特許第6979462号(P6979462)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6979462触媒構造体を含む可燃性ガスセンサの比較診断
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979462
(24)【登録日】2021年11月17日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】触媒構造体を含む可燃性ガスセンサの比較診断
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/16 20060101AFI20211202BHJP
【FI】
   G01N27/16 A
【請求項の数】27
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2019-542099(P2019-542099)
(86)(22)【出願日】2018年4月28日
(65)【公表番号】特表2020-522675(P2020-522675A)
(43)【公表日】2020年7月30日
(86)【国際出願番号】US2018030051
(87)【国際公開番号】WO2018212965
(87)【国際公開日】20181122
【審査請求日】2020年4月1日
(31)【優先権主張番号】15/597,933
(32)【優先日】2017年5月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515150586
【氏名又は名称】エムエスエー テクノロジー, リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ザネラ,マーク,フローリ,シニア.
(72)【発明者】
【氏名】スワンソン,メーガン,イー.
(72)【発明者】
【氏名】サントロ,ダニエル ディー.,ジュニア.
【審査官】 田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−509594(JP,A)
【文献】 特開2000−039413(JP,A)
【文献】 特開2010−054230(JP,A)
【文献】 特開2007−048578(JP,A)
【文献】 特開2012−247239(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0273263(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0019402(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00−27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体ガスを検出するための可燃性ガスセンサであって、
第1の電気加熱素子と、前記第1の電気加熱素子上の第1の支持構造体と、前記第1の支持構造体上に支持された第1の触媒とを備えた第1の素子を備え、
前記可燃性ガスセンサは、前記第1の素子と電気的に接続された電子回路をさらに備え、
前記電子回路は、
前記第1の素子が、前記第1の触媒が前記検体ガスの燃焼を触媒する第1の温度で動作する第1のモード、及び、
前記第1の素子が、前記第1の触媒が前記検体ガスの燃焼を触媒する温度未満であるが、前記第1の素子のジュール加熱が生じる第2の温度で動作する第2のモード、
で動作するように構成され、
前記電子回路が、前記第2のモードで前記第1の素子の質量に関連付けられる変数を測定するように構成され、前記変数の変化が、前記第1の素子の前記第1の触媒の被毒又は阻害に関連付けられる、可燃性ガスセンサ。
【請求項2】
第2の電気加熱素子と、前記第2の電気加熱素子上の第2の支持構造体とを含む第2の素子をさらに備え、
前記電子回路は、
前記第2の素子と電気的に接続されており、
前記第1の触媒が前記第1のモードで前記検体ガスの燃焼を触媒する温度よりも低い第3の温度で前記第2の素子を動作させるように、且つ、前記第1の触媒が前記第2のモードで前記検体ガスの燃焼を触媒する温度よりも低い第4の温度で前記第2の素子を動作させるように構成されており、
前記電子回路が、周囲条件を補償するように、前記第1のモード及び前記第2のモードで前記第2の素子を動作させるようにさらに構成されている、請求項1に記載の可燃性ガスセンサ。
【請求項3】
前記第2の温度、前記第3の温度及び前記第4の温度は、1つ以上の所定の触媒阻害組成物又は触媒被毒組成物が前記第1の支持構造体及び前記第2の支持構造体上で酸化される温度未満である、請求項2に記載の可燃性ガスセンサ。
【請求項4】
前記第4の温度は、前記第1の触媒が前記検体ガスの燃焼を触媒する温度未満であるが、前記第2の素子のジュール加熱が生じる温度よりも高い、請求項2に記載の可燃性ガスセンサ。
【請求項5】
前記第2の温度、前記第3の温度及び前記第4の温度が、150℃未満である、請求項2に記載の可燃性ガスセンサ。
【請求項6】
前記第2の温度、前記第3の温度及び前記第4の温度が、90℃未満である、請求項2に記載の可燃性ガスセンサ。
【請求項7】
前記第2の温度が、前記第4の温度の5%以内である、請求項5に記載の可燃性ガスセンサ。
【請求項8】
前記第2の温度が、前記第4の温度の2%以内である、請求項5に記載の可燃性ガスセンサ。
【請求項9】
前記変数が、電圧、電流又は抵抗からなる群より選択される、請求項5に記載の可燃性ガスセンサ。
【請求項10】
前記第1の支持構造体及び前記第2の支持構造体は、独立して、多孔質の電気絶縁材料を含んでいる、請求項5に記載の可燃性ガスセンサ。
【請求項11】
前記電子回路と通信接続する制御システムをさらに備える、請求項5に記載の可燃性ガスセンサ。
【請求項12】
前記制御システムが、測定された前記変数の変化に基づいて、前記可燃性ガスセンサの出力を変化させるように構成されている、請求項11に記載の可燃性ガスセンサ。
【請求項13】
前記制御システムが、測定された前記変数の変化に基づいて、少なくとも前記第1の素子の動作状態に関してユーザに情報を提供するように構成されている、請求項11に記載の可燃性ガスセンサ。
【請求項14】
前記制御システムが、測定された前記変数の変化に応じて、前記第1の素子の温度を上昇させ、異物を焼失させるように構成されている、請求項11に記載の可燃性ガスセンサ。
【請求項15】
前記第2の素子は、前記第2の支持構造体上に支持された第2の触媒をさらに備え、
前記電子回路は、
前記第2の素子が、前記第2の触媒が前記検体ガスの燃焼を触媒する第5の温度で動作する第3のモード、及び、
前記第2の素子が、前記第2の触媒が前記検体ガスの燃焼を触媒する温度未満であり、且つ、1つ以上の所定の触媒阻害組成物又は触媒被毒組成物が前記第2の支持構造体上で酸化されるが、前記第2の素子のジュール加熱が生じる温度未満である第6の温度で動作する第4のモードで動作するように、さらに構成され、
前記電子回路は、前記第3のモードで前記第2の素子の質量に関連付けられる第2の変数を測定するようにさらに構成され、
前記第2の変数の変化は、前記第2の素子の前記第2の触媒の被毒又は阻害に関連付けられている、請求項5に記載の可燃性ガスセンサ。
【請求項16】
前記電子回路は、
前記第1の触媒が前記検体ガスの燃焼を触媒する温度よりも低く、且つ、前記1つ以上の所定の触媒阻害組成物又は触媒被毒組成物が前記第3のモードで前記第1の支持構造体上で酸化される温度未満である第7の温度で、前記第1の素子を動作させるように構成されるとともに、
前記第1の触媒が前記第4のモードで前記検体ガスの燃焼を触媒するが、前記第1の素子のジュール加熱が生じる温度よりも低い第8の温度で、前記第1の素子を動作させるように、さらに構成されており、
前記電子回路が、周囲条件を補償するように、前記第1の素子を前記第3のモード及び前記第4のモードで動作させるようにさらに構成されている、請求項15に記載の可燃性ガスセンサ。
【請求項17】
検体ガスを検出するための可燃性ガスセンサを動作させる方法であって、
前記可燃性ガスセンサは、第1の素子を含み、前記第1の素子は、第1の電気加熱素子と、前記第1の電気加熱素子上の第1の支持構造体と、前記第1の支持構造体上に支持された第1の触媒と、前記第1の素子と電気的に接続された電子回路とを含み、
前記方法は、
前記第1の素子が、前記第1の触媒が前記検体ガスの燃焼を触媒する第1の温度で動作する第1のモードで前記電子回路を動作させること、
前記第1の素子が、前記第1の触媒が前記検体ガスの燃焼を触媒する温度未満であるが、前記第1の素子のジュール加熱が生じる第2の温度で動作する第2のモードで前記電子回路を動作させること、及び、
前記第2のモードで前記電子回路によって前記第1の素子の質量に関連付けられる変数を測定すること、を備え、
前記変数の変化が、前記第1の素子の前記第1の触媒の被毒又は阻害に関連付けられる、方法。
【請求項18】
前記可燃性ガスセンサは、第2の電気加熱素子と、前記第2の電気加熱素子上の第2の支持構造体とを含む第2の素子をさらに含み、
前記方法が、さらに、
前記第1の触媒が前記電子回路を介して前記第1のモードで前記検体ガスの燃焼を触媒する温度よりも低い第3の温度で前記第2の素子を動作させること、
前記第1の触媒が前記電子回路を介して前記第2のモードで前記検体ガスの燃焼を触媒する温度よりも低い第4の温度で前記第2の素子を動作させること、を含み、
