値を用いて、前記誘導モータの速度推定値を演算することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
誘導モータを速度センサレスベクトル制御により駆動する電力変換装置であって、
指令値あるいは検出値を、一次電流の方向とそれより90度遅れた方向を回転座標系とした制御軸に変換する座標変換部と、
該座標変換部で変換された指令値あるいは検出値に基づいて前記誘導モータの速度推定値を演算する速度推定演算部を有し、
該速度推定値に基づいて出力周波数値を制御し、
前記座標変換部は、前記誘導モータのq軸の電流指令値あるいは電流検出値をd軸の電流指令値あるいは電流検出値で除算し該除算した値の逆正接信号を90度から減算した減算値の正弦信号および余弦信号と、前記d軸およびq軸の電流指令値あるいは電流検出値および電圧指令値を用いて、一次電流の方向とするt軸と該t軸より90度遅れた方向のm軸の電流指令値あるいは電流検出値および電圧指令値を演算し、
前記速度推定演算部は、前記誘導モータの漏れインダクタンス値とd軸電流を乗算した値と相互インダクタンスを二次インダクタンスで除算してd軸二次磁束を乗算した値を加算し、該加算した値に出力周波数値あるいは速度指令値を乗算した値の絶対値が、一次抵抗値とq軸電流を乗算した値の絶対値よりも大きくなる中高速域では、前記t軸の電圧指令値と、前記m軸およびt軸の電流指令値と電流検出値と、余弦信号と、前記誘導モータの回路定数と、出力周波数値および、すべり周波数指令値を用いて、前記誘導モータの速度推定値を演算することを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
誘導モータを速度センサレスベクトル制御により駆動する電力変換装置であって、
指令値あるいは検出値を、一次電流の方向とそれより90度遅れた方向を回転座標系とした制御軸に変換する座標変換部と、
該座標変換部で変換された指令値あるいは検出値に基づいて前記誘導モータの速度推定値を演算する速度推定演算部を有し、
該速度推定値に基づいて出力周波数値を制御し、
前記座標変換部は、前記誘導モータのq軸の電流指令値あるいは電流検出値をd軸の電流指令値あるいは電流検出値で除算し該除算した値の逆正接信号を90度から減算した減算値の正弦信号および余弦信号と、前記d軸およびq軸の電流指令値あるいは電流検出値および電圧指令値を用いて、一次電流の方向とするt軸と該t軸より90度遅れた方向のm軸の電流指令値あるいは電流検出値および電圧指令値を演算し、
前記速度推定演算部は、前記誘導モータの漏れインダクタンス値とd軸電流を乗算した値と相互インダクタンスを二次インダクタンスで除算してd軸二次磁束を乗算した値を加算し、該加算した値に出力周波数値あるいは速度指令値を乗算した値の絶対値1が、一次抵抗値とq軸電流を乗算した値の絶対値2よりも小さくなる低速域と、前記絶対値1が前記絶対値2よりも大きくなる中高速域とで、前記誘導モータの速度推定値を切替えることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項に記載の電力変換装置であって、
前記座標変換部で変換された指令値あるいは検出値に基づいてベクトル制御の演算を行うベクトル制御演算部を有することを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項1から3の何れか1項に記載の電力変換装置であって、
前記t軸の電流指令値あるいは電流検出値は、d軸の電流指令値あるいは電流検出値を2乗した値とq軸の電流指令値あるいは電流検出値を2乗した値の加算値の平方根であり、m軸の電流指令値あるいは電流検出値は零であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項に記載の電力変換装置であって、
前記低速域と前記中高速域を切替えるレベル値は、内部メモリに設定されている前記誘導モータの回路定数や定格周波数および定格電流の値を用いて、自動的に設定することを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】
請求項に記載の電力変換装置であって、
前記低速域と前記中高速域の切替え閾値は、デジタル・オペレータやパーソナル・コンピュータあるいはタブレット、スマートフォン機器を接続して設定、変更できることを特徴とする電力変換装置。
【請求項8】
誘導モータの速度センサレスベクトル制御における速度推定方法であって、
