特許第6979355号(P6979355)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6979355ポリフェニレンスルフィド及びポリアミドグラフト化ポリオレフィン製の熱可塑性組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979355
(24)【登録日】2021年11月17日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】ポリフェニレンスルフィド及びポリアミドグラフト化ポリオレフィン製の熱可塑性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 81/04 20060101AFI20211202BHJP
   C08G 81/02 20060101ALI20211202BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20211202BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   C08L81/04
   C08G81/02
   C08L23/26
   C08L77/00
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-529744(P2017-529744)
(86)(22)【出願日】2015年11月24日
(65)【公表番号】特表2018-501345(P2018-501345A)
(43)【公表日】2018年1月18日
(86)【国際出願番号】FR2015053184
(87)【国際公開番号】WO2016087746
(87)【国際公開日】20160609
【審査請求日】2017年7月26日
【審判番号】不服2019-17149(P2019-17149/J1)
【審判請求日】2019年12月19日
(31)【優先権主張番号】1461842
(32)【優先日】2014年12月3日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】有浦 芙美
(72)【発明者】
【氏名】サバード, マチュー
(72)【発明者】
【氏名】ジュセ, ドミニク
【合議体】
【審判長】 佐藤 健史
【審判官】 杉江 渉
【審判官】 橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−59757(JP,A)
【文献】 特開2005−35576(JP,A)
【文献】 特表2004−510865(JP,A)
【文献】 特表2013−542293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 81/00- 81/10
C08L 23/00- 23/36
C08G 81/00- 85/00
C08L 77/00- 77/12
B32B 1/00- 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーの混合物からなる熱可塑性組成物であって、
・ 混合物の80重量%−95重量%で存在するポリフェニレンスルフィドからなる第1のポリマー、
・ 混合物の5重量%−20重量%で存在する熱可塑性修飾剤、
・ 任意選択的に、混合物の最大10重量%、好ましくは混合物の最大5重量%で存在する、1種又は複数の機能性補助剤
からなる熱可塑性組成物において、
熱可塑性修飾剤は、少なくとも1つの不飽和モノマー(X)を含有するポリオレフィン骨格及び複数のポリアミドグラフトからなる第2のポリマーを含み、ポリアミドグラフトは、少なくとも1つのアミン末端及び/又は少なくとも1つのカルボン酸末端を有するポリアミドと縮合反応により反応し得る官能基を含む不飽和モノマー(X)の残基によりポリオレフィン骨格に結合しており、不飽和モノマー(X)の残基は、グラフト化又は共重合により骨格に結合していることと、
第2のポリマーに関して、上記ポリアミドグラフトの数平均分子量が1000−10000g/mol、好ましくは1000−5000g/molの範囲内に含まれることと
を特徴とする、熱可塑性組成物。
【請求項2】
熱可塑性修飾剤が、少なくとも1つのエポキシ及び/又はマレイン酸無水物の官能基を含む少なくとも1種の官能化ポリオレフィンを好ましくは含む1種又は複数のポリオレフィンからなる、第3のポリマーを更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
第2及び第3のポリマーが各々、熱可塑性修飾剤中に、前記熱可塑性修飾剤の5重量%−95重量%、理想的には20−80重量%、好ましくは40重量%−60重量%で存在する(ここで、これら2つのポリマーの合計は、熱可塑性修飾剤の100%を構成する)ことを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
熱可塑性修飾剤が上記第2及び第3のポリマーからなることを特徴とする、請求項2又は3に記載の組成物。
【請求項5】
熱可塑性修飾剤が上記混合物の10重量%−20重量%に相当することを特徴とする、請求項1から4の何れか一項に記載の組成物。
【請求項6】
上記グラフトポリマー、即ち上記第2のポリマーがナノ構造化されていることを特徴とする、請求項1から5の何れか一項に記載の組成物。
【請求項7】
第2のポリマーに関して、ポリアミドグラフトが少なくとも1種のコポリアミド例えば6/12モノNH、又は単官能性NHポリアミド6若しくは単官能性NHポリアミド11を単独で、又は混合物で含むことを特徴とする、請求項1から6の何れか一項に記載の組成物。
