特許第6979382号(P6979382)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979382
(24)【登録日】2021年11月17日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】タービン動翼、及びガスタービン
(51)【国際特許分類】
   F01D 5/20 20060101AFI20211202BHJP
   F01D 5/18 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   F01D5/20
   F01D5/18
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-64577(P2018-64577)
(22)【出願日】2018年3月29日
(65)【公開番号】特開2019-173694(P2019-173694A)
(43)【公開日】2019年10月10日
【審査請求日】2021年1月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】飯田 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 竜太
【審査官】 吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−118503(JP,A)
【文献】 米国特許第6672829(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0078916(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0047057(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/20
F01D 5/18
F02C 7/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンロータの径方向に延出するとともに、前縁及び後縁で互いに接続される圧力面側翼壁及び負圧面側翼壁、並びに前記圧力面側翼壁及び負圧面側翼壁の端部のうち、前記タービンロータの径方向の外側に配置された先端部に設けられ、ケーシングの内周面と対向する外面を含む天板を有する翼体と、
前記天板の前記圧力面側翼壁側に、前記天板の外面から前記タービンロータの径方向外側に突出し、前記翼体の前縁側から後縁側に向って延びるチップシニングと、
を備えるタービン動翼であって、
前記翼体は、前記天板を貫通して形成された冷却孔と、
前記天板の内面において、前記チップシニングに対向する位置または前記チップシニングに対向する位置よりも前記負圧面側翼壁側に形成され、前記冷却孔に前記冷却媒体を導入する導入口と、
前記天板の外面のうち、前記チップシニングよりも前記圧力面側翼壁側に形成され、前記冷却孔を経由して冷却媒体を吐出する吐出口と、
を有しており、
前記天板の外面を基準としたときの前記チップシニングの突出量は、前記冷却孔の前記吐出口の径の0.25倍以上2.00倍以下であるタービン動翼。
【請求項2】
前記チップシニングは、前記天板の前記圧力面側翼壁側のみに備える請求項1記載のタービン動翼。
【請求項3】
前記冷却孔は、前記翼体の前縁側から後縁側に向かう方向に複数形成されている請求項1または2記載のタービン動翼。
【請求項4】
前記天板は、前記外面の外側に該外面を囲むように配置され、前記外面に対して傾斜した傾斜面を有する請求項1から3のうち、いずれか一項記載のタービン動翼。
【請求項5】
前記チップシニングよりも前記負圧面側翼壁側に位置する前記天板の外面と前記冷却孔の軸線とが成す角度は、25°以上65°以下である請求項1から4のうち、いずれか一項記載のタービン動翼。
【請求項6】
前記チップシニングよりも前記圧力面側翼壁側に位置する前記天板の外面の幅は、前記冷却孔の前記吐出口の径の1倍以上3倍以下である請求項1から5のうち、いずれか一項記載のタービン動翼。
【請求項7】
前記傾斜面の幅は、前記冷却孔の前記吐出口の径の0.25倍以上3.00倍以下である請求項4記載のタービン動翼。
【請求項8】
複数の前記冷却孔は、前記圧力面側翼壁側の外面である圧力面に対して傾斜するとともに、前記翼体の前縁側または前記翼体の後縁側を向く冷却孔を含む請求項3から7のうち、いずれか一項記載のタービン動翼。
【請求項9】
前記翼体内に設けられ、該翼体内において冷却媒体が流れる流路を形成する流路形成部材を有しており、
前記流路形成部材は、前記天板と前記負圧面側翼壁との境界部分に前記冷却媒体を導いた後、該冷却媒体を前記冷却孔に案内する前記流路を形成する請求項1から8のうち、いずれか一項記載のタービン動翼。
【請求項10】
前記チップシニング及び前記翼体は、金属製基材を加工することで一体形成されており、
前記翼体を構成する前記金属製基材の外面のみを覆う遮熱コーティング層を有する請求項1から9のうち、いずれか一項記載のタービン動翼。
【請求項11】
請求項1から10のうち、いずれか一項記載のタービン動翼が周方向及び軸線方向に複数配置されたタービンロータ、及び複数の前記タービン動翼を有するタービンと、
燃焼用空気を吸入して圧縮空気を生成する圧縮機と、
前記圧縮空気に燃料を噴射して燃焼させ、前記タービンを駆動させる燃焼ガスを生成する燃焼器と、
隙間を介在させた状態で前記チップシニングと対向する分割環を含み、かつ前記タービンロータ及び複数の前記タービン動翼を収容するケーシングと、
を備えるガスタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービン動翼、及びガスタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、圧縮機、燃焼器、及びタービンを備える。タービンは、複数の静翼及び動翼(タービン動翼)を有する。
