(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
モータサイクル(100)に設けられている前方環境検出装置(20)を用いて、走行中の該モータサイクル(100)の前方に位置する対象を認識する前方認識システム(1)のための処理ユニット(50)であって、
前記前方環境検出装置(20)の出力に応じた前方環境情報を取得する取得部(51)と、
前記前方環境情報に基づいて前記対象を認識する認識部(52)と、
を備えており、
前記処理ユニット(50)は、更に、前記前方環境検出装置(20)の制御を行う制御部(53)を備えており、
前記モータサイクル(100)の走行中において、
前記取得部(51)は、前記モータサイクル(100)の倒れ角(θL)に関連する姿勢情報を取得し、
前記制御部(53)は、前記前方環境検出装置(20)による前記モータサイクル(100)の前方の検出における検出角度範囲(θ)を、前記姿勢情報に応じて変化させる、
処理ユニット(50)。
前記前方環境検出装置(20)は、少なくとも、前記第1の検出角度範囲(θ1)で前記モータサイクル(100)の前方を検出するための第1のセンシング要素と、前記第2の検出角度範囲(θ2)で前記モータサイクル(100)の前方を検出するための第2のセンシング要素と、を含み、
前記モータサイクル(100)の走行中において、
前記制御部(53)は、
前記取得部(51)で、前記基準倒れ角(θLth)と比較して小さい前記倒れ角(θL)に対応する前記姿勢情報が取得される場合に、前記第1のセンシング要素を用いた前記モータサイクル(100)の前方の検出によって、前記第1の検出角度範囲(θ1)での前記モータサイクル(100)の前方の検出を実行させ、
前記取得部(51)で、前記基準倒れ角(θLth)と比較して大きい前記倒れ角(θL)に対応する前記姿勢情報が取得される場合に、前記第2のセンシング要素を用いた前記モータサイクル(100)の前方の検出によって、前記第2の検出角度範囲(θ2)での前記モータサイクル(100)の前方の検出を実行させる、
請求項4に記載の処理ユニット(50)。
モータサイクル(100)に設けられている前方環境検出装置(20)を用いて、走行中の該モータサイクル(100)の前方に位置する対象を認識する前方認識システム(1)のための処理方法であって、
前記前方環境検出装置(20)の出力に応じた前方環境情報が取得される取得ステップ(S101、S106、S201、S206)と、
前記前方環境情報に基づいて前記対象が認識される認識ステップ(S107、S207)と、
を備えており、
前記処理方法は、更に、前記前方環境検出装置(20)の制御が行われる制御ステップ(S102〜S105、S202〜S205)を備えており、
前記モータサイクル(100)の走行中において、
前記取得ステップ(S101、S106、S201、S206)では、前記モータサイクル(100)の倒れ角(θL)に関連する姿勢情報が取得され、
前記制御ステップ(S102〜S105、S202〜S205)では、前記前方環境検出装置(20)による前記モータサイクル(100)の前方の検出における検出角度範囲(θ)が、前記姿勢情報に応じて変化させられる、
処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る処理ユニット、前方認識システム、モータサイクル、及び、処理方法について、図面を用いて説明する。
【0013】
なお、以下で説明する構成、動作、作用等は、一例であり、本発明に係る処理ユニット、前方認識システム、モータサイクル、及び、処理方法は、そのような構成、動作、作用等である場合に限定されない。
【0014】
例えば、以下では、モータサイクルが、自動二輪車である場合を説明しているが、モータサイクルが、自動三輪車であってもよい。また、以下では、前方環境検出装置が、2つのセンシング系を切り替え可能に構成される場合を説明しているが、前方環境検出装置が、3つ以上のセンシング系を切り替え可能に構成されていてもよい。また、以下では、センシング系が、レーダー送受信器で構成される場合を説明しているが、センシング系が、他の原理で検出するもの(例えば、超音波送受信器等)で構成されていてもよい。
【0015】
また、以下では、同一の又は類似する説明を適宜簡略化又は省略している。また、各図において、同一の又は類似する部分については、同一の符号を付している。また、細かい構造については、適宜図示を簡略化又は省略している。
【0016】
実施の形態1.
