特許第6979478号(P6979478)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979478
(24)【登録日】2021年11月17日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】排気浄化システム
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/24 20060101AFI20211202BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20211202BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20211202BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20211202BHJP
   F01N 3/18 20060101ALI20211202BHJP
   F02M 27/02 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   F01N3/24 U
   B01D53/62
   B01D53/94ZAB
   B01D53/94 222
   F01N3/08 Z
   F01N3/18 D
   F01N3/24 B
   F01N3/24 F
   F02M27/02 Z
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-47434(P2020-47434)
(22)【出願日】2020年3月18日
(65)【公開番号】特開2021-148041(P2021-148041A)
(43)【公開日】2021年9月27日
【審査請求日】2020年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】山本 修身
(72)【発明者】
【氏名】米田 英昭
(72)【発明者】
【氏名】星野 守門
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 敏行
【審査官】 沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭45−16682(JP,B1)
【文献】 特開2005−69005(JP,A)
【文献】 特開2006−79955(JP,A)
【文献】 特開平7−299330(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0289227(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0347695(US,A1)
【文献】 特開2017−8946(JP,A)
【文献】 特開平9−287435(JP,A)
【文献】 特開2000−186531(JP,A)
【文献】 特開2000−84405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00
3/02
3/04− 3/38
9/00−11/00
B01D 53/34−53/96
F02M 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出される排気を浄化する排気浄化システムであって、
前記内燃機関の排気通路に設けられ、前記排気中に含まれるNOxを還元するNOx還元機能を有する排気浄化触媒を備える排気浄化装置と、
前記排気浄化装置を通過した排気中に含まれる二酸化炭素を水素化反応させて二酸化炭素を還元するとともにメタノールを生成する二酸化炭素還元触媒を有する二酸化炭素還元装置と、
前記水素化反応の副生成物である一酸化炭素を前記排気浄化装置に供給する一酸化炭素供給装置と、を備える内燃機関の排気浄化システム。
【請求項2】
前記一酸化炭素供給装置は、前記水素化反応の副生成物である一酸化炭素を加圧して前記排気浄化装置に供給する加圧器を備える、請求項1に記載の内燃機関の排気浄化システム。
【請求項3】
前記排気浄化触媒は、三元触媒である、請求項1又は2に記載の内燃機関の排気浄化システム。
【請求項4】
前記排気浄化装置を通過した排気中に含まれる二酸化炭素を分離して回収し、前記二酸化炭素還元装置に供給する二酸化炭素分離回収装置をさらに備える、請求項1から3いずれかに記載の内燃機関の排気浄化システム。
【請求項5】
