(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記関心領域が、前記トンネル経路及び前記トンネル経路の両側を含む一定の領域である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のトンネル経路の地表面変位観測装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の技術においては、地表面の沈下量の計測を、測量機器を使用して地上作業員が行っているので、計測地点の数、計測回数等に限界がある。また、例えば私人の敷地等では、このような計測ができない可能性がある。
【0006】
従って、トンネル工事の予定経路上の地表面の変位について、工事の影響の有無(工事の前から沈降していたか否か)、工事後の地表面の変位(工事による地盤変動やトンネル設置による地盤変動)の有無の把握が困難であった。
【0007】
本発明の目的は、トンネル工事前の地表面の変位の状況、及びトンネル工事の進捗に起因するトンネル工事経路における地表面の変位の状況を分り易く確認できるトンネル経路の地表面変位観測装置及びトンネル経路の地表面変位観測プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態は、トンネル経路の地表面変位観測装置であって、トンネル経路を含む、予め定めた範囲の領域を関心領域として設定する関心領域設定手段と、前記関心領域を予め定めた範囲に分割して分割領域を生成する関心領域分割手段と、異なる時刻にレーダー装置により取得された観測対象である前記関心領域における地表面の時系列画像データから、当該地表面の変位情報を生成する変位情報生成手段と、前記変位情報生成手段が生成した変位情報を、前記関心領域内の分割領域毎に収集する変位情報収集手段と、前記分割領域毎に収集された変位情報に基づき、各分割領域における変位の代表値を演算する代表値演算手段と、前記演算された代表値をトンネル経路に対応する地表面の変位量として表示する表示手段とを有し、前記表示手段は、トンネル経路の地表面における標高と前記代表値とを、異なるスケールで縦断図として表示することを特徴とする。
【0009】
また、上記トンネル経路の地表面変位観測装置は、前記関心領域に存在する、予め定めた地物のポリゴンを抽出するポリゴン抽出手段をさらに備え、前記変位情報生成手段は、前記ポリゴンにおける変位情報を前記地表面の変位情報として生成する構成としてもよい。
【0010】
また、上記代表値は中央値であるのが好適である。
【0011】
また、上記関心領域は、前記トンネル経路及び前記トンネル経路の両側を含む一定の領域であるのが好適である。
【0012】
また、上記関心領域分割手段は、前記関心領域を一定距離で分割するのが好適である。
【0013】
また、本発明の他の実施形態は、トンネル経路の地表面変位観測プログラムであって、コンピュータを、トンネル経路を含む、予め定めた範囲の領域を関心領域として設定する関心領域設定手段、前記関心領域を予め定めた範囲に分割して分割領域を生成する関心領域分割手段、異なる時刻にレーダー装置により取得された観測対象である前記関心領域における地表面の時系列画像データから、当該地表面の変位情報を生成する変位情報生成手段、前記変位情報生成手段が生成した変位情報を、前記関心領域内の分割領域毎に収集する変位情報収集手段、前記分割領域毎に収集された変位情報に基づき、各分割領域における変位の代表値を演算する代表値演算手段、前記演算された代表値をトンネル経路に対応する地表面の変位量として表示するとともに、トンネル経路の地表面における標高と前記代表値とを、異なるスケールで縦断図として表示する表示手段、として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、トンネル工事前の地表面の変位の状況、及びトンネル工事の進捗に起因するトンネル経路における地表面の変位の状況を分り易く確認することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0017】
図1には、実施形態にかかるトンネル経路の地表面変位観測装置を含んだ地表面変位の観測システムの構成例が示される。
図1の例では、トンネル経路100が示されており、トンネル経路100の位置に対応する地上の位置及びその周辺の地表面の相対的な高さの変化を衛星等に備えられた合成開口レーダー(synthetic aperture radar:SAR)102により計測し、干渉SAR解析により地表面変位量(地表面の相対的な高さの変動)を求める。ここで、トンネル経路100とは、トンネルの工事計画において予め決定された経路であり、工事予定のトンネル経路(
図1では破線で示す)並びに工事中及び施工済のトンネル経路(
