【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26〜29年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「水素利用等先導研究開発事業/大規模水素利用技術の研究開発/水素専焼対応型Dry Low NOx高温ガスタービンの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の燃料噴射器では、下流側プレートにおいて、付着火炎が発生する可能性がある。このため、下流側プレートを冷却する必要がある。そして、下流側プレートの冷却を効率良く行うことが望まれている。
【0007】
そこで、本発明は、下流側プレートを効率良く冷却することの可能な燃料噴射器、燃焼器、及びガスタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係る燃料噴射器は、上流側プレートと、前記上流側プレートの下流側に設けられ、該上流側プレートに対して対向配置された下流側プレートと、上流側及び下流側が開放端とされた筒状をなしており、上流側の開放端に配置された前記上流側プレート、及び下流側の開放端に配置された下流側プレートとともに内部にプレナムを区画する筒状部材と、前記プレナムに燃料ガスを導入する燃料チューブと、前記上流側プレート、前記下流側プレート、及び前記プレナムを貫くように延びる管状をなし、上流側及び下流側が開放端とされており、前記プレナム内に供給された前記燃料ガスを内側に導入する燃料孔を有し、前記燃料ガスと上流側の開放端から導入された空気とを混合する予混合チューブと、前記下流側プレートに冷却空気を導入する冷却空気導入管と、を備え、前記下流側プレートは、前記冷却空気導入管からの前記冷却空気が導入される空気導入部と、該空気導入部から前記下流側プレートの面に沿う方向に向かって、前記予混合チューブを避けるように延びる
複数の冷却流路と、を有
し、前記下流側プレートは、前記上流側プレートと対向する第1の面を有する第1のプレート部と、前記第1のプレート部の上流側に配置され、前記第1の面に対して接合される第2の面、及び前記冷却流路を有する第2のプレート部と、を備え、前記複数の冷却流路は、前記第2のプレート部のみに形成されるとともに、前記第2の面から前記上流側プレート側に凹んだ複数の溝である。
【0009】
本発明によれば、高温となる下流側プレートに冷却空気が流れる冷却流路を設けることで、冷却空気で直接下流側プレートを冷却することが可能となる。これにより、下流側プレートの外側から冷却空気を吹き付ける場合と比較して、少ない量の冷却空気を用いて効率良く下流側プレートを冷却させることができる。
【0010】
また、下流側プレートに、冷却空気導入管からの冷却空気が導入される空気導入部を設けることで、冷却空気用のプレナムを設ける必要が無くなり、燃料ガス用のプレナムのみを設ければよいため、燃料噴射器の構造を簡略化させることができる。
【0011】
また、本発明の一態様に係る燃料噴射器において、前記下流側プレートは、前記上流側プレートと対向する第1の面を有する第1のプレート部と、前記第1のプレート部の上流側に配置され、前記第1の面に対して接合される第2の面、及び前記冷却流路を有する第2のプレート部と、を備えてもよい。
【0012】
このように、付着火炎が形成される可能性のある第1のプレート部ではなく、第1のプレート部の上流側に配置された第2のプレート部に冷却流路を形成することで、第2のプレート部よりも高温になりやすい第1のプレート部の厚さを薄くすることが可能となる。
これにより、冷却流路内を流れる冷却空気を用いて、厚さの薄い第1のプレート部を効率良く冷却することができる。
【0013】
また、本発明の一態様に係る燃料噴射器において、前記冷却流路は、前記第2の面から前記上流側プレート側に凹んだ溝であってもよい。
【0014】
このような構成とすることで、冷却流路を流れる冷却空気の一部を、第1のプレート部の第1の面に直接接触させることが可能となるので、第2のプレート部に冷却流路を内設させた場合と比較して、第1のプレート部を効率良く冷却することができる。