前記一酸化炭素供給装置は、前記内燃機関の始動時に前記一酸化炭素を前記排気浄化装置に供給する、請求項1から4いずれかに記載の内燃機関の排気浄化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、オンボードで、内燃機関の排気中に含まれる二酸化炭素を水素化反応させてメタノールを生成し、生成されたメタノールを内燃機関の燃料として利用する技術の開発を進めている。ここで、例えば二酸化炭素と水素の混合ガスからメタノールを合成する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭45−16682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本出願人による研究により、従来の技術ではメタノールを生成する際に副生成物である一酸化炭素が多量に発生することが判明した。そのため、副生成物の一酸化炭素を有効利用できる技術の開発が望まれる。
【0005】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、内燃機関の排気中の二酸化炭素を水素化反応させて燃料として再利用する際に、副生成物として生じる一酸化炭素を有効利用可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明は、内燃機関(例えば、後述のエンジン1)から排出される排気を浄化する排気浄化システムであって、前記内燃機関の排気通路(例えば、後述の排気管16)に設けられ、前記排気中に含まれるNOxを還元するNOx還元機能を有する排気浄化触媒を備える排気浄化装置(例えば、後述の排気浄化装置4)と、前記排気浄化装置を通過した排気中に含まれる二酸化炭素を水素化反応させて二酸化炭素を還元するとともにメタノールを生成する二酸化炭素還元触媒を有する二酸化炭素還元装置(例えば、後述の二酸化炭素還元装置11)と、前記水素化反応の副生成物である一酸化炭素を前記排気浄化装置に供給する一酸化炭素供給装置(例えば、後述の一酸化炭素供給装置12)と、を備える内燃機関の排気浄化システム(例えば、後述の排気浄化システム10)を提供する。
【0007】
(1)の発明では、排気浄化装置を通過した排気中に含まれる二酸化炭素を水素化反応させて還元するとともにメタノールを生成する際に副生成物として生じる一酸化炭素を、排気浄化装置に供給する一酸化炭素供給装置を備える構成とする。これにより、排気浄化触媒をより還元雰囲気側とすることができ、NOx還元浄化率を向上することができる。従って、(1)の発明によれば、内燃機関の排気中の二酸化炭素を水素化反応させて燃料として再利用する際に副生成物として生じる一酸化炭素を、テールパイプから排出することなく、NOxの還元浄化に有効利用可能な技術を提供することができる。
【0008】
(2) (1)の内燃機関の排気浄化システムにおいて、前記一酸化炭素供給装置は、前記水素化反応の副生成物である一酸化炭素を加圧して前記排気浄化装置に供給する加圧器(例えば、後述の加圧器8)を備えてよい。
【0009】
(2)の発明では、水素化反応の副生成物である一酸化炭素を加圧して排気浄化装置に供給する加圧器を備える構成とする。これにより、高圧の排気が導入される排気浄化装置に対して、副生成物の一酸化炭素を効率良く確実に供給することができる。
【0010】
(3) (1)又は(2)の内燃機関の排気浄化システムにおいて、前記排気浄化触媒は、三元触媒でよい。
【0011】
(3)の発明では、三元触媒に対して一酸化炭素を供給する構成とする。これにより、通常、三元触媒に流入する排気はストイキ組成であるため一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)は完全に酸化浄化できる一方でNOx還元浄化率は低いところ、(3)の発明によれば一酸化炭素を供給することで三元触媒をより還元雰囲気側とすることができ、NOx還元浄化率を向上することができる。
【0012】
(4) (1)から(3)いずれかの内燃機関の排気浄化システムにおいて、前記排気浄化装置を通過した排気中に含まれる二酸化炭素を分離して回収し、前記二酸化炭素還元装置に供給する二酸化炭素分離回収装置(例えば、後述のCO回収装置3)をさらに備えてよい。
【0013】
(4)の発明では、排気浄化装置を通過した排気中に含まれる二酸化炭素を分離して回収し、二酸化炭素還元装置に供給する二酸化炭素分離回収装置をさらに備える構成とする。これにより、排気浄化装置を通過した排気中の二酸化炭素を効率良く分離、回収して二酸化炭素還元装置に供給することができる。また、二酸化炭素還元装置における二酸化炭素の水素化反応により生じる副生成物の一酸化炭素を、例えば二酸化炭素分離回収装置に直接供給すると、二酸化炭素分離回収装置にてテールパイプに排出されて結果的にCOエミッションが悪化するところ、(4)の発明によればこれを回避することができる。
【0014】
