(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の圧延機および圧延方法の実施例1又は2について
図1乃至
図7を用いて説明する。
図1は実施例1又は2の圧延機を備えた圧延設備の概要を示す図、
図2は圧延機の概要を説明する正面図、
図3は
図2のA−A’矢視断面の一部を示す図、
図4は
図2のB−B’矢視断面の一部を示す図、
図5、および
図6および
図7は作業ロール部分の詳細を説明する平面図である。
【0013】
<実施例1>
最初に、本実施例の圧延機を備えた圧延設備の概要について
図1を用いて説明する。
【0014】
図1に示すように、圧延設備1は、圧延材5をストリップに熱間圧延する圧延機を複数備えており、圧延材5の入側から、第1スタンド10、第2スタンド20、第3スタンド30、第4スタンド40、第5スタンド50、第6スタンド60、第7スタンド70の7スタンドと、制御装置80と、を有している。このうち第1スタンド10、第2スタンド20、第3スタンド30、第4スタンド40、第5スタンド50、第6スタンド60、第7スタンド70の各々と制御装置80のうち各スタンドを制御する部分とが本発明でいう圧延機に相当する。
【0015】
なお、圧延設備1については、
図1に示すような7スタンドに限られず、最低2スタンド以上からなるものとすることができる。
【0016】
次に、本発明の圧延機の概要の一部について
図2を用いて説明する。なお、
図2では
図1に示す第7スタンド70を例に説明するが、本発明の圧延機は、
図1に示す第1スタンド10、第2スタンド20、第3スタンド30、第4スタンド40、第5スタンド50、第6スタンド60のうちいずれのスタンドにも適用することができる。
【0017】
図2において、本実施例の圧延機である第7スタンド70は、圧延材5を圧延する6段の圧延機であって、ハウジング700と、制御装置80と、油圧装置(図示省略)とを有している。
【0018】
ハウジング700は、上作業ロール710および下作業ロール711、これら上作業ロール710および下作業ロール711にそれぞれ接触することで支持する上中間ロール720,下中間ロール721を備えている。更に、上中間ロール720、下中間ロール721にそれぞれ接触することで支持する上補強ロール730、下補強ロール731を備えている。
【0019】
これらの各ロールのうち、上作業ロール710の軸方向の端部には、上作業ロール710と共にロールの軸方向にシフトし、ロールからの荷重を受ける軸受790(
図5参照)が駆動側および操作側のいずれにも設けられており、これらの軸受を上作業ロール軸受箱712,712Aにより支持している。下作業ロール711も、同様に、軸方向の端部に軸受(図示の都合上省略)が駆動側および操作側のいずれにも設けられており、これらの軸受を下作業ロール軸受箱713,713Aにより支持している。
【0020】
本実施例では、上作業ロール710は、操作側の上作業ロール軸受箱712を介して、
図3に示すようなシフトシリンダ715を駆動することにより、シフト機構715Aを介してロール軸方向にシフト可能に構成されている。同様に、下作業ロール711も、操作側の下作業ロール軸受箱713を介して、
図3に示すようなシフトシリンダ716により、ロール軸方向にシフト可能に構成されている。
【0021】
上中間ロール720は、その軸方向の端部に軸受(図示省略)が駆動側および操作側のいずれにも設けられており、これらの軸受をそれぞれ上中間ロール軸受箱722A,722により支持している。下中間ロール721も、軸方向の端部に軸受(図示省略)が駆動側および操作側のいずれにも設けられており、これらの軸受をそれぞれ下中間ロール軸受箱723A,723により支持している。
【0022】
また、上中間ロール720は、駆動側の上中間ロール軸受箱722Aを介して、
図3に示すようなシフトシリンダ725により、ロール軸方向にシフト可能に構成されている。同様に、下中間ロール721も、駆動側の下中間ロール軸受箱723Aを介して、
図3に示すようなシフトシリンダ726により、ロール軸方向にシフト可能に構成されている。
【0023】
図2に戻り、入側固定部材702は圧延材5の入側のハウジング700に固定されており、圧延材5の出側には、この入側固定部材702に対向する出側のハウジング700に出側固定部材703が固定されている。