【0015】
また、本発明の一態様に係る燃料噴射器において、前記第1のプレート部は、前記溝と対向する部分を貫通する貫通孔を有してもよい。
【0016】
このような構成とされた貫通孔を有することで、貫通孔を流れる冷却空気により第1のプレート部の内部から第1のプレート部を冷却させることが可能になるとともに、貫通孔から吐出された冷却空気により、第1の面の反対側に配置された第1のプレートの面を冷却させることが可能となるので、第1のプレート部を非常に効率良く冷却させることができる。
【0017】
また、本発明の一態様に係る燃料噴射器において、前記筒状部材は、前記下流側プレートを通過した前記冷却空気を前記上流側プレートよりも上流側に排気するための排気経路を有してもよい。
【0018】
このような構成とされた排気経路を有することで、排気経路から排気された冷却空気を予混合チューブ内に導入される空気として再利用することができる。
さらに、本発明の一態様に係る燃料噴射器において、前記空気導入部は、前記第2の面側から前記第2のプレート部に形成された凹部であり、前記冷却空気導入管の下流側端部と接続されるとともに、前記複数の冷却流路に前記冷却流路を分配する分配部に接続されていてもよい。
【0019】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係る燃焼器は、上記燃料噴射器と、前記燃料噴射器を収容するとともに、前記燃料噴射器から噴射された燃料ガスと空気とが混合されたガスを燃焼させて、燃焼ガスを生成する燃焼筒と、を有する。
【0020】
本発明によれば、上記燃料噴射器を有することで、下流側プレートを効率良く冷却することができるとともに、安定して燃焼器を稼働させることができる。
【0021】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係るガスタービンは、上記燃焼器と、圧縮空気を生成するとともに、前記燃料噴射器に前記空気として前記圧縮空気を供給する圧縮機と、前記圧縮機により生成された前記圧縮空気を抽気する抽気部と、前記抽気部により抽気された圧縮空気をさらに圧縮して、冷却空気を生成する強制空冷圧縮機と、前記強制空冷圧縮機が生成した前記冷却空気を前記燃焼器に導入する冷却空気導入ラインと、を備える。
【0022】
本発明によれば、上記燃焼器を有することで、下流側プレートを効率良く冷却することができるとともに、安定してガスタービンを稼働させることができる。
また、強制空冷圧縮機を有することで、抽気部により抽気された圧縮空気をさらに圧縮することが可能となる。これにより、抽気した圧縮空気よりも高い圧力とされた冷却空気を燃焼器に供給することができる。
さらに、強制空冷圧縮機を有することで、冷却流路の断面積を小さくすることができる。
【0023】
また、本発明の一態様に係るガスタービンにおいて、前記抽気部により抽気された圧縮空気を冷却するクーラを備えてもよい。
【0024】
このような構成とされたクーラを有することで、圧縮空気を冷却することが可能となる。これにより、抽気した圧縮空気よりも温度の低い冷却空気を燃焼器に供給することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、下流側プレートを効率良く冷却することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明を適用した実施形態について詳細に説明する。
【0028】
(実施形態)
図1を参照して、本実施形態のガスタービン10について説明する。
図1では、ガスタービン10の構成要素ではない発電機5を図示する。
図1では、説明の便宜上、圧縮機11、タービン12、中間車室13、及び燃焼器15を断面で図示する。
また、
図1において、Aは圧縮空気(以下、「圧縮空気A」という)、Aoは外気(以下、「外気Ao」という)、Axは圧縮機11及びタービン12の軸線(以下、「軸線Ax」という)、CAは冷却空気(以下、「冷却空気CA」という)、Fは燃料ガス(以下、「燃料ガスF」という)、Gは燃焼ガス(以下、「燃焼ガスG」という)をそれぞれ示している。