一次電流の方向とそれより90度遅れた方向を回転座標系の制御軸として、該制御軸上で前記誘導モータの速度推定値を演算し、
前記制御軸に指令値あるいは検出値を変換する座標変換処理として、前記誘導モータのq軸の電流指令値あるいは電流検出値をd軸の電流指令値あるいは電流検出値で除算し該除算した値の逆正接信号を90度から減算した減算値の正弦信号および余弦信号と、前記d軸およびq軸の電流指令値あるいは電流検出値および電圧指令値を用いて、一次電流の方向とするt軸と該t軸より90度遅れた方向のm軸の電流指令値あるいは電流検出値および電圧指令値を演算し、
前記誘導モータの漏れインダクタンス値とd軸電流を乗算した値と相互インダクタンスを二次インダクタンスで除算してd軸二次磁束を乗算した値を加算し、該加算した値に出力周波数値あるいは速度指令値を乗算した値の絶対値が、一次抵抗値とq軸電流を乗算した値の絶対値よりも小さくなる低速域では、前記速度推定値を、前記m軸の電圧指令値と、前記m軸およびt軸の電流指令値と電流検出値と、正弦信号と、前記誘導モータの回路定数と、出力周波数値および、すべり周波数指令値を用いて演算することを特徴とする速度推定方法
【請求項9】
誘導モータの速度センサレスベクトル制御における速度推定方法であって、
一次電流の方向とそれより90度遅れた方向を回転座標系の制御軸として、該制御軸上で前記誘導モータの速度推定値を演算し、
前記制御軸に指令値あるいは検出値を変換する座標変換処理として、前記誘導モータのq軸の電流指令値あるいは電流検出値をd軸の電流指令値あるいは電流検出値で除算し該除算した値の逆正接信号を90度から減算した減算値の正弦信号および余弦信号と、前記d軸およびq軸の電流指令値あるいは電流検出値および電圧指令値を用いて、一次電流の方向とするt軸と該t軸より90度遅れた方向のm軸の電流指令値あるいは電流検出値および電圧指令値を演算し、
前記誘導モータの漏れインダクタンス値とd軸電流を乗算した値と相互インダクタンスを二次インダクタンスで除算してd軸二次磁束を乗算した値を加算し、該加算した値に出力周波数値あるいは速度指令値を乗算した値の絶対値が、一次抵抗値とq軸電流を乗算した値の絶対値よりも大きくなる中高速域では、前記速度推定値を、前記t軸の電圧指令値と、前記m軸およびt軸の電流指令値と電流検出値と、余弦信号と、前記誘導モータの回路定数と、出力周波数値および、すべり周波数指令値を用いて演算することを特徴とする速度推定方法
【請求項10】
誘導モータの速度センサレスベクトル制御における速度推定方法であって、
一次電流の方向とそれより90度遅れた方向を回転座標系の制御軸として、該制御軸上で前記誘導モータの速度推定値を演算し、
前記制御軸に指令値あるいは検出値を変換する座標変換処理として、前記誘導モータのq軸の電流指令値あるいは電流検出値をd軸の電流指令値あるいは電流検出値で除算し該除算した値の逆正接信号を90度から減算した減算値の正弦信号および余弦信号と、前記d軸およびq軸の電流指令値あるいは電流検出値および電圧指令値を用いて、一次電流の方向とするt軸と該t軸より90度遅れた方向のm軸の電流指令値あるいは電流検出値および電圧指令値を演算し、
前記誘導モータの漏れインダクタンス値とd軸電流を乗算した値と相互インダクタンスを二次インダクタンスで除算してd軸二次磁束を乗算した値を加算し、該加算した値に出力周波数値あるいは速度指令値を乗算した値の絶対値1が、一次抵抗値とq軸電流を乗算した値の絶対値2よりも小さくなる低速域と、前記絶対値1が前記絶対値2よりも大きくなる中高速域とで、前記速度推定値を切替えることを特徴とする速度推定方法。
【請求項11】
請求項8から10の何れか1項に記載の速度推定方法であって、
前記t軸の電流指令値あるいは電流検出値は、d軸の電流指令値あるいは電流検出値を2乗した値とq軸の電流指令値あるいは電流検出値を2乗した値の加算値の平方根であり、m軸の電流指令値あるいは電流検出値は零であることを特徴とする速度推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、速度センサを用いない誘導モータの速度センサレスベクトル制御に係り、誘導モータの速度推定方法およびそれを用いた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