【請求項8】
機能性補助剤が1種又は複数の可塑剤、接着促進剤、UV安定剤及び/又はUV吸収剤、酸化防止剤、難燃剤、染料/光学的光沢剤、顔料並びに補強充填剤からなることを特徴とする、請求項1から7の何れか一項に記載の組成物。
【請求項9】
特にケーブル又は管のコーティングの複数の隣接層を含む多層構造物において、これらの層の少なくとも1つが請求項1から8の何れか一項に記載の組成物からなることを特徴とする、多層構造物。
【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、PPSとも呼ばれるポリフェニレンスルフィド製の熱可塑性組成物に関する。より具体的には、本発明による熱可塑性組成物は、PPS、及び任意選択的にナノ構造化されたポリマー、より具体的には、特定の種類のポリアミドグラフトポリオレフィンで本質的にできている混合物の形態で提供される。
【0002】
本発明は、層の少なくとも1つが、本発明による組成物からなる多層構造物にも関する。
【背景技術】
【0003】
ポリフェニレンスルフィド、即ちPPSは、この熱可塑性物質が、高い曲げ弾性率、高い溶融温度、高い耐熱性、並びにガソリン及び燃料バリア性を含む、幾つかの興味深い特性を示し、そのため、一般に自動車及び車両用の配管又はケーブルを製造するのに特に適したものであるため、自動車分野で周知の樹脂である。
【0004】
可塑剤及び高分子修飾剤は、PPSの品質を向上させるため、又はより正確には、幾つかの用途を補完する特性をPPSに与えるためにしばしば用いられてきた。
【0005】
しかし、可塑剤、例えば、フタル酸又はリン酸アルキルは、経時的にPPS熱可塑性組成物の表面に移動し(ブリージングとして既知の現象)、結果的に、熱可塑性混合物又は完成品の機械的特性を変化させ、外観も変化させる。
【0006】
次に、現在用いられている高分子修飾剤、例えば、官能化(即ち、化学反応基又は官能基を有する)ポリオレフィンは、溶融粘度の上昇及び/又は望ましくないゲル化の問題(完全架橋ポリマーネットワーク)を引き起こす。
【0007】
したがって、現在の研究は、PPS樹脂の品質を劣化させることなく、調製/製造プロセスを妨害することもなしに、PPS樹脂の特性を顕著に向上できる、高分子修飾剤を模索している。
【0008】
国際公開第02/28959号の文献からは、ポリオレフィン骨格上にポリアミドブロックがグラフトしたコポリマーが現在知られており、このコポリマーは、好ましくはナノ構造を有する共連続合金を形成する、エチレン/マレイン酸無水物及びエチレン/(メタ)アクリル酸アルキル/マレイン酸無水物のコポリマーの中から選択される。これは、軟質ポリオレフィン、例えば、軟質エチレンポリマー内にこのグラフトコポリマーを再分散することにより維持される、非常に優れた熱機械的特性をこのターポリマー/コポリマーに与える。
【0009】
しかし、複数のポリアミドグラフトを含むポリオレフィンからなるこのようなポリマーは、官能化ポリオレフィンではない(グラフトは主鎖上に既に存在し、このことは、PPSとのその相溶性が特に不明確であることを意味している)。更に、上記のグラフトポリアミドポリマーは、ナノ構造化されており、これにより、更なる高いリスクが生じる可能性がある。
【0010】
官能化ポリオレフィンを開示している国際公開第2013/160620号の文献、PPS樹脂を開示している米国特許5759925号の文献、及びポリオレフィン−PPS混合物を開示している国際公開第2012/040591号の文献も知られているが、本発明が関係する発明は、かなり特定の種類のポリアミドグラフトポリオレフィンを使用する。
【発明の概要】
【0011】
様々な実験及び試験の後、当業者に周知の教示とは対照的に、PPSと上記のポリアミドグラフトポリオレフィンとの特定の混合物により、最初のPPSの品質を全て維持しながら、はるかにより良好な延性、はるかにより良好なクリープ強度及び最終的に良好な処理性を示す、熱可塑性組成物を製造できることが、出願人により観察された。
【0012】
したがって、本発明は、ポリマーの混合物からなる熱可塑性組成物であって、
・ 混合物の55重量%−95重量%で存在する、ポリフェニレンスルフィドからなる第1のポリマー、
・ 混合物の5重量%−45重量%で存在する、熱可塑性修飾剤、
・ 任意選択的に、混合物の最大10重量%、好ましくは混合物の最大5重量%で存在する、1種又は複数の機能性補助剤
からなる熱可塑性組成物において、
熱可塑性修飾剤は、少なくとも1つの不飽和モノマー(X)を含有するポリオレフィン骨格及び複数のポリアミドグラフトからなる第2のポリマーを含み、ポリアミドグラフトは、少なくとも1つのアミン末端及び/又は少なくとも1つのカルボン酸末端を有するポリアミドとの縮合反応により反応し得る官能基を含む不飽和モノマー(X)の残基により、ポリオレフィン骨格に結合しており、不飽和モノマー(X)の残基は、グラフト化又は共重合により骨格に結合していることを特徴とする、熱可塑性組成物に関する。
【0013】
本発明の他の有利な特徴を以下に特定する:
− 好ましくは、熱可塑性修飾剤は、少なくとも1つのエポキシ及び/又はマレイン酸無水物の官能基を有する少なくとも1種の官能化ポリオレフィンを好ましくは含む1種又は複数のポリオレフィンからなる第3のポリマーを更に含む。
− 有利には、第2及び第3のポリマーは各々、熱可塑性修飾剤中に、前記熱可塑性修飾剤の5重量%−95重量%、理想的には20重量%−80重量%、好ましくは40重量%−60重量%で存在する(ここで、これら2つのポリマーの合計は、熱可塑性修飾剤の100%を構成する)。