【0029】
ガスタービン10は、圧縮機11と、タービン12と、中間車室13と、複数の燃焼器15と、冷却装置17と、を備える。
【0030】
圧縮機11は、圧縮機ロータ21と、圧縮機車室23と、複数の圧縮機静翼列25と、を有している。
【0031】
圧縮機ロータ21は、軸線Ax周りに回転する。圧縮機ロータ21は、圧縮機ロータ軸27と、複数の圧縮機動翼列28と、を有している。
【0032】
圧縮機ロータ軸27は、軸線Ax方向に延在しており、軸線が軸線Axと一致している。
複数の圧縮機動翼列28は、圧縮機ロータ軸27の外周面に設けられている。複数の圧縮機動翼列28は、軸線Ax方向に間隔を空けて配列されている。
複数の圧縮機動翼列28は、圧縮機ロータ軸27の周方向に配列された複数の動翼で構成される。
【0033】
上記構成とされた圧縮機11は、圧縮機ロータ21が回転した状態で、外部から取り込んだ外気Ao(例えば、空気)を複数の圧縮機静翼列25と圧縮機動翼列28との間に形成された空間を通過させることで、圧縮空気Aを生成する。生成された圧縮空気Aは、中間車室13内に供給される。
【0034】
圧縮機車室23は、筒状とされており、圧縮機ロータ21を収容している。
複数の圧縮機静翼列25は、圧縮機車室23の内側に固定されている。圧縮機静翼列25は、各圧縮機動翼列28の各下流側にそれぞれ配置されている。複数の圧縮機静翼列25は、それぞれ圧縮機車室23の周方向に配列された複数の静翼で構成されている。
【0035】
タービン12は、タービンロータ31と、タービン車室33と、複数のタービン静翼列35と、を有している。
【0036】
タービンロータ31は、タービンロータ軸37と、複数のタービン動翼列38と、を有する。
タービンロータ軸37は、軸線Ax方向に延在しており、軸線Ax周りに回転する。タービンロータ軸37の一方の端部は、発電機5のロータと接続されている。
【0037】
複数のタービン動翼列38は、タービンロータ軸37の外周面に設けられている。複数のタービン動翼列38は、軸線Ax方向に間隔を空けた状態で配列されている。
複数のタービン動翼列38は、それぞれタービンロータ軸37の周方向に配列された複数の動翼で構成される。
【0038】
上記構成とされたタービンロータ31は、軸線Ax方向において、先に説明した圧縮機ロータ21と連結されている。これにより、タービンロータ31及び圧縮機ロータ21は、一体に回転する。タービンロータ31及び圧縮機ロータ21は、ガスタービンロータ42を構成している。
【0039】
タービン車室33は、筒状とされており、タービンロータ31を収容している。
【0040】
複数のタービン静翼列35は、タービン車室33の内側に設けられている。タービン静翼列35は、各タービン動翼列38の上流側に配置されている。
複数のタービン静翼列35は、それぞれタービン車室33の周方向に配列された複数の静翼で構成されている。
【0041】
上記構成とされたタービン12には、後述する燃焼器15で生成された燃焼ガスGが供給される。そして、燃焼ガスGがタービン静翼列35とタービン動翼列38との間に形成された空間を通過することで、タービンロータ軸37が回転駆動される。
これにより、ガスタービンロータ42に連結された発電機5に回転動力が付与され、発電が行われる。
【0042】
中間車室13は、圧縮機車室23とタービン車室33との間に設けられている。中間車室13は、軸線Ax方向に延在する筒状の部材である。中間車室13の軸線Ax方向上流側の端は、圧縮機車室23と接続されている。中間車室13の軸線Ax方向下流側の端は、タービン車室33と接続されている。
【0043】
次に、
図1〜
図6を参照して、燃料噴射器50について説明する。
図2では、
図1に示す構造体と同一構成部分には同一符号を付す。また、
図2において、I,J,Mは領域(以下、それぞれ「領域I」、「領域J」、「領域M」という)、Lは燃料噴射器50の中心軸(以下、「中心軸L」という)、X方向は中心軸Lの延在方向をそれぞれ示している。