前記電子回路が、周囲条件を補償するように、前記第1のモード及び前記第2のモードで前記第2の素子を動作させる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の温度、前記第3の温度及び前記第4の温度は、触媒阻害組成物又は触媒被毒組成物が前記第1の支持構造体及び前記第2の支持構造体上で酸化される温度より低い、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第4の温度は、前記第1の触媒が前記検体ガスの燃焼を触媒する温度よりも低いが、前記第2の素子のジュール加熱が生じる温度よりも高い、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記第2の温度、前記第3の温度及び前記第4の温度が、150℃未満である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記第2の温度、前記第3の温度及び前記第4の温度が、90℃未満である、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記第2の温度が、前記第4の温度の5%以内である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記第2の温度が、前記第4の温度の2%以内である、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
検体ガスを検出するための可燃性ガスセンサであって、
第1の電気加熱素子と、前記第1の電気加熱素子上の第1の支持構造体と、前記第1の支持構造体上に支持された第1の触媒とを含む第1の素子と、第2の電気加熱素子と、前記第2の電気加熱素子上の第2の支持構造体とを備える第2の素子とを備え、
前記可燃性ガスセンサは、前記第1の素子及び前記第2の素子と電気的に接続された電子回路をさらに備え、
前記電子回路は、
前記第1の素子が、前記第1の触媒が前記検体ガスの燃焼を触媒する第1の温度で動作する第1のモード、及び、
前記第1の素子が、前記第1の触媒が前記検体ガスの燃焼を触媒する温度未満であるが、前記第1の素子のジュール加熱が生じる第2の温度で動作する第2のモード、
で動作するように構成され、
前記電子回路は、さらに、
前記第2の素子が、前記第1のモード及び前記第2のモードで周囲条件を補償するために、且つ、前記第2のモードで前記第1の素子の質量に関連付けられる変数を測定するために、前記第2の素子を動作させるように構成され、
前記変数の変化は、前記第1の素子の触媒の被毒又は阻害に関連付けられ、
前記第2の素子は、1つ以上の所定の触媒阻害組成物又は触媒被毒組成物が前記第1のモード及び前記第2のモードで前記第2の支持構造体上で酸化される温度未満で動作する、可燃性ガスセンサ。
【請求項26】
前記第2の温度及び前記第2の素子が動作する温度が、150℃未満である、請求項25に記載の可燃性ガスセンサ。
【請求項27】
前記第2の温度及び前記第2の素子が動作する温度が、90℃未満である、請求項25に記載の可燃性ガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の情報は、以下に開示される技術及びそのような技術が典型的に使用され得る状況を理解する際に、読者を助けるために提供される。本明細書において使用される用語は、本明細書で別段の明記がない限り、特定の狭義の解釈に限定されることを意図するものではない。本明細書中に記載された参考文献は、技術又はその背景の理解を容易にし得る。本明細書で引用されている全ての参考文献の開示は、参照によって組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
触媒センサ又は可燃性(引火性)ガスセンサは、例えば、可燃性ガス又は引火性ガスの爆発が原因の事故を防止するために、長年使用されている。一般的に、可燃性ガスセンサは、可燃性ガスの触媒酸化によって動作する。
【0003】
触媒可燃性ガスセンサの動作は、酸化触媒上での可燃性ガスの反応熱の電気的検出によって開始され、通常は、抵抗変化によって開始される。酸化触媒は、検体の燃焼を触媒し、典型的には300℃より高い温度で動作する(例えば、メタンの検出には350〜600℃の温度範囲)。従って、該センサは、抵抗の加熱によって検出素子が十分に加熱される必要がある。多くの可燃性ガスセンサでは、加熱素子及び検出素子は一つの同じものであり、また、抵抗の温度係数が大きく且つ目標ガス/検体ガスに関連付けられる信号が大きいプラチナ合金からなる。加熱素子は、細いワイヤの螺旋コイル又は加熱板の中に形成された平面蛇行部又は他の類似の物理的形態であってもよい。加熱される触媒は、多くの場合、耐火性の触媒基材又は支持構造体上に分散された活性金属触媒である。通常、該活性金属は、パラジウム、白金、ロジウム、銀及びこれらに類する金属のような一つ以上の貴金属であり、支持構造体は、耐火性の金属酸化物、例えば、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、シリコン、セリウム、スズ、ランタン及びこれらに類する一つ以上の酸化物を含む。支持構造体は、高表面積を有していても(すなわち、75m/gよりも大きい)、有していなくてもよい。支持構造体の前駆体及び触媒金属は、例えば、厚膜技術又はセラミックスラリー技術を用いて、ワンステップで又は別々のステップで加熱素子に付着させてもよい。例えば、触媒金属塩前駆体が加熱されて、所望の分散された活性金属、金属合金及び/又は金属酸化物に分解されてもよい。
【0004】
図1A及び図1Bに示されるように、図示されたセンサ10のような従来の可燃性ガスセンサの多くは、典型的には、耐火性(例えば、アルミナ)ビーズ30に包まれた白金加熱素子ワイヤ又はコイル20のような素子を含み、該ビーズは、活性素子又は検知素子を形成するために触媒(例えば、パラジウム又は白金)が含侵され、しばしばペレメント(pelement)40、ペリスター、検出器又は検知素子と称される。ペレメント及びこのようなペレメントを備える触媒可燃性ガスセンサの詳細な考察が、Mosely,P.T.及びTofield,B.C.編集、“Solid State Gas Sensors”、Adams Hilger Press,Bristol,England(1987)に見られる。また、可燃性ガスセンサについて、概して、Firth,J.G.et al.,“Combusion and Flame”21,303(1973)及びCullis, C.F.,and Firth, J.G.,Eds.,“Detection and Meagurement of Gases”,Heinemann,Exeter,29(1981)において、なされている。
【0005】
ビーズ30は、その出力が変化され得る触媒酸化以外の現象(すなわち、ビーズ上のエネルギー平衡を変化させる任意のもの)に反応し、それによって、可燃性ガスの濃度測定に誤差を生じさせる。これらの現象の中には、周囲の温度、湿度及び圧力の変化がある。
【0006】
センサ出力の二次的な影響の要因を最小化するために、例えば、不活性の補償素子又は補償ペレメント50が示す基準抵抗に対する検知素子又はペレメント40の抵抗の変化の観点から、可燃性ガスの酸化速度が計測されてもよい。当該2つの抵抗は、例えば、図1Cに示されるホイートストーンブリッジ回路のような測定回路の一部であってもよい。可燃性ガスが存在するときにブリッジ回路にわたって生じる出力又は電圧が、可燃性ガスの濃度測定を提供する。補償ペレメント50の特性は、典型的には、活性ペレメント又は検知ペレメント40と可能な限り密接に適合している。しかしながら、いくつかのシステムでは、補償ペレメント50は、触媒を担持していないか、又は、不活性な触媒若しくは被毒された触媒を担持している可能性がある。一般的に、周囲の条件が変化することに起因する補償素子の性質の変化は、検知素子における同様の変化を調節又は補償するために使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
触媒可燃性ガスセンサは、典型的には、長期間にわたって使用され、その期間には、検知素子等の劣化及び回路の誤動作が発生し得る。例えば、阻害物質又は被毒物質(すなわち、検知素子の触媒を阻害又は被毒する物質)のような異物又は汚染物質が、検知素子に持ち込まれ得る。阻害物質は、典型的には、時間の経過とともに「焼失」することとなるが、被毒物質は、検知素子の触媒活性を永久的に損なわせる。本明細書では、阻害物質及び被毒物質を「毒物」又は「被毒する物」と総称することがある。一般的に、可燃性ガスセンサに故意に試験ガスを適用することなく、可燃性ガスセンサのこのような異常動作状況又は状態について判断することは困難である。多くの場合、周囲の環境において、可燃性ガス検体が検出可能な濃度となるのはまれである。可燃性ガスセンサの動作状態の試験は、典型的には、センサへの試験ガス(例えば、既知の濃度の検体又は可燃性ガスセンサが同様に応答するような模擬物質を含むガス)の適用を含んでいる。しかしながら、可燃性ガスを使用した定期的な試験は、困難であり、時間がかかり且つ高価なものである。
【0008】
数十年もの間、可燃性ガスセンサの設計者は、触媒構造体の汚染及び/又は劣化の問題に困惑してきた。硫黄含有化合物(阻害物)は、触媒構造体を標的にして阻害することが知られている。一般的には、フィルタリング技術が、該構造への硫黄含有化合物の経路を塞ぐために使用されている。仮に硫黄含有化合物が構造に入り込むと、硫黄含有化合物の放出又は分解を促進するのに十分なレベルの熱が加えられるまで、硫黄含有化合物は構造体に結合する。揮発性シリコン/有機ケイ素化合物(毒物)もまた、それらが永久的に保持され、最終的には触媒の完全な不活性化をもたらすという、触媒構造体に重大な問題を引き起こすことが知られている。さらに、高レベルの炭化水素もまた、炭素のような不完全及び/又は二次的な副生成物を該構造体内に堆積させ得る。鉛化合物、有機リン酸及びハロゲン化炭化水素もまた、可燃性ガスセンサに使用される触媒を被毒し又は阻害することが知られている。
【0009】
製造業者は、検知素子並びに補償素子に支持された触媒の外側に阻害物/毒物を吸収する材料の層を付加することが可能である。しかしながら、それでもなお、相当量の阻害物/毒物への曝露によって、触媒が不活性化状態となり得る。さらに、検知素子/補償素子の質量を増加させることは、センサの出力要求を増加させるが、これは、特に、携帯型又はバッテリ電力が使用される他の可燃性ガスセンサには、望ましくないことがある。
【0010】
