特許第6979326号(P6979326)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979326
(24)【登録日】2021年11月17日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】樹脂組成物及び電子部品用接着剤
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/08 20060101AFI20211202BHJP
   C08L 63/10 20060101ALI20211202BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20211202BHJP
   C08G 59/17 20060101ALI20211202BHJP
   C08K 5/37 20060101ALI20211202BHJP
   C08K 5/25 20060101ALI20211202BHJP
   C09J 109/00 20060101ALI20211202BHJP
   C09J 163/08 20060101ALI20211202BHJP
   C09J 163/10 20060101ALI20211202BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20211202BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20211202BHJP
   G02F 1/1339 20060101ALI20211202BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20211202BHJP
   C09J 4/06 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   C08L63/08
   C08L63/10
   C08L63/00 A
   C08G59/17
   C08K5/37
   C08K5/25
   C09J109/00
   C09J163/08
   C09J163/10
   C09J11/04
   C09J11/06
   G02F1/1339 505
   C09J4/02
   C09J4/06
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-203288(P2017-203288)
(22)【出願日】2017年10月20日
(65)【公開番号】特開2019-77740(P2019-77740A)
(43)【公開日】2019年5月23日
【審査請求日】2020年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】武藤 正嘉
(72)【発明者】
【氏名】内藤 正弘
(72)【発明者】
【氏名】田上 勝大
【審査官】 三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−219565(JP,A)
【文献】 特開2017−173369(JP,A)
【文献】 特開2017−173368(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/061303(WO,A1)
【文献】 特開2013−011879(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/165259(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/017524(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/143777(WO,A1)
【文献】 特開平07−238268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
C09J 1/00− 5/10
C09J 9/00−201/10
G02F 1/133
G02F 1/1333
G02F 1/1334
G02F 1/1339−1/1341
G02F 1/1347
C08G 59/00− 59/72
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A):分子内にエポキシ基を有するポリブタジエン化合物、
成分(B)硬化性化合物、
成分(D)有機フィラー、
成分(I)熱ラジカル重合開始剤、
を含有する樹脂組成物であって、前記成分(A)は更に反応性二重結合を有し、数平均分子量は500以上1300以下であり、前記成分(B)としてエポキシ(メタ)アクリレートを含有し、前記成分(D)としてウレタン微粒子、アクリル微粒子、スチレン微粒子、スチレンオレフィン微粒子、及びシリコーン微粒子からなる群より選択される1又は2以上の有機フィラーを含有し、前記成分(I)として1,2−ビス(トリメチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタンを含有する樹脂組成物。
【請求項2】
更に、成分(C)チオール化合物を含有する請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
更に、成分(E)無機フィラーを含有する請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
更に、成分(F)シランカップリング剤を含有する請求項1乃至のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
更に、成分(G)熱硬化剤を含有する請求項1乃至のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記成分(G)が有機酸ヒドラジド化合物である請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
更に、成分(H)光ラジカル重合開始剤を含有する請求項1乃至のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の樹脂組成物を用いた液晶シール剤。
