(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について、
図1〜
図3に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態にかかるガスセンサ1の軸線O方向に沿う断面図、
図2はセンサ素子19の模式分解斜視図、
図3は発熱部146を示す平面図である。
【0014】
図1において、ガスセンサ(全領域空燃比ガスセンサ)1は、センサ素子19と、軸線O方向に貫通してセンサ素子19を挿通させる貫通孔32を有するホルダ(セラミックホルダ)30と、セラミックホルダ30の径方向周囲を取り囲む主体金具11と、を備えている。
センサ素子19のうち、検知部22が形成された先端寄り部位が、セラミックホルダ30より先端に突出している。このように貫通孔32を通されたセンサ素子19は、セラミックホルダ30の後端面側(図示上側)に配置されたシール材(本例では滑石)41を、絶縁材からなるスリーブ43、リングワッシャ45を介して先後方向に圧縮することによって、主体金具11の内側において先後方向に気密を保持して固定されている。
なお、センサ素子19の後端19eを含む後端寄り部位はスリーブ43及び主体金具11より後方に突出しており、その後端寄り部位に形成された各センサパッド部13〜15及びヒータパッド部16,17に、シール材85を通して外部に引き出された各リード線71の先端に設けられた端子金具75が圧接され、電気的に接続されている。また、このセンサパッド部13〜15及びヒータパッド部16,17を含むセンサ素子19の後端寄り部位は、外筒81でカバーされている。以下、さらに詳細に説明する。
【0015】
センサ素子19は軸線O方向に延びると共に、測定対象に向けられる先端側(図示下側)に、被測定ガス側電極155等(
図2参照)からなり被検出ガス中の特定ガス成分を検出する検知部22を備えた帯板状(板状)をなしている。センサ素子19の横断面は、先後において一定の大きさの長方形(矩形)をなし、セラミック(固体電解質等)を主体として細長いものとして形成されている。
このセンサ素子19は、先端寄り部位に検知部22をなす検知セル層151及び一対の電極153、155(
図2参照)が配置され、これに連なり後端寄り部位には、検知用出力取り出し用のリード線71接続用のセンサパッド部14,15(
図2参照)が露出形成されている。
【0016】
本例では、センサ素子19の先端寄り部位内部に、酸素をポンピングするポンプセル層161(
図2参照)が設けられており、後端寄り部位には、ポンプセル制御用のリード線71接続用のセンサパッド部13、15(
図2参照)が露出形成されている。
すなわち、本例では、センサ素子19は検知セル150及びポンプセル160の2セルを備えている。
【0017】
また、本例では、センサ素子19の先端寄り部位の下側に、発熱部146を含むヒータ145(
図2参照)が設けられており、後端寄り部位には、ヒータ電圧印加用のリード線71接続用のヒータパッド部16,17(
図2参照)が露出形成されている。
【0018】
なお、これらセンサパッド部13〜15、ヒータパッド部16,17は縦長矩形に形成され、例えばセンサ素子19の後端寄り部位において、
図2に示すように帯板の幅広面にセンサパッド部13〜15が3つ横に並び、反対面にヒータパッド部16,17が2つ横に並んでいる。
さらに、センサ素子19の検知部22に、アルミナ又はスピネル等からなる多孔質の保護層23が被覆されている。
【0019】
主体金具11は、先後において同心異径の筒状をなし、先端側が小径で、後述するプロテクタ51、61を外嵌して固定するための円筒状の円環状部(以下、円筒部ともいう)12を有し、その後方(図示上方)の外周面には、それより大径をなす、エンジンの排気管への固定用のネジ13が設けられている。そして、その後方には、このネジ13によってセンサ1をねじ込むための多角形部14を備えている。
また、この多角形部14の後方には、ガスセンサ1の後方をカバーする保護筒(外筒)81を外嵌して溶接する円筒部11eが連設され、その後方には外径がそれより小さく薄肉のカシメ用円筒部16を備えている。なお、このカシメ用円筒部16は、