速度センサを設けずに誘導モータの速度を推定し、その速度推定値に基づいて誘導モータの速度を制御する、いわゆる速度センサレスベクトル制御がある。本技術分野における背景技術として、特開平6−105580号公報(特許文献1)がある。特許文献1には、外乱オブザーバを設けて、q軸の逆起電力値を推定し、磁束係数で除算することで下記式(1)に従い、速度推定値ωを算出している。
【0003】
【数1】
ここで、R:一次抵抗値、R´:一次側に換算した二次抵抗値、Lσ:漏れインダクタンス値、M:相互インダクタンス値、L:二次インダクタンス値、Tobs:外乱オブザーバに設定する速度推定遅れ時定数、である。
【0004】
この方式において、誘導モータ内の巻線温度に伴い一次抵抗値Rが変化すると、式(1)に用いる設定値Rと一次抵抗値Rに誤差がある場合、速度推定値に推定誤差が生じることで、安定な速度制御が行えず、出力電圧が低くなる低速域において、トルク不足が発生する問題があった。
【0005】
そこで、一次抵抗値の変化に低感度な制御法として、特開2005−057963号公報(特許文献2)記載のように、誘導モータの回路定数において、一次抵抗値以外を真値と仮定して、新しく一次抵抗値の設定誤差に起因する一次電流推定誤差ベクトル方向であるγ軸とγ軸より90度進んだδ軸を定義し、この制御軸上で回転速度を推定することでトルク不足を抑制する技術の記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−105580号公報
【特許文献2】特開2005−057963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に記載の方法は、特許文献2の請求項4の<4>に記載があるように、一次抵抗値以外を真値とすることにより数式を導出しており、同請求項4の<5>に記載のように、一次抵抗値の設定誤差のみを考慮した電流推定誤差ee iRsのベクトル方向を数式から演算しており、一次抵抗値以外の誤差があると、速度センサレスベクトル制御の特性は、やはり劣化してしまう問題がある。
本発明の目的は、誘導モータ内の巻線温度に起因するトルク不足を防止し、高精度な速度制御特性を実現できる速度推定方法およびそれを用いた電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記背景技術及び課題に鑑み、その一例を挙げるならば、誘導モータを速度センサレスベクトル制御により駆動する電力変換装置であって、指令値あるいは検出値を、一次電流の方向とそれより90度遅れた方向を回転座標系とした制御軸に変換する座標変換部と、座標変換部で変換された指令値あるいは検出値に基づいて誘導モータの速度推定値を演算する速度推定演算部を有し、速度推定値に基づいて出力周波数値を制御する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、誘導モータ内の巻線温度に起因するトルク不足を防止し、高精度な速度制御特性を実現できる速度推定方法およびそれを用いた電力変換装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1における電力変換装置の構成図である。
図2】従来技術を用いた場合の負荷運転特性である。
図3】従来技術におけるd−q軸のベクトル図である。
図4】実施例1におけるm−t軸のベクトル図である。
図5】実施例1における負荷運転特性である。
図6】実施例1を採用した場合の検証方法を説明する構成図である。
図7】実施例3における速度推定演算部の構成図である。
図8】実施例4における電力変換装置の構成図である。
図9】実施例5における電力変換装置の構成図である。
図10】実施例6における誘導モータ駆動システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて本実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は、本実施例における電力変換装置の構成図である。図1において、電力変換装置により駆動される誘導モータ1は、磁束軸成分(d軸)の電流により発生する磁束と、磁束軸に直行するトルク軸成分(q軸)の電流によりトルクを発生する。電力変換器2は、3相交流の電圧指令値V、V、Vに比例した電圧値を出力し、誘導モータ1の出力電圧と出力周波数を可変する。直流電源2aは、電力変換器2に直流電圧を供給する。電流検出器3は、誘導モータ1の3相の交流電流I、I、Iの検出値Iuc、Ivc、Iwcを出力する。電流検出器3は、誘導モータ1の3相の内の2相、例えば、U相とW相の相電流を検出し、交流条件(I+I+I=0)から、V相の線電流をI=−(I+I)として求めてもよい。座標変換部4は、3相の交流電流I、I、Iの検出値Iuc、Ivc、Iwcと位相推定値θdcからd軸およびq軸の電流検出値Idc、Iqcを出力する。