【請求項9】
請求項に記載の液晶シール剤を用いて接着された液晶表示セル
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルディスプレイや湾曲形状のディスプレイにも適用できる電子部品用接着剤に使用される樹脂組成物に関する。より詳細には、分子内に特定の構造を有する化合物を含有する樹脂組成物に関する。この樹脂組成物は、柔軟性と低透湿性を両立できるものである為、電子部品用接着剤、特にディスプレイ用封止剤として有用である。
【背景技術】
【0002】
樹脂組成物は、ディスプレイ用封止剤、太陽電池用封止剤、半導体封止剤等の電子部品用接着剤用途で広く用いられている。ディスプレイ用封止剤とは、例えば液晶用シール剤、有機ELディスプレイ用封止剤やタッチパネル用接着剤等を挙げることができる。これらの材料として共通していることは、優れた硬化性を有しながら、アウトガスが少なく、表示素子にダメージを与えないという特性が要求される点である。
また最近では、ディスプレイ分野等で湾曲した形状のものや、フレキシブル性に富んだものが開発され製品化されている。こういったディスプレイ等に使用される基板は、従来のガラスのような剛直なものに代わって、プラスチックフィルムのような柔軟なものが使用されている(特許文献1)。
こういった背景から、樹脂組成物には基板等のたわみに追従するような、すなわち硬化後においても柔軟であるという性質が要求されつつある。
【0003】
一方、硬化物の柔軟性を高めるためには、硬化物の架橋密度を下げることが有効な手段である。しかし、架橋密度が下がると透湿性を悪化させるのが通常である。これはネットワークの緩い部分から水分が浸入する為であると考えられる。従って、低透湿性を担保する為には、架橋密度を下げずに柔軟性を高めるか、架橋密度は下げるが透湿性を悪化させないという相反する特性の実現が必要となる。
【0004】
従来、接着強度向上の観点から、柔軟性を有する表示素子用接着剤の開発は行われてきた(特許文献2)。しかし、上記の柔軟な基板に適応するための十分な性能を備えたものは未だ実現していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−238005号公報
【特許文献2】特開2016−24240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、フレキシブルディスプレイや湾曲形状のディスプレイ用の電子部品にも適用でき、更には低透湿性にも優れる樹脂組成物を提案するものである。当該樹脂組成物は、柔軟性と低透湿性を両立できるものである為、電子部品用接着剤、特にディスプレイ用封止剤として有用である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、分子内にエポキシ基を有するポリブタジエン化合物を含有する樹脂組成物が、柔軟性と低透湿性に非常に優れることを見出し、本発明に至った。
なお、本明細書中、「(メタ)アクリル」とは「アクリル及び/又はメタクリル」を意味し、「(メタ)アクリロイル基」とは「アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基」を意味する。また、「液晶滴下工法用液晶シール剤」を単に「液晶シール剤」又は「シール剤」と記載する場合もある。
【0008】
即ち本発明は、
[1]成分(A):分子内にエポキシ基を有するポリブタジエン化合物、を含有する樹脂組成物、
[2]前記成分(A)が、分子内に、更に反応性二重結合を有する化合物である前項[1]に記載の樹脂組成物、
[3]前記成分(A)の数平均分子量が、500以上10000以下である前項[1]又は[2]に記載の樹脂組成物、
[4]前記成分(A)が3個以上のヒドロキシ基を有さない前項[1]乃至[3]のいずれか一項に記載の樹脂組成物、
[5]更に、成分(B)硬化性化合物を含有する前項[1]乃至[4]4のいずれか一項に記載の樹脂組成物、
[6]前記成分(B)が、成分(B−1)(メタ)アクリル化合物である前項[5]に記載の樹脂組成物、
[7]前記成分(B)が、成分(B−1)(メタ)アクリル化合物と成分(B−2)エポキシ化合物の混合物である前項[5]に記載の樹脂組成物、
[8]前記成分(B−1)が、エポキシ(メタ)アクリレートである前項[6]又は[7]に記載の樹脂組成物、
[9]更に、成分(C)チオール化合物を含有する前項[1]乃至[8]のいずれか一項に記載の樹脂組成物、
[10]更に、成分(D)有機フィラーを含有する前項[1]及至[9]のいずれか一項に記載の樹脂組成物、
[11]前記成分(D)が、ウレタン微粒子、アクリル微粒子、スチレン微粒子、スチレンオレフィン微粒子、及びシリコーン微粒子からなる群より選択される1又は2以上の有機フィラーである前項[10]に記載の樹脂組成物、
[12]更に、成分(E)無機フィラーを含有する前項[1]及至[11]のいずれか一項に記載の樹脂組成物、
[13]更に、成分(F)シランカップリング剤を含有する前項[1]及至[12]のいずれか一項に記載の樹脂組成物、
[14]更に、成分(G)熱硬化剤を含有する前項[1]及至[13]いずれか一項に記載の樹脂組成物、
[15]前記成分(G)が有機酸ヒドラジド化合物である前項[14]に記載の樹脂組成物、
[16]更に、成分(H)光ラジカル重合開始剤を含有する前項[1]及至[15]のいずれか一項に記載の樹脂組成物、
[17]更に、成分(I)熱ラジカル重合開始剤を含有する前項[1]及至[16]のいずれか一項に記載の樹脂組成物、
[18]前項[1]乃至[17]のいずれか一項に記載の樹脂組成物を用いた電子部品用接着剤、
[19]前項[17]に記載の電子部品用接着剤を硬化して得られる硬化物で接着された電子部品、
[20]前項[1]乃至[17]のいずれか一項に記載の樹脂組成物を用いた液晶表示セル用接着剤、
[21]前項[1]乃至[17]のいずれか一項に記載の樹脂組成物を用いた液晶シール剤、
[22]前項[20]又は[21]に記載の液晶表示セル用接着剤又は液晶シール剤を用いて接着された液晶表示セル、
