(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジンの排ガスの一部をEGRガスとして吸気流路に導入するEGR流路に設けられるEGRバルブの開度を前記エンジンの運転領域に応じて設定される目標EGR率に基づいて制御するEGRバルブ制御部と、
前記エンジンの運転領域に応じて設定される基準点火時期を保持する基準点火時期保持部と、
前記エンジンのノッキングを検出するノッキング検出部の出力に応じて前記基準点火時期を前記エンジンの運転領域毎に補正する点火時期補正部と
を有するエンジン制御装置であって、
前記EGRガスが導入されるEGR運転領域における点火時期の補正量の平均値であるEGR領域補正値平均値を算出するとともに、前記EGRガスが実質的に導入されない非EGR運転領域における点火時期の補正量の平均値である非EGR領域補正値平均値を算出し、EGR領域補正値平均値から非EGR領域補正値平均値を減じた診断値が第1閾値以上である場合には実EGR率が目標EGR率に対して大きいと推定し、前記診断値が第2閾値以下である場合には実EGR率が目標EGR率に対して小さいと推定するEGR率推定部を有し、
前記EGRバルブ制御部は、前記EGR率推定部による推定結果に応じて、前記EGRバルブの開度指示値を補正すること
を特徴とするエンジン制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を適用したエンジン制御装置の実施形態について説明する。
実施形態のエンジン制御装置は、例えば、乗用車等の自動車に走行用動力源として搭載される水平対向4気筒のガソリン直噴エンジンに設けられるものである。
【0011】
図1は、実施形態のエンジン制御装置を有するエンジンの構成を模式的に示す図である。
エンジン1は、クランクシャフト10、シリンダブロック20、シリンダヘッド30、インテークシステム40、エキゾーストシステム50、EGR装置60、エンジン制御ユニット(ECU)100等を有して構成されている。
【0012】
クランクシャフト10は、エンジン1の出力軸となる回転軸である。
クランクシャフト10の一方の端部には、図示しない変速機等の動力伝達機構が接続されている。
クランクシャフト10には、回転軸から偏心して配置されたクランクピンを有し、クランクピンには図示しないコネクティングロッドを介してピストンが連結されている。
クランクシャフト10の端部には、クランクシャフトの角度位置を検出するクランク角センサ11が設けられている。
クランク角センサ11の出力は、ECU100に伝達される。
ECU100は、クランク角センサ11の出力に基づいて、エンジン回転数(クランクシャフト回転速度)を算出する。
【0013】
シリンダブロック20は、クランクシャフト10を、車体に縦置き搭載する場合における左右方向から挟みこむように二分割として構成されている。
シリンダブロック20の中央部には、クランクシャフト10を収容するとともに、クランクシャフト10のジャーナル部を回転可能に支持するメインベアリングを有するクランクケース部が設けられている。
クランクケース部を挟んで左右に配置されるシリンダブロック20の左右バンクの内部には、ピストンが挿入され内部で往復するシリンダが例えば2気筒ずつ(4気筒の場合)形成されている。
【0014】
シリンダブロック20には、ノックセンサ21が設けられている。
ノックセンサ21は、シリンダブロック20の振動に応じた出力電圧を発生する圧電素子を有する。
ECU100は、ノッキング発生時に特有のノックセンサ21の出力波形に基づいて、ノッキングの有無を検出可能となっている。
ノックセンサ21は、ECU100と協働して、本発明にいうノッキング検出部として機能する。
【0015】
シリンダヘッド30は、シリンダブロック20のクランクシャフト10とは反対側の端部(左右端部)にそれぞれ設けられている。
シリンダヘッド30は、燃焼室31、点火プラグ32、吸気ポート33、排気ポート34、吸気バルブ35、排気バルブ36、吸気カムシャフト37、排気カムシャフト38等を備えて構成されている。
燃焼室31は、シリンダヘッド30のピストン冠面と対向する箇所を、例えばペントルーフ状に凹ませて形成されている。
点火プラグ32は、燃焼室31の中央に設けられ、ECU100からの点火信号に応じてスパークを発生し、混合気に点火するものである。
【0016】