− 本発明により提案される好ましい可能性によれば、本発明による組成物は、熱可塑性修飾剤が第2及び第3の上記ポリマーからなることを提供する。
− 有利には、熱可塑性修飾剤は、上記混合物の5重量%−45重量%、好ましくは10重量%−30重量%に相当する。
− 本発明の特に興味深い特徴によれば、上記グラフトポリマー、即ち、上記第2のポリマーは、ナノ構造化されている。
− 好ましくは、第2のポリマーに関して、上記グラフトポリマーの上記ポリアミドグラフトの数平均分子量は、1000−10000g/mol、好ましくは1000−5000g/molの範囲内に含まれる。
− 好ましくは、第2のポリマーに関して、ポリアミドグラフトは、少なくとも1種のコポリアミド、例えば、6/12モノNH、並びに/又は単官能性NHポリアミド6及び/若しくは単官能性NHポリアミド11を含む。
− 好ましくは、機能性補助剤は、1種又は複数の可塑剤、接着促進剤、UV安定剤及び/又はUV吸収剤、酸化防止剤、難燃剤、染料/光学的光沢剤(光学的増白剤、optical brightener)、顔料並びに補強充填剤からなる。
【0014】
本発明は、複数の隣接層を含む、特に、ケーブル又は管のコーティング等の多層構造物において、これらの層の少なくとも1つが、上に定義した組成物からなることを特徴とする、多層構造物にも関する。
【0015】
本発明による組成物は、管、配管又は類似体の用途に関連して提供されるが、当然ながら、この熱可塑性組成物は、他の用途全てに対して想定され得、このような組成物は、例えば、ケーブル(特に、空気又は流体を輸送する管)、靴(例えば、スキーの分野)、光起電モジュールの層の1つ又は複数、接着性フィルム又はコーティング等、特に多層構造物で有利に使用できることに注目すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1のポリマーは、ポリフェニレンスルフィド、即ちPPSからなる。1970年代に市場に出回ったこのポリマーは、当業者に周知である。PPSは一般に、求核カップリング、即ち、非プロトン性溶媒、例えば、N−メチル−2−ピロリドン中でのp−ジクロロベンゼンの硫化ナトリウムとの重縮合により調製される。
【0017】
第2のポリマーは、特に、上記国際公開第02/28959号の文献に詳細に記載されている。
【0018】
第2のポリアミドグラフトポリマーのポリオレフィン骨格は、モノマーとしてα−オレフィンを含むポリマーである。
【0019】
2−30個の炭素原子を有するα−オレフィンが好ましい。
【0020】
α−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、1−ドコセン、1−テトラコセン、1−ヘキサコセン、1−オクタコセン、及び1−トリアコンテンを挙げることができる。
【0021】
また、3−30個の炭素原子、優先的には3−20個の炭素原子を有するシクロオレフィン、例えば、シクロペンタン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン及び2−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン;ジ及びポリオレフィン、例えば、ブタジエン、イソプレン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,4−オクタジエン、1,5−オクタジエン、1,6−オクタジエン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン、及び5,9−ジメチル−1,4,8−デカトリエン;芳香族ビニル化合物、例えば、モノ又はポリアルキルスチレン(スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o,p−ジメチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン及びp−エチルスチレンを含む)、並びに官能基を含む誘導体、例えば、メトキシスチレン、エトキシスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルベンジルアセテート、ヒドロキシスチレン、o−クロロスチレン、p−クロロスチレン、ジビニルベンゼン、3−フェニルプロペン、4−フェニルプロペン、α−メチルスチレン、塩化ビニル、1,2−ジフルオロエチレン、1,2−ジクロロエチレン、テトラフルオロエチレン及び3,3,3−トリフルオロ−1−プロペンを挙げることができる。
【0022】
本発明の範囲において、α−オレフィンという用語は、スチレンも含む。α−オレフィンとしては、プロピレン、特にエチレンが好ましい。
【0023】
単一のα−オレフィンがポリマー鎖に重合される場合、このポリオレフィンは、ホモポリマーであり得る。例として、ポリエチレン(PE)又はポリプロピレン(PP)を挙げることができる。
【0024】
少なくとも2つのコモノマーがポリマー鎖に共重合される場合、このポリオレフィンはまた、コポリマーであり得、「第1のコモノマー」と呼ばれる2つのコモノマーのうちの一方は、α−オレフィンであり、「第2のコモノマー」と呼ばれる他方のコモノマーは、第1のモノマーと重合し得るモノマーである。
【0025】
第2のコモノマーとしては、以下を挙げることができる:
・ 既に言及されたα−オレフィンの1つであって、第1のα−オレフィンコモノマーとは異なるもの、