(5) (1)から(4)いずれかの内燃機関の排気浄化システムにおいて、前記一酸化炭素供給装置は、前記内燃機関の始動時に前記一酸化炭素を前記排気浄化装置に供給してよい。
【0015】
(5)の発明では、内燃機関の始動時に一酸化炭素を排気浄化装置に供給する構成とする。これにより、排気浄化触媒が低温であるためNOx浄化率が低い内燃機関の始動時において、NOx還元浄化率を向上することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、内燃機関の排気中の二酸化炭素を水素化反応させて燃料として再利用する際に、副生成物として生じる一酸化炭素を有効利用可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る排気浄化システムを搭載した車両の構成を示す図である。
図2】λとCO浄化率との関係を示す図である。
図3】λとHC浄化率との関係を示す図である。
図4】λとNOx浄化率との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳しく説明する。
【0019】
本実施形態に係る排気浄化システムは、内燃機関の排気中の二酸化炭素を燃料として再利用する際に、副生成物として生じる一酸化炭素を排気の浄化に有効利用するものである。そのため、以下、二酸化炭素を分離、回収して燃料として再利用するカーボンリサイクルシステムを搭載した車両に適用した例を挙げて、本実施形態に係る排気浄化システムを説明する。
【0020】
図1は、本実施形態に係るカーボンリサイクルシステムSを搭載した車両Vの構成を示す図である。車両Vは、液体の炭化水素燃料を燃焼させることによって発生する熱エネルギを機械エネルギに変換する内燃機関1(以下、「エンジン」という)を備え、このエンジン1によって得られた機械エネルギを利用して駆動輪(図示せず)を駆動することにより走行する。
【0021】
車両Vは、エンジン1と、エンジン1に燃料を供給する燃料供給装置2と、エンジン1の排気管16を流れる排気から二酸化炭素(CO)を回収するCO回収装置3と、排気管16を流れる排気を浄化する排気浄化装置4と、CO回収装置3によって回収された二酸化炭素から含メタノール(CHOH)の合成ガスを生成するリアクタ5と、リアクタ5に水素(H)を供給する水素供給装置6と、リアクタ5から排出される合成ガスからメタノールと一酸化炭素を分離して回収する凝縮器7と、凝縮器7から排出される一酸化炭素を主体とした気相ガスを加圧する加圧器8と、加圧器8により加圧された一酸化炭素等の排気浄化装置4への供給を制御する供給弁9と、を備える。
【0022】
カーボンリサイクルシステムSは、上述の各構成により構成される。また、本実施形態に係る排気浄化システム10は、排気浄化装置4と、CO回収装置3と、リアクタ5及び水素供給装置6で構成される二酸化炭素還元装置11と、凝縮器7、加圧器8及び供給弁9で構成される一酸化炭素供給装置12と、により構成される。本実施形態の排気浄化システム10については、後段で詳しく説明する。
【0023】
エンジン1は、例えば、複数の気筒と、各気筒内に往復動自在に設けられたピストンと、各気筒内においてピストンによって区画された燃焼室に設けられた点火プラグと、ピストンの往復運動によって回転するクランクシャフトと、を備える多気筒レシプロエンジンである。これら点火プラグは、図示しない制御装置からの指令に応じて点火し、各気筒内に供給された燃料と空気の混合気を燃焼させる。
【0024】
吸気管15は、エンジン1の各気筒に連通する吸気ポートと車外とを接続し、車外の空気を各気筒へ導く配管である。排気管16は、エンジン1の各気筒に連通する排気ポートと車外とを接続する配管である。排気管16には、排気上流側から下流側へ向かって順に、排気浄化装置4と、CO回収装置3と、が設けられている。エンジン1の各気筒内で混合気を燃焼させることによって生じる排気は、排気浄化装置4、及びCO回収装置3を経て、車外に排出される。
【0025】
燃料供給装置2は、燃料を貯留する燃料タンク20と、エンジン1の各気筒に連通する吸気ポートに設けられた燃料噴射弁21と、燃料タンク20と燃料噴射弁21とを接続する燃料供給管24と、を備える。
【0026】
燃料タンク20は、ガソリン、メタノール、又はこれらガソリンとメタノールとを混合した混合燃料等の液体の炭化水素燃料を貯留する。燃料供給管24は、燃料タンク20内に貯留されている燃料を図示しない高圧ポンプによって圧縮し、燃料噴射弁21に供給する。燃料噴射弁21は、図示しない制御装置からの指令に応じて開弁し、燃料供給管24から供給される燃料を噴射する。燃料噴射弁21から噴射される燃料と吸気管15から供給される空気とを混合した混合気は、エンジン1の各気筒内に供給される。
【0027】