吸気ポート33は、燃焼用空気(新気)を燃焼室31に導入する流路である。
排気ポート34は、燃焼室31から既燃ガス(排ガス)を排出する流路である。
吸気バルブ35、排気バルブ36は、吸気ポート33、排気ポート34を所定のバルブタイミングで開閉するものである。
吸気バルブ35、排気バルブ36は、各気筒に例えば2本ずつ設けられる。
吸気バルブ35、排気バルブ36は、クランクシャフト10の1/2の回転数で同期して回転する吸気カムシャフト37、排気カムシャフト38によって開閉される。
吸気カムシャフト37、排気カムシャフト38のカムスプロケット部には、各カムシャフトの位相を進角・遅角させて各バルブの開弁時期、閉弁時期を変化させる図示しないバルブタイミング可変機構が設けられている。
【0017】
インテークシステム40は、空気を導入して吸気ポート33に導入するものである。
インテークシステム40は、インテークダクト41、チャンバ42、エアクリーナ43、エアフローメータ44、スロットルバルブ45、インテークマニホールド46、吸気圧センサ47、インジェクタ48等を備えて構成されている。
【0018】
インテークダクト41は、外気を導入して吸気ポート33に導入する流路である。
チャンバ42は、インテークダクト41の入口部近傍に連通して設けられた空間部である。
エアクリーナ43は、インテークダクト41におけるチャンバ42との連通箇所の下流側に設けられ、空気を濾過してダスト等を取り除くものである。
エアフローメータ44は、エアクリーナ43の出口近傍に設けられ、インテークダクト41内を通過する空気流量を計測するものである。
エアフローメータ44の出力は、ECU100に伝達される。
【0019】
スロットルバルブ45は、インテークダクト41におけるインテークマニホールド46との接続部近傍に設けられ、空気の流量を調節してエンジン1の出力を制御するバタフライバルブである。
スロットルバルブ45は、ECU100がドライバ要求トルク等に応じて設定する目標スロットル開度に応じて、図示しない電動式のスロットルアクチュエータによって開閉駆動される。
また、スロットルバルブ45には、その開度を検出するスロットルセンサが設けられ、その出力はECU100に伝達される。
インテークマニホールド46は、スロットルバルブ45の下流側に設けられ、空気を各気筒の吸気ポート33に分配する分岐管である。
吸気圧センサ47は、インテークマニホールド46内の空気の圧力(吸気圧力)を検出するものである。
吸気圧センサ47の出力は、ECU100に伝達される。
インジェクタ48は、インテークマニホールド46のシリンダヘッド30側の端部に設けられ、ECU100が発する開弁信号に応じて、燃焼室31内に燃料を噴射して混合気を形成するものである。
【0020】
エキゾーストシステム50は、排気ポート34から排出された排ガスを外部に排出するものである。
エキゾーストシステム50は、エキゾーストマニホールド51、エキゾーストパイプ52、フロント触媒53、リア触媒54、サイレンサ55、空燃比センサ56、リアO
2センサ57等を有して構成されている。
【0021】
エキゾーストマニホールド51は、各気筒の排気ポート34から出た排ガスを集合させる集合管である。
エキゾーストパイプ52は、エキゾーストマニホールド51から出た排ガスを外部に排出する管路である。
フロント触媒53、リア触媒54は、エキゾーストパイプ52の中間部分に設けられ、排ガス中のHC、NO
X、CO等を浄化する三元触媒をそれぞれ備えている。
フロント触媒53は、エキゾーストマニホールド51の出口に隣接して設けられ、リア触媒54は、フロント触媒の出口側に設けられている。
サイレンサ55は、エキゾーストパイプ52の出口近傍に設けられ、排ガスの音響エネルギを低減するものである。
【0022】
空燃比センサ56は、エキゾーストマニホールド51の出口とフロント触媒53の入口との間に設けられている。
リアO
2センサ57は、フロント触媒53の出口とリア触媒54の入口との間に設けられている。
空燃比センサ56、リアO
2センサ57は、ともに排ガス中の酸素濃度に応じた出力電圧を発生することによって、排ガス中の酸素量を検出するものである。
空燃比センサ56は、リアO
2センサ57に対してより広範囲の空燃比における酸素濃度を検出可能なリニア出力センサとなっている。
空燃比センサ56、リアO