に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の樹脂組成物は、柔軟性と低透湿性を両立できるものである為、電子部品用接着剤、特にディスプレイ用封止剤として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[(A)分子内にエポキシ基を有するポリブタジエン化合物]
本発明の樹脂組成物は、成分(A):分子内にエポキシ基を有するポリブタジエン化合物(以下、単に「成分(A)」ともいう。)を含有する。この化合物は、柔軟性を有しながら、エポキシ基の開環反応により低透湿性を実現できる。従来、ポリブタジエンやポリイソプレンは末端二重結合を用いて反応させるものが主であるが、ラジカル反応では反応性が速い一方で、十分な架橋が得られず、透湿を悪化させるものと考えられる。
【0011】
前記エポキシ基を有するポリブタジエン化合物とは、ブタジエン骨格に含まれる炭素−炭素二重結合の少なくとも一部がエポキシ化されることによって、分子内にエポキシ基が導入された化合物である。エポキシ化ポリブタジエン化合物は、特に制限されないが、主鎖の両末端に、水素原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ヒドロキシエチル基などのヒドロキシアルキル基を有しているものが挙げられる。
成分(A)としては、分子内に更に反応性二重結合を有する化合物が好ましい。上記ラジカル硬化の速反応性のメリットも生かしながら、硬化物特性はエポキシ基の開環反応によって得るという設計となり、より有益である。
【0012】
エポキシ化ポリブタジエン化合物としては、下記式(1)で示される繰り返し単位と、下記式(2)で示される繰り返し単位を有する化合物、あるいは下記式(3)で示される繰り返し単位又は下記式(4)で示される繰り返し単位を有する化合物が挙げられる。
【0013】
【化1】
【0014】
【化2】
【0015】
【化3】
【0016】
【化4】
【0017】
エポキシ化ポリブタジエン化合物としては、下記式(5)で示される化合物又は下記式(6)で示される化合物が好ましい。
【0018】
【化5】
式中、m及びnは、それぞれ繰り返し単位数であって、1以上の整数である。
【0019】
【化6】
式中、o,p及びqは、それぞれ繰り返し単位数であって、1以上の整数である。Rは水素原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ヒドロキシエチル基を表し、水素原子又はヒドロキシ基であることが好ましい。
【0020】
エポキシ基を有するポリブタジエン化合物は、ポリブタジエン樹脂にエポキシ化剤を反応させることによって得ることができる。原料であるポリブタジエン樹脂において、二重結合部位の立体構造は、シス−1,4、トランス−1,4、トランス−1,2、シス−1,2のいずれであってもよい。また、それらの比率は任意でよい。エポキシ化剤としては、過酢酸、過ギ酸、過安息香酸、トリフルオロ過酢酸、過プロピオン酸などの有機過酸類、過酸化水素、t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイドなどの有機ヒドロパーオキサイド類などを使用できる。有機過酸としては、目的物のオキシラン酸素濃度を高めるため、実質的に水を含まないもの(例えば、水分含有量で0.8重量%以下)が好ましい。上記エポキシ化剤の中でも、工業的に安価に入手でき、且つ安定度の高い点から、過酢酸が特に好ましい。
【0021】
また、 前記エポキシ化ポリジエン樹脂の数平均分子量は、樹脂組成物からの発ガスや、液晶周辺材料、例えば液晶シール剤として用いる場合の液晶汚染性低減の観点から、成分下限は500が好ましく、更に好ましくは750、特に好ましくは1000である。
また、ハンドリング性の観点から、成分(A)の数平均分子量の上限は10000が好ましく、更に好ましくは8000、特に好ましくは6000である。
【0022】
前記エポキシ基を有するポリブタジエン化合物は市販品を用いることができる。市販品としては、例えばJP−100、JP−200、JP−400(いずれも日本曹達株式会社(製))、エポリード PB3600、エポリード PB4700(いずれも株式会社ダイセル(製))、BF−1000(株式会社ADEKA(製))、Ricon657(クレイバレー社(製))として市場から入手することができる。
【0023】
[(B)硬化性化合物]
本発明の樹脂組成物は、成分(B)硬化性化合物(以下、単に「成分(B)」ともいう。)を含有する場合が好ましい。
【0024】
[(B−1)(メタ)アクリル化合物]
成分(B)としては、光や熱等によって硬化する化合物であれば特に限定されないが、成分(B−1)(メタ)アクリル化合物(以下、単に成分(B−2)ともいう。)である場合が好ましい。ここで「(メタ)アクリル」とは「アクリル」及び/又は「メタクリル」を意味する。(以下同様。)成分(B−1)としては、例えば、(メタ)アクリルエステル化合物、エポキシ(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。このうち、好ましくはエポキシ(メタ)アクリレート化合物である。
(メタ)アクリルエステル化合物の具体例としては、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルポリエトキシ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノールモノエトキシ(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノールポリエトキシ(メタ)アクリレート、p−クミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリプロポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールとヒドロキシピバリン酸のエステルジアクリレートやネオペンチルグリコールとヒドロキシピバリン酸のエステルのε−カプロラクトン付加物のジアクリレート等のモノマー類を挙げることができる。好ましくは、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
