特許第6979332号(P6979332)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979332
(24)【登録日】2021年11月17日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】ティルティングパッド軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 17/03 20060101AFI20211202BHJP
【FI】
   F16C17/03
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-211141(P2017-211141)
(22)【出願日】2017年10月31日
(65)【公開番号】特開2019-82233(P2019-82233A)
(43)【公開日】2019年5月30日
【審査請求日】2020年10月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱パワー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】吉峰 千尋
(72)【発明者】
【氏名】篠原 種宏
(72)【発明者】
【氏名】鴫原 拓造
(72)【発明者】
【氏名】諫山 秀一
(72)【発明者】
【氏名】脇 勇一朗
【審査官】 前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−124062(JP,A)
【文献】 特表2013−536924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の外周面に対向して配置されたパッドと、
前記パッドを前記回転軸の軸線を中心とした径方向外側で支持するライナと、
前記ライナを、前記軸線を中心とした径方向外側、かつ、前記回転軸の軸線方向の中央位置で支持することで、前記パッドを揺動可能とするピボットと、
を備え、
前記ライナの前記パッドに対向する面の少なくとも前記中央位置に設けられて前記軸線を中心とした径方向外側に向かって凹む凹部と、前記パッドの前記ライナに対向する面の少なくとも前記中央位置に設けられて前記軸線を中心とした径方向内側に向かって凹む凹部との何れか一方を備え、
前記凹部は、前記軸線に直交する方向から見て、円弧状に形成されているティルティングパッド軸受。
【請求項2】
前記凹部は、前記軸線方向の前記中央位置に小凹部を備え、前記小凹部は、前記軸線に直交する方向から見て、前記凹部よりも小さな曲率半径を有する円弧状に形成されている請求項1に記載のティルティングパッド軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ティルティングパッド軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンやガスタービン等の回転機械では、回転軸の軸端を軸受によって支持することが一般的である。軸受は、荷重を支持する方向の違いによって、スラスト軸受とジャーナル軸受とに分けられる。スラスト軸受は、回転軸の軸線方向における荷重を支持する。ジャーナル軸受は、軸線の径方向における荷重を支持する。
特許文献1には、ジャーナル軸受が記載されている。この特許文献1に記載されたジャーナル軸受は、回転軸の周方向に配列された複数のパッドによって回転軸を支持する。そして、パッドと回転軸の外周面との間には潤滑油による油膜が形成されている。
ここで、パッド型軸受の中には、ティルティングパッド軸受と呼ばれるものがある。ティルティングパッド軸受では、ハウジングの内周面に設けられた尖頭状のピボットによって各パッドが揺動可能に支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−203481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されているようなジャーナル軸受において、軸受荷重が大きくなった場合、パッド表面とロータ表面との接触が生じる低速回転域では、ロータとパッドとの接触圧力の大部分がピボット付近に集中し、パッドのピボット付近に局所的な塑性流動等を生じる可能性がある。
