特許第6979316号(P6979316)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979316
(24)【登録日】2021年11月17日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】金融口座管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/02 20120101AFI20211125BHJP
【FI】
   G06Q40/02
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-181892(P2017-181892)
(22)【出願日】2017年9月22日
(65)【公開番号】特開2019-57184(P2019-57184A)
(43)【公開日】2019年4月11日
【審査請求日】2020年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】302064762
【氏名又は名称】株式会社日本総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100125645
【弁理士】
【氏名又は名称】是枝 洋介
(72)【発明者】
【氏名】江部 正周
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】高橋 直也
(72)【発明者】
【氏名】土屋 佳織
【審査官】 加内 慎也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−075989(JP,A)
【文献】 特表2005−508530(JP,A)
【文献】 特開2007−272410(JP,A)
【文献】 特開2006−302221(JP,A)
【文献】 特開2010−204935(JP,A)
【文献】 特開2005−228077(JP,A)
【文献】 特開2011−159076(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金融口座のそれぞれについて設定された不正性の度合いを示す不正度に基づいて、各金融口座の管理を行う金融口座管理システムであって、
複数の金融口座間の入出金実績を記憶する入出金実績記憶部と、
一の金融口座への入金が行われる場合に、前記入出金実績記憶部に記憶されている入出金実績に基づいて、当該一の金融口座から不正度が高い金融口座への入金が直接的に又は一若しくは複数の他の金融口座を介して間接的に行われたことがあるか否かを判定する不正判定手段と、
前記不正判定手段によって前記不正度が高い金融口座への入金が行われたことがあると判定された場合に、警告情報を出力する警告手段と
を備え、
前記入出金実績記憶部が、各金融口座間における入出金の日時を含む入出金実績を記憶しており、
前記不正判定手段が、前記入出金実績に含まれる各金融口座間における入出金の日時に基づいて、前記一の金融口座から不正度が高い金融口座への入金が間接的に行われたか否かを判定するように構成されている、
金融口座管理システム。
【請求項2】
複数の金融口座のそれぞれについて設定された不正性の度合いを示す不正度に基づいて、各金融口座の管理を行う金融口座管理システムであって、
複数の金融口座間の入出金実績を記憶する入出金実績記憶部と、
一の金融口座への入金が行われる場合に、前記入出金実績記憶部に記憶されている入出金実績に基づいて、当該一の金融口座から不正度が高い金融口座への入金が直接的に又は一若しくは複数の他の金融口座を介して間接的に行われたことがあるか否かを判定する不正判定手段と、
前記不正判定手段によって前記不正度が高い金融口座への入金が行われたことがあると判定された場合に、警告情報を出力する警告手段と
を備え、
前記入出金実績記憶部が、各金融口座間における入出金の金額を含む入出金実績を記憶しており、
前記不正判定手段が、前記入出金実績に含まれる各金融口座間における入出金の金額に基づいて、前記一の金融口座から不正度が高い金融口座への入金が間接的に行われたか否かを判定するように構成されている、
金融口座管理システム。
【請求項3】
複数の金融口座のそれぞれについて設定された不正性の度合いを示す不正度に基づいて、各金融口座の管理を行う金融口座管理システムであって、
複数の金融口座間の入出金実績を記憶する入出金実績記憶部と、
一の金融口座への入金が行われる場合に、前記入出金実績記憶部に記憶されている入出金実績に基づいて、当該一の金融口座から不正度が高い金融口座への入金が直接的に又は一若しくは複数の他の金融口座を介して間接的に行われたことがあるか否かを判定する不正判定手段と、
前記不正判定手段によって前記不正度が高い金融口座への入金が行われたことがあると判定された場合に、警告情報を出力する警告手段と
を備え、
前記不正判定手段が、入出金に係る支店の地理的位置に基づいて、前記一の金融口座から不正度が高い金融口座への入金が行われたか否かを判定するように構成されている、
金融口座管理システム。
【請求項4】
複数の金融口座のそれぞれについて設定された不正性の度合いを示す不正度に基づいて、各金融口座の管理を行う金融口座管理システムであって、
複数の金融口座間の入出金実績を記憶する入出金実績記憶部と
一の金融口座への入金が行われる場合に、前記入出金実績記憶部に記憶されている入出金実績に基づいて、当該一の金融口座から不正度が高い金融口座への入金が直接的に又は一若しくは複数の他の金融口座を介して間接的に行われたことがあるか否かを判定する不正判定手段と、
前記不正判定手段によって前記不正度が高い金融口座への入金が行われたことがあると判定された場合に、警告情報を出力する警告手段と
を備え、
前記入出金実績記憶部が、入出金に係る紙幣の記番号を含む入出金実績を記憶しており、
前記不正判定手段が、前記入出金実績に含まれる紙幣の記番号に基づいて、前記一の金融口座から不正度が高い金融口座への入金が行われたか否かを判定するように構成されている、
金融口座管理システム。
【請求項5】
複数の金融口座のそれぞれについて設定された不正性の度合いを示す不正度に基づいて、各金融口座の管理を行う金融口座管理システムであって、
複数の金融口座間の入出金実績を記憶する入出金実績記憶部と、
一の金融口座への入金が行われる場合に、前記入出金実績記憶部に記憶されている入出金実績に基づいて、当該一の金融口座から不正度が高い金融口座への入金が直接的に又は一若しくは複数の他の金融口座を介して間接的に行われたことがあるか否かを判定する不正判定手段と、
前記不正判定手段によって前記不正度が高い金融口座への入金が行われたことがあると判定された場合に、警告情報を出力する警告手段と
前記入出金実績記憶部に記憶されている入出金実績に基づいて、各金融口座の不正度を設定する不正度設定手段と、
