【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「高度なIoT社会を実現する横断的技術開発/高速大容量ストレージデバイス・システムの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、適宜図面を参照しながら実施形態の説明を行っていく。説明の便宜のため、各図面の縮尺は必ずしも正確ではなく、相対的な位置関係などで示す場合がある。また、同一または同様の要素には、同じ符号を付している。
【0008】
図1(a)は実施形態に係る半導体発光素子における発光部25と光導波路30との配置関係を示す模式平面図であり、
図1(b)は実施形態に係る半導体発光素子の模式断面図である。
図2は、
図1(b)に示す半導体発光素子の一部分の拡大断面図である。
【0009】
実施形態に係る半導体発光素子は、基板11と、半導体層20と、光導波路30と、第1電極41と、第2電極42とを有する。この例では、第1電極41はp型半導体層に接するp側電極であり、第2電極42はn型半導体層に接するn側電極として説明する。または、第1電極41がn型半導体層に接するn側電極、第2電極42がp型半導体層に接するp側電極であってもよい。
【0010】
基板11は、例えば、シリコン基板である。半導体層20は、例えば、III-V族の化合物半導体層である。半導体層20は、例えば、InPまたはGaAsの成長基板上にエピタキシャル成長された後、基板11に接合される。半導体層20と基板11との間に、例えば、シリコン酸化膜12が介在される。
【0011】
半導体層20は基板11と光導波路30との間に設けられ、半導体層20から光導波路30に向かう方向を第1方向とする。半導体層20は、第1方向に沿って積層された第1半導体層21、第2半導体層23、および活性層22を含む。活性層22は、第1半導体層21と第2半導体層23との間に設けられている。
【0012】
第1半導体層21は、例えば、n型GaAlAsクラッド層を含む。第2半導体層23は、例えば、p型GaAlAsクラッド層を含む。活性層22は、例えば、InGaAs層である。すなわち、半導体層20は、InGaAs活性層をGaAlAsクラッド層で挟んだ構造を有する。
【0013】
第1半導体層21、第2半導体層23、および活性層22が積層された部分(メサ部)はリング状に形成されている。すなわち、半導体層20は、リング状の発光部25を含む。リング状の発光部25は、角や直線部を含んでいてもよい。発光部25は、活性層22が設けられた部分のうち、後述する周回モードが存在する部分である。
【0014】
半導体層20の表面には絶縁膜13が形成されている。絶縁膜13は、例えば、シリコン窒化膜であり、半導体層20の表面を保護する。
【0015】
半導体層20上には、絶縁膜13を介して、絶縁膜14が形成されている。絶縁膜14は、例えば、シリコン酸化膜である。
【0016】
第2半導体層23の上面の一部は、絶縁膜13および絶縁膜14から露出され、その露出部に第1電極41が接している。第1電極41は、リング状の第2半導体層23の内側の領域に配置され、リング状の第2半導体層23の上面における内周側の領域に接している。
【0017】
半導体層20において活性層22および第2半導体層23が設けられていない部分の第1半導体層21の上面の一部は、絶縁膜13および絶縁膜14から露出され、その露出部に第2電極42が接している。第2電極42は、発光部25および第1電極41を囲むようにリング状に形成されている。
【0018】
光導波路30は、絶縁膜14上に設けられている。光導波路30の材料(コア材料)は、例えば、単結晶シリコン、アモルファスシリコン、多結晶シリコンなどである。
【0019】
光導波路30は、クラッド層15で覆われている。クラッド層15の材料は、例えば、SiO
2、SiON、ポリマーなどである。
【0020】
光導波路30は、光結合部30aと、出力部30bと、モード制御部30cとを有する。光結合部30a、出力部30b、およびモード制御部30cは、同じ材料で一体化されている。
【0021】
光結合部30aは、半導体層20から光導波路30に向かう上記第1方向において発光部25に重なっている。光結合部30aは、リング状の第2半導体層23における第1電極41が設けられていない外周側の上面に対向している。その第2半導体層23の外周側の上面と、光結合部30aとの間には、絶縁膜13と絶縁膜14のうちの少なくとも一方が設けられている。絶縁膜13および絶縁膜14は、活性層22が発する光に対して透過性を有する。
【0022】
図1(a)に示す例では、モード制御部30cは第1領域100に配置され、出力部30bは第2領域200に配置されている。リング状の発光部25は、第1領域100と第2領域200との間に位置する。リング状の発光部25は内周部25aと外周部25bとを有する。内周部25aは閉曲線を形成し、外周部25bも閉曲線を形成する。外周部25bの長さは、内周部25aの長さよりも長い。第1領域100は内周部25aが形成する閉曲線の内側の領域である。内周部25aは、第1領域100と外周部25bとの間に位置する。外周部25bは、内周部25aと第2領域200との間に位置する。
【0023】
出力部30bは、光結合部30aに連続し、リング状の発光部25の内周部25aから外周部25bに向かう方向に延びている。出力部30bは、光結合部30aから上記第2領域に向かって例えば直線状に延びている。出力部30bは、リング状の発光部25の例えば接線方向に延びている。
【0024】
出力部30bは、基板11上に形成された図示しない受光素子に光結合している。出力部30bと受光素子との間の光導波路は、直線に限らず屈曲していてもよい。
【0025】
モード制御部30cは、光結合部30aに連続し、半導体層20から光導波路30に向かう上記第1方向において発光部25に重ならない位置に配置されている。
図1(a)に示す例では、モード制御部30cは、リング状の発光部25の内側の領域に配置されている。
【0026】
モード制御部30cの形状は曲率をもつ形状である。
図1(a)に示す例では、モード制御部30cは、光結合部30aから例えば反時計回りCCWに旋回し始め、渦を巻いている。