さらに、阻害された又は被毒した検知素子は、例えば、可燃性ガスセンサに使用される高感度ブリッジ及び他の回路によって検出されなくなる可能性がある。ユーザは、触媒センサが長期間ゼロを読み取っている(すなわち、ブリッジ回路が平衡化されている)事実を報告してきたが、これはセンサがガスの攻撃にほとんど応答していないことを表している。この効果の顕著な例は、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)のような有機ケイ素蒸気がセンサに導入されたときに生じる。HMDSは、センサハウジング内及び周囲に所構わず拡散し、検出器及び/又は補償器の表面に吸着し、酸化されてシリカ(二酸化ケイ素又はSiO)の層を形成する。両方の素子は、典型的には同様の温度で動作するため、シリコン堆積は等しい速度で生じ、ブリッジを平衡に維持する。不運なことに、これは該素子を永久的に不活性状態にする。実際、いくつかの製造業者は、可燃性ガスセンサの補償素子又は補償器を製造するために、この被毒プロセスを使用している。
【0011】
触媒検知素子における阻害/被毒を検知するいくつかの方法及びシステムが開発されているが、成功は限られたものである。最近の進歩では、例えば、リアクタンスのような触媒構造体の付加的な又は代替的な電気的特性を利用して、リアクタンスに関連付けられる1つ以上の変数を分析する方法がある。このようなシステム及び方法は、可燃性ガスセンサの素子の構造内の毒物及び阻害物の堆積を診断することはできるが、このようなシステム及び方法は、標的ガスと相互作用する検知素子の能力をさらに遮断し得る表面物質の堆積又は形成を検出することにおいて限定的な成功であることが分かっている。触媒センサ及び構造体の阻害/被毒を検出するための診断システム及び方法の開発が依然として望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一態様では、検体ガスを検出するための可燃性ガスセンサは、第1の素子を含む。前記第1の素子は、第1の電気加熱素子と、前記第1の電気加熱素子上の第1の支持構造体と、前記第1の支持構造体上に支持された第1の触媒とを含む。前記可燃性ガスセンサは、前記第1の素子と電気的に接続された電子回路をさらに含む。前記電子回路は、前記第1の素子が、前記第1の触媒が前記検体ガスの燃焼を触媒する第1の温度にて動作する第1のモード、及び、前記第1の素子が、前記第1の触媒が前記検体ガスの燃焼を触媒する温度未満であるが、前記第1の素子のジュール加熱が生じる第2の温度で動作する第2のモードで動作するように構成されている。前記電子回路は、前記第2のモードで前記第1の素子の質量に関連付けられる変数を測定するようにさらに構成されており、前記変数の変化は、前記第1の素子の触媒の被毒又は阻害及び前記可燃性ガスセンサの動作状態に関連付けられ得る(又は前記第1の素子の触媒の被毒又は阻害の指標として定義される)。この点に関し、素子の質量変化が生じたか否かを示すために予め決定された応答の変化について1つ以上の閾値が確立されてもよい。一つ以上のこのような閾値を超過した応答は、被毒/阻害が生じたことを示すために予め定義されてもよい。
【0013】
前記可燃性ガスセンサは、第2の電気加熱素子と、前記第2の電気加熱素子上の第2の支持構造体とを含む第2の素子をさらに含んでいてもよい。前記電子回路は、前記第2の素子と電気的に接続されていてもよく、且つ、前記第1の触媒が前記第1のモードで前記検体ガスの燃焼を触媒する温度よりも低い第3の温度で前記第2の素子を動作させ、且つ、前記第1の触媒が前記第2のモードで前記検体ガスの燃焼を触媒する温度よりも低い第4の温度で前記第2の素子を動作させるように構成されていてもよい。前記電子回路は、周囲条件を補償するように、前記第1のモード及び前記第2のモードにおける前記第2の素子を動作させるように、さらに構成されてもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記第2の温度、前記第3の温度及び前記第4の温度は、1つ以上の所定の触媒阻害組成物又は触媒被毒組成物が前記第1の支持構造体及び前記第2の支持構造体上で酸化される温度よりも低い。多くの実施形態では、前記第4の温度は、前記第1の触媒が前記検体ガスの燃焼を触媒する温度未満であるが、前記第2の素子のジュール加熱が生じる温度よりも高い。前記第2の温度、前記第3の温度及び前記第4の温度は、例えば、150℃未満又は90℃未満であってもよい。多くの実施形態では、前記第2の温度は、前記第4の温度の5%以内又は前記第4の温度の2%以内である。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記変数は、電圧、電流又は抵抗からなる群より選択される。多くの実施形態では、前記変数は抵抗である。
【0016】
前記第1の支持構造体及び前記第2の支持構造体は、例えば、独立して、多孔質の電気絶縁材料を含んでいてもよい。前記支持構造体は、例えば、多孔質耐火材を含んでいてもよい。
【0017】
前記可燃性ガスセンサは、前記電子回路と通信接続する制御システムをさらに含んでいてもよい。多くの実施形態では、前記制御システムは、測定された前記変数の変化に基づいて、前記可燃性ガスセンサの出力を変化させるように構成されている。いくつかの実施形態では、前記制御システムは、測定された前記変数の変化に基づいて、少なくとも前記第1の素子の動作状態に関してユーザに情報を提供するように構成されている。また、前記制御システムは、測定された前記変数の変化に応じて、前記第1の素子の温度を上昇させ、異物を焼失させるよう試みるように、さらに構成されてもよい。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記第2の素子は、前記第2の支持構造体上に支持された第2の触媒をさらに含み、且つ、前記電子回路は、前記第2の素子が、前記第2の触媒が前記検体ガスの燃焼を触媒する第5の温度で動作する第3のモード、及び、前記第2の素子が、前記第2の触媒が前記検体ガスの燃焼を触媒する温度未満であり、且つ、1つ以上の所定の触媒阻害組成物又は触媒被毒組成物が前記第2の支持構造体上で酸化されるが、前記第2の素子のジュール加熱が生じる温度未満である第6の温度で動作する第4のモードで動作するようにさらに、構成されている。前記電子回路は、前記第3のモードで前記第2の素子の質量に関連付けられる第2の変数を測定するようにさらに構成されてもよく、前記第2の変数の変化は、前記第2の素子の触媒の被毒又は阻害に関連付けられ得る。
【0019】
前記電子回路は、例えば、前記第1の触媒が前記検体ガスの燃焼を触媒する温度よりも低く、且つ、1つ以上の所定の触媒阻害組成物又は触媒被毒組成物が前記第3のモードで前記第1の支持構造体上で酸化される温度未満である第7の温度で前記第1の素子を動作させるように構成されるとともに、前記第1の触媒が前記第4のモードで前記検体ガスの燃焼を触媒するが、前記第1の素子のジュール加熱が生じる温度よりも低い第8の温度で前記第1の素子を動作させるように、さらに構成されてもよい。前記電子回路は、周囲条件を補償するように、前記第1の素子を前記第3のモード及び前記第4のモードで動作させるようにさらに構成されてもよい。
【0020】
別の態様では、検体ガスを検出するための可燃性ガスセンサを動作させる方法であって、前記可燃性ガスセンサは、第1の素子を含み、前記第1の素子は、第1の電気加熱素子と、前記第1の電気加熱素子上の第1の支持構造体と、前記第1の支持構造体上に支持された第1の触媒と、前記第1の素子と電気的に接続された電子回路とを含み、前記方法は、前記第1の素子が、前記第1の触媒が前記検体ガスの燃焼を触媒する第1の温度で動作する第1のモードで前記電子回路を動作させること、前記第1の素子が、前記第1の触媒が前記検体ガスの燃焼を触媒する温度未満であるが、前記第1の素子のジュール加熱が生じる第2の温度で動作する第2のモードで前記電子回路を動作させること、及び、前記第2のモードで前記電子回路によって前記第1の素子の質量に関連付けられる変数を測定すること、を備え、前記変数の変化が、前記第1の素子の前記触媒の被毒又は阻害に関連付けられ得る、方法である。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記可燃性ガスセンサは、第2の電気加熱素子と、第2の電気加熱素子上の第2の支持構造体とを含む第2の素子をさらに含んでいる。前記方法は、さらに、前記第1の触媒が前記電子回路を介して前記第1のモードで前記検体ガスの燃焼を触媒する温度よりも低い第3の温度で前記第2の素子を動作させること、前記第1の触媒が前記電子回路を介して前記第2のモードで前記検体ガスの燃焼を触媒する温度より低い第4の温度で前記第2の素子を動作させることを含んでもよい。前記電子回路は、例えば、周囲条件を補償するように、前記第1のモード及び前記第2のモードで前記第2の素子を動作させてもよい。
【0022】
いくつかの実施態様では、前記第2の温度、前記第3の温度及び前記第4の温度は、触媒阻害組成物又は触媒被毒組成物が前記支持構造体上で酸化される温度よりも低い。前記第4の温度は、例えば、前記第1の触媒が前記検体ガスの燃焼を触媒する温度よりも低いが、前記第2の素子のジュール加熱が生じる温度よりも高くてもよい。いくつかの実施形態では、前記第2の温度、前記第3の温度及び前記第4の温度は、150℃未満又は90℃未満である。前記第2の温度は、例えば、前記第4の温度の5%以内又は前記第4の温度の2%以内であってもよい。
【0023】
さらなる態様では、検体ガスを検出するための可燃性ガスセンサは、第1の素子を含んでいる。前記第1の素子は、第1の電気加熱素子と、前記第1の電気加熱素子上の第1の支持構造体と、前記第1の支持構造体上に支持された第1の触媒と、第2の電気加熱素子と、前記第2の電気加熱素子上の第2の支持構造体とを含む第2の素子とを含む。前記可燃性ガスセンサは、前記第1の素子及び前記第2の素子に電気的に接続された電子回路をさらに含む。前記電子回路は、前記第1の素子が、前記第1の触媒が前記検体ガスの燃焼を触媒する第1の温度で動作する第1のモード、及び、前記第1の素子が、前記第1の触媒が前記検体ガスの燃焼を触媒する温度未満であるが、前記第1の素子のジュール加熱が生じる第2の温度で動作する第2のモードで、動作するように構成されている。前記電子回路は、前記第1のモード及び前記第2のモードで周囲条件を補償するために、且つ、前記第2のモードで前記第1の素子の質量に関連付けられる変数を測定するために、前記第2の素子を動作させるように、さらに構成される。前記変数の変化は、前記第1の素子の触媒の被毒又は阻害に関連付けられ得る。前記第2の素子は、1つ以上の所定の触媒阻害組成物又は触媒被毒組成物が前記第1のモード及び前記第2のモードで前記第2の支持構造体上で酸化される温度未満で動作する。前記第2の温度及び前記第2の素子が動作する温度は、例えば、150℃未満又は90℃未満であってもよい。