前記入出金実績記憶部に記憶されている入出金実績に基づいて、各金融口座から不正度が高い金融口座への入金が直接的に又は一若しくは複数の他の金融口座を介して間接的に行われたか否かを判定する入金有無判定手段と
を備え、
前記入出金実績記憶部が、各金融口座間における入出金の日時を含む入出金実績を記憶しており、
前記入金有無判定手段が、前記入出金実績に含まれる各金融口座間における入出金の日時に基づいて、各金融口座から前記不正度が高い金融口座への入金が間接的に行われたか否かを判定するように構成され、
前記不正度設定手段が、前記入金有無判定手段による判定結果に基づいて各金融口座の不正度を設定するように構成されている、
金融口座管理システム。
【請求項6】
複数の金融口座のそれぞれについて設定された不正性の度合いを示す不正度に基づいて、各金融口座の管理を行う金融口座管理システムであって、
複数の金融口座間の入出金実績を記憶する入出金実績記憶部と、
一の金融口座への入金が行われる場合に、前記入出金実績記憶部に記憶されている入出金実績に基づいて、当該一の金融口座から不正度が高い金融口座への入金が直接的に又は一若しくは複数の他の金融口座を介して間接的に行われたことがあるか否かを判定する不正判定手段と、
前記不正判定手段によって前記不正度が高い金融口座への入金が行われたことがあると判定された場合に、警告情報を出力する警告手段と
前記入出金実績記憶部に記憶されている入出金実績に基づいて、各金融口座の不正度を設定する不正度設定手段と、
前記入出金実績記憶部に記憶されている入出金実績に基づいて、各金融口座から不正度が高い金融口座への入金が直接的に又は一若しくは複数の他の金融口座を介して間接的に行われたか否かを判定する入金有無判定手段と
を備え、
前記入出金実績記憶部が、各金融口座間における入出金の金額を含む入出金実績を記憶しており、
前記入金有無判定手段が、前記入出金実績に含まれる各金融口座間における入出金の金額に基づいて、各金融口座から前記不正度が高い金融口座への入金が間接的に行われたか否かを判定するように構成され、
前記不正度設定手段が、前記入金有無判定手段による判定結果に基づいて各金融口座の不正度を設定するように構成されている、
金融口座管理システム。
【請求項7】
複数の金融口座のそれぞれについて設定された不正性の度合いを示す不正度に基づいて、各金融口座の管理を行う金融口座管理システムであって、
複数の金融口座間の入出金実績を記憶する入出金実績記憶部と、
一の金融口座への入金が行われる場合に、前記入出金実績記憶部に記憶されている入出金実績に基づいて、当該一の金融口座から不正度が高い金融口座への入金が直接的に又は一若しくは複数の他の金融口座を介して間接的に行われたことがあるか否かを判定する不正判定手段と、
前記不正判定手段によって前記不正度が高い金融口座への入金が行われたことがあると判定された場合に、警告情報を出力する警告手段と
前記入出金実績記憶部に記憶されている入出金実績に基づいて、各金融口座の不正度を設定する不正度設定手段と、
前記入出金実績記憶部に記憶されている入出金実績に基づいて、各金融口座から不正度が高い金融口座への入金が直接的に又は一若しくは複数の他の金融口座を介して間接的に行われたか否かを判定する入金有無判定手段と
を備え、
前記入金有無判定手段が、入出金に係る支店の地理的位置に基づいて、各金融口座から前記不正度が高い金融口座への入金が行われたか否かを判定するように構成され、
前記不正度設定手段が、前記入金有無判定手段による判定結果に基づいて各金融口座の不正度を設定するように構成されている、
金融口座管理システム。
【請求項8】
複数の金融口座のそれぞれについて設定された不正性の度合いを示す不正度に基づいて、各金融口座の管理を行う金融口座管理システムであって、
複数の金融口座間の入出金実績を記憶する入出金実績記憶部と、
一の金融口座への入金が行われる場合に、前記入出金実績記憶部に記憶されている入出金実績に基づいて、当該一の金融口座から不正度が高い金融口座への入金が直接的に又は一若しくは複数の他の金融口座を介して間接的に行われたことがあるか否かを判定する不正判定手段と、
前記不正判定手段によって前記不正度が高い金融口座への入金が行われたことがあると判定された場合に、警告情報を出力する警告手段と
前記入出金実績記憶部に記憶されている入出金実績に基づいて、各金融口座の不正度を設定する不正度設定手段と、
前記入出金実績記憶部に記憶されている入出金実績に基づいて、各金融口座から不正度が高い金融口座への入金が直接的に又は一若しくは複数の他の金融口座を介して間接的に行われたか否かを判定する入金有無判定手段と
を備え、
前記入出金実績記憶部が、入出金に係る紙幣の記番号を含む入出金実績を記憶しており、
前記入金有無判定手段が、前記入出金実績に含まれる紙幣の記番号に基づいて、各金融口座から前記不正度が高い金融口座への入金が間接的に行われたか否かを判定するように構成され、
前記不正度設定手段が、前記入金有無判定手段による判定結果に基づいて各金融口座の不正度を設定するように構成されている、
金融口座管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振込先の金融口座が不正な口座であるか否かを判定可能な金融口座管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、所謂振り込め詐欺等の不正な振込が社会問題となっており、これを防止するための対策が求められている。例えば、特許文献1には、振込先として指定された振込先口座の取引履歴を用いて、振り込め詐欺について注意を喚起する方法が開示されている。この方法では、振込先口座の取引履歴に基づいて、その振込先口座が振り込め詐欺に利用されている預金口座である可能性が高いかどうかを判断し、高いと判断した場合に、振り込め詐欺注意喚起メッセージを表示する。これにより、不正使用されている可能性が高い預金口座への振り込みを未然に防止することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−272410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、上記の従来の注意喚起方法の場合、振込先口座の取引履歴に基づいてその振込先口座の不正性を判断している。しかしながら、振り込め詐欺等においては、直接の振込先口座には不正性が認められないものの、その振込先口座から不正性が高い別の金融口座に対して振り込みが行われることがある。このような場合、上記の従来の注意喚起方法では、不正性を検出することができず、振り込め詐欺を防止することができない。
【0005】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、上述した課題を解決することが可能な金融口座管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上述したように、振込先として直接用いられる金融口座には特別不正性が認められない場合であっても、その金融口座から不正性が高い他の金融口座に振り込みが行われることがある点に着目し、以下に示す態様を発明した。