ガスタービンでは、複数の静翼及び動翼に作用する燃焼ガスの温度が1500℃の高温に達する。このため、静翼及び動翼は、内部に冷却媒体が流れる冷却通路及び冷却孔を備える。静翼及び動翼は、冷却媒体により翼壁を冷却するとともに、翼壁に設けた冷却穴から吐出された冷却媒体を燃焼ガス側へ流出させることで翼面の冷却を行う。
【0003】
動翼の先端部とケーシングを構成する分割環(ケーシングの一部)との間には、両者が干渉しないよう一定の隙間が形成されている。この隙間が大きすぎると、燃焼ガスの一部が翼先端部を乗り越えて下流側に流失して、チップリークが大きくなってしまう。チップリークが大きくなると、エネルギー損失が大きくなるため、ガスタービンの熱効率が低下してしまう。
また、上記隙間が狭すぎると、動翼の翼体と分割環とが接触して、翼体が損傷する可能性がある。
【0004】
そこで、従来、上記隙間からの燃焼ガスの流出、及び翼体の損傷を抑制するために、翼体の先端部にチップシニング(「チップスキーラ」ともいう)を設けることが行われている。ところで、チップシニングは、チップシニングの両側面、及びチップシニングの頂面の3方向から加熱されるため、熱負荷が大きい。このため、チップシニングを熱から保護するために、チップシニングを冷却することが行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
特許文献1には、天板の腹側に形成されたチップシニングと、チップシニングの下端及び天板を貫通し、腹側(圧力面側)に冷却媒体を吐出可能な状態で傾斜した冷却孔を備えた動翼が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5261789号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、チップシニングの下端及び天板を貫通するように、冷却孔を形成するため、チップシニングの一部から冷却媒体が吐出される。
これにより、吐出された冷却冷媒がチップシニングの壁面に沿ってケーシング側に流れやすくなるため、天板の外面から離間する方向に冷却媒体が流れる可能性があった。
このため、冷却孔から吐出された冷却媒体を用いたフィルム冷却効果により、チップシニングよりも背側に位置する天板を冷却することが困難であった。
つまり、チップシニングよりも背側に位置する天板を冷却するための冷却媒体が別途必要となるため、翼体の冷却に必要な冷却媒体の使用量を低減できないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、翼体の冷却に使用する冷却媒体の使用量を低減することの可能なタービン動翼、及びガスタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係るタービン動翼によれば、タービンロータの径方向に延出するとともに、前縁及び後縁で互いに接続される圧力面側翼壁及び負圧面側翼壁、並びに前記圧力面側翼壁及び負圧面側翼壁の端部のうち、前記タービンロータの径方向の外側に配置された先端部に設けられ、ケーシングの内周面と対向する外面を含む天板を有する翼体と、前記天板の前記圧力面側翼壁側に、前記天板の外面から前記タービンロータの径方向外側に突出し、前記翼体の前縁側から後縁側に向って延びるチップシニングと、を備えるタービン動翼であって、前記翼体は、前記天板を貫通して形成された冷却孔と、前記天板の内面において、前記チップシニングに対向する位置または前記チップシニングに対向する位置よりも前記負圧面側翼壁側に形成され、前記冷却孔に前記冷却媒体を導入する導入口と、前記天板の外面のうち、前記チップシニングよりも前記圧力面側翼壁側に形成され、前記冷却孔を経由して冷却媒体を吐出する吐出口と、を有しており、前記天板の外面を基準としたときの前記チップシニングの突出量は、前記冷却孔の前記吐出口の径の0.25倍以上2.00倍以下である。
【0010】
本発明によれば、天板の内面において、チップシニングに対向する位置またはチップシニングに対向する位置よりも負圧面側翼壁側に形成され、冷却孔に冷却媒体を導入する導入口と、天板の外面のうち、チップシニングよりも圧力面側翼壁側に形成され、冷却孔を経由して冷却媒体を吐出する吐出口と、を有することで、チップシニングの上流側に冷却媒体を吐出して、チップシニングの突出面、及びチップシニングよりも負圧面側翼壁側に位置する天板の外面に沿って冷却媒体を流すことが可能となる。
【0011】
これにより、吐出口から吐出された冷却媒体を用いて、チップシニングよりも負圧面側翼壁側に位置する天板の外面、及びチップシニングをフィルム冷却することが可能となるので、タービン動翼の翼体の冷却に使用する冷却媒体の使用量を低減することができる。
【0012】
また、チップシニングに対向する位置またはチップシニングに対向する位置よりも負圧面側翼壁側に形成され、冷却孔に冷却媒体を導入する導入口を有することで、タービンロータの径方向における冷却孔とチップシニングとの距離を近くすることが可能となるので、天板を貫通する冷却孔を流れる冷却媒体を用いてチップシニングを内側から冷却することができる。これにより、チップシニングを効率良く冷却することができる。
【0013】
また、上記本発明の一態様に係るタービン動翼において、前記チップシニングは、前記天板の前記圧力面側翼壁側のみに備える。
【0014】
このように、天板の前記圧力面側翼壁側のみにチップシニングを設けることで、フィルム冷却効果を高めることができる。
【0015】
また、上記本発明の一態様に係るタービン動翼において、前記冷却孔は、前記翼体の前縁側から後縁側に向かう方向に複数形成されていてもよい。