【0024】
本装置、システム及び方法並びにこれらに付随する属性及び利点は、添付の図面を併せた以下の詳細な説明において、最もよく解釈され理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1A図1Aは、現状利用可能な可燃性ガスセンサの一実施形態を示す図である。
【0026】
図1B図1Bは、図1Aにおける可燃性ガスセンサの活性検知素子、ペレメント又は検出器の拡大図である。
【0027】
図1C図1Cは、図1Aにおける可燃性ガスセンサの回路の一実施形態を示す図である。
【0028】
図2図2は、白金合金の加熱素子ワイヤ又はコイルなどの一実施形態又は素子を示し、DC電圧の適用に関連した応答を示す。
【0029】
図3A図3Aは、検知素子が支持ワイヤによって支持された検出器アセンブリの一実施形態の斜視図を示す。
【0030】
図3B図3Bは、検知素子ワイヤにわたって形成された(触媒が支持された)セラミックビーズを含む、図3Aにおける検出器アセンブリの斜視図を示す。
【0031】
図3C図3Cは、図3Aにおける検出器アセンブリの別の斜視図(図3Bの概ね反対側の斜視図)を示す。
【0032】
図3D図3Dは、(概略的に示された)制御回路及び測定回路と電気的に接続された図3Bにおける2つの検出器アセンブリを含む可燃性ガスセンサを示す。
【0033】
図4図4は、白金合金の加熱素子ワイヤ又はコイルへの耐火性材料の質量負荷の効果と、DC電圧の印加に関連した応答とを示す。
【0034】
図5図5は、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)のライトオフ曲線を示す。
【0035】
図6A図6Aは、素子がブリッジ回路内で接続された、本明細書で使用される電子回路の一実施形態の代表的な回路図を示す。
【0036】
図6B図6Bは、複数の素子(すなわち、検知素子及び補償素子)の独立した制御のための本明細書の電子回路の別の実施形態を示す。
【0037】
図7図7は、第1のモード又はガス検出モード及び第2のモード又は比較モードにおける、図6Aにおける電子回路の15ppmのHMDSの適用に対する応答を示す。
【0038】
図8図8は、第1のモード又はガス検出モード及び第2のモード又は比較モードにおける、図6Aにおける電子回路の15ppmのHMDSの長期間の適用に対する応答を示す。
【0039】
図9図9は、本明細書のセンサを動作させる方法の代表的な実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
実施形態の構成要素は、本明細書の図に一般的に記載され、図示されているような、説明された例示的な実施形態に加えて、種々の異なる構成に配置され、設計されてもよいことが容易に理解されるであろう。従って、以下の例示的な実施形態のより詳細な説明は、図に示されているように、請求されているように、実施形態の範囲を限定することを意図するものではなく、単に例示的な実施形態を代表するものである。
【0041】
本明細書を通して「一実施形態」又は「ある実施形態」(又は類するもの)への言及は、実施形態に関連して記載された特定の特徴、構造又は特性が少なくとも一実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書中の様々な箇所における「一実施形態において」又は「ある実施形態において」などの語句の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態を参照しているものではない。
【0042】
さらに、記載された特徴、構造又は特性は、1つ以上の実施形態において、任意の適切な方法で組み合わせられてもよい。以下の説明では、実施形態の完全な理解を与えるために、多数の特定の詳細が提供される。しかしながら、当業者であれば、種々の実施形態は、1つ以上の特定の詳細を用いることなく、又は、他の方法、構成、材料等を用いて実施することができることを理解するであろう。他の例では、周知の構造、材料又は動作は、不明瞭化を避けるために詳細に示されておらず又は説明されていない。
【0043】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される、単数形の「a」、「an」及び「the」は、文脈が別段の明示をしない限り、複数形の参照を含む。従って、例えば、「検知素子」への言及は、当業者に知られている複数のそのような検知素子及びその等価物などを含み、「検知素子」への言及は、当業者に知られているそのような検知素子及びその等価物の1つ以上への言及である。
【0044】
本明細書で使用される用語「電子回路」、「回路素子」又は「回路」は、機能又は動作を実行するためのハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア又はそれぞれの組み合わせを含むが、これらに限定されるものではない。例えば、所望の特徴又は必要性に基づいて、回路は、ソフトウェア制御マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)のような個別論理、又は他のプログラムされた論理デバイスを含んでいてもよい。回路は、ソフトウェアとして完全に具体化されていてもよい。本明細書で使用される「回路」は、「論理」と同義であると考えられる。本明細書で使用される「論理」という用語は、機能若しくは動作を実行するか、又は、別の構成要素から機能若しくは動作を引き起こすための、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア若しくはそれぞれの組み合わせを含んでいるが、これらに限定されるものではない。例えば、所望の用途又は必要性に基づいて、論理は、ソフトウェア制御マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)のような個別論理、又は他のプログラムされた論理デバイスを含んでいてもよい。また、論理は、ソフトウェアとして完全に具現化されていてもよい。
【0045】
本明細書で使用される用語「プロセッサ」は、任意の組み合わせで、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、中央処理装置(CPU)及びデジタル信号プロセッサ(DSP)のような、実質的に任意の数のプロセッサシステム又はスタンドアローンプロセッサの1つ以上を含むが、これらに限定されない。プロセッサは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、消去可能プログラマブルリードオンリーメモリ(EPROM)、クロック、デコーダ、メモリコントローラ、又は割り込みコントローラ等、プロセッサの動作をサポートする種々の他の回路と関連付けられてもよい。これらのサポート回路は、プロセッサ又はその関連する電子パッケージングの内部にあってもよく外部にあってもよい。サポート回路は、プロセッサと動作的に通信する。サポート回路は、ブロック図又は他の図面において、必ずしもプロセッサから分離して示されていない。
【0046】
本明細書で使用される用語「ソフトウェア」は、コンピュータ又は他の電子デバイスに所望の方法で機能、動作又は作用を実行させる1つ以上のコンピュータ読取り可能な命令又は実行可能な命令を含むが、これらに限定されない。命令は、ルーチン、アルゴリズム、モジュール、又は、動的にリンクされたライブラリからの別個のアプリケーション又はコードを含むプログラムのような種々の形態で具体化されてもよい。ソフトウェアはまた、スタンドアロンプログラム、ファンクションコール、サーブレット、アプレット、メモリに格納された命令、オペレーティングシステムの一部、又は、他のタイプの実行可能な命令のような種々の形態で実装されてもよい。ソフトウェアの形態は、例えば、所望のアプリケーションの要件、それが実行される環境、又はデザイナ/プログラマの要求等に依存することが当業者には理解されるであろう。
【0047】
本明細書の多くの実施形態では、触媒構造体(例えば、可燃性ガスセンサ内の検知素子)の正常な状態又は動作状態を決定する装置、システム及び方法としては、センサへの検体(又は標的)ガス、その模擬物質(すなわち、試験ガスの適用が必要でない)、又は任意の他のガスの使用又は適用を必要としないものが記載されている。本明細書の触媒構造体又は素子は、概して、加熱素子(典型的には、導電素子)、該加熱素子上に配置された絶縁性支持構造体、及び、該支持構造体上に配置された触媒を含んでいる。
【0048】
本明細書に記載の多くの代表的な検討では、比較方法又は比較測定が判断されている。当業者は、素子の質量変化に関連付けられる素子(例えば、可燃性ガス検知素子)の熱的特性の変化に関連付けられる、又は関連付けられ得る多くの異なる変数が使用可能であることを理解する。そのような変数の変化は、例えば、検知素子の触媒構造体上の汚染物質の存在から生じる質量変化の指標に関連付けられ、且つ/又は、検体の検知素子の感度に関連付けられる。多くの実施形態では、素子の抵抗のような電気的特性の変化がモニタされる。電圧、電流又は抵抗のような変数は、例えば、センサの電気回路が制御される方法に応じて測定されてもよい。例えば、電子回路の電圧又は電流が測定され、素子の抵抗の変化に関連付けられ得る。あるいは、センサの電子回路が駆動されて、素子の抵抗が比較的一定に維持され、電圧又は電流が測定されてもよい。
【0049】
図2は、一定の温度において、増加する直流電圧を印加することに関連付けられる、白金の加熱素子ワイヤ又はコイル20のような素子の応答を示している。低電圧(図示例では0V〜0.25V)の印加中、素子の抵抗は変化しない。この電圧範囲では、抵抗変化は主に周囲の温度変動によって支配される。この方式で使用される原理は周知であり、例えば抵抗温度計に使用されている。この点に関し、白金抵抗温度計は、約−200℃から+1000℃の範囲の温度測定に汎用的な計器である。例えば、温度依存抵抗を決定するための、次のような簡略化されたCallendar−Van Dusen方程式が使用されてもよい。