【0007】
本発明の一の態様の金融口座管理システムは、複数の金融口座のそれぞれについて設定された不正性の度合いを示す不正度に基づいて、各金融口座の管理を行う金融口座管理システムであって、複数の金融口座間の入出金実績を記憶する入出金実績記憶部と、一の金融口座への入金が行われる場合に、前記入出金実績記憶部に記憶されている入出金実績に基づいて、当該一の金融口座から不正度が高い金融口座への入金が直接的に又は一若しくは複数の他の金融口座を介して間接的に行われたことがあるか否かを判定する不正判定手段と、前記不正判定手段によって前記不正度が高い金融口座への入金が行われたことがあると判定された場合に、警告情報を出力する警告手段とを備える。
【0008】
前記態様において、前記入出金記憶部が、各金融口座間における入出金の日時を含む入出金実績を記憶しており、前記不正判定手段が、前記入出金実績に含まれる各金融口座間における入出金の日時に基づいて、前記一の金融口座から不正度が高い金融口座への入金が間接的に行われたか否かを判定するように構成されていてもよい。
【0009】
また、前記態様において、前記入出金記憶部が、各金融口座間における入出金の金額を含む入出金実績を記憶しており、前記不正判定手段が、前記入出金実績に含まれる各金融口座間における入出金の金額に基づいて、前記一の金融口座から不正度が高い金融口座への入金が間接的に行われたか否かを判定するように構成されていてもよい。
【0010】
また、前記態様において、前記不正判定手段が、入出金に係る支店の地理的位置に基づいて、前記一の金融口座から不正度が高い金融口座への入金が行われたか否かを判定するように構成されていてもよい。
【0011】
また、前記態様において、前記入出金記憶部が、入出金に係る紙幣の記番号を含む入出金実績を記憶しており、前記不正判定手段が、前記入出金実績に含まれる紙幣の記番号に基づいて、前記一の金融口座から不正度が高い金融口座への入金が行われたか否かを判定するように構成されていてもよい。
【0012】
また、前記態様において、前記入出金実績記憶部に記憶されている入出金実績に基づいて、各金融口座の不正度を設定する不正度設定手段をさらに備えていてもよい。
【0013】
また、前記態様において、前記不正度設定手段が、入金元の金融口座の数及び/又は入金先の金融口座の数に基づいて各金融口座の不正度を設定するように構成されていてもよい。
【0014】
また、前記態様において、前記不正度設定手段が、各金融口座への入金回数及び/又は各金融口座からの入金回数に基づいて各金融口座を設定するように構成されていてもよい。
【0015】
また、前記態様において、前記入出金記憶部に記憶されている入出金実績に基づいて、各金融口座から不正度が高い金融口座への入金が直接的に又は一若しくは複数の他の金融口座を介して間接的に行われたか否かを判定する入金有無判定手段をさらに備え、前記不正度設定手段が、前記入金有無判定手段による判定結果に基づいて各金融口座の不正度を設定するように構成されていてもよい。
【0016】
また、前記態様において、前記入出金記憶部が、各金融口座間における入出金の日時を含む入出金実績を記憶しており、前記入金有無判定手段が、前記入出金実績に含まれる各金融口座間における入出金の日時に基づいて、各金融口座から前記不正度が高い金融口座への入金が間接的に行われたか否かを判定するように構成されていてもよい。
【0017】
また、前記態様において、前記入出金記憶部が、各金融口座間における入出金の金額を含む入出金実績を記憶しており、前記入金有無判定手段が、前記入出金実績に含まれる各金融口座間における入出金の金額に基づいて、各金融口座から前記不正度が高い金融口座への入金が間接的に行われたか否かを判定するように構成されていてもよい。
【0018】
また、前記態様において、前記入金有無判定手段が、入出金に係る支店の地理的位置に基づいて、各金融口座から前記不正度が高い金融口座への入金が行われたか否かを判定するように構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る金融口座管理システムによれば、振込先の金融口座には特別不正性が認められない場合であっても、振り込め詐欺等の不正行為を防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態1に係る金融口座管理システム及びその通信先の構成を示すブロック図。
図2】本発明の実施の形態1に係る金融口座管理装置の構成を示すブロック図。
図3】本発明の実施の形態1に係る金融口座管理装置に設けられている口座データベースのレイアウトの一例を示す図。
図4】本発明の実施の形態1に係る金融口座管理装置に設けられている入出金実績データベースのレイアウトの一例を示す図。
図5】本発明の実施の形態1に係る金融口座管理装置に設けられている入出金連鎖データベースのレイアウトの一例を示す図。
図6】本発明の実施の形態1に係る金融口座管理装置によって実行される入出金連鎖生成処理の手順を示すフローチャート。
図7】入出金連鎖情報の内容を説明するための説明図。
図8】本発明の実施の形態1に係る金融口座管理装置によって実行される第1不正度設定処理の手順を示すフローチャート。
図9】本発明の実施の形態1に係る金融口座管理装置によって実行される第2不正度設定処理の手順を示すフローチャート。
図10】不正度伝搬処理の内容を説明するための説明図。
図11】本発明の実施の形態1に係る金融口座管理装置によって実行される警告処理の手順を示すフローチャート。
図12】本発明の実施の形態2に係る金融口座管理装置の構成を示すブロック図。
図13】本発明の実施の形態2に係る金融口座管理装置に設けられているATM入出金データベースのレイアウトの一例を示す図。
図14】本発明の実施の形態2に係る金融口座管理装置によって実行される入出金実績生成処理の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す各実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための方法及び装置を例示するものであって、本発明の技術的思想は下記のものに限定されるわけではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0022】
(実施の形態1)
[金融口座管理システムの構成]
