(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979286
(24)【登録日】2021年11月17日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】筐体に装飾箔が貼付された機器
(51)【国際特許分類】
B44C 1/14 20060101AFI20211125BHJP
F24C 15/08 20060101ALN20211125BHJP
【FI】
B44C1/14
!F24C15/08 N
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-113498(P2017-113498)
(22)【出願日】2017年6月8日
(65)【公開番号】特開2018-202799(P2018-202799A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】溝内 勇人
(72)【発明者】
【氏名】石塚 公晴
(72)【発明者】
【氏名】別府 太郎
【審査官】
山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−216597(JP,A)
【文献】
特開平02−158400(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3141812(JP,U)
【文献】
特開2016−090193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B44B 1/00 − 11/04
B44C 1/00 − 1/14、1/18 − 7/08
B44D 2/00 − 7/00
B44F 1/00 − 99/00
F24C 9/00 − 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体に装飾箔が貼付された機器であって、
筐体の表面が、
代表面と、
代表面に対して第1の方向に関して傾斜した第1傾斜面と、
代表面に対して第1の方向とは異なる第2の方向に関して傾斜した第2傾斜面と、
第1傾斜面と第2傾斜面を接続しており、略円柱面形状を有する接続面を備えており、
第1傾斜面と、第2傾斜面と、接続面が、いずれも、代表面に対向する方向から平面視したときに、代表面の外側に向かって広がるように配置されており、
第1傾斜面と、第2傾斜面と、接続面に、装飾箔が継ぎ目なく貼付されている、機器。
【請求項2】
代表面に対する第1傾斜面および第2傾斜面の傾斜角度が、いずれも、8°から15°の範囲内である、請求項1の機器。
【請求項3】
筐体の第1傾斜面、第2傾斜面および接続面を構成する箇所がABS樹脂からなり、
装飾箔がアルミ蒸着箔からなる、請求項1または2の機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、筐体に装飾箔が貼付された機器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、文字板の指標に装飾箔が貼付された時計が開示されている。特許文献1では、ホットスタンプ加工によって、文字板の指標に装飾箔を貼付している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−49277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ホットスタンプ加工を利用して、機器の筐体に装飾箔を貼付すると、機器の美観を向上することができる。しかしながら、筐体の形状によっては、ホットスタンプ加工で貼付された装飾箔にシワがよってしまい、機器の美観を損なってしまう。
【0005】
本明細書では、上記課題を解決する技術を提供する。本明細書では、ホットスタンプ加工によって機器の筐体に装飾箔を貼付する際に、装飾箔にシワがよることを防止することが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、筐体に装飾箔が貼付された機器を開示する。その機器では、筐体の表面が、代表面と、代表面に対して第1の方向に関して傾斜した第1傾斜面と、代表面に対して第1の方向とは異なる第2の方向に関して傾斜した第2傾斜面と、第1傾斜面と第2傾斜面を接続しており、略円柱面形状を有する接続面を備えている。