・ 例えば、1,4−ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン、ブタジエン等のジエン、
・ (メタ)アクリル酸アルキルという用語の下に統合される、例えば、アクリル酸アルキル又はメタクリル酸アルキル等の、不飽和カルボン酸エステル。これらの(メタ)アクリル酸塩のアルキル鎖は、最大30個の炭素原子を有し得る。アルキル鎖としては、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、ヘンコシル、ドコシル、トリコシル、テトラコシル、ペンタコシル、ヘキサコシル、ヘプタコシル、オクタコシル、ノナコシルを挙げることができる。不飽和カルボン酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、エチル及びブチルが好ましい、
・ カルボン酸ビニルエステル。カルボン酸ビニルエステルの例としては、酢酸ビニル、ベルサチン酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル又はマレイン酸ビニルを挙げることができる。カルボン酸ビニルエステルとしては、酢酸ビニルが好ましい。
【0026】
有利には、ポリオレフィン骨格は、第1のコモノマーを少なくとも50mol%含み、その密度は、有利には0.91−0.96であり得る。
【0027】
好ましいポリオレフィン骨格は、1つのエチレン−(メタ)アクリル酸アルキルのコポリマーからなる。このポリオレフィン骨格を使用することにより、光及び温度において経時的に優れた性質が得られる。
【0028】
異なる「第2のコモノマー」をポリオレフィン骨格に共重合した場合、それは本発明の範囲外ではない。
【0029】
本発明によれば、ポリオレフィン骨格は、縮合反応により、酸官能基及び/又はポリアミドグラフトアミンと反応し得る、少なくとも1つの不飽和モノマー(X)の残基を含有する。本発明の定義によれば、不飽和モノマー(X)は、「第2のコモノマー」ではない。
【0030】
ポリオレフィン骨格上に含まれる不飽和モノマー(X)としては、以下を挙げることができる:
・ 不飽和エポキシド。これらの中には、例えば、脂肪族グリシジルエステル及びエーテル、例えば、アリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、マレイン酸及びイタコン酸グリシジル、アクリル酸及びメタクリル酸グリシジルがある。これらはまた、例えば、脂環式グリシジルエステル及びエーテル、例えば、2−シクロヘキセン−1−グリシジルエーテル、シクロヘキセン−4,5−カルボン酸ジグリシジル、シクロヘキセン−4−カルボン酸グリシジル、5−ノルボルネン−2−メチル−2−カルボン酸グリシジル及びエンドシス−ビシクロ(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸ジグリシジルである。不飽和エポキシドとして使用するには、メタクリル酸グリシジルが好ましい。
・ 不飽和カルボン酸及びその塩、例えば、アクリル酸、又はメタクリル酸及びこれらの同様の酸の塩。
・ カルボン酸無水物。これらは、例えば、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、アリルコハク酸、シクロヘキサ−4−エン−1,2−ジカルボン酸、4−メチレンシクロヘキサ−4−エン−1,2−ジカルボン酸、ビシクロ(2,2,1)ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボン酸及びx−メチルビシクロ(2,2,1)ヘプタ−5−エン−2,2−ジカルボン酸の無水物から選択され得る。マレイン酸無水物が、好ましいカルボン酸無水物である。
【0031】
不飽和モノマー(X)は、好ましくは不飽和カルボン酸無水物である。
【0032】
本発明の有利な変形形態によれば、ポリオレフィン骨格に結合する不飽和モノマー(X)の好ましい数は平均して、1.3以上及び/又は優先的には20以下である。
【0033】
したがって、(X)がマレイン酸無水物であり、ポリオレフィンの数平均分子量が15000g/molである場合、これは、ポリオレフィン骨格全体の少なくとも0.8重量%、最大6.5%である無水物の割合に相当することが見出された。ポリアミドグラフトの質量と関連するこれらの値は、ポリアミドグラフトポリマー中のポリアミドと骨格の割合を決定する。
【0034】
不飽和モノマー(X)残基を含有するポリオレフィン骨格は、モノマー(第1のコモノマー、任意選択的な第2のコモノマー及び任意選択的に不飽和モノマー(X))の重合により得られる。この重合は、オートクレーブ又は管型反応器内で、高圧遊離ラジカル法又は溶解法により行われ得、これらの方法及び反応器は、当業者に周知である。不飽和モノマー(X)を、ポリオレフィン骨格に共重合しない場合、ポリオレフィン骨格にグラフトする。グラフトも既知の操作である。幾つかの異なる官能性モノマー(X)を、ポリオレフィン骨格に共重合及び/又はグラフトさせた場合、組成物は、本発明に適合する。
【0035】
モノマーの種類及び比率に応じて、ポリオレフィン骨格は、半結晶性又は非晶質であり得る。非晶質ポリオレフィンについては、ガラス転移温度のみが観察されるが、半結晶性ポリオレフィンについては、ガラス転移温度と溶融温度(必然的により高い)が観察される。当業者であれば、ポリオレフィン骨格のモノマーの比率及び分子量を単に選択し、ポリオレフィン骨格の所望のガラス転移温度、並びに任意選択的に溶融温度及び粘度値を容易に得ることができるであろう。