図1は、本発明の実施の形態1に係る金融口座管理システム及びその通信先の構成を示すブロック図である。本実施の形態の金融口座管理システムは、図1における金融口座管理装置(以下、単に「管理装置」という)1で構成されている。この管理装置1は、金融機関側にて運用されるコンピュータシステムであって、金融機関の各支店に設けられている複数のATM端末2,2,…と、専用の通信ネットワーク101を介して通信可能に接続されている。また、管理装置1は、金融機関の金融口座を利用している各ユーザ側に設けられている複数のユーザ端末3,3,…と、インターネット等の通信ネットワーク102を介して通信可能に接続されている。ユーザ端末3,3,…は、例えばパーソナルコンピュータ、携帯電話機及びタブレット端末等の通信機能を有する装置で構成される。これらのATM端末2,2,…及びユーザ端末3,3,…は、液晶ディスプレイ等で構成される表示部を備えている。
【0023】
[管理装置の構成]
以下、上述した管理装置1の詳細な構成について説明する。
図2は、本発明の実施の形態1に係る管理装置1の構成を示すブロック図である。図2に示すとおり、コンピュータ(管理装置)1は、CPU11、ROM12、RAM13、ハードディスク14、及び通信インタフェース(I/F)15を備えており、これらのCPU11、ROM12、RAM13、ハードディスク14、及び通信I/F15は、バス16によって接続されている。
【0024】
CPU11は、RAM13にロードされた各種のコンピュータプログラムを実行する。これにより、コンピュータ1が本実施の形態の管理装置1として機能することになる。
【0025】
ROM12は、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、又はEEPROM(Electrically Erasable PROM)等によって構成されており、CPU11にて実行されるコンピュータプログラム及びその実行の際に用いられるデータ等が記憶されている。
【0026】
RAM13は、SRAM又はDRAMなどによって構成されている。このRAM13は、ハードディスク14に記憶されている各種のコンピュータプログラムの読み出し等に用いられる。また、CPU11が各種のコンピュータプログラムを実行するときに、CPU11の作業領域としても利用される。
【0027】
ハードディスク14には、CPU11に実行させるための各種のコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いられるデータ等が予めインストールされている。また、このハードディスク14には、金融口座に関する口座情報が格納される口座データベース(DB)14Aと、金融口座間の入出金実績に関する入出金実績情報が格納される入出金実績データベース(DB)14Bと、3つ以上の金融口座にわたる入出金の繋がり(以下、「入出金連鎖」という)に関する入出金連鎖情報が格納される入出金連鎖データベース(DB)14Cが設けられている。これらの各データベースの詳細については後述する。
【0028】
さらに、ハードディスク14には、例えば米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)などのマルチタスクオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、各種のコンピュータプログラムが当該オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
【0029】
通信I/F15は、通信ネットワーク101及び102を介して管理装置1が外部の装置と通信するためのインタフェース装置である。管理装置1は、この通信I/F15を介して、ATM端末2,2,…及びユーザ端末3,3,…との間で各種データの送受信を行う。
【0030】
以下、ハードディスク14に設けられている各データベースの詳細について説明する。
(A)口座DB14A
図3は、本発明の実施の形態1に係る管理装置1に設けられている口座DB14Aのレイアウトの一例を示す図である。図3に示すように、口座DB14Aは、各金融口座を識別するための口座IDが格納される口座IDフィールド111、金融口座の支店を示す情報が格納される支店フィールド112、金融口座の名義を示す情報が格納される名義フィールド113、金融口座の不正度が格納される不正度フィールド114、及び金融口座の名義が富裕者であるか否かを示す情報が格納される富裕者フィールド115を少なくとも有している。
【0031】
上記の不正度フィールド114に格納される金融口座の不正度は、その金融口座の不正性の度合いを示す指標である。例えば、過去に不正利用が行われたことがある金融口座に対しては高い不正度が設定される一方、特にそのような不正利用が認められない金融口座に対しては低い不正度が設定される。ここで、不正利用の中でも振り込め詐欺等の極めて悪質なものに利用されたことがある金融口座には最も高い不正度が設定されるなど、不正の悪質度合いに応じて不正度が段階的に設定される。また、本実施の形態では、後述する不正度設定処理によっても、各金融口座に対して不正度が設定される。なお、以下では、不正度が0から4までの数値により5段階で表されるものとする。
【0032】
上述した富裕者とは、収入及び所有する資産等が所定額以上である者を意味する。富裕者であるか否かは、口座開設時の自己申告の内容及び金融口座に係る取引履歴等に応じて判定され、その判定結果を示す情報が富裕者フィールド115に格納される。本実施の形態では、富裕者であると判定された場合には1が、そうではない場合には0が、富裕者フィールド115に格納されるものとする。
【0033】
(B)入出金実績DB14B
図4は、本発明の実施の形態1に係る管理装置1に設けられている入出金実績DB14Bのレイアウトの一例を示す図である。図4に示すように、入出金実績DB14Bは、各入出金を識別するための入出金IDが格納される入出金IDフィールド121、入出金の入金元となる金融口座の口座IDが格納される入金元フィールド122、入出金の入金先となる金融口座の口座IDが格納される入金先フィールド123、入出金の金額が格納される金額フィールド124、及び入出金の日時が格納される日時フィールド125を少なくとも有している。
【0034】
上述した入出金実績情報は、50万円又は100万円等、所定額以上の振込(入出金)が行われた場合に、その振込元(入金元)及び振込先(入金先)の金融口座の口座ID、振込額(入出金額)、並びに振込日時を用いて生成される。これらの口座ID等の各情報は、各金融機関のコンピュータシステムから得ることができる。なお、本実施の形態では、上記のとおり所定額以上の振込のみについて入出金実績情報が生成されているが、このように金額の下限を設けなくてもよい。但し、その場合はデータ量が膨大になるため、金額の下限を設ける方が好ましい。また、振り込め詐欺等の不正行為の場合、比較的高額な振込が行われることが多いため、金額の下限を設けることによって、効率良く不正行為を特定することができるという利点もある。
【0035】
(C)入出金連鎖DB14C
上述したように、入出金連鎖DB14Cには、3つ以上の金融口座にわたる入出金の繋がりに関する入出金連鎖情報が格納される。具体的には、例えば口座Aから口座Bに対して振込が行われてから所定時間内に、口座Bから口座Cに対して振込が行われた場合、口座A、B及びCは一連の入出金に関係したものとして紐付けられ、そのことを示す入出金連鎖情報が生成される。
