特許第6979293号(P6979293)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6979293-土のう積構造物 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979293
(24)【登録日】2021年11月17日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】土のう積構造物
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/20 20060101AFI20211125BHJP
   E02B 3/04 20060101ALI20211125BHJP
【FI】
   E02D17/20 103G
   E02B3/04 301
   E02D17/20 104B
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-132556(P2017-132556)
(22)【出願日】2017年7月6日
(65)【公開番号】特開2019-15085(P2019-15085A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2020年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】沖原 光信
(72)【発明者】
【氏名】大川 英一
(72)【発明者】
【氏名】西名 伸博
(72)【発明者】
【氏名】阪本 肇
(72)【発明者】
【氏名】小杉 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】山本 義昭
【審査官】 亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−096778(JP,A)
【文献】 特開昭49−134105(JP,A)
【文献】 特開2002−309538(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3083049(JP,U)
【文献】 特開2014−177777(JP,A)
【文献】 実開平06−053628(JP,U)
【文献】 国際公開第01/060760(WO,A1)
【文献】 特開2007−302528(JP,A)
【文献】 特開昭61−064956(JP,A)
【文献】 特開2016−069971(JP,A)
【文献】 特開昭51−020408(JP,A)
【文献】 特開2000−211959(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0041793(US,A1)
【文献】 特開2003−278163(JP,A)
【文献】 特開2002−013146(JP,A)
【文献】 特開2017−031776(JP,A)
【文献】 特開2009−287364(JP,A)
【文献】 特開2013−253389(JP,A)
【文献】 特開2011−144514(JP,A)
【文献】 特開2011−094443(JP,A)
【文献】 特開2003−159573(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0020745(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/00−17/20
E02D 3/04−3/14
G21F 9/00−9/36
B09B 1/00−5/00
B09C 1/00−1/10
E02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土のうを積み上げて構築する土のう積構造物において、
前記土のうを積み上げた土のう部と、
前記土のう部の表面を被覆するモルタル部と、を有し、
前記土のう部は、地盤の上に構築されていて、
前記モルタル部は、前記土のう部の表面を被覆する土のう被覆部と、
前記土のう部の周囲の地盤の表面を被覆する地盤被覆部と、を有し、
前記土のう被覆部と前記地盤被覆部とは、連続して一体に形成されていることを特徴とする土のう積構造物。
【請求項2】
前記地盤被覆部は、前記土のう部の全周を囲むように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の土のう積構造物。
【請求項3】
前記モルタル部は、モルタルを吹き付けることで形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の土のう積構造物。
【請求項4】
前記モルタル部には、合成樹脂製の短繊維が混入されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の土のう積構造物。
【請求項5】
前記モルタル部には、複数種類の前記短繊維が混入されていることを特徴とする請求項4に記載の土のう積構造物。
【請求項6】
前記短繊維は、ポリプロピレン製であることを特徴とする請求項4または5に記載の土のう積構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土のうを積み上げて構築する土のう積構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から土のうを積み上げて構築した土留めや壁体などが知られている(例えば、特許文献1および2参照)。このような土のうを積み上げて構築した構造物を土のう積構造物とすると、土のう積構造物は、短期間で構築することができるため、災害復旧工事などにおいても使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−57285号公報
【特許文献2】特開2010−77639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