【0016】
このように、翼体の前縁側から後縁側に向かう方向に複数の冷却孔を形成することで、複数の冷却孔の吐出口から吐出された冷却媒体を用いて、チップシニングよりも負圧面側翼壁側に位置する天板の外面全体をフィルム冷却することができる。
【0017】
また、上記本発明の一態様に係るタービン動翼において、前記天板は、前記外面の外側に該外面を囲むように配置され、前記外面に対して傾斜した傾斜面を有してもよい。
【0018】
このように、天板の外面の外側を囲むように配置され、外面に対して傾斜した傾斜面を天板が有することで、傾斜面が形成された部分の温度が高くなりすぎることを抑制できる。
【0019】
また、本発明の一態様に係るタービン動翼によれば、前記チップシニングよりも前記負圧面側翼壁側に位置する前記天板の外面と前記冷却孔の軸線とが成す角度は、25°以上65°以下であってもよい。
【0020】
例えば、天板の外面と冷却孔とが成す角度が25°よりも小さいと、冷却孔を加工することが困難となる恐れがある。
一方、天板の外面と冷却孔とが成す角度が65°よりも大きいと、冷却孔から吐出された冷却媒体がチップシニングの突出面から離れた位置を流れてしまうため、フィルム冷却効果を得ることが困難となる恐れがある。
したがって、チップシニングよりも負圧面側翼壁側に位置する天板の外面と冷却孔とが成す角度を25°以上65°以下とすることで、冷却孔を加工しやすくした上で、チップシニングよりも負圧面側翼壁側に位置する天板の外面をフィルム冷却することができる。
【0021】
また、本発明の一態様に係るタービン動翼によれば、前記天板の外面を基準としたときの前記チップシニングの突出量は、前記冷却孔の前記吐出口の径の0.25倍以上2.00倍以下であってもよい。
【0022】
例えば、チップシニングを適度に突出させることで、チップシニングよりも圧力面側翼壁側に位置する冷却孔からの冷却媒体をシニングとその下流の天板の外面に、より沿う様に流すことができ、フィルム冷却効果を高めることができる。
チップシニングの突出量が冷却孔の吐出口の径の0.25倍よりも小さいと、フィルム冷却効果を高める効果も小さく、また、天板とケーシングの隙間が狭くなり天板が接触する可能性も高まり、チップシニングを設ける効果が小さくなる恐れがある。
一方、チップシニングの突出量が冷却孔の吐出口の径の2.00倍よりも大きいと、冷却孔吐出口及び天板とチップシニング先端までの距離が遠くなり、冷却媒体がチップシニングや天板から離間しやすくなり、負圧面側翼壁側に位置する天板の外面に沿って冷却媒体を流すことが困難となる恐れがある。
したがって、チップシニングの突出量を冷却孔の吐出口の径の0.25倍以上2.00倍以下とすることで、チップシニングを設ける効果を維持した上で、チップシニングよりも負圧面側翼壁側に位置する天板の外面を冷却することができる。
【0023】
また、本発明の一態様に係るタービン動翼によれば、前記チップシニングよりも前記圧力面側翼壁側に位置する前記天板の外面の幅は、前記冷却孔の前記吐出口の径の1倍以上3倍以下であってもよい。
【0024】
チップシニングよりも圧力面側翼壁側に位置する天板の外面の幅が冷却孔の吐出口の径の1倍よりも小さいと、チップシニングよりも圧力面側翼壁側に位置する天板の外面に冷却孔の吐出口を形成することが困難となる恐れがある。
一方、チップシニングよりも圧力面側翼壁側に位置する天板の外面の幅が冷却孔の吐出口の径の3倍よりも大きいと、冷却孔とチップシニングとの距離が離れすぎるため、チップシニングを効率良く冷却することが困難となる可能性や圧力面側翼壁の縁や傾斜面の温度が高くなりすぎる可能性ある。
したがって、チップシニングよりも圧力面側翼壁側に位置する天板の外面の幅を、冷却孔の吐出口の径の1倍以上3倍以下にすることで、冷却孔を形成しやすくした上で、チップシニングを効率良く冷却良く冷却することができるとともに、傾斜面の温度が高くなりすぎることを抑制できる。
【0025】
また、本発明の一態様に係るタービン動翼によれば、前記傾斜面の幅は、前記冷却孔の前記吐出口の径の0.25倍以上3.00倍以下であってもよい。
【0026】
例えば、傾斜面の幅が冷却孔の吐出口の径の0.25倍よりも小さいと、冷却孔と冷却孔の中間の位置で翼壁側と天板側の両方からの加熱で傾斜面や縁の温度が高くなりすぎる可能性がある。一方、傾斜面の幅が冷却孔の吐出口の径の3.00倍よりも大きいと、正圧面側翼壁の近傍に位置する傾斜面が冷却孔から遠ざかり温度が高くなりすぎる可能性がある。
したがって、傾斜面の幅を冷却孔の前記吐出口の径の0.25倍以上3.00倍以下にすることで、傾斜面や縁の温度上昇を抑制することができる。
【0027】
また、本発明の一態様に係るタービン動翼によれば、複数の前記冷却孔は、前記圧力面側翼壁側の外面である圧力面に対して傾斜するとともに、前記翼体の前縁側または前記翼体の後縁側を向く冷却孔を含んでもよい。
【0028】
このように、圧力面に対して傾斜するとともに、翼体の前縁側または翼体の後縁側を向く冷却孔を含むことで、複数の冷却孔から吐出された冷却媒体を、圧力面側翼壁側に位置するチップシニングの側面に沿わせることが可能となるので、フィルム冷却による効果を増加させることができる。
【0029】
また、本発明の一態様に係るタービン動翼によれば、前記翼体内に設けられ、該翼体内において冷却媒体が流れる流路を形成する流路形成部材を有しており、前記流路形成部材は、前記天板と前記負圧面側翼壁との境界部分に前記冷却媒体を導いた後、該冷却媒体を前記冷却孔に案内する前記流路を形成してもよい。
【0030】
このように、翼体内に設けられ、天板と負圧面側翼壁との境界部分に冷却媒体を導いた後、冷却媒体を冷却孔に案内するように流路を形成する流路形成部材を有することで、冷却孔から吐出させる冷却媒体を用いて、温度が高くなりやすい天板と負圧面側翼壁との境界部分の内側を冷却することができる。