【0036】
図5は、本発明の実施の形態1に係る管理装置1に設けられている入出金連鎖DB14Cのレイアウトの一例を示す図である。図5に示すように、入出金連鎖DB14Cは、各入出金連鎖を識別するための連鎖IDが格納される連鎖IDフィールド131、及び入出金連鎖に係る入出金IDが格納される入出金IDフィールド132を少なくとも有している。入出金IDフィールド132に格納される入出金IDは、上述したように入出金実績DB14Bによって管理されているものである。この入出金IDを参照することにより、入金元及び入金先の金融口座の口座IDを得ることができるため、入出金連鎖に係る金融口座を特定することができる。
【0037】
[金融口座管理システムの動作]
次に、上述したように構成された本実施の形態の金融口座管理システムの動作について、フローチャート等を参照しながら説明する。以下では、(1)入出金連鎖情報を生成するための入出金連鎖生成処理、(2)各金融口座の不正度を設定するための不正度設定処理、及び(3)振込が行われる際にその振込人に注意を喚起するための警告処理の各処理について詳細を説明する。
【0038】
(1)入出金連鎖生成処理
図6は、本発明の実施の形態1に係る管理装置1によって実行される入出金連鎖生成処理の手順を示すフローチャートである。なお、この入出金連鎖生成処理は、数時間毎等、所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0039】
図6に示すように、管理装置1はまず、口座DB14Aを参照して、富裕者に係る金融口座である富裕者口座を処理対象として設定する(S101)。富裕者口座であるか否かは、富裕者フィールド115に格納されている情報によって判定することができる。
【0040】
次に、管理装置1は、変数nに1を設定する(S102)。ここで、nは、予め定められた設定値と比較するためのカウンタ変数である。この設定値は、入出金連鎖の範囲を定める値であって、任意の値とすることができる。例えば、過去に発生した振り込め詐欺において、被害者が振り込みを行った場合の振込先の金融口座から3つ先の金融口座が振り込め詐欺首謀者に係る金融口座であった例が見受けられるときは、被害者の金融口座を基準とすると4つ先に最も不正性が高い金融口座が存在することになるため、設定値を4にすること等が想定される。
【0041】
次に、管理装置1は、入出金実績DB14Bを参照し、処理対象の金融口座が入金元となっている入出金実績(以下、「第1の入出金」という)を抽出する(S103)。そして、管理装置1は、その第1の入出金における入金先が入金元となっており、且つ金額及び日時が近接している入出金実績(以下、「第2の入出金」という)を特定する(S104)。
【0042】
上記のステップS104における第2の入出金の特定について、より詳細を説明する。まず、日時に関しては、ある入出金の日時が第1の入出金の日時から所定時間以内(例えば、1時間以内等)である場合、両者は日時が近接しているとされる。これにより、第1の入出金から所定時間以内に行われた入出金が、第2の入出金として特定されることになる。
【0043】
また、金額に関しては、ある入出金の金額が第1の入出金の金額と同額、又はその差が所定額以下(例えば、50万円以下等)である場合、両者は金額が近接しているとされる。これにより、第1の入出金と金額が同額又はその差が所定額以内の入出金が、第2の入出金として特定されることになる。その他にも、ある入出金の金額と他の入出金の金額との合計が第1の入出金の金額と同額、又はその差が所定額以下である場合、当該ある入出金と第1の入出金との金額、及び当該他の入出金の金額と第1の入出金との金額が近接しているとされる。例えば、第1の入出金の金額が100万円であって、ある入出金の金額及び他の入出金の金額がそれぞれ60万円及び40万円であった場合、当該ある入出金の金額と当該他の入出金の金額との合計である100万円は第1の入出金の金額と同額であるため、これらの当該ある入出金及び当該他の入出金が、第2の入出金として特定されることになる。なお、このように複数の入出金が第2の入出金として特定されることは、第1の入出金からの連鎖が分岐することを意味する。この点については後述する。
【0044】
また、例えば第1の入出金の金額が100万円であって、ある入出金の金額及び他の入出金の金額が100万円であった場合、当該ある入出金及び当該他の入出金のどちらを第2の入出金とすべきか不明なことがある。このような場合、まずはいずれの入出金も第2の入出金として特定して2つの入出金連鎖情報を生成しておき、いずれか一方についてその後の連鎖先に不正度の高い口座が現れた場合に、他方の入出金連鎖情報を削除するようにしてもよい。
【0045】
次に、管理装置1は、nが設定値に達したか否かを判定する(S105)。ここで、達していないと判定した場合(S105でNO)、管理装置1は、第2の入出金における入金先の金融口座を処理対象に設定する(S106)。そして、管理装置1は、nの値を1インクリメントし(S107)、再びステップS103乃至S105を実行する。ステップS105においてnが設定値に達したと判定されるまで、この繰り返し処理が継続される。
【0046】
ステップS105においてnが設定値に達したと判定された場合(S105でYES)、管理装置1は、富裕者口座に係る入出金の入出金IDと、ステップS104にて特定された入出金の入出金IDとを用いて、入出金連鎖情報を生成する(S108)。例えば、富裕者口座に係る入出金の入出金IDがX1111で、ステップS104にて特定された入出金の入出金IDがX2222及びX3333である場合、これらのX1111、X2222及びX3333によって入出金連鎖情報が生成されることになる。なお、ステップS104において複数の入出金が第2の入出金として特定された場合、それらの第2の入出金のそれぞれについて入出金連鎖情報が生成される。例えば、富裕者口座に係る入出金の入出金IDがX1111であって、ステップS104において入出金IDがX2222及びX4444である入出金が第2の入出金として特定された場合では、X1111及びX2222によって1つの入出金連鎖情報が生成されるとともに、X1111及びX4444によってもう1つの出金連鎖情報が生成されることになる。
【0047】
管理装置1は、ステップS108にて生成した入出金連鎖情報を入出金連鎖DB14Cに登録し(S109)、処理を終了する。上記の入出金連鎖生成処理が各富裕者口座について繰り返し実行されることによって、図5に例示するような入出金連鎖情報が入出金連鎖DB14Cに蓄積されることになる。
【0048】