その機器では、第1傾斜面と、第2傾斜面と、接続面が、いずれも、代表面に対向する方向から平面視したときに、代表面の外側に向かって広がるように配置されている。その機器では、第1傾斜面と、第2傾斜面と、接続面に、装飾箔が継ぎ目なく貼付されている。
【0007】
ホットスタンプ加工では、2つの傾斜面を接続する接続面を円錐面形状とすると、装飾箔にシワがよりやすくなるが、接続面を円柱面形状とすると、代表面に対する接続面の傾斜角度が緩やかになり、装飾箔にシワがよりにくくなる。上記の構成によれば、第1傾斜面と第2傾斜面を接続する接続面が略円柱面形状を有しているので、ホットスタンプ加工によって、第1傾斜面と、第2傾斜面と、接続面に、装飾箔を継ぎ目なく貼付する場合であっても、装飾箔にシワがよることを防止することができる。なお、接続面の形状は、略円柱面形状であればよく、円柱面形状に近い円錐面形状や逆円錐面形状であってもよい。
【0008】
上記の機器では、代表面に対する第1傾斜面および第2傾斜面の傾斜角度が、いずれも、8°から15°の範囲内であってもよい。
【0009】
機器の意匠性の観点から、第1傾斜面や第2傾斜面の傾斜角度を大きくしたい場合がある。しかしながら、ホットスタンプ加工では、第1傾斜面や第2傾斜面の傾斜角度が大きくなり過ぎると、接続面においてシワがよりやすくなる。上記の構成によれば、第1傾斜面や第2傾斜面の傾斜角度をある程度の大きさとしながら、装飾箔にシワがよってしまうことを防止することができる。
【0010】
上記の機器では、筐体の第1傾斜面、第2傾斜面および接続面を構成する箇所がABS樹脂からなっていてもよく、装飾箔がアルミ蒸着箔からなっていてもよい。
【0011】
上記の構成によれば、ホットスタンプ加工によって、筐体への装飾箔の貼付を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例のガスファンヒータ2の外観を示す斜視図である。
【
図4】実施例の天板8のIV−IV線で見た断面図である。
【
図5】実施例の天板8のV−V線で見た断面図である。
【
図6】実施例の天板8の第1接続面22の近傍を拡大して示す斜視図である。
【
図7】実施例の天板8のVII−VII線で見た断面図である。
【
図8】実施例の天板8のVIII−VIII線で見た断面図である。
【
図9】実施例の天板8に対するホットスタンプ加工の様子を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施例)
図1を参照しながら、本明細書が開示する機器の一実施形態に係るガスファンヒータ2について説明する。ガスファンヒータ2は、筐体4と、筐体4の内部に収容されたファン(図示せず)、バーナ(図示せず)および電気ヒータ(図示せず)を備えている。ガスファンヒータ2は、ファンの駆動により筐体4の背面の給気口(図示せず)を介して室内から空気を取り込み、バーナの燃焼熱および/または電気ヒータのジュール熱によって空気を加熱し、加熱された空気を筐体4の前面の吹出口6から室内に送り出すことで、室内を暖房する。
【0014】
ガスファンヒータ2の筐体4は、天板8を備えている。天板8は、筐体4の上面を構成する。天板8には、ユーザにガスファンヒータ2の状態を表示するとともに、ユーザからの操作を受け入れる操作表示部10が配置されている。天板8は、例えばABS樹脂からなるが、これに限定されるものではない。
【0015】
図2、
図3に示すように、天板8の上面は、代表面12と、側方傾斜面14と、第1前方傾斜面16と、第2前方傾斜面18と、後方傾斜面20と、側方傾斜面14と第1前方傾斜面16を接続する第1接続面22と、第1前方傾斜面16と第2前方傾斜面18を接続する第2接続面24と、側方傾斜面14と後方傾斜面20を接続する第3接続面26を備えている。