【0013】
速度推定演算部5は、m軸およびt軸の電流指令値I, Iと電流検出値Imc, Itcと電圧指令値Vmc**, Vtc**、出力周波数値ωおよび誘導モータ1の回路定数(R、R´、M、L、φ2d)に基づいて、誘導モータ1の速度推定値ωを出力する。
【0014】
すべり周波数演算部6は、d軸およびq軸の電流指令値I、Iと誘導モータ1の回路定数から計算した二次時定数Tに基づいて、誘導モータ1のすべり周波数指令値ωを出力する。加算部7は、速度推定値ωとすべり周波数指令値ωの加算値である出力周波数値ωを出力する。
【0015】
位相推定演算部8は、出力周波数値ωを積分演算して位相推定値θdcを出力する。
【0016】
d軸電流指令設定部9は、正極性であるd軸の電流指令値Iを出力する。定トルク領域では、d軸の電流指令値Iは一定値に設定あるいは制御される。定出力領域では、Iはトルクと回転数に対し可変に設定あるいは制御される。
【0017】
速度制御演算部10は、速度指令値ωと速度推定値ω^^の偏差(ω−ω^^)からq軸の電流指令値Iを出力する。
【0018】
ベクトル制御演算部11は、誘導モータ1の回路定数(R、Lσ、M、L)と電流指令値I、I、および、出力周波数値ωに基づいて、d軸およびq軸の電圧基準値Vdc、Vqcを出力する。
【0019】
d軸電流制御演算部12は、d軸の電流指令値Iと電流検出値Idcとの偏差(I−Idc)からd軸の電圧補正値△Vを出力する。
【0020】
q軸電流制御演算部13は、q軸の電流指令値Iと電流検出値Iqcとの偏差(I−Iqc)からq軸の電圧補正値△Vを出力する。
【0021】
加算部14は、d軸の電圧基準値Vdcとd軸の電圧補正値△Vとの加算値である電圧指令値Vdc**を出力する。加算部15は、q軸の電圧基準値Vqcとq軸の電圧補正値△Vとの加算値である電圧指令値Vqc**を出力する。
【0022】
座標変換部16は、電圧指令値Vdc**、Vqc**と位相推定値θdcから3相交流の電圧指令値V、V、Vを出力する。
【0023】
一次電流の位相演算部17は、電流指令値I、Iから、d軸からm軸までの位相角θφcを出力する。
【0024】
座標変換部18は、電圧指令値Vdc**、Vqc**と位相角θφcからm−t軸上の電圧指令値Vmc**、Vtc**を出力する。
【0025】
座標変換部19は、d軸およびq軸の電流検出値Idc、Iqcからm−t軸上の電流検出値Imc、Itcを出力する。
【0026】
座標変換部20は、d軸の電流指令値Iとq軸の電流指令値Iからm−t軸上の電流指令値I、Iを出力する。
【0027】
まず、最初に、本実施例の特徴である一次電流の位相演算部17と座標変換部18〜20を用いない場合の速度センサレス制御方式の基本動作について説明する。
【0028】
d軸電流指令設定部9では、誘導モータ1内でd軸の二次磁束値φ2dを発生させるために必要な電流指令値Iを出力する。また、速度制御演算部10において、速度指令値ωに速度推定値ω^^が一致するように、式(2)に従いq軸の電流指令値Iを演算する。
【0029】
【数2】
ここで、KpASR:速度制御の比例ゲイン、KiASR:速度制御の積分ゲイン。
【0030】
ベクトル制御演算部11では、d軸およびq軸の電流指令値I、Iと誘導モータ1の回路定数(R、Lσ、M、L)とd軸の二次磁束指令値φ2dおよび出力周波数値ω1を用いて、式(3)に従い、電圧基準値Vdc、Vqcを演算する。
【0031】
【数3】
ここで、TACR:電流制御遅れ相当の時定数。
【0032】
d軸電流制御演算部12には、d軸の電流指令値Iと電流検出値Idcが入力され、q軸電流制御演算部13には、q軸の電流指令値Iと電流検出値Iqcが入力される。ここでは、式(4)に従い、電流指令値I、Iに、各成分の電流検出値Idc、Iqcが追従するようにPI(比例+積分)制御を行い、d軸およびq軸の電圧補正値△V、△Vを出力する。
【0033】
【数4】
【0034】
ここで、KpdACR:d軸の電流制御の比例ゲイン、KidACR:d軸の電流制御の積分ゲイン、KpqACR:q軸の電流制御の比例ゲイン、KiqACR:q軸の電流制御の積分ゲイン、である。
【0035】
さらに、加算部14、15において、式(5)に従い、
【0036】
【数5】
電圧指令値Vdc**、Vqc**を演算して、電力変換器2の出力電圧を制御する。