【0024】
第7スタンド70では、
図2および
図4に示すように、操作側および駆動側のいずれにおいても、入側固定部材702の作業ロールベンディングブロック部714に設けられた上作業ロールベンディングシリンダ740と上中間ロールベンディングブロック部727に設けられた上作業ロールベンディングシリンダ742と、出側固定部材703に設けられた上作業ロールベンディングシリンダ741,743と、により上作業ロール軸受箱712,712Aを支持しており、適宜これらのシリンダを駆動することで上作業ロール710の軸受に対して鉛直方向にベンディング力を与えて上作業ロール710をベンディングさせることができるようになっている。
【0025】
同様に、
図2および
図4に示すように、操作側および駆動側のいずれにおいても、入側固定部材702に設けられた下作業ロールベンディングシリンダ744と下中間ロールベンディングブロック部728に設けられた下作業ロールベンディングシリンダ746と、出側固定部材703に設けられた下作業ロールベンディングシリンダ745,747と、により下作業ロール軸受箱713,713Aを支持しており、適宜これらのシリンダを駆動することで下作業ロール711の軸受に対して鉛直方向にベンディング力を与えて下作業ロール711をベンディングさせることができるようになっている。
【0026】
上中間ロール720は、操作側および駆動側のいずれにおいても、入側固定部材702の上中間ロールベンディングブロック部727に設けられた上中間ロールベンディングシリンダ750と出側固定部材703の上中間ロールベンディングブロック部727に設けられた上中間ロールベンディングシリンダ751とにより上中間ロール軸受箱722,722Aを支持しており、適宜これらのシリンダを駆動することで軸受に対して鉛直方向にベンディング力を与えて上中間ロール720をベンディングさせることができるようになっている。また、上中間ロールベンディングブロック部727には上作業ロールベンディングシリンダ742、743が入側および出側に設けられ、適宜これらのシリンダを駆動することで上作業ロール710をベンディングさせることができるようになっている。
【0027】
下中間ロール721も、操作側および駆動側のいずれにおいても、入側固定部材702の下中間ロールベンディングブロック部728に設けられた下中間ロールベンディングシリンダ752と出側固定部材703の下中間ロールベンディングブロック部728に設けられた下中間ロールベンディングシリンダ753とにより下中間ロール軸受箱723,723Aを支持しており、適宜これらのシリンダを駆動することで軸受に対して鉛直方向にベンディング力を与えて下中間ロール721をベンディングさせることができるようになっている。また、下中間ロールベンディングブロック部728には下作業ロールベンディングシリンダ746、747が入側および出側に設けられ、適宜これらのシリンダを駆動することで下作業ロール711をベンディングさせることができるようになっている。
【0028】
これらのシリンダのうち、上作業ロールベンディングシリンダ740,741は圧延材5に接触する上作業ロール710の軸受に鉛直方向インクリース側(反圧延材側方向)にベンディング力を与えてロールをベンディングさせるように配置されている(第1シリンダ)。また、上作業ロールベンディングシリンダ742,743は、軸受に上作業ロールベンディングシリンダ740,741と反対方向である鉛直方向デクリース側(圧延材側方向)のベンディング力を与えて上作業ロール710をベンディングさせるように配置されている。
【0029】
同様に、下作業ロールベンディングシリンダ744,745は圧延材5に接触する下作業ロール711の軸受に鉛直方向インクリース側にベンディング力を与えてロールをベンディングさせるように配置されている(第1シリンダ)。また、下作業ロールベンディングシリンダ746,747は、軸受に下作業ロールベンディングシリンダ744,745と反対方向のデクリース側のベンディング力を与えて下作業ロール711をベンディングさせるように配置されている。
【0030】
上中間ロールベンディングシリンダ750,751は上中間ロール720の軸受に対して鉛直方向インクリース側にベンディング力を与えてロールをベンディングさせるように配置されている(第1シリンダ)。