なお、本実施の形態では、富裕者口座を起点として入出金連鎖情報を生成しているが、これに加えて、富裕者口座以外の口座を起点として入出金連鎖情報を生成しても構わない。但し、その場合は処理数が膨大となりシステムの負荷が高くなるため、本実施の形態における富裕者口座のように、振り込め詐欺等に巻き込まれる可能性が高い金融口座を起点として入出金連鎖情報を生成することが好ましい。
【0049】
また、本実施の形態では、ステップS104において入出金の金額及び日時の両方が近接している実績を特定しているが、いずれか一方のみが近接している実績を特定するようにしてもよい。さらに、金額及び日時の両方が近接していない場合も、入出金の連鎖の対象としても構わない。不正行為の発覚を防ぐ等の目的で、相当程度の時間を開けて入出金が行われたり、大きく異なる金額の入出金が行われたりすることもあり得るためである。
【0050】
また、本実施の形態では、例えば口座Aから口座Bに対して振込が行われてから所定時間内に、口座Bから口座Cに対して振込が行われた場合、口座A、B及びCは一連の入出金に関係したものとして紐付けているが、この時間関係が逆転している場合、すなわち、口座Bから口座Cに対して振込が行われてから所定時間内に、口座Aから口座Bに対して振込が行われた場合にも、口座A、B及びCが一連の入出金に関係したものとして紐付けられてもよい。不正取引を隠蔽する目的で、先に出金が行われ、その後に入金を行うということも想定されるためである。
【0051】
図7は、上述したようにして生成された入出金連鎖情報の内容を説明するための説明図である。この図7には、富裕者口座Aを起点として、4つの入出金連鎖情報が生成されている例が示されている。各入出金連鎖情報は、各入出金IDによって特定される。例えば、入出金IDがX1001、X1010、X1030及びX1040によって1つの入出金連鎖情報が特定される。この入出金連鎖情報では、口座A→B→E→J→Fの順に入出金の連鎖が生じていることが示されている。その他にも、図7に示す例では、各入出金IDによって、口座A→B→G→K→F、口座A→C、及び口座A→D→Hの入出金の連鎖が認められる。図7を参照すると分かるように、口座Bの先は口座EとGとに分岐している。これは、入出金連鎖生成処理によって、X1001の入出金に対して、X1010及びX1020の2つの入出金が紐付けられたためである。
【0052】
(2)不正度設定処理
次に、各金融口座の不正度を設定するための不正度設定処理について説明する。本実施の形態においては、上述した入出金連鎖生成処理により生成された入出金連鎖情報とは関係なく不正度の設定を行う処理と、その入出金連鎖情報に基づいて不正度の設定を行う処理とがある。前者を第1不正度設定処理と、後者を第2不正度設定処理とそれぞれ称し、以下でその詳細について説明する。なお、これらの第1及び第2不正度設定処理は、所定の時間間隔で繰り返し実行されてもよく、また、特定のタイミングで不定期に実行されてもよい。第2不正度設定処理の場合、入出金連鎖情報に基づいて不正度の設定を行うため、入出金連鎖情報が生成される都度実行されるようにしてもよい。
【0053】
(2−1)第1不正度設定処理
図8は、本発明の実施の形態1に係る管理装置1によって実行される第1不正度設定処理の手順を示すフローチャートである。図8に示すように、管理装置1は、入出金実績DB14Bを参照し、処理対象の金融口座(以下、「対象口座」という)が入金元又は入金先となっている入出金実績を抽出する(S201)。そして、管理装置1は、抽出された入出金実績を用いて、対象口座に対して入金を行った金融口座(対象口座を基準にすると、入金元となる金融口座)、及び対象口座からの入金を受けた金融口座(対象口座を基準にすると、入金先となる金融口座)の数を特定する(S202)。また、管理装置1は、同じく抽出された入出金実績を用いて、対象口座への入金回数及び対象口座からの入金回数を特定する(S203)
【0054】
次に、管理装置1は、ステップS202にて特定された入金元及び入金先の金融口座の数、並びにステップS203にて特定された対象口座への入金回数及び対象口座からの入金回数に基づいて、対象口座の不正度を算出する(S204)。この不正度の算出は、種々のルールにしたがって行うことができる。例えば、入金元及び/又は入金先の金融口座の数が所定値以上となる場合、対象口座に対して高い不正度を設定するようにする。このように入金元及び/又は入金先の数が多い場合、不正が行われている可能性があるものとして、高い不正度が設定される。この場合、上記の所定値を複数レベル設けることにより複数段階の不正度を設定することができる。
【0055】
また、対象口座への入金回数及び対象口座からの入金回数が所定値以上となる場合も、対象口座に対して高い不正度を設定するようにする。この場合も、不正が行われている可能性があるものと考えられるためである。上記と同様に、この場合でも、所定値を複数レベル設けることによって複数段階の不正度を設定することができる。
【0056】
なお、上述したような各ルールにしたがって不正度が算出された結果、1つの金融口座について複数の不正度が得られた場合は、そのうちのいずれかの不正度を採用する。例えば、各ルールに優先度を予め定めておき、最も高い優先度が定められているルールによって算出された不正度を採用することが考えられる。その他にも、複数の不正度の平均値を採用する等、種々の対応があり得る。
【0057】
管理装置1は、以上のようにして算出された不正度を、口座DB14Aに登録する(S205)。なお、対象口座に対して既に不正度が設定されている場合であって、その不正度と今回算出された不正度とが異なる値であるときは、最新の状況を反映しているとの理由により今回算出された不正度を採用してもよく、予め定められた基準(例えば、後述する第2不正度設定処理によって設定された不正度を、第1不正度設定処理によって設定された不正度よりも重視する等)にしたがっていずれかの不正度を採用するようにしてもよい。
【0058】
(2−2)第2不正度設定処理
図9は、本発明の実施の形態1に係る管理装置1によって実行される第2不正度設定処理の手順を示すフローチャートである。図9に示すように、管理装置1はまず、口座DB14A、入出金実績DB14B及び入出金連鎖DB14Cを参照する(S301)。次に、管理装置1は、不正度が所定値以上の金融口座に係る入出金が、入出金連鎖情報に含まれているか否かを判定する(S302)。具体的に説明すると、管理装置1は、例えば不正度が3以上の金融口座を口座DB14Aより特定した上で、その金融口座が入金元又は入金先となっている入出金IDを入出金実績DB14Bによって特定し、その入出金IDが入出金連鎖情報に含まれているか否かを入出金連鎖DB14Cに基づいて判定する。
【0059】
ステップS302において、上述したような入出金が入出金連鎖情報に含まれていないと判定した場合(S302でNO)、管理装置1は不正度の設定を行わずに処理を終了する。他方、上述したような入出金が入出金連鎖情報に含まれていると判定した場合(S302でYES)、管理装置1は、入出金の連鎖に基づいて一の金融口座から他の金融口座に対して不正度を伝搬させる不正度伝搬処理を実行する(S303)。以下、この不正度伝搬処理の詳細について説明する。