【0036】
好ましい方法において、ポリオレフィンは、0.5−400g/10分(190℃、2.16kg、ASTM D1238)のメルトフローインデックス(MFI)を有する。
【0037】
ポリアミドグラフトは、ホモポリアミド又はコポリアミドのいずれかであり得る。
【0038】
「ポリアミドグラフト」という表現は、
・ ラクタム、
・ 又は脂肪族α、ω−アミノカルボン酸、
・ 又は脂肪族ジアミン及び脂肪族二塩基酸
の重縮合から得られる、脂肪族ホモポリアミドを特に対象とする。
【0039】
ラクタムの例としては、カプロラクタム、オエナントラクタム及びラウリルラクタムを挙げることができる。
【0040】
脂肪族α、ω−アミノカルボン酸の例としては、アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸及び12−アミノドデカン酸を挙げることができる。
【0041】
脂肪族ジアミンの例としては、ヘキサメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン及びトリメチルヘキサメチレンジアミンを挙げることができる。
【0042】
脂肪族二塩基酸の例としては、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸及びドデカンジカルボン酸を挙げることができる。
【0043】
脂肪族ホモポリアミドの中には、例として、かつ非限定的な態様において、以下のポリアミドを挙げることができる:ポリカプロラクタム(PA6)、ポリウンデカンアミド(PA11、Rilsan(登録商標)の商品名でArkemaから販売)、ポリラウリルラクタム(PA12、同様に、Rilsan(登録商標)の商品名でArkemaから販売)、ポリブチレンアジパミド(PA4.6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(PA6.6)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(PA6.9)、ポリヘキサメチレンセバカミド(PA−6.10)、ポリヘキサメチレンドデカンアミド(PA6.12)、ポリデカメチレンドデカンアミド(PA10.12)、ポリデカメチレンセバカンアミド(PA10.10)及びポリドデカメチレンドデカンアミド(PA12.12)。
【0044】
「半結晶性ポリアミド」という表現は、脂環式ホモポリアミドも対象とする。
【0045】
脂環式ジアミンと脂肪族二塩基酸との縮合から得られる、脂環式ホモポリアミドを特に挙げることができる。
【0046】
脂環式ジアミンの例としては、パラ−ビス(アミノシクロヘキシル)メタン又はPACMとも呼ばれる4,4’−メチレン−ビス(シクロヘキシルアミン)、ビス−(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)−メタン又はBMACMとも呼ばれる2,2’−ジメチル−4,4’−メチレン−ビス(シクロヘキシルアミン)を挙げることができる。
【0047】
したがって、脂環式ホモポリアミドの中には、PACMのC12二塩基酸との縮合から得られるポリアミドPACM.12、BMACMのC10及びC12脂肪族二塩基酸との縮合から各々得られるBMACM.10及びBMACM.12を挙げることができる。
【0048】
「ポリアミドグラフト」という表現は、
・ 脂肪族ジアミン及び芳香族二塩基酸、例えば、テレフタル酸(T)及びイソフタル酸(I)、したがって、得られたポリアミドは、「ポリフタルアミド」即ちPPAと一般に呼ばれる、
・ 芳香族ジアミン、例えば、キシリレンジアミン、より特にメタキシリレンジアミン(MXD)及び脂肪族二塩基酸
の縮合から得られる、半芳香族ホモポリアミドも対象とする。
【0049】
したがってかつ非限定的な態様において、ポリアミド6.T、6.I、MXD.6及びMXD.10を挙げることができる。
【0050】
本発明による組成物に関わるポリアミドグラフトは、コポリアミドであってもよい。これらは、上に示したモノマー基の少なくとも2つを重縮合して、ホモポリアミドを製造することにより得られる。コポリアミドの本説明において「モノマー」という用語は、「繰り返し単位」の意味でとられなければならない。実際、PAの繰り返し単位が、二塩基酸とジアミンとの組合せからなる事例は稀である。モノマーに対応するのは、ジアミンと二塩基酸との組合せ、即ち、ジアミン−二塩基酸の対(等モル量)であると考えられる。これは、二塩基酸又はジアミンが個別には構造単位にすぎず、重合してポリアミドを得るには単独では不十分であるという事実により説明される。
【0051】
したがって、コポリアミドは、特に、
・ 少なくとも2つのラクタム、
・ 少なくとも2つの脂肪族α、ω−アミノカルボン酸、
・ 少なくとも1つのラクタム及び少なくとも1つの脂肪族α、ω−アミノカルボン酸、
・ 少なくとも2つのジアミン及び少なくとも2つの二塩基酸、
・ 少なくとも1つのラクタムと、少なくとも1つのジアミン及び少なくとも1つの二塩基酸
・ 少なくとも1つの脂肪族α、ω−アミノカルボン酸と、少なくとも1つのジアミン及び少なくとも1つの二塩基酸
の縮合生成物であって、
ジアミン(複数可)及び二塩基酸(複数可)が、互いに独立して脂肪族、脂環式又は芳香族であり得る、縮合生成物を包含する。
【0052】
モノマーの種類及び比率に応じて、コポリアミドは半結晶性又は非晶質であり得る。非晶質コポリアミドについては、ガラス転移温度のみが観察されるが、半結晶性コポリアミドについては、ガラス転移温度及び溶融温度(必然的により高い)が観察される。