排気浄化装置4は、排気浄化触媒を備え、この排気浄化触媒の作用下で、エンジン1の排気に含まれる未燃炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、及び窒素酸化物(NOx)等を浄化する。排気浄化触媒としては、NOxを還元するNOx還元機能を有するものであればよく、三元触媒(TWC)やNOx選択還元触媒(SCR)が挙げられる。より好ましい排気浄化触媒は、通常、ストイキ雰囲気の排気が流入する三元触媒である。
【0028】
CO回収装置3は、CO配管31によってリアクタ5と接続されている。CO回収装置3は、排気管16を流れる排気から二酸化炭素を分離して回収し、CO配管31を介してリアクタ5に供給する。より具体的には、CO回収装置3は、排気管16を流れる排気を、二酸化炭素を主成分とする回収ガスと、窒素(N)を主成分とする脱CO排ガスとに分離し、回収ガスをCO配管31へ排出し、脱CO排ガスを図示しないテールパイプを介して車外へ排出する。
【0029】
CO回収装置3は、例えば、所定の吸着条件下で排気管16を流れる排気中の二酸化炭素を選択的に吸着し、吸着した二酸化炭素を所定の脱離条件下で脱離するCO吸着材を用いることによって、エンジン1の排気を回収ガスと脱CO排ガスとに分離する。CO吸着材には、例えばリチウム複合酸化物が用いられる。
【0030】
なお、本実施形態のCO回収装置3は、CO吸着材の二酸化炭素の吸着、脱離特性を利用してエンジン1の排気を回収ガスと脱CO排ガスとに分離する場合に限られない。CO回収装置3は、排気管16を流れる排気中の二酸化炭素を選択的に透過させるCO分離膜を用いることによって、エンジン1の排気を回収ガスと脱CO排ガスとに分離する構成としてもよい。
【0031】
水素供給装置6は、高圧の水素を貯留する高圧Hタンク61と、高圧Hタンク61とリアクタ5とを接続するH配管63と、H配管63に設けられたレギュレータ64と、を備える。レギュレータ64は、高圧Hタンク61内に貯留された水素を所定圧まで減圧し、H配管63を介してリアクタ5に供給する。
【0032】
なお、本実施形態の水素供給装置6は、高圧Hタンク61に貯留された水素をリアクタ5に供給する場合に限られない。水素供給装置6は、例えば電解装置によって水から生成した水素をリアクタ5に供給する構成としてもよく、アンモニアから生成した水素をリアクタ5に供給する構成としてもよい。
【0033】
リアクタ5は、CO配管31から供給される回収ガスに含まれる二酸化炭素とH配管63から供給される水素とを反応筒内において所定比で水素化反応させることにより、二酸化炭素を還元するとともにメタノールを合成する。
【0034】
より具体的には、リアクタ5は、CO配管31から供給される回収ガスが導入される反応筒と、H配管63から供給される水素を反応筒内に噴射するHインジェクタと、この反応筒内に設けられた二酸化炭素還元触媒と、反応筒内のガスを昇温する加熱装置と、反応筒内のガスを圧縮する圧縮装置と、反応筒と凝縮器7とを接続する合成ガス配管51と、を備える。
【0035】
二酸化炭素還元触媒は、二酸化炭素及び水素の存在下において二酸化炭素を還元するとともにメタノールを生成する二酸化炭素の水素化反応を促進する。二酸化炭素還元触媒としては、例えば、アルミナ(Al)やシリカ(SiO)等の酸化物からなる担体に、銅(Cu)や亜鉛(Zn)等の遷移金属からなる触媒金属が担持された銅−亜鉛酸化物系触媒等の既知のものが用いられる。
【0036】
加熱装置は、エンジン1の廃熱、すなわちエンジン1において燃料を燃焼させることによって発生する熱エネルギの一部を利用して反応筒内のガスを、上記二酸化炭素の水素化反応を進行させるために必要な温度まで昇温する。圧縮装置は、エンジン1において燃料を燃焼させることによって得られる機械エネルギの一部、より具体的にはエンジン1のクランクシャフトの動力を利用して反応筒内のガスを、上記メタノール合成反応を進行させるために必要な圧力になるまで圧縮する。
【0037】
以上のようなリアクタ5では、CO配管31から反応筒内に回収ガスを所定量導入するとともに、反応筒内における二酸化炭素と水素の比が所定比になるように計量した水素をHインジェクタから反応筒内に噴射し、さらに加熱装置及び圧縮装置によって反応筒内のガスを昇温、圧縮する。これにより、反応筒内では二酸化炭素還元触媒の作用下で、二酸化炭素の水素化反応(下記式(1)参照)が進行し、メタノールが生成される。また同時に、この二酸化炭素還元触媒の作用により、逆水性ガスシフト反応(下記式(2)参照)、及び一酸化炭素の水素化反応(下記式(3)参照)も進行し、メタノールを含む合成ガスが生成される。
CO+3H→CHOH+HO (1)
CO+H→CO+HO (2)
CO+2H→CHOH (3)
【0038】
