(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
断面の扁平率が2.3〜5.0である、扁平ガラス繊維ロービングを開繊しながら、前記扁平ガラス繊維に、樹脂成分の溶融物を含浸させた後、ストランドとして引取り、2〜8mmの長さに切断することを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のペレットの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0009】
本発明のペレットは、樹脂成分100質量部に対し、断面の扁平率が2.3〜5.0である、扁平ガラス繊維65〜170質量部を含むペレットであって、前記樹脂成分の85質量%以上が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、かつ、ISO 307で規定された96質量%硫酸溶液中の相対粘度が1.8〜4.0であるポリアミド樹脂であって、ペレット長が、2〜8mmであることを特徴とする。
このような構成とすることにより、割れにくく、かつ、フィード性に優れたペレット、成形品およびペレットの製造方法を提供可能になる。
【0010】
<キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂>
本発明のペレットは、樹脂成分の85質量%以上が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、かつ、ISO 307で規定された96質量%硫酸溶液中の相対粘度が1.8〜4.0であるポリアミド樹脂を含む。
【0011】
本発明で用いるポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来するポリアミド樹脂(本明細書において、「キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂」ということがある)を含む。
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂のジアミン由来の構成単位は、好ましくは80モル%以上、より好ましくは85モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、一層好ましくは95モル%以上が、より一層好ましくは99モル%以上がキシリレンジアミンに由来する。
また、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂のジカルボン酸由来の構成単位は、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、一層好ましくは90モル%以上、より一層好ましくは95モル%以上が、さらに一層好ましくは99モル%以上が、炭素原子数が4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する。
キシリレンジアミンは、パラキシリレンジアミンおよびメタキシリレンジアミンが好ましく、少なくともメタキシリレンジアミンを含むことがより好ましい。
【0012】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の原料ジアミン成分として用いることができるメタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミン以外のジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環式ジアミン、ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
【0013】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の原料ジカルボン酸成分として用いるのに好ましい炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸が例示でき、1種または2種以上を混合して使用できる。これらの中でもキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の融点が成形加工するのに適切な範囲となることから、アジピン酸またはセバシン酸がより好ましく、アジピン酸がさらに好ましい。
【0014】
上記炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸等のフタル酸化合物、1,2−ナフタレンジカルボン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、1,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸といったナフタレンジカルボン酸化合物等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
【0015】
