特許第6979401号(P6979401)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6979401マススペクトロメトリーによるアミロイドベータの検出
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979401
(24)【登録日】2021年11月17日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】マススペクトロメトリーによるアミロイドベータの検出
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20210101AFI20211202BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20211202BHJP
   G01N 30/72 20060101ALI20211202BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   G01N27/62 VZNA
   G01N27/62 X
   G01N30/88 J
   G01N30/72 C
   G01N33/68
【請求項の数】18
【全頁数】74
(21)【出願番号】特願2018-515954(P2018-515954)
(86)(22)【出願日】2016年9月28日
(65)【公表番号】特表2018-535398(P2018-535398A)
(43)【公表日】2018年11月29日
(86)【国際出願番号】US2016054148
(87)【国際公開番号】WO2017058895
(87)【国際公開日】20170406
【審査請求日】2019年5月28日
(31)【優先権主張番号】62/234,027
(32)【優先日】2015年9月28日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/277,772
(32)【優先日】2016年1月12日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517308264
【氏名又は名称】クエスト ダイアグノスティックス インヴェストメンツ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】トラン,ダイアナ
(72)【発明者】
【氏名】ウェバー,ダレン
(72)【発明者】
【氏名】クラーク,ニゲル
【審査官】 吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−511154(JP,A)
【文献】 特表2005−517517(JP,A)
【文献】 特表2013−541718(JP,A)
【文献】 特表2015−505365(JP,A)
【文献】 特開2009−115724(JP,A)
【文献】 特表2008−538811(JP,A)
【文献】 特開2007−010658(JP,A)
【文献】 特表2008−547003(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/062152(WO,A1)
【文献】 特表2002−526508(JP,A)
【文献】 特表2013−538045(JP,A)
【文献】 BROS et al.,Quantitative detection of amyloid-βpeptides by mass spectrometry: state of the art and clinical applications,Clinical Chemistry and Laboratory Medicine,Vol.53/Iss.10,2015年02月,PP.1483-1493
【文献】 CERF et al.,High ability of apolipoprotein E4 to stabilize amyloid-β peptide oligomers, the pathological entities responsible for Alzheimer's disease,THE FASEB JOURNAL,Vol.25/Iss.5,2011年01月25日,PP.1585-1595
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/60 − G01N 27/70
G01N 27/92
G01N 30/00 − G01N 30/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中のアミロイドベータの量を決定する方法であって、
(a)サンプル中のアミロイドベータを精製すること、
(b)前記サンプル中のアミロイドベータをイオン化して、アミロイドベータの前駆イオンを産生すること、
(c)1つ又は複数のアミロイドベータフラグメントのイオンを生成すること、及び
(d)マススペクトロメトリーにより、ステップ(c)若しくは(d)又はその両方からのイオンの量を決定すること
を含み、
アミロイドベータイオンの量が、前記サンプル中のアミロイドベータの量と関連
前記サンプルと接触する機器の表面を、アミロイドベータが前記表面に固着するのを防止する薬剤で事前処理することを更に含み、
前記薬剤が、大腸菌溶解物である、方法。
【請求項2】
前記精製することが、液体クロマトグラフィーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記液体クロマトグラフィーが、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
C−4分析カラムを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記サンプルを、アミロイドベータを安定化させる薬剤と共にインキュベートすることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記薬剤が、アミロイドベータのC末端と結合する抗体、アミロイドベータのN末端と結合する抗体、アポリポタンパク質E2、アポリポタンパク質E4、又はその組合せを含む、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記薬剤が、少なくとも3回の凍結−解凍サイクルにわたり、安定性を付与する、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記薬剤が、−70℃で少なくとも2カ月間、安定性を付与する、請求項に記載の方法。
【請求項9】
混合モード陰イオン交換抽出を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記イオン化が、加熱式エレクトロスプレーイオン化(HESI)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記イオン化が、ポジティブモードでイオン化することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記フラグメントイオンの生成が、20V〜45Vの衝突エネルギーを使用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
アミロイドベータが、配列DAEFRHDSGYEVHHQKLVFFAEDVGSNKGAIIGLMVGGVV(配列番号1)を有するAβ40、又は配列DAEFRHDSGYEVHHQKLVFFAEDVGSNKGAIIGLMVGGVVIA(配列番号3)を有するAβ42を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
内部標準を添加することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記内部標準が、同位体で標識されている、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記内部標準が、1315N標識を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
方法の定量限界が、10ng/mL未満又はそれに等しい、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記サンプルが、脳脊髄液(CSF)である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願に対する相互参照
本出願は、2015年9月28日出願の米国仮特許出願第62/234,027号、及び2016年1月12日出願の米国仮特許出願第62/277,772号の利益を主張し、これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、アミロイドベータの検出又は定量に関する。ある特定の態様では、本発明は、マススペクトロメトリーによりアミロイドベータ又はそのフラグメントを検出する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
アルツハイマー病は、高齢者集団に影響を及ぼす最も一般的な認知症の形態である。アルツハイマー病は、認知能力、特に記憶及び学習の進行性の衰退により特徴付けられる。この疾患の1つの特徴として、アミロイドベータ(Aβ又はAベータ)ペプチドから構成される老人斑が挙げられる。
【0004】
現行の臨床診断法でアルツハイマー病を予測又は診断する場合、その正確度及び感度は低い。イムノアッセイ法が、アルツハイマー病の進行を予測するバイオマーカーであるアミロイドベータを検出するために現在提供されている。しかし、現在利用可能なイムノアッセイ法による観察結果において、施設間変動が懸念される。
【0005】
アミロイドベータを検出するための正確且つ高感度なアッセイ法が必要とされる。
【発明の概要】
【0006】
本明細書において、タンデム型質量分析などのマススペクトロメトリーにより、サンプル中のアミロイドベータ(Aβ)の量を検出又は決定する方法が提供される。
【0007】
特定の実施形態では、アミロイドベータの量を決定するための本明細書に提供される方法は、(a)サンプル中のアミロイドベータを精製すること;(b)前記サンプル中のアミロイドベータをイオン化すること;及び(c)マススペクトロメトリーにより、アミロイドベータイオンの量を決定することを含み、アミロイドベータイオンの量は、サンプル中のアミロイドベータの量と関連する。
【0008】
特定の実施形態では、アミロイドベータの量を決定するための本明細書に提供される方法は、(a)サンプル中のアミロイドベータを精製すること;(b)前記サンプル中のアミロイドベータをイオン化して、アミロイドベータの前駆イオンを産生すること;(c)1つ又は複数のアミロイドベータフラグメントのイオンを生成すること;及び(d)マススペクトロメトリーにより、ステップ(c)若しくは(d)又はその両方からのイオンの量を決定することを含み、アミロイドベータイオンの量は、サンプル中のアミロイドベータの量と関連する。
【0009】
特定の実施形態では、アミロイドベータの量を決定するための本明細書に提供される方法は、(a)サンプル中のアミロイドベータを消化して、1つ又は複数のアミロイドベータフラグメントを生成すること;(b)前記1つ又は複数のアミロイドベータフラグメントを精製すること;(c)前記1つ又は複数のアミロイドベータフラグメントをイオン化して、前駆イオンを産生すること;(d)1つ又は複数のフラグメントイオンを生成すること;及び(e)マススペクトロメトリーにより、ステップ(c)若しくは(d)又はその両方からのイオンの量を決定することを含み、イオンの量は、サンプル中のアミロイドベータフラグメントの量と関連する。
【0010】
特定の実施形態では、アミロイドベータ42(Aβ42)の量を決定する方法が、本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、Aβ42フラグメントは、配列GAIIGLMVGGVVIA(配列番号4)を含む。いくつかの実施形態では、方法は、(a)サンプル中のアミロイドベータを消化して、アミロイドベータ42(Aβ42)を生成すること;(b)Aβ42を精製すること;(c)Aβ42をイオン化して、前駆イオンを産生すること;(d)1つ又は複数のAβ42のフラグメントイオンを生成すること;及び(e)マススペクトロメトリーにより、ステップ(c)若しくは(d)又はその両方からのイオンの量を決定することを含み、イオンの量は、サンプル中のAβ42の量と関連する。
【0011】
特定の実施形態では、アミロイドベータ40(Aβ40)の量を決定する方法が、本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、Aβ40フラグメントは、配列GAIIGLMVGGVV(配列番号2)を含む。いくつかの実施形態では、方法は、(a)サンプル中のアミロイドベータを消化して、アミロイドベータ40(Aβ40)を生成すること;(b)Aβ40を精製すること;(c)Aβ40をイオン化して、前駆イオンを産生すること;(d)1つ又は複数のAβ40のフラグメントイオンを生成すること;及び(e)マススペクトロメトリーにより、ステップ(c)若しくは(d)又はその両方からのイオンの量を決定することを含み、イオンの量は、サンプル中のAβ40の量と関連する。
【0012】
特定の実施形態では、アミロイドベータ42(Aβ42)及びアミロイドベータ40(Aβ40)の量を決定する方法が、本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、方法は、(a)サンプル中のアミロイドベータを消化して、アミロイドベータ42(Aβ42)及びアミロイドベータ40(Aβ40)を生成すること;(b)Aβ42及びAβ40を精製すること;(c)Aβ42及びAβ40をイオン化して、前駆イオンを産生すること;(d)1つ又は複数のAβ42及びAβ40のフラグメントイオンを生成すること;及び(e)マススペクトロメトリーにより、ステップ(c)若しくは(d)又はその両方からのイオンの量を決定することを含み、イオンの量は、サンプル中のAβ42及びAβ40の量と関連する。
【0013】
特定の実施形態では、アミロイドベータ40(Aβ40)に対するアミロイドベータ42(Aβ42)の比を決定する方法が、本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、方法は、(a)サンプル中のアミロイドベータを消化して、アミロイドベータ42(Aβ42)及びアミロイドベータ40(Aβ40)を生成すること;(b)Aβ42及びAβ40を精製すること;(c)Aβ42及びAβ40をイオン化して、前駆イオンを産生すること;(d)1つ又は複数のAβ42及びAβ40のフラグメントイオンを生成すること;及び(e)マススペクトロメトリーにより、ステップ(c)若しくは(d)又はその両方からのイオンの量を決定すること;及び(f)Aβ40に対するAβ42の比を決定することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、Aβ42に対するAβ40の比を決定することを含む。