図1では実線で示す)を含む。
【0018】
図1において、SAR102による計測を開始するタイミングとしては、例えば周回周期が11日の衛星の場合、上記工事前(約15回以上計測できる期間で、計画で当該地域が工事対象となる約半年前)とする。この工事開始前の計測により、あらかじめ合成開口レーダー102にて、正確に計測することができる位置を特定する。工事開始後、衛星の周回周期(例えば11日)毎に当該位置のデータを用いて計測する。当該位置のデータを用いることにより、精度の高い計測が可能となる。
【0019】
SAR102により計測された地表面の相対的な高さ変化の情報(レーダー画像データ)は、地表面変位の観測システムに含まれるトンネル経路の地表面変位観測装置104に送信される。トンネル経路の地表面変位観測装置104では、トンネル工事の実施前、実施中、実施後における地表面変位の経時変化等を求め、出力する。
【0020】
図2には、トンネル経路の地表面変位観測装置104の構成例のブロック図が示される。
図2において、トンネル経路の地表面変位観測装置104は、関心領域設定部10、関心領域分割部12、レーダー画像データ取得部14、変位情報生成部16、変位情報収集部18、代表値演算部20、ポリゴン抽出部22、表示制御部24、通信部26、記憶部28及びCPU30を含んで構成されている。なお、CPU30以外にGPUを用いてもよい。このトンネル経路の地表面変位観測装置104は、CPU30、ROM、RAM、不揮発性メモリ、I/O、通信インターフェース等を備え、装置全体の制御及び各種演算を行うコンピュータとして構成されており、上記各機能は、例えばCPU30とCPU30の処理動作を制御するプログラムとにより実現される。
【0021】
関心領域設定部10は、トンネル経路に対応する地表面上の経路を含む、予め定めた範囲の領域を関心領域として設定する。ここで、関心領域とは、利用者が変位の観測を希望する領域であり、本実施形態では、トンネル経路に対応する地表面上の経路を含む領域である。トンネル経路に対応する地表面上の経路とは、地下に掘削されるトンネルの位置に対応する地表面上の位置、すなわちトンネル経路の地表面への投影経路をいう。関心領域設定部10は、上記トンネル経路に対応する地表面上の経路の両側に予め定めた幅のバッファ領域を設定し、トンネル経路に対応する地表面上の経路とバッファ経路とを関心領域とする。なお、関心領域設定部10は、利用者がキーボード、マウス等の適宜な入力手段から入力した、関心領域を指定するための指示情報に基づいて関心領域を設定してもよい。関心領域設定部10は、通信部26を介して外部のサーバ等から取得する等の方法により予め記憶部28に記憶された地図情報を読み出し、その地図情報上に関心領域を設定する。関心領域設定部10が設定した関心領域は、記憶部28に記憶させる。なお、利用者が希望の関心領域を指定する際には、表示制御部24が液晶表示装置その他の適宜な表示手段に、記憶部28から読み出した上記地図情報を表示させ、当該画面を介して利用者が指示情報(例えば、地図上の特定の領域を指定する情報)を入力する構成とするのが好適である。関心領域の詳細に関しては後述する。
【0022】
関心領域分割部12は、関心領域設定部10が設定した関心領域を記憶部28から読み出し、予め定めた範囲に分割して分割領域を生成する。分割領域は、トンネル経路に対応する地表面上の経路に沿って一定距離(例えば、100m毎)で分割した領域が好適である。なお、上記一定距離は、使用目的に応じて適宜決定できる。関心領域の分割の方法は、利用者がキーボード、マウス等の適宜な入力手段から入力した分割指示情報に基づき関心領域分割部12が分割してもよいし、予め定めた距離毎に分割してもよい。上記分割領域は、記憶部28に記憶させる。また、上記分割指示情報または上記予め定めた距離も記憶部28に記憶させておき、関心領域分割部12がこれらのいずれかを記憶部28から読み出して、関心領域の分割処理を実行する構成とすることができる。
【0023】
レーダー画像データ取得部14は、衛星に搭載したSAR102等が計測したレーダー画像データを、図示しない地上局を経由して受信した通信部26から取得する。取得したレーダー画像データは、記憶部28に記憶させる。この場合、上記レーダー画像データは、異なる時刻に取得された複数のレーダー画像データ(時系列画像データ)として記憶部28に記憶される。このレーダー画像データには、地表面からの反射波の位相の情報が含まれている。
【0024】