図3に示すように、天板8を上方から平面視したときに、側方傾斜面14は天板8の右側の辺に沿って伸びており、第1前方傾斜面16と第2接続面24と第2前方傾斜面18は天板8の前側の辺に沿って伸びており、後方傾斜面20は天板8の後側の辺に沿って伸びている。また、天板8を上方から平面視したときに、第1接続面22は天板8の右前の角部に位置しており、第3接続面26は天板8の右後の角部に位置している。天板8では、第2前方傾斜面18の内部に、操作表示部10が配置されている。
【0016】
図4、
図5、
図7および
図8に示すように、代表面12は、ガスファンヒータ2を水平な床に載置したときに、略水平となるように形成されている。
【0017】
図4に示すように、側方傾斜面14は、代表面12に対して、ガスファンヒータ2の左右方向に関して、外側へ行くほど下方に位置するように、所定の第1傾斜角度で傾斜している。第1傾斜角度は、例えば8°から15°の間の角度である。
【0018】
図5に示すように、第1前方傾斜面16は、代表面12に対して、ガスファンヒータ2の前後方向に関して、外側へ行くほど下方へ位置するように、所定の第2傾斜角度で傾斜している。第2傾斜角度は、例えば8°から15°の間の角度である。
【0019】
図6に示すように、第1接続面22は、円柱面形状を有している。より詳細には、第1接続面22の近傍において、側方傾斜面14は、外側の角部が鋭角であり内側の角部が鈍角である形状で終端しており、第1前方傾斜面16は、外側の角部が鋭角であり内側の角部が鈍角である形状で終端しており、第1接続面22は、側方傾斜面14の終端部分と第1前方傾斜面16の終端部分を滑らかに接続する円柱面形状を有している。この場合、代表面12に対する第1接続面22の傾斜角度は、第1傾斜角度や第2傾斜角度よりも緩やかになる。
【0020】
図7に示すように、第2前方傾斜面18は、代表面12に対して、ガスファンヒータ2の前後方向に関して、外側へ行くほど下方へ位置するように、所定の第3傾斜角度で傾斜している。第3傾斜角度は、例えば8°から15°の間の角度であり、第2傾斜角度よりも大きい角度である。また、第2前方傾斜面18の前後方向の長さは、第1前方傾斜面16の前後方向の長さに比べて大きい。
【0021】
図2に示すように、第2接続面24は、第1前方傾斜面16と第2前方傾斜面18の間を滑らかに接続している。
図8に示すように、第2接続面24は、代表面12に対して、ガスファンヒータ2の前後方向に関して、外側へ行くほど下方へ位置するように傾斜している。第2接続面24の代表面12に対する傾斜角度は、例えば8°から15°の間の角度であり、第1前方傾斜面16の近傍では第2傾斜角度であり、第2前方傾斜面18の近傍では第3傾斜角度である。
【0022】
図5、
図7、
図8に示すように、後方傾斜面20は、代表面12に対して、ガスファンヒータ2の前後方向に関して、外側へ行くほど下方へ位置するように、所定の第4傾斜角度で傾斜している。第4傾斜角度は、例えば8°から15°の間の角度である。
【0023】
図6に示す第1接続面22と同様に、第3接続面26(
図2参照)は、円柱面形状を有している。より詳細には、第3接続面26の近傍において、側方傾斜面14は、外側の角部が鋭角であり内側の角部が鈍角である形状で終端しており、後方傾斜面20は、外側の角部が鋭角であり内側の角部が鈍角である形状で終端しており、第3接続面26は、側方傾斜面14の終端部分と後方傾斜面20の終端部分を滑らかに接続する円柱面形状を有している。この場合、代表面12に対する第3接続面26の傾斜角度は、第1傾斜角度や第4傾斜角度よりも緩やかになる。
【0024】
図2に示すように、天板8の上面において、後方傾斜面20と、第3接続面26と、側方傾斜面14と、第1接続面22と、第1前方傾斜面16と、第2接続面24と、第2前方傾斜面18には、装飾箔28が継ぎ目なく貼付されている。装飾箔28は、例えばアルミ蒸着箔からなるが、これに限定されるものではない。装飾箔28は、天板8の上面に、ホットスタンプ加工により貼付されている。以下では、ホットスタンプ加工について説明する。
【0025】