【0014】
特定の実施形態では、アルツハイマー病又は認知症を診断又は予測する方法であって、試験サンプル中のアミロイドベータの量を、マススペクトロメトリーにより決定することを含み、アミロイドベータのレベルが異常であれば、アルツハイマー病が予測又は診断される、方法が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、方法は、(a)サンプル中のアミロイドベータを精製すること;(b)前記サンプル中のアミロイドベータをイオン化すること;及び(c)アミロイドベータイオンの量を、マススペクトロメトリーにより決定すること;及び(d)アミロイドベータイオンの量を、前記サンプル中のアミロイドベータの量と関連付けることを含み得、アミロイドベータのレベルが異常であれば、アルツハイマー病が予測又は診断される。いくつかの実施形態では、方法は、アミロイドベータフラグメントの比を決定することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、アミロイドベータ40(Aβ40)に対するアミロイドベータ42(Aβ42)の比を決定することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、アミロイドベータ40(Aβ42)に対するアミロイドベータ42(Aβ40)の比を決定することを含む。
【0015】
特定の実施形態では、本明細書に提供される方法は、サンプルと接触する機器の表面を事前処理することを含む。いくつかの実施形態では、事前処理は、機器の表面を、アミロイドベータ又はそのフラグメントが表面に固着するのを防止する薬剤で事前コーティングすることを含む。いくつかの実施形態では、事前処理は、溶菌液による事前処理を含む。いくつかの実施形態では、事前処理は、大腸菌〔E.coli〕溶解物による事前処理を含む。いくつかの実施形態では、大腸菌溶解物は、トリプシン消化大腸菌溶解物を含む。いくつかの実施形態では、事前処理された機器として、試験管又はプレート、ピペットチップ、サンプル調製装置、液体クロマトグラフィー装置、及びマススペクトロメトリー装置が挙げられるが、但し、これらに限定されない。
【0016】
特定の実施形態では、本明細書に提供される方法は、アミロイドベータ又はそのフラグメントを安定化させる薬剤を用いてサンプルを処理する、又はそれと共にインキュベートすることを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、サンプルをアミロイドベータ抗体で処理すること、又はそれと共にインキュベートすることを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、サンプルを少なくとも2つの異なるアミロイドベータ抗体で処理する、又はそれと共にインキュベートすることを含む。いくつかの実施形態では、アミロイドベータ抗体は、アミロイドベータのC末端と結合する抗体を含む。いくつかの実施形態では、アミロイドベータ抗体は、アミロイドベータのN末端と結合する抗体を含む。いくつかの実施形態では、アミロイドベータを安定化させる薬剤は、アポリポタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、アミロイドベータを安定化させる薬剤は、アポリポタンパク質E2を含む。いくつかの実施形態では、アミロイドベータを安定化させる薬剤は、アポリポタンパク質E4を含む。いくつかの実施形態では、アミロイドベータを安定化させる薬剤は、アミロイドベータのC末端と結合する抗体、アミロイドベータのN末端と結合する抗体、アポリポタンパク質E2、アポリポタンパク質E4、又はその組合せを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるアミロイドベータを安定化させる薬剤は、−70℃で少なくとも1カ月間、安定性を付与する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるアミロイドベータを安定化させる薬剤は、−70℃で少なくとも2カ月間、安定性を付与する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるアミロイドベータを安定化させる薬剤は、−70℃で少なくとも3カ月間、安定性を付与する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるアミロイドベータを安定化させる薬剤は、凍結−解凍サイクルにわたり、安定性を付与する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるアミロイドベータを安定化させる薬剤は、少なくとも2回の凍結−解凍サイクルにわたり、安定性を付与する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるアミロイドベータを安定化させる薬剤は、少なくとも3回の凍結−解凍サイクルにわたり、安定性を付与する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるアミロイドベータを安定化させる薬剤は、少なくとも4回の凍結−解凍サイクルにわたり、安定性を付与する。
【0017】
特定の実施形態では、本明細書に提供される方法は、サンプル中のアミロイドベータを消化することを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、酵素によりアミロイドベータを消化することを含む。いくつかの実施形態では、酵素は、Lys−Cである。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、尿素によりアミロイドベータを消化することを含む。いくつかの実施形態では、尿素は、タンパク質消化に適する濃度を有する。いくつかの実施形態では、尿素は6M尿素である。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、尿素及びLys−Cによりアミロイドベータを消化することを含む。いくつかの実施形態では、消化は、消化時間を短縮する又は消化効率を高める条件で消化することを含む。いくつかの実施形態では、消化は、マイクロ波中で消化することを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、消化されたアミロイドベータの量を決定することを含む。
【0018】
特定の実施形態では、本明細書に提供される方法は、抽出を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、混合モード陰イオン交換抽出を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、固相抽出を含む。
【0019】
特定の実施形態では、本明細書に提供される方法は、加熱された窒素を使用してサンプルを溶出及び乾燥させることを含む。いくつかの実施形態では、サンプルは、再構成用バッファー中で再懸濁される。
【0020】
特定の実施形態では、サンプルを精製することは、液体クロマトグラフィーを含む。いくつかの実施形態では、液体クロマトグラフィーとして、逆相液体クロマトグラフィー(RPLC)、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、及び高乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)が挙げられるが、但し、これらに限定されない。好ましい実施形態では、液体クロマトグラフィーは、HPLCを含む。いくつかの実施形態では、HPLCカラムは、化学的部分の分離(すなわち、分画)を促進する媒体(すなわち、充填材料)を一般的に含む。適するカラムは、C−4、C−8、C−12、又はC−18カラムを含み得る。好ましい実施形態では、適するHPLCカラムはC−4カラムである。
【0021】
特定の実施形態では、本明細書に提供される方法は、アミロイドベータの機器表面への固着を低下させる機器を使用することを含む。いくつかの実施形態では、機器は、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)チューブ又は装置を備える。いくつかの実施形態では、機器は、金属チューブ又は装置を含む。
【0022】
特定の実施形態では、本明細書に提供される方法は、タンデム型質量分析を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、ポジティブモードでイオン化することを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、ネガティブモードでイオン化することを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、加熱式エレクトロスプレーイオン化法(HESI)を使用してイオン化することを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、エレクトロスプレーイオン化法(ESI)を使用してイオン化することを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、大気圧化学イオン化法(APCI)を使用してイオン化することを含む。好ましい実施形態では、本明細書に提供される方法は、加熱式エレクトロスプレーイオン化法(HESI)を使用して、ポジティブモードでイオン化することを含む。いくつかの実施形態では、衝突エネルギーは、5V〜60Vである。いくつかの実施形態では、衝突エネルギーは、10V〜50Vである。いくつかの実施形態では、衝突エネルギーは、20V〜50Vである。いくつかの実施形態では、衝突エネルギーは、20V〜45Vである。
【0023】
特定の実施形態では、本明細書に提供される方法は、アミロイドベータ40(Aβ40)の量を検出又は決定することを含む。いくつかの実施形態では、Aβ40は、配列DAEFRHDSGYEVHHQKLVFFAEDVGSNKGAIIGLMVGGVV(配列番号1)を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、Aβ40のフラグメントの量を検出又は決定することを含む。いくつかの実施形態では、Aβ40フラグメントは、配列GAIIGLMVGGVV(配列番号2)を含む。いくつかの実施形態では、Aβ40フラグメントは、N末端又はC末端飛行化〔winged〕ペプチドを含有する配列を含む。いくつかの実施形態では、Aβ40フラグメントは、配列番号2、及びN末端又はC末端飛行化ペプチドを含む。いくつかの実施形態では、飛行化ペプチドは、親水性である。いくつかの実施形態では、飛行化ペプチドは、少なくとも1個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、飛行化ペプチドは、少なくとも2個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、飛行化ペプチドは、少なくとも3個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、飛行化ペプチドは、少なくとも4個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、飛行化ペプチドは、少なくとも5個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、飛行化ペプチドは、少なくとも6個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、Aβ40フラグメントの量は、サンプル中でAβ40の量と相関する。
【0024】
特定の実施形態では、本明細書に提供される方法は、アミロイドベータ42(Aβ42)の量を検出又は決定することを含む。いくつかの実施形態では、Aβ42は、配列DAEFRHDSGYEVHHQKLVFFAEDVGSNKGAIIGLMVGGVVIA(配列番号3)を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、Aβ42のフラグメントの量を検出又は決定することを含む。いくつかの実施形態では、Aβ42フラグメントは、配列GAIIGLMVGGVVIA(配列番号4)を含む。いくつかの実施形態では、Aβ42フラグメントは、N末端又はC末端飛行化ペプチドを含有する配列を含む。いくつかの実施形態では、Aβ42フラグメントは、配列番号4、及びN末端又はC末端飛行化ペプチドを含む。いくつかの実施形態では、飛行化ペプチドは、親水性である。いくつかの実施形態では、飛行化ペプチドは、少なくとも1個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、飛行化ペプチドは、少なくとも2個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、飛行化ペプチドは、少なくとも3個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、飛行化ペプチドは、少なくとも4個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、飛行化ペプチドは、少なくとも5個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、飛行化ペプチドは、少なくとも6個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、Aβ42フラグメントの量は、サンプル中のAβ42の量と相関する。
【0025】
特定の実施形態では、本明細書に提供される方法は、Aβ42に対するAβ40の比(Aβ40:Aβ42)を検出又は決定することを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、Aβ42フラグメントに対するAβ40フラグメントの比(Aβ40フラグメント:Aβ42フラグメント)を検出又は決定することを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、Aβ40に対するAβ42の比(Aβ42:Aβ40)を検出又は決定することを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、Aβ40フラグメントに対するAβ42フラグメントの比(Aβ42フラグメント:Aβ40フラグメント)を検出又は決定することを含む。
【0026】