【0031】
また、本発明の一態様に係るタービン動翼によれば、前記チップシニング及び前記翼体は、金属製基材を加工することで一体形成されており、前記翼体を構成する前記金属製基材の外面のみを覆う遮熱コーティング層を有してもよい。
【0032】
このように、翼体を構成する金属製基材の外面のみを覆う遮熱コーティング層を有することで、チップシニングより強度の弱いケーシングを切削することで、翼体側の遮熱コーティングを保護することができる。
【0033】
また、本発明の一態様に係るガスタービンによれば、上記タービン動翼が周方向及び軸線方向に複数配置されたタービンロータ、及び複数の前記タービン動翼を有するタービンと、燃焼用空気を吸入して圧縮空気を生成する圧縮機と、前記圧縮空気に燃料を噴射して燃焼させ、前記タービンを駆動させる燃焼ガスを生成する燃焼器と、隙間を介在させた状態で前記チップシニングと対向する分割環を含み、かつ前記タービンロータ及び複数の前記タービン動翼を収容するケーシングと、を備える。
【0034】
このような構成とされたガスタービンは、複数のタービン動翼の冷却に使用する冷却媒体の使用量を低減することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、タービン動翼の翼体の冷却に使用する冷却媒体の使用量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の実施形態に係るガスタービンの概略構成を模式的に示す断面図である。
図2図1に示すタービン動翼をタービンロータの径方向外側から平面視した模式的な図である。
図3図2に示すタービン動翼のA−A線方向の断面図である。
図4図2に示すタービン動翼の領域Bを拡大した図である。
図5】(段差の高さH)/(冷却孔の直径D)とフィルム冷却効果との関係を示すグラフである。
図6】本実施形態の第1変形例に係るタービン動翼を説明するための図である。
図7】本実施形態の第2変形例に係るタービン動翼を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照して本発明を適用した実施形態について詳細に説明する。
【0038】
(実施形態)
図1を参照して、本発明の実施形態に係るガスタービン10について説明する。図1では、説明の便宜上、ガスタービン10の構成要素ではない発電機15も図示する。図1において、Oはロータ30の軸線(以下、「軸線O」という)を示している。ロータ30の軸線Oは、タービンロータ31の軸線でもある。以下の説明において、「タービンロータ31の軸線O」という場合がある。また、図1に示す圧縮機11に記載された矢印は、圧縮空気の流れ方向を示している。
【0039】
ガスタービン10は、圧縮機11と、燃焼器12と、タービン13と、を有する。
圧縮機11は、圧縮機ロータ21と、複数の圧縮機動翼段23と、圧縮機ケーシング24と、複数の圧縮機静翼段25と、を有する。
【0040】
圧縮機ロータ21は、円筒形状とされた回転体である。圧縮機ロータ21は、外周面21aを有する。圧縮機ロータ21は、タービン13を構成するタービンロータ31と連結されている。圧縮機ロータ21は、タービンロータ31とともに、ロータ30を構成している。圧縮機ロータ21は、軸線O回りに回転する。
【0041】
複数の圧縮機動翼段23は、軸線O方向に間隔を空けた状態で、圧縮機ロータ21の外周面21aに配列されている。圧縮機動翼段23は、圧縮機ロータ21の外周面21aの周方向に間隔を空けて配列された複数の圧縮機動翼27を有する。複数の圧縮機動翼27は、圧縮機ロータ21とともに回転する。
【0042】
圧縮機ケーシング24は、複数の圧縮機動翼27の先端部との間に隙間を介在させた状態で、圧縮機ロータ21及び複数の圧縮機動翼段23を収容している。
圧縮機ケーシング24は、軸線Oを中心軸とする筒状の部材である。圧縮機ケーシング24は、内周面24aを有する。
【0043】
複数の圧縮機静翼段25は、軸線O方向に間隔を空けた状態で、圧縮機ケーシング24の内周面24aに配列されている。複数の圧縮機静翼段25は、軸線O方向から見て、圧縮機動翼段23と圧縮機静翼段25とが交互に配置されるように配列されている。
圧縮機静翼段25は、圧縮機ケーシング24の内周面24aの周方向に間隔を空けて配列された複数の圧縮機静翼28を有する。
上記構成とされた圧縮機11は、燃焼用空気を吸入して圧縮空気を生成する。圧縮機11により生成された圧縮空気は、燃焼器12内に流れ込む。
【0044】
燃焼器12は、圧縮機11とタービン13の間に設けられている。燃焼器12は、圧縮機11で生成された圧縮空気に燃料を噴射させることで、燃焼ガスを生成する。燃焼器12により生成された高温の燃焼ガスは、タービン13内に導入され、タービン13を駆動させる。
【0045】
タービン13は、タービンロータ31と、複数のタービン動翼段33と、タービンケーシング34と、複数のタービン静翼段35と、を有する。
【0046】
タービンロータ31は、円筒形状とされた回転体である。タービンロータ31は、外周面31aを有する。タービンロータ31は、軸線O回りに回転する。
【0047】
複数のタービン動翼段33は、軸線O方向に間隔を空けた状態で、タービンロータ31の外周面31aに配列されている。タービン動翼段33は、タービンロータ31の外周面21aの周方向に間隔を空けて配列された複数のタービン動翼37を有する。複数のタービン動翼37は、タービンロータ31とともに回転する。
【0048】
タービンケーシング34は、複数のタービン動翼37の先端部との間に隙間を介在させた状態で、タービンロータ31及び複数のタービン動翼段33を収容している。