さらに、
図2において、下流側プレート59の近傍に付した矢印は、圧縮空気Aと燃料ガスFとが混合されたガスが噴き出す様子を模式的に示している。
【0044】
図3において、
図2に示す構造体と同一構成部分には同一符号を付す。
図4において、
図2及び
図3に示す構造体と同一構成部分には同一符号を付す。
図5において、
図2及び
図4に示す構造体と同一構成部分には同一符号を付す。
図6において、
図2〜
図4に示す構造体と同一構成部分には同一符号を付す。
【0045】
燃焼器15は、外筒49と、燃料噴射器50と、燃焼筒52と、ばね部材55と、を有する。
【0046】
外筒49は、両端が開放端とされた筒状の部材である。外筒49は、一部が中間車室13内に配置された状態で中間車室13に複数設けられている。複数の外筒49は、互いの間隔を空けた状態で軸線Ax周りに配列されている。
【0047】
外筒49は、燃料噴射器50から噴射される圧縮空気Aと燃料ガスFとが混合されたガス(混合ガス)を燃焼させることで、高温・高圧の燃焼ガスGを生成する。
外筒49の出口側は、タービン車室33と接続されている。外筒49は、生成した燃焼ガスGをタービン車室33内へ供給する。
【0048】
燃料噴射器50は、外筒49内に収容されており、上流側プレート58と、下流側プレート59と、筒状部材62と、燃料チューブ64と、予混合チューブ65と、冷却空気導入管68と、を有する。
【0049】
上流側プレート58は、プレート本体71と、燃料チューブ挿入孔73と、予混合チューブ挿入孔75と、を有する。
【0050】
プレート本体71は、板状の部材であり、上流側に位置する筒状部材62の内側に配置されている。プレート本体71の外周面は、筒状部材62の内周面と接続されている。プレート本体71としては、例えば、円形の金属製の板材を用いることができる。
【0051】
燃料チューブ挿入孔73は、プレート本体71の中央部をX方向に貫通するように形成されている。燃料チューブ挿入孔73は、燃料チューブ64の先端部が挿入される孔である。
【0052】
予混合チューブ挿入孔75は、燃料チューブ挿入孔73の外側に位置するプレート本体71に複数設けられている。予混合チューブ挿入孔75は、プレート本体71をX方向に貫通している。予混合チューブ挿入孔75は、予混合チューブ65の上流側端部が挿入される孔である。予混合チューブ挿入孔75には、予混合チューブ65の上流側端部が挿入された状態で、圧縮空気Aが導入される。
【0053】
下流側プレート59は、上流側プレート58の下流側に位置する筒状部材62の内側に配置されており、上流側プレート58及び筒状部材62とともにプレナム60を区画している。
下流側プレート59は、第1のプレート部83と、第2のプレート部84と、予混合チューブ挿入孔85と、空気導入部86と、分配部88と、冷却流路91と、を有する。
【0054】
第1のプレート部83は、板状の部材であり、上流側プレート58の下流側に位置する筒状部材62の内側に配置されている。第1のプレート部83の外周面は、筒状部材62の内周面と接続されている。
【0055】
第1のプレート部83は、X方向において上流側プレート58と対向する第1の面83aと、第1の面83aの反対側に配置された面83bと、を有する。
第1のプレート部83の面83bは、付着火炎が発生する可能性のある面である。このため、第1のプレート部83の面83b側は、第1の面83a側よりも高温となりやすい。
第1のプレート部83としては、例えば、円形の金属製の板材を用いることができる。
【0056】
第2のプレート部84は、板状の部材であり、第1のプレート部83の上流側に位置する筒状部材62の内側に設けられている。第2のプレート部84は、第1の面83aと接触するように配置されている。第2のプレート部84は、第1の面83aに対して接合されている。
【0057】
第2のプレート部84は、第1の面83aと接合される第2の面84aと、第2の面84aの反対側に配置された面84bと、を有する。面84bは、X方向下流側に位置するプレナム60の端を区画している。