【0031】
下中間ロールベンディングシリンダ752,753は下中間ロール721の軸受に対して鉛直方向インクリース側にベンディング力を与えてロールをベンディングさせるように配置されている(第1シリンダ)。
【0032】
図2、
図3および
図4に示すように、がた取りを目的として、圧延材5の入側の入側固定部材702に、上作業ロール軸受箱712,712Aのライナ(図示省略)を介して上作業ロール710に水平方向の力、具体的には圧延方向に押圧力を加えるように上作業ロール軸受箱がた取りシリンダ760が設けられている(第2シリンダ)。同様に、入側固定部材702には、下作業ロール軸受箱713,713Aのライナを介して下作業ロール711に圧延方向に押圧力を加えるように下作業ロール軸受箱がた取りシリンダ762が設けられている(第2シリンダ)。これにより、ロール軸方向に対して直交する方向で作業ロール等に所望の力を加えることができる。
【0033】
また、
図2、
図3および
図4に示すように、がた取りを目的として、圧延材5の出側の出側固定部材703に、上中間ロール軸受箱722A,722のライナを介して上中間ロール720に水平方向の力、すなわち圧延方向とは逆側に押圧力を加えるように上中間ロール軸受箱がた取りシリンダ771が設けられている(第2シリンダ)。同様に、出側固定部材703に、下中間ロール軸受箱723A,723のライナを介して下中間ロール721に対して圧延方向とは逆側に押圧力を加えるように下中間ロール軸受箱がた取りシリンダ773が設けられている(第2シリンダ)。
【0034】
図2に戻り、上補強ロール730の軸方向の端部に軸受(図示省略)が駆動側および操作側のいずれにも設けられており、これらの軸受を上補強ロール軸受箱732により支持している。下補強ロール731も、同様に、軸方向の端部に軸受(図示省略)が駆動側および操作側のいずれにも設けられており、これらの軸受を下補強ロール軸受箱733により支持している。
【0035】
また、
図2に示すように、入側のハウジング700に、上補強ロール軸受箱732を介して上補強ロール730に水平方向の力を加えるように上補強ロール軸受箱がた取りシリンダ780が設けられている。同様に、入側のハウジング700には、下補強ロール軸受箱733を介して下補強ロール731に水平方向の力を加えるように下補強ロール軸受箱がた取りシリンダ782が設けられている。
【0036】
油圧装置は、上述した各ベンディングシリンダやがた取りシリンダ、シフトシリンダ、あるいは圧延材5を圧延するための圧下力を上作業ロール710および下作業ロール711に加える圧下シリンダ(図示省略)等の各油圧シリンダに接続されており、この油圧装置は制御装置80に接続されている。
【0037】
制御装置80は油圧装置を作動制御して、上述した各ベンディングシリンダ等に圧油を給排することでそれらの各シリンダを駆動制御している。
【0038】
次に、
図5を用いて各ロールのうち、上作業ロール710に関係する構成について説明する。なお、上中間ロール720や下作業ロール711、下中間ロール721についても、上作業ロール710と同等の構成を有するものとすることができる。その詳細な構成は、上作業ロール710のものと略同じであるため、説明は省略する。
【0039】
本発明は、好適には
図5に示すような上作業ロール710、あるいは下作業ロール711に適用される。
【0040】
図5に示す形態では、上作業ロール710の駆動側と操作側の各々において、圧延材5の入側には、上作業ロールベンディングシリンダ740がロールの軸方向に2つ設けられている。また、圧延材5の出側には、上作業ロールベンディングシリンダ741が2つ設けられており、圧延方向の入側および出側の各々に、第1シリンダが軸方向に並んで2つ設けられている。これら圧延材5の入側に設けられた2つの上作業ロールベンディングシリンダ740と圧延材5の出側に設けられた2つの上作業ロールベンディングシリンダ741とは、圧延方向から見たときに、重なって配置されている。
【0041】
また、本実施例では、圧延材5の入側に配置された上作業ロール軸受箱がた取りシリンダ760は、圧延方向から見たときに、同じ入側に2つ設けられている上作業ロールベンディングシリンダ740の軸方向の中間位置に配置されている。
【0042】