以下に、実施の形態1に係る前方認識システムを説明する。
【0017】
<前方認識システムの構成>
実施の形態1に係る前方認識システムの構成について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係る前方認識システムの、モータサイクルへの搭載状態を示す図である。
図2は、本発明の実施の形態1に係る前方認識システムの、前方環境検出装置の構成を示す図である。
図3は、本発明の実施の形態1に係る前方認識システムの、システム構成を示す図である。
【0018】
図1に示されるように、前方認識システム1は、モータサイクル100に搭載される。前方認識システム1は、前輪の回転速度を検出する前輪回転速度センサ11と、後輪の回転速度を検出する後輪回転速度センサ12と、モータサイクル100に生じている慣性を検出する慣性計測装置(IMU)13と、モータサイクル100の前方を検出する前方環境検出装置20と、処理ユニット(ECU)50と、を含む。
【0019】
前方認識システム1は、前方環境検出装置20を用いて、走行中のモータサイクル100の前方に位置する対象(例えば、障害物、先行車、標識等)を認識する役割を担う。前方認識システム1によって認識された対象の情報は、ライダーの運転を支援する機能(例えば、警告機能、緊急ブレーキ機能、クルーズ走行機能等)を実現するための各種システムに供給される。前方認識システム1の各部は、前方認識システム1に専ら用いられるものであってもよく、また、他のシステムと共用されるものであってもよい。
【0020】
前輪回転速度センサ11は、検出された前輪の回転速度を処理ユニット50に出力する。前輪回転速度センサ11が、前輪の回転速度に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。後輪回転速度センサ12は検出された後輪の回転速度を、処理ユニット50に出力する。後輪回転速度センサ12が、後輪の回転速度に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。
【0021】
慣性計測装置13は、例えば、3軸のジャイロセンサ及び3方向の加速度センサを備えるものであり、検出された慣性を処理ユニット50に出力する。慣性計測装置13が、モータサイクル100に生じている慣性に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。また、慣性計測装置13が、モータサイクル100の傾き角θLに関連する姿勢情報を取得可能な他の検出装置であってもよい。
【0022】
図2に示されるように、前方環境検出装置20は、互いに異なる検出範囲Aを有する、第1のセンシング系21と、第2のセンシング系22と、を含む。つまり、第1のセンシング系21は、狭い第1の検出角度範囲θ1と、広い第1の検出距離範囲D1と、を有するセンシング系である。第2のセンシング系22は、第1の検出角度範囲θ1と比較して広い第2の検出角度範囲θ2と、第1の検出距離範囲D1と比較して狭い第2の検出距離範囲D2と、を有するセンシング系である。
【0023】
図2に示される態様では、第1のセンシング系21及び第2のセンシング系22の検出角度範囲θの切り替えが、送信器31を異ならせることで実現される。つまり、第1のセンシング系21が、送信角度範囲がθ1の送信器31と、受信器32と、によって構成され、第2のセンシング系22が、送信角度範囲がθ2の送信器31と、第1のセンシング系21と共用される受信器32と、によって構成される。送信角度範囲がθ1の送信器31は、本発明の「第1のセンシング要素」に相当し、送信角度範囲がθ2の送信器31は、本発明の「第2のセンシング要素」に相当する。
【0024】
第1のセンシング系21及び第2のセンシング系22の検出角度範囲θの切り替えが、受信器32を異ならせることで実現されてもよい。つまり、第1のセンシング系21が、送信器31と、受信角度範囲がθ1の受信器32と、によって構成され、第2のセンシング系22が、第1のセンシング系21と共用される送信器31と、受信角度範囲がθ2の受信器32と、によって構成されてもよい。そのような場合には、受信角度範囲がθ1の受信器32は、本発明の「第1のセンシング要素」に相当し、受信角度範囲がθ2の受信器32は、本発明の「第2のセンシング要素」に相当する。なお、第1のセンシング系21及び第2のセンシング系22の検出角度範囲θの切り替えが、送信器31及び受信器32の両方を異ならせることで実現されてもよい。
【0025】