【0037】
速度推定演算部5では、式(1)により誘導モータ1の速度を推定する。
【0038】
また、すべり周波数演算部6では、式(6)に従い、誘導モータ1のすべり周波数指令値ωを演算する。
【0039】
【数6】
ここで、T:二次時定数値。
【0040】
さらに加算部7では、速度推定値ωとすべり周波数指令値ωを用いて、式(7)に従い、
【0041】
【数7】
出力周波数値ωを演算する。
【0042】
位相推定演算部8では、式(8)に従い、誘導モータ1の磁束軸の位相θを演算する。
【0043】
【数8】
【0044】
磁束軸の位相θの推定値である位相推定値θdcを制御の基準に、センサレス制御による演算を実行する。以上が基本動作である。
【0045】
ここからは、本実施例の特徴である一次電流の位相演算部17および座標変換部18〜20を用いた場合の制御特性について述べる。
【0046】
図2に、速度推定演算に従来技術である特許文献1を用いた場合の負荷運転特性を示す。ここでは、式(1)および式(3)に用いる一次抵抗値の設定RをRの0.5倍に設定し、誘導モータ1を低速域の1Hzで運転しており、同図におけるA点からC点までランプ状のトルクτを200%まで与えている。誘導モータ1の実速度値ωは速度推定値ωよりも低下し、図2に示すB点以降において誘導モータ1は停止しているが、速度推定値ωは定常的に1Hzであり、推定誤差△ωが発生していることがわかる。これは式(1)の分子項に含まれる(R+R)Iqcの電圧成分によるものであり、低速運転ではトルク不足が発生する問題があった。
【0047】
本実施例の特徴である一次電流の位相演算部17と座標変換部18〜20を用いれば、このトルク不足を改善することができる。以下、これについて説明する。
【0048】
図3は、従来の制御軸であるd−q軸上のベクトル図である。磁束の方向をd軸、d軸より90度(π/2)進んだ方向をq軸としている。ここで、d軸電流Iとq軸電流Iおよび一次電流Iは式(9)の関係にある。
【0049】
【数9】
【0050】
また、式(10)に、
【0051】
【数10】
とIの位相角の関係を示す。
【0052】

図4は、本実施例で導入する制御軸であるm−t軸のベクトル図である。一次電流の方向をt軸、このt軸より90度遅れた方向をm軸としている。ここで、m軸電流Iとt軸電流Iおよび一次電流Iは式(11)の関係にある。
【0053】
【数11】
【0054】
図1における一次電流の位相演算部17では、d軸およびq軸の電流指令値I、Iが入力され、式(12)に従い、
【0055】
【数12】
【0056】
座標変換部18〜20の演算式に用いられる位相角であるθφcを出力する。
【0057】
座標変換18では、d軸およびq軸の電圧指令値Vdc**、Vqc**と、位相角θφcが入力され、式(13)に従い、
【0058】
【数13】
m軸およびt軸の電圧指令値Vmc**、Vtc**を出力する。
【0059】
座標変換19では、d軸およびq軸の電流検出値Idc、Iqcと、位相角θφcが入力され、式(14)に従い、
【0060】
【数14】
m軸およびt軸の電流検出値Imc、Itcを出力する。
【0061】
座標変換20では、d軸およびq軸の電流指令値I、Iと、位相角θφcが入力され、式(15)に従い、
【0062】
【数15】
m軸およびt軸の電流指令値I、Iを出力する。
【0063】
速度推定演算部5では、式(16)に従い、m軸の逆起電力値を推定し、磁束係数で除算することにより、ω^^を出力する。
【0064】
【数16】
【0065】
低速域では式(16)の分子項に含まれる電圧成分である(R+R)Imcは、Imc=0より、Rの設定に誤差があっても、常に0Vとなるので、速度推定値ω^^の推定精度は向上する。
【0066】
図5に、本実施例における負荷運転特性を示す(図2に用いた条件を設定している)。図2図5に開示した負荷特性を比較すれば、誘導モータ1の速度推定値ω^^の精度が顕著に向上しており、その効果は明白である。つまり、低速域において、一次抵抗値に低感度となり、安定で高精度な速度制御を実現することができる。
【0067】
また、前述した低速域とは、一次周波数ωの絶対値が、誘導モータ1の定格周波数の10%程度以下とすればよい。あるいは、一次抵抗値に関係する降下電圧と、逆起電力に関係する降下電圧を比較して、式(17)
【0068】
【数17】
が成立する場合を低速域としてもよい。
【0069】
ここで、図6を用いて、本実施例を採用した場合の検証方法について説明する。