更には、駆動させる2つの上作業ロールベンディングシリンダ740,741の出力の作用位置と、1つの上作業ロール軸受箱がた取りシリンダ760の出力の作用位置とが、それぞれ軸受790の軸方向の長さをL
Bとしたときに、軸受790の軸方向中心から軸方向外側にL
B/4以内、かつ軸受790の軸方向中心から軸方向内側にL
B/4以内、すなわち軸受790の軸方向中心のL
B/2に収まるように配置されること、あるいは、および出力が制御されることが望ましい。
【0043】
次に、本実施例の上作業ロールベンディングシリンダ740,741や上作業ロール軸受箱がた取りシリンダ760の駆動制御の詳細について
図5や表1を参照して説明する。これらの駆動制御は、油圧装置を駆動制御する制御装置80により実行される。
【0044】
ここで、上作業ロール710のシフト量、すなわち軸受790の軸方向中心のシフト量をL
S(駆動方向側のシフト量をプラスとする)とする。
【0046】
作業ロールがL
sの間をシフトするとき軸受中心は
図5に示す区間A,B,Cに存在する。軸受中心が区間Cにあるときは、駆動側では、入側の上作業ロールベンディングシリンダ740および出側の上作業ロールベンディングシリンダ741は、ともに、軸方向内側のシリンダは駆動させずに、軸方向外側のシリンダを駆動させる。駆動したシリンダを結んだ線とロール軸線との交点近傍に入側と出側の駆動したシリンダの出力合計が作用する。該シリンダの出力合計が作用する位置は軸受790の軸方向中心から軸方向外側にL
B/4以内、かつ軸受790の軸方向中心から軸方向内側にL
B/4以内、すなわち軸受790の軸方向中心のL
B/2に収まるように配置している。
【0047】
従って、軸方向外側の入側の上作業ロールベンディングシリンダ740と軸方向内側の出側の上作業ロールベンディングシリンダ741とを結ぶ直線(又は軸方向内側の入側の上作業ロールベンディングシリンダ740と軸方向外側の出側の上作業ロールベンディングシリンダ741とを結ぶ直線)とロール軸線との交点より軸方向外側にL
B/4以内の位置に、区間Aと区間Bの境目が存在する。また、上記交点より軸方向内側にL
B/4以内の位置に、区間Bと区間Cの境目が存在する。
【0048】
操作側では、入側の上作業ロールベンディングシリンダ740および出側の上作業ロールベンディングシリンダ741は、ともに、軸方向外側のシリンダは駆動させずに、軸方向内側のシリンダを駆動させる。
【0049】
軸受中心が区間Aにあるときは、駆動側では、入側の上作業ロールベンディングシリンダ740および出側の上作業ロールベンディングシリンダ741は、ともに、軸方向外側のシリンダは駆動させずに、軸方向内側のシリンダを駆動させる。
【0050】
操作側では、入側の上作業ロールベンディングシリンダ740および出側の上作業ロールベンディングシリンダ741は、ともに、軸方向内側のシリンダは駆動させずに、軸方向外側のシリンダを駆動させる。
【0051】
軸受中心が区間Bにあるとき、すなわち第1シリンダのうち軸方向の外側に配置された第1シリンダと内側に配置された第1
シリンダとの間に軸受790の中心が配置されているときであって、圧延方向から見たときに入側と出側で重なって配置されている第1シリンダの合力の作用位置から離れてしまっているときは、軸受790の中心部分にその合力が加わるように、入側のうち1つの第1シリンダおよび出側のうち1つの第1シリンダを駆動するように構成されている。
【0052】
この場合、制御装置80は、圧延方向から見たときに重なって配置されている第1シリンダに隣接している第1シリンダを駆動させる。より具体的には、入側又は出側の一方に設けられた2つの第1シリンダのうち軸方向における内側の第1シリンダを駆動し、入側又は出側の他方に設けられた2つの第1シリンダのうち軸方向における外側の第1シリンダを駆動するように構成されている。
【0053】
詳細な駆動パターンは以下の2パターンに分かれる。
【0054】
1つ目のパターンは、駆動側では、入側の上作業ロールベンディングシリンダ740のうち軸方向外側のシリンダは駆動させずに、軸方向内側のシリンダを駆動させるとともに、出側の上作業ロールベンディングシリンダ741のうち軸方向内側のシリンダは駆動させずに、軸方向外側のシリンダを駆動させる。
【0055】