【0005】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、パッド温度上昇及び局所的な塑性流動が生じることを抑制し、安定的に回転軸を支持することが可能なティルティングパッド軸受を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために以下の構成を採用する。
この発明の第一の態様によれば、ティルティングパッド軸受は、回転軸の外周面に対向して配置されたパッドと、前記パッドを前記回転軸の軸線を中心とした径方向外側で支持するライナと、前記ライナを、前記軸線を中心とした径方向外側、かつ、前記回転軸の軸線方向の中央位置で支持することで、前記パッドを揺動可能とするピボットと、を備え、前記ライナの前記パッドに対向する面の少なくとも前記中央位置に設けられて前記軸線を中心とした径方向外側に向かって凹む凹部と、前記パッドの前記ライナに対向する面の少なくとも前記中央位置に設けられて前記軸線を中心とした径方向内側に向かって凹む凹部との何れか一方を備え、前記凹部は、前記軸線に直交する方向から見て、円弧状に形成されている。
このように構成することで、パッドと対向するライナの面と、ライナと対向するパッドの面と、の何れか一方の中央位置に凹部が形成され、ライナとパッドとの間には隙間が形成される。即ち、凹部がライナに形成される場合、パッドに軸受荷重が作用すると、パッドのうち、凹部に隣接する部分は撓んで隙間内に入り込み、該当部位の径方向内側位置における接触圧力を低減することができる。同様に、凹部がパッドに形成される場合、パッドに軸受荷重が作用すると、凹部の形成されているパッドの中央位置が撓んで、隙間が減少するので、該当部位の径方向内側位置における接触圧力を低減することができる。これにより、パッドと回転軸との接触圧力の分布が、ピボットに支持される位置の近くのみに集中することを抑制し、接触圧力の分布を平均化することができる。したがって、パッド温度上昇及び局所的な塑性流動が生じることを抑制することができる。
【0007】
さらに、凹部内に角部が形成されていない。そのため、軸受荷重が高い条件下で、パッドが撓んでパッドと凹部の内面との接触、又はライナと凹部の内面との接触が生じた際に、局所的な角当たりを回避することができる。
【0008】
この発明の第の態様によれば、前記凹部は、前記軸線方向の中央位置に小凹部を備え、前記小凹部は、前記軸線に直交する方向から見て、前記凹部よりも小さな曲率半径を有する円弧状に形成されていてもよい。
このように構成することで、凹部内に小凹部が形成される。そのため、軸受荷重が大きい場合には、パッドの中央位置が、小凹部に向けて二段階に撓むことができる。これにより、パッドと回転軸との接触圧力の分布が、ピボットの付近のみに集中することをさらに抑制できる。したがって、パッド上における油膜の厚さをさらに一定に保つことができる。
【発明の効果】
【0009】
上記ティルティングパッド軸受によれば、パッド温度上昇及び局所的な塑性流動が生じることを抑制し、安定的に回転軸を支持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明の第一実施形態におけるティルティングパッド軸受を軸線方向から見た図である。
図2】この発明の第一実施形態におけるティルティングパッド軸受を、軸線を含む平面で見た断面図である。
図3】この発明の第一実施形態におけるティルティングパッド軸受のパッド上の軸線方向位置における圧力分布を示すグラフである。
図4】この発明の第二実施形態におけるティルティングパッド軸受の断面図である。
図5】この発明の第二実施形態におけるティルティングパッド軸受のパッド上の軸線方向位置における圧力分布を示すグラフである。
図6】この発明の第三実施形態における図2に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第一実施形態)
次に、この発明の第一実施形態におけるジャーナル軸受を図面に基づき説明する。
図1図2に示すように、この実施形態のティルティングパッド軸受100は、軸線A回りに回転する回転軸90の荷重を、軸線Aの径方向から支持するために用いられる。ティルティングパッド軸受100は、軸線Aを中心とする円環状のハウジング1と、回転軸90の外周面に沿って周方向に間隔をあけて配置された複数(例えば4つ)のパッド2と、各パッド2を径方向外側から支持するライナ3と、各ライナ3をハウジング1の内周面上で支持する複数(例えば4つ)のピボット4と、を備えている。