図1では、カシメ後のために内側に曲げられている。なお、多角形部14の下面には、ねじ込み時におけるシール用のガスケット21が取着されている。
一方、主体金具11は、軸線O方向に貫通する内孔18を有している。内孔18の内周面は後端側から先端側に向かって径方向内側に先細るテーパ状の段部11dを有している。
【0020】
主体金具11の内側には、絶縁性セラミック(例えばアルミナ)からなり、概略短円筒状に形成されたセラミックホルダ30が配置されている。セラミックホルダ30は、先端に向かって先細りのテーパ状に形成された先端向き面30aを有している。そして、先端向き面30aの外周寄りの部位が段部11dに係止されつつ、セラミックホルダ30が後端側からシール材41で押圧されることで主体金具11内にセラミックホルダ30が位置決めされ、かつ隙間嵌めされている。
一方、貫通孔32は、セラミックホルダ30の中心に設けられると共に、センサ素子19が略隙間なく通るように、センサ素子19の横断面とほぼ同一の寸法の矩形の開口とされている。
【0021】
センサ素子19は、セラミックホルダ30の貫通孔32に通され、センサ素子19の先端をセラミックホルダ30及び主体金具11の先端12aよりも先方に突出させている。
一方、センサ素子19の先端部位は、本形態では、2層構造からなり、共にそれぞれ通気孔(穴)56、67を有する有底円筒状のプロテクタ(保護カバー)51,61で覆われている。このうち内側のプロテクタ51の後端が、主体金具11の円筒部12に外嵌され、溶接されている。なお、通気孔56はプロテクタ51の後端側で周方向において例えば8箇所設けられている。一方プロテクタ51の先端側にも、周方向において例えば4箇所、排出穴53が設けられている。
また、外側のプロテクタ61は、内側のプロテクタ51に外嵌して、同時に円筒部12に溶接されている。外側のプロテクタ61の通気孔67は、先端寄り部位に、周方向において例えば8箇所設けられており、また、プロテクタ61先端の底部中央にも排出孔69が設けられている。
【0022】
又、
図1に示すように、センサ素子19の後端寄り部位に形成された各センサパッド部13〜15及びヒータパッド部16,17には、外部にシール材85を通して引き出された各リード線71の先端に設けられた各端子金具75がそのバネ性により圧接され、電気的に接続されている。そして、この圧接部を含む各端子金具75は、本例ガスセンサ1では、外筒81内に配置された絶縁性のセパレータ91内に設けられた各収容部内に、それぞれ対向配置で設けられている。なお、セパレータ91は、外筒81内にカシメ固定された保持部材82を介して径方向及び先端側への動きが規制されている。そして、この外筒81の先端部を、主体金具11の後端寄り部位の円筒部11eに外嵌して溶接することで、ガスセンサ1の後方が気密状にカバーされている。
なお、リード線71は外筒81の後端部の内側に配置されたシール材(例えばゴム)85を通されて外部に引き出されており、外筒81の小径筒部83を縮径カシメしてこのシール材85を圧縮することにより、この部位の気密が保持されている。
【0023】
因みに、外筒81の軸線O方向の中央よりやや後端側には、先端側が径大の段部81dが形成され、この段部81dの内面がセパレータ91の後端を先方に押すように支持する。一方、セパレータ91はその外周に形成されたフランジ93を外筒81の内側に固定された保持部材82の上に支持させられており、段部81dと保持部材82とによってセパレータ91が軸線O方向に保持されている。
【0024】
次に、
図2を参照し、センサ素子19の構成について説明する。
センサ素子19は厚さ方向(積層方向)に、
図2の上方から順に、外側セラミック層183、ポンプセル160、中間セラミック層170、検知セル150及びヒータ145を積層してなる。各層145、150〜183は、アルミナ等の絶縁性セラミックからなり、外形寸法(少なくとも幅及び長さ)の等しい矩形板状をなしている。
【0025】
外側セラミック層183はセンサ素子19の外表面(
図2の上面)を構成すると共に、その後端部にセンサパッド部13〜15が配置される。又、外側セラミック層183の先端側(