なお、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を主成分として構成されるが、これら以外の構成単位を完全に排除するものではなく、ε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸類由来の構成単位を含んでいてもよいことは言うまでもない。ここで主成分とは、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を構成する構成単位のうち、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位の合計数が全構成単位のうち最も多いことをいう。本発明では、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂における、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位の合計は、全構成単位の90%以上を占めることが好ましく、95%以上を占めることがより好ましい。
【0016】
本発明で用いるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、ISO 307で規定された96質量%硫酸溶液中の相対粘度が1.8〜4.0である。相対粘度が1.8未満の場合、樹脂成分の粘度が低くなり、含浸ダイからストランドを引き取る際、樹脂が垂れてしまい、含浸性が不十分な状態となる。そのため、引取り機やペレタイザーを通過する際、ペレット割れが多発する。また、相対粘度が4.0を超える場合、樹脂成分の粘度が高いため、樹脂成分がロービング内部まで含浸せず、含浸が不十分な状態となる。そのため、引取り機やペレタイザーを通過する際、ペレット割れが多発する。
相対粘度の下限値は、2.0以上であることが好ましく、2.2以上であることがより好ましく、2.5以上であることがさらに好ましい。また、相対粘度の上限値は、3.5以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましく、2.8以下であることが一層好ましい。
相対粘度は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
【0017】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の融点は、150〜350℃であることが好ましく、180〜330℃であることがより好ましく、200〜330℃であることがさらに好ましく、200〜320℃であることが一層好ましい。
なお、本発明における融点とは、DSC(示差走査熱量測定)法により観測される昇温時の吸熱ピークのピークトップの温度をいう。
測定には、DSC測定器を用い、試料量は約1mgとし、雰囲気ガスとしては窒素を30mL/分で流し、昇温速度は10℃/分の条件で室温から予想される融点以上の温度まで加熱し溶融させた際に観測される吸熱ピークのピークトップの温度から融点を求めることができる。DSC測定器としては、島津製作所(SHIMADZU CORPORATION)社製、DSC−60を用いることができる。
【0018】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、数平均分子量(Mn)の下限が、6,000以上であることが好ましく、8,000以上であることがより好ましく、10,000以上であることがさらに好ましく、15,000以上であることが一層好ましい。上記Mnの上限は、35,000以下が好ましく、30,000以下がより好ましく、28,000以下がさらに好ましく、26,000以下が一層好ましい。このような範囲であると、耐熱性、弾性率、寸法安定性、成形加工性がより良好となる。
【0019】
樹脂成分中のキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の含有量は、下限値が、85質量%以上であり、88質量%以上であることがより好ましい。また、樹脂成分中のキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の含有量の上限値は、100質量%であってもよいが、97質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましい。
樹脂成分は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、また、本発明のペレット中に、35質量%以上含まれることが好ましく、40質量%以上含まれることがより好ましく、42質量%以上含まれていてもよい。また、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、本発明のペレット中に、55質量%以下の割合で含まれることが好ましく、50質量%以下の割合で含まれることがより好ましく、48質量%以下の割合で含まれていてもよい。
【0020】
<脂肪族ポリアミド樹脂>
本発明のペレットは、樹脂成分が、さらに、ポリアミド6およびポリアミド66からなる脂肪族ポリアミド樹脂の少なくなくとも1種を含み、さらに、脂肪族ポリアミド樹脂を樹脂成分の合計に対し3〜15質量%を含むことが好ましい。
上記脂肪族ポリアミド樹脂を樹脂成分の3質量%以上配合することにより、結晶化速度を早くすることができる。また、上記脂肪族ポリアミド樹脂を樹脂成分の15質量%以下の割合で配合することにより、ペレット割れをより効果的に抑制することができる。すなわち、樹脂成分中の上記脂肪族ポリアミド樹脂の割合が15質量%を超えると、上記脂肪族ポリアミド樹脂の結晶化速度が速いため、引取り機やペレタイザーを通過する際、ペレット割れが多発する。