変位情報生成部16は、異なる時刻にSAR102等のレーダー装置により取得された観測対象である上記関心領域における地表面の時系列画像データを記憶部28から読み出し、当該地表面の変位(標高の変位)を含む変位情報を生成する。ここで、異なる時刻とは、上記レーダー画像データの取得時刻が異なることをいう。変位情報生成部16は、異なる時刻に取得された一組のレーダー画像データによりその時刻の間に発生した変位を演算し、変位情報として生成する。地表面の変位情報とは、SAR102と地表面との距離の変位に関する情報であり、時系列画像データの内、取得時刻が異なるレーダー画像データ間の位相差に基づいて算出する。変位の算出は、レーダー画像データの画素毎に行う。レーダー画像データと、数値標高モデル(DEM)を用いることにより、各画素が地表面のどの位置であるかを対応付けできるので、算出した変位が地表面のどの位置の変位であるかを把握することができる。このため、変位情報には、当該変位の位置を表す座標情報を含ませることができる。この変位情報により地表面の変位(トンネル工事に伴う地盤沈下、地盤隆起等の変位)を観測することができる。なお、変位情報生成部16は、上記関心領域における変位情報のみを生成する構成としてもよい。変位情報生成部16が生成した変位情報は、記憶部28に記憶させる。
【0025】
変位情報収集部18は、変位情報生成部16が生成した変位情報並びに関心領域設定部10が設定した関心領域及び関心領域分割部12が生成した分割領域を記憶部28から読み出し、関心領域内の分割領域毎に変位情報を収集する。上述した通り、変位情報はレーダー画像データの画素毎に算出されるので、変位情報収集部18も分割領域内の画素毎に変位情報を収集する。また、各画素は、変位情報に含まれる座標情報によりその位置がわかるので、変位情報収集部18は、変位が算出された各画素が関心領域内の画素であるか否か、関心領域内の画素の場合にどの分割領域に所属するものであるかを判断することができる。なお、変位情報生成部16が、関心領域における変位情報のみを生成する構成の場合には、変位情報収集部18は、どの分割領域に所属する画素の変位情報であるかを判断すればよい。また、分割領域内の変位情報は、後述する代表値演算部20の演算結果の精度及び信頼性の向上のために、分割領域毎に複数存在するのが好適である。従って、関心領域分割部12が関心領域を分割する際には、分割領域の大きさ(面積)が上記画素より十分大きくなるようにする。変位情報収集部18が分割領域毎に収集した変位情報は、記憶部28に記憶させる。
【0026】
代表値演算部20は、変位情報収集部18が分割領域毎に収集した変位情報を記憶部28から読み出し、その変位情報に基づき、各分割領域における変位の代表値を演算する。代表値としては、各分割領域の変位を表す(代表する)ことができるものであればいずれも採用できるが、例えば分割領域毎に収集された変位情報に含まれる変位の中央値(メディアン)、平均値等が挙げられ、中央値がより好適である。代表値演算部20が演算した代表値は、記憶部28に記憶させる。
【0027】
ポリゴン抽出部22は、上記関心領域設定部10が設定した関心領域に存在する、予め定めた地物のポリゴンを抽出する。ここで、地物のポリゴンとしては、例えば家屋、道路、河川等のポリゴンが挙げられるが、これらには限定されない。上記ポリゴンに関する情報すなわちポリゴンの種類、形状及び位置情報は、予め記憶部28に記憶させておき、ポリゴン抽出部22が記憶部28から読み出して使用する。
【0028】
上記変位情報生成部16は、上記ポリゴン抽出部22が上記関心領域において抽出したポリゴンと重なる(ポリゴン上の)時系列画像データから変位情報を生成する構成としてもよい。この場合、変位情報収集部18は、上記ポリゴン上の変位情報を上記地表面の変位情報として分割領域毎に収集し、代表値演算部20がこの変位情報から代表値を演算することができる。
【0029】
また、上記代表値演算部20は、代表値の経時変化を演算する構成としてもよい。ここで、代表値の経時変化とは、単位時間当たりの代表値の変化、すなわち代表値の変化の速さをいう。代表値の経時変化は、例えば代表値演算部20が演算した代表値に、変位情報生成部16が当該代表値である変位情報の生成に使用した一組のレーダー画像データの取得時刻(SAR102によるレーダー画像データの取得時刻)の一方を関連付けて記憶部28に記憶させ、代表値演算部20が、記憶部28から二つの代表値及びこれに関連付いた取得時刻を読み出し、上記代表値の差分を取得時刻の差分で除することにより求めることができる。
【0030】
表示制御部24は、代表値演算部20が演算した代表値を記憶部28から読み出し、液晶表示装置その他の適宜な表示装置を制御してトンネル経路に対応する地表面の変位量として表示する。ここで、トンネル経路に対応する地表面とは、トンネル経路の地表面への投影経路上の地表面をいう。表示制御部24が上記代表値を表示する場合、トンネル経路すなわち工事予定のトンネル経路並びに工事中及び施工済のトンネル経路に対応する地表面の標高と共に表示する。この場合、トンネル経路に対応する地表面の標高と代表値とを、異なるスケールで縦断図として表示するのが好適である。縦断図としての表示例は後述する。