土のう積構造物は、外力によって土のうが変形したり、経年劣化や飛来物などによって土のうの袋体が損傷したりすると、耐久性および遮水性が低下する虞がある。また、経年劣化した土のうの袋体は、自然発火する虞がある。このため、長期に渉って耐久性や遮水性、耐火性を良好に維持することができる土のう積構造物が望まれている。
また、土のう積構造物の遮へい性を利用して放射線を遮へいすることが考えられる。このため、遮へい性についても長期に渉って良好に維持することができる土のう積構造物が望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、長期に渉って耐久性、耐火性、遮水性および遮へい性を良好に維持することができる土のう積構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る土のう積構造物は、土のうを積み上げて構築する土のう積構造物において、前記土のうを積み上げた土のう部と、前記土のう部の表面を被覆するモルタル部と、を有し、前記土のう部は、地盤の上に構築されていて、前記モルタル部は、前記土のう部の表面を被覆する土のう被覆部と、前記土のう部の周囲の地盤の表面を被覆する地盤被覆部と、を有し、前記土のう被覆部と前記地盤被覆部とは、連続して一体に形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明では、土のう部の表面がモルタル部に被覆されていることにより、外力による土のうの変形を防止できるとともに、経年劣化や飛来物による土のうの損傷を防止することができる。これにより、長期に渉って土のう積構造物の耐久性を良好に維持することができる。
また、土のう部の表面がモルタル部に被覆されていることにより、長期に渉って土のう積構造物の耐火性を良好に維持することができる。経年劣化した土のう部が自然発火する虞もない。
また、モルタル部が土のう間の隙間を確実に塞ぐことができるため、遮水性および遮へい性を向上させることができる。これにより、長期に渉って土のう積構造物の遮水性および遮へい性を良好に維持することができる。
【0008】
た、土のう部と地盤との隙間を確実に塞ぐことができるため、遮水性および遮へい性を向上させることができる。
また、本発明に係る土のう積構造物では、前記地盤被覆部は、前記土のう部の全周を囲むように設けられていてもよい。
【0009】
また、本発明に係る土のう積構造物では、前記モルタル部は、モルタルを吹き付けることで形成されていてもよい。
このような構成とすることにより、モルタル部を容易に形成することができる。
【0010】
また、本発明に係る土のう積構造物では、前記モルタル部には、合成樹脂製の短繊維が混入されていてもよい。
また、本発明に係る土のう積構造物では、前記短繊維は、ポリプロピレン製であってもよい。
このような構成とすることにより、モルタル部の耐久性を向上させることができる。また、短繊維によってモルタル部にひび割れが発生することを抑制したり、短繊維がモルタル部に設けられるラス金網の代わりとなってラス金網の施工が不要となり工期を短縮したりすることができる。
【0011】
また、本発明に係る土のう積構造物では、前記モルタル部には、複数種類の前記短繊維が混入されていてもよい。
このような構成とすることにより、複数種類の短繊維それぞれの機能が発揮され、モルタル部をより良好な状態に形成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、長期に渉って耐久性、耐火性および遮水性を維持することができるとともに、遮へい性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態による土のう積構造物の一例を示す図で、モルタル部の一部を省略した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態による土のう積構造物について、図1に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態による土のう積構造物1は、地盤11の上に構築された壁体で、放射線の遮へいおよび遮水を目的として設けられている。
土のう積構造物1が地盤11に沿って延びる方向を長さ方向とし、長さ方向に直交する方向を厚さ方向とし、上下を結ぶ方向を上下方向とする。
【0015】
土のう積構造物1は、地盤11に積み上げられた複数の土のう21,21…によって形成された土のう部2と、土のう部2の表面を被覆するモルタル部3と、を有している。
土のう部2は、土のう積構造物1の長さ方向、厚さ方向および上下方向の全体にわたるように形成されている。土のう部2の複数の土のう21,21…は、それぞれフレコンバッグなどの袋体211に土砂212が詰められて形成されている。
【0016】
土のう部2は、その長さ方向全体にわたって、上下方向に3段となるように土のう21が積み上げられている。土のう部2は、最下段が上側の段よりも厚さ方向に多くの土のう21が配列され、下側の段から上側の段に向かって漸次厚さ方向に配列される土のう21の数が少なくなっている。長さ方向、厚さ方向および上下方向に隣り合う土のう21,21の境界部分は段部となっており、土のう部2の表面には凹凸が形成されている。
【0017】
モルタル部3は、土のう部2の表面を被覆する土のう被覆部31と、土のう部2の周囲の地盤11の表面を被覆する地盤被覆部32と、を有している。
土のう被覆部31は、土のう部2の上面および側面(地盤と対向する面以外全体)を隙間なく被覆している。なお、図1では、モルタル部3の一部を省略している。
地盤被覆部32は、土のう部2の全周を囲むように設けられている。
土のう被覆部31と地盤被覆部32とは隙間なく連続して一体に形成されている。
【0018】
モルタル部3は、モルタルに2種類の合成樹脂製の短繊維が混合された吹き付け材を吹き付けることで形成されている。2種類の合成樹脂製の短繊維のうちの一方を第1短繊維とし、他方を第2短繊維とする。