【0053】
本発明の範囲内で使用できる非晶質コポリアミドの中には、例えば、半芳香族モノマーを含有するコポリアミドを挙げることができる。
【0054】
コポリアミドの中では半結晶性コポリアミドも使用でき、特に、PA6/11、PA6/12及びPA6/11/12等のコポリアミドを使用できる。
【0055】
重合度は、その値がポリアミドであるか、又はポリアミドオリゴマーであるかに応じて、広範に変化し得る。
【0056】
有利には、ポリアミドグラフトは単官能性である。
【0057】
ポリアミドグラフトがモノアミン末端基を有するには、次式:
(式中、
・ R1は、水素、又は最大20個の炭素原子を含有する直鎖若しくは分岐アルキル基であり、
・ R2は、最大20個の、直鎖若しくは分岐のアルキル若しくはアルケニル炭素原子を有する基、飽和若しくは不飽和脂環式置換基、芳香族置換基又はこれらの組合せである)
を有する鎖制限剤を使用すれば十分である。制限剤は、例えば、ラウリルアミン又はオレイルアミンであってよい。
【0058】
ポリアミドグラフトが、モノカルボン酸末端基を有するには、式R’1−COOH、R’1−CO−O−CO−R’2
(R’1及びR’2は、最大20個の炭素原子を含有する、直鎖又は分岐アルキル基である)
を有する鎖制限剤又はジカルボン酸を使用すれば十分である。
【0059】
有利には、ポリアミドグラフトは、アミン官能基を有し、かつアミン官能基で終わる。好ましい単官能性重合制限剤はラウリルアミン及びオレイルアミンである。
【0060】
ポリアミドグラフトは、1000−10000g/mol、好ましくは1000−5000g/molのモル質量を有する。
【0061】
重縮合を使用して、ポリアミドグラフトをグラフトすることができ、それは、典型的な既知の方法を用いて、例えば、一般に200−300℃の温度で、真空下又は不活性雰囲気下で、反応混合物中で撹拌しながら行われる。グラフトの平均鎖長は、重縮合可能なモノマー又はラクタムと単官能性重合制限剤との初期モル比により決定される。平均鎖長を計算するために、典型的には、1つのグラフト鎖に対して1つの鎖制限剤分子が数えられる。
【0062】
当業者であれば、モノマーの種類及び比率、並びにポリアミドグラフトの分子量を単に選択し、ポリアミドグラフトの所望のガラス転移温度、並びに任意選択的に溶融温度及び粘度値を容易に得ることができるであろう。
【0063】
X残基(又は、第2のグラフトコポリマー、即ち、エラストマーコポリマーの官能化モノマー)を含有する、ポリオレフィン骨格上のポリアミドグラフトの縮合反応は、ポリアミドグラフトのアミン又は酸官能基とX残基との反応により行われる。有利には、モノアミンポリアミドグラフトを使用し、アミン官能基とX残基の官能基との反応により、アミド又はイミド結合を生成する。
【0064】
この縮合は、好ましくは溶融状態で行われる。本発明による組成物を製造するために、従来の混合及び/又は押出技術を使用できる。したがって、組成物の成分を混合して、化合物を形成し、これを任意選択的に、ノズルを出る際に造粒してもよい。有利には、混合中にカップリング剤を添加する。
【0065】
したがって、ナノ構造化組成物を得るために、ポリアミドグラフト及び骨格を、押出機内で、一般に200−300℃の温度で混合してもよい。押出機内での溶融材料の平均滞留時間は、5秒−5分、好ましくは20秒−1分であり得る。遊離ポリアミドグラフト、即ち、ポリアミドグラフトポリマーを形成する反応をしなかったものの選択的抽出により、この縮合反応の収率を評価する。
【0066】
アミン末端を有するポリアミドグラフトの調製、及び残基(X)を含有するポリオレフィン骨格又は官能化モノマー(第2のコポリマー)へのそれらの添加は、米国特許3976720号、米国特許3963799号、米国特許5342886号及び仏国特許第2291225号に記載されている。この特性は、本発明に必須ではないが、本発明のポリアミドグラフトポリマーは、有利にはナノ構造化された構成を有する。
【0067】
任意選択的な第3のポリマーは、任意選択的に又は好ましくは官能化された、1種又は複数のポリオレフィン、言い換えれば、任意選択的にそのうち1つが官能化ポリオレフィンである、ポリオレフィンの混合物からなる。
【0068】
有利には、官能化ポリオレフィンは、マレイン酸無水物又はエポキシタイプの少なくとも1つの官能基を含む。それは、出願人から販売されているLotader(登録商標)又はOrevac(登録商標)であってよい。それは、Mistui Chemicals社から販売されているTafmer(登録商標)MH5020等、Exxon Mobil Chemical社から販売されているExxelor VA1801、VA1803等、又はDupont社から販売されているFusabond(登録商標)N493等のエチレンエラストマーであってもよい。
【0069】
任意選択的な機能性補助剤に関しては、それは、組成物中に組成物の最大10重量%で存在し得、以下に記載する化合物又はこれらの化合物の混合物の中から限定的に選択される。
【0070】
可塑剤を、本発明による組成物に添加して、使用を容易にし、組成物及び構造体の製造方法の生産性を向上させてもよい。例としては、芳香族系又はナフタレン系のパラフィン系鉱物油を挙げることができ、それは、本発明による組成物の接着力も向上させる。可塑剤としては、フタル酸塩、アゼライン酸塩、アジピン酸塩及びリン酸トリクレジルも挙げることができる。
【0071】