【0031】
通信部26は、適宜なインターフェースにより構成され、無線または有線の通信回線を介してCPU30が外部のサーバ等とデータをやり取りするために使用する。例えば、上記SAR102等を搭載した衛星から送信されるレーダー画像データの受信も通信部26が行う。
【0032】
記憶部28は、ハードディスク装置、ソリッドステートドライブ(SSD)等の不揮発性メモリで構成され、上記各種情報等、及びCPU30の動作プログラム等の、トンネル経路の地表面変位観測装置104が行う各処理に必要な情報を記憶させる。なお、記憶部28としては、デジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)、コンパクトディスク(CD)、光磁気ディスク(MO)、フレキシブルディスク(FD)、磁気テープ、電気的消去および書き換え可能な読出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュ・メモリ等を使用してもよい。また、記憶部28には、主としてCPU30の作業領域として機能するランダムアクセスメモリ(RAM)、及びBIOS等の制御プログラムその他のCPU30が使用するデータが格納される読み出し専用メモリ(ROM)を含めるのが好適である。
【0033】
図3には、表示制御部24が表示装置に表示する関心領域及び分割領域の例が示される。
図3において、上記トンネル経路に対応する地表面上の経路Tが破線で示されている。関心領域設定部10は、この経路Tの両側に予め定めた幅のバッファ領域Bを設定し、トンネル経路に対応する地表面上の経路T及びその両側に設定されたバッファ領域Bを合わせて関心領域Iaとする。なお、上述したように、利用者が入力した、関心領域を指定するための指示情報に基づいて関心領域Iaを設定する構成としてもよい。
【0034】
また、関心領域分割部12は、上記関心領域Iaを予め定めた範囲(距離)に分割して分割領域を生成する。
図3の例では、分割領域D
1〜D
9が表示されている。なお、分割領域の数は9個(D
1〜D
9)に限定されるものではなく、トンネル経路の長さ、地表面の変位の観察に要求される精度等に応じて適宜決定される。
【0035】
変位情報生成部16は、上述したように、関心領域Iaにおける地表面のレーダー画像データ(時系列画像データ)から変位情報を生成する。
図3の例では、変位情報の生成に使用されるレーダー画像データに含まれる地表面の変位の取得位置Sが□(四角形)で表示されているが、この位置SはSAR102等のレーダー装置による変位の取得位置である。なお、変位の取得位置は、関心領域Iaの内側に限らず、外側でも取得される。
図3の例では、関心領域Iaの外側で取得された変位の位置がSoで示されている。変位情報生成部16は、このように関心領域Iaの内側及び外側で取得される変位の内、関心領域Iaの内側で取得される変位から変位情報を生成する。
【0036】
変位情報収集部18は、変位情報生成部16が上記関心領域Iaにおいて生成した地表面の変位を含む変位情報を、上記分割領域D
1〜D
9毎に収集する。代表値演算部20は、以上のようにして分割領域D
1〜D
9毎に収集された変位情報に含まれる変位の代表値を各分割領域D
1〜D
9の代表値として演算する。各分割領域D
1〜D
9の代表値は、トンネル経路に対応する地表面上の経路Tにおける変位量として表示制御部24が適宜な表示装置に表示する。
【0037】
図4には、ポリゴン抽出部22が抽出したポリゴンを使用して代表値を演算する方法の説明図が示される。
図4において、変位情報生成部16が関心領域Iaとレーダー画像データ(
図4では、変位データと表記し、□(四角形)で表示する)とを記憶部28から読み出し(I)、関心領域Iaの領域内に一部含まれる変位データを抽出する(II)。上述したように、レーダー画像データの各画素は、DEMを用いることによりその位置がわかるので、上記(II)の抽出を行うことができる。
図4の(III)で示された□(四角形)の集合が、上記(II)で抽出した変位データであり、関心領域Iaの領域内に一部含まれる変位データである。この場合、変位情報生成部16は、関心領域Iaの領域内に完全に含まれる変位データを抽出する構成としてもよい。
【0038】
次に、変位情報生成部16は、上記(III)で示された□(四角形)の集合とポリゴン抽出部22が抽出した地物のポリゴン(
図4では、家屋ポリゴンを例示している)とを比較し(IV)、家屋ポリゴンの領域内に一部含まれる変位データを抽出し(V)、この変位データを含む変位情報を生成する(VI)。この場合、変位情報生成部16は、変位データが家屋ポリゴンの領域内に完全に含まれる箇所の変位データを抽出してもよい。