図3に示されるように、処理ユニット50は、取得部51と、認識部52と、制御部53と、を含む。処理ユニット50の各部は、1つの筐体に纏めて設けられていてもよく、また、複数の筐体に分けられて設けられていてもよい。また、処理ユニット50の一部又は全ては、例えば、マイコン、マイクロプロセッサユニット等で構成されてもよく、また、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、また、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。
【0026】
モータサイクル100の走行中において、処理ユニット50の取得部51は、前方環境検出装置20の出力を受けて、その出力に応じた前方環境情報を取得する。そして、認識部52は、その前方環境情報に対して、対象(例えば、障害物、先行車、標識等)を認識するための公知の演算処理を施して、他のシステム(図示省略)にその対象の情報を出力する。
【0027】
また、処理ユニット50の取得部51は、前輪回転速度センサ11及び後輪回転速度センサ12の出力に基づいて、モータサイクル100の車体速度Vに関連する走行情報を取得する。車体速度Vに関連する走行情報は、車体速度V自体の情報であってもよく、また、車体速度Vに実質的に換算可能な他の物理量(例えば、モータサイクル100に生じている振動の特性量等)の情報であってもよい。例えば、車体速度Vは、前輪の回転速度及び後輪の回転速度のうちの高い方の回転速度を換算することで求めることができる。車体速度Vが、他の公知の手法によって求められてもよい。
【0028】
また、処理ユニット50の取得部51は、慣性計測装置13の出力に基づいて、モータサイクル100の倒れ角θLに関連する姿勢情報を取得する。倒れ角θLに関連する姿勢情報は、倒れ角θL自体の情報であってもよく、また、倒れ角θLに実質的に換算可能な他の物理量(例えば、モータサイクル100に生じているヨーレート、横加速度等)の情報であってもよい。倒れ角θLは、モータサイクル100が直立している状態に対する、モータサイクル100のロール方向での傾き角度として定義される。
【0029】
処理ユニット50の制御部53は、取得部51で取得された走行情報及び姿勢情報を用いて、第1のセンシング系21及び第2のセンシング系22のどちらによってモータサイクル100の前方を検出するかを決定し、その指令を前方環境検出装置20に出力する。
【0030】
<前方認識システムの動作>
実施の形態1に係る前方認識システムの動作について説明する。
図4は、本発明の実施の形態1に係る前方認識システムの、処理ユニットの動作フローを示す図である。
【0031】
処理ユニット50は、モータサイクル100の走行中において、
図4に示される動作フローを繰り返す。
【0032】
(取得ステップ−1)
ステップS101において、処理ユニット50の取得部51は、前輪回転速度センサ11及び後輪回転速度センサ12の出力に基づいて、車体速度Vに関連する走行情報を取得する。また、処理ユニット50の取得部51は、慣性計測装置13の出力に基づいて、倒れ角θLに関連する姿勢情報を取得する。
【0033】
(制御ステップ)
ステップS102〜ステップS105において、処理ユニット50の制御部53は、ステップS101で取得された走行情報及び姿勢情報を用いて、第1のセンシング系21及び第2のセンシング系22のどちらによってモータサイクル100の前方を検出するかを決定する。
【0034】
具体的には、ステップS102において、制御部53は、ステップS101で取得された走行情報が、基準車体速度Vthと比較して大きい車体速度Vに対応する走行情報であるか否かを判定する。Yesである場合には、ステップS103に進み、Noである場合には、ステップS105に進む。制御部53は、ステップS103において、ステップS101で取得された姿勢情報が、基準倒れ角θLthと比較して小さい倒れ角θLに対応する姿勢情報であるか否かを判定する。Yesである場合には、ステップS104に進み、Noである場合には、ステップS105に進む。制御部53は、ステップS104においては、前方環境検出装置20に、第1のセンシング系21を用いてモータサイクル100の前方を検出させ、ステップS105においては、前方環境検出装置20に、第2のセンシング系22を用いてモータサイクル100の前方を検出させる。
【0035】
(取得ステップ−2)
ステップS106において、処理ユニット50の取得部51は、前方環境検出装置20の出力に応じた前方環境情報を取得する。
【0036】
(認識ステップ)