タービンケーシング34は、軸線Oを中心軸とする筒状の部材である。タービンケーシング34は、内周面34aを有する。
タービンケーシング34は、隙間を介在させた状態で、複数のタービン動翼37の先端部と対向する分割環41を有する。
【0049】
複数のタービン静翼段35は、軸線O方向に間隔を空けた状態で、タービンケーシング34の内周面34aに配列されている。複数のタービン静翼段35は、軸線O方向から見て、タービン動翼段33とタービン静翼段35とが交互に配置されるように配列されている。
タービン静翼段35は、タービンケーシング34の内周面34aの周方向に間隔を空けて配列された複数のタービン静翼38を有する。
【0050】
図2図4を参照して、第1の実施形態のタービン動翼37の構成について説明する。図2において、Dはタービンロータ31の回転方向(以下、「D方向」という)、Eは分割環41とタービン動翼37との間を流れる燃焼ガスの流れ方向(以下、「E方向」という)をそれぞれ示している。図2では、図1に示す構造体と同一構成部分には同一符号を付す。
【0051】
図3において、Oは冷却孔53の軸線(以下、「軸線O」という)、Rは冷却孔53の吐出口の径(以下、「径R」という)、θは負圧面側翼壁47側(背側)に位置する天板49の外面49aと冷却孔53の軸線Oとが成す角度(以下、「傾斜角度θ」という)をそれぞれ示している。
また、図3において、Hは天板49の外面49aを基準としたときのチップシニング45の突出量(以下、「突出量H」という)、Wは面取り部49Aの傾斜面49Aaの幅(以下、「幅W」という)、Wはチップシニング45よりも圧力面側翼壁46側(腹側)に位置する天板49の外面49aの幅(以下、「幅W」という)をそれぞれ示している。
さらに、図3に示す点線の矢印Sは、冷却孔53の吐出口53Bから吐出された冷却媒体の流れを模式的に示している。
また、図3では、図2に示す構造体と同一構成部分には同一符号を付す。図4では、図2及び図3に示す構造体と同一構成部分には同一符号を付す。
【0052】
第1の実施形態のタービン動翼37は、翼体43と、チップシニング45と、を有する。
翼体43は、前縁43Aと、後縁43Bと、圧力面側翼壁46と、負圧面側翼壁47と、天板49と、冷却流路52と、冷却孔53と、を有する。
【0053】
圧力面側翼壁46及び負圧面側翼壁47は、タービンロータ31の径方向に延出している。圧力面側翼壁46及び負圧面側翼壁47は、それぞれ湾曲した形状とされている。圧力面側翼壁46及び負圧面側翼壁47は、前縁43A及び後縁43Bで互いに接続されている。
【0054】
圧力面側翼壁46は、圧力面側翼壁46の外周面となる圧力面46aを有する。負圧面側翼壁47は、負圧面側翼壁47の外周面となる負圧面47aを有する。図1に示すガスタービン10が駆動して、タービンロータ31がD方向に回転すると、負圧面47aは、圧力面46aよりも低い圧力を受ける。
【0055】
天板49は、圧力面側翼壁46及び負圧面側翼壁47の端部(具体的には、基端部及び先端部)のうち、タービンロータ31の径方向の外側に配置された先端部に設けられている。
天板49は、板状の部材であり、外面49aと、内面49bと、面取り部49A,49Bと、を有する。
天板49の外面49aは、タービンケーシング34の内周面34a(具体的には、分割環41の内周面41a)と対向するとともにタービンケーシング34の内周面34aに沿う形状或いは平面とされたな面である。
天板49の内面49bは、外面49aの反対側に配置された面であり、翼体43内に形成された冷却流路52に露出されている。
【0056】
面取り部49Aは、圧力面側翼壁46側に位置する天板49の角部を面取り加工することで形成されている。面取り部49Aは、翼体43の前縁43Aから後縁43Bに亘って形成されている。
面取り部49Aは、天板49の外面49aに対して傾斜した傾斜面49Aaを有する。図3では、一例として、傾斜面49Aaが平面の場合を例に挙げて説明したが、傾斜面49Aaは、例えば、凸状とされた湾曲面であってもよい。
【0057】
傾斜面49Aaの幅Wは、例えば、冷却孔53の吐出口53Bの径Rの0.25倍以上3.00倍以下であることが好ましい。
【0058】
例えば、傾斜面49Aaの幅Wが冷却孔53の吐出口53Bの径Rの0.25倍よりも小さいと、冷却孔53と冷却孔53の中間の位置で翼壁側と天板49側の両方からの加熱で面取り部49A(傾斜面49Aaを含む)もしくは縁の温度が高くなりすぎる可能性がある。一方、傾斜面49Aaの幅Wが冷却孔53の吐出口53Bの径Rの3.00倍よりも大きいと、圧力面側翼壁46の近傍の傾斜面49Aaが冷却孔53から遠ざかり温度が高くなりすぎる可能性がある。
したがって、傾斜面49Aaの幅を冷却孔53の吐出口53Bの径Rの0.25倍以上3.00倍以下にすることで、面取り部49A(傾斜面49Aaを含む)や縁の温度上昇を抑制することができる。
傾斜面49Aaの幅Wは、例えば、冷却孔53の吐出口53Bの径Rの0.5倍であることがより好ましい。
【0059】
面取り部49Bは、負圧面側翼壁47側に位置する天板49の角部を面取り加工することで形成されている。面取り部49Bは、翼体43の前縁43Aから後縁43Bに亘って形成されている。
面取り部49Bは、天板49の外面49aに対して傾斜した傾斜面49Baを有する。図3では、一例として、傾斜面49Baが平面の場合を例に挙げて説明したが、傾斜面49Baは、例えば、凸状とされた湾曲面であってもよい。
【0060】
上述した面取り部49A,49Bの傾斜面49Aa,49Baは、天板49の外面49aを囲むように配置されている。このような構成とされた傾斜面49Aa,49Baを有することで、燃焼ガスにより天板49の角部の温度が高くなりすぎることを抑制できる。
【0061】