=R[1+α(t−t)]
ここで、Rは温度tにおける素子の抵抗、Rは標準温度tにおける抵抗、αは抵抗の温度係数である。上記の原理は、例えば、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第8,826,721号に記載されているように、活性触媒を含むセンサ素子が補償素子又は補償器として機能することができる低電力(電圧)モードでセンサ素子が動作させるのに使用されてもよい。
【0050】
再び図2を参照すると、より高い電圧(図2の代表的な例では>0.5V)の印加は、ワイヤの温度を上昇させ、その結果抵抗を増加させることとなる。この効果は、ジュールの第一法則又はジュール−レンツの法則として知られている。ジュール加熱は、オーム加熱又は抵抗加熱としても知られ、導体を通る電流の通過が熱を放出するプロセスである。触媒支持構造体を含む検知素子の場合、加熱素子/ワイヤからの熱伝達は、熱が加熱素子から検知素子の支持構造体(例えば、耐火支持構造体及びそれに支持された触媒を含む)へ、次いで周囲のガスを通した流体の対流を介して伝導するようにして、最終的には平衡に達することとなる。熱平衡は、(a)周囲温度が変化するまで、(b)周囲のガス混合物の組成が変化するまで、又は(c)ワイヤと素子の質量との間の熱伝達が変化するまで(質量又は密度の変化の結果として)、バランスを保つこととなる。これらの影響は、すべて競合し且つ相互作用する影響である。
【0051】
可燃性ガスセンサの場合、図1Bにおける加熱素子20のような加熱素子(例えば、導電性ワイヤ、コイル又は表面)が、(支持構造体及び触媒を含む)素子の構造体を、検体ガス又は標的ガスの触媒反応を促進するための温度にまで十分に上昇させるために使用される。本明細書の素子(すなわち、検知素子又は補償素子)に関して本明細書で使用されるように、温度は、素子の体積全体における平均温度を意味する。加熱素子は、概して、コイルから作製されており、素子の電力消費を低減するために、長きにわたって小径のワイヤが使用されている。
【0052】
可燃性ガスセンサの素子において比較的小さな直径を有するワイヤのような導電素子を使用することは、例えば、米国特許第8,826,721号に開示されている。この点に関し、図3A〜3Cは、例えば、図1Aに示されるようなガスセンサに使用され得る検出器/素子アセンブリ110の代表的な実施形態を示す。素子アセンブリ110は、2つの導電性接触部材130(図示の実施形態では延在部材又は支柱)が取り付けられたベース120を含む。検知導電素子140は、接触部材130の間に連結され、導電素子140の各端部は、接触部材130のうちの1つに連結され、又は、固定されている。図示の実施形態では、導電素子140は、例えば、導電素子140の端部の間のほぼ中央に配置され得るコイル状部142を含む中間部分を含む。加熱素子のワイヤ及び/又は他の導電素子は、検知の用途に好適な温度係数を有するように選択され、一般的には貴金属又は合金である。
【0053】
素子アセンブリ110は、ベース120に連結された2つの支持部材150(図示の実施形態では延在部材又は支柱)をさらに含む。図示された実施形態では、例えばワイヤ、リボン、ロッドあるいは他の適切な支持構造体又は材料の形態の支持部材又は素子160が、支持部材又は支柱150の間に延在している。ベース120、接触部材130及び支持部材150は、例えば、ペンシルベニア州リーディングのCarpenter Technology Corporationから入手可能なKOVAR(登録商標、ホウケイ酸ガラスの熱膨張特性に適合するように設計されたニッケル−コバルト鉄合金)のような金属で形成されている。接触部材130及び支持部材150は、例えば、ホウケイ酸ガラスのようなガラスが用いられるベース120にシールされ、電気的絶縁が提供され得る。
【0054】
各端部に固定、連結又は取り付けられた(例えば、2つの支持部材又は支柱150に固定された)強力ではあるが比較的薄い支持素子160を使用することは、熱損失を制限しつつ、三次元全てにおいてビーズが移動することを防止する。図3A図3Cに図示の実施形態では、支持素子160は、コイル状部142のコイルのうちの1つを通過して接触している。従って、支持素子150と導電素子140との間の接触は、最小である。以下に説明されるように、支持素子150は、導電素子140の支持を提供するために導電素子140と接触している必要はないが、導電素子140を包含する触媒支持部材又は構造体170と接触していてもよく又は通過していてもよい。
【0055】
支持素子150の効果的な結果が達成されるために、バランスは、例えば、引張強度と熱伝導率との間で確立されてもよい。一般的に、単位がポンド/平方インチのpsiである引張強度を、単位がワット/cm/℃である熱伝導率で除して算出した商又は比は、例えば、少なくとも250,000、少なくとも400,000又は少なくとも500,000でもよい。例えば、いくつかの検討では、白金とタングステンとの合金から作製されたワイヤの形態の支持素子は、引張強度250,000psi及び熱伝導率0.5ワット/cm/℃を有するので、500,000の商が得られる。より高い引張強度を有する支持素子については、より小さな平均直径(又は平均断面積)の支持素子が使用可能であるため(質量が小さくなる結果、検知素子から離れて熱が伝導する)、より高い熱伝導率が許容され得る。さらに、素子の大きさ/体積が小さくされることにより、周囲の湿度及びセンサの圧力変化の影響が低減される。例えば、引張強度600,000psi及び熱伝導率1.27ワット/cm/℃を有するタングステン支持素子の場合、より小さい平均直径の支持素子が使用可能であり、それによって、上述の白金−タングステン合金支持素子で達成されたのと同様の結果が達成される。あるいは、より大きな平均直径を有する20%イリジウムを含む白金合金の支持素子の選択も可能である。このような白金−イリジウム合金は、120,000psiの引張強度及び0.18ワット/cm/℃の熱伝導率を有している。上述の特性を有する金属支持素子又は金属合金素子は、熱損失を最小にしつつ強度/支持を最大にするために使用され得る。
【0056】
この点に関し、いくつかの実施形態では、支持素子160は、比較的高い強度(例えば、少なくとも100,000psi、少なくとも250,000psiであってもよく又は少なくとも400,000psiでもよい引張強度を有する)及び低い熱伝導率(例えば、1.5ワット/cm/℃未満、0.5ワット/cm/℃未満、0.25ワット/cm/℃未満又は0.10ワット/cm/℃未満)を有し、上述の商を提供する。多くの実施形態では、支持素子160(略円形の断面の支持素子の場合)の平均直径は、約0.0005(12.7μm)〜0.0025インチ(63.5μm)の範囲である。非円形断面を有する支持素子の場合、平均断面積は、例えば、約0.0005〜0.0025インチの範囲の平均直径を有する略円形断面の素子の平均断面積の範囲内にあり得る。本明細書での特定の平均直径を有する素子についての言及は、概略非円形断面を有するものの、先述の平均直径によって提供される平均断面積と等しい平均断面積を有する素子についての言及でもある。いくつかの代表的な検討では、インモールドワイヤが支持素子160として使用された。いくつかのそのような実施形態では、平均直径が約(すなわち、10%以内)0.001インチ(63.5μm)の白金−タングステン合金支持素子160が、強固な支持を提供し、検知素子140を動作させるために要求される測定可能な追加的な電力は生じなかった。例えば、タングステン、ニッケル、モリブデン又はチタンと、例えば、白金、パラジウム又はロジウムとの合金が、支持素子160に使用され得る。
【0057】
図3Bに示されるように、触媒支持構造体170(例えば、多くの実施形態では、セラミックビーズ)は、触媒を支持し且つ検知素子/ペレメントを形成するために、検知導電素子140のコイル部120上に形成され得る。セラミックビーズのような耐火性材料としての触媒支持構造体170の形成では、酸化アルミニウムの懸濁液が、例えば、コイル状部分142上に焼成されてもよい。得られた触媒支持構造体/セラミックビーズ170は、触媒が含浸されてもよい。可燃性ガスセンサの特定の実施形態では、触媒材料(例えば、白金)を含む裸のワイヤが検知素子として使用され得るが、触媒支持構造体170(例えば、セラミックビーズ)は、1つ以上の触媒種の表面積を増大させることを提供する。
【0058】
図3A〜3Cに示される実施形態では、触媒支持構造体170は、導電素子140及び支持素子160にわたって(覆うように)形成されている。多くの実施形態では、支持素子160は、導電素子140への支持を提供するために導電素子140と接触している必要はない。例えば、支持素子160は、導電素子140と接触せずに、触媒支持構造体170を通過し又は接触可能であり、導電素子140への支持を間接的に提供する。三次元の導電素子140への支持を提供するために、支持素子160は、好ましくは触媒支持構造体170を通過している。
【0059】
例えば、支持部材150及び支持素子160を含む支持アセンブリは、比較的小さな平均直径を有する検知素子140の使用を可能にする。例えば、10μmの、約20μm以下の平均直径を有する、配線が使用されてもよい。(より大きな直径のワイヤよりも、対応する単位長さ当たりの抵抗が大きい)このような小さな平均直径のワイヤは、必要な動作電流を低減し(携帯用途では非常に望ましい)、従って必要な電力レベルを低減するのに適している。
【0060】
多くの実施形態では、本明細書の支持部材又は触媒支持部材は、直径500μmを有する球体より小さい体積(球体の体積は、式4/3×π×(D/2)によって計算される。すなわち、6.5×107μm未満である)を有する。第1の触媒支持部材は、440μm以下(すなわち、4.46×107μm未満)の直径、又は300μm以下(すなわち、1.4×107μm未満)の直径を有する球体以下の体積を有し得る。
【0061】