ステップS107において、処理ユニット50の認識部52は、ステップS106で取得された前方環境情報に対して、対象(例えば、障害物、先行車、標識等)を認識するための処理を施す。モータサイクル100に倒れ角θLが生じると、前方環境検出装置20も略等しい角度だけ傾けられた状態で前方を検出することになるため、取得部51で取得される前方環境情報は、その傾きを相殺するように回転補正する必要がある。つまり、認識部52は、ステップS101で取得された姿勢情報を用いて、ステップS106で取得された前方環境情報を補正した上で、対象を認識する。
【0037】
<前方認識システムの作用>
実施の形態1に係る前方認識システムの作用について説明する。
図5及び
図6は、本発明の実施の形態1に係る前方認識システムの、作用を説明する図である。なお、
図5及び
図6では、処理ユニット50が、先行車Pを対象として認識する場合を一例として示しているが、処理ユニット50が、他の対象を認識する場合でも同様の作用が奏される。
図5は、モータサイクル100及び先行車Pの走行状態を、上空から見た状態を示しており、
図6は、モータサイクル100の位置から先行車Pを見た状態を示している。
【0038】
モータサイクル100が幹線道路等を走行する状態では、広い第1の検出距離範囲D1を有する第1のセンシング系21によって、モータサイクル100の前方が検出されるのが好ましい。また、モータサイクル100が市街地等を走行する状態では、広い第2の検出角度範囲θ2を有する第2のセンシング系22によって、モータサイクル100の前方が検出されるのが好ましい。そして、モータサイクル100が、カーブする幹線道路等を旋回走行する際には、
図5に示されるように、認識すべき対象である先行車Pが、第1のセンシング系21の検出範囲A1外に位置することになって、モータサイクル100が先行車Pに近づくまで、前方認識システム1による認識ができないこととなる。
【0039】
しかしながら、前方認識システム1では、モータサイクル100が、カーブする幹線道路等を旋回走行して、
図6に示されるように、モータサイクル100に倒れ角θLが生じる状態になると、その倒れ角θLに応じて、前方環境検出装置20で用いられるセンシング系が、広い第1の検出距離範囲D1を有する第1のセンシング系21から、広い第2の検出角度範囲θ2を有する第2のセンシング系22に切り替わる。そのため、第1のセンシング系21の検出範囲A1外に位置する先行車Pを、第2のセンシング系22の検出範囲A2内に位置させることが可能であるため、モータサイクル100が先行車Pに近づく前の段階で先行車Pを認識することが可能である。
【0040】
そして、モータサイクル100が、基準車体速度Vthと比較して小さい車体速度Vで走行する状態では、モータサイクル100に倒れ角θLが生じない状態であっても、広い第2の検出角度範囲θ2を有する第2のセンシング系22を用いて、モータサイクル100の前方が検出されるため、モータサイクル100が市街地等を走行する状態において、対象を認識することの確実性を確保することが可能となる。
【0041】
また、
図6に示されるように、第2のセンシング系22の検出範囲A2は、第1のセンシング系21の検出範囲A1に対して、モータサイクル100の車幅方向W及び車高方向Hの両方において広く構成される。つまり、モータサイクル100の車幅方向Wにおいて、第2のセンシング系22の第2の検出角度範囲θ2は、第1のセンシング系21の第1の検出角度範囲θ1よりも広く、また、モータサイクル100の車高方向Hにおいて、第2のセンシング系22の第2の検出角度範囲θ2は、第1のセンシング系21の第1の検出角度範囲θ1よりも広く構成される。
【0042】
そして、第2のセンシング系22の検出範囲A2の、モータサイクル100の車幅方向Wにおける左側限界A2l及び右側限界A2rは、第1のセンシング系21の検出範囲A1の、モータサイクル100の車幅方向Wにおける左側限界A1l及び右側限界A1rの外側に広がる。また、第2のセンシング系22の検出範囲A2の、モータサイクル100の車高方向Hにおける上側限界A2tは、第1のセンシング系21の検出範囲A1の、モータサイクル100の車高方向Hにおける上側限界A1tの外側に広がる。好ましくは、モータサイクル100の車高方向Hにおいて、第2のセンシング系22の検出範囲A2の中心軸は、第1のセンシング系21の検出範囲A1の中心軸に対して高い側に位置する。
【0043】
モータサイクル100に倒れ角θLが生じる状態では、モータサイクル100に倒れ角θLが生じていない状態と比較して、前方環境検出装置20の路面からの高さが低くなる。前方認識システム1では、第2のセンシング系22の検出範囲A2の上側限界A2tが、第1のセンシング系21の検出範囲A1の上側限界A1tの外側に広がる構成であるため、モータサイクル100が旋回走行して、前方環境検出装置20の路面からの高さが低くなる状態において、先行車Pが検出範囲A2外に位置してしまうことが抑制される。