上述した圧力面側翼壁46、負圧面側翼壁47、及び天板49は、金属製基材56と、遮熱コーティング層58(Thermal Barrier Coating層(TBC層))と、を含んだ構成とされている。
【0062】
金属製基材56は、耐熱性に優れた金属材料で構成されている。金属製基材56は、外面56aを有する。
遮熱コーティング層58は、翼体43を構成する金属製基材56の外面56aを被覆している。遮熱コーティング層58は、高温の燃焼ガスから金属製基材56を保護する機能を有する。
【0063】
遮熱コーティング層58としては、例えば、遮熱層と、結合層と、が積層された2層積層体を用いることが可能である。結合層は、遮熱層と金属製基材56との間の熱膨張差を緩和させて、遮熱層と金属製基材56との密着性を向上させるための層である。
【0064】
遮熱層としては、例えば、熱伝導率の小さいセラミックス製の遮熱層(例えば、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)層)を用いることが可能である。また、結合層としては、例えば、MCrAlYと呼ばれる結合層を用いることが可能である。
【0065】
冷却流路52は、圧力面側翼壁46、負圧面側翼壁47、及び天板49の内側(翼体43の内側)に設けられている。冷却流路52には、高温雰囲気下に配置される翼体43を冷却するための冷却媒体が流れている。
【0066】
冷却孔53は、天板49の外面49aに設けられたチップシニング45の下方に位置する天板49からチップシニング45よりも圧力面側翼壁46側に位置する天板49に亘って形成されている。
冷却孔53は、タービンロータ31の径方向においてチップシニング45と対向するように傾斜した状態で天板49を貫通している。これにより、冷却孔53は、冷却媒体が流れる冷却流路52と連通している。冷却孔53の傾斜角度θは、一定の角度とされている。
【0067】
冷却孔53は、導入口53Aと、吐出口53Bと、を有する。導入口53Aは、天板49の内面49bに配置されている。導入口53Aは、冷却流路52内を流れる冷却冷媒を冷却孔53内に導入する。導入口53Aは、チップシニング45に対向する位置またはチップシニング45に対向する位置よりも負圧面側翼壁47側に形成されている。 吐出口53Bは、チップシニング45よりも圧力面側翼壁46側に位置する天板49の外面49aに配置されている。吐出口53Bは、分割環41の内周面41aと天板49の外面49aとの間に形成された空間に冷却媒体を吐出する。
【0068】
このように、チップシニング45よりも圧力面側翼壁46側に位置する天板49の外面49aに冷却媒体を吐出する吐出口53Bが配置された冷却孔53を有することで、チップシニング45から離間する主流の上流側に冷却媒体を吐出して、チップシニング45の突出面45a、及びチップシニング45よりも負圧面側翼壁47側に位置する天板49の外面49aに沿って冷却媒体を流す(主流の流れに冷却媒体をのせて流す)ことが可能となる。
【0069】
これにより、吐出口53Bから吐出された冷却媒体を用いて、チップシニング45よりも負圧面側翼壁47側に位置する天板49の外面49a、及びチップシニング45をフィルム冷却することが可能となるので、翼体43の冷却に使用する冷却媒体の使用量を低減させることができる。
【0070】
また、タービンロータ31の径方向においてチップシニング45と対向するように傾斜した状態で天板49を貫通するように冷却孔53を配置させることで、タービンロータ31の径方向における冷却孔53とチップシニング45との距離を近くすることが可能となる。これにより、対流冷却によりチップシニング45を効率良く冷却することができる。
【0071】
上記構成とされた冷却孔53は、前縁43Aから後縁43Bに向かう方向に間隔を空けて複数配置されている。
このように、翼体43の前縁43A側から後縁43B側に向かう方向に複数の冷却孔53を形成することで、複数の冷却孔53の吐出口53Bから吐出された冷却媒体を用いて、チップシニング45よりも負圧面側翼壁47側に位置する天板49の外面49a全体をフィルム冷却することができる。
【0072】
タービンロータ31の径方向外側から複数の冷却孔53を視た状態において、複数の冷却孔53は、複数の冷却孔53の軸線Oが圧力面側翼壁46の外面である圧力面46aに対して直交するように配置されている。
【0073】
チップシニング45よりも負圧面側翼壁47側に位置する天板49の外面49aと各冷却孔53の軸線Oとが成す角度θは、例えば、25°以上65°以下であることが好ましい。
【0074】
例えば、天板49の外面49aと冷却孔53とが成す角度θが25°よりも小さいと、冷却孔53を加工することが困難となる恐れがある。
一方、天板49の外面49aと冷却孔53とが成す角度θが65°よりも大きいと、冷却孔53から吐出された冷却媒体がチップシニング45の突出面45a(分割環41と内周面41aと対向する面)から離れた位置を流れてしまうため、フィルム冷却効果を得ることが困難となる恐れがある。
【0075】
したがって、チップシニング45よりも負圧面側翼壁47側に位置する天板49の外面49aと冷却孔53とが成す角度を25°以上65°以下とすることで、冷却孔53を加工しやすくした上で、チップシニング45よりも負圧面側翼壁47側に位置する天板49の外面49aをフィルム冷却することができる。
天板49の外面49aと冷却孔53とが成す角度θは、例えば、45°であることがより好ましい。
【0076】
なお、冷却孔53の吐出口53Bの径Rは、タービン動翼37の大きさや周方向に配置する数等に応じて、適宜設定することが可能である。
【0077】
チップシニング45は、翼体43を形成する際に使用する金属製基材56の一部を除去することで形成されている。つまり、チップシニング45は、翼体43と一体形成されている。