図3Dに示されるようなセンサ又はセンサアセンブリ200は、2つの素子/検出器アセンブリ110(第1の素子)及び110a(第2の素子;図3Dでは、第2の素子110aの素子は、第1の素子110の要素と同様の符号が付され、それに「a」という呼称が付加される)を含むように作製されてもよい。電子回路300は、素子アセンブリ110の各々の接触支柱130及び130aと電気的に接続されるように配置されてもよい。施設内のある位置に固定されたセンサの場合、電力は、遠隔電源から供給されてもよい。上述のように、携帯型センサの場合、電源304は、1つ以上のバッテリを含んでいてもよい。上述したように、センサシステムは、制御システム306をさらに含んでいてもよく、制御システム306は、例えば、制御回路及び/又は1つ以上のプロセッサ310(例えば、マイクロプロセッサ)、及び、プロセッサ310と通信接続する関連メモリシステム320を含んでいてもよい。
【0062】
図4は、加熱素子/ワイヤの抵抗への質量負荷の影響を示す。この点に関して、図4は、裸のコイルワイヤと、耐火性材料の前駆体の溶液への3回の浸漬の適用によって耐火性支持体が形成された後のコイルワイヤと、耐火性材料の4回の浸漬の適用によって耐火性支持体が形成された後のコイルワイヤとの間の差を示す。当該技術分野で知られているように、ワイヤ又はワイヤコイルの形態の加熱素子は、耐火性材料の前駆体の水溶液に浸漬される。次いで、該前駆体は、加熱によって(例えば、加熱素子を通る電気的な電流の通過によって)耐火性材料に変質され得る。浸漬プロセスは、通常、加熱素子の周囲に所望の大きさ/平均直径の支持構造体を形成するために繰り返される。次いで、触媒の溶液又は分散液が、支持構造体の外表面に塗布されてもよい。(前駆体材料内の浸漬回数の増加によって)支持構造体の質量が増加するにつれて、加熱素子(ワイヤ又はコイル)の抵抗は、任意の与えられた印加電圧(すなわち、図4におけるY軸に平行に引かれた任意の線)に対する質量の関数として低下する。阻害物又は毒物の支持構造体上への付着の結果としての質量負荷もまた、抵抗の低下をもたらす。
【0063】
上述のように、触媒可燃性ガスセンサの動作は、酸化触媒上での可燃性ガスの反応熱の電気的検出(例えば、ホイートストーンブリッジを介した抵抗変化を通して)によって開始され得る。酸化触媒は、例えば、メタン検出のために350〜600℃の温度範囲で動作してもよい。一般的な炭化水素の中でメタンは燃焼に最も高い温度を必要とし、水素は低い温度を必要とし、メタンより大きいアルカンに関してはこれらの間の温度に収まり、より長鎖のアルカンはより低いライトオフ温度を必要とし、より短鎖のアルカンはより高いライトオフ温度を必要とする。
【0064】
本明細書の多くの可燃性ガスセンサにおける活性素子又は検知素子は、例えば、特定の動作モードの間、概して一定の電圧、一定の電流又は一定の抵抗(これにより一定の温度)で動作されてもよい。本明細書の可燃性ガスセンサの多くの実施形態では、可燃性ガスセンサの電子回路は、第1の素子が、第1の触媒が検体ガスの燃焼を触媒する温度(例えば、メタンでは300℃を超える温度)まで加熱され、又は、第1の素子がその温度で動作する、第1のモードで動作する。第2のモードでは、電子回路は、第1の温度よりも低い第2の温度まで検知素子を加熱するように動作する。第2の温度は、第1の触媒が検体ガスの燃焼を触媒する温度より低いが、第1の素子のジュール加熱が生じる温度以上である。また、第2の温度は、センサによって試験される環境内に存在し得る他の可燃性ガスのライトオフ温度未満であってもよい。また、第2の温度は、典型的には、予め決定され得る既定の1つ以上の阻害物及び/又は毒物(例えば、周囲環境に存在し得る(複数の)阻害物又は(複数の)毒物)が、第1の素子の支持構造体上又は支持構造体の内部に堆積し/酸化される温度よりも低い。繰り返すが、質量の変化が抵抗に影響を与えるために(例えば、図4を参照)、第2の温度は、ジュール加熱が生じる温度(例えば、図2の傾斜部分を参照)以上である。
【0065】
電子回路は、第2のモードで第1の素子の質量に関連付けられる変数を測定する。前記変数は、経時的に(すなわち、第1のモードと第2のモードとの間の複数のサイクルを通じて)測定され、経時的な変数の変化が、該変数の変化を第1の素子の質量変化に関連付けるために分析される。質量変化は、第1の素子の触媒における毒物又は阻害物の堆積の指標である。例えば、第2の素子の電圧、電流又は抵抗が、(システムは第2のモードで電圧、電流及び/又は抵抗を制御するために駆動される方法に応じて)測定され得る。
【0066】
上述のように、第1の素子は、第1のモード及び/又は第2のモードにおける出力を変化させ得る種々の周囲条件の変化(すなわち、第1の素子のエネルギー平衡を変化させるもの)に反応する。従って、周囲条件の経時的変化は、第1のモード及び/又は第2のモード又は動作における電子回路による誤差測定を生じさせ得る。測定に影響する周囲条件の変化は、周囲温度、湿度、及び/又は圧力の変化を含む。
【0067】
検知素子の大きさ/質量の低減は、そのような周囲の現象の影響を低減し得る。しかしながら、多くの実施形態では、補償が、電子回路によって行われる測定における周囲条件の変化について、行われてもよい。このような1つ以上の周囲条件が測定され、1つ以上のアルゴリズムが実行されてもよく、それによって電子回路により測定が補正される。また、周囲条件の変化を効果的に補償するために、第2の素子又は補償素子が使用されてもよい。
【0068】
多くの実施形態では、上述の動作の第1のモードの間、第2の素子又は補償素子は、第1の触媒が検体ガスの燃焼を触媒する温度未満である第3の温度(すなわち、検体ガスの燃焼を触媒することについて触媒が実質的に又は完全に不活性である温度)で動作する。また、第3の温度は、センサによって試験される環境内に存在し得る他の可燃性ガスのライトオフ温度未満であってもよい。また、第3の温度は、第2の素子の支持構造体上又は支持構造体内部に1つ以上の阻害物及び/又は毒物が堆積し/酸化され得る温度未満(すなわち、そのような阻害物及び/又は毒物の存在下で第2の素子に質量が加えられる温度未満)であってもよい。第3の温度は、例えば、周囲温度であってもよく、又は、第2の素子で抵抗変化/ジュール加熱が生じるよりも低い電力入力に関連付けられる別の温度であってもよい。第2の素子は、例えば、その支持構造体上に触媒を含んでいなくてもよく、その支持構造体上に不活性/被毒触媒を含んでいてもよく、その支持構造体上に触媒を含まないが堆積した毒物を含んでいてもよく、又はその支持構造体上に活性触媒を含んでいてもよい。多くの実施形態では、第2の素子は、当該技術分野で公知のように、第1の素子と構造において密接に適合している。第1のモードでは、第1の素子は検知素子として動作し、第2の素子は補償素子として動作する。
【0069】
上述の第2のモードでは、第2の素子は、第1の触媒が検体ガスの燃焼を触媒する温度より低い第4の温度で動作する。第4の温度はまた、阻害物及び/又は毒物が第1の素子の支持構造体上又は支持構造体内部に堆積し/酸化される温度よりも低い。第4の温度は、例えば、周囲温度であってもよく、又は、第2の素子において抵抗変化/ジュール加熱が生じるよりも低い電力入力に関連する別の温度であってもよい。いくつかの実施形態では、第4の温度は、第2の素子のジュール加熱が生じる温度である。いくつかの実施態様では、第2の温度及び第4の温度は、等しい又は実質的に等しい(すなわち、5%以下、2%以下又は1%以下で異なる)。第2の温度と第4の温度とが等しく又は実質的に等しくされることによって、周囲温度変化、相対湿度の変化などの影響が、本明細書の測定において低減され又は最小化され得、補償が単純化される。電子回路は、第2のモードで第1の素子の質量に関連付けられる変数を測定するように適合され又は動作可能である。
【0070】
多くの実施形態では、本明細書の素子は、補償素子又は補償器素子として動作するが、その素子の動作温度は、毒物又は阻害物が素子上に堆積し/酸化される温度を超えない。補償素子が、毒物又は阻害物がセンサシステム内の素子上に堆積し/酸化される温度を超えて加熱されるときに、特に、補償素子が、ほぼ検知素子の動作温度(すなわち、検体の触媒燃焼が生じる温度)まで加熱されると、両方の素子が被毒又は阻害され得る。両方の素子が被毒又は阻害された場合、これらの素子は出力において測定可能な差をほとんど生じさせなくなる。
【0071】
一般的に、毒物及び/又は阻害物は、特定の最低温度(時には「ライトオフ」温度と呼ばれる)で、素子の表面上(例えば、素子の支持構造体上)で酸化される。HMDSは、一般的な毒物であり、比較的低いライトオフ温度を有している。HMDSのライトオフ曲線が図5に示されており、150℃を超えるライトオフ温度が示されている。多くの実施形態では、補償素子として動作する場合、本明細書の第2の素子又は他の素子の第3の温度及び第4の温度は、150℃未満又は90℃未満である。多くの実施形態では、第3の温度は、ほぼ周囲温度である。多くの実施形態では、質量変化のための試験が第2のモードで動作されるとき、第1の素子又は他の素子の第2の温度は、150℃未満又は90℃未満である。
【0072】
図6Aは、概して、周囲の温度及び周囲のガス組成物の構成の影響を除外しつつ、検知素子上の質量負荷の評価のための上述した第1のモード及び第2のモードでの動作を可能にする電子回路の実施形態を示す。繰り返すが、質量負荷は、内部又は表面上のいずれかに検知構造に付着/堆積する毒物又は阻害物の形態をとり得る。
【0073】
図6Aの回路構成では、第1の素子又は検出器D1は典型的な検知素子として作用し、第2の素子又は検出器D2は補償素子として作用する。スイッチSW1及びSW2が閉じられると、ブリッジ回路は、標準的なペリスタ構成とほぼ同じように動作する。この構成では、補償素子D2にわたって約100mV、検知素子D1にわたって約2.4Vとなる。このモードは、上述の第1のモード又は「ガス検知モード」と呼ばれる。スイッチSW1及びSW2が開いている場合、ブリッジ回路は、上述の第2のモード又は「比較モード」で動作する。第2のモード又は比較モードでは、各素子D1及びD2にわたって約1.25Vとなり、これが2つの3.9kΩの抵抗器に対して比較される。これら2つの出力は、例えば、ブリッジ回路にわたる電圧の差を調べるために差動増幅回路に送られてもよい。