特定の実施形態では、Aβ40に対するAβ42の比、又はAβ40フラグメントに対するAβ42フラグメントの比が0.6又はそれ未満であれば、アルツハイマー病が予測される、又はそれと診断される。いくつかの実施形態では、Aβ40に対するAβ42の比、又はAβ40フラグメントに対するAβ42フラグメントの比が0.5又はそれ未満であれば、アルツハイマー病が予測される、又はそれと診断される。いくつかの実施形態では、Aβ40に対するAβ42の比、又はAβ40フラグメントに対するAβ42フラグメントの比が0.45又はそれ未満であれば、アルツハイマー病が予測される、又はそれと診断される。いくつかの実施形態では、Aβ40に対するAβ42の比、又はAβ40フラグメントに対するAβ42フラグメントの比が0.4又はそれ未満であれば、アルツハイマー病が予測される、又はそれと診断される。いくつかの実施形態では、Aβ40に対するAβ42の比、又はAβ40フラグメントに対するAβ42フラグメントの比が0.35又はそれ未満であれば、アルツハイマー病が予測される、又はそれと診断される。いくつかの実施形態では、Aβ40に対するAβ42の比、又はAβ40フラグメントに対するAβ42フラグメントの比が0.3又はそれ未満であれば、アルツハイマー病が予測される、又はそれと診断される。いくつかの実施形態では、Aβ40に対するAβ42の比、又はAβ40フラグメントに対するAβ42フラグメントの比が0.25又はそれ未満であれば、アルツハイマー病が予測される、又はそれと診断される。いくつかの実施形態では、Aβ40に対するAβ42の比、又はAβ40フラグメントに対するAβ42フラグメントの比が0.2又はそれ未満であれば、アルツハイマー病が予測される、又はそれと診断される。いくつかの実施形態では、Aβ40に対するAβ42の比、又はAβ40フラグメントに対するAβ42フラグメントの比が0.15又はそれ未満であれば、アルツハイマー病が予測される、又はそれと診断される。
【0027】
特定の実施形態では、方法は、1つ若しくは複数のAβ又はそのフラグメントの前駆イオンを生成することを含む。いくつかの実施形態では、前駆イオンの少なくとも1つは、1085.6±0.5又は1269.7±0.5の質量/電荷の比を有する。いくつかの実施形態では、方法は、1つ若しくは複数のAβ又はそのフラグメントのフラグメントイオンを生成することを含み得る。いくつかの実施形態では、フラグメントイオンの少なくとも1つは、812.37±0.5、869.4±0.5、968.43±0.5、869.39±0.5、968.44±0.5、1067.5±0.5、又は1180.57±0.5の質量/電荷の比を有する。
【0028】
特定の実施形態では、本明細書に提供される方法は、内部標準を添加することを含む。いくつかの実施形態では、内部標準は、同位体で標識された内部標準を含む。いくつかの実施形態では、内部標準は、1315N標識を含む。いくつかの実施形態では、内部標準は、1315Nで標識された少なくとも1つのPhe、Leu、又はMetを含む。いくつかの実施形態では、内部標準の前駆イオンの少なくとも1つは、1110.7±0.5の質量/電荷の比を有する。いくつかの実施形態では、方法は、内部標準の1つ又は複数のフラグメントイオンを生成することを含み得る。いくつかの実施形態では、フラグメントイオンの少なくとも1つは、768.48±0.5、825.5±0.5、又は882.52±0.5の質量/電荷の比を有する。
【0029】
特定の実施形態では、方法の定量限界は、10ng/mL未満、又はそれに等しい。いくつかの実施形態では、方法の定量限界は、5ng/mL未満、又はそれに等しい。いくつかの実施形態では、方法の定量限界は、4ng/mL未満、又はそれに等しい。いくつかの実施形態では、方法の定量限界は、3ng/mL未満、又はそれに等しい。いくつかの実施形態では、方法の定量限界は、2ng/mL未満、又はそれに等しい。いくつかの実施形態では、方法の定量限界は、1ng/mL未満、又はそれに等しい。いくつかの実施形態では、方法の定量限界は、0.5ng/mL未満、又はそれに等しい。いくつかの実施形態では、方法の定量限界は、0.2ng/mL未満、又はそれに等しい。いくつかの実施形態では、方法の定量限界は、0.1ng/mL未満、又はそれに等しい。
【0030】
いくつかの実施形態では、方法の検出限界は、5ng/mL未満、又はそれに等しい。いくつかの実施形態では、方法の検出限界は、1ng/mL未満、又はそれに等しい。いくつかの実施形態では、方法の検出限界は、0.5ng/mL未満、又はそれに等しい。いくつかの実施形態では、方法の検出限界は、0.1ng/mL未満、又はそれに等しい。いくつかの実施形態では、方法の検出限界は、0.05ng/mL未満、又はそれに等しい。いくつかの実施形態では、方法の検出限界は、0.01ng/mL未満、又はそれに等しい。
【0031】
いくつかの実施形態では、アミロイドベータは、マススペクトロメトリーの前に誘導体化されない。いくつかの実施形態では、アミロイドベータは、マススペクトロメトリーの前に誘導体化される。
【0032】
特定の実施形態では、サンプルは、体液である。いくつかの実施形態では、サンプルは、脳脊髄液(CSF)である。いくつかの実施形態では、サンプルは、血漿又は血清である。いくつかの実施形態では、サンプルは、全血である。いくつかの実施形態では、サンプルは、唾液又は尿である。
【0033】
いくつかの実施形態では、方法は、サンプルをタンパク質除去するのに十分な量で、薬剤をサンプルに添加することを含み得る。
【0034】
本明細書で用いる場合、別途記載がなければ、単数形「a」、「an」、及び「the」は、複数形の意味を含む。従って、例えば、「1つのタンパク質」と言う場合、複数のタンパク質分子も含まれる。
【0035】
本明細書で用いる場合、用語「精製」又は「精製すること」とは、サンプルから目的とする分析物以外のすべての物質を除去することを意味しない。むしろ、精製とは、目的とする分析物の検出を妨害する可能性がある、サンプル中のその他の成分と比較して、目的とする1つ又は複数の分析物の量を富化させる手順を意味する。サンプルは、本明細書では、1つ又は複数の妨害物質、例えば、マススペクトロメトリーによる、選択されたアミロイドベータの親及び娘イオンの検出を妨害する1つ又は複数の物質の除去を可能にする様々な手段により精製される。
【0036】
本明細書で用いる場合、用語「試験サンプル」とは、アミロイドベータを含み得る任意のサンプルを意味する。本明細書で用いる場合、用語「体液」とは、個人の身体から単離可能な任意の液を意味する。例えば、「体液」として、血液、血漿、血清、胆汁、唾液、尿、涙、汗等を挙げることができる。
【0037】
本明細書で用いる場合、用語「誘導体化すること」とは、2つの分子を反応させて新規分子を形成することを意味する。誘導体化薬は、イソチオシアネート基、ジニトロフルオロフェニル基、ニトロフェノキシカルボニル基、及び/又はフタルアルデヒド基等を含み得る。
【0038】
本明細書で用いる場合、用語「クロマトグラフィー」とは、液体又は気体により搬送される化学的混合物が、静止した液相又は固相の周辺又は上方を流通する際に、化学的実体の差動的分配の結果として成分に分離するプロセスを意味する。
【0039】
本明細書で用いる場合、用語「液体クロマトグラフィー」又は「LC」とは、微細な物質からなるカラムを通じて、又はキャピラリー通路を通じて流体が均一に浸透する際に、流体の溶液の1つ又は複数の成分が選択的に遅延するプロセスを意味する。遅延は、1つ又は複数の固定相とバルク液(すなわち、移動相)の間で、この流体が固定相に対して相対的に移動する際に生ずる、混合物中の成分の分配に起因する。「液体クロマトグラフィー」の例として、逆相液体クロマトグラフィー(RPLC)、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、及び高乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)が挙げられる。
【0040】
本明細書で用いる場合、用語「高性能液体クロマトグラフィー」又は「HPLC」とは、固定相、一般的には稠密充填カラムを通じて、加圧条件下で移動相に力を加えることにより、分離度が増加する液体クロマトグラフィーを意味する。
【0041】
本明細書で用いる場合、用語「高乱流液体クロマトグラフィー」又は「HTLC」とは、分離を実施する基本原理として、カラム充填材を通じてアッセイされる物質の乱流を活用するクロマトグラフィーの一形態を意味する。HTLCは、マススペクトロメトリーによる分析前に、2つの無名の薬物を含有するサンプルを調製するのに適用されてきた。例えば、Zimmerら、J.Chromatogr.A854巻:23〜35頁(1999年)を参照;HTLCについて更に説明する米国特許第5,968,367号、同第5,919,368号、同第5,795,469号、及び同第5,772,874号も参照。当業者は「乱流」について理解している。流体がゆっくりとスムーズに流れる場合、この流れは「層流」と呼ばれる。例えば、HPLCカラムを通じて、低い流速で移動する流体は、層流である。層流内では、流体中の粒子の動きは規律正しく、粒子は直線的に移動するのが一般的である。より高速では、水の慣性力が流体の摩擦力を上回り、その結果乱流が生ずる。不規則な境界と接触しない流体は、摩擦により低速化した、又は不均等な表面により向きが変わった流体を「追い越す」。流体が乱れた状態で流れるとき、ぐるぐる渦巻いて(又は渦状に)流れ、流れが層状の場合よりもより「抵抗性」となる。どの場合に流体の流れが層流又は乱流であるか判断するのに役立つ多くの参考資料が入手可能である(例えば、Turbulent Flow Analysis:Measurement and Prediction、P.S.Bernard&J.M.Wallace、John Wiley&Sons、Inc.、(2000年);An Introduction to Turbulent Flow Flow、Jean Mathieu&Julian Scott、Cambridge University Press(2001年))。
【0042】
本明細書で用いる場合、用語「ガスクロマトグラフィー」又は「GC」とは、サンプル混合物が気化され、そして液体又は微粒子固体から構成される固定相を含有するカラムを通じて移動するキャリヤガス(窒素又はヘリウム)の流れの中に注入され、そして化合物の固定相に対する親和性に基づき、その構成化合物に分離されるクロマトグラフィーを意味する。
【0043】
本明細書で用いる場合、用語「大型の粒子カラム」又は「抽出カラム」とは、約35μmを上回る平均粒子径を含有するクロマトグラフィーカラムを意味する。この文脈で使用される場合、用語「約」とは±10%を意味する。好ましい実施形態では、カラムは、直径約60μmの粒子を含有する。
【0044】
本明細書で用いる場合、用語「分析カラム」は、カラムから溶出するサンプル中の物質について、分析物の存否又は量の決定を可能にするのに十分な分離を有効にする、十分なクロマトグラフプレートを有するクロマトグラフィーカラムを意味する。そのようなカラムは、更なる分析用として精製されたサンプルを取得するために、保持された物質を保持されない物質から分離又は抽出するという一般的な目的を有する「抽出カラム」から多くの場合区別される。この文脈で使用される場合、用語「約」とは、±10%を意味する。好ましい実施形態では、分析カラムは、直径約4μmの粒子を含有する。
【0045】
本明細書で用いる場合、例えば「オンライン自動化方式」又は「オンライン抽出」として使用されるような用語「オンライン」又は「インライン」とは、オペレーターの介入を必要とせずに実施される手順を意味する。対照的に、用語「オフライン」とは、本明細書で使用する場合、オペレーターの手動介入を必要とする手順を意味する。従って、サンプルが沈殿処理され、そして次に上清が手作業によりオートサンプラーに負荷される場合、沈殿及び負荷ステップは後続ステップからオフラインの状態にある。本方法の様々な実施形態では、1つ又は複数のステップが、オンライン自動化方式で実施され得る。
【0046】
本明細書で用いる場合、用語「マススペクトロメトリー」又は「MS」とは、化合物をその質量別に識別する分析技法を意味する。MSは、イオンを、その質量対電荷の比、又は「m/z」に基づきフィルター処理、検出、及び測定する方法を意味する。MS技術は、(1)化合物をイオン化して、荷電した化合物を形成すること;及び(2)荷電した化合物の分子量を検出し、そして質量対電荷の比を計算すること一般的に含む。化合物は、任意の適する手段によりイオン化及び検出され得る。「質量分析装置」は、イオン化装置及びイオン検出器を一般的に含む。一般的に、1つ又は複数の目的とする分子がイオン化され、イオンがその後マススペクトログラフィック装置に導入され、そこでは磁場と電場の組合せにより、イオンは、質量(「m」)及び電荷(「z」)に依存する空間内の経路をたどる。例えば、「Mass Spectrometry From Surfaces」と題する米国特許第6,204,500号、「Methods And Apparatus for Tandem Mass Spectrometry」と題する同第6,107,623号、「DNA Diagnostics Based On Mass Spectrometry」と題する同第6,268,144号、「Surface−Enhanced Photolabile Attachment And Release For Desorption And Detection Of Analytes」と題する同第6,124,137号、Wrightら、Prostate Cancer and Prostatic Diseases、第2巻:264〜76頁(1999年);並びにMerchant及びWeinberger、Electrophoresis、第21巻:1164〜67頁(2000年)を参照。
【0047】
本明細書で用いる場合、用語「陰イオンモードでの操作」とは、陰イオンが生成及び検出されるマススペクトロメトリー法を意味する。用語「陽イオンモードでの操作」とは、本明細書で用いる場合、陽イオンが生成及び検出されるマススペクトロメトリー法を意味する。
【0048】
本明細書で用いる場合、用語「イオン化」又は「イオン化すること」とは、1又は複数のエレクトロンユニットに等しい正味の電荷を有する分析物イオンを生成するプロセスを意味する。陰イオンは、1又は複数のエレクトロンユニットの正味負電荷を有するイオンである一方、陽イオンは、1又は複数のエレクトロンユニットの正味正電荷を有するイオンである。
【0049】
本明細書で用いる場合、用語「電子イオン化法」又は「EI法」とは、気相〔gaseous phase〕又は気相〔vapor phase〕の目的とする分析物が電子の流れと相互作用する方法を意味する。分析物への電子の衝撃は分析物イオンを産生し、次にマススペクトロメトリー技術の対象となり得る。
【0050】
本明細書で用いる場合、用語「化学イオン化法」又は「CI法」とは、試薬気体(例えば、アンモニア)が電子の衝撃を受け、そして試薬気体イオンと分析物分子との相互作用により、分析物イオンが形成される方法を意味する。
【0051】
本明細書で用いる場合、用語「高速原子衝撃法」又は「FAB法」とは、高エネルギー原子(多くの場合Xe又はAr)のビームが、不揮発性サンプルに衝撃を与え、サンプルに含まれる分子を脱離及びイオン化させる方法を意味する。試験サンプルは、粘稠性の液体マトリックス、例えばグリセロール、チオグリセロール、m−ニトロベンジルアルコール、18−クラウン−6−クラウンエーテル、2−ニトロフェニルオクチルエーテル、スルホラン、ジエタノールアミン、及びトリエタノールアミン等に溶解する。化合物又はサンプルに適するマトリックスの選択は、実験に基づいたプロセスである。
【0052】