図9の(a)、(b)に示すように、ホットスタンプ加工では、天板8の上方にホットスタンプ箔30を配置し、シリコンラバー32によってホットスタンプ箔30を天板8に押し当て、加圧しながら加熱することで、天板8の上面に装飾箔28を貼付する。ホットスタンプ箔30は、天板8の上面と対向する側から、接着層(図示せず)、アルミ蒸着層34、保護・着色層(図示せず)、離型層(図示せず)、ベースフィルム36が積層されている。本実施例では、接着層は膜厚が2.5−3.0μmのアクリル系の材料からなり、アルミ蒸着層34は膜厚が0.05μmのアルミニウムからなり、保護・着色層は膜厚が1.0μmのアクリルエポキシ系の材料からなり、離型層は膜厚が0.5μmのワックス系またはエポキシ系材料からなり、ベースフィルム36は膜厚25μmのPETフィルムからなるが、これに限定されるものではない。シリコンラバー32は、天板8の上面の後方傾斜面20と、第3接続面26と、側方傾斜面14と、第1接続面22と、第1前方傾斜面16と、第2接続面24と、第2前方傾斜面18に対応する形状に形成されている。上記のホットスタンプ加工によって、ホットスタンプ箔30の接着層と、アルミ蒸着層34と、保護・着色層が、天板8の上面の後方傾斜面20と、第3接続面26と、側方傾斜面14と、第1接続面22と、第1前方傾斜面16と、第2接続面24と、第2前方傾斜面18に転写される。これによって、天板8の上面の後方傾斜面20と、第3接続面26と、側方傾斜面14と、第1接続面22と、第1前方傾斜面16と、第2接続面24と、第2前方傾斜面18に、装飾箔28が継ぎ目なく貼付される。
【0026】
ホットスタンプ加工によって装飾箔28を貼付する場合、装飾箔28にシワがよってしまうと、美観を損なうことになる。仮に、第1接続面22が円錐面形状を有する場合(例えば、第1接続面22の近傍において、側方傾斜面14が、外側の角部と内側の角部がともに直角である形状で終端しており、第1前方傾斜面16も、外側の角部と内側の角部がともに直角である形状で終端している場合、第1接続面22は、側方傾斜面14の終端部分と第1前方傾斜面16の終端部分を滑らかに接続するために、円錐面形状となる)、第1接続面22において装飾箔28にシワがよりやすく、美観を損なうおそれがある。これに対して、本実施例では、第1接続面22が円柱面形状を有しているので、代表面12に対する第1接続面22の傾斜角度が緩やかになり、第1接続面22において装飾箔28にシワがよりにくい。また、本実施例では、第3接続面26についても、円錐面形状ではなく、円柱面形状を有しているので、第3接続面26において装飾箔28にシワがよりにくい。本実施例によれば、美観に優れた天板8を実現することができる。なお、第1接続面22や第3接続面26の形状は、略円柱面形状であればよく、円柱面形状に近い円錐面形状や逆円錐面形状であってもよい。
【0027】
仮に、後方傾斜面20や、側方傾斜面14や、第1前方傾斜面16や、第2前方傾斜面18の、代表面12に対する傾斜角度が大きくなり過ぎると、第1接続面22、第2接続面24、第3接続面26においてシワがよりやすくなる。本実施例のガスファンヒータ2では、後方傾斜面20と、側方傾斜面14と、第1前方傾斜面16と、第2前方傾斜面18の代表面12に対する傾斜角度が、いずれも、8°から15°の範囲内にあるため、第1接続面22、第2接続面24、第3接続面26において装飾箔28にシワがよってしまうことを防止することができる。
【0028】
上記の実施例では、ガスファンヒータ2を例として説明したが、本明細書が開示する機器はこれに限られるものではなく、例えば、炊飯器やガスコンロ、給湯器のリモコンなど、美観を向上するために筐体に装飾箔を貼付する機器であれば、どのような機器であってもよい。
【0029】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0030】
2 :ガスファンヒータ
4 :筐体
6 :吹出口
8 :天板
10 :操作表示部
12 :代表面
14 :側方傾斜面
16 :第1前方傾斜面
18 :第2前方傾斜面
20 :後方傾斜面
22 :第1接続面
24 :第2接続面
26 :第3接続面
28 :装飾箔
30 :ホットスタンプ箔
32 :シリコンラバー
34 :アルミ蒸着層
36 :ベースフィルム