図2の左側)には略矩形状に開口する貫通部183hが設けられ、貫通部183hに埋め込まれるように略矩形状の多孔質層182が充填されている。外側セラミック層183は以下のポンプセル層161を保護して覆い、多孔質層182はポンプセル160におけるポンプ電極163を覆っている。
多孔質層182はセンサ素子19の上面に露出し、多孔質層182の上面を介してポンプ電極163と外部との間で酸素の汲み出し及び汲み入れが可能となっている。
【0026】
ポンプセル160は、第1絶縁層161a及び略矩形板状の固体電解質体162を備えたポンプセル層161と、固体電解質体162の表裏面にそれぞれ設けられた上述のポンプ電極163及び対向電極165とを備えている。第1絶縁層161aの先端側(
図2の左側)には略矩形状に開口する貫通部161hが設けられ、貫通部161hに埋め込まれるように固体電解質体162が配置されている。なお、ポンプ電極163はポンプ電極部163E、及び、当該ポンプ電極部163Eから後端側へ向かって延びるリード部163Lからなり、対向電極165は対向電極部165E、及び、当該対向電極部165Eから後端側へ向かって延びるリード部165Lからなる。
固体電解質体162,ポンプ電極163及び対向電極165は、後述する測定室171内の被測定ガス中の酸素の汲み出し及び汲み入れを行う酸素ポンプセルを構成し、対向電極165は測定室171に臨み、ポンプ電極163は多孔質層182を介して外部に連通している。
【0027】
リード部163Lは、外側セラミック層183に設けられたスルーホールを介してセンサパッド部13と電気的に接続されている。又、リード部165Lは、ポンプセル層161、外側セラミック層183に設けられたスルーホールを介してセンサパッド部15と電気的に接続されている。
そして、測定室171内の酸素濃度に応じ、ポンプ電極163及び対向電極165の間に流れる電流の方向及び大きさがセンサパッド部13、15を介して2本のリード線71から外部装置によって制御され、酸素がポンピングされる。
【0028】
中間セラミック層170の先端側(
図2の左側)には測定室171が矩形状に開口している。又、中間セラミック層170の長辺側の両側面には、測定室171を外部と区画する拡散多孔質層173が配置されている。一方、測定室171の先端側と後端側には、測定室171の側壁をなすセラミック絶縁層175が配置されている。
測定室171は拡散多孔質層173を介して外部と連通しており、拡散多孔質層173は外部と測定室171との間のガス拡散を所定の律速条件下で実現する。
【0029】
検知セル150は、第2絶縁層151a及び略矩形板状の固体電解質体152を備えた検知セル層151と、固体電解質体152の表裏面にそれぞれ設けられた基準ガス側電極153及び被測定ガス側電極155とを備えている。第2絶縁層151aの先端側(
図2の左側)には略矩形状に開口する貫通部151hが設けられ、貫通部151hに埋め込まれるように固体電解質体152が配置されている。なお、基準ガス側電極153は基準ガス側電極部153E、及び、当該基準ガス側電極部153Eから後端側へ向かって延びるリード部153Lからなり、被測定ガス側電極155は被測定ガス側電極部155E、及び、当該被測定ガス側電極部155Eから後端側へ向かって延びるリード部155Lからなる。
固体電解質体152,基準ガス側電極153及び被測定ガス側電極155は、被測定ガス中の酸素濃度の検知セルを構成し、被測定ガス側電極部155Eは測定室171に臨んでいる。一方、基準ガス側電極部153Eは、リード部153L、スルーホールを介して外部に通気する。
【0030】
リード部153Lは、検知セル層151、中間セラミック層170、ポンプセル層161、外側セラミック層183に設けられたスルーホールを介してセンサパッド部14と電気的に接続されている。又、リード部155Lは、中間セラミック層170、ポンプセル層161、外側セラミック層183に設けられたスルーホールを介してセンサパッド部15と電気的に接続されている。
そして、基準ガス側電極153及び被測定ガス側電極155の検出信号が、センサパッド部14,15から2本のリード線71を介して外部に出力され、酸素濃度が検出される。
【0031】
検知セル150、ポンプセル160がそれぞれ特許請求の範囲の「セル」に相当する。基準ガス側電極153及び被測定ガス側電極155、並びにポンプ電極163及び対向電極165がそれぞれ特許請求の範囲の「一対の電極」に相当する。