本明細書で用いる場合、用語「マトリックス支援レーザー脱離イオン化法」又は「MALDI」とは、光イオン化、プロトン化、脱プロトン化、及びクラスター崩壊を含む様々なイオン化経路によって、不揮発性サンプルが、サンプル中の分析物を脱離及びイオン化させるレーザー照射に曝露される方法を意味する。MALDIの場合、サンプルは、分析物分子の脱離を促進するエネルギー吸収性マトリックスと混合される。
【0053】
本明細書で用いる場合、用語「表面増強レーザー脱離イオン化法」又は「SELDI法」とは、光イオン化、プロトン化、脱プロトン化、及びクラスター崩壊を含む様々なイオン化経路によって、非揮発性サンプルが、サンプル中の分析物を脱離及びイオン化させるレーザー照射に曝露される別の方法を意味する。SELDIでは、サンプルは、1つ又は複数の目的とする分析物を優先的に保持する表面に一般的に結合する。MALDIと同様に、このプロセスも、イオン化を促進するために、エネルギー吸収性材料を利用し得る。
【0054】
本明細書で用いる場合、用語「エレクトロスプレーイオン化法」又は「ESI法」は、溶液が短尺のキャピラリー管に沿って通過し、そのキャピラリー管の端部に正又は負の高電位が印加される方法を意味する。溶液が管の端部に到達すると気化(噴霧化)されて、溶媒蒸気内で溶液の非常に小さい液滴からなるジェット又はスプレーとなる。この液滴のミストは、凝結を防止し、溶媒を蒸発させるためにわずかに加熱された蒸発チャンバーを流通する。液滴がより小型になるに従い、表面電荷密度は増加し、やがて同一荷電間で自然反発して、イオン並びに中性分子の放出が引き起こされる。
【0055】
本明細書で用いる場合、用語「大気圧化学イオン化法」又は「APCI法」とは、ESIと類似する質量分析法を意味するが、しかしAPCIは、大気圧でプラズマ内に生ずるイオン−分子反応によりイオンを産生する。プラズマは、スプレーキャピラリーと対電極の間の放電により維持される。次にイオンは、差次的にポンプ搬送される一連のスキマーステージの使用により質量分析器中に一般的に抽出される。乾燥及び事前加熱されたNガスの向流を使用して、溶媒の除去を改善することができる。極性がより低い種を分析する場合、APCIにおける気相イオン化の方がESIよりも有効であり得る。
【0056】
用語「大気圧光イオン化法」又は「APPI法」とは、本明細書で使用する場合、分子Mを光イオン化する機構が、分子イオンM+を形成する光子吸収及び電子放出である質量分析法の形態を意味する。光子エネルギーは、一般的にイオン化電位のすぐ上にあるので、分子イオンは、それほど解離しやすくない。多くの場合、クロマトグラフィーを必要とせずにサンプルを分析することができると考えられ、従ってかなりの時間及び出費が抑えられる。水蒸気又はプロトン性溶媒の存在下で、分子イオンは、Hを取り出してMH+を形成することができる。これは、Mが高プロトン親和性を有する場合に生ずる傾向がある。M+とMH+の合計は一定なので、これは定量の正確性に影響を及ぼさない。プロトン性溶媒中の薬物化合物は、通常MH+として観察される一方、非極性化合物、例えばナフタレン又はテストステロン等は、通常M+の形態を採る。Robb、D.B.、Covey、T.R.及びBruins、A.P.(2000年):例えば、Robbら、Atmospheric pressure photoionization:An ionization method for liquid chromatography−mass spectrometry.Anal.Chem.第72巻(15号):3653〜3659頁を参照。
【0057】
本明細書で用いる場合、用語「誘導結合プラズマ法」又は「ICP法」とは、ほとんどの元素が微粒化及びイオン化されるような十分に高温度において、サンプルが部分的にイオン化した気体と相互作用する方法を意味する。
【0058】
本明細書で用いる場合、用語「電界脱離法」とは、非揮発性の試験サンプルがイオン化表面上に配置され、そして分析物イオンを生成するのに強電界が使用される方法を意味する。
【0059】
本明細書で用いる場合、用語「脱離」とは、表面から分析物を取り出すこと、及び/又は分析物を気相に導入することを意味する。
【0060】
本明細書で用いる場合、用語「定量化限界〔limit of quantification〕」、「定量限界〔limit of quantitation〕」、又は「LOQ」とは、測定が定量的に意味を有するようになるポイントを意味する。このLOQにおける分析物の応答は、識別可能であり、個別的であり、並びに20%の精密度及び80%〜120%の正確度で再現性を有する。
【0061】
本明細書で用いる場合、用語「検出限界」又は「LOD」は、測定値が、それと関連した不確実性より大きくなるポイントである。LODは、ゼロ濃度から2標準偏差(SD)として任意に定義される。
【0062】
本明細書で用いる場合、体液サンプル中のアミロイドベータの「量」とは、体液の容積中で検出可能なアミロイドベータの質量を反映する絶対値を一般的に意味する。但し、量は、別のアミロイドベータの量と比較した相対的な量についても考慮する。例えば、体液中のアミロイドベータの量は、通常存在するアミロイドベータの対照レベル又は正常レベルを上回る又はそれ未満である量であり得る。
【0063】
用語「約」とは、イオン質量測定を除き定量測定と関連して本明細書で使用する場合、表示の数値±10%を意味する。マススペクトロメトリー装置は、所与の分析物の質量を決定する際に、ほとんど変化し得ない。用語「約」とは、イオンの質量又はイオンの質量/電荷の比の文脈において、±0.5原子質量単位を意味する。
【0064】
上記した本発明の概要は、非限定的であり、また本発明のその他の特性及び長所は、下記の発明を実施するための形態から、及び特許請求の範囲から明白である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1】Aβ40(配列番号1)、Aβ40フラグメント(配列番号2)、Aβ42(配列番号3)、及びAβ42フラグメント(配列番号4)の配列を示す図である。
図2-1】液体クロマトグラフィー法の情報を示す図である。水に溶解した0.1%FAを移動相A、及びACNに溶解した0.1%FAを移動相Bとして使用した。
図2-2】(図2−1のつづき)液体クロマトグラフィー法の情報を示す図である。水に溶解した0.1%FAを移動相A、及びACNに溶解した0.1%FAを移動相Bとして使用した。
図3】加熱したエレクトロスプレーイオン化(HESI)のイオン源条件を示す図である。
図4】Aβ42分析の直線範囲を示す図である。
図5】Aβ40分析の直線範囲を示す図である。
図6-1】Aβ40、Aβ42、及び内部標準の患者クロマトグラムの例を示す図である。
図6-2】(図6−1のつづき)Aβ40、Aβ42、及び内部標準の患者クロマトグラムの例を示す図である。
図7-1】Aβ40、Aβ42、及び内部標準の患者クロマトグラムの例を示す図である。
図7-2】(図7−1のつづき)Aβ40、Aβ42、及び内部標準の患者クロマトグラムの例を示す図である。
図8】アルツハイマー病患者91例、ボーダーラインのアルツハイマー病患者66例、及び正常な対象を含む、対象211例のAβ42:Aβ40の比を示す図である。
図9】女性と男性のアルツハイマー病患者におけるAβ42:Aβ40の比を示す図である。
図10】アルツハイマー病患者の年齢で階層化された群におけるAβ42:Aβ40の比を示す図である。
図11】C8とC4分析カラムの間での感度比較を示す図である。
図12】処理チューブと未処理チューブに由来するAβ40の回収率を示す図である。
図13】処理チューブと未処理チューブに由来するAβ42の回収率を示す図である。
図14】Aβ40減少レベルによるソート後の患者Aβ値(pg/mL)を示す図である。
図15】Aβ42減少レベルによるソート後の患者Aβ値(pg/mL)を示す図である。
図16】Aβ42/Aβ40値によるソート後の患者アルツハイマー病診断を示す図である。
図17】Aβ42/Aβ40の比に基づく患者アルツハイマー病診断を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
タンデム型質量分析などのマススペクトロメトリーにより、サンプル中のアミロイドベータ(Aβ)の量を検出又は決定する方法が、本明細書に提供される。特定の実施形態では、アミロイドベータの量を決定するための本明細書に提供される方法は、(a)サンプル中のアミロイドベータを精製すること;(b)前記サンプル中のアミロイドベータをイオン化すること;及び(c)マススペクトロメトリーにより、アミロイドベータイオンの量を決定することを含み、アミロイドベータイオンの量は、サンプル中のアミロイドベータの量と関連する。
【0067】
特定の実施形態では、アミロイドベータの量を決定するための本明細書に提供される方法は、(a)サンプル中のアミロイドベータを精製すること;(b)前記サンプル中のアミロイドベータをイオン化して、アミロイドベータの前駆イオンを産生すること;(c)1つ又は複数のアミロイドベータフラグメントのイオンを生成すること;及び(d)マススペクトロメトリーにより、ステップ(c)若しくは(d)又はその両方からのイオンの量を決定することを含み、アミロイドベータイオンの量は、サンプル中のアミロイドベータの量と関連する。
【0068】
特定の実施形態では、アミロイドベータの量を決定するための本明細書に提供される方法は、(a)サンプル中のアミロイドベータを消化して、1つ又は複数のアミロイドベータフラグメントを生成すること;(b)前記1つ又は複数のアミロイドベータフラグメントを精製すること;(c)サンプル中のアミロイドベータをイオン化して、アミロイドベータの前駆イオンを産生すること;(d)1つ又は複数のアミロイドベータフラグメントのイオンを生成すること;及び(e)マススペクトロメトリーにより、ステップ(c)若しくは(d)又はその両方からのイオンの量を決定することを含み、アミロイドベータイオンの量が、前記サンプル中のアミロイドベータの量と関連する。
【0069】
特定の実施形態では、アミロイドベータ42(Aβ42)の量を決定する方法が、本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、Aβ42フラグメントは、配列GAIIGLMVGGVVIA(配列番号4)を含む。いくつかの実施形態では、方法は、(a)サンプル中のアミロイドベータを消化して、アミロイドベータ42(Aβ42)を生成すること;(b)Aβ42を精製すること;(c)Aβ42をイオン化して、前駆イオンを産生すること;(d)1つ又は複数のAβ42のフラグメントイオンを生成すること;及び(e)マススペクトロメトリーにより、ステップ(c)若しくは(d)又はその両方からのイオンの量を決定することを含み、イオンの量は、サンプル中のAβ42の量と関連する。
【0070】
特定の実施形態では、アミロイドベータ40(Aβ40)の量を決定する方法が、本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、Aβ40フラグメントは、配列GAIIGLMVGGVV(配列番号2)を含む。いくつかの実施形態では、方法は、(a)サンプル中のアミロイドベータを消化して、アミロイドベータ40(Aβ40)を生成すること;(b)Aβ40を精製すること;(c)Aβ40をイオン化して、前駆イオンを産生すること;(d)1つ又は複数のAβ40のフラグメントイオンを生成すること;及び(e)マススペクトロメトリーにより、ステップ(c)若しくは(d)又はその両方からのイオンの量を決定することを含み、イオンの量は、サンプル中のAβ40の量と関連する。
【0071】
特定の実施形態では、アミロイドベータ42(Aβ42)及びアミロイドベータ40(Aβ40)の量を決定する方法が、本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、方法は、(a)サンプル中のアミロイドベータを消化して、アミロイドベータ42(Aβ42)及びアミロイドベータ40(Aβ40)を生成すること;(b)Aβ42及びAβ40を精製すること;(c)Aβ42及びAβ40をイオン化して、前駆イオンを産生すること;(d)1つ又は複数のAβ42及びAβ40のフラグメントイオンを生成すること;及び(e)マススペクトロメトリーにより、ステップ(c)若しくは(d)又はその両方からのイオンの量を決定することを含み、イオンの量は、サンプル中のAβ42及びAβ40の量と関連する。
【0072】
特定の実施形態では、アミロイドベータ40(Aβ40)に対するアミロイドベータ42(Aβ42)の比を決定する方法が、本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、方法は、(a)サンプル中のアミロイドベータを消化して、アミロイドベータ42(Aβ42)及びアミロイドベータ40(Aβ40)を生成すること;(b)Aβ42及びAβ40を精製すること;(c)Aβ42及びAβ40をイオン化して、前駆イオンを産生すること;(d)1つ又は複数のAβ42及びAβ40のフラグメントイオンを生成すること;及び(e)マススペクトロメトリーにより、ステップ(c)若しくは(d)又はその両方からのイオンの量を決定すること;及び(f)Aβ40に対するAβ42の比を決定することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、Aβ42に対するAβ40の比を決定することを含む。
【0073】
特定の実施形態では、アルツハイマー病又は認知症を診断又は予測する方法であって、試験サンプル中のアミロイドベータの量を、マススペクトロメトリーにより決定することを含み、アミロイドベータのレベルが異常であれば、アルツハイマー病が予測又は診断される、方法が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、方法は、(a)サンプル中のアミロイドベータを精製すること;(b)前記サンプル中のアミロイドベータをイオン化すること;及び(c)アミロイドベータイオンの量を、マススペクトロメトリーにより決定すること;及び(d)アミロイドベータイオンの量を、前記サンプル中のアミロイドベータの量と関連付けることを含み得、アミロイドベータのレベルが異常であれば、アルツハイマー病が予測又は診断される。いくつかの実施形態では、方法は、アミロイドベータフラグメントの比を決定することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、アミロイドベータ40(Aβ40)に対するアミロイドベータ42(Aβ42)の比を決定することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、アミロイドベータ40(Aβ42)に対するアミロイドベータ42(Aβ40)の比を決定することを含む。
【0074】
特定の実施形態では、本明細書に提供される方法は、サンプルと接触する機器の表面を事前処理することを含む。いくつかの実施形態では、事前処理は、機器の表面を、アミロイドベータ又はそのフラグメントが表面に固着するのを防止する薬剤で事前コーティングすることを含む。いくつかの実施形態では、事前処理は、溶菌液による事前処理を含む。いくつかの実施形態では、事前処理は、大腸菌溶解物による事前処理を含む。いくつかの実施形態では、大腸菌溶解物は、トリプシン消化大腸菌溶解物を含む。いくつかの実施形態では、事前処理された機器として、試験管又はプレート、ピペットチップ、サンプル調製装置、液体クロマトグラフィー装置、及びマススペクトロメトリー装置が挙げられるが、但し、これらに限定されない。