同様に、組成物の接着力が特に高くなければならないとき、必ずではないが、接着促進剤を有利には添加して、組成物の接着力を向上させてもよい。接着促進剤は非ポリマー成分であり、それは有機、結晶性、無機、より優先的には半無機、半有機であり得る。これらの中には、有機チタン酸塩又はシラン、例えば、チタン酸モノアルキル、トリクロロシラン及びトリアルコキシシラン、トリアルコオキシシラン等を挙げることができる。これらの接着促進剤を、当業者に周知の技術、例えば、反応押出により、第1又は第2のコポリマーに直接グラフトすることも提供され得る。
【0072】
UV照射により、熱可塑性組成物がわずかに黄変する場合があるため、このような現象が回避されるべき幾つかの用途では、UV安定剤及びUV吸収剤(これらの化合物は一般に抗UV剤と呼ばれる)、例えば、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン及び他のヒンダードアミンが、添加され得る。これらの化合物は、例えば、ベンゾフェノン又はベンゾトリアゾールを含有し得る。これらは、組成物の総質量の10質量%未満、優先的には0.1−2%の量で添加され得る。
【0073】
酸化防止剤、例えば、リン含有化合物(ホスホナイト及び/又は亜リン酸塩)及びヒンダードフェノールを添加して、組成物の製造中の黄変を制限することもできる。これらの酸化防止剤は、組成物の総質量の10質量%未満、優先的には0.05−2%の量で添加され得る。
【0074】
同様に、幾つかの用途において、難燃剤も、本発明による組成物に添加され得る。これらの薬剤は、ハロゲン化されていても、ハロゲン化されていなくてもよい。ハロゲン化剤の中には、臭素化生成物を挙げることができる。非ハロゲン化剤としては、リン系添加剤、例えば、ポリリン酸アンモニウム、ホスフィン酸及びホスホン酸アルミニウム、シアヌル酸メラミン、ペンタエリスリトール、ゼオライト並びにこれらの薬剤の混合物を使用できる。組成物は、これらの薬剤を組成物の総質量に対して1−10%の範囲の割合で含み得る。染料又は光学的光沢剤も添加され得る。
【0075】
顔料、例えば、二酸化チタン又は酸化亜鉛等も、組成物の総重量に対して一般に1−10%の範囲の割合で組成物に添加され得る。
【0076】
補強充填剤、例えば、タルク、ガラス繊維、炭素繊維、モンモリロナイト、カーボンナノチューブ、カーボンブラックも、組成物の総質量に対して一般に0.1%−10%の範囲の割合で組成物に添加され得る。
【0077】
本発明による組成物の調製:
先に言及したように、ポリアミドグラフトをポリオレフィン骨格にグラフトして、本発明によるポリアミドグラフトポリオレフィンを得る技術は、特に先に引用した仏国特許第2912150号、仏国特許第2918150号又は欧州特許第21966489号の文献から当業者に周知である。
【0078】
PPS、機能性補助剤(上述の添加剤)及び官能化ポリオレフィンは全て、当業者に完全に周知であり、それらの製造方法もよく知られている。これらの化合物の混合方法は、完全に慣行となっており、詳細な説明は当業者には不要である。
【0079】
したがって、架橋剤が添加される場合、本発明の範囲を超えない。例として、有機イソシアン酸塩又は過酸化物を挙げることができる。この架橋も、既知の照射技術を用いて達成できる。この架橋は、当業者に既知の多くの方法の1つにより、特に、熱活性開始剤、例えば、過酸化物及びアゾ化合物、光開始剤、例えば、ベンゾフェノンを使用することにより、反応性官能基を有するシラン、例えば、アミノシラン、エポキシシラン、ビニルシラン、例えば、ビニルトリエトキシシラン若しくはビニルトリメトキシシラン等の、光線、UV、電子ビーム及びX線を含む照射技術により、並びに湿式架橋により行われ得る。上記の「Handbook of Polymer Foams and Technology」と呼ばれる手引書のp198−p204に、当業者が参照し得る追加教示が示されている。
【0080】
試験配合物の形成に用いられる材料:
Lotader(登録商標)AX8840:5g/10分のMFI(190℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有する、Arkema製のエチレン及びメタクリル酸グリシジル(8重量%)のコポリマー。
Lotader(登録商標)AX8900:6g/10分のMFI(190℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有する、Arkema製のエチレン、アクリル酸メチル(24重量%)及びメタクリル酸グリシジル(8重量%)のターポリマー。
Lotader(登録商標)4210:6g/10分のMFI(190℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)を有する、Arkema製のエチレン、アクリル酸ブチル(6.5重量%)及びマレイン酸無水物(3.6重量%)のターポリマー。
Fusabond N493:密度0.87g/cm及びMFI 1.6g/10分(190℃、2.16kg、ISO1133に従って測定)の、Dupontから販売されているマレイン酸無水物(MAH)グラフトエチレンオクテンコポリマー。
PPS:DIC社による硫化ポリフェニレン。
Apolhya(登録商標)LP3:Apolhyaファミリー(登録商標)は、Arkemaから販売されているポリマーのファミリーであり、これは、ナノメートルスケールで共連続形態を生成することにより、ポリアミドの特性とポリオレフィンの特性とを組み合わせている。この等級は、230℃、2.16kgで1.0グラム/10分のMFI(メルトフローインデックス)及び溶融温度220℃により特徴付けられる。