以上のような手順によって反応筒内で生成された合成ガスは、合成ガス配管51を介して凝縮器7に供給される。合成ガス配管51から排出される合成ガスは、上記メタノール合成反応によって生成されるメタノールの他、副生成物としての一酸化炭素、未反応の二酸化炭素、CO回収装置3において分離しきれずに回収ガスに混入した窒素等を含む。特に、従来公知の銅−亜鉛酸化物系触媒からなる二酸化炭素還元触媒では、触媒金属を構成する銅(Cu)や亜鉛(Zn)等の遷移金属からなる触媒金属が酸化して酸化銅(CuO)や酸化亜鉛(ZnO)に変化する結果、副生成物としての一酸化炭素が多量に生成することが本出願人の研究により判明している。そのため、この副生成物の一酸化炭素は、後段で詳述するように本実施形態に係る排気浄化システム10により有効利用できるようになっている。
【0039】
凝縮器7は、リアクタ5から供給される合成ガスからメタノールを回収し、これを燃料タンク20に供給する。より具体的には、凝縮器7は、リアクタ5から排出される合成ガスを熱交換によって凝縮することにより、メタノールを主成分とする液相と、副生成物の一酸化炭素、未反応の二酸化炭素及び窒素を含む気相とに分離し、液相を液相ポートから排出し、気相を気相ポートから排出する。
【0040】
凝縮器7の液相ポートと燃料タンク20とは、液相配管71によって接続されている。従って凝縮器7の液相ポートから排出される液相は、液相配管71によって燃料タンク20内に導かれる。また、凝縮器7の気相ポートと、排気管16のうちエンジン1と排気浄化装置4との間とは、気相配管72によって接続されている。従って、凝縮器7の気相ポートから排出される気相ガスは、気相配管72によって排気浄化装置4へ導かれる。
【0041】
気相配管72の途中には、加圧器8と、供給弁9と、が設けられている。加圧器8は、凝縮器7から排出される一酸化炭素を含む気相ガスを加圧する。加圧器8としては、例えばコンプレッサ等により構成される。供給弁9は、図示しない制御装置からの指令に応じて開閉制御されることにより、加圧器8で加圧された一酸化炭素等の排気浄化装置4への供給を制御する。また、この供給弁9により、例えば燃料カット(Fuel Cut)復帰後のリッチ制御時等のリッチ運転時に過剰リッチとならないよう、一酸化炭素の供給を制限できるようになっている。
【0042】
以上のようなカーボンリサイクルシステムSが搭載された車両Vにおける炭素の流れについて説明する。始めに燃料タンク20内に貯留されている炭化水素燃料と吸気管15から導入した空気との混合気をエンジン1において燃焼させると、窒素と二酸化炭素と水とを主成分とする排気がエンジン1から排出される。この排気中の二酸化炭素は、CO回収装置3によって分離、回収され、リアクタ5に供給される。リアクタ5では、二酸化炭素と水素とを反応させることによって含メタノールの合成ガスが生成される。この合成ガス中のメタノールは、凝縮器7によって回収され、燃料として燃料供給装置2によりエンジン1に供給される。一方、合成ガス中の一酸化炭素は、凝縮器7によって回収され、加圧器8及び供給弁9により加圧状態で排気浄化装置4に供給される。このようにカーボンリサイクルシステムSが搭載された車両Vは、外気から二酸化炭素を取り込みながら、炭素をカーボンリサイクルシステムSで循環させることにより、テールパイプから車外への二酸化炭素排出量を削減する。
【0043】
次に、本実施形態に係る排気浄化システム10について、詳しく説明する。
上述した通り、本実施形態に係る排気浄化システム10は、排気浄化装置4と、CO回収装置3と、リアクタ5及び水素供給装置6で構成される二酸化炭素還元装置11と、凝縮器7、加圧器8及び供給弁9で構成される一酸化炭素供給装置12と、により構成される。この本実施形態に係る排気浄化システム10を用いて、以下のような実験を実施した。
【0044】
先ず、従来のガソリンエンジン車両に従来知られているカーボンリサイクルシステムを適用し、二酸化炭素還元装置により生成されたメタノールをエンジンに供給した場合において、エンジンから排出されて排気浄化装置に導入される排気の組成の一例を調べた。その結果、二酸化炭素(CO)が14%、水(HO)が21%、酸素(O)が2%、一酸化炭素(CO)が1900ppm、炭化水素(HC)が5700ppmc、一酸化窒素(NO)が1350ppm、水素(H)が1700ppm、残りが窒素(N)であった。
【0045】
これに対して、実施例として、本実施形態の二酸化炭素還元装置11を構成するリアクタ5において、CO回収装置3及び水素供給装置6を制御することにより、一酸化炭素と水素の混合比を25:75とし、250℃、8MPaの条件下で水素化反応を進行させた。すると、副生成物としての一酸化炭素の生成量は、3600ppmであった。
【0046】