【0075】
特定の実施形態では、本明細書に提供される方法は、アミロイドベータ又はそのフラグメントを安定化させる薬剤を用いてサンプルを処理する、又はそれと共にインキュベートすることを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、サンプルをアミロイドベータ抗体で処理すること、又はそれと共にインキュベートすることを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、サンプルを少なくとも2つの異なるアミロイドベータ抗体で処理する、又はそれと共にインキュベートすることを含む。いくつかの実施形態では、アミロイドベータ抗体は、アミロイドベータのC末端と結合する抗体を含む。いくつかの実施形態では、アミロイドベータ抗体は、アミロイドベータのN末端と結合する抗体を含む。いくつかの実施形態では、アミロイドベータを安定化させる薬剤は、アポリポタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、アミロイドベータを安定化させる薬剤は、アポリポタンパク質E2を含む。いくつかの実施形態では、アミロイドベータを安定化させる薬剤は、アポリポタンパク質E4を含む。いくつかの実施形態では、アミロイドベータを安定化させる薬剤は、アミロイドベータのC末端と結合する抗体、アミロイドベータのN末端と結合する抗体、アポリポタンパク質E2、アポリポタンパク質E4、又はその組合せを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるアミロイドベータを安定化させる薬剤は、−70℃で少なくとも1カ月間、安定性を付与する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるアミロイドベータを安定化させる薬剤は、−70℃で少なくとも2カ月間、安定性を付与する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるアミロイドベータを安定化させる薬剤は、−70℃で少なくとも3カ月間、安定性を付与する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるアミロイドベータを安定化させる薬剤は、凍結−解凍サイクルにわたり、安定性を付与する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるアミロイドベータを安定化させる薬剤は、少なくとも2回の凍結−解凍サイクルにわたり、安定性を付与する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるアミロイドベータを安定化させる薬剤は、少なくとも3回の凍結−解凍サイクルにわたり、安定性を付与する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるアミロイドベータを安定化させる薬剤は、少なくとも4回の凍結−解凍サイクルにわたり、安定性を付与する。
【0076】
特定の実施形態では、本明細書に提供される方法は、サンプル中のアミロイドベータを消化することを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、酵素によりアミロイドベータを消化することを含む。いくつかの実施形態では、酵素は、Lys−Cである。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、尿素によりアミロイドベータを消化することを含む。いくつかの実施形態では、尿素は、タンパク質消化に適する濃度を有する。いくつかの実施形態では、尿素は6M尿素である。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、尿素及びLys−Cによりアミロイドベータを消化することを含む。いくつかの実施形態では、消化は、消化時間を短縮する又は消化効率を高める条件で消化することを含む。いくつかの実施形態では、消化は、マイクロ波中で消化することを含む。
【0077】
特定の実施形態では、本明細書に提供される方法は、抽出を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、混合モード陰イオン交換抽出を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、固相抽出を含む。
【0078】
特定の実施形態では、本明細書に提供される方法は、加熱された窒素を使用してサンプルを溶出及び乾燥させることを含む。いくつかの実施形態では、サンプルは、再構成用バッファー中で再懸濁される。
【0079】
特定の実施形態では、サンプルを精製することは、液体クロマトグラフィーを含む。いくつかの実施形態では、液体クロマトグラフィーとして、逆相液体クロマトグラフィー(RPLC)、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、及び高乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)が挙げられるが、但し、これらに限定されない。好ましい実施形態では、液体クロマトグラフィーは、HPLCを含む。いくつかの実施形態では、HPLCカラムは、化学的部分の分離(すなわち、分画)を促進する媒体(すなわち、充填材料)を一般的に含む。適するカラムは、C−4、C−8、C−12、又はC−18カラムを含み得る。好ましい実施形態では、適するHPLCカラムはC−4カラムである。
【0080】
特定の実施形態では、本明細書に提供される方法は、アミロイドベータの機器表面への固着を低下させる機器を使用することを含む。いくつかの実施形態では、機器は、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)チューブ又は装置を備える。いくつかの実施形態では、機器は、金属チューブ又は装置を含む。
【0081】
特定の実施形態では、本明細書に提供される方法は、タンデム型質量分析法を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、ポジティブモードでイオン化することを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、ネガティブモードでイオン化することを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、加熱式エレクトロスプレーイオン化法(HESI)を使用してイオン化させることを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、エレクトロスプレーイオン化法(ESI)を使用してイオン化させることを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、大気圧化学イオン化法(APCI)を使用してイオン化させることを含む。好ましい実施形態では、本明細書に提供される方法は、加熱式エレクトロスプレーイオン化法(HESI)を使用して、ポジティブモードでイオン化することを含む。いくつかの実施形態では、衝突エネルギーは、5V〜60Vである。いくつかの実施形態では、衝突エネルギーは、10V〜50Vである。いくつかの実施形態では、衝突エネルギーは、20V〜50Vである。いくつかの実施形態では、衝突エネルギーは、20V〜45Vである。
【0082】
特定の実施形態では、本明細書に提供される方法は、アミロイドベータ40(Aβ40)の量を検出又は決定することを含む。いくつかの実施形態では、Aβ40は、配列DAEFRHDSGYEVHHQKLVFFAEDVGSNKGAIIGLMVGGVV(配列番号1)を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、Aβ40のフラグメントの量を検出又は決定することを含む。いくつかの実施形態では、Aβ40フラグメントは、配列GAIIGLMVGGVV(配列番号2)を含む。いくつかの実施形態では、Aβ40フラグメントは、N末端又はC末端飛行化ペプチドを含有する配列を含む。いくつかの実施形態では、Aβ40フラグメントは、配列番号2、及びN末端又はC末端飛行化ペプチドを含む。いくつかの実施形態では、飛行化ペプチドは、親水性である。いくつかの実施形態では、飛行化ペプチドは、少なくとも1個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、飛行化ペプチドは、少なくとも2個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、飛行化ペプチドは、少なくとも3個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、飛行化ペプチドは、少なくとも4個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、飛行化ペプチドは、少なくとも5個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、飛行化ペプチドは、少なくとも6個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、Aβ40フラグメントの量は、サンプル中でAβ40の量と相関する。
【0083】
特定の実施形態では、本明細書に提供される方法は、アミロイドベータ42(Aβ42)の量を検出又は決定することを含む。いくつかの実施形態では、Aβ42は、配列DAEFRHDSGYEVHHQKLVFFAEDVGSNKGAIIGLMVGGVVIA(配列番号3)を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、Aβ42のフラグメントの量を検出又は決定することを含む。いくつかの実施形態では、Aβ42フラグメントは、配列GAIIGLMVGGVVIA(配列番号4)を含む。いくつかの実施形態では、Aβ42フラグメントは、N末端又はC末端飛行化ペプチドを含有する配列を含む。いくつかの実施形態では、Aβ42フラグメントは、配列番号4、及びN末端又はC末端飛行化ペプチドを含む。いくつかの実施形態では、飛行化ペプチドは、親水性である。いくつかの実施形態では、飛行化ペプチドは、少なくとも1個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、飛行化ペプチドは、少なくとも2個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、飛行化ペプチドは、少なくとも3個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、飛行化ペプチドは、少なくとも4個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、飛行化ペプチドは、少なくとも5個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、飛行化ペプチドは、少なくとも6個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、Aβ42フラグメントの量は、サンプル中のAβ42の量と相関する。
【0084】
特定の実施形態では、本明細書に提供される方法は、Aβ42に対するAβ40の比(Aβ40:Aβ42)を検出又は決定することを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、Aβ42フラグメントに対するAβ40フラグメントの比(Aβ40フラグメント:Aβ42フラグメント)を検出又は決定することを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、Aβ40に対するAβ42の比(Aβ42:Aβ40)を検出又は決定することを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、Aβ40フラグメントに対するAβ42フラグメントの比(Aβ42フラグメント:Aβ40フラグメント)を検出又は決定することを含む。
【0085】
特定の実施形態では、Aβ40に対するAβ42の比、又はAβ40フラグメントに対するAβ42フラグメントの比が0.6又はそれ未満であれば、アルツハイマー病が予測される、又はそれと診断される。いくつかの実施形態では、Aβ40に対するAβ42の比、又はAβ40フラグメントに対するAβ42フラグメントの比が0.5又はそれ未満であれば、アルツハイマー病が予測される、又はそれと診断される。いくつかの実施形態では、Aβ40に対するAβ42の比、又はAβ40フラグメントに対するAβ42フラグメントの比が0.45又はそれ未満であれば、アルツハイマー病が予測される、又はそれと診断される。いくつかの実施形態では、Aβ40に対するAβ42の比、又はAβ40フラグメントに対するAβ42フラグメントの比が0.4又はそれ未満であれば、アルツハイマー病が予測される、又はそれと診断される。いくつかの実施形態では、Aβ40に対するAβ42の比、又はAβ40フラグメントに対するAβ42フラグメントの比が0.35又はそれ未満であれば、アルツハイマー病が予測される、又はそれと診断される。いくつかの実施形態では、Aβ40に対するAβ42の比、又はAβ40フラグメントに対するAβ42フラグメントの比が0.3又はそれ未満であれば、アルツハイマー病が予測される、又はそれと診断される。いくつかの実施形態では、Aβ40に対するAβ42の比、又はAβ40フラグメントに対するAβ42フラグメントの比が0.25又はそれ未満であれば、アルツハイマー病が予測される、又はそれと診断される。いくつかの実施形態では、Aβ40に対するAβ42の比、又はAβ40フラグメントに対するAβ42フラグメントの比が0.2又はそれ未満であれば、アルツハイマー病が予測される、又はそれと診断される。いくつかの実施形態では、Aβ40に対するAβ42の比、又はAβ40フラグメントに対するAβ42フラグメントの比が0.19又はそれ未満であれば、アルツハイマー病が予測される、又はそれと診断される。いくつかの実施形態では、Aβ40に対するAβ42の比、又はAβ40フラグメントに対するAβ42フラグメントの比が0.18又はそれ未満であれば、アルツハイマー病が予測される、又はそれと診断される。いくつかの実施形態では、Aβ40に対するAβ42の比、又はAβ40フラグメントに対するAβ42フラグメントの比が0.17又はそれ未満であれば、アルツハイマー病が予測される、又はそれと診断される。いくつかの実施形態では、Aβ40に対するAβ42の比、又はAβ40フラグメントに対するAβ42フラグメントの比が0.16又はそれ未満であれば、アルツハイマー病が予測される、又はそれと診断される。いくつかの実施形態では、Aβ40に対するAβ42の比、又はAβ40フラグメントに対するAβ42フラグメントの比が0.15又はそれ未満であれば、アルツハイマー病が予測される、又はそれと診断される。いくつかの実施形態では、Aβ40に対するAβ42の比、又はAβ40フラグメントに対するAβ42フラグメントの比が0.1又はそれ未満であれば、アルツハイマー病が予測される、又はそれと診断される。