又、第1絶縁層161a及び第2絶縁層151aが特許請求の範囲の「絶縁層」に相当する。検知セル層151、ポンプセル層161が特許請求の範囲の「複合層」に相当する。
【0032】
なお、センサ素子19においては、検知セル150の電極間に生じる電圧(起電力)が所定の値(例えば、450mV)となるように、ポンプセル160の電極間に流れる電流の方向及び大きさが調整され、ポンプセル160に流れる電流に応じた被測定ガス中の酸素濃度をリニアに検出する酸素センサ素子を構成する。
【0033】
ヒータ145は、セラミック製の第1ヒータ基板145a、セラミック製の第2ヒータ基板145b、及び第1ヒータ基板145aと第2ヒータ基板145bの間に配置される発熱部146を備えている。第1ヒータ基板145aは検知セル層151と対向している。発熱部146は、蛇行状のパターンを有する発熱体146m(
図3参照)、及び発熱体146mから後端側に延びる一対のリード部146Lを備えている。
リード部146Lは、第2ヒータ基板145bに設けられたスルーホールを介してヒータパッド部16,17と電気的に接続されている。そして、2本のリード線71を介してヒータパッド部16,17から発熱部146に通電することで、発熱部146が発熱し、固体電解質体152,162を活性化する。
この発熱部146(ヒータ145)は、検知セル150及びポンプセル160よりも積層方向の片側(
図2の下側)に配置されている。
なお、第1ヒータ基板145aと第2ヒータ基板145bとが特許請求の範囲の「ヒータ基板」に相当する。
【0034】
次に、
図3を参照し、発熱部146について説明する。
図3に示すように、発熱部146は、発熱体146m、及び発熱体146から後端側に延びる一対のリード部146Lを備えている。
発熱体146mは、軸線O方向にそれぞれ延びる一対の外側直線状部146m1と、外側直線状部146m1間に配置され軸線O方向に延びる一対の内側直線状部146m2と、隣接する外側直線状部146m1の先端と内側直線状部146m2の先端とを接続する2つのU字状の第1接続部146j1と、一対の内側直線状部146m2の後端を接続する1つのU字状の第2接続部146j2と、からなる。
又、一対のリード部146Lは、それぞれ外側直線状部146m1の後端146eに接続されている。
本実施形態では、発熱部146の発熱体146mは、検知セル150及びポンプセル160と積層方向に重なっており(
図4、
図5参照)、両セル150,160を加熱する。
なお、外側直線状部146m1の後端146eは、外側直線状部146m1の幅D1が一定の部分の最後端部であり、幅D1より広幅の幅D2(D2>D1)のリード部146Lに繋がる境界部分である。
【0035】
次に、
図4〜
図6を参照し、発熱部146(ヒータ145)と、各セル150、160及びヒータ基板145a、145bとの位置関係について説明する。なお、
図4は、発熱部146と、ポンプセル160及びヒータ基板145a、145bとの位置関係を示す平面図、
図5は、発熱部146と、検知セル150及びヒータ基板145a、145bとの位置関係を示す平面図である。
【0036】
まず、
図4、
図5に示すように、ヒータ基板145a、145bの側端部と外側直線状部146m1の側端部との最小距離をAとすると、0.15mm≦A≦0.35mmである。又、ヒータ基板145a、145bの先端部と第1接続部146j1の先端部との最小距離をBとすると、0.25mm≦B≦0.85mmである。
【0037】
次に、
図4に示すように、ポンプセル160におけるポンプ電極部163E、対向電極部165E及び固体電解質体162の重なり領域をS1とする。ここで、重なり領域S1を求める際には、ポンプセル160の一対の電極163、165のうち、セルとして電極反応に有効に寄与するポンプ電極部163E及び対向電極部165Eを対象とし、リード部163L、165Lを除外する。又、ポンプ電極部163Eとリード部163Lとの境界163Bは、固体電解質体162の外側のリード部163Lの幅D3が一定の部分の最先端部とする。対向電極部165Eとリード部165Lとの境界165Bも同様である。