上述したように、第2のプレート部84の下流側には第1のプレート部83が配置されている。このため、第2のプレート部84は、第1のプレート部83の温度よりも低い温度となる。
【0058】
予混合チューブ挿入孔85は、第1及び第2のプレート部83,84をX方向に貫通するように複数形成されている。複数の予混合チューブ挿入孔85は、それぞれX方向に配置された1つの予混合チューブ挿入孔75と対向する位置に配置されている。
予混合チューブ挿入孔85は、予混合チューブ65の下流側端部が挿入される孔である。
【0059】
空気導入部86は、第2の面84a側から第2のプレート部84に形成された凹部であり、冷却空気導入管68の下流側端部と接続されている。空気導入部86は、各セクター90に設けられた分配部88と接続されている。
【0060】
このような構成とされた空気導入部86を有することで、冷却空気用のプレナムを設ける必要が無くなり、燃料ガス用のプレナム60のみを設ければよいため、燃料噴射器50の構造を簡略化させることができる。
【0061】
分配部88は、第2の面84a側から第2のプレート部84に形成された凹部であり、複数の冷却流路91と連通している。
分配部88は、冷却空気導入管68から導入された冷却空気CAを複数の冷却流路91に分配する機能を有する。
【0062】
冷却流路91は、第2のプレート部84に複数形成されている。冷却流路91としては、例えば、第2の面84aから上流側プレート58側に凹んだ溝92を用いることが可能である。
冷却流路91には、分配部88で分配された冷却空気CAが流れる。冷却流路91を流れる冷却空気CAは、第1及び第2のプレート部83,84を冷却するための空気である。冷却流路91は、下流側プレート59の面(第1の面83a)に沿う方向に向かって、予混合チューブ65を避けて延びるように配置されている。
【0063】
なお、本実施形態において、「予混合チューブ65を避けて延びる」とは、
図7及び
図8に示すように、直線状に冷却流路91を配置させて予混合チューブ65を避ける場合や、ジクザグに冷却流路91を配置させて予混合チューブ65を避ける場合等を含む。
図7及び
図8では、
図5に示す構造体と同一構成部分には同一符号を付す。
【0064】
このように、高温となる下流側プレート59に冷却空気CAが流れる冷却流路91を設けることで、冷却空気CAで直接下流側プレート59を冷却することが可能となる。これにより、下流側プレート59の外側から冷却空気CAを吹き付ける場合と比較して、少ない量の冷却空気CAを用いて効率良く下流側プレート59を冷却させることができる。
【0065】
また、付着火炎が形成される可能性のある第1のプレート部83ではなく、第1のプレート部83の上流側に配置された第2のプレート部84に冷却流路91を形成することで、第2のプレート部84よりも高温になりやすい第1のプレート部83の厚さを薄くすることが可能となる。
これにより、冷却流路91内を流れる冷却空気CAを用いて、厚さの薄い第1のプレート部83を効率良く冷却することができる。
【0066】
さらに、冷却流路91として、第2の面84aから上流側プレート58側に凹んだ溝92を用いることで、冷却流路91を流れる冷却空気CAの一部を、第1のプレート部83の第1の面83aに直接接触させることが可能となるので、第2のプレート部84に冷却流路91を内設させた場合と比較して、第1のプレート部83を効率良く冷却することができる。
【0067】
筒状部材62は、X方向の上流側及び下流側が開放端とされた筒状の金属製の部材である。筒状部材62は、第1及び第2のプレート部83,84を収容するとともに、第1及び第2のプレート部83,84とともにプレナム60を区画するための部材である。
【0068】
筒状部材62は、下流側プレート59に形成された冷却流路91と接続され、冷却流路91から導出された冷却空気CAを上流側プレート58よりも上流側に形成された外筒内空間に排気するための排気経路62Aを有する。
【0069】
このような構成とされた排気経路62Aを有することで、排気経路62Aから排気された冷却空気CAを予混合チューブ65内に導入される空気として再利用することができる。