第1短繊維は、ポリプロピレン製の短繊維で、土のう部や地盤へのモルタルの付着を高めるためにモルタルに混入されている。本実施形態では、第1短繊維は、「のりファイバー」と称される短繊維を用いている。第1短繊維は、モルタルに混入することにより、モルタル部のラス金網を不要とすることができる。
第2短繊維は、ポリプロピレン製の短繊維で、モルタル部のクラックを防止するためにモルタルに混入されている。本実施形態では、テザック社製商品名「タフライト」などが採用されている。モルタルに第1短繊維および第2短繊維を混入したものをモルタル吹き付け材とする。
【0019】
本実施形態では、モルタル吹き付け材のモルタルの配合を、セメントと砂の比を1:4、水セメント比50%としている。また、モルタル吹き付け材には、モルタル1m当りに、第1短繊維が6.90kg混入され、第2短繊維が0.91kg混入されている。
【0020】
次に、本実施形態による土のう積構造物1の構築方法について説明する。
まず、土のう部2を構築する。
袋体211に土砂212を詰めて複数の土のう21を作る。
複数の土のう21を所定の長さ、所定の厚さおよび所定の高さに積み上げて、土のう部2を構築する。
続いて、モルタル部3を形成する。
土のう部2の表面、および土のう部2の周囲の地盤11の表面に一体にモルタル吹き付け材を吹き付け、モルタル部3の土のう被覆部31および地盤被覆部32を一体に形成する。土のう部2の表面、および土のう部2の周囲の地盤11の表面に吹き付けられたモルタル吹き付け材が硬化することでモルタル部3が形成され、土のう積構造物1が構築される。
【0021】
次に、本実施形態による土のう積構造物1の作用・効果について図面を用いて説明する。
本実施形態による土のう積構造物1では、土のう部2の表面がモルタル部3に被覆されていることにより、外力による土のうの変形を防止できるとともに、経年劣化や飛来物による土のう21の損傷を防止することができる。これにより、長期に渉って土のう積構造物1の耐久性を良好に維持することができる。
また、土のう部2の表面がモルタル部3に被覆されていることにより、長期に渉って土のう積構造物1の耐火性を良好に維持することができる。経年劣化した土のう21が自然発火する虞もない。
また、モルタル部3が土のう21,21間の隙間を確実に塞ぐことができるため、遮水性および遮へい性を向上させることができる。これにより、長期に渉って土のう積構造物1の遮水性および遮へい性を良好に維持することができる。
【0022】
また、モルタル部は、土のう部2を被覆する土のう被覆部31と、土のう部2の周囲の地盤11の表面を被覆する地盤被覆部32と、を有し、土のう被覆部31と地盤被覆部32とが一体に形成されていることにより、土のう部2と地盤11との隙間を確実に塞ぐことができるため、遮水性および遮へい性を向上させることができる。
【0023】
また、モルタル部3は、土のう部2の表面、および土のう部2の周囲の地盤11の表面にモルタル吹き付け材を吹き付けることで形成されているため、モルタル部3を容易に形成することができる。
【0024】
また、モルタル吹き付け材には、第1短繊維が混入されていることにより、第1短繊維がラス金網の代わりとなってラス金網の施工が不要となるため、工期を短縮することができる。
また、モルタル吹き付け材には、第1短繊維が混入されていることにより、土のう被覆部31と地盤被覆部32との境界部分に継手処理を行う必要がなく、土のう被覆部31と地盤被覆部32とを連続した状態に容易に形成することができる。
また、モルタル吹き付け材には、第1短繊維および第2短繊維が混入されていることにより、吹き付け時にモルタル吹き付け材が垂れることが防止され、施工性が良い。
また、モルタル部3には、第2短繊維が混入されていることにより、第2短繊維によってモルタル部3にひび割れが発生することを抑制できる。
モルタル部3(モルタル吹き付け材)には、第1短繊維および第2短繊維の2種類の短繊維が混入されていることにより、第1短繊維および第2短繊維の機能がそれぞれ発揮され、モルタル部3をより良好な状態に形成することができる。
【0025】
以上、本発明による土のう積構造物の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施形態では、土のう積構造物1は、放射線の遮へいおよび遮水を目的とした壁部を構成しているが、他の目的のために設けられたり、他の形態に構築されていたりしてもよい。例えば、土のう積構造物が、のり面などに沿って構築された土留めを構成していてもよい。また、土のう積構造物において土のう部2が積み上げられる段数や範囲は適宜設定されてよい。
【0026】
また、上記の実施形態では、モルタル部3は、土のう部2を被覆する土のう被覆部31と、土のう部2の周囲の地盤11の表面を被覆する地盤被覆部32と、を有する構成であるが、土のう部2を被覆する土のう被覆部31のみを有する構成であってもよい。
また、上記の実施形態では、地盤被覆部32は、土のう部2の全周囲の地盤11の表面を被覆するように構成されているが、土のう部2の周囲の地盤11のうちの一部や複数の部分の表面を被覆するように構成されていてもよい。
【0027】
また、上記の実施形態では、モルタル部3は、土のう部2の表面にモルタルを吹き付けることで形成されているが、吹き付け以外によって形成されてもよい。
また、上記の実施形態では、モルタル部3には、第1短繊維および第2短繊維が混入されているが、第1短繊維および第2短繊維の両方またはいずれか一方が混入されていなくてもよい。また、モルタル部3に混入される繊維の形態や、モルタル吹き付け材の配合は、適宜設定されてよい。
また、モルタル部には、ラス金網が設けられていてもよい。また、土のう積構造物には、モルタル部の土のう部への付着を向上させるための部材が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 土のう積構造物
2 土のう部
3 モルタル部
11 地盤
21 土のう
31 土のう被覆部
32 地盤被覆部
図1