そのため、本実施例では、上記3600ppmの一酸化炭素(CO)が排気浄化装置4に供給されることになる。すなわち、排気浄化装置4に導入される排気中の一酸化炭素(CO)は1900ppm+3600ppm=5500ppmとなってより還元雰囲気側となり、理論空燃比に対する空燃比λは0.994となる。
【0047】
比較例としては、二酸化炭素還元装置で生成した副生成物の一酸化炭素(CO)を排気浄化装置4の下流側のCO回収装置に供給する構成とした。そのため、この比較例では、排気浄化装置4に導入される排気はストイキのままであり、理論空燃比に対する空燃比λは1のままである。
【0048】
ここで、図2は、λとCO浄化率との関係を示す図である。図2において、理論空燃比に対する空燃比λが1である比較例では、CO浄化率がほぼ100%であることが分かる。これに対して、理論空燃比に対する空燃比λが0.994である本実施例では、比較例よりは若干劣るものの、100%近いCO浄化率が得られることが確認された。
【0049】
図3は、λとHC浄化率との関係を示す図である。図3において、理論空燃比に対する空燃比λが1である比較例では、HC浄化率が90%程度であることが分かる。これに対して、理論空燃比に対する空燃比λが0.994である本実施例では、比較例よりも高いHC浄化率であり、ほぼ100%に近いHC浄化率が得られることが確認された。
【0050】
図4は、λとNOx浄化率との関係を示す図である。図4において、理論空燃比に対する空燃比λが1である比較例では、NOx浄化率が60%程度で低いことが分かる。これに対して、理論空燃比に対する空燃比λが0.994である本実施例では、比較例よりも格段に高いNOx浄化率であり、100%近いNOx浄化率が得られることが確認された。
【0051】
本実施形態に係る排気浄化システム10によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態では、排気浄化装置4を通過した排気中に含まれる二酸化炭素を水素化反応させて還元するとともにメタノールを生成する際に副生成物として生じる一酸化炭素を、排気浄化装置4に供給する一酸化炭素供給装置12を備える構成とした。これにより、排気浄化触媒をより還元雰囲気側とすることができ、NOx還元浄化率を向上することができる。従って、本実施形態によれば、エンジン1の排気中の二酸化炭素を水素化反応させて燃料として再利用する際に副生成物として生じる一酸化炭素を、テールパイプから排出することなく、NOxの還元浄化に有効利用可能な技術を提供することができる。
【0052】
また本実施形態では、水素化反応の副生成物である一酸化炭素を加圧して排気浄化装置4に供給する加圧器8を備える構成とした。これにより、高圧の排気が導入される排気浄化装置4に対して、副生成物の一酸化炭素を効率良く確実に供給することができる。
【0053】
また本実施形態では、好ましくは三元触媒に対して一酸化炭素を供給する構成とした。これにより、通常、三元触媒に流入する排気はストイキ組成であるため一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)は完全に酸化浄化できる一方でNOx還元浄化率は低いところ、本実施形態によれば一酸化炭素を供給することで三元触媒をより還元雰囲気側とすることができ、NOx還元浄化率を向上することができる。
【0054】
また本実施形態では、排気浄化装置4を通過した排気中に含まれる二酸化炭素を分離して回収し、二酸化炭素還元装置11に供給するCO回収装置3をさらに備える構成とした。これにより、排気浄化装置4を通過した排気中の二酸化炭素を効率良く分離、回収して二酸化炭素還元装置11に供給することができる。また、二酸化炭素還元装置11における二酸化炭素の水素化反応により生じる副生成物の一酸化炭素を、例えばCO回収装置3に直接供給すると、CO回収装置3にてテールパイプに排出されて結果的にCOエミッションが悪化するところ、本実施形態によればこれを回避することができる。
【0055】
また本実施形態では、エンジン1の始動時に一酸化炭素を排気浄化装置4に供給する構成とした。これにより、排気浄化触媒が低温であるためNOx浄化率が低いエンジン1の始動時において、NOx還元浄化率を向上することができる。
【0056】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
1 エンジン(内燃機関)
3 CO回収装置(二酸化炭素分離回収装置)
4 排気浄化装置
5 リアクタ(二酸化炭素還元装置)
6 水素供給装置(二酸化炭素還元装置)
7 凝縮器(一酸化炭素供給装置)
8 加圧器(一酸化炭素供給装置)
9 供給弁(一酸化炭素供給装置)
10 排気浄化システム
11 二酸化炭素還元装置
12 一酸化炭素供給装置
16 排気管(排気通路)
図1
図2
図3
図4