エポキシ(メタ)アクリレート化合物は、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応により公知の方法で得られる。原料となるエポキシ化合物としては、特に限定されるものではないが、2官能以上のエポキシ化合物が好ましく、例えば、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールFノボラック型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、脂肪族鎖状エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、ヒダントイン型エポキシ化合物、イソシアヌレート型エポキシ化合物、トリフェノールメタン骨格を有するフェノールノボラック型エポキシ化合物、その他、カテコール、レゾルシノール等の二官能フェノール類のジグリシジルエーテル化物、二官能アルコール類のジグリシジルエーテル化物、およびそれらのハロゲン化物、水素添加物などが挙げられる。これらのうち液晶汚染性の観点から、ビスフェノールA型エポキシ化合物やレゾルシンジグリシジルエーテルが好ましい。また、エポキシ基と(メタ)アクリロイル基との比率は限定されるものではなく、工程適合性の観点から適切に選択される。
成分(B)は単独で用いても良いし、2種類以上を混合しても良い。本発明の樹脂組成物において、成分(B)を使用する場合には、樹脂組成物の総量中、通常10〜80質量%、好ましくは20〜70質量%である。
【0025】
[(B−2)エポキシ化合物]
本発明の態様として、上記成分(B)中に、さらに成分(B−2)エポキシ化合物(以下、単に成分(B−2)ともいう。)が含有される場合がさらに好ましい。
エポキシ化合物としては特に限定されるものではないが、2官能以上のエポキシ化合物が好ましく、例えば、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン骨格を有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂、その他、カテコール、レゾルシノール等の二官能フェノール類のジグリシジルエーテル化物、二官能アルコール類のジグリシジルエーテル化物、およびそれらのハロゲン化物、水素添加物などが挙げられる。これらのうち液晶汚染性の観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やレゾルシンジグリシジルエーテルが好ましい。
成分(B−2)は単独で用いても良いし、2種類以上を混合しても良い。本発明の樹脂組成物において、成分(B−2)を使用する場合には、樹脂組成物総量中、通常5〜50質量%、好ましくは5〜30質量%である。
【0026】
[(C)チオール化合物]
本発明の樹脂組成物は、成分(C)チオール化合物(以下、単に成分(C)ともいう。)を含有しても良い。成分(C)は成分(A)のエポキシ基とも、反応性二重結合とも反応する為、添加することが非常に有用である。
成分(C)としては、分子内にチオール基を有する化合物であれが特に限定されるものではないが、保存安定性と反応性の観点から2級チオール基を有するチオール化合物が好ましい。
また、チオール基の数は、分子内に2以上有するもの(多官能チオール化合物)が好ましく、更に好ましくは3官能又は4官能である。
本発明の樹脂組成物を電子部品用封止剤として用いる場合、発ガスの抑制等の観点から、チオール化合物のチオール当量は80以上が好ましく、更に好ましくは100以上である。また、分子量は、好ましくは250以上であり、更に好ましくは500以上である。
成分(C)は単独で用いても良いし、2種類以上を混合しても良い。本発明の樹脂組成物において、成分(C)を使用する場合には、樹脂組成物総量中、通常0.5〜30質量%、好ましくは0.5〜20質量%である。
【0027】
[(D)有機フィラー]
本発明の樹脂組成物は、成分(D)有機フィラー(以下、単に成分(D)ともいう。)を含有しても良い。上記有機フィラーとしては、例えばウレタン微粒子、アクリル微粒子、スチレン微粒子、スチレンオレフィン微粒子及びシリコーン微粒子が挙げられる。なおシリコーン微粒子としてはKMP−594、KMP−597、KMP−598(信越化学工業製)、トレフィルRTME−5500、9701、EP−2001(東レダウコーニング社製)が好ましく、ウレタン微粒子としてはJB−800T、HB−800BK(根上工業株式会社)、スチレン微粒子としてはラバロンRTMT320C、T331C、SJ4400、SJ5400、SJ6400、SJ4300C、SJ5300C、SJ6300C(三菱化学製)が好ましく、スチレンオレフィン微粒子としてはセプトンRTMSEPS2004、SEPS2063が好ましい。
これら有機フィラーは単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。また2種以上を用いてコアシェル構造としても良い。これらのうち、好ましくは、アクリル微粒子、シリコーン微粒子である。
上記アクリル微粒子を使用する場合、2種類のアクリルゴムからなるコアシェル構造のアクリルゴムである場合が好ましく、特に好ましくはコア層がn−ブチルアクリレートであり、シェル層がメチルメタクリレートであるものが好ましい。これはゼフィアックRTMF−351としてアイカ工業株式会社から販売されている。
また、上記シリコーン微粒子としては、オルガノポリシロキサン架橋物粉体、直鎖のジメチルポリシロキサン架橋物粉体等があげられる。また、複合シリコーンゴムとしては、上記シリコーンゴムの表面にシリコーン樹脂(例えば、ポリオルガノシルセスキオキサン樹脂)を被覆したものがあげられる。これらの微粒子のうち、特に好ましいのは、直鎖のジメチルポリシロキサン架橋粉末のシリコーンゴム又はシリコーン樹脂被覆直鎖ジメチルポリシロキサン架橋粉末の複合シリコーンゴム微粒子である。これらのものは、単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。また、好ましくは、ゴム粉末の形状は、添加後の粘度の増粘が少ない球状が良い。本発明の樹脂組成物において、成分(D)を使用する場合には、樹脂組成物の総量中、通常5〜50質量%、好ましくは5〜40質量%である。
【0028】
[(E)無機フィラー]