【0060】
図10は、不正度伝搬処理の内容を説明するための説明図である。この図10には、図7に示す場合と同様に、口座A→B→E→J→F及び口座A→B→G→K→Fの連鎖が認められる場合における不正度伝搬処理の内容が例示されている。ここでは、不正度が4以上の金融口座が存在する場合に不正度伝搬処理が行われるものとする。図10に示す例では、口座Fの不正度が4となっているため、不正度伝搬処理が実行されることになる。
【0061】
不正度伝搬処理では、入出金連鎖の起点側に遡って不正度を伝搬させる。図10に示す例の場合、口座Fから入出金連鎖の起点である口座Aに向かって不正度が伝搬することになる。この例では、1つ遡る毎に1だけマイナスされた不正度が各口座に与えられる。そのため、口座Fから口座A側に1つ離れている口座J及びKに対しては不正度として3が、同じく2つ離れている口座E及びGに対しては不正度として2が、同じく3つ離れている口座Bに対しては不正度として1が、それぞれ与えられている。勿論これは例示であって、例えば1つ遡る毎に2以上マイナスされた不正度が各口座に与えられてもよく、マイナスされずに口座Fの不正度がそのまま各口座に与えられてもよい。なお、本実施の形態の場合、起点である口座Aは富裕者口座であるため、不正度は最も低い値のままとするのが適切である。したがって、口座Aに対しては不正度を伝搬しないようにすることが好ましいが、他の金融口座と同様に不正度の伝搬を行っても構わない。
【0062】
管理装置1は、上記の不正度伝搬処理によって各金融口座に与えられた不正度を、口座DB14Aに登録する(S304)。なお、対象口座に対して既に不正度が設定されている場合であって、その不正度と今回算出された不正度とが異なる値であるときは、第2不正度設定処理によって設定された不正度を優先して採用してもよく、予め定められた基準(例えば、第2不正度設定処理によって設定された不正度の方が高い場合は当該不正度を採用する一方、低い場合は既に設定されている不正度を採用する等)にしたがって、いずれかの不正度を採用するようにしてもよい。
【0063】
(3)警告処理
次に、上述したようにして設定された各金融口座の不正度に基づいて、振込処理が実行される際にその振込人に対して注意喚起を行う警告処理について説明する。なお、振込処理は、ATM端末2を用いて行われる場合の他、所謂インターネットバンキングサービスによってユーザ端末3を用いて行われる場合もある。以下では、ATM端末2を用いて振込処理が行われる場合について説明するが、ユーザ端末3を用いて振込処理が行われる場合も同様の警告処理が実行される。
【0064】
図11は、本発明の実施の形態1に係る管理装置1によって実行される警告処理の手順を示すフローチャートである。上述したようにATM端末2と通信可能に接続されている管理装置1は、ATM端末2にて振込処理が行われる場合に、そのATM端末2から振込内容(振込額、振込先(入金先)の金融口座、及び振込日時等)を示す振込情報を受信する(S401)。
【0065】
次に、管理装置1は、受信した振込情報を用いて振込先(入金先)の金融口座を特定した上で、口座DB14Aを参照してその金融口座の不正度を特定する(S402)。そして、管理装置1は、その不正度が所定値以上であるか否かを判定する(S403)。ここで、所定値以上ではないと判定された場合(S403でNO)、管理装置1は、通常の処理を実行するようATM端末2に対して指示する(S404)。通信ネットワーク101を介してこの指示を受け取ったATM端末2は、振込人に対する注意喚起を行わずに、通常の振込処理を実行する。これにより、振込処理が正常に受け付けられることになる。
【0066】
他方、ステップS403において入金先の金融口座の不正度が所定値以上であると判定された場合(S403でYES)、管理装置1は、振込人に対して注意を喚起するための警告文の表示を、ATM端末2に対して指示する(S405)。この指示を受け取ったATM端末2は、「振込先の口座が不正なものである可能性があります。振込を行う前に窓口にてご相談下さい。」等の警告文を表示部に表示することによって、振込人に注意を促す。これにより、振り込め詐欺等の不正行為を未然に防止することが可能になる。
【0067】
なお、ステップS403における所定値としては種々の値を採用することが可能である。例えば、安全側に立って低い値(本実施の形態では、例えば1等)を設定してもよく、基準を緩めてより高い値(同じく、例えば3等)を設定しても構わない。
【0068】
上述したように、本実施の形態の場合、第2不正度設定処理によって設定された不正度を用いて警告処理が行われている。この第2不正度設定処理では、入出金連鎖情報に基づいて各金融口座に対し不正度を設定している。そして、この入出金連鎖情報では、各金融口座から不正度の高い金融口座(図10に示す例では口座F等)に対して直接的に、又は一若しくは複数の他の金融口座を介して間接に入金が行われたことの実績が示されている。以上より、本実施の形態において、振込先の金融口座の不正度に基づいて警告処理を行うことは、その振込先の金融口座から不正度の高い金融口座に対して直接的に又は間接的に入金が行われたことがあるか否かに基づいて警告処理を行うことと等しい。このように、本実施の形態では、振込先の金融口座と不正性の高い別の金融口座との間の入出金実績に応じて警告を発することができるため、その振込先の金融口座単独では不正性が認められないような場合であっても、警告を発することが可能になる。
【0069】
(実施の形態2)
実施の形態1の金融口座管理システムでは、過去の振込実績に基づいて入出金連鎖情報が生成されている。そのため、実施の形態1では、ある者から他の者に対して振込処理によりお金が渡される場合には入出金の連鎖を捉えることができる。しかし、実施の形態1によれば、振込処理ではなく現金の手渡しが行われる場合はそこで連鎖が途絶えてしまうという問題が生じ得る。実施の形態2の金融口座管理システムは、そのように現金の手渡しが行われる場合にも対応することができる。
【0070】
本実施の形態の金融口座管理システムは、実施の形態1の場合と同様にしてATM端末2,2,…及びユーザ端末3,3,…と通信可能に接続された管理装置で構成されている。図12は、その管理装置の構成を示すブロック図である。図12に示すように、管理装置10は、ハードディスク14を備えており、このハードディスク14には、ATM端末2における入出金実績であるATM入出金情報が格納されるATM入出金データベース(DB)14Dが設けられている。なお、その他の構成については、実施の形態1の場合と同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0071】
以下、ATM入出金DB14Dの詳細について説明する。