このとき、一対の内側直線状部146m2は、それぞれ重なり領域S1と積層方向に重なると共に、重なり領域S1の後端に跨って形成されている。
【0038】
図5の検知セル150についても同様に、検知セル150の基準ガス側電極部153E、被測定ガス側電極部155E及び固体電解質体152の重なり領域をS2とする。重なり領域S2を求める際に基準ガス側電極部153E、被測定ガス側電極部155Eと、各リード部153L,155Lとの境界153B、155Bを求める方法も上述の通りである。
このとき、一対の内側直線状部146m2は、それぞれ重なり領域S2と積層方向に重なると共に、重なり領域S2の後端に跨って形成されている。
なお、ポンプセル160においては、ポンプ電極部163E及び対向電極部165Eは、固体電解質体162の内側に位置するので、重なり領域S1はポンプ電極部163E及び対向電極部165Eの重なり部分となる。一方、検知セル150においては、基準ガス側電極部153E及び被測定ガス側電極部155Eは、幅方向に固体電解質体152の外側に位置するので、重なり領域S2は幅方向に基準ガス側電極部153E及び被測定ガス側電極部155Eよりも内側となる。
【0039】
以上のように、ヒータ基板145a、145bの側端部及び先端部と発熱部146との最小距離A,Bを適切な範囲とすることで、ヒータ基板145a、145b(ひいてはセンサ素子19)の側端部及び先端部に発熱部146を近付けることができ、ヒータ145の昇温速度を高めてもヒータ145近傍の熱応力の増大を抑制し、素子割れを抑制して早期活性を実現できる。又、発熱部146を上記側端部及び先端部に近付け過ぎないので、ヒータ145と固体電解質体162,152との間の絶縁を確保できる。
【0040】
0.15mm>A、又は0.25mm>Bであると、ヒータ基板145a、145bの側端部又は先端部に排気ガス中の導電成分(カーボンの煤)や水が付着した場合に、これら導電成分又は水と発熱部146との隙間である絶縁距離が短くなり、発熱部146が通電すると隙間が容易に絶縁破壊される。その結果、発熱部146からのリーク電流が各セル150、160の電極や固体電解質体へ流れ、検出精度や酸素ポンプ能が低下する。又、素子端部付近の温度が高くなり、材料強度が低下するため小さな応力でも素子にクラックが発生する。さらに、ヒータ基板145a、145bで発熱部146を十分に埋設できずに発熱部146が端面に露出する可能性がある。
0.35mm<A、又は0.85mm<Bであると、ヒータ基板145a、145bの側端部又は先端部から発熱部146が遠ざかり、ヒータ145の昇温速度を高めるとヒータ145近傍の熱応力が増大し、素子割れを生じる場合がある。
【0041】
又、本実施形態では、固体電解質体162、152がそれぞれ第1絶縁層161a、第2絶縁層151aに埋め込まれている。このため、第1絶縁層161a、第2絶縁層151aの側端部又は先端部に排気ガス中の導電成分(カーボンの煤)や水が付着した場合に、これら導電成分又は水と、固体電解質体162、152との間を第1絶縁層161a、第2絶縁層151aが絶縁するので、ヒータ基板145a、145bと発熱部146との上述の隙間A,Bと相俟って、ヒータ145と固体電解質体162,152との間の絶縁を安定して確保できる。
つまり、
図6に示すように、水200がセンサ素子19の端面(側端面)に付着しても、水200と固体電解質体152との間を隙間G2を介して第2絶縁層151aが絶縁すると共に、水200と発熱部146との間を隙間Aにより絶縁する。これにより、固体電解質体152と発熱部146との間に電流経路が形成されないので、隙間A、G2が絶縁破壊されることが抑制され、絶縁を安定して確保できるのである。なお、
図6では固体電解質体152について図示したが、固体電解質体162についても同様である。
【0042】
さらに、一対の内側直線状部146m2が、それぞれ重なり領域S1、S2と積層方向に重なると共に、重なり領域S1、S2の先端又は後端(
図4、
図5の例では後端)に跨って形成されている。
これにより、各セル160、150の有効部分である重なり領域S1、S2に内側直線状部146m2の熱を確実に伝えることができ、早期活性をより確実に実現できる共に、ヒータ基板145a、145bの端部との温度差(熱応力)をさらに低減できる。