【0086】
特定の実施形態では、方法は、1つ若しくは複数のAβ又はそのフラグメントの前駆イオンを生成することを含む。いくつかの実施形態では、前駆イオンの少なくとも1つは、1085.6±0.5又は1269.7±0.5の質量/電荷の比を有する。いくつかの実施形態では、方法は、1つ若しくは複数のAβ又はそのフラグメントのフラグメントイオンを生成することを含み得る。いくつかの実施形態では、フラグメントイオンの少なくとも1つは、812.37±0.5、869.4±0.5、968.43±0.5、869.39±0.5、968.44±0.5、1067.5±0.5、又は1180.57±0.5の質量/電荷の比を有する。
【0087】
特定の実施形態では、本明細書に提供される方法は、内部標準を添加することを含む。いくつかの実施形態では、内部標準は、同位体で標識された内部標準を含む。いくつかの実施形態では、内部標準は、1315N標識を含む。いくつかの実施形態では、内部標準は、1315Nで標識された少なくとも1つのPhe、Leu、又はMetを含む。いくつかの実施形態では、内部標準の前駆イオンの少なくとも1つは、1110.7±0.5の質量/電荷の比を有する。いくつかの実施形態では、方法は、内部標準の1つ又は複数のフラグメントイオンを生成することを含み得る。いくつかの実施形態では、フラグメントイオンの少なくとも1つは、768.48±0.5、825.5±0.5、又は882.52±0.5の質量/電荷の比を有する。
【0088】
特定の実施形態では、方法の定量限界は、10ng/mL未満、又はそれに等しい。いくつかの実施形態では、方法の定量限界は、5ng/mL未満、又はそれに等しい。いくつかの実施形態では、方法の定量限界は、4ng/mL未満、又はそれに等しい。いくつかの実施形態では、方法の定量限界は、3ng/mL未満、又はそれに等しい。いくつかの実施形態では、方法の定量限界は、2ng/mL未満、又はそれに等しい。いくつかの実施形態では、方法の定量限界は、1ng/mL未満、又はそれに等しい。いくつかの実施形態では、方法の定量限界は、0.5ng/mL未満、又はそれに等しい。いくつかの実施形態では、方法の定量限界は、0.2ng/mL未満、又はそれに等しい。いくつかの実施形態では、方法の定量限界は、0.1ng/mL未満、又はそれに等しい。
【0089】
いくつかの実施形態では、方法の検出限界は、5ng/mL未満、又はそれに等しい。いくつかの実施形態では、方法の検出限界は、1ng/mL未満、又はそれに等しい。いくつかの実施形態では、方法の検出限界は、0.5ng/mL未満、又はそれに等しい。いくつかの実施形態では、方法の検出限界は、0.1ng/mL未満、又はそれに等しい。いくつかの実施形態では、方法の検出限界は、0.05ng/mL未満、又はそれに等しい。いくつかの実施形態では、方法の検出限界は、0.01ng/mL未満、又はそれに等しい。
【0090】
いくつかの実施形態では、アミロイドベータは、マススペクトロメトリーの前に誘導体化されない。いくつかの実施形態では、アミロイドベータは、マススペクトロメトリーの前に誘導体化される。
【0091】
特定の実施形態では、サンプルは、体液である。いくつかの実施形態では、サンプルは、脳脊髄液(CSF)である。いくつかの実施形態では、サンプルは、血漿又は血清である。いくつかの実施形態では、サンプルは、全血である。いくつかの実施形態では、サンプルは、唾液又は尿である。
【0092】
適する試験サンプルは、目的とする分析物を含有し得る任意の試験サンプルを含む。いくつかの好ましい実施形態では、サンプルは、生体サンプルである;すなわち、任意の生物起源物質、例えば動物、細胞培養物、臓器培養物等から得られるサンプルである。特定の好ましい実施形態では、サンプルは、哺乳動物、例えばイヌ、ネコ、ウマ等から得られる。特に好ましい哺乳動物は、霊長類、最も好ましくは男性又は女性のヒトである。特に好ましいサンプルとして、血液、血漿、血清、毛髪、筋肉、尿、唾液、涙、脳脊髄液、又はその他の組織サンプルが挙げられる。そのようなサンプルは、例えば患者;すなわち、疾患又は状態を診断、予測、又は処置するために、臨床現場において自己を提示する生存者、男性又は女性から取得され得る。試験サンプルは、好ましくは患者から得られ、例えば血清である。
【0093】
マススペクトロメトリーのためのサンプル調製
サンプル中のその他の成分(例えば、タンパク質)と比較してそれよりもアミロイドベータを富化させるのに利用可能である方法として、例えば、フィルター処理法、遠心分離法、薄層クロマトグラフィー(TLC)法、キャピラリー電気泳動法を含む電気泳動法、免疫親和性分離法を含む親和性分離法、酢酸エチル抽出法及びメタノール抽出法を含む抽出法、及びカオトロピック薬剤の使用、又は上記の任意の組合せ等が挙げられる。
【0094】
タンパク質沈殿法は、試験サンプルを調製する1つの好ましい方法である。そのようなタンパク質精製法は、当技術分野に周知であり、例えば、Polsonらの、Journal of Chromatography B、第785巻:263〜275頁(2003年)は、本方法で使用するのに適するタンパク質沈殿技術について記載する。タンパク質沈殿法は、上清にアミロイドベータを残して、サンプルからほとんどのタンパク質を取り除くのに利用可能である。サンプルは、沈殿したタンパク質から液体上清を分離するために遠心分離され得る。得られた上清は、次に、液体クロマトグラフィー及び後続するマススペクトロメトリー分析に適用され得る。特定の実施形態では、タンパク質沈殿法、例えばアセトニトリルタンパク質沈殿法等を使用すれば、HPLC及びマススペクトロメトリーを行う前に、高乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)又はその他のオンライン抽出を行う必要がなくなる。従って、そのような実施形態では、方法は、(1)目的とするサンプルのタンパク質沈殿を実施すること;及び(2)オンライン抽出又は高乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)を使用することなく、上清をHPLC−質量分析装置に直接負荷することと関係する。
【0095】
いくつかの好ましい実施形態では、HPLCは、単独で、又は1つ若しくは複数の精製法と組み合わせて、マススペクトロメトリーの前にアミロイドベータを精製するのに利用可能である。そのような実施形態では、サンプルは、分析物を捕捉するHPLC抽出カートリッジを使用して抽出され、次に溶出され、そして第2のHPLCカラム上でクロマトグラフされ得る、又はイオン化前に分析用HPLCカラム上に溶出され得る。このようなクロマトグラフィー手順に関与するステップは、自動化方式で連結可能であるので、分析物の精製期間中にオペレーターが関与する必要性は、最低限に抑えることができる。このような特性は、その結果、時間とコストの節約をもたらし、またオペレーターがミスする機会を取り除くことができる。
【0096】
例えば、HTLCカラムや諸方法等が引き起こす乱流は、物質移動速度を増強する可能性があり、分離特性を改善すると考えられている。HTLCカラムは、剛性粒子を含有する充填カラムを通じた、クロマトグラフィーの高い流速によって成分を分離する。高速流速(例えば、3〜5mL/分)を利用することにより、乱流がカラム内に生じ、固定相と目的とする分析物の間でほぼ完全な相互作用を引き起こす。HTLCカラムを使用する長所として、高分子量の種は、乱流条件下では保持されないので、生体液マトリックスと関連した高分子の蓄積が回避されることが挙げられる。1つの手順において複数の分離法を組み合わせるHTLC法では、サンプル調製を長時間行う必要性が低下し、また著しく高速で作動する。そのような方法は、層流(HPLC)クロマトグラフィーよりも優れた分離性能も実現する。HTLCは、生体サンプル(血漿、尿、等)の直接注入を可能にする。直接注入する場合、変性したタンパク質及びその他の生物学的デブリが分離カラムを急速にブロックするので、従来型のクロマトグラフィーでは実現が難しい。また、HTLCは、1mL未満、好ましくは0.5mL未満、好ましくは0.2mL未満、好ましくは0.1mLの非常に少ないサンプルボリュームも可能にする。
【0097】
マススペクトロメトリーによる分析前に、サンプル調製に適用されるHTLCの例は、別途記載されている。例えば、Zimmerら、J.Chromatogr.A854巻:23〜35頁(1999年)を参照;米国特許第5,968,367号;同第5,919,368号;同第5,795,469号;及び同第5,772,874号も参照。本方法の特定の実施形態では、サンプルは、HTLCカラムに負荷する前に上記のようなタンパク質沈殿処理がなされる;代替的な好ましい実施形態では、サンプルは、タンパク質沈殿処理されることなく、HTLC上に直接負荷され得る。HTLC抽出カラムは、好ましくは大型の粒子カラムである。様々な実施形態では、方法の1つ又は複数のステップは、オンラインの自動化された方式で実施され得る。例えば、1つの実施形態では、ステップ(i)〜(v)は、オンラインの自動化された方式で実施される。別の場合、イオン化及び検出のステップは、ステップ(i)〜(v)の後に、オンラインで実施される。
【0098】
高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を含む液体クロマトグラフィー(LC)は、比較的低速の層流技術に基づく。従来型のHPLC分析法は、カラムを通過するサンプルの層流が、サンプルから目的とする分析物を分離する基礎となる、カラム充填材に依存する。当業者は、そのようなカラムにおける分離は、拡散プロセスであると理解している。HPLCは、生体サンプル中の化合物の分離に問題なく適用されるが、かなりの量のサンプル調製が、分離及び質量分析装置(MS)によるその後の分析の前に必要とされ、この技術を労働集約的なものとしている。更に、ほとんどのHPLCシステムは、質量分析装置をその能力の最大限まで活用しておらず、1つのHPLCシステムが1つのMS装置に接続可能としているにすぎず、その結果、多数のアッセイを実施するのに冗長な時間を必要とする。
【0099】
マススペクトロメトリー分析前のサンプル除去を目的としたHPLCの使用について、様々な方法が記載されている。例えば、Taylorら、Therapeutic Drug Monitoring、第22巻:608〜12頁(2000年);及びSalmら、Clin.Therapeutics、22巻Supl.B:B71〜B85頁(2000年)を参照。
【0100】
当業者は、アミロイドベータと共に利用するのに適するHPLC装置及びカラムを選択し得る。クロマトグラフ用カラムは、化学的部分の分離(すなわち、分画)を促進する媒体(すなわち、充填材料)を一般的に含む。媒体として微細粒子を挙げることができる。粒子は、様々な化学的部分と相互作用して化学的部分の分離を促進する結合表面を備える。1つの適する結合表面は、疎水結合表面、例えばアルキル結合表面等である。アルキル結合表面は、C−4、C−8、C−12、又はC−18結合アルキル基、好ましくはC−18結合基を含み得る。クロマトグラフ用カラムは、サンプルを受け取るための注入ポートと、分画されたサンプルを含む流出物を排出するための排出ポートを備える。1つの実施形態では、サンプル(又は事前精製されたサンプル)が、注入ポートにおいてカラムに適用され、溶媒又は溶媒混合物により溶出され、そして排出ポートから排出される。異なる溶媒モードが、目的とする分析物を溶出させるのに選択され得る。例えば、液体クロマトグラフィーは、勾配モード、アイソクラチックモード、又は多型(すなわち、混合)モードを使用して実施され得る。クロマトグラフィー期間中に、材料の分離は、変動要因、例えば溶離液(「移動相」としても知られている)の選択、溶出モード、勾配条件、温度等により影響を受ける。
【0101】
特定の実施形態では、分析物は、目的とする分析物がカラム充填材料により可逆的に保持される一方、1つ又は複数のその他の物質は保持されない条件下で、サンプルをカラムに適用することにより精製され得る。このような実施形態では、第1の移動相の条件は、目的とする分析物がカラムにより保持されるように設定可能であり、また第2の移動相の条件は、その後、保持されなかった物質が洗い出されたら、保持された物質がカラムから取り出されるように、設定可能である。或いは、分析物は、1つ又は複数のその他の物質と比較して、異なる速度で目的とする分析物が溶出するような移動相の条件下でサンプルをカラムに適用することにより精製され得る。そのような手順は、サンプルの1つ又は複数のその他の成分と比較して、目的とする1つ又は複数の分析物の量を富化させる可能性がある。
【0102】
1つの好ましい実施形態では、HTLCは、疎水性カラムクロマトグラフィーシステム上のHPLCに後続し得る。特定の好ましい実施形態では、Cohesive Technologies社製のTurboFlow Cyclone P(登録商標)ポリマーベースカラム(粒径60μm、カラム寸法50×1.0mm、ポアサイズ100Å)が使用される。関連する好ましい実施形態では、親水性エンドキャッピングを有する、Phenomenex Inc社製のSynergi Polar−RP(登録商標)エーテル結合型フェニルの分析カラム(粒径4μm、カラム寸法150×2.0mm、ポアサイズ80Å)が使用される。特定の好ましい実施形態では、HTLC及びHPLCが、移動相としてHPLCグレード超純水及び100%メタノールを使用して実施される。
【0103】
慎重なバルブの選択及びコネクター配管作業により、手動ステップを一切必要とせずに、物質が1つのカラムから次のカラムへと通過するように、2つ以上のクロマトグラフィーカラムが、必要に応じて接続され得る。好ましい実施形態では、バルブの選択及び配管作業は、必要なステップを実施するように事前プログラムされたコンピューターにより管理される。最も好ましくは、クロマトグラフィーシステムも、検出器システム、例えばMSシステムと、そのようなオンライン方式で接続される。従って、オペレーターは、サンプルのトレーをオートサンプラーに配置すればよく、そして残りの作業は、コンピューター制御下で実施され、その結果、選択されたすべてのサンプルの精製及び分析が完了する。
【0104】
特定の好ましい実施形態では、サンプル中のアミロイドベータ又はそのフラグメントは、イオン化の前に精製され得る。特に好ましい実施形態では、クロマトグラフィーは、ガスクロマトグラフィーではない。
【0105】
マススペクトロメトリーによる検出及び定量