操作側についても、入側の上作業ロールベンディングシリンダ740のうち軸方向外側のシリンダは駆動させずに、軸方向内側のシリンダを駆動させるとともに、出側の上作業ロールベンディングシリンダ741のうち軸方向内側のシリンダは駆動させずに、軸方向外側のシリンダを駆動させる(表1の区間Bの括弧の無い側)。
【0056】
2つ目のパターンでは、駆動側では、入側の上作業ロールベンディングシリンダ740のうち軸方向内側のシリンダは駆動させずに、軸方向外側のシリンダを駆動させるとともに、出側の上作業ロールベンディングシリンダ741のうち軸方向外側のシリンダは駆動させずに、軸方向内側のシリンダを駆動させる。
【0057】
操作側についても、入側の上作業ロールベンディングシリンダ740のうち軸方向内側のシリンダは駆動させずに、軸方向外側のシリンダを駆動させるとともに、出側の上作業ロールベンディングシリンダ741のうち軸方向外側のシリンダは駆動させずに、軸方向内側のシリンダを駆動させる(表1の区間Bの括弧側)。
【0058】
上作業ロール軸受箱がた取りシリンダ760については、表1における区間A,B,Cのいずれでも駆動させる。
【0059】
上記の例では上作業ロールベンディングシリンダ740,741の出力や上作業ロール軸受箱がた取りシリンダ760の出力はON,OFFのみの2通りの場合について説明したが、各々の上作業ロールベンディングシリンダ740,741の出力、上作業ロール軸受箱がた取りシリンダ760の出力をより細かく別個に調整して、より正確に軸受790の軸方向中心にベンディング力が加わるようにすることができる。
【0060】
図5では、圧延材5の入側に上作業ロールベンディングシリンダ740がロールの軸方向に2つ、圧延材5の出側に上作業ロールベンディングシリンダ741が2つ設けられている場合について説明したが、設けられるシリンダの数は入側と出側で各々2つ以上であればよく、特に限定されない。
【0061】
以下、上作業ロールベンディングシリンダが入側および出側に3つ設けられる場合について
図6と表2を用いて説明する。
【0063】
図6に示す形態では、圧延材5の入側には、上作業ロールベンディングシリンダ740Aがロールの軸方向に3つ設けられている。また、圧延材5の出側には、上作業ロールベンディングシリンダ741Aが3つ設けられており、圧延方向の入側および出側の各々に、第1シリンダが軸方向に並んで3つ設けられている。これら圧延材5の入側に設けられた3つの上作業ロールベンディングシリンダ740Aと圧延材5の出側に設けられた3つの上作業ロールベンディングシリンダ741Aとは、圧延方向から見たときにすべてのシリンダが重なって配置されている。
図5の入側の上作業ロールベンディングシリンダ740と
図6の入側の上作業ロールベンディングシリンダ740Aの間には、操作側、駆動側ともに上作業ロール軸受箱がた取りシリンダ760が追加されている。
【0064】
次に、本実施例の上作業ロールベンディングシリンダ740A,741Aや上作業ロール軸受箱がた取りシリンダ760の駆動制御の詳細について
図6や表2を参照して説明する。これらの駆動制御は、油圧装置を駆動制御する制御装置80により実行される。
【0065】
作業ロールがL
sの間をシフトするとき軸受中心は
図6に示す区間A,B,Cに存在する。軸受中心が区間Cにあるときは、駆動側では、入側の上作業ロールベンディングシリンダ740Aでは軸方向外側のみを駆動させ、出側の上作業ロールベンディングシリンダ741Aでは軸方向真ん中のみを駆動させる。操作側では、入側の上作業ロールベンディングシリンダ740Aでは軸方向内側のみを駆動させ、出側の上作業ロールベンディングシリンダ741Aでは軸方向真ん中のみを駆動させる(表2の区間Cの括弧の無い側)。
【0066】
あるいは、これとは逆に、駆動側では、入側の上作業ロールベンディングシリンダ740Aでは軸方向真ん中のシリンダのみを駆動させるとともに、出側の上作業ロールベンディングシリンダ741Aでは軸方向外側のシリンダのみを駆動させる。操作側でも、入側の上作業ロールベンディングシリンダ740Aでは軸方向真ん中のシリンダのみを駆動させるとともに、出側の上作業ロールベンディングシリンダ741Aでは軸方向内側のシリンダのみを駆動させる(表2の区間Cの括弧側)。
【0067】