【0043】
なお、
図4、
図5に示すように、本実施形態では、外側直線状部146m1は、固体電解質体162,152の側端側に固体電解質体162,152と間隔を開けて配置されている。
このようにすると、早期活性をより確実に実現できる共に、ヒータ基板の端部との温度差(熱応力)をさらに低減できる。
【0044】
又、
図3に示す発熱体146mの軸線O方向の長さ(第1接続部146j1の先端から、外側直線状部146m1の後端146eまでの長さ)が4〜10mmであると、発熱範囲が集中することにより熱応力が増大しすぎず、また、素子の昇温速度の低下や消費電力が増大することを抑制することができる。
上記長さが4mm未満であると発熱範囲が集中することにより熱応力が増大する場合がある。上記長さが10mmを超えると素子の昇温速度の低下や消費電力が増大する場合がある。
又、
図6に示す隙間Aと隙間(最小隙間)G2の合計長さが0.3mm以上であると、ヒータ145と固体電解質体162,152との間の絶縁をさらに安定して確保できる。
【0045】
本発明のセンサ素子及びガスセンサは、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、適宜にその構造、構成を設計変更して具体化できる。
例えば上記実施形態では、絶縁層に設けられた貫通孔に固体電解質体のペーストを充填して埋め込んだが、絶縁層の貫通孔にシート状の固体電解質体を挿入して配置する態様であってもよい。
又、各セルにおいて、一対の電極は固体電解質体よりも外側にはみ出てもよい。
また、センサ素子としては、1つ以上のセルを有していれば、酸素の濃度を測定するものに限定されず、窒素酸化物(NOx)又は炭化水素(HC)等の濃度を測定するものを用いてもよい。
又、
図4、
図5に示すように、上記実施形態ではセンサ素子が有するすべてのセルにつき、内側直線状部が重なり領域と積層方向に重なると共に、重なり領域の先端又は後端に跨って形成されているが、少なくとも1つのセルの重なり領域と積層方向に重なると共に、重なり領域の先端又は後端に跨って形成されていればよい。
【実施例1】
【0046】
<実施例1>
図2〜
図5に示すセンサ素子19として、発熱体146mの抵抗が1.75±0.05Ωで、Aの値を種々変更したものをそれぞれ製造した。Bの値を1mmで一定とした。各センサ素子19の発熱体146mに初期電圧10Vを印加して、素子温度を900℃まで昇温した後、室温まで急冷するサイクルを100サイクル繰り返した後、染色試験にて、センサ素子19のクラックの有無を目視判定した。
クラックが無い場合、電圧を0.5V高くして同様にサイクル試験を行った後のクラックの有無を判定し、これをクラックが生じるまで繰り返し、クラックが生じたときの電圧を求めた。
なお、A,Bを所定の値としたセンサ素子19をそれぞれ10個製造し、上記サイクル試験を10個のセンサ素子19について行い、この10個のデータにつきワイブル解析により故障率0.1%のときの発熱体146mの電圧を求めた。この電圧が高いほど、センサ素子19のクラックを生じずに(熱応力を大きくせずに)ヒータの昇温速度を高めることができる。上記電圧が12V以上であれば、ヒータの昇温速度を高くして早期活性を実現できるものとみなすことができる。
【0047】
<実施例2>
実施例1と同様にして、Bの値を種々変更し、Aの値を0.2mmで一定としたセンサ素子19をそれぞれ製造し、同様にサイクル試験を行って故障率0.1%のときの発熱体146mの電圧を求めた。
【0048】
得られた結果を
図7、
図8にそれぞれ示す。
図7、
図8から明らかなように、0.15mm≦A≦0.35mm、0.25mm≦B≦0.85mmであれば、故障率0.1%のときの発熱体146mの電圧を12V以上とすることができ、センサ素子19のクラックを生じずに早期活性を実現できることがわかる。
なお、0.15mm>A、又は0.25mm>Bの場合は、熱応力は低下するものの、上述の理由で材料強度も同時に低下し、小さな応力でもクラックが生じたと考えられる。従って、本実験でクラックが生じたときの電圧で判定を行う方法は、A、Bの下限を見極めるにも適している。