【0070】
燃料チューブ64は、X方向に延在しており、先端部が燃料チューブ挿入孔73に挿入された状態で、上流側プレート58に接合されている。燃料チューブ64は、プレナム60に燃料ガスを供給する。
【0071】
予混合チューブ65は、上流側及び下流側が開放端とされた管状のチューブである。予混合チューブ65は、上流側プレート58、下流側プレート59、及びプレナム60をX方向に貫くように設けられている。
予混合チューブ65の上流側の端部は、予混合チューブ挿入孔75に配置されており、予混合チューブ挿入孔75を区画するプレート本体71と接合されている。
予混合チューブ65の下流側の端部は、予混合チューブ挿入孔85に配置されており、予混合チューブ挿入孔85を区画する第1及び第2のプレート部83,84と接合されている。
【0072】
予混合チューブ65は、プレナム60に導入された燃料ガスFを予混合チューブ65内に導くための燃料孔65Aを有する。燃料孔65Aから予混合チューブ65内に導入された燃料ガスFは、予混合チューブ65内において、圧縮空気Aと混合される。
【0073】
冷却空気導入管68は、下流側の端部が第2のプレート部84と接続された状態で、燃料チューブ64内及びプレナム60に配置されている。冷却空気導入管68は、空気導入部86に冷却空気CAを導入させる。
【0074】
本実施形態の燃料噴射器50によれば、高温となる下流側プレート59に冷却空気CAが流れる冷却流路91を設けることで、冷却空気CAで直接下流側プレート59を冷却することが可能となる。これにより、下流側プレート59の外側から冷却空気CAを吹き付ける場合と比較して、少ない量の冷却空気CAを用いて効率良く下流側プレート59を冷却させることができる。
【0075】
また、下流側プレート59に、冷却空気導入管68からの冷却空気CAが導入される空気導入部86を有することで、冷却空気用のプレナムを設ける必要が無くなり、燃料ガス用のプレナム60のみを設ければよいため、燃料噴射器50の構造を簡略化させることができる。
【0076】
ここで、
図9〜
図12を参照して、下流側プレート59の形成方法、及び下流側プレート59への予混合チューブ65の接合方法について説明する。
図9〜
図12において、
図4に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0077】
初めに、
図9に示す工程では、第2のプレート部84の第2の面84a側から溝92を加工することで、冷却流路91を形成する。
【0078】
次いで、
図10に示す工程では、第2のプレート部84の第2の面84aと第1のプレート部83の第1の面83aとが接触するように、第2のプレート部84と第1のプレート部83とを接合させる。接合方法としては、例えば、ろう付けを用いることができる。
【0079】
次いで、
図11に示す工程では、第1及び第2のプレート部83,84を貫通する予混合チューブ挿入孔85を形成する。
なお、図示していないが、
図11に示す工程において、空気導入部86、及び分配部88を予混合チューブ挿入孔85とともに一括形成してもよい。
【0080】
次いで、
図12に示す工程では、予混合チューブ挿入孔85に予混合チューブ65の下流側端部を挿入した状態で、溶接により、下流側プレート59に予混合チューブ挿入孔85を固定する。
【0081】
次に、
図2を参照して、燃焼筒52及びばね部材55について説明する。
燃焼筒52は、筒状とされた部材であり、隙間を介在させた状態で燃料噴射器50の下流側を収容している。
ばね部材55は、燃料噴射器50の外周面と燃焼筒52の内周面との間に配置されている。
燃料噴射器50は、燃焼筒52及びばね部材55により、外筒49内の位置が規制されている。
【0082】
次に、
図1を参照して、冷却装置17について説明する。
冷却装置17は、燃焼器15へ供給される圧縮空気Aの一部を抽気し、再び圧縮させた後に、燃料噴射器50に供給するための装置である。