【0044】
<前方認識システムの効果>
実施の形態1に係る前方認識システムの効果について説明する。
処理ユニット50が、前方環境検出装置20の出力に応じた前方環境情報を取得する取得部51と、前方環境情報に基づいて対象を認識する認識部52と、前方環境検出装置20の制御を行う制御部53と、を備えており、モータサイクル100の走行中において、取得部51は、モータサイクル100の倒れ角θLに関連する姿勢情報を取得し、制御部53は、前方環境検出装置20によるモータサイクル100の前方の検出における検出角度範囲θを、姿勢情報に応じて変化させる。そのため、モータサイクル100が旋回する状態、つまり、大きな倒れ角θLが生じることで車体が不安定になる状態においても、進行方向に位置する対象を適切な段階で認識することが可能である。
【0045】
好ましくは、制御部53が変化させる検出角度範囲θは、モータサイクル100の車幅方向Wでの検出角度範囲θである。そのため、モータサイクル100が旋回する状態における対象の認識を確実化することが可能である。
【0046】
好ましくは、制御部53が変化させる検出角度範囲θは、モータサイクル100の車高方向Hでの検出角度範囲θである。そのため、モータサイクル100が旋回する状態における対象の認識を確実化することが可能である。
【0047】
好ましくは、モータサイクル100の走行中において、制御部53は、取得部51で、基準倒れ角θLthと比較して小さい倒れ角θLに対応する姿勢情報が取得される場合に、前方環境検出装置20によるモータサイクル100の前方の検出を、第1の検出角度範囲θ1で実行させ、取得部51で、基準倒れ角θLthと比較して大きい倒れ角θLに対応する姿勢情報が取得される場合に、前方環境検出装置20によるモータサイクル100の前方の検出を、第1の検出角度範囲θ1よりも広い第2の検出角度範囲θ2で実行させる。つまり、制御部53は、姿勢情報に応じて、前方環境検出装置20の検出方向を変化させるのではなく、前方環境検出装置20の検出角度範囲θの広さを変化させる。そのため、モータサイクル100が旋回する状態における対象の認識を確実化しつつ、モータサイクル100が走行する各種環境(例えば、幹線道路、市街地等)への適応性を確保することが可能となる。
【0048】
特に、前方環境検出装置20は、少なくとも、第1の検出角度範囲θ1でモータサイクル100の前方を検出するための第1のセンシング要素と、第2の検出角度範囲θ2でモータサイクル100の前方を検出するための第2のセンシング要素と、を含み、モータサイクル100の走行中において、制御部53は、取得部51で、基準倒れ角θLthと比較して小さい倒れ角θLに対応する姿勢情報が取得される場合に、第1のセンシング要素を用いたモータサイクル100の前方の検出によって、第1の検出角度範囲θ1でのモータサイクル100の前方の検出を実行させ、取得部51で、基準倒れ角θLthと比較して大きい倒れ角θLに対応する姿勢情報が取得される場合に、第2のセンシング要素を用いたモータサイクル100の前方の検出によって、第2の検出角度範囲θ2でのモータサイクル100の前方の検出を実行させる。つまり、制御部53は、姿勢情報に応じて、1つのセンシング系の仕様を変化させるのではなく、仕様の異なる複数のセンシング系を使い分けることで、前方環境検出装置20の検出角度範囲θの広さを変化させる。そのため、モータサイクル100が旋回する状態における対象の認識の応答性が向上する。
【0049】
特に、モータサイクル100の走行中において、取得部51は、モータサイクル100の車体速度Vに関連する走行情報を取得し、制御部53は、走行情報を加味して、第1の検出角度範囲θ1でのモータサイクル100の前方の検出と、第2の検出角度範囲θ2でのモータサイクル100の前方の検出と、を切り替える。つまり、前方環境検出装置20では、姿勢情報に応じた検出角度範囲θの切り替えと、モータサイクル100が走行する各種環境(幹線道路、市街地等)に応じた検出角度範囲θの切り替えと、が、共通のセンシング系に対して実行される。そのため、モータサイクル100が旋回する状態における対象の認識を確実化しつつ、モータサイクル100が走行する各種環境(例えば、幹線道路、市街地等)への適応性を確保することを、簡易な構成で実現できる。
【0050】
好ましくは、認識部52は、姿勢情報を用いて前方環境情報を補正して対象を認識する。そのため、モータサイクル100が旋回する状態における対象の認識を確実化することが可能である。
【0051】
実施の形態2.