【0074】
図6Aの回路構成では、スイッチSW1及びSW2が閉じた状態で、第2の素子D2が非加熱補償素子として作用する。周囲温度(又は阻害物/毒物が付着/堆積するよりも低い他の温度)での動作は、第2の素子D2が触媒的に活性になること(たとえ活性触媒が第2の素子上に支持されていたとしても)及び上述のように被毒又は阻害されることを防止する。第1の素子D1は、高温検知素子として機能し、高温検知素子は、第1の素子D1を触媒の被毒又は阻害に曝す。スイッチSW1及びSW2が開かれ、回路が第2のモード又は比較モードであるとき、第1の素子D1及び第2の素子D2は、それぞれの質量に関連付けられる熱平衡に達することとなる。図6Aの実施形態では、比較モードの間、第1の素子D1及び第2の素子D2のそれぞれは、等しいか又は実質的に等しい温度(すなわち、ジュール加熱範囲の温度)で動作し得、従って、等しいか又は実質的に等しい様式で周囲条件に応答することとなる。活性/検知第1の素子D1の質量が増加した場合、以前の問合せと比較して低い抵抗を有することとなり、従って、ブリッジの平衡に変化を生じさせる。
【0075】
比較評価は、任意の印加電圧で行われ得る。図6Aの回路図は、この概念を単純に説明するために1.25Vを使用している。また、比較がなされるために、種々のパルス動作、変調動作又はスイッチ動作が使用されてもよい。
【0076】
第2の素子D2が支持された活性触媒を含む場合、第1の素子D1が(高出力/高温)検知素子となり且つ第2の素子D2が(低出力/低温)補償素子となるように、第2の素子D2と第1の素子D1との機能がスイッチ又はサイクルされてもよい。電子回路300(図3D参照)は、例えば、自動的且つ周期的な検知素子モード間のスイッチングに影響を及ぼすとともに、第1の素子D1及び第2の素子D2の機能を周期的にスイッチしてもよい。代替的又は追加的には、モード間及び/又は検知素子の機能間のスイッチは、手動で開始されるか、又は、制御される、イベント、例えば、出力オフ/出力オン(又は出力サイクル)のような事象の後に、影響を及ぼされ得る。第1の素子D1及び第2の素子D2の機能のスイッチの完了に先立って、高出力、高温検知モードで直近に動作された素子の被毒がないことを確実にするために、比較モード試験が実行される必要がある。信頼性を改善させ、センサが意図された安全目的のためにオンラインのままにされることが保証されるように、複数の検知素子(例えば、3つ以上)が使用されてもよい。本明細書のいくつかの実施形態では、1つ以上の犠牲素子又はスカベンジャー素子400(図3Dに概略的に示される)が、阻害物及び毒物を回収する機能のみを有する(例えば、加熱支持構造体)ように提供され得る。同様に、硫黄のような汚染物質を濾過するために、素子から間隔を空けて又は素子上にフィルタが設けられ得る。
【0077】
多くの実施形態では、上述の第2のモードは、第1の素子D1及び第2の素子D2などの素子の機能のスイッチの間の中間期間に開始される。D1が、検体の触媒酸化のために、高出力/高温モード(すなわち、本明細書に記載された第1の温度で)で直近に動作した場合、D1の温度は、本明細書に記載された第2の温度(すなわち、検体が触媒的に燃焼される温度未満であるが、ジュール加熱が生じる温度よりも高い温度)まで低下されてもよい。D2の温度は、本明細書に記載される第3の温度から、本明細書に記載される第4の温度に(すなわち、検体が触媒的に燃焼される温度未満であるが、ジュール加熱が生じる温度よりも高い温度に)調節される。繰り返すが、本明細書の電子回路は、第2のモードで第1の素子D1の質量に関連付けられる変数を測定する。該変数は、複数回の第2のモードの発生にわたって測定され、経時的な変数の変化が分析され、変数の変化が、第1の素子D1の触媒の被毒又は阻害に関連した質量変化に関連付けられる。
【0078】
一旦、(複数回の)第2のモードでの測定が完了すると、第1の素子D1の温度は、第1の素子D1が(第2の素子D2が検知素子として機能する)第3のモードで補償素子として動作するように、第1の素子D1の温度が第5の温度(ジュール加熱が生じる温度未満であってもよい)に、さらに低下されてもよい。続いて、第4のモード又は比較モードにおいて、第1の素子D1の温度が、第6の温度(上述したように、ジュール加熱が生じる温度よりも高くてもよい)まで上昇され得る。あるいは、第5の温度及び第6の温度は、例えば、周囲温度であってもよく、又は、第2の素子において抵抗変化/ジュール加熱が生じるよりも低い電力入力に関連する別の温度であってもよい。第3のモードでは、第2の素子D2の温度は、第2の素子D2の第2の触媒が検体ガスの燃焼を触媒する温度よりも高い第7の温度まで上昇される。第4のモードでは、第2の素子D2の温度は、第2の素子D2の第2の触媒が検体ガスの燃焼を触媒する温度未満であるが、ジュール加熱が生じる温度よりも高い第8の温度まで低下される。本明細書の電子回路は、第4のモードで第2の素子D1の質量に関連付けられた変数を測定する。該変数は、複数回の第4のモードの発生にわたって測定され、経時的な変数の変化が分析され、変数の変化が、第2の素子D2の触媒の被毒又は阻害に関連した質量変化に関連付けられる。多くの実施形態では、本明細書のセンサは、上述のモードを通じて繰り返しサイクルされる。
【0079】
種々の電子回路及び/又は制御方法が、本明細書の装置、システム及び/又は方法に使用され得る。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,826,721号及び米国特許第5,780,715号に開示されているように、素子又は検出器は、独立して動作されてもよい(代表的な例については図6Bを参照)。例えば、米国特許第5,780,715号に記載されているように、図6Bは、単純化されたブロック形態で検出器/素子が別個に制御された実施形態を示す。図示の実施形態では、電子回路は、2つの制御された電流源回路を含み、それぞれはトランジスタQ4及びQ5によって作動される。トランジスタQ4及びQ5のそれぞれは、例えば、バイポーラトランジスタ、接合型電界効果トランジスタ、金属−半導体電界効果トランジスタ又は金属−酸化物半導体電界効果トランジスタであってもよい。1つの電流源Q4は、(複数の)電力/バッテリ供給源から、本明細書に記載された可燃性ガス検体を検出するために使用される抵抗センサ又は検出素子を通して、電流を流す。他の電流源Q5は、(複数の)電力/バッテリ供給源から、抵抗基準又は補償センサ又は素子を通して、電流を流す。電流源Q4及びQ5は、例えば、従来のプログラマブルデジタルアナログ変換回路(DAC)によって制御されてもよく、これは、例えば、動作可能なトランジスタQ4及びQ5のベースにおける電圧レベルが設定されて、(複数の)電源/バッテリ供給源から検出器/補償素子を通って流れる電流量がそれぞれ制御されてもよい。検出されるべき可燃性ガス検体が存在しない場合、検出素子を通る電流は、補償素子を通る電流と等しくなるように調節されてもよい。あるいは、回路は、理想的には一定の電圧がセンサ素子及び補償素子にわたって維持される制御された電圧源構成に配置され得る。
【0080】
図7は、図6Aの電子回路を用いた、直径450μmの触媒構造体の試験結果を示す。各データ点は、15ppmのHMDSへの30秒毎の曝露後に記録されたデータを表す。この記録期間中は、第1のモード/ガス検出モードと第2のモード/比較モードとの両方で測定が行われる。ガス検知モードの信号は、実験開始時と比較したスパン損失(信号)量の計算に使用される。比較モードの信号は、検出素子又は検出器上の質量増加の結果としてのブリッジシフトの計算に使用される。図7に示されるように、複数の測定間には相関がある。
【0081】
本明細書のデバイス、システム及び方法の機能をさらに説明するために、図8は、図6Aの電子回路を用いた、直径450μmの触媒構造体への15ppmのHMDSの長期間の適用の結果を示す。HMDSへの25PPM−HRSの累積曝露後、デバイスはもはや検体の適用に応答しなくなる(すなわち、100%のスパン損失)。しかしながら、第2のモード/比較モードの信号は、下側に向かい続ける。検知素子(D2)はもはや検体に応答することはできないが、HMDSが表面上に付着し続けるにつれて、質量を増加し続け得る。従って、第2のモード/比較モードの信号は質量増加を示し続ける。
【0082】
阻害物又は毒物のような汚染物質が本明細書の素子に付着しているかどうか(すなわち、質量の変化があったかどうか)を判定するための、本明細書の素子の応答/素子のデータの分析において、まずベースライン応答が構築されてもよい。ベースライン応答は、1つ以上の素子が汚染されていないという確実性が高い場合に構築されてもよい。例えば、ベースライン応答は、製造時に決定され得る。センサシステムは、その後、汚染が発生したかどうかを判定するために、上述のような比較モード又は問合せモードに置かれ得る。この点に関し、被毒/阻害が発生したかどうかを判定するために、応答の変化について1つ以上の閾値が構築されてもよい。このような問合せは、例えば、周期的に行われ得る。多くの実施形態では、センサシステムの制御システムは、周期的又は他の基準で、そのような問合せモードを自動的に開始してもよい。さらに、いくつかの実施形態では、問合せモードは手動で開始されてもよい。
【0083】
上述のように、本明細書の素子は、周囲環境における相対湿度及び/又は圧力の変化の素子応答に対する影響を低減するように、比較的小さくてもよい。さらに、低い熱質量に関連する低い熱時定数は、迅速な応答時間を提供することを助け、また、素子がガス検出モードでの使用に利用できなくなり得る時間を短縮することを助ける。多くの実施形態では、第1の検知素子は、8秒以下又は6秒以下の熱時定数を有する。検知素子又は他の素子は、例えば、8秒以下(又は6秒以下)の熱時定数を提供するために、MEMSペリスタ又は低熱質量のペレメントを備えている。素子の熱時定数は、ゼロ電力の初期条件下で駆動電力をステップ関数変化させたときに、該素子の初期温度と最終温度との間の合計温度差のうち63.2%を変化させるのに必要な時間として定義される。
【0084】