チップシニング45は、圧力面側翼壁46側に位置する49天板の外面49aからタービンロータ31の径方向の外側(言い換えれば、分割環41の内周面41a側)に突出している。チップシニング45は、翼体43の前縁43A側から後縁43B側に向って延びている。
【0078】
チップシニング45は、突出面45aと、側面45b,45cと、を有する。突出面45aは、分割環41の内周面41aと対向する面である。側面45bは、圧力面側翼壁46側に配置され、かつ天板49の外面49aから露出された側面である。側面45cは、負圧面側翼壁47側に配置され、かつ天板49の外面49aから露出された側面である。
【0079】
チップシニング45の表面には、遮熱コーティング層58(TBC層)が形成されていない。このように、チップシニング45の表面にTBC層を形成しないことで、チップシニング45と分割環41とが接触した際のチップシニング45による相手側の被切削性を確保することができる。
【0080】
チップシニング45の突出量Hは、図5に示すように、例えば、冷却孔53の吐出口53Bの径Rの0.25倍以上2.00倍以下であることが好ましい。
【0081】
図5に示すように、チップシニング45を適度に突出させることで、チップシニング45よりも圧力面側翼壁46側に位置する冷却孔53からの冷却媒体をチップシニング45とその下流の天板49の外面に、より沿う様に流すことができ、フィルム冷却効果を高めることができる。
チップシニング45の突出量Hが冷却孔53の吐出口53Bの径Rの0.25倍よりも小さいと、フィルム冷却効果を高める効果も小さく、また、天板49とタービンケーシング34の隙間が狭くなり天板49が接触する可能性も高まるため、チップシニング45を設ける効果が小さくなる可能性がある。
一方、チップシニング45の突出量Hが冷却孔53の吐出口53Bの径Rの2.00倍よりも大きいと、冷却孔53の吐出口及び天板とチップシニング45の先端までの距離が遠くなり、冷却媒体がチップシニング45や天板49から離間しやすくなり、チップシニング45よりも負圧面側翼壁47側に位置する天板49の外面49aに沿って冷却媒体を流すことが困難となる恐れがある。
したがって、チップシニング45の突出量を冷却孔53の吐出口53Bの径Rの0.25倍以上2.00倍以下とすることで、チップシニング45を設ける効果を維持した上で、チップシニング45よりも負圧面側翼壁47側に位置する天板49の外面49aを冷却することができる。
チップシニング45の突出量Hは、例えば、冷却孔53の吐出口53Bの径Rの1倍であることがより好ましい。
【0082】
また、チップシニング45よりも圧力面側翼壁46側に位置する天板49の外面49aの幅Wは、例えば、冷却孔53の吐出口53Bの径Rの1倍以上3倍以下であることが好ましい。
【0083】
チップシニング45よりも圧力面側翼壁46側に位置する天板49の外面49aの幅Wが冷却孔53の吐出口の径Rの1倍よりも小さいと、チップシニング45よりも圧力面側翼壁46側に位置する天板49の外面49aに冷却孔53の吐出口53Bを形成することが困難となる恐れがある。
一方、チップシニング45よりも圧力面側翼壁46側に位置する天板49の外面49aの幅Wが冷却孔53の吐出口53Bの径Rの3倍よりも大きいと、冷却孔53とチップシニング45との距離が離れすぎるため、チップシニング45を効率良く冷却することが困難となる可能性や圧力面側翼壁46の縁や傾斜面49Aaの温度が高くなりすぎる可能性ある。
したがって、チップシニング49よりも圧力面側翼壁46側に位置する天板49の外面49aの幅Wを冷却孔53の吐出口53Bの径Rの1倍以上3倍以下にすることで、冷却孔53を形成しやすくした上で、チップシニング45を効率良く冷却良く冷却することができるとともに、傾斜面49Aaの温度が高くなりすぎることを抑制できる。
なお、チップシニング45よりも圧力面側翼壁46側に位置する天板49の外面49aの幅Wは、例えば、冷却孔53の吐出口53Bの径Rの2倍であることがより好ましい。
【0084】
本実施形態のタービン動翼37によれば、チップシニング45に対向する位置またはチップシニング45に対向する位置よりも負圧面側翼壁47側に形成され、冷却孔53に冷却媒体を導入する導入口53Aと、天板49の外面49aのうち、チップシニング45よりも圧力面側翼壁46側に形成され、冷却孔53を経由して冷却媒体を吐出する吐出口53Bと、を有することで、チップシニング45の上流側に冷却媒体を吐出して、チップシニング45の突出面45a、及びチップシニング45よりも負圧面側翼壁47側に位置する天板49の外面49aに沿って冷却媒体を流すことが可能となる。
【0085】
これにより、吐出口53Bから吐出された冷却媒体を用いて、チップシニング45よりも負圧面側翼壁47側に位置する天板49の外面49a、及びチップシニング45をフィルム冷却することが可能となるので、翼体43の冷却に使用する冷却媒体の使用量を低減させることができる。
【0086】
また、チップシニング45に対向する位置またはチップシニング45に対向する位置よりも負圧面側翼壁47側に形成され、冷却孔53に冷却媒体を導入する導入口53Aを有することで、タービンロータ31の径方向における冷却孔53とチップシニング45との距離を近くすることが可能となるので、天板49を貫通する冷却孔53を流れる冷却媒体を用いてチップシニング45を内側から冷却することができる。これにより、チップシニング45を効率良く冷却することができる。
【0087】
また、上述したタービン動翼37を複数有するガスタービン10は、複数のタービン動翼37の冷却に使用する冷却媒体の使用量を低減することができる。
【0088】
ここで、図6を参照して、本実施形態の第1変形例に係るタービン動翼65について説明する。図6は、タービン動翼65をタービンロータの径方向外側から平面視した模式的な図である。図6では、図4に示す構造体と同一構成部分には同一符号を付す。また、図6において、Oは、冷却孔67の軸線(以下、「軸線O」という)を示している。