本発明の樹脂組成物は、成分(E)無機フィラー(以下、単に「成分(E)」ともいう。)を含有しても良い。本発明で含有する無機フィラーとしては、シリカ、シリコンカーバイド、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸リチウムアルミニウム、珪酸ジルコニウム、チタン酸バリウム、硝子繊維、炭素繊維、二硫化モリブデン、アスベスト等が挙げられ、好ましくは溶融シリカ、結晶シリカ、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウムが挙げられるが、好ましくはシリカ、アルミナ、タルクである。これら無機フィラーは2種類以上を混合して用いても良い。
無機フィラーの平均粒子径は、大きすぎると狭ギャップの液晶セル製造時に上下ガラス基板の貼り合わせ時のギャップ形成がうまくできない等の不良要因となるため、2000nm以下が適当であり、好ましくは1000nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。また好ましい下限は10nm程度であり、さらに好ましくは100nm程度である。粒子径はレーザー回折・散乱式粒度分布測定器(乾式)(株式会社セイシン企業製;LMS−30)により測定することができる。
本発明の樹脂組成物において、無機フィラーを使用する場合には、液晶シール剤の総量中、通常5〜50質量%、好ましくは5〜40質量%である。
【0029】
[(F)シランカップリング剤]
本発明の樹脂組成物は、成分(F)シランカップリング剤(以下、単に成分(F)ともいう。)を添加して、接着強度や耐湿性の向上を図ることができる。
成分(F)としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−(ビニルベンジルアミノ)エチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤はKBMシリーズ、KBEシリーズ等として信越化学工業株式会社等によって販売されている為、市場から容易に入手可能である。本発明の樹脂組成物において、成分(F)を使用する場合には、樹脂組成物総量中、0.05〜3質量%が好適である。
【0030】
[(G)熱硬化剤]
本発明の樹脂組成物は、成分(G)熱硬化剤(以下、単に成分(G)ともいう。)を含有しても良い。成分(G)は非共有電子対や分子内のアニオンによって、求核的に反応するものであって、例えば多価アミン類、多価フェノール類、有機酸ヒドラジド化合物等を挙げる事ができる。ただしこれらに限定されるものではない。これらのうち有機酸ヒドラジド化合物が特に好適に用いられる。例えば、芳香族ヒドラジドであるテレフタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド、2,6−ピリジンジヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド、ピロメリット酸テトラヒドラジド等をあげることが出来る。また、脂肪族ヒドラジド化合物であれば、例えば、ホルムヒドラジド、アセトヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、1,4−シクロヘキサンジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イミノジ酢酸ジヒドラジド、N,N’−ヘキサメチレンビスセミカルバジド、クエン酸トリヒドラジド、ニトリロ酢酸トリヒドラジド、シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントイン等のヒダントイン骨格、好ましくはバリンヒダントイン骨格(ヒダントイン環の炭素原子がイソプロピル基で置換された骨格)を有するジヒドラジド化合物、トリス(1−ヒドラジノカルボニルメチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(1−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(3−ヒドラジノカルボニルプロピル)イソシアヌレート、ビス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート等をあげることができる。硬化反応性と潜在性のバランスから好ましくは、イソフタル酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、トリス(1−ヒドラジノカルボニルメチル)イソシアヌレート、トリス(1−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(3−ヒドラジノカルボニルプロピル)イソシアヌレートであり、特に好ましくはトリス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレートである。
成分(G)は単独で用いても良いし、2種類以上を混合しても良い。本発明の樹脂組成物において、成分(G)を使用する場合には、樹脂組成物総量中、通常0.1〜10質量%、好ましくは1〜5質量%である。
【0031】
[(H)光ラジカル重合開始剤]
本発明の樹脂組成物は、成分(H)光ラジカル重合開始剤(以下、単に「成分(H)」ともいう。)を含有しても良い。光ラジカル重合開始剤としては、紫外線や可視光の照射によって、ラジカルや酸を発生し、連鎖重合反応を開始させる化合物であれば特に限定されないが、例えば、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジエチルチオキサントン、ベンゾフェノン、2−エチルアンスラキノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−メチル−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−1−プロパン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスヒンオキサイド、カンファーキノン、9−フルオレノン、ジフェニルジスルヒド等を挙げることができる。具体的には、IRGACURERTM 651、184、2959、127、907、369、379EG、819、784、754、500、OXE01、OXE02、DAROCURERTM1173、LUCIRINRTM TPO(いずれもBASF社製)、セイクオールRTMZ、BZ、BEE、BIP、BBI(いずれも精工化学株式会社製)等を挙げることができる。