【0070】
一次電流軸のm─t軸上で制御演算を行えば、m軸の電圧指令値は式(18)となる。
【0071】
【数18】
【0072】
同式において、m軸の電流I=0となるので、m軸の電圧指令値は式(19)となる。
【0073】
【数19】
【0074】
電力変換装置21と誘導モータ1を接続する電線の長さを変更すると、一次抵抗値Rの値は変化する。本実施例の方式では、一次抵抗値Rに低感度であるため、m軸の電圧値Vは一定値となる。
【0075】
したがって、図6に示すように、誘導モータ1を駆動する電力変換装置21に、電圧検出器22と電流検出器23を取り付け、誘導モータ1のシャフトにエンコーダ24を取り付ける。V電圧成分の計算部25には、電圧検出器22の出力である三相の電圧値(Vu1,Vv1,Vw1)と電流検出器23の出力である三相の電流値(Iu1,Iv1,Iw1)、およびエンコーダの出力である位置θd1が入力さる。入力された情報から、V電圧成分を計算し、前述した電線の長さを変更しても、V電圧成分の計算部25の出力値に変化がなければ、本実施例を採用していることになる。
【0076】
以上のように、本実施例は、誘導モータを速度センサレスベクトル制御により駆動する電力変換装置であって、指令値あるいは検出値を、一次電流の方向とそれより90度遅れた方向を回転座標系とした制御軸に変換する座標変換部と、座標変換部で変換された指令値あるいは検出値に基づいて誘導モータの速度推定値を演算する速度推定演算部を有し、速度推定値に基づいて出力周波数値を制御する。すなわち、一次電流の方向をt軸、それより90度遅れた方向をm軸として、m−t軸の回転座標系上の電圧指令値と電流検出値、および誘導モータの回路定数を用いて、速度推定値を演算する。
【0077】
これにより、低速域は一次抵抗値に低感度化して、トルク不足なしに高精度な速度制御特性を実現できる誘導モータの速度推定方法およびそれを用いた電力変換装置を提供できる。
【実施例2】
【0078】
実施例1は、低速域において速度推定値の精度が向上する方式であったが、本実施例では、中高速域において速度推定値の精度を向上させる方式について説明する。
【0079】
本実施例における電力変換装置の構成図は、図1において、速度推定演算部5以外は同構成であるので、その図面および説明は省略する。
【0080】
本実施例における速度推定演算部5‘は、式(20)により
【0081】
【数20】
t軸の逆起電力値を推定し、磁束係数で除算することによりωr^^^を出力する。
【0082】
中高速域では式(20)の分子項に含まれる電圧成分であるω1*σは、I=0より、Lσの設定に誤差があっても、0Vとなるので、速度推定値ω^^の推定精度は向上する。つまり、中高速域において、漏れインダクタンス値に低感度となり、高精度な速度制御を実現することができる。
【0083】
前述した中高速域とは、一次周波数ωの絶対値が定格回転数の10%程度以上とすればよい。あるいは、一次抵抗値に関係する降下電圧と、逆起電力に関係する降下電圧を比較して、式(21)が成立する場合を中高速域としてもよい。
【0084】
【数21】
【実施例3】
【0085】
実施例1は、低速域において速度推定値の精度が向上する方式であったが、本実施例では、低速域と中高速域において速度推定値を切替える方式について説明する。
【0086】
本実施例における電力変換装置の構成図は、図1において、速度推定演算部5以外は同構成であるので、その図面および説明は省略する。
【0087】
図7に、本実施例における速度推定演算部5’’の構成を示す。速度推定演算部5’’aは式(16)の演算部であり速度推定値ω^^を出力し、5’’bは式(20)の演算部であり速度推定値ω^^^を出力する。5’’cは速度推定値の切替え部であり、低速域では速度推定値ω^^を、中高速域では速度推定値ω^^^を選択し、どちらか一方を、ω^^^^として出力する。
【0088】
また、前述した低速域と中高速域とは、一次周波数ωの絶対値が定格回転数の10%程度以下の場合は低速域、10%程度以上の場合は中高速域とすればよい。あるいは、一次抵抗値に関係する降下電圧と、逆起電力に関係する降下電圧を比較して、式(17)が成立する場合を低速域、式(21)が成立する場合を中高速域としてもよい。
【0089】
本実施例のように、低速域と高速域において、速度推定値を切替えることにより、全速度域で高精度な速度制御を実現することができる。
【実施例4】
【0090】