【0012】
回転軸90は、例えば蒸気タービンやガスタービン等のような回転機械のロータとして用いられるものである。この実施形態では、回転軸90は軸線Aを中心とする円柱状をなしている。回転軸90は、軸線A回りに回転する。
【0013】
パッド2は、回転軸90の外周面に沿って湾曲した板状をなしている。パッド2は、ホワイトメタル等の金属材料によって一体に形成されている。この実施形態では、4つのパッド2が、軸線Aの周方向に間隔をあけて配列されている。なお、パッド2の内周面と回転軸90の外周面との間には、不図示の給油装置によって潤滑油が供給される。この潤滑油は、パッド2と回転軸90との間に油膜を形成する。
【0014】
各パッド2は、ライナ3によって径方向外側から支持されている。図1に示すように、軸線A方向から見た場合、ライナ3は、パッド2と概ね同一の曲率半径を有する湾曲した板状をなしている。ライナ3は、ハウジング1の内周面に設けられたピボット4によって支持されている。ピボット4は、径方向内側の端部が例えば尖頭状等に形成されており、ライナ3を点支持している。これにより、ライナ3は、ピボット4の先端部を中心として揺動可能とされている。
【0015】
図2は、回転軸90及びティルティングパッド軸受100の、軸線Aを含む平面における断面図である。
図2に示すように、ライナ3は、パッド2の各面のうち、軸線Aに対する径方向外側を向く外側面2Aに形成された収容凹部5に収容されている。収容凹部5は、外側面2A上で、軸線Aに対する径方向内側に向かって角溝状に凹んでいる。軸線Aを含む平面における断面視で、収容凹部5の底面5Aは軸線Aと略平行に広がる平面状をなしている。軸線A方向におけるライナ3の寸法は、軸線A方向におけるパッド2の寸法よりも小さく、かつ軸線A方向における収容凹部5の寸法よりも僅かに小さい。ピボット4は、ライナ3の軸線A方向における中央位置で、ライナ3を径方向外側から支持している。
【0016】
ライナ3の内側面3A(即ち、パッド2と対向する面)には、パッド2から離れる方向に(言い換えれば、軸線Aを中心とした径方向外側に向かって)凹む凹部6が形成されている。この凹部6は、図2に示す軸線Aを含む断面視、すなわち軸線Aに直交する方向から見て、所定の曲率半径を有する円弧状の内面を有している。
【0017】
この実施形態で例示する凹部6は、軸線Aと直交する方向(図2の紙面表裏方向)の全ての位置で同一の曲率半径となる浅い丸溝状に形成されている。そして、このように形成されたライナ3における凹部6の軸線A方向両側の端面は、パッド2の外側面2A(収容凹部5の底面5A)と当接する当接部7となっている。
【0018】
ライナ3における凹部6の所定の曲率半径は、例えば、ライナ3の材質、ライナ3の形状、パッド2の形状、及び、パッド2に掛かる軸受荷重の最大値等に基づき、シミュレーション等で求めることができる。なお、軸線A方向における凹部6の寸法は、軸線A方向におけるライナ3の寸法に対して、1/2以上であり、さらに2/3以上としてもよい。
【0019】
したがって、第一実施形態によれば、パッド2と対向するライナ3の中央位置に凹部6が形成されている。そのため、ライナ3とパッド2との間には隙間が形成される。すなわち、ライナ3は、パッド2に付加される軸受荷重を、凹部6(隙間)を除く部分によって支持する。言い換えると、ライナ3のうち、凹部6に隣接する両側部がパッド2によって押される。そして、軸受荷重が大きい場合、パッド2は、軸線Aを中心とした径方向で、凹部6の隙間が狭くなる方向にわずかに撓む。そして、パッド2の撓みが大きくなり、この撓みによる収容凹部5の底面5Aの変位量が隙間より大きくなると、凹部6の内面が、パッド2の収容凹部5の底面5Aに接触してパッド2により押圧されるようになる。これにより、パッド2と回転軸90との接触圧力の分布が、ピボット4に支持される位置の付近のみ(言い換えれば、ピボット4に支持される位置の近く)に集中することが抑制され、パッド2に対する回転軸90の接触圧力の分布を平均化することができる。
【0020】
図3は、パッド2の軸線A方向における接触圧力の分布を示すグラフである。
図3において、実線は、この実施形態のようにライナ3に凹部6が形成されている場合の圧力分布を示し、破線はライナ3に凹部6が形成されていない場合の圧力分布を示している。