【0081】
試験配合物及びフィルムの取得:
配合物を、スクリュー長さL=1365mm(ミリメートル)及びL/D比=45.5D(Dはスクリュー直径である)のTEX30X(登録商標)等の共回転二軸押出機を用いて混合することにより調製した。そのシース要素を、フラットプロファイルに従って310℃で加熱する。回転速度は、流速15kg/時(毎時キログラム)で240rpm(毎分回転数)である。
【0082】
200μm(マイクロメートル)の単一層フィルムの組成物を、スクリュー直径20mm、L/D=25を有する押出機のフラットフィルム押出を用いて製造した。シース要素をフラットプロファイルに従って300℃で加熱した。
【0083】
調製した組成物を以下に示す:
− 組成物番号1:熱可塑性組成物は、上記PPSのみを含む。
− 組成物番号2:熱可塑性組成物は、PPSを80重量%、官能性ポリオレフィンの混合物(Lotader(登録商標)AX8840とLotader(登録商標)AX8900の混合物(質量比50/50))を20重量%含む。
− 組成物番号3:熱可塑性組成物は、PPSを80重量%及びApolhyaを20重量%含む。
− 組成物番号4:熱可塑性組成物は、PPSを80重量%、並びに官能性ポリオレフィン(Lotader(登録商標)AX8840とLotader(登録商標)AX8900の混合物(質量比50/50))(組成物の〜10重量%)及びApolhya(組成物の〜10重量%)の混合物(〜50%−50%)を20重量%含む。
− 組成物番号5:熱可塑性組成物は、PPSを60重量%、並びに官能性ポリオレフィン(Lotader(登録商標)AX8840とLotader(登録商標)AX8900の混合物(質量比50/50))(組成物の〜30重量%)及びApolhya(組成物の〜10重量%)の混合物(〜75%−25%)を40重量%含む。
− 組成物番号6:熱可塑性組成物は、PPSを60重量%、並びに官能性ポリオレフィン(Lotader(登録商標)AX8840とLotader(登録商標)AX8900の混合物(質量比50/50))(組成物の〜10重量%)及びApolhya(組成物の〜30重量%)の混合物(〜25%−75%)を40重量%含む。
− 組成物番号7:熱可塑性組成物は、PPSを90重量%、並びに官能性ポリオレフィン(Lotader(登録商標)AX8840とLotader(登録商標)AX8900の混合物(質量比50/50))(組成物の〜5重量%)及びApolhya(組成物の〜5重量%)の混合物(〜50%−50%)を10重量%含む。
− 組成物番号8:熱可塑性組成物は、PPSを55重量%、並びに官能性ポリオレフィン(Lotader(登録商標)AX8840とLotader(登録商標)AX8900の混合物(質量比50/50))(組成物の〜40重量%)及びApolhya(組成物の〜5重量%)の混合物(〜89%−11%)を45重量%含む。
− 組成物番号9:熱可塑性組成物は、PPSを55重量%、並びに官能性ポリオレフィン(Lotader(登録商標)AX8840とLotader(登録商標)AX8900の混合物(質量比50/50))(組成物の〜5重量%)及びApolhya(組成物の〜40重量%)の混合物(〜11%−89%)を45重量%含む。
− 組成物番号10:熱可塑性組成物は、PPSを80重量%、並びに官能性ポリオレフィン(Lotader(登録商標)AX8840とLotader(登録商標)4210の混合物(質量比50/50))(組成物の〜10重量%)及びApolhya(組成物の〜10重量%)の混合物(〜50%−50%)を20重量%含む。
− 組成物番号11:熱可塑性組成物は、PPSを80重量%、並びにFusabond N493(組成物の〜10重量%)及びApolhya(組成物の〜10重量%)の混合物(〜50%−50%)を20重量%含む。
【0084】
フィルム上で行われた試験:
3種類の試験を組成物1−11について行って、上記の技術的な問題が解決されたか否かについて試験したが、本発明による組成物が、他の特に興味深い特性、即ち、PPSのみ(組成物番号1)と同じ品質をほぼ満たすことを更に示すことは注目すべきである。
【0085】
これらの3つの試験は、最初に、ISO規格527 1Aに従って様々な配合物の機械的特性(メガパスカル(MPa)で表される引張係数、伸長及び応力)を周囲温度で評価し、次に、クリープ特性(次いで、異なる温度での機械的応力後の残留歪み)を決定し、最後に、(ISO規格179−1eAに従って)配合物の延性をシャルピー衝撃試験により周囲温度で評価することからなる。
【0086】
引張試験:
引張係数及び伸長及び応力を、ISO規格527 1Aに従って測定する。予め、様々な配合物の各種試料を、以下の条件:23℃、湿度50%で15日間に従って調整した。
【0087】
クリープ試験:
クリープ抵抗性を、フィルムから切り取られた試験片(寸法:1cm×5cm×0.2mm)から評価する。0.5bar、即ち、0.05MPaの応力に相当する重量を試料の一端に印加する。応力を、組成物各々に、100℃、120℃及び180℃の異なる温度で数分間印加する。室温に戻した後、残留歪みを測定する。
【0088】
シャルピー衝撃試験:
シャルピー衝撃試験を、ISO527 1eAに従って、V−ノッチ(0.25mmのノッチベース半径)を有する射出棒で周囲温度にて行った。
【0089】
組成物各々について行った様々な試験の結果は、組成物は全く予想できるものではないが、初めに、本発明による組成物の技術的利点を、次に、この組成物の好ましい範囲(質量%)を明確に示している。