【0089】
タービン動翼65は、冷却孔53の他に、冷却孔67を有すること以外は、タービン動翼37と同様に構成されている。
【0090】
冷却孔67は、タービンロータ(図示せず)の径方向外側から平面視した状態において、圧力面側翼壁46の圧力面46aに対して傾斜するとともに、翼体の後縁側を向くこと以外は、冷却孔53と同様に構成されている。冷却孔67は、冷却冷媒を吐出する吐出口67Aを有する。
【0091】
このような構成とされたタービン動翼65によれば、圧力面側翼壁46の圧力面46aに対して傾斜するとともに、翼体の後縁側を向く冷却孔67を有することで、冷却孔67の吐出口67Aから吐出される冷却冷媒をよりチップシニング及び天板上を沿う様にでき、フィルム冷却による効果を増加させることができる。
【0092】
なお、図6に示す冷却孔67の数は、一例であって、図6に示す冷却孔67の数に限定されない。
また、図6では、一例として、複数の冷却孔53及び冷却孔67を設けた場合を例に挙げて説明したが、全ての冷却孔を冷却孔67で構成してもよい。
また、例えば、複数の冷却孔53は、前縁43A側に位置する前縁側領域、及び後縁45B側に位置する後縁側領域に形成された複数の第1の冷却孔と、前縁側領域と後縁側領域との間に配置された中間領域に形成された複数の第2の冷却孔と、を含み、第1の冷却孔は、第1の冷却孔の軸線方向に対して直交する面で切断した際の切断面が円形状とされており、第2の冷却孔のうち、冷媒流路側に形成された第1の部分と、第1の部分と接続された状態で、第1の部分の外側に形成され、吐出口を含む第2の部分と、を有し、第1の部分は、第2の冷却孔の軸線方向に対して直交する面の切断面が円形状とされ、かつ第2の冷却孔の軸線方向の直径が一定とされており、第2の部分は、第1の部分から吐出口に向かうにつれて、圧力面側翼壁46の圧力面46aに沿う方向の幅が徐々に広くなるように構成してもよい。
【0093】
このように、中間領域に形成された複数の第2の冷却孔が、第2の冷却孔の軸線方向に対して直交する面の切断面が円形状とされ、かつ第2の冷却孔の軸線方向の直径が一定とされた第1の部分と、第1の部分から吐出面に向かうにつれて、圧力面側翼壁の圧力面に沿う方向の幅が徐々に広くなる第2の部分と、を有することで、圧力面側翼壁の圧力面に沿う方向における複数の第2の冷却孔の吐出口の幅が広くなるため、吐出口から広い範囲に冷却媒体を吐出させることが可能となる。
これにより、第1の冷却孔の配列ピッチよりも第2の冷却孔の配列ピッチを広くして、中間領域に配置させる第2の冷却孔の数を削減することができる。
【0094】
また、図6では、圧力面側翼壁46の圧力面46aに対して傾斜するとともに、翼体の後縁側を向く冷却孔67を設けた場合を例に挙げて説明したが、冷却孔67に替えて、圧力面側翼壁46の圧力面46aに対して傾斜するとともに、翼体の前縁側を向く冷却孔を設けてもよい。この場合、複数の冷却孔の一部を翼体の前縁側を向く冷却孔で構成してもよいし、全ての冷却孔を翼体の前縁側を向く冷却孔で構成してもよい。
【0095】
次に、図7を参照して、本実施形態の第2変形例に係るタービン動翼70について説明する。図7において、図3に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0096】
タービン動翼70は、流路形成部材73を有すること以外は、先に説明したタービン動翼37と同様に構成されている。
流路形成部材73は、圧力面側翼壁46の内面46bに設けられている。流路形成部材73は、圧力面側翼壁46の内面46bから負圧面側翼壁47に向かう方向に突出している。
流路形成部材73は、天板49と負圧面側翼壁47との境界部分の内側に冷却媒体を導いた後、冷却媒体を冷却孔53に案内する流路71を形成している。流路71は、冷却流路52に流路形成部材73を設けることで区画される流路である。
【0097】
このような構成とされたタービン動翼70によれば、上述した流路71を形成する流路形成部材73を有することで、冷却孔53に供給される冷却媒体を、冷却孔53に導く前に、天板49と負圧面側翼壁47との境界部分の内側に導くことで、温度が高くなりやすい天板49と負圧面側翼壁47との境界部分の内側を冷却することが可能となる。これにより、タービン動翼70の冷却に必要な冷却媒体を低減することができる。
【0098】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0099】
10…ガスタービン、11…圧縮機、12…燃焼器、13…タービン、15…発電機、21…圧縮機ロータ、21a,31a…外周面、23…圧縮機動翼段、24…圧縮機ケーシング、24a,34a,41a…内周面、25…圧縮機静翼段、27…圧縮機動翼、28…圧縮機静翼、30…ロータ、31…タービンロータ、33…タービン動翼段、34…タービンケーシング、35…タービン静翼段、37,65,70…タービン動翼、38…タービン静翼、41…分割環、43…翼体、43A…前縁、43B…後縁、45…チップシニング、45a…突出面、45b,45c…側面、46…圧力面側翼壁、46a…圧力面、47…負圧面側翼壁、47a…負圧面、49…天板、49a,56a…外面、49A,49B…面取り部、49Aa,49Ba…傾斜面、46b,49b…内面、52…冷却流路、53,67…冷却孔、53A…導入口、53B,67A…吐出口、56…金属製基材、58…遮熱コーティング層、71…流路、73…流路形成部材、B…領域、D,E…方向、H…突出量、O〜O…軸線、W,W…幅、θ…傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7