上記脂肪族ポリアミド樹脂の配合量は、5質量%以上であることがより好ましく、また、12質量%以下であることがより好ましい。
ここでのポリアミド6とは、ε−カプロラクタム由来の構成単位からなるポリアミド樹脂を言うが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲(例えば、5モル%以下、さらには3モル%以下、特には1モル%以下)で、他の原料モノマー由来の構成単位を含んでいてもよい。ポリアミド66についても同様である。
【0021】
<他の樹脂成分>
上記樹脂成分は、上記キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂、ならびに、上記ポリアミド6およびポリアミド66からなる脂肪族ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂、ならびに、ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。
他のポリアミド樹脂としては、ポリアミド4、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリヘキサメチレンテレフタラミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタラミド(ポリアミド6I)、ポリアミド66/6T、ポリアミド9T、ポリアミド9MT、ポリアミド6I/6T等が挙げられる。これらの他のポリアミド樹脂は1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、芳香族ビニル化合物重合体、ポリフェニレンエーテル樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は1種のみ含んでいても、2種以上含んでいてもよい。
他のポリアミド樹脂およびポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂の配合量は、樹脂成分の10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがさらに好ましく、実質的に含まないことが特に好ましい。実質的に含まないとは、積極的に配合しないことをいい、不純物等意図せずに含まれてしまうものまでを排除する趣旨ではない。
【0022】
<扁平ガラス繊維>
本発明のペレットは、樹脂成分100質量部に対し、断面の扁平率が2.3〜5.0である、扁平ガラス繊維を65〜170質量部含む。
扁平ガラス繊維を用いることにより、樹脂成分の含浸性を向上させることができる。
前記扁平率は、2.5以上であることが好ましく、3.0以上であることがより好ましく、3.5以上であることがさらに好ましい。また、前記扁平率は4.5以下であることが好ましい。
扁平ガラス繊維の配合量は、樹脂成分100質量部に対し、80質量部以上であることが好ましく、90質量部以上であることがより好ましく、100質量部以上であってもよい。また、扁平ガラス繊維の配合量は、樹脂成分100質量部に対し、160質量部以下であることが好ましく、150質量部以下であることがより好ましく、140質量部以下であることがさらに好ましく、130質量部以下であることが一層好ましく、120質量部以下であってもよい。扁平ガラス繊維は1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
さらに、本発明のペレットは、上記樹脂成分と上記扁平ガラス繊維の合計量が90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上を占めることがより好ましく、97質量%以上を占めることがさらに好ましい。
【0023】
本発明のペレットにおける、扁平ガラス繊維の数平均繊維長は2mm以上であることが好ましく、3mm以上であってもよく、また、8mm以下であることが好ましく、7mm以下であることがより好ましく、6mm以下であってもよい。ガラス繊維の平均繊維長は、数平均繊維長であり、引抜き成形法等で成形する場合は、カット長がガラス繊維の平均繊維長となる。すなわち、本発明の一実施形態として、ペレット長と扁平ガラスの数平均繊維長の差が1mm未満(好ましくは0.5mm以下)である態様が例示される。より具体的には、ペレット長と扁平ガラスの数平均繊維長が同一である態様が例示される。ここでの同一とは、引抜き成形法等で成形したときの、ペレット長とガラス繊維の数平均繊維長とが、カット長と同一であるという程度における同一を意味し、数学的な意味での同一を意味するものではない。尚、ペレット長と扁平ガラスの数平均繊維長の長さが同一である態様におけるペレットが引抜き成形法で製造されたペレットに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0024】
<他の強化剤>
本発明のペレットは、上記扁平ガラス繊維以外のガラス繊維、ガラス繊維以外の強化剤を含んでいてもよい。例えば、円形断面を有するガラス繊維(丸ガラス繊維)、炭素繊維、アラミド繊維、マイカ、ワラストナイト、チタン酸カリウム、炭酸カルシウム、シリカ等が挙げられる。しかしながら、本発明では、強化剤として、上記扁平ガラス繊維以外の強化剤の配合量は、本発明のペレットに含まれる扁平ガラス繊維の10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。