また、液晶汚染性の観点から、分子内に(メタ)アクリル基を有するものを使用する事が好ましく、例えば2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートと1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2メチル−1−プロパン−1−オンとの反応生成物が好適に用いられる。この化合物は国際公開第2006/027982号記載の方法にて製造して得ることができる。
本発明の樹脂組成物において、成分(H)を使用する場合には、樹脂組成物総量中、通常0.001〜3質量%、好ましくは0.002〜2質量%である。
【0032】
[(I)熱ラジカル重合開始剤]
本発明の液樹脂組成物は、成分(I)熱ラジカル重合開始剤(以下、単に「成分(I)」ともいう。)を含有して、硬化速度、硬化性を向上することができる。
熱ラジカル重合開始剤は、加熱によりラジカルを生じ、連鎖重合反応を開始させる化合物であれば特に限定されないが、有機過酸化物、アゾ化合物、ベンゾイン化合物、ベンゾインエーテル化合物、アセトフェノン化合物、ベンゾピナコール等が挙げられ、ベンゾピナコールが好適に用いられる。例えば、有機過酸化物としては、カヤメックRTMA、M、R、L、LH、SP−30C、パーカドックスCH−50L、BC−FF、カドックスB−40ES、パーカドックス14、トリゴノックスRTM22−70E、23−C70、121、121−50E、121−LS50E、21−LS50E、42、42LS、カヤエステルRTMP−70、TMPO−70、CND−C70、OO−50E、AN、カヤブチルRTMB、パーカドックス16、カヤカルボンRTMBIC−75、AIC−75(化薬アクゾ株式会社製)、パーメックRTMN、H、S、F、D、G、パーヘキサRTMH、HC、TMH、C、V、22、MC、パーキュアーRTMAH、AL、HB、パーブチルRTMH、C、ND、L、パークミルRTMH、D、パーロイルRTMIB、IPP、パーオクタRTMND(日油株式会社製)などが市販品として入手可能である。
【0033】
また、アゾ化合物としては、VA−044、086、V−070、VPE−0201、VSP−1001(和光純薬工業株式会社製)等が市販品として入手可能である。
【0034】
成分(I)の含有量としては、樹脂組成物の総量中、0.0001〜10質量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.0005〜5質量%であり、0.001〜3質量%が特に好ましい。
【0035】
[その他成分]
本発明の樹脂組成物には、さらに必要に応じて、有機酸やイミダゾール等の硬化促進剤、ラジカル重合防止剤、顔料、レベリング剤、消泡剤、溶剤などの添加剤を配合することができる。
【0036】
[硬化促進剤]
上記硬化促進剤としては、有機酸やイミダゾール等を挙げることができる。
有機酸としては、有機カルボン酸や有機リン酸等が挙げられるが、有機カルボン酸である場合が好ましい。具体的には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、フランジカルボン酸等の芳香族カルボン酸、コハク酸、アジピン酸、ドデカン二酸、セバシン酸、チオジプロピオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリス(2−カルボキシメチル)イソシアヌレート、トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−カルボキシプロピル)イソシアヌレート、ビス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート等を挙げることができる。
また、イミダゾール化合物としては、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−ウンデシルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−エチル−4−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−3,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシメチル−5−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−3,5−ジシアノエトキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物において、硬化促進剤を使用する場合には、樹脂組成物の総量中、通常0.1〜10質量%、好ましくは1〜5質量%である。
【0037】
[ラジカル重合防止剤]
上記ラジカル重合防止剤としては、光ラジカル重合開始剤や熱ラジカル重合開始剤等から発生するラジカルと反応して重合を防止する化合物であれば特に限定されるものではなく、キノン系、ピペリジン系、ヒンダードフェノール系、ニトロソ系等を用いることができる。