図3の破線で示すように、凹部6が形成されていない場合、軸受荷重が大きくなると、パッド2の圧力分布は、山形となり、ピボット4に支持された中央位置に接触圧力のピークが現れる。
【0021】
これに対してライナ3に凹部6が形成されている場合は、実線で示すように、軸受荷重が大きくなっても圧力分布のピーク値が、破線で示す凹部6が形成されていない場合よりも小さくなるとともに、ピークの数が1つから3つに増加する。即ち、接触圧力が中央位置等の局所に集中することなく圧力分布が平均化されている。
その結果、パッド温度上昇及び局所的な塑性流動が生じることを抑制することができる。
【0022】
さらに、凹部6内に角部が形成されていないことから、パッド2が撓んでパッド2と凹部6の内面との接触が生じた際に、局所的な角当たりを回避することができる。その結果、回転軸90の外周面とパッド2の内周面との局所的な接触面圧の急増を回避することができる。
【0023】
(第二実施形態)
次に、この発明の第二実施形態を図面に基づき説明する。なお、第二実施形態は、ライナ3の構成が第一実施形態と異なるだけである。そのため、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複する説明を省略する。
図4に示すように、この第二実施形態のティルティングパッド軸受200のライナ3には、凹部6が形成されている。そして、この凹部6内には、小凹部8が形成されている。小凹部8は、凹部6内で軸線A方向における中央位置に形成されている。
【0024】
小凹部8は、凹部6よりも小さな曲率半径を有している。なお、この実施形態では、小凹部8は、凹部6と同様に、軸線Aと直交する方向(図4の紙面表裏方向)の全ての位置で同一の曲率半径となる浅い丸溝状に形成されている。ここで、小凹部8の曲率半径は、凹部6のみ形成した場合の中央部に現れる圧力分布のピーク値に応じて設定すればよい。この小凹部8の曲率半径も、凹部6と同様に、パッド2、ライナ3の形状や材質等、種々の条件に基づいて例えば、シミュレーションにより求めることができる。
【0025】
したがって、第二実施形態によれば、凹部6内にさらに小凹部8が形成されていることから、軸受荷重が大きい場合に、パッド2を、軸線Aを中心とした径方向、すなわち、収容凹部5の底面5Aと凹部6の内面との隙間が狭くなる方向に撓ませることができる。そして、小凹部8が形成されていることで、凹部6の内面がパッド2と接触しても、小凹部8の内面がパッド2に接触しない状況を作り出すことができる。すなわち、凹部6のみが形成されている場合に比べて、小凹部8が形成されている分だけ、更に軸受荷重が大きい場合でも、ピボット4が配置される中央位置の荷重のピークを低減できる。これにより、パッド2と回転軸90との接触圧力の分布が、ピボット4の付近のみに集中することをさらに抑制できる。
【0026】
図5は、パッド2の軸線A方向における接触圧力の分布を示すグラフである。
図5において、実線はこの実施形態のようにライナ3に凹部6及び小凹部8が形成されている場合の圧力分布を示し、破線はライナ3に凹部6のみが形成されて小凹部8が形成されていない場合の圧力分布を示している。
【0027】
図5の実線で示すように、ライナ3に凹部6及び小凹部8が形成されている場合、破線で示す場合よりも圧力分布のピーク値が小さくなるとともに、ピークの数が3つから5つに増加する。即ち、接触圧力が中央位置等の局所に集中することなく圧力分布が平均化される。
その結果、パッド温度上昇及び局所的な塑性流動が生じることを更に抑制することができる。
【0028】
(第三実施形態)
次に、この発明の第三実施形態におけるジャーナル軸受を図面に基づき説明する。この第三実施形態のジャーナル軸受は、パッド側に凹部が形成されている点でのみ上述した第一実施形態と異なる。そのため、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複する説明を省略する。
【0029】
図6は、この発明の第三実施形態における図2に相当する断面図である。
図6に示すように、この第三実施形態におけるティルティングパッド軸受300は、ハウジング1と、パッド2と、ライナ3と、ピボット4と、を備えている。