【0025】
<他の成分>
本発明のペレットを製造する際に、他の成分を配合してもよい。他の成分としては、タルク、離型剤、ハロゲン化銅系(例えば、ヨウ化銅、塩化銅、臭化銅)および/またはハロゲン化アルカリ金属系(例えば、ヨウ化カリウム、臭化カリウム等)等の安定剤や、ヒンダードフェノール系、ホスファイト系等の酸化防止剤、離型性改良剤、難燃剤および/または難燃助剤、顔料、染料、分散剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、耐衝撃改良剤およびその他の周知の添加剤を配合することができる。
これらの添加剤の詳細については、特開2008−95066号公報の段落番号0057〜0063の記載を参酌でき、かかる内容は本明細書に組み込まれる。
【0026】
<<タルク>>
本発明のペレットは、タルクを含んでいてもよい。タルクを配合することにより、結晶化を促進することができる。
本発明のペレットにおける、タルクの配合量は、樹脂成分100質量部に対し、0.05〜20.0質量部であることが好ましく、0.1〜10.0質量部であることがより好ましく、0.15〜5.0質量部であることがさらに好ましく、0.2〜1.2質量部であることが特に好ましい。
タルクは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0027】
<<離型剤>>
本発明のペレットは、離型剤を含んでいてもよい。離型剤を配合することにより、成形の際の金型からの離型性を向上させることができる。
離型剤の具体例としては、特開2017−115093号公報の段落0034〜0040に記載の離型剤が例示され、これらの内容は本明細書に組み込まれる。本発明における離型剤は、脂肪酸金属塩が好ましい。脂肪酸としては、ステアリン酸およびモンタン酸が好ましく、ステアリン酸がより好ましい。脂肪酸金属塩を構成する金属は、アルカリ土類金属が好ましく、カルシウムおよびバリウムがより好ましく、バリウムがさらに好ましい。
本発明のペレットが離型剤を含む場合、離型剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対し、0.005〜5.0質量部であることが好ましく、0.01〜3.0質量部であることがより好ましく、0.015〜2.0質量部であることがさらに好ましく、0.02〜1.0質量部であることが一層好ましい。
離型剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0028】
<ペレット長>
本発明のペレットは、ペレット長が2〜8mmである。ペレット長が2mm未満であると、ペレットの製造時にペレットが割れやすくなる。また、ペレット長が8mmを超えると成形品を製造する際の、ペレットのフィード性が劣ってしまう。具体的には、ペレット長が長いと、成形中にホッパーブリッジが発生したりしてしまう。
ペレット長は、2mm以上であることが好ましく、3mm以上であってもよく、また、8mm以下であることが好ましく、7mm以下であることがより好ましく、6mm以下であってもよい。
ペレット長は、ペレットの最も長い部分の長さをいい、ストランドを経て製造する場合、ストランドを切断した際の長さ(カット長)と同じである。従って、ペレット長は、ペレットの最も長い部分の数平均長さである。
【0029】
<ペレットの製造方法>
本発明のペレットの製造方法は特に定めるものではなく、公知の方法に従って製造できる。
本発明のペレットの製造方法の一例として、断面の扁平率が2.3〜5.0である、扁平ガラス繊維ロービングを開繊しながら、前記扁平ガラス繊維に、樹脂成分の溶融物を含浸させた後、ストランドとして引取り、2〜8mmの長さに切断することを含む、ペレットの製造方法が挙げられる。
また、特開2014−034606号公報の段落0034に記載の方法も用いることができる。
【0030】
<成形品>
本発明では、また、本発明のペレットから成形される成形品を開示する。本発明の成形品の製造方法は、特に制限されず、熱可塑性樹脂について一般に使用されている成形方法、すなわち、射出成形、中空成形、押出成形、プレス成形などの成形方法を適用することができる。
成形品としては、単層フィルム(単層シートを含む趣旨である)、多層フィルム(多層シートを含む趣旨である)、繊維、糸、ロープ、チューブ、ホース、各種成形材料、容器、各種部品、完成品、筐体等が例示される。
【0031】
本発明の成形品は、自動車等輸送機部品、一般機械部品、精密機械部品、電子・電気機器部品、OA機器部品、建材・住設関連部品、医療装置、レジャースポーツ用品、遊戯具、医療品や食品等の容器、防衛および航空宇宙製品等に広く用いられる。
【実施例】
【0032】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0033】
<MXD6(相対粘度1.7)の合成例>