以下に、実施の形態2に係る前方認識システムについて説明する。
なお、実施の形態2に係る前方認識システムでは、実施の形態1に係る前方認識システムに対して、処理ユニット50の動作フローのみが異なっている。実施の形態1に係る前方認識システムと重複又は類似する説明は、適宜簡略化又は省略している。
【0052】
<前方認識システムの動作>
実施の形態2に係る前方認識システムの動作について説明する。
図7は、本発明の実施の形態2に係る前方認識システムの、処理ユニットの動作フローを示す図である。
【0053】
処理ユニット50は、モータサイクル100の走行中において、
図7に示される動作フローを繰り返す。
【0054】
(取得ステップ−1)
ステップS201において、処理ユニット50の取得部51は、前輪回転速度センサ11及び後輪回転速度センサ12の出力に基づいて、車体速度Vに関連する走行情報を取得する。また、処理ユニット50の取得部51は、慣性計測装置13の出力に基づいて、倒れ角θLに関連する姿勢情報を取得する。
【0055】
(制御ステップ)
ステップS202〜ステップS205において、処理ユニット50の制御部53は、ステップS201で取得された走行情報及び姿勢情報を用いて、第1のセンシング系21及び第2のセンシング系22のどちらによってモータサイクル100の前方を検出するかを決定する。
【0056】
具体的には、ステップS202において、制御部53は、ステップS201で取得された走行情報に応じて、基準倒れ角θLthを変化させる。つまり、制御部53は、ステップS201で小さい車体速度Vに対応する走行情報が取得される場合に、ステップS201で大きい車体速度Vに対応する走行情報が取得される場合と比較して、第1のセンシング系21と第2のセンシング系22とが切り替わる基準倒れ角θLthを小さくする。
【0057】
ステップS203において、制御部53は、ステップS201で取得された倒れ角θLに関連する姿勢情報が、基準倒れ角θLthと比較して小さい倒れ角θLに対応する姿勢情報であるか否かを判定する。Yesである場合には、ステップS204に進み、制御部53は、前方環境検出装置20に、第1のセンシング系21を用いてモータサイクル100の前方を検出させる。また、Noである場合には、ステップS205に進み、制御部53は、前方環境検出装置20に、第2のセンシング系22を用いてモータサイクル100の前方を検出させる。
【0058】
(取得ステップ−2)
ステップS206において、処理ユニット50の取得部51は、前方環境検出装置20の出力に応じた前方環境情報を取得する。
【0059】
(認識ステップ)
ステップS207において、処理ユニット50の認識部52は、ステップS206で取得された前方環境情報に対して、対象(例えば、障害物、先行車、標識等)を認識するための処理を施す。
【0060】
<前方認識システムの作用>
実施の形態2に係る前方認識システムの作用について説明する。
前方認識システム1では、モータサイクル100の車体速度Vが小さい場合に、モータサイクル100の車体速度Vが大きい場合と比較して、基準倒れ角θLthが小さくなるように設定される。そのため、モータサイクル100が市街地等を走行する状態において、対象を認識することの確実性を確保することが可能となる。
【0061】
以上、実施の形態1及び実施の形態2について説明したが、本発明は各実施の形態の説明に限定されない。例えば、各実施の形態の全て又は一部が組み合わされてもよい。