冷却装置17は、抽気部101と、クーラ103と、強制空冷圧縮機104と、アンチサージ弁105と、冷却空気導入ライン106と、を有する。
【0083】
抽気部101は、中間車室13に設けられている。抽気部101は、中間車室13に導入された圧縮空気Aを抽気する。抽気された圧縮空気Aは、クーラ103に供給される。
クーラ103は、抽気された圧縮空気Aを冷却する。クーラ103により冷却された圧縮空気Aは、強制空冷圧縮機104に供給される。
【0084】
このような構成とされたクーラ103を有することで、圧縮空気Aを冷却することが可能となる。これにより、抽気した圧縮空気Aよりも温度の低い冷却空気CAを燃焼器15に供給することができる。
【0085】
強制空冷圧縮機104は、クーラ103によって冷却された圧縮空気Aを更に圧縮させることで、冷却空気CAを生成する。強制空冷圧縮機104により生成された冷却空気CAは、冷却空気導入ライン106に導出される。
【0086】
アンチサージ弁105は、強制空冷圧縮機104のサージを防止する。
冷却空気導入ライン106は、
図2に示す冷却空気導入管68と接続されている。冷却空気導入ライン106は、冷却空気導入管68に冷却空気CAを導入させる。
【0087】
なお、冷却空気CAは、ガスタービン10の他の冷却対象、例えば、静翼に供給してもよい。
【0088】
上述した冷却装置17が強制空冷圧縮機104を有することで、抽気部101から抽気された圧縮空気Aをさらに圧縮することが可能となる。これにより、抽気した圧縮空気Aよりも高い圧力とされた冷却空気CAを燃焼器15に供給することができる。
また、強制空冷圧縮機104を有することで、冷却流路91の断面積を小さくすることができる。
【0089】
また、
図2では、一例として、1基のガスタービン10に対して1系統の冷却装置17を設けた場合を例に挙げて説明したが、1基のガスタービン10に対して複数系統の冷却装置17を設けてもよい。
【0090】
上述した本実施形態のガスタービン10によれば、上記燃焼器15を有することで、下流側プレート59を効率良く冷却することができるとともに、安定してガスタービン10を稼働させることができる。
【0091】
次に、
図13を参照して、本実施形態の第1変形例に係る燃料噴射器110について説明する。
図13では、燃料噴射器110の一部を拡大した状態で図示する。
図13において、
図12に示す構造体と同一構成部分には同一符号を付す。
【0092】
燃料噴射器120は、第1のプレート部83のうち、溝92と対向する部分を貫通する貫通孔111を有すること以外は、本実施形態の燃料噴射器50と同様に構成されている。
【0093】
このような構成とされた貫通孔111を有することで、貫通孔111を流れる冷却空気CAにより第1のプレート部83の内部から第1のプレート部83を冷却させることが可能になるとともに、貫通孔111から吐出された冷却空気CAにより、第1のプレート部83の面83bを冷却させることが可能となる。これにより、第1のプレート部83を非常に効率良く冷却させることができる。
【0094】
次に、図14を参照して、本実施形態の第2変形例に係る燃料噴射器120について説明する。図14では、燃料噴射器120の一部を拡大した状態で図示する。図14において、図12に示す構造体と同一構成部分には同一符号を付す。
【0095】
燃料噴射器110は、第2のプレート部84よりも第1のプレート部83の厚さを厚くするとともに、第1のプレート部83に冷却流路91(溝92)を設けたこと以外は、本実施形態の燃料噴射器50と同様に構成されている。このように、第1のプレート部83に冷却流路91(溝92)を設けてもよい。
【0096】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0097】
なお、上記実施形態では、一例として、圧縮機11が圧縮した圧縮空気Aを、冷却装置17を経由させた後、燃料噴射器50,110,120に冷却空気CAとして供給する場合を例に挙げて説明したが、圧縮機11が圧縮した圧縮空気Aを、冷却装置17を経由させないで、冷却空気CAとして燃料噴射器50,110,120に供給してもよい。