2センサ57の出力は、ともにECU100に伝達される。
【0023】
EGR装置60は、エキゾーストマニホールド51から排ガスの一部をEGRガスとして抽出し、インテークマニホールド46内に導入する排ガス再循環(EGR)を行うものである。
EGR装置60は、EGR流路61、EGRクーラ62、EGRバルブ63等を備えている。
【0024】
EGR流路61は、エキゾーストマニホールド51からインテークマニホールド46に排ガス(EGRガス)を導入する管路である。
EGRクーラ62は、EGR流路61の途中に設けられ、EGR流路61を流れるEGRガスを、エンジン1の冷却水との熱交換によって冷却するものである。
EGRバルブ63は、EGR流路61におけるEGRクーラ62の下流側に設けられ、EGR流路61内を通過するEGRガスの流量を調節する調量弁である。
EGRバルブ63は、ソレノイド等の電動アクチュエータによって駆動される弁体を有し、ECU100によって、所定の目標EGR率(EGRガス流量/吸気流量)に基づいて設定された開度マップを用いて開度を制御される。
開度マップは、エンジン1のクランクシャフト10の回転数(回転速度)、及び、全負荷に対する負荷率から、EGRバルブ63の目標開度が読みだされるよう構成されている。
EGRバルブ63は、ECU100から与えられる開度指示値に応じて、開閉及び開弁時における開弁率を制御される。
【0025】
エンジン制御ユニット(ECU)100は、エンジン1及びその補機類を統括的に制御するものである。
ECU100は、CPU等の情報処理手段、RAMやROM等の記憶手段、入出力インターフェイス及びこれらを接続するバス等を備えて構成されている。
また、ECU100には、ドライバによる図示しないアクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルペダルセンサ101が設けられている。
ECU100は、アクセルペダルセンサ101の出力等に基づいて、ドライバ要求トルクを設定する機能を備えている。
ECU100は、エンジン1が実際に発生するトルクが、設定されたドライバ要求トルクに近づくよう、スロットルバルブ開度、過給圧、燃料噴射量、燃料噴射時期、点火時期、バルブタイミング等を制御する。
また、ECU100は、EGRガスの流量の吸気流量に対する比(実際のEGR率)が、クランクシャフト10の回転数(回転速度)及びエンジン1の負荷から設定される目標EGR率に近づくよう、EGRバルブ63に開度指示値を与え、EGRバルブ63の開度を制御する。
【0026】
ECU100は、例えばエンジン1の新品時(工場出荷時)に予め設定された基準点火時期を保持する基準点火時期マップを有する。
基準点火時期マップは、例えば、各部の公差が実質的に中間値である新品のエンジンにおいて、基準となるオクタン価の燃料(ガソリン)を用いて運転した際のMBTと実質的に一致するよう基準点火時期が設定されている。
基準点火時期マップは、例えば、エンジン1のクランクシャフト10の回転数(回転速度)及び負荷(全開時を100%とした負荷率)から、その運転状態に適合する基準点火時期が読みだされる2軸マップとして構成されている。
【0027】
ECU100は、ノックセンサ21の出力値に基づいて検出されるノッキングの頻度に基づいて、上述した基準点火時期を補正する点火時期学習補正を行う。
例えば、ノッキングの頻度が所定の上限値以上である場合には、点火時期を基準点火時期に対して遅角(リタード)傾向に補正することによって、ノッキングの抑制を図る。
一方、ノッキングの頻度が所定の下限値以下である場合には、点火時期を点火時期に対して進角傾向に補正することによって、熱効率の改善を図る。
このような点火時期学習補正は、運転領域(エンジン回転数・負荷率)毎に行われる。
以上説明したECU100は、本発明にいう基準点火時期保持部、点火時期補正部、EGR率推定部、EGRバルブ制御部としての機能を有する。
【0028】
ECU100は、EGRが導入されるEGR運転領域と、EGRが実質的に導入されない非EGR運転領域との点火時期の補正傾向の違いに基づいて、経年変化や流量特性公差等に起因する実EGR率の目標EGR率に対する乖離を推定し、この推定結果に基づいて、EGRバルブの開度指示値を補正する機能を有する。
図2は、実施形態のエンジン制御装置における実EGR率推定処理及びEGRバルブ開度指示値補正処理を示すフローチャートである。