【0027】
モード制御部30cは、先端30dと、先端30dと光結合部30aとの間に設けられた部分とを有する。先端30dの幅は、先端30dと光結合部30aとの間に設けられた部分の幅よりも狭い。モード制御部30cの少なくとも先端30dと、金属部材との間にクラッド層15が設けられている。この例では、金属部材は第1電極41である。
例えば、モード制御部30cの先端30dの形状は先細り形状(taper shaped)である。モード制御部30cの少なくとも先端30dは、第1電極41を構成する金属で覆われている。例えば、モード制御部30cの全体が、第1電極41を構成する金属で覆われている。モード制御部30cと第1電極41との間には、クラッド層15が設けられている。または、モード制御部30cは金属で覆われていなくてもよい。
【0028】
図2に示すように、光導波路30は、第1部分31と、第1部分31上に設けられ第1部分31よりも幅が狭い第2部分32とを有する。ここでの幅は、光導波路30の延在方向に直交する方向の幅を表す。光結合部30aにおける第1部分31が、発光部25に対向している。
【0029】
例えば、第1部分31の幅は1200nmであり、第2部分32の幅は600nmである。また、第1部分31の高さおよび第2部分32の高さは共に、例えば、200nmである。第2半導体層23の上面においてp側電極41が設けられていない外周側の領域の幅は、光導波路30の第1部分31の幅と同程度である。
【0030】
活性層22から発した光は、
図2における紙面を貫く方向、すなわちリング状に周回し発振する。そして、光導波路30の光結合部30aは発光部25に近接して対向しているため、発光部25から光結合部30aに光がしみ出し、光導波路30に光結合する。光結合部30aの第1部分31と、その第1部分31が対向する第2半導体層23の上面との間の距離は、例えば、20nm〜100nmほどである。
【0031】
リング状の発光部25を有するリングLDでは、時計回りCWおよび反時計回りCCWの周回モードが共存するが、本実施形態では片側(例えば反時計回りCCW)の周回モードを渦巻き形状のモード制御部30cで吸収することができる。時計回りCWの周回モードの光は光結合部30aで光導波路30に結合して出力部30bを導波され、発光素子の外部に出力される。一方、反時計回りCCWの周回モードの光は、光結合部30aからモード制御部30cに導波され、吸収される。すなわち、時計回りCWの周回モードが優先され、反時計回りCCWの周回モードはほとんど無くなる。このため、リングLDにおける発振が安定する。
【0032】
モード制御部30cは、上記第1方向において発光部25に重ならない領域に配置され、例えばリング状の発光部25の内側の第1領域100に配置されている。モード制御部30cと第1半導体層21との間には厚い(例えば、1.5μm以上2μm以下の)絶縁膜14が設けられているため、モード制御部30cと第1半導体層21との間での光のしみ出しは生じない。
【0033】
本実施形態では、リング状の発光部25と光導波路30との光結合箇所(光結合部30a)が1箇所となるため、光結合箇所の発光部25に対する位置ずれのトレランスを大きくし製造ばらつきによる特性ばらつきを低減できる。また、反射が生じやすい光結合箇所が1箇所になるため、損失を抑制できる。すなわち、本実施形態では、簡易な構造で周回モード安定化が可能な半導体発光素子を提供できる。
【0034】
また、モード制御部30cの先端30dを先細り形状にしているため、先端30dから徐々に光をしみ出させることができる。したがって、先端30dでの光の反射を低減し、戻り光を抑制し周回モードが安定化する。
【0035】
また、モード制御部30cの先端30dは、第1電極41を構成する金属部材で覆われているため、先端30dでしみ出した光を金属部材で吸収することができる。
【0036】
図3(a)に示すように、モード制御部30cの先端30dは、モード制御部30cの他の部分に結合していても良い。
【0037】
また、モード制御部30cを曲率をもつ例えば渦巻き形状にすることで、小さな面積でモード制御部30cの経路長を長くして、確実に戻り光を抑制することができる。
【0038】
図3(b)に示すように、リング状の発光部25の内側の領域に、多重のモード制御部30cを配置してもよい。
【0039】
図4に示すように、モード制御部30cは、リング状の発光部25の外側の第2領域200に配置してもよい。なお、
図1(a)、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、モード制御部30cをリング状の発光部25の内側の第1領域100に配置した構成は、モード制御部30cをリング状の発光部25の外側の第2領域200に配置した構成よりも発光素子を小型化できる。
【0040】
図2に示すように、光導波路30は、第1部分31と、第1部分31上に設けられ第1部分31よりも幅が狭い第2部分32とを有し、光結合部30aにおける第1部分31が、発光部25に対向している。
【0041】
このような構成により、相対的に幅の広い第1部分31で、発光部25からしみ出す光の結合効率を高め、一方で幅の小さい第2部分32ではシングルモードで光を伝播させることができる。シングルモードは設計を容易にする。
【0042】
または、幅の狭い第2部分32を設けずに、第1部分31から光導波路30は構成されてもよく、この場合、マルチモードでの光の伝播が可能になる。
【0043】
図5は、実施形態に係る半導体発光素子の他の例の模式断面図であり、
図2と同様の部分の断面図である。
【0044】
図5に示す例では、活性層22を挟むクラッド層における第1電極41が設けられた内周側の領域に、例えばイオン注入、酸化、混晶化により、電流狭窄部60を設けている。マイクロリングLDではリング状の発光部25の外周側の領域を光が周回しやすい。そのため、電流狭窄部60により、電流注入領域を外周側の領域に狭めることで、より低い電流での発光が可能になる。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。