分縮器、全縮器、圧力計、窒素導入口、液体注入口、樹脂抜き出しバルブ、撹拌機を備えた内容量50リットルの加熱ジャケット付きSUS製反応缶に、アジピン酸15000g(102.6mol)、次亜リン酸ナトリウム17.3g(0.16mol)、酢酸ナトリウム12.1g(0.15mol)を仕込み、反応缶内部を窒素置換した。次いで、窒素を10mL/分の速度で流通させながら、常圧下で反応缶を170℃まで加熱し、アジピン酸を完全に融解させた後、メタキシリレンジアミン13700g(100.5mol)の滴下を開始した。メタキシリレンジアミンの滴下中は重縮合により生成する水を系内から除去しつつ、反応系内が固化しないように連続的に昇温した。100分かけてメタキシリレンジアミンを全量滴下し、かつ反応缶内温を250℃まで昇温した。次いで常圧のまま10分かけて内温を260℃に上げた後、内温を260℃に保持しつつアスピレーターと圧力調節器を使用して反応缶内を600mmHgまで10分かけて減圧した。600mmHgに到達してから5分後に撹拌を止め、窒素により反応缶内を0.2MPaに加圧してから反応缶底の樹脂抜き出しバルブを開けてポリマーをストランド状にして抜き出し、水冷後ペレタイザーにてペレット化して、約25kgのペレットを得た。
【0034】
<MXD6(相対粘度4.5)の合成例>
三菱ガス化学社製S6001のペレットをステンレス製の回転ドラム式の加熱装置に仕込み、5rpmで回転させた。十分窒素置換し、さらに少量の窒素気流下にて反応系内を室温から140℃まで昇温した。反応系内温度が140℃に達した時点で1torr以下まで減圧を行い、さらに系内温度を130分間で205℃まで昇温した。系内温度が205℃に達した時点から、同温度にて12時間、固相重合反応を継続した。反応終了後、減圧を終了し窒素気流下にて系内温度を下げ、60℃に達した時点でペレットを取り出した。
【0035】
<相対粘度>
ポリアミド樹脂のISO 307で規定された96質量%硫酸溶液中の相対粘度は以下の通り測定した。
ポリアミド樹脂0.2gを精秤し、96質量%の硫酸水溶液20mLに25℃で撹拌溶解した。ポリアミド樹脂を完全に溶解した後、速やかにキャノンフェンスケ型粘度計に溶液5mLを取り、25℃の恒温漕中で10分間放置後、落下時間(t)を測定した。また、96質量%の硫酸水溶液そのものの落下時間(t0)も同様に測定した。tおよびt0から次式により相対粘度を算出した。
相対粘度=t/t0
【0036】
<その他の原料>
MXD6(相対粘度2.7):三菱ガス化学社製、S6007
ポリアミド6:PA6、UBEナイロン(商標登録)1012B、宇部興産社製
ポリアミド66:PA66、アミラン(商標登録)CM3001、東レ社製
扁平ガラス繊維ロービング:日東紡社製、RSG 60QM−483HS(600TEX)、扁平率:4.0
丸ガラス繊維ロービング:日本電気硝子社製EX−1400(2400TEX)、扁平率約1.0
MSタルク:日本タルク社製
ステアリン酸バリウム:堺化学工業社製
【0037】
<扁平率の測定>
本発明における扁平率は、ガラス繊維の長手方向に垂直な方向の断面の長径(a)および短径(b)に基づき、長径(a)/短径(b)で表される値である。ガラス繊維の断面は、顕微鏡写真から実寸を測定し、任意の5か所の平均値から算出した。
【0038】
<樹脂ペレットの製造方法>
表1に記載の成分のうち、ガラス繊維を除く成分を二軸押出機(商品名:ZSK25、Coperion社製)におけるトップフィード口より、下記表1に示す割合(単位:質量部)で、供給し、シリンダー設定温度をポリアミド樹脂の融点+40℃、スクリュー回転数300rpmで、溶融混練して、樹脂成分の溶融物を得た。
ガラス繊維ロービングを開繊して引きながら、上記で得られた樹脂成分の溶融物に含浸させた後、含浸ダイを通してストランドとして引取速度19m/分で引取り、ペレット長が表1に示す長さとなるようにカットしてペレットを得た。カット長とペレット中のガラス繊維の繊維長は、同じ長さであった。
【0039】
<ペレット割れ度合の評価方法>
上記で得られたペレットの内、任意に選んだペレット100粒について、割れペレットの度合を以下の通り、評価した。
A:ペレット割れが10%未満
B:ペレット割れが10%以上、30%未満
C:ペレット割れが30%以上
【0040】
<フィード性の評価>
射出成形機(日本製鋼所製、J55AD−2M)にて、標準タイプスクリューを用いて、シリンダー温度280℃、金型温度130℃、スクリュー回転数80rpm、背圧5MPaの条件で、ISOダンベル試験片を成形サイクル45秒で100本成形した際のホッパーでのペレットの食い込み性を評価した。
A:ペレットの食い込み性が良く、ホッパーブリッジが発生しなかった。
B:ペレットの食い込み性が悪く、ホッパーブリッジが発生した。
【0041】
結果を下記表1に示す。
【表1】
【0042】
上記結果から明らかなとおり、本発明のペレットは、ペレット割れが少なく、かつ、フィード性に優れていた(実施例1、2)。
これに対し、丸ガラス繊維を用いた場合(比較例1、2)、ペレット割れが生じてしまった。また、樹脂成分の主成分として、結晶化速度の速いポリアミド6やポリアミド66を用いた場合(比較例3、4)、ペレット割れが生じてしまった。また、結晶化速度が速くないキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を用いても、相対粘度が所定の範囲でない場合(比較例5、6)、ペレット割れが生じてしまった。さらに、ペレット長が長い場合(比較例7)、ペレット割れは抑制できたが、フィード性が劣ってしまった。より具体的には、成形中にホッパーブリッジが発生してしまった。