以下、ステップ毎に順を追って説明する。
【0029】
<ステップS01:点火時期補正値取得>
ECU100は、エンジン1の運転中に、ノックセンサ21の出力に基づく点火時期の学習補正を行うとともに、学習補正が行われた領域(結果的に補正を行わなかった領域を含む)の補正値を、各領域毎に順次記憶し、蓄積する。
その後、ステップS02に進む。
【0030】
<ステップS02:補正値N数充足判断>
ECU100は、実EGR率を推定するために十分な補正値のデータ数Nを取得できたか否かを判別する。
例えば、EGR運転領域でありかつ点火時期学習補正が行われる運転領域の補正値と、非EGR運転領域でありかつ点火時期学習補正が行われる運転領域の補正値とが、それぞれ所定の個数以上取得できている場合(所定範囲以上にわたって点火時期補正量マップが埋まった場合)には、補正値のN数が充足したものとしてステップS03に進み、その他の場合はステップS01に戻り、以降の処理を繰り返す。
【0031】
<ステップS03:EGR領域補正値平均値算出>
ECU100は、EGR運転領域でありかつ点火時期学習補正が行われる運転領域において取得された点火時期の補正値の平均値EGRonAveを算出する。
その後、ステップS04に進む。
【0032】
<ステップS04:非EGR領域補正値平均値算出>
ECU100は、非EGR運転領域でありかつ点火時期学習補正が行われる運転領域において取得された点火時期の補正値の平均値EGRoffAveを算出する。
その後、ステップS05に進む。
【0033】
<ステップS05:診断値D算出>
ECU100は、実EGR率の推定に用いられる診断値D=EGRonAve−EGRoffAveを算出する。
この診断値Dは正の値でありかつ絶対値が大きいほど、EGR運転領域での点火時期補正が非EGR運転領域に対して進角傾向にあることを意味する。また、負の値でありかつ絶対値が大きいほど、EGR運転領域での点火時期補正が非EGR運転領域に対して遅角傾向にあることを意味する。
その後、ステップS06に進む。
【0034】
<ステップS06:診断値D判断(1)>
ECU100は、診断値Dを、予め設定された第1の閾値T1と比較する。
診断値Dが閾値T1以上である場合は、実EGR率が目標EGR率に対して過大な状態になっているものと判断し、ステップS08に進み、その他の場合はステップS07に進む。
【0035】
<ステップS07:診断値D判断(2)>
ECU100は、診断値Dを、予め設定された第2の閾値T2(T1>T2)と比較する。
診断値Dが閾値T2以下である場合は、実EGR率が目標EGR率に対して過小な状態になっているものと判断し、ステップS09に進み、その他の場合は一連の処理を終了(リターン)する。
【0036】
<ステップS08:EGRバルブ開度指示値減少補正>
ECU100は、EGRバルブ63の開度制御において用いられる開度指示値を、所定量だけ減少(EGRバルブ63が閉じ傾向)させる補正を行い、EGR流量を抑制する。
EGRバルブ63の開度指示値の補正は、例えば目標開度を示す値に所定の係数を乗じて行うことができる。
その後、一連の処理を終了(リターン)する。
【0037】
<ステップS09:EGRバルブ開度指示値増加補正>
ECU100は、EGRバルブ63の開度制御において用いられる開度指示値を、所定量だけ増加(EGRバルブ63が開き傾向)させる補正を行い、EGR流量を増加させる。
その後、一連の処理を終了(リターン)する。
【0038】
以下、点火時期学習補正の結果と、実EGR率及び目標EGR率の関係について説明する。
図3は、実施形態のエンジン制御装置における負荷と点火時期補正量との関係を模式的に示す図であって、実EGR率が目標EGR率(新車時における設計目標値)と実質的に一致する状態を示す図である。
図3において、縦軸は点火時期の補正量(上方が進角・下方が遅角)を示し、横軸は負荷(右側が高負荷)を示している。(
図5、
図7において同じ)
実EGR率が目標EGR率と実質的に一致している場合、例えば燃料の性状(オクタン価等)ばらつき等に起因して点火時期補正が入ったとしても、EGR運転領域と非EGR運転領域との補正傾向は実質的に変化しない。
【0039】
図4は、実施形態のエンジン制御装置における点火時期補正量のマップを示す図であって、実EGR率が目標EGR率と実質的に一致する状態を示す図である。