ライナ3は、軸線Aを中心とした径方向の外側を向くパッド2の外側面2Aに形成された収容凹部5に収容されている。収容凹部5は、外側面2A上で、軸線Aに対する径方向内側に向かって角溝状に凹んでいる。ライナ3の内側面3A(即ち、パッド2と対向する面)は、軸線Aを含む平面における断面視で、軸線Aと略平行に広がる平面状をなしている。
軸線A方向におけるライナ3の寸法は、軸線A方向におけるパッド2の寸法よりも小さく、かつ軸線A方向における収容凹部5の寸法よりも僅かに小さい。
ピボット4は、ライナ3の軸線A方向における中央位置で、ライナ3を径方向外側から支持している。
【0030】
収容凹部5の底面5A(即ち、ライナ3の内側面3Aと対向する面)には、ライナ3から離れる方向に(言い換えれば、軸線Aを中心とした径方向内側に向かって)凹む凹部306が形成されている。この凹部306は、上述した第一実施形態の凹部6と同様に、図6に示す軸線Aを含む断面視、すなわち軸線Aに直交する方向から見て、所定の曲率半径を有する円弧状の内面を有している。
【0031】
この実施形態で例示する凹部306は、軸線Aと直交する方向(図6の紙面表裏方向)の全ての位置で同一の曲率半径となる浅い丸溝状に形成されている。そして、このように形成されたパッド2における凹部306の軸線A方向両側の端面(収容凹部5の底面5A)は、ライナ3の内側面3Aと当接する当接部307となっている。
【0032】
第一実施形態と同様に、パッド2における凹部306の所定の曲率半径は、例えば、パッド2の材質、ライナ3の形状、パッド2の形状、及び、パッド2に掛かる軸受荷重の最大値等に基づき、シミュレーション等で求めることができる。なお、軸線A方向における凹部306の寸法は、軸線A方向におけるライナ3の寸法に対して、1/2以上であり、さらに2/3以上としてもよい。
【0033】
第三実施形態によれば、ライナ3と対向するパッド2の中央位置に凹部306が形成されている。そのため、ライナ3とパッド2との間には隙間が形成される。すなわち、ライナ3は、パッド2に付加される軸受荷重を、凹部306(隙間)を除く部分によって支持する。言い換えると、ライナ3のうち、凹部306に隣接する両側部がパッド2によって押される。そして、軸受荷重が大きい場合、パッド2は、軸線Aを中心とした径方向で、凹部306の隙間が狭くなる方向にわずかに撓む。そして、パッド2の撓みが大きくなり、この撓みによる凹部306の内面306Aの変位量が隙間より大きくなると、凹部306の内面306Aが、ライナ3の内側面3Aに接触してライナ3を押圧するようになる。これにより、パッド2と回転軸90との接触圧力の分布が、ピボット4に支持される位置の付近のみ(言い換えれば、ピボット4に支持される位置の近く)に集中することが抑制され、パッド2に対する回転軸90の接触圧力の分布を平均化することができる。
【0034】
なお、上述した第二実施形態と同様に、第三実施形態の凹部306の内部に、軸線Aに直交する方向から見て、凹部306よりも小さな曲率半径を有する円弧状に形成された小凹部308(図6中、破線で示す)を形成するようにしても良い。
【0035】
この発明は上述した各実施形態の構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。
例えば、上述した各実施形態では、パッド2が4つ設けられる構成について説明した。しかしながら、パッド2の個数は4つに限定されず、4つ以下や、5つ以上であってもよい。
【0036】
さらに、上述した第二実施形態では、凹部6内に1つのみの小凹部8が形成されている例について説明した。しかしながら、小凹部8内にさらに他の小さな凹みを重ねて形成することも可能である。このような構成によれば、これら凹部6、小凹部8、及び、他の小さな凹みを形成する数に応じて圧力分布のピークの数を増加させることができる。これにより、パッド2と回転軸90との接触圧力を分散させて、ピボット4の付近のみに接触圧力が集中することをさらに低減することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 ハウジング
2 パッド
2A 外側面
3 ライナ
3A 内側面
4 ピボット
5 収容凹部
5A 底面
6,306 凹部
306A 内面
7 当接部
8,308 小凹部
90 回転軸
100,200,300 ティルティングパッド軸受
A 軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6