様々な実施形態では、アミロイドベータ又はそのフラグメントは、当業者にとって公知の任意の方法によりイオン化することができる。マススペクトロメトリーは、分画されたサンプルをイオン化し、そして更なる分析用として荷電分子を生み出すイオン源を備える質量分析装置を使用して実施される。例えば、サンプルのイオン化は、電子イオン化、化学イオン化、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、光子イオン化、大気圧化学イオン化(APCI)、光イオン化、大気圧光イオン化(APPI)、高速原子衝撃(FAB)、液体二次イオン化(LSI)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)、電界イオン化、電界脱離、サーモスプレー/プラズマスプレーイオン化、表面増強レーザー脱離イオン化(SELDI)、誘導結合プラズマ(ICP)、及び粒子ビームイオン化により実施され得る。当業者は、イオン化法の選択は、測定される分析物、サンプルの種類、検出器の種類、ポジティブモードとネガティブモードの選択等に基づき決定され得るものと理解する。
【0106】
好ましい実施形態では、アミロイドベータ又はそのフラグメントは、ポジティブモード又はネガティブモードでの加熱式エレクトロスプレーイオン化(HESI)によりイオン化する。代替的実施形態では、アミロイドベータ又はそのフラグメントは、ポジティブモード又はネガティブモードでのエレクトロスプレーイオン化(ESI)又は大気圧化学イオン化(APCI)によりイオン化する。
【0107】
サンプルがイオン化した後、これにより生成した正に荷電したイオン又は負に荷電したイオンは、質量対電荷の比を決定するために分析され得る。質量対電荷の比を決定するための適するアナライザーとして、四重極型アナライザー、イオントラップアナライザー、及び飛行時間アナライザーが挙げられる。イオンは、いくつかの検出モードを使用して検出可能である。例えば、選択されたイオンは、すなわち、選択的イオンモニタリングモード(SIM)を使用して検出可能であるか、また或いは、イオンは、スキャニングモード、例えば、多重反応モニタリング(MRM)又は選択的反応モニタリング(SRM)を使用して検出可能である。好ましくは、質量対電荷の比は、四重極型アナライザーを使用して決定される。例えば、「四重極」又は「四重極型イオントラップ」装置では、電極間に印加されたDC電位、RFシグナルの振幅、及び質量/電荷の比に比例した力が、振動性ラジオ周波数場内のイオンに加わる。電圧及び振幅は、特定の質量/電荷の比を有するイオンのみが、四重極の長さを移動する一方、その他のすべてのイオンは外れるように選択され得る。従って、四重極型装置は、装置に注入されたイオンに対して、「マスフィルター」及び「マス検出器」の両方として作用し得る。
【0108】
「タンデム型質量分析」又は「MS/MS」を利用することにより、MS技術の分解能を強化することができる。この技術では、目的とする分子から生成した前駆イオン(親イオンとも呼ばれる)を、MS装置内でフィルター処理することができ、そして前駆イオンは、その後フラグメント化されて、次に第2のMS手順において分析の対象とされる1つ又は複数のフラグメントイオン(娘イオン又はプロダクトイオンとも呼ばれる)となる。前駆イオンを慎重に選択することにより、特定の分析物より産生するイオンのみが、フラグメント化チャンバーを通過し、そこで、不活性気体の原子と衝突してフラグメントイオンが産生する。前駆イオン及びフラグメントイオンのいずれも、イオン化/フラグメント化させる一連の所定条件下で再現的に産生するので、MS/MS技術は、極めて強力な分析ツールを提供し得る。例えば、フィルター処理/フラグメント化の組合せは、妨害物質を取り除くのに利用可能であり、また複合サンプル、例えば生体サンプル等において特に有用であり得る。
【0109】
質量分析装置は、一般的に、イオンスキャン;すなわち、所定の範囲(例えば、100〜1000amu)において、特定の質量/電荷を有する各イオンの相対的存在量をユーザーに提供する。分析物アッセイの結果、すなわち質量スペクトルは、当技術分野において公知の非常に多くの方法により、オリジナルサンプル内の分析物の量と関連付けることができる。例えば、サンプリング及び分析パラメーターが慎重に管理されることを前提とすれば、所定のイオンの相対的存在量は、相対的存在量をオリジナル分子の絶対量に変換する表と比較することができる。或いは、分子標準をサンプルと共にランニングすることができ、そしてその標準から生成したイオンに基づき、標準曲線が構築される。そのような標準曲線を使用して、所定のイオンの相対的存在量が、オリジナル分子の絶対量に変換され得る。特定の好ましい実施形態では、内部標準が、アミロイドベータの量を計算するための標準曲線を生成するのに使用される。そのような標準曲線を生成及び使用する方法は、当技術分野に周知であり、また当業者は、適切な内部標準を選択する能力を有する。例えば、アミロイドベータの同位体が、内部標準として利用可能である。イオンの量をオリジナル分子の量と関連付けるための非常に多くのその他の方法が、当業者に周知である。
【0110】
方法の1つ又は複数のステップは、自動化された機械を使用して実施され得る。特定の実施形態では、1つ又は複数の精製ステップが、オンラインで実施され、またより好ましくは、精製及びマススペクトロメトリーステップのすべてが、オンライン方式で実施され得る。
【0111】
特定の実施形態、例えば前駆イオンが更なるフラグメント化を目的として単離されるようなMS/MS等では、衝突活性化解離法〔collision activation dissociation〕が、更なる検出を目的としてフラグメントイオンを生成するのに多くの場合使用される。CADでは、前駆イオンは、不活性気体との衝突を通じてエネルギーを獲得するが、その後「単分子分解反応」と呼ばれるプロセスによりフラグメント化する。振動エネルギーの増加に起因して、イオン内の特定の結合が破壊され得るように、十分なエネルギーが、前駆イオン内に蓄積しなければならない。
【0112】
特に好ましい実施形態では、アミロイドベータが、MS/MSを使用して、以下のように検出及び/又は定量化される。サンプルは、液体クロマトグラフィー、好ましくはHPLCで処理され、クロマトグラフ用カラムからの液体溶媒の流れは、MS/MSアナライザーの加熱されたネブライザーインターフェースに進入し、そして溶媒/分析物混合物が、インターフェースの加熱されたチューブ内で蒸気に変換される。分析物は、選択されたイオン化装置によりイオン化される。イオン、例えば前駆イオンは、装置の開口部を通過し、そして第1の四重極に進入する。四重極1及び3(Q1及びQ3)は、質量フィルターであり、その質量対電荷の比(m/z)に基づき、イオン(すなわち、「前駆」及び「フラグメント」イオン)の選択を可能にする。四重極2(Q2)は衝突セルであり、そこでイオンがフラグメント化される。質量分析装置の第1の四重極(Q1)は、アミロイドベータの質量対電荷の比を用いて分子を選択する。アミロイドベータの正しい質量/電荷の比を有する前駆イオンが、衝突チャンバー(Q2)に導入可能となる一方、その他の質量/電荷の比を有する望ましくないイオンはいずれも四重極の側面と衝突し、除去される。Q2に進入する前駆イオンは、中性のアルゴン気体分子と衝突して、フラグメント化する。このプロセスは衝突活性化解離(CAD)と呼ばれる。生成したフラグメントイオンは、四重極3(Q3)に導入され、そこでは、アミロイドベータフラグメントのイオンが選択される一方、その他のイオンは除去される。
【0113】
本方法は、ポジティブ又はネガティブイオンモードのいずれかで実施されるMS/MSと関係し得る。当技術分野において周知の標準法を使用して、当業者は、四重極3(Q3)における選択で利用可能な、特定のアミロイドベータの前駆イオンの1つ又は複数のフラグメントイオンを識別する能力を有する。
【0114】
アミロイドベータの前駆イオンがアルコール又はアミン基を含む場合、一般的に、前駆イオンの脱水又は脱アミノに該当するフラグメントイオンがそれぞれ形成される。アルコール基を含む前駆イオンの場合、脱水により形成されるそのようなフラグメントイオンは、前駆イオンから1つ又は複数の水分子の喪失により引き起こされる(すなわち、前駆イオンとフラグメントイオンの間の質量対電荷の比の差異は、水分子1個の喪失では約18であり、又は水分子2個の喪失では約36である、等)。アミン基を含む前駆イオンの場合、脱アミノにより形成されるそのようなフラグメントイオンは、1つ又は複数のアンモニア分子の喪失により引き起こされる(すなわち、前駆イオンとフラグメントイオンの間の質量対電荷の比の差異は、アンモニア分子1個の喪失では約17であり、又はアンモニア分子2個の喪失では約34である、等)。同様に、1つ又は複数のアルコール及びアミン基を含む前駆イオンは通常、1つ若しくは複数の水分子及び/又は1つ若しくは複数のアンモニア分子の喪失に該当するフラグメントイオンを形成する(すなわち、前駆イオンとフラグメントイオンの間の質量対電荷の比の差異は、水分子1個の喪失、及びアンモニア分子1個の喪失について約35である)。概して、前駆イオンの脱水又は脱アミノに該当するフラグメントイオンは、特定の分析物に対する固有のフラグメントイオンではない。従って、本発明の好ましい実施形態では、MS/MSは、アミロイドベータの少なくとも1つのフラグメントイオンが検出され、それが、前駆イオンから1つ若しくは複数の水分子が喪失した唯一のもの、及び/又は1つ若しくは複数のアンモニア分子が喪失した唯一のものに該当しないように実施される。
【0115】
イオンが検出器と衝突すると、イオンは、デジタルシグナルに変換される電子のパルスを産生する。取得されたデータは、収集されたイオンのカウントを時間に対してプロットするコンピューターに伝達される。得られた質量クロマトグラムは、従来型のHPLC法で生成されるクロマトグラムと類似している。特定のイオンに対応するピーク下面積、又はそのようなピークの振幅が測定され、そして面積又は振幅が、目的とする分析物の量と関連付けられる。特定の実施形態では、フラグメントイオン及び/又は前駆イオンに関する曲線下面積又はピークの振幅が、アミロイドベータの量を決定するために測定される。上記のように、内部分子標準の1つ又は複数のイオンに由来するピークに基づく校正標準曲線を使用して、所定のイオンの相対的存在量は、オリジナルの分析物の絶対量に変換され得る。
【0116】
下記の実施例は、本発明を説明する役目を果たす。これらの実施例には、本方法の範囲に制限を設けるような意図は一切存在しない。
【実施例】
【0117】
[実施例1]
機器の事前処理及びアミロイドベータの安定化
96ウェルポリプロピレンプレート及び微量遠心試験管の事前処理
96ウェルプレート内で大腸菌を溶解し、そしてメタノールを使用して沈殿させた。
【0118】
次に、メタノールを廃棄する一方、炭酸水素アンモニウムpH8内でペレットを再懸濁した。
【0119】
Sigma社製のウシトリプシンを添加し、そしてサンプルを、60℃で2日間インキュベートした。
【0120】
次に、すべての消化物を、廃棄目的で廃棄した、又はピペットチップを事前処理するためにプールした。
【0121】
空のプレート及び試験管を完全に乾燥させた。
【0122】
ピペットチップの事前処理
ピペットチップを使用して、大腸菌消化物を少なくとも3回ピペット吸引及び吐出し、次に60℃で2日間、又は完全に乾燥するまでインキュベートした。
【0123】
アミロイドベータペプチドの安定化
事前処理した試験管内でAB40、AB42、及び内部標準を合成し、そして4mgのBSAを含む6M尿素中に再懸濁した。
【0124】
標準を、次に、N末端及びC末端抗体、並びにアポリポタンパク質E2及びE4を含む0.1MのPBS中で1:10にそれぞれ希釈した。
【0125】
シェーカーで各混合物を室温で1時間インキュベートした。
【0126】
次に、AB40及びAB42を混合し、そして凍結する前に、0.1MのPBS及び0.4mg/mLのBSA中で希釈して、高値キャリブレータ標準を作成した。
【0127】
下記の表は、処理バイアル及び未処理バイアル中で調製した同一サンプルの左右比較を示す。
【0128】
【表A】
【0129】
[実施例2]
サンプル調製
事前処理したピペットチップを使用して、サンプル又は標準0.5mLを、事前処理した96ウェルプレートにピペット採取した。
【0130】
5ngの内部標準を添加した。
【0131】
18Mの尿素250uLを添加した。
【0132】
2ugのLys−Cを各サンプルに添加して、アミロイドベータを消化した。
【0133】
450w、45℃で酵素を伴うマイクロ波中で4時間消化する前に、接着性の蓋でプレートを密閉した。
【0134】
次に、サンプルを、水混合強陰イオン交換モードを使用して抽出した。
【0135】
次に、サンプル溶出液を、加熱窒素を使用して完全に乾燥させた。
【0136】
次に、サンプルを、LC−MS/MS分析用の再構成用バッファー中で再懸濁した。
【0137】
[実施例3]
MS/MSによるアミロイドベータフラグメントの検出及び定量
イオンを第1の四重極(Q1)に導入し、Aβ40フラグメント及びAβ42フラグメントのそれぞれについて、1085.6±0.5m/z又は1269.7±0.5m/zのいずれかの質量対電荷の比を用いてイオンを選択した。四重極2(Q2)に進入したイオンは、アルゴンガスと衝突して、イオンフラグメントを生成したが、更なる選択のために、イオンフラグメントを四重極3(Q3)に導入した。同時に、同位体希釈マススペクトロメトリーを使用する同一のプロセスを、内部標準を用いて実施した。下記の質量遷移を、陽性極性での妥当性確認期間中に、検出及び定量するために使用した。
【0138】
【表1】
【0139】
患者クロマトグラムの例を、図6及び図7に示す。
【0140】
様々な抽出を比較して、アミロイドベータフラグメントの回収率を最適化した。
【0141】
【表2】
Waters MAX:混合強陰イオン交換モード→最終的なアッセイの妥当性確認用に使用
Waters MXC:混合強陽イオン交換モード
Waters HLB:疎水化合物用に作製されたシリカ
AgilentC18:代表的なC18充填材
PhenomenexCX:混合強陽イオン交換モード
ThermoSAX:強陰イオン交換
【0142】
混合強陰イオン交換モードは、アミロイドベータフラグメントについて、最良の回収率をもたらした。
【0143】
消化物中に含まれる尿素は、分析物の回収率を増加させる。下記の数値が決定された:
【0144】
【表3】
【0145】
C4分析カラムとC8分析カラムを感度について比較した。C4カラムは、優れた感度をもたらしたが、当技術分野においては、C8及びC18カラムが一般的に好ましいので、それは予想外である。図11
【0146】
[実施例4]
アッセイの報告可能な範囲及び直線性
アッセイにおけるアミロイドベータ検出の直線性を立証するために、ゼロ標準として割り振られた1つのブランクとスパイクした標準を調製及び分析した。5回の連続したランに由来する二次回帰から、±20%の正確性で、0.995又はそれを超える相関係数が得られ、定量可能な直線範囲は0.1〜25ng/mLの範囲であることが判明した。図4及び図5
【0147】
[実施例5]
アッセイの精密度
サンプルのアッセイ内再現性を、下記の品質コントロールレベルについて試験した:
【0148】
【表4】
【0149】
ラン中の精密度:各品質コントロールの10回の反復測定を、単一アッセイ内において下記の順序で分析した;低、中、及び高。
【0150】
合否基準:%CVは、≦TEa/2の許容可能な値未満であるべきである。このアッセイのTEaは、30%と決定されている。
【0151】