【0039】
変位情報収集部18は、上記ポリゴン上の変位情報を上記地表面の変位情報として分割領域毎に収集し、代表値演算部20がこの変位情報から代表値を演算する。
【0040】
図5(a)、(b)には、表示制御部24が表示する縦断図の表示例が示される。
図5(a)は平面図であり、トンネル経路に対応する地表面上の経路Tを含む関心領域Iaが示されている。また、
図5(b)には、上記経路Tに対応する縦断図が示されている。なお、
図5(a)において、上記経路Tは破線で示され、関心領域Iaは一点鎖線で囲まれた領域として示されている。また、
図5(a)、(b)では、同時に2つの地点P1、P2でトンネル工事が進行している例を示しているが、工事の進行箇所の数は、2点に限定されるものではない。
【0041】
上述したように、
図5(a)に示された関心領域Iaに設定された分割領域毎に演算された変位の代表値が、上記経路Tにおける地表面の変位とされて
図5(b)の縦断図中に表示される。
図5(b)の例では、二点鎖線によりトンネル経路の地表面における標高が示され、上記代表値が分割領域毎に棒グラフで表示されているが、この組合せに限定されるものではない。
【0042】
図5(b)の例では、トンネル経路の地表面における標高と上記代表値とを同時に表示しているが、トンネル経路の地表面における標高はメートル(m)単位の値であり、上記代表値は通常ミリメートル(mm)以下の単位であるので、上記代表値を識別しやすくするために、両者のスケールを異ならせている。具体的には、上記代表値を拡大(例えば1000倍)して表示する。なお、棒グラフは、トンネル経路の地表面における標高を表す二点鎖線より上が隆起を、下が沈下を表している。
【0043】
図5(b)に示されるように、代表値を棒グラフで表示する場合、ポリゴン抽出部22が抽出するポリゴンの種類毎に表示してもよい。すなわち、異なるポリゴンを使用して代表値演算部20が演算した代表値毎に棒グラフで表示する。
図5(b)の例では、家屋ポリゴンと道路ポリゴンとから演算した代表値を別の棒グラフとして表示している。
【0044】
なお、
図5(b)において、道路ポリゴンから演算した代表値と家屋ポリゴンから演算した代表値とは独立しており、各棒グラフの長さが各ポリゴンから演算した代表値の値を示している。このため、
図5(b)により、道路及び家屋における変位(代表値)をそれぞれ表示することができる。
【0045】
なお、時間の経過、トンネル工事の進行等に伴い、地表面の隆起または沈下の大きさに変化が生じる場合もある。この場合には、変化後の値で棒グラフの高さを更新する構成が好適である。
【0046】
図6には、実施形態にかかるトンネル経路の地表面変位観測装置104の動作例のフロー図が示される。
図6において、関心領域設定部10が、利用者が入力した関心領域を指定するための指示情報等に基づいて、トンネル経路に対応する地表面上の経路を含む、予め定めた範囲の領域を関心領域として設定し、記憶部28に記憶させる(S1)。次に、関心領域分割部12は、関心領域設定部10が設定した関心領域を記憶部28から読み出し、予め定めた範囲に分割して分割領域を生成し、記憶部28に記憶させる(S2)。
【0047】
また、レーダー画像データ取得部14は、衛星に搭載したSAR102等が計測したレーダー画像データを衛星から受信した通信部26から取得し、記憶部28に記憶させる(S3)。
【0048】
変位情報生成部16は、異なる時刻にSAR102等のレーダー装置により取得された観測対象である上記関心領域における地表面の時系列画像データを記憶部28から読み出し、当該地表面の変位(標高の変位)を含む変位情報を生成する(S4)。変位情報収集部18は、変位情報生成部16が生成した変位情報並びに関心領域設定部10が設定した関心領域及び関心領域分割部12が生成した分割領域を記憶部28から読み出し、関心領域内の分割領域毎に変位情報を収集する(S5)。
【0049】
代表値演算部20は、変位情報収集部18が分割領域毎に収集した変位情報を記憶部28から読み出し、その変位情報に基づき、各分割領域における変位の代表値を演算する(S6)。
【0050】
表示制御部24は、代表値演算部20が演算した代表値を記憶部28から読み出し、液晶表示装置その他の適宜な表示装置を制御してトンネル経路に対応する地表面の変位量を表す縦断図として表示する(S7)。
【0051】
上述した、
図6の各ステップを実行するためのプログラムは、記録媒体に格納することも可能であり、また、そのプログラムを通信手段によって提供しても良い。その場合、例えば、上記説明したプログラムについて、「プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」の発明または「データ信号」の発明として捉えても良い。