次いで、軸受中心が区間Bにあるときは、駆動側および操作側のいずれでも、入側の上作業ロールベンディングシリンダ740Aおよび出側の上作業ロールベンディングシリンダ741Aのいずれも軸方向真ん中のシリンダのみを駆動させる。
【0068】
次いで、軸受中心が区間Aにあるときは、駆動側では、入側の上作業ロールベンディングシリンダ740Aでは軸方向内側のシリンダのみを駆動させるとともに、出側の上作業ロールベンディングシリンダ741Aでは軸方向真ん中のシリンダのみを駆動させる。操作側でも、入側の上作業ロールベンディングシリンダ740Aでは軸方向外側のシリンダのみを駆動させるとともに、出側の上作業ロールベンディングシリンダ741Aでは軸方向真ん中のシリンダのみを駆動させる(表2の区間Aの括弧の無い側)。
【0069】
あるいは、これとは逆に、駆動側では、入側の上作業ロールベンディングシリンダ740Aでは軸方向真ん中のシリンダのみを駆動させるとともに、出側の上作業ロールベンディングシリンダ741Aでは軸方向内側のシリンダのみを駆動させる。操作側でも、入側の上作業ロールベンディングシリンダ740Aでは軸方向真ん中のシリンダのみを駆動させるとともに、出側の上作業ロールベンディングシリンダ741Aでは軸方向外側のシリンダのみを駆動させる(表2の区間Aの括弧側)。
【0070】
以上のように、
図6における形態では、第1シリンダのうち最も軸方向の外側に配置された第1シリンダと最も内側に配置された第1
シリンダとの間に軸受790の中心が配置されているときであって、圧延方向から見たときに入側と出側で重なって配置されている第1シリンダの合力の作用位置が軸受中心位置から離れてしまっているときは、駆動側において軸方向真ん中の上作業ロールベンディングシリンダ740A,741Aの間に軸受790の軸方向中心がシフトしているとき以外は、駆動させるシリンダを入側と出側とで結んだ線を考えたときに、駆動側と操作側とで平行にならずに、圧延材5の入側もしくは出側の位置で交わるように、すなわちクロスさせて駆動するように設定される。
【0071】
上作業ロール軸受箱がた取りシリンダ760については、表2における区間A,B,Cのいずれでも駆動させる。該作用位置が、区間A、B、Cの各軸受中心位置と極力離れないように、軸方向に並んだ2つシリンダの駆動や圧力を調整する。
【0072】
上記の
図6の例では上作業ロールベンディングシリンダ740A,741Aの出力や上作業ロール軸受箱がた取りシリンダ760の出力はON,OFFのみの2通りの場合について説明したが、各々の上作業ロールベンディングシリンダ740A,741Aの出力、上作業ロール軸受箱がた取りシリンダ760の出力をより細かく別個に調整して、より正確に軸受790の軸方向中心にベンディング力が加わるようにすることができる。
【0073】
次に、本実施例の効果について説明する。
【0074】
上述した本実施例の圧延機は、軸方向にシフトするロールと、駆動側および操作側のいずれにも設けられ、ロールと共にロールの軸方向にシフトし、ロールからの荷重を受ける軸受790、および軸受790に対して鉛直方向にベンディング力を与えてロールをベンディングさせる4つ以上の第1シリンダと、第1シリンダを駆動する制御装置80と、を備えている。このうち、圧延方向の入側および出側の各々に、第1シリンダが軸方向に並んで2つ以上設けられ、制御装置80は、ロールのベンディング時、かつ第1シリンダのうち最も軸方向の外側に配置された第1シリンダと最も内側に配置された第1
シリンダとの間に少なくとも軸受790の中心が配置されている時は、軸受790の中心部分にその合力が加わるように、入側のうち1つの第1シリンダおよび出側のうち1つの第1シリンダを駆動することが選択できるように構成されている。
【0075】
よって、第1シリンダ間に軸受中心が配置されている場合、1つの軸受につき、4つ以上設けられている第1シリンダの全てを駆動する必要はなく、2つの第1シリンダでベンディング合力を軸受の長手方向中央部近傍に作用させることができるため、軸受への偏荷重を低減するために各々のシリンダの押圧力を調整するための機構を多数設ける必要がないとともに、制御が簡易であるため、従来の圧延機に比べて簡易な構成とすることができる。
【0076】
また、入側の第1シリンダおよび出側の第1シリンダは、圧延方向から見たときに、重なって配置されているため、より簡易に2つの第1シリンダによるベンディング合力を軸受の長手方向中央部近傍に作用させることができる。