具体的には、ナフトキノン、2−ヒドロキシナフトキノン、2−メチルナフトキノン、2−メトキシナフトキノン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6,−テトラメチル−4−メトキシピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6−テトラメチル−4−フェノキシピペリジン−1−オキシル、ハイドロキノン、2−メチルハイドロキノン、2−メトキシハイドロキノン、パラベンゾキノン、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルクレゾール、ステアリルβ−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β―(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]、2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニルプロピオネート)]メタン、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−sec−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、パラメトキシフェノール、4−メトキシ−1−ナフトール、チオジフェニルアミン、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミンのアルミニウム塩、商品名アデカスタブLA−81、商品名アデカスタブLA−82(株式会社アデカ製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのうちナフトキノン系、ハイドロキノン系、ニトロソ系ピペラジン系のラジカル重合防止剤が好ましく、ナフトキノン、2−ヒドロキシナフトキノン、ハイドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−P−クレゾール、ポリストップ7300P(伯東株式会社製)が更に好ましく、ポリストップ7300P(伯東株式会社製)が最も好ましい。
ラジカル重合防止剤の含有量としては本発明の樹脂組成物総量中、0.0001〜1質量%が好ましく、0.001〜0.5質量%が更に好ましく、0.01〜0.2質量%が特に好ましい。
【0038】
本発明の樹脂組成物を得る方法の一例としては、次に示す方法がある。まず、成分(B)(成分(B−1)と(B−2)を用いる場合には、その混合物)に、成分(A)及び必要に応じて成分(H)を加熱溶解する。次いで室温まで冷却後、必要に応じて成分(C)、成分(D)、成分(E)、成分(F)、成分(G)、成分(I)、消泡剤、及びレベリング剤、溶剤等を添加し、公知の混合装置、例えば3本ロール、サンドミル、ボールミル等により均一に混合し、金属メッシュにて濾過することにより本発明の液晶シール剤を製造することができる。
【0039】
本発明の樹脂組成物は電子部品用封止剤や電子部品用接着剤として非常に有用である。電子部品用封止剤、接着剤としては、フレキシブルプリント配線板用接着剤、TAB用接着剤、半導体用接着剤、各種ディスプレイ用接着剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
また、本発明の樹脂組成物は、液晶表示セル用接着剤として、特に液晶シール剤として非常に有用である。本発明の樹脂組成物を液晶シール剤として用いた場合の、液晶表示セルについて、以下に例を示す。
【0041】
本発明の液晶表示セル用接着剤を用いて製造される液晶表示セルは、基板に所定の電極を形成した一対の基板を所定の間隔に対向配置し、周囲を本発明の液晶シール剤でシールし、その間隙に液晶が封入されたものである。封入される液晶の種類は特に限定されない。ここで、基板とはガラス、石英、プラスチック、シリコン等からなる少なくとも一方に光透過性がある組み合わせの基板から構成される。その製法としては、本発明の液晶シール剤に、グラスファイバー等のスペーサ(間隙制御材)を添加後、該一対の基板の一方にディスペンサー、またはスクリーン印刷装置等を用いて該液晶シール剤を塗布した後、必要に応じて、80〜120℃で仮硬化を行う。その後、該液晶シール剤の堰の内側に液晶を滴下し、真空中にてもう一方のガラス基板を重ね合わせ、ギャップ出しを行う。ギャップ形成後、90〜130℃で30分〜2時間硬化することにより本発明の液晶表示セルを得ることができる。また光熱併用型として使用する場合は、紫外線照射機により液晶シール剤部に紫外線を照射させて光硬化させる。紫外線照射量は、好ましくは500〜6000mJ/cm、より好ましくは1000〜4000mJ/cmの照射量が好ましい。その後必要に応じて、90〜130℃で30分〜2時間硬化することにより本発明の液晶表示セルを得ることができる。このようにして得られた本発明の液晶表示セルは、液晶汚染による表示不良が無く、接着性、耐湿信頼性に優れたものである。スペーサとしては、例えばグラスファイバー、シリカビーズ、ポリマービーズ等があげられる。その直径は、目的に応じ異なるが、通常2〜8μm、好ましくは4〜7μmである。その使用量は、本発明の液晶シール剤100質量部に対し通常0.1〜4質量部、好ましくは0.5〜2質量部、更に、好ましくは0.9〜1.5質量部程度である。
【0042】
本発明の樹脂組成物は、柔軟性と低透湿性を両立するものである為、フレキシブル基板等が用いられ、かつ耐湿信頼性の要求される分野の接着剤用途の使用に非常に適するものである。例えば液晶シール剤、有機EL用封止剤、タッチパネル用接着剤である。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。尚、特別の記載のない限り、本文中「部」及び「%」とあるのは質量基準である。
【0044】
[合成例1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂の全アクリル化物の合成]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂282.5g(製品名:YD−8125、新日鉄化学株式会社製)をトルエン266.8gに溶解し、これに重合禁止剤としてジブチルヒドロキシトルエン0.8gを加え、60℃まで昇温した。その後、エポキシ基の100%当量のアクリル酸117.5gを加え更に80℃まで昇温し、これに反応触媒であるトリメチルアンモニウムクロライド0.6gを添加して、98℃で約30時間攪拌し、反応液を得た。この反応液を水洗し、トルエンを留去することにより、目的とするビスフェノールA型のエポキシアクリレート395gを得た。
【0045】
[合成例2:ビスフェノールA型エポキシ樹脂の全メタクリル化物の合成]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂282.5g(製品名:YD−8125、新日鉄化学株式会社製)をトルエン266.8gに溶解し、これに重合禁止剤としてジブチルヒドロキシトルエン0.8gを加え、60℃まで昇温した。その後、エポキシ基の100%当量のメタクリル酸140.6gを加え更に80℃まで昇温し、これに反応触媒であるトリメチルアンモニウムクロライド0.6gを添加して、98℃で約30時間攪拌し、反応液を得た。この反応液を水洗し、トルエンを留去することにより、目的とするビスフェノールA型のエポキシメタクリレート417gを得た。