図13は、本発明の実施の形態2に係る管理装置10に設けられているATM入出金DB14Dのレイアウトの一例を示す図である。図13に示すように、ATM入出金DB14Dは、入出金に係る金融口座の口座IDが格納される口座IDフィールド211、利用されたATM端末2を設置している支店を示す情報が格納される支店フィールド212、入出金の別を示す情報が格納される入出金フィールド213、入出金の金額が格納される金額フィールド214、及び入出金の日時が格納される日時フィールド215を少なくとも有している。
【0072】
上述したATM入出金情報は、入出金実績情報と同様に、50万円又は100万円等、所定額以上の現金の入出金がATM端末2によって行われた場合に、上記の口座ID、入出金額、及び入出金の日時を用いて生成される。これらの口座ID等の各情報は、各金融機関のコンピュータシステムから得ることができる。なお、このように金額の下限を設けなくてもよいことは、入出金実績情報の場合と同様である。
【0073】
以下、上述したように構成された本実施の形態の金融口座管理システムの動作について説明する。本実施の形に態において、管理装置10は、実施の形態1における入出金連鎖生成処理、不正度設定処理、及び警告処理を実行するとともに、ATM端末2における現金の入出金にしたがって入出金実績情報を生成するための入出金実績生成処理を実行する。この入出金実績生成処理は、あるATM端末2から現金が出金された後に、他のATM端末2に対して現金が入金された場合に、それらの出金及び入金を紐付けるための処理に該当する。
【0074】
図14は、本発明の実施の形態2に係る管理装置10によって実行される入出金実績生成処理の手順を示すフローチャートである。なお、この入出金実績生成処理は、数時間毎等、所定の時間間隔で繰り返し実行される
【0075】
図14に示すように、管理装置10は、ATM入出金DB14Dを参照して、金額及び日時が近接している出金及び入金の実績を特定する(S501)。ここで、金額及び日時が近接しているか否かは、上述した入出金連鎖生成処理におけるステップS104と同様にして判定される。すなわち、出金の金額と入金の金額とが同額又はその差が所定額以下である場合等に金額が近接しているとされ、入金の日時が出金の日時から所定時間以内である場合等に日時が近接しているとされる。
【0076】
次に、管理装置10は、ATM入出金DB14Dを参照して、上述したようにして特定された出金及び入金のそれぞれに係るATM端末2を設置している支店を特定し、両支店の地理的位置が近接しているか否かを判定する(S502)。この判定は、種々の方法により行うことができる。例えば、管理装置10が各支店の緯度及び経度のデータを記憶しておき、そのデータを用いて2つの支店間の距離を定め、その距離が所定値以下であるか否かによって判定することが考えられる。その他にも、各支店がどの支店と地理的に近接しているのかを表すデータを管理装置10が予め記憶しておき、そのデータを用いて2つの支店の地理的位置が近接しているか否かを判定するようにしてもよい。
【0077】
出金及び入金が地理的に近接する地点で行われたということは、ある者がATM端末2から出金した現金が、他の者に対して手渡された後に、当該他の者によってATM端末2に入金されたことが想定される。上記のステップS501及びS502は、このような関係を有していると考えられる出金及び入金を特定する処理に相当する。
【0078】
ステップS502において両支店の地理的位置が近接していないと判定された場合(S502でNO)、管理装置10は、入出金実績情報を生成せずに処理を終了する。他方、近接していると判定された場合(S502でYES)、管理装置10は、それらの出金及び入金に係るATM入出金情報を用いて、入出金実績情報を生成する(S503)。より具体的に説明すると、出金が口座Aからのもので、入金が口座Bに対するものである場合では、入金元が口座Aで、入金先が口座Bとなる入出金実績情報が生成される。この入出金実績情報における金額については、出金及び入金の金額が同額である場合はその額が、両金額に差がある場合はいずれかの金額又はその平均値等が、それぞれ採用される。また、入出金実績情報における日時については、出金及び入金のいずれかの日時が採用される。
【0079】
管理装置10は、上述したようにして生成された入出金実績情報を入出金実績DB14Bに登録し(S504)、処理を終了する。この入出金実績生成処理により、現金による出金と入金とが紐付けられることになる。
【0080】
管理装置10は、実施の形態1の場合と同様に、入出金実績DB14Bを用いて、上述した入出金連鎖生成処理を実行する。この入出金実績DB14Bには、上記の入出金実績生成処理によって生成された入出金実績情報も格納されているため、ある者と他の者との間で現金の手渡しが行われる場合であっても、入出金の連鎖が途絶えることはない。したがって、本実施の形態では、実施の形態1と比べてより正確な入出金連鎖を得ることが可能になる。
【0081】
上述したように、本実施の形態では、出金及び入金に係る支店の地理的位置に基づいてそれらの出金と入金とを紐付けているが、それ以外の方法によって両者を紐付けることも可能である。例えば、ATM端末2等によって入出金に係る紙幣の記番号を読み取り、その読み取られた記番号に基づいて管理装置10が出金と入金とを紐付けるようにしてもよい。その場合、管理装置10は、紙幣の記番号を含むATM入出金情報を生成して記憶しておき、そのATM入出金情報を用いて記番号が同一の出金及び入金を特定し、その特定された出金と入金とを紐付けた入出金実績情報を生成すればよい。
【0082】
(その他の実施の形態)
上記の各実施の形態では、振込が行われる前に生成された入出金連鎖情報に基づいて各金融口座に対して不正度が設定されているが、本発明はこれに限定されるわけではない。例えば、振込の都度、すなわち警告処理を実行する都度、上述した入出金連鎖生成処理と同様の処理を行うことによって入出金連鎖情報を生成し、その入出金連鎖情報に基づいて、不正度が所定値以上の金融口座に対して振込先の金融口座から直接的又は間接的な入金を行った実績があるか否かを判定し、その判定結果にしたがって警告を行うようにしてもよい。
【0083】
また、上述した各実施の形態では、単一のコンピュータ1aによって管理装置1,10の機能が実現されているが、例えば複数のコンピュータによる分散システムによって管理装置1,10の機能が実現されていてもよく、様々な態様が想定される。
【符号の説明】
【0084】
1,10 金融口座管理装置
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 ハードディスク
14A 口座データベース
14B 入出金実績データベース
14C 入出金連鎖データベース
14D ATM入出金データベース
15 通信インタフェース
16 バス
2 ATM端末
3 ユーザ端末
101,102 通信ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14