実施例1では、速度推定演算部のみm−t軸上で演算したが、本実施例ではd軸およびq軸の電流制御演算部もm−t軸上で演算する方式について説明する。
【0091】
図8は、本実施例における電力変換装置の構成図である。図8において、1〜4、6〜10、17、19、20は、図1と同一であるのでその説明は省略する。
【0092】
図8において、m軸電流制御演算部12’は、m軸の電流指令値Iと電流検出値Imcとの偏差(I−Imc)からm軸の電圧指令値Vmc***を出力する。t軸電流制御演算部13’は、t軸の電流指令値Iと電流検出値Itcとの偏差(I−Itc)からt軸の電圧指令値Vtc***を出力する。
【0093】
ここでは、式(22)に従い、電流指令値I、Iに、各成分の電流検出値Imc、Itcが追従するようにPI(比例+積分)制御を行い、m軸およびt軸の電圧指令値Vmc***、Vtc***を出力する。
【0094】
【数22】
ここで、KpmACR:m軸の電流制御の比例ゲイン、KimACR:m軸の電流制御の積分ゲイン、KptACR:t軸の電流制御の比例ゲイン、KitACR:t軸の電流制御の積分ゲイン、である。
【0095】
座標変換部16’は、電圧指令値Vmc***、Vtc***と位相推定値θdcから3相交流の電圧指令値V、V、Vを出力する。
【0096】
本実施例のように、m−t軸上で電流制御を演算してもよく、一次抵抗値に低感度で高応答な電流制御特性を実現することができる。
【実施例5】
【0097】
実施例1から4では、速度推定演算部5、5’、5’’において、低速域と中高速域を判定するレベル値を1つ設定していたが、本実施例では、判定するレベル値を2つ設定する場合について説明する。
【0098】
図9は、本実施例における電力変換器の構成図である。図9おいて、速度推定演算部5および26以外は図1と同構成であるので、その説明は省略する。
【0099】
26は、低速域と中高速域を判定するレベル値であり、2つの(ω、ω)を設定する。
【0100】
例えば、ωには定格周波数の5%を、ωには定格周波数の10%を設定する。そして、速度推定演算部5’’’では、最初に、判定するレベル値を1番目のωに設定して実運転を行い、その結果、トルク不足や過電流トリップに陥った場合は、次の演算タイミングで、判定するレベル値を第2番目のωに変更する。このように構成にすることで、判定するレベル値を最適に設定することができる。
【0101】
また、本実施例では2つの設定であるが、数個用意しても良い。このようにすれば、判定するレベル値を複数個設けることにより、一次抵抗値が大きくその変動の影響が大きな誘導モータにおいても、高精度な速度制御を実現することができる。
【実施例6】
【0102】
本実施例は、誘導モータ駆動システムに、実施例5を適用した例について説明する。
【0103】
図10は、本実施例における誘導モータ駆動システムの構成図である。図10において、構成要素の1、4、5’’’、6〜20、26からなる27aは、図9のものと同一である。
【0104】
図10において、誘導モータ1は、電力変換装置27により駆動される。また、電力変換装置27には、構成要素の1、4、5’’’、6〜20、26が27aとしてソフトウェアとして実装され、さらに、デジタル・オペレータ27bが、ハードウェアとして実装されている。
【0105】
低速域と中高速域を判定するレベル値26は、電力変換装置27のデジタル・オペレータ27b、パーソナル・コンピュータ28、タブレット29、スマートフォン30などの上位装置により、設定できるようにしても良い。また、電力変換器を含む電力変換装置内に搭載されているマイクロ・コンピュータの内部メモリなどに設定されている誘導モータの回路定数や定格周波数および定格電流の値を用いて、自動的に設定しても良い。
【0106】
本実施例を誘導モータ駆動システムに適用すれば、全速度域で高精度な速度制御特性を実現することができる。
【0107】
なお、本実施例では、実施例5を適用した例について説明したが、実施例1から4を適用しても良い。
【0108】
また、ここまでの実施例1から3においては、電流指令値I、Iと電流検出値Idc、Iqcから、電圧補正値△V、△Vを作成し、この電圧補正値とベクトル制御の電圧基準値を加算する式(3)に従い演算しているが、電流指令値I、Iに電流検出値Idc、Iqcから、ベクトル制御演算に使用する式(23)に示す中間的な電流指令値I**、I**を作成し、
【0109】
【数23】
【0110】