【0077】
更に、圧延機のハウジングの圧延方向の入側又は出側のうち少なくともいずれか一方に固定されており、第1シリンダが設けられている入側固定部材702,出側固定部材703と、入側固定部材702,出側固定部材703のうち、入側又は出側の何れか一方に、軸受790に対して圧延方向、あるいは圧延方向とは逆側に押圧力を加える第2シリンダと、を更に備えたことで、圧延材5の先端の噛み込み時に軸受と第1シリンダとが圧延方向にずれることを防止することができる。これにより、ベンディング作用位置がずれない効果が得られる。すなわち、ベンディング力が作用した状態で軸受が圧延方向に動くことを抑制することができるため、第1シリンダが押圧している部分で滑りが生じず、第1シリンダのダメージや、押圧される側の摩耗を抑制でき、ベンディングの精度を高く維持することができる。
【0078】
また、制御装置80は、圧延方向から見たときに重なって配置されている第1シリンダに隣接している第1シリンダを駆動させること、例えば第1シリンダが4つである場合は、入側又は出側の一方に設けられた2つの第1シリンダのうち軸方向における内側の第1シリンダを駆動し、入側又は出側の他方に設けられた2つの第1シリンダのうち軸方向における外側の第1シリンダを駆動するように構成されたことで、より正確かつ簡易に2つの第1シリンダでベンディング合力を軸受の長手方向中央部近傍に作用させることができるため、各々のシリンダの押圧力を調整するための機構を多数設けない、簡易な構成で軸受への偏荷重を低減することができる。
【0079】
<実施例2>
本発明の実施例2の圧延機について
図7と表3を用いて説明する。
【0081】
図7が
図5と異なる部分を説明する。本実施例ではシフト量Lsを区間A,Bに分けている。表3は軸受中心位置と各シリンダの駆動状態の関係を示す。e1とd2を結ぶ線とロール軸線の交点位置は区間Bと区間Aの境目としている。区間A,Bのいずれに軸受中心が存在している時も、出側の上作業ロールベンディングシリンダ741を2つとも駆動する。
【0082】
軸受790の軸方向中心が区間Bに存在している場合は、軸方向内側の上作業ロールベンディングシリンダ740,e1と、上作業ロールベンディングシリンダ741,d1の出力を必要とする出側のベンディング力Pbdに所定の係数αd1を乗じた出力と、上作業ロールベンディングシリンダ741,d2の出力を必要とする出側のベンディング力Pbdに所定の係数αd2を乗じた出力とで駆動する。
【0083】
軸受790の軸方向中心が区間Aに存在している場合は、軸方向外側の上作業ロールベンディングシリンダ740,e2と、上作業ロールベンディングシリンダ741,d1の出力を必要とする
出側のベンディング力Pbdに所定の係数αd1を乗じた出力と、上作業ロールベンディングシリンダ741,d2の出力を必要とする出側のベンディング力Pbdに所定の係数αd2を乗じた出力とで駆動する。
【0084】
即ち、出側の第1シリンダを全て駆動し、入側の第1シリンダを1つだけ駆動するよう選択している。また、入側の第1シリンダを全て駆動し、出側の第1シリンダを1つだけ駆動するように選択してもよい。なお、
図7では第2シリンダは入側に設けられているが出側に設けられていてもよい。
【0085】
上作業ロール軸受箱がた取りシリンダ760については、区間A,Bのいずれの区間においても駆動する。
【0086】
よって、第1シリンダ間に軸受中心が配置されている場合、1つの軸受につき、4つ設けられている第1シリンダの全てを駆動する必要はなく、3つの第1シリンダでベンディング合力を軸受の長手方向中央部近傍に作用させることができるため、軸受への偏荷重を低減するために各々のシリンダの押圧力を調整するための機構を多数設ける必要がないとともに、制御が簡易であるため、従来の圧延機に比べて簡易な構成とすることができる。更に、第1シリンダのベンディング合力を無段階に調節できるので、軸受中心が区間内のどこに存在していてもベンディング合力の作用位置と軸受中心を一致させることが容易になる。
【0087】
<その他>
なお、本発明は上記の実施例に限られず、種々の変形、応用が可能なものである。上述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。