図4に示すように、点火時期補正量のマップは、例えば、エンジン回転数及び負荷から対応する点火時期補正量が読みだされる2軸マップである。
図4において、正の補正値は進角を示しており、負の補正値は遅角を示している。(
図6、
図8において同じ)
図4において、太線実線の枠内は、EGRが導入されるEGR運転領域でありかつ点火時期学習補正が行われる運転領域A1を示し、太線破線の枠内は、EGRが実質的に導入されない非EGR運転領域でありかつ点火時期学習補正が行われる運転領域A2を示している。(
図6、
図8において同じ)
なお、運転領域A1よりも低負荷の領域においては、EGRガスの導入は行われるものの、ノッキングの発生頻度がごく低いことから、点火時期学習補正は通常行われない。
図4に示す例においては、運転領域A1における補正値の平均値EGRonAveは、0.14であり、運転領域A2における補正値の平均値EGRoffAveは、0.30である。
【0040】
図5は、実施形態のエンジン制御装置における負荷と点火時期補正量との関係を模式的に示す図であって、実EGR率が目標EGR率よりも低い状態を示す図である。
図6は、実施形態のエンジン制御装置における点火時期補正量のマップを示す図であって、実EGR率が目標EGR率よりも低い状態を示す図である。
例えばEGRバルブ63へのデポジットの堆積等により、EGR流量が低下して実EGR率が低下すると、エンジン1においてノッキングが発生しやすくなり、ノッキングの頻度が高くなるため、EGR運転領域においてノッキングを抑制するため点火時期の遅角学習補正が行われる。
図6に示す例においては、運転領域A1における補正値の平均値EGRonAveは、−2.36であり、運転領域A2における補正値の平均値EGRoffAveは、0.30である。
このように、実EGR率が低い状態においては、運転領域A1の点火時期補正量が運転領域A2の点火時期補正量に対して遅角傾向となる。
【0041】
図7は、実施形態のエンジン制御装置における負荷と点火時期補正量との関係を模式的に示す図であって、実EGR率が目標EGR率よりも高い状態を示す図である。
図8は、実施形態のエンジン制御装置における点火時期補正量のマップを示す図であって、実EGR率が目標EGR率よりも高い状態を示す図である。
例えばEGRバルブ63の流量公差等により、EGR流量が増加して実EGR率が増加すると、エンジン1においてノッキングの発生が抑制され、ノッキングの頻度が低くなるため、非EGR運転領域において熱効率の改善を図るため点火時期の進角学習補正が行われる。
図8に示す例においては、運転領域A1における補正値の平均値EGRonAveは、1.79であり、運転領域A2における補正値の平均値EGRoffAveは、0.30である。
このように、実EGR率が高い状態においては、運転領域A1の点火時期補正量が運転領域A2の点火時期補正量に対して進角傾向となる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態によれば、EGR運転領域、非EGR運転領域の点火時期の補正傾向の違いに基づいて目標EGR率に対する実EGR率の大小を推定することによって、一般的なエンジンが通常有するノックセンサ21等のハードウェア構成によって、実EGR率の目標EGR率に対する乖離を精度よく推定することができる。
この推定結果に基づいてEGRバルブ63の開度指示値を補正することによって、例えばEGRバルブ63、EGR流路61等へのデポジットの堆積や、EGRバルブ63の流量公差等がある場合であっても、実EGR率を目標EGR率に近づけて適切にEGR率を制御することができる。
【0043】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
エンジン及びエンジン制御装置の構成は、上述した実施形態に限定されず、適宜変更することができる。
例えば、燃料噴射方式(直噴・ポート噴射・これらの併用)、過給機の有無、シリンダレイアウト、気筒数等は適宜変更することができる。
また、実施形態においては、EGR運転領域と非EGR運転領域における点火時期補正値平均値の差分を診断値としているが、これに限らず、例えば比率を診断値としたり、他の演算手法により診断を行ってもよい。
また、本発明は、ガソリンエンジンに限らず、他の燃料を用いてノッキングに応じた点火時期学習補正を行う火花点火式エンジンにも用いることができる。