ベータアミロイド40の%CVは、3つの品質コントロールレベルすべてにおいて14.31%〜6.55%の範囲であった。
【0152】
ベータアミロイド42の%CVは、3つの品質コントロールレベルすべてにおいて14.93%〜7.51%の範囲であった。
【0153】
総精密度:アッセイ間妥当性確認データを分析した。
【0154】
合否基準:総SD≧1/2TEaの場合、許容されない、又は総SDは、定義された最大SD又はCV未満でなければならない。
【0155】
%CVは、≦TEa/2の許容可能な値未満であるべきである。このアッセイのTEaは、30%と決定されている。
【0156】
ベータアミロイド40の%CVは、3つの品質コントロールレベルすべてにおいて10.21%〜4.28%の範囲であった。
【0157】
ベータアミロイド42の%CVは、3つの品質コントロールレベルすべてにおいて14.63%〜8.17%の範囲であった。
【0158】
[実施例6]
分析感度(検出限界)
ブランクの限界(LOB):計算:LOB=ブランクの平均値+2SD。
【0159】
21のマトリックスブランクを、単一アッセイ内において分析したが、次に、逆算値は下記のLOBを計算するのに使用される。
【0160】
AB40のLOB:31.32pg/mL。
【0161】
AB42のLOB:32.11pg/mL。
【0162】
【表5】
【0163】
検出限界(LOD):計算:LOD=ブランクの平均値+4SD。
【0164】
21つのマトリックスブランクを、単一アッセイ内において分析したが、次に、逆算値は下記のLODを計算するのに使用される。
【0165】
AB40のLOD:77.78pg/mL。
【0166】
AB42のLOD:74.21pg/mL。
【0167】
【表6】
【0168】
定量限界(LOQ):合否基準:TEaが30%のときに、%CVが2SD未満、又はそれに等しい最低濃度。
【0169】
ベータアミロイド40及び42の両方の定量限界は、100pg/mLと決定されている。
【0170】
【表7】
【0171】
【表8】
【0172】
【表9】
【0173】
【表10】
【0174】
[実施例7]
分析物測定範囲(AMR)
合否基準:TEaが30%のとき、実測値の平均値につき、その予想範囲からの逸脱は、2SD又は20%CV以下であるべきである。
【0175】
ベータアミロイド40の%CVは、6.52〜12.01%の範囲であり、許容されるとみなされる。
【0176】
ベータアミロイド42の%CVは、6.27〜14.24%の範囲であり、許容されるとみなされる。
【0177】
【表11】
【0178】
[実施例8]
正確度
既知標準の回収率
合否基準:完全回収できなかったことに起因する誤差(回収量−添加量)は、TEaが30%のとき、2SD又は15%CV以下であるべきである。
【0179】
6つのストリップウシ脳脊髄液サンプルを下記の濃度:1000、2000、3000、4000、8000、及び9000pg/mLでスパイクし、各スパイクレベルを三連でアッセイした。
【0180】
次に、6つの異なるスパイクレベルを、ストリップウシ脳脊髄液を希釈剤として使用して1:3及び1:5の比で希釈し、ここでも三連でアッセイした。
【0181】
【表12】
【0182】
【表13】
【0183】
【表14】
【0184】
【表15】
【0185】
【表16】
【0186】
【表17】
【0187】
[実施例9]
試料の安定性
合否基準:TEaが30%に等しいとき、ベースライン値と時間/温度サンプル値の間の平均値の差が、分析物に関して≦TEa/2である限り、サンプルは安定とみなされる。
【0188】
凍結/解凍の安定性:凍結解凍分析を、4つのアリコートに等分した6例の患者プールを分析することにより実施した。各患者プールの4つのアリコートすべてを、−60〜−80℃で凍結した。第2〜4のアリコートを18〜26℃の周囲温度で解凍し、そして凍結した。第3及び第4のアリコートを18〜26℃の周囲温度で解凍し、そして凍結した。第4のアリコートを、次に18〜26℃の周囲温度で解凍し、そして凍結した。
【0189】
最終的に、アリコートすべてを18〜26℃の周囲温度で解凍し、そして技術的に三連で分析した。凍結解凍分析は、3種類の凍結解凍サイクルに関わるデータを含有する。
【0190】
ベータアミロイド40及びベータアミロイド42は、最大2回の凍結解凍サイクルまで許容される安定性を有する。
【0191】
【表18-1】
【表18-2】
【表18-3】
【0192】
抽出後のサンプルの安定性:ベースライン値としてサンプル抽出した日と同じ日に、10サンプルを分析した。翌日、同一サンプルを再注入して、ベースライン値と対比分析した。
【0193】
ベータアミロイド40及び42は、CTCオートサンプラーのC−スタックにおいて、4℃で最長1日、抽出後サンプル安定性を示す。
【0194】
【表19】
【0195】
冷蔵安定性(2.0〜8.0℃):サンプルは、最長5日間冷蔵保存しても安定であることを示した。
【0196】
【表20】
【0197】
【表21】
【0198】
室温安定性(18.0〜26.0℃):サンプルは、18〜26℃で最長3日間安定である。
【0199】
【表22】
【0200】
【表23】
【0201】
凍結安定性(−10.0〜−30.0℃):サンプルは、−10〜−30℃で最長31日間安定である。
【0202】
【表24】
【0203】
【表25】
【0204】
[実施例10]
妨害試験
合否基準:潜在的妨害物質に起因する差異は、≦2SDであるべきである、又は20%CVは許容されるとみなされる。
【0205】
溶血による妨害:6つのスパイクプールを、ベースライン、小規模、中規模、及び大規模な溶血による妨害について三連で分析した。
【0206】
ベータアミロイド40及びベータアミロイド42は、非溶血、及び小規模溶血した脳脊髄液サンプルのみが許容される。
【0207】
【表26】
【0208】
【表27】
【0209】
【表28】
【0210】
【表29】
【0211】
脂肪血症による妨害:6つのスパイクプールを、ベースライン、小規模、中規模、及び大規模な脂肪血症の妨害について、三連で分析した。
【0212】
ベータアミロイド40及びベータアミロイド42は、小規模及び中規模の脂肪血症脳脊髄液サンプルにつき許容される。
【0213】
【表30】
【0214】
【表31】
【0215】
【表32】
【0216】
【表33】
【0217】
ビリルビンによる妨害:6つのスパイクプールを、ベースライン、小規模、中規模、及び大規模な黄疸による妨害について、三連で分析した。
【0218】
ベータアミロイド40及びベータアミロイド42は、黄疸なし及び小規模な黄疸の脳脊髄液サンプルにつき、許容される。
【0219】
【表34】
【0220】
【表35】
【0221】
【表36】
【0222】
【表37】
【0223】
[実施例11]
イオン抑制
患者サンプル10例を抽出した。
【0224】
勾配全体にわたりイオン抑制をモニターするために、取得ウィンドウを最長10分間開放した。サンプル10例を、分析カラムを通じて注入した一方、ベータアミロイド40及び42の消化されたペプチド混合物を、ポストカラム注入した。
【0225】
AB40又はAB42の内部標準が溶出したときに、AB40又はAB42の全イオンクロマトグラム(TIC)が、シグナル強度について≧15%の減少を示した場合には、アッセイにおいてイオン抑制が存在すると判断される。
【0226】
AB40及び42の消化されたペプチドのTICは、分析物の溶出時に、勾配内で抑制を示さなかった。TICシグナル強度は一定であり、シグナル強度の差異は≦15%であることを示しており、許容されるアッセイパラメーターの範囲内である。
【0227】
[実施例12]
キャリーオーバー
高値キャリブレータ標準を分析した後に、4つのマトリックスブランクを続けて分析し、この順番で更に2回反復した。高値キャリブレータ分析後のマトリックスブランクの平均計算濃度から、ベータアミロイド40及び42の両方について、回収率は0.06%である。
【0228】
このアッセイでは、キャリーオーバーは観察されない。
【0229】
【表38】
【0230】
[実施例13]
参照間隔(RI)
ベータアミロイド40:6000.00〜15000.00pg/mL
【0231】
ベータアミロイド42:700.00〜4000.00pg/mL
【0232】
[実施例14]
アルツハイマー病患者データ
アルツハイマー病と診断された患者、及び健常対象を含む対象211例の脳脊髄液(CSF)を分析した。図8〜10。
【0233】
Aβ40及びAβ42を、すべてのCSFサンプルにおいて検出した。驚くべきことに、Aβ42レベルは、公表されていたレベルよりも約10倍高かった。大部分の患者サンプルは、1〜8ng/mLの範囲であった。アルツハイマー病患者は、Aβ42:Aβ40の比が、ボーダーラインの患者及び健常対象(最高の比)と比較して低いことに基づき区別可能であった。図8
【0234】
[実施例15]
追加の回収試験
サンプル調製:すべてのプラスチック製ディスポーザブル用具を事前処理し、そして非特異結合を防止し、またAβ標準を安定化させて長期保存安定性を強化した。
【0235】
強いタンパク質変性剤を、ヒトCSF(500uL)に添加し、そしてサンプルをタンパク質消化させ、その後に固相抽出した。CEREX IP8(SPEware)固相抽出マニフォールドと連結したロボット型リキッドハンドラー(Hamilton Microlab Star A857)上で、サンプルを処理した。
【0236】
分離:HPLC分離を、Waters XBridge Protein BEH C4カラム、4.6×100mm、3.5ミクロン300Åを使用して、Aria TLX−4システム(Thermo Scientific社)上で実施した。
【0237】
検出:Thermo TSQ Quantiva三連四重極質量分析装置
【0238】
直線性データは、両ペプチドについて少なくとも0.98のR値を示し、8つのキャリブレータ標準全体を通じて%CV≦15%である。
【0239】
定量限界は、両ペプチドについて100pg/mLであった。
【0240】
Aβ40及びAβ42について、アッセイ精密度(%CV)は≦15%であり、回収率は84%〜112%の範囲であった。
【0241】
アッセイ内(N=10)及びアッセイ間(N=5、5日間)の精密度及び正確度
【0242】
【表39】
【0243】
8カ月にわたるアッセイの安定性
【0244】
【表40】
【0245】
Aβペプチドの安定化を実現し、キャリブレータ及び品質コントロール標準の長期保管を可能にした。
【0246】
凍結したキャリブレータは、−80℃で保管したとき、少なくとも8カ月安定であった。
【0247】
安定化措置は非特異結合をなくし、高い分析物回収率をもたらした。図12及び13。
【0248】
患者CSFのAβ42濃度値は、LC−MS/MSアッセイを使用した方が、ELISAアッセイを使用した場合より高かった。これは、この2つの方法論について比較する既報と整合する。将来的な研究により、本明細書に記載する分析前因子が差異を説明するのに役立つかどうかを明確になると予想される。
【0249】
【表41】
【0250】
結論:この新規アプローチは、Aβ40及びAβ42の定量における重要な課題の1つ:非特異結合により引き起こされる再現性不良を取り除いた。
【0251】
[実施例16]
患者診断試験
3つの品質コントロール(低、中、高)をランニングし、校正曲線に沿って異なる3つの点を表示した。QCは、プレート全体を通じて正確な定量を保証するために、ラン開始時及び終了時にランニングした。品質コントロールの正確度を以下に示す:
【0252】
【表42】
【0253】
Aβ40及び42の患者サンプル範囲
患者サンプル72例に基づく。
Aβ40:5135.33〜25348.94pg/mL
Aβ42:1068.00〜5499.76pg/mL。
【0254】
Aβ40及び42の異なるレベルを標準化する。
【0255】
プラーキング又は洗浄不十分に起因してAβ42の数値は低下するので、Aβ42/40の比も低下する。
【0256】
Aβ40及び42のレベルは、互いに独立に増加/低下するものと思われる。
【0257】
データをAβ42/40の比によりソートし、そしてメジアンに基づき2つのセットに分割した(Aβ42/40=0.17)。
【0258】
データの半分を、<Aβ42/40のメジアンとして分割した。
【0259】
データの半分を、>Aβ42/40のメジアンとして分割した。
【0260】
平均値、標準偏差、及び%CVを計算した。
【0261】
比の数値が、<Aβ42/40のメジアンの場合、数値≧1SDを除去した。
【0262】
比の数値が、>Aβ42/40のメジアンの場合、数値≦1SDを除去した。
【0263】
1SD外れ値を、「ボーダーライン」分類とした。
【0264】
本明細書に記載又は引用する文献、特許、及び特許出願、並びにその他のすべての文書及び電子的に利用可能な情報の内容は、個々の公開資料が参照として組み込まれるものと特別及び個別に示唆されたのと同程度に、参照により本明細書にその全体が援用される。出願者らは、任意のそのような文献、特許、特許出願、又はその他の物理的及び電子的な文書に由来する任意の及びすべての資料及び情報を本出願に物理的に組み込む権利を留保する。
【0265】
本明細書に事例的に記載する方法は、本明細書に特に開示されない、任意の1つの要素又は複数の要素、1つの制限又は複数の制限が存在しなくても、好適に実践できる。従って、例えば、用語「含む〔comprising〕」、「含む〔including〕」、「含有する〔containing〕」等は、拡大的及び非限定的に解釈されなければならない。更に、本明細書で採用されている用語及び表現は、制限の用語としてではなく、説明の用語として使用されており、そのような用語及び表現の使用において、提示及び記載された特性の任意の等価物又はその一部分を排除する意図は存在しない。様々な修正が、主張された本発明の範囲内で可能であると認識される。従って、本発明は、好ましい実施形態及び任意選択的な特性により特別に開示されているが、本明細書に開示する本発明に取り込まれた本発明の修正及び変更は、当業者により実施可能であるものと理解し、またそのような修正及び変更は、本発明の範囲内であるとみなされるものと理解すべきである。
【0266】
本発明は、本明細書において広範且つ全体的に記載されている。一般的な開示の範囲に含まれるより狭い種及び亜属のグルーピングのそれぞれも、本方法の一部をなす。これには、属から主題のいずれかを除去する条件又は否定的限定を伴う方法の一般的な説明が、切り取られた題材が本明細書において特に列挙されるか、又はされないかを問わず含まれる。
【0267】
その他の実施形態は、下記の特許請求の範囲内に含まれる。更に、方法の特徴又は態様が、マーカッシュ群によって記載されている場合、当業者は、発明は、これにより、マーカッシュ群の個々のメンバー又はメンバーのサブグループのいずれについても記載されているものと認識する。
図1
図2-1】
図2-2】
図3
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図7-1】
図7-2】
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]