この電流指令値と出力周波数値ω、および誘導モータ1の回路定数を用いて、式(24)に従い、電圧指令値Vdc***、Vqc***を演算するベクトル制御方式としても良い。
【0111】
【数24】
【0112】
ここに、KpdACR1:d軸の電流制御の比例ゲイン、KidACR1:d軸の電流制御の積分ゲイン、KpqACR1:q軸の電流制御の比例ゲイン、KiqACR1:q軸の電流制御の積分ゲイン、T:d軸の電気時定数(L/R)、T:q軸の電気時定数(L/R)、である。
【0113】
また、電流指令値I、Iに電流検出値Idc、Iqcから、ベクトル制御演算に使用するd軸の比例演算成分の電圧補正値△Vd_p、d軸の積分演算成分の電圧補正値△Vd_i、q軸の比例演算成分の電圧補正値△Vq_p、q軸の積分演算成分の電圧補正値△Vq_i を式(25)により演算し、
【0114】
【数25】
【0115】
これらの電圧補正値と出力周波数値ω、および誘導モータ1の回路定数を用いて、式(26)に従い、
【0116】
【数26】
電圧指令値Vdc****、Vqc****を演算するベクトル制御方式としても良い。
【0117】
また、ここまでの実施例1から6において、速度推定演算部において、速度推定値を演算していたが、q軸電流制御で、電流制御と速度推定を併用する方式でも良い。すなわち、式(27)に示すように速度推定値ω^^^^^を演算する。
【0118】
【数27】
ここで、KpqACR2:電流制御の比例ゲイン、KiqACR2:電流制御の積分ゲイン、である。
【0119】
また、実施例4においては、m−t軸の電流制御演算部の出力を、式(22)に従い、Vmc***、Vtc***として出力しているが、電流指令値I、Iと電流検出値Imc、Imcから、式(28)に従い、電圧補正値△V、△Vtを作成し、この電圧補正値とベクトル制御の電圧基準値を加算して、式(29)に従い、
【0120】
【数28】
【0121】
【数29】
演算するベクトル制御方式にしても良い。
【0122】
また、実施例4において、速度推定演算部5’’において、速度推定値を演算していたが、t軸電流制御で、電流制御と速度推定を併用する方式でも良い。すなわち、式(30)に従い速度推定値ω^^^^^^を演算する。
【0123】
【数30】
ここで、KptACR2:電流制御の比例ゲイン、KitACR2:電流制御の積分ゲイン、である。
【0124】
また、実施例1から6において、速度推定値を、低速域は、m−t軸上で、中高速域は、従来のd−q軸上で演算してもよい。
【0125】
なお、実施例1から6において、電力変換器2を構成するスイッチング素子としては、Si(シリコン)半導体素子であっても、SiC(シリコンカーバイト)やGaN(ガリュームナイトライド)などのワイドバンドギャップ半導体素子であってもよい。
【0126】
以上実施例について説明したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0127】
1:誘導モータ、2:電力変換器、2a:直流電源、3:電流検出器、4:座標変換部、5:速度推定演算部、6:すべり周波数演算部、7:加算部、8:位相推定演算部、9:d軸電流指令設定部、10:速度制御演算部、11:ベクトル制御演算部、12:d軸電流制御演算部、13:q軸電流制御演算部、14、15:加算部、16:座標変換部、17:一次電流の位相演算部、18、19、10:座標変換部、21:電力変換装置、22:電圧検出器、23:電流検出器、24:エンコーダ、25:V電圧成分の計算部、26:レベル値、27:電力変換装置、27a:ソフト処理、27b:デジタル・オペレータ、I:d軸電流指令値、I:q軸電流指令値、Idc:d軸電流検出値、I:q軸電流検出値、I:m軸電流指令値、I:t軸電流指令値、Imc:m軸電流検出値、Itc:t軸電流検出値、ω:速度指令値、ω:誘導モータ1の速度、ω、ω^^、ω^^^、ω^^^^、ω^^^^^、ω^^^^^^:速度推定値、ω:すべり周波数指令値、ω:誘導モータ1の出力周波数値または速度指令値、θdc:位相推定値、θφ、θφc:位相角、Vdc:d軸の電圧指令の基準値、Vqc:q軸の電圧指令の基準値、Vdc**、Vdc***、Vdc****、Vdc*****:d軸の電圧指令値、Vqc**、Vqc***、Vqc****、Vqc*****:q軸の電圧指令値、Vmc**、Vmc***、Vmc****:m軸の電圧指令値、Vtc**、Vtc***、Vtc****:t軸の電圧指令値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10