本明細書で使用されるように、用語「MEMSペリスタ」又は「MEMS素子」は、微細加工技術によって製造される、1mm未満の寸法を有するセンサ構成素子を意味する。多くの代表的な実施形態では、本明細書のMEMSペリスタとして形成された検知素子は、厚膜触媒を用いて製造されてもよく、抵抗加熱によって動作温度まで給電され、可燃性ガスを検出するために使用される。多くの代表的な実施態様では、MEMS触媒膜の厚さ及び直径は、それぞれ15ミクロン及び650ミクロンである。
【0085】
特定の利点は、上述のように、低体積/低熱質量を有する素子を使用して達成され得るが、上述のデバイス、システム及び方法は、比較的高体積/高熱質量の素子とともに使用されてもよい。例えば、1mm以上の有効直径を有し得る標準ペレメントが、本明細書において使用されてもよい。
【0086】
いくつかの実施形態では、パルス幅変調が、例えば、本明細書の素子に送達されるエネルギーを制御するために使用されてもよい。パルス幅変調は、負荷に送達される平均電力及び/又はエネルギーを制御するために使用される周知の制御技術である。本明細書の実施形態では、電圧は、支持された触媒を所望の温度まで加熱するために、例えば、ペリスタ素子、MEMS加熱板又は他の加熱素子に供給される。本明細書の素子(例えば、ペレメント、ペリスタ及びMEMS素子を含む)は、比較的低い熱質量を有し得るので、サイクル時間は比較的短くなり得る。低質量ペレメントは、例えば、米国特許第8,826,721号及び米国特許出願公開第15/343,956号に記載されており、この開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0087】
パルス幅変調では、加熱エネルギー(すなわち、(複数の)加熱電圧又は(複数の)加熱電流)が、「オン時間」の間、周期的に(複数の)加熱素子に供給されてもよい。「レスト時間」の間、加熱エネルギーよりも小さいレストエネルギー(すなわち、レスト電圧又はレスト電流)が供給されてもよい。高エネルギー又はオン時間に低エネルギー又はレスト時間を加えた合計は、サイクル時間又はサイクル持続時間に相当する。ガス濃度又は検体がオン時間中に測定される。オン時間の間に供給される加熱エネルギー(電圧/電流)は、オン時間の間一定であってもよく、又は、変化されてもよい(例えば、加熱電圧/電流平坦域として又は加熱電圧/電流傾斜域として供給される)。レストエネルギー(電圧/電流)は、ゼロに等しくてもよく、又は、ガスセンサが何らのガス又は実質的には検出されるべき何らのガスを消費しないように、加熱エネルギーより十分に低くてもよい。オン時間と同様に、レスト時間の間に供給されるレストエネルギーは、すべてのレスト時間の間一定であってもよく、又は、変化されてもよい(例えば、レスト電圧/電流平坦域として又はレスト電圧/電流傾斜域として供給される)。このサイクルは、繰り返されてもよい。
【0088】
パルスモードで動作する利点は、連続モードと比較して電力消費が著しく低いことである。別の利点は、例えば、350〜600℃のラン温度で触媒が連続的に給電される場合と比較して、給電されていない間又は低電圧での動作の間(すなわち、レスト時間中)に、より低温で触媒上に過剰な可燃性ガスが吸着される結果、スパン応答が改善されることである。
【0089】
本明細書の装置、システム又は方法では、測定された変数が、ガス濃度出力/読み取りをリアルタイムで補正するために使用されてもよい。以下は、システムの感度を調整するための公式の代表例である。
=S×(C/C×k)
【0090】
上の式において、Sは与えられた時間tにおける感度であり、Sは初期感度又は予め決定された感度であり、Cは比較モードに関連する初期変数又は予め決定された変数であり、Cは与えられた時間tにおいて測定された変数であり、kはスケール因子定数である。ルックアップテーブルが、例えば、代替的に、測定された変数の変化を感度補正に関連付けるために使用されてもよい。
【0091】
さらに、本明細書の測定された変数は、触媒支持構造に追加の熱を加えて阻害物を除去するためのトリガーとして使用され得る。変数の周期的な測定、その結果の分析、センサ出力の補正及び/又は付加的な熱の適用は、例えば、制御システム300(例えば、アルゴリズム又はソフトウェアとしてメモリシステム320に格納されたアルゴリズムを介して)によって、ユーザの介入なしに自動化された方法で行われてもよい。変数の測定(例えば、電圧、電流又は抵抗)及び関連する付加的な熱の適用は、リアルタイムで行われてもよく、システムの寿命及び正常性だけでなく、自己回復特性を提供する。さらに、センサが汚染物質を「焼失」させることに失敗する場合、汚染物質が毒物であると判断され得る。ユーザは、システムの活性素子が被毒したことを通知され得る(例えば、ディスプレイシステム210、アラームシステム220及び/又は他のユーザインタフェースを介して)。本明細書に記載される「焼失」操作は、例えば、異物が活性検知素子を汚染していると判断するのに適した活性検知素子の任意の電子的問合せに関連して使用され得る。
【0092】
図9は、本明細書の電子的問合せ又は制御アルゴリズム又はプロセスの一実施形態を示す。図9の実施形態では、検知素子の質量変化に関連付けられる変数が測定されるたびに、変数が評価される。変数及び/又はそれに関連する感度の補正が正常範囲内(例えば、所定の値又は閾値の±1%)にある場合、補正は行われず、シーケンスが繰り返される。不適合の結果が得られた場合(すなわち、変数及び/又は補正値が正常範囲内にない場合)、測定された変数に応じて、感度を増加させるべきか減少させるべきかによって、種々の処置がとられる。測定された変数が感度を増加させる必要があるとの結果をもたらす場合(例えば、検知素子の汚染に関連する)、アルゴリズムは、該増加が正常限度内にあるかどうかを判定し、増加を行う。該増加が正常限度内であれば、システムは、任意の阻害物を焼失させるために熱を増加させようと試みることとなり、ユーザは、例えば、この「焼失」又はクリーニングプロセスが行われていることを警告されてもよい。最大熱制限が既に適用されており、最大補正も適用されている場合、ユーザは、例えば、検知素子が被毒したことを警告され得る。測定された変数が感度を低下させる必要があるとの結果をもたらす場合、アルゴリズムは、該低下が正常限度内であるかどうかを判定し、低下を行う。該低下が正常限度内であれば、システムは、阻害物を焼失させるために、前に加熱が行われていたかどうかを確認する。熱が適用されていれば、熱は減少されることとなる。この制御アルゴリズム又は同様のアルゴリズムは、例えば、ユーザの介入を必要としない制御システムを介して実行される自動化された操作であってもよい。制御アルゴリズムは、例えば、メモリシステム320内に格納されたソフトウェア内に具体化され、制御システム306のプロセッサ310によって実行され得る。多くの実施形態では、可燃性ガスセンサは、電気的問合せ、制御アルゴリズム又はプロセスの実行中に可燃性ガス検体を検出するように動作する。
【0093】
本明細書に記載された装置、システム及び/又は方法は、様々な種類の可燃性ガスセンサに関して使用され得る。既存の可燃性ガスセンサの設計は、1つ以上の検知素子の質量変化に関連付けられる変数を測定するための、本明細書の装置又はシステムを含むように容易に修正される。例えば、このようなデバイス、システム及び/又は方法は、マイクロ電気機械システム(MEMS)、薄膜/厚膜システム又は他の適切なマイクロ又はナノテクノロジーシステム(例えば、米国特許第5,599,584号及び/又は米国特許第6,705,152号に記載されている)と関連して使用され得る。
【0094】
本発明の装置、システム及び方法は、例えば、触媒の被毒又は阻害を検出するための他の装置、システム及び方法(例えば、センサへの試験又は他のガスの適用を必要としない電子的問合せ方法を含む)と関連付けて使用され得る。例えば、参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2014/0273,263号に開示されている装置、システム及び方法が使用されてもよい。このような装置、システム及び方法では、変数は、第1の検知素子のインピーダンスの複素成分(リアクタンスと呼ばれることもある)に関連付けられた(測定可能な変数は、インピーダンス、リアクタンス、共振周波数、周波数依存変数、インダクタンス、キャパシタンス又はインダクタンス及び/又はキャパシタンスの抵抗成分が含まれ得るが、これらに限定されない)。測定された変数の経時的変化は、検知素子の動作状態を判定するために使用される。リアクタンスに関連付けられた変数の変化は、特に、触媒支持構造体の内部構造における汚染に敏感であり、例えば、本明細書の素子の汚染の存在及び汚染の特性の判定を助けるための本明細書の他のシステム及び方法に結合して使用されてもよい。
【0095】
インピーダンスは、Z=R+jXの式で定義される。ここで、Zはインピーダンスである。インピーダンスZの実数成分は、抵抗Rであり、インピーダンスの複素数又は虚数成分は、リアクタンスXである(ここで、jは、虚数単位である)。容量性リアクタンスXCと誘導性リアクタンスXLの両方が、以下の式X=XL−XCに従ってリアクタンス(又は全リアクタンス)に寄与する。一般的に、インピーダンス又はリアクタンスの測定(及び/又はそれに関連する変数)は、印加電圧又は電流の変動を必要とする。検知器が存在しない場合、検知素子の抵抗は、経時的に一定のままであるが、インピーダンスの複素成分(すなわち、リアクタンス)は、検知素子の動作状態又は機能性の関数として変化する。リアクタンスに関連付けられる変数を測定することは、例えば、阻害物又は毒物が触媒支持構造体に入り込んだ指標を提供する。
【0096】
前述の説明及び添付の図面は、現時点における実施形態を記載している。当然のことながら、種々の修正、追加及び代替の設計は、前述の説明ではなく、以下の特許請求の範囲によって示される本明細書の範囲から逸脱することなく、前述の教示に照らして当業者に明らかになるであろう。特許請求の範囲における等価の意味及び範囲内にあるすべての変更及び変形は、その範囲内に包含されることとなる。
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9