【0046】
[合成例3:ビスフェノールA型エポキシ樹脂の部分メタクリル化物の合成]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂836g(日本化薬株式会社製RE−310S)をトルエン1000gに溶解し、これに重合禁止剤としてジブチルヒドロキシトルエン3gを加え、60℃まで昇温した。その後、エポキシ基の50%当量のメタクリル酸197gと反応触媒であるトリプロピルアンモニウムヒドロキシドの40%水溶液5gを添加して、98℃で約10時間攪拌し、反応液を得た。この反応液を水洗し、トルエンを留去することにより、目的とする部分メタクリル化ビスフェノールA型エポキシ樹脂1027gを得た。
【0047】
[合成例4:ビスフェノールA型エポキシ樹脂の部分アクリル化物の合成]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂836g(日本化薬株式会社製RE−310S)をトルエン1000gに溶解し、これに重合禁止剤としてジブチルヒドロキシトルエン3gを加え、60℃まで昇温した。その後、エポキシ基の50%当量のアクリル酸165g(株式会社日本触媒製)と反応触媒であるトリプロピルアンモニウムヒドロキシドの40%水溶液5gを添加して、98℃で約10時間攪拌し、反応液を得た。この反応液を水洗し、トルエンを留去することにより、目的とする部分アクリル化ビスフェノールA型エポキシ樹脂995gを得た。
【0048】
[合成例5:1,2−ビス(トリメチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタンの合成]
市販ベンゾピナコール(東京化成製)100部(0.28モル)をジメチルホルムアルデヒド350部に溶解させた。これに塩基触媒としてピリジン32部(0.4モル)、シリル化剤としてBSTFA(信越化学工業製)150部(0.58モル)を加え70℃まで昇温し、2時間攪拌した。得られた反応液を冷却し、攪拌しながら、水200部を入れ、生成物を沈殿させると共に未反応シリル化剤を失活させた。沈殿した生成物をろ別分離した後十分に水洗した。次いで得られた生成物をアセトンに溶解し、水を加えて再結晶させ、精製した。目的の1,2−ビス(トリメチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタンを105.6部(収率88.3%)得た。
【0049】
[実施例1〜12、比較例1、2]
下記表1に示す割合で成分(B)(成分(B−1)と(B−2)を用いる場合には、その混合物)に、成分(A)、成分(H)を90℃で加熱溶解させた後、室温まで冷却し、成分(C)、成分(D)、成分(E)、成分(F)、成分(G)、成分(I)を添加し、攪拌した後、3本ロールミルにて分散させ、金属メッシュ(635メッシュ)で濾過し、実施例1〜12を調製した。また、成分(A)を除いて、比較例1、2を調製した。
【0050】
[透湿度]
実施例及び比較例で製造した液晶シール剤について、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに挟み、厚み100μmの薄膜としたものに、メタルハライドランプ(ウシオ電機株式会社製)にて3000mJ/cm(100mW/cmで30秒)の紫外線を照射して硬化させた後、120℃のオーブンに40分間投入して硬化させた。その後、PETフィルムをはがしサンプルとした。サンプルの60℃90%での透湿度を透湿度測定機(Lessy社製:L80−5000)にて測定した。結果を表1と表2に示す。
【0051】
[屈曲性]
実施例及び比較例で製造した液晶シール剤について、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに挟み、厚み100μmの薄膜としたものに、メタルハライドランプ(ウシオ電機株式会社製)にて3000mJ/cm(100mW/cmで30秒)の紫外線を照射して硬化させた後、120℃のオーブンに40分間投入して硬化させた。その後、PETフィルムをはがしシール剤硬化膜を50mm×5mmの短冊状にカットしサンプル片とした。得られたサンプルを2mmΦの棒に巻き付け、10秒間固定した。試験片が割れていないものを○、試験片が割れたものを×として評価した。結果を表1と表2に示す。
【0052】
[ガラス転移温度(Tg)]
実施例及び比較例で製造した液晶シール剤について、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに挟み、厚み100μmの薄膜としたものに、メタルハライドランプ(ウシオ電機株式会社製)にて3000mJ/cm(100mW/cmで30秒)の紫外線を照射して硬化させた後、120℃のオーブンに40分間投入して硬化させた。その後、PETフィルムをはがしシール剤硬化膜を50mm×5mmの短冊状にカットしサンプル片とした。このサンプル片を動的粘弾性測定装置(DMS−6100:エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)の引っ張りモードにて周波数10Hz、昇温温度2℃/分の条件で測定を行った。損失弾性率と貯蔵弾性率との比(JIS K 7244−1)から損失係数Tanδが得られ、得られた損失係数Tanδが最大値となる温度をガラス転移温度(Tg)とした。結果を表1と表2に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【0056】
表1、表2に示されるように、実施例1〜12の樹脂組成物は、柔軟性が高く、それでいて透湿度も低い値を示している。従って、本発明の樹脂組成物は、フレキシブル基板等に使用される接着剤として、優れた特性を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の樹脂組成物は、柔軟性と低透湿性を両立できるものである為、電子部品用接着剤、特にディスプレイ用封止剤として有用である。