(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔第1実施形態〕
第1実施形態に係る眼科装置は、任意の自覚検査および任意の他覚検査の少なくとも一方を実行することが可能である。以下の第1実施形態に係る眼科装置は、自覚検査として、遠用検査、近用検査、コントラスト検査、グレア検査などを実行可能であり、かつ、他覚検査として、他覚屈折測定、角膜形状測定などを実行可能な検眼装置である。しかしながら、本発明に係る眼科装置はこれに限定されるものではない。
【0012】
(眼科装置の外観構成)
第1実施形態に係る眼科装置の外観構成を
図1に示す。眼科装置1は、ベース2と、架台3と、ヘッド部4と、顔受け部5と、ジョイスティック8と、表示部10とを有する。なお、眼科装置1は、単体の装置でもよいし、2以上の装置の組み合わせでもよい。後者の場合、以下において説明される複数の構成要素が2以上の装置に分散配置される。たとえば、眼科装置1は、検査を行うための光学系や駆動機構や制御基板などを含む装置と、当該装置に対する制御や情報入力や当該装置からの出力情報の処理を行うための装置とを含んで構成される。
【0013】
架台3は、ベース2に対して前後左右に移動可能とされる。ヘッド部4は、架台3と一体的に構成されている。顔受け部5は、ベース2と一体的に構成されている。
【0014】
顔受け部5には、顎受け6と額当て7とが設けられている。顔受け部5により被検者(図示を略す)の顔が固定される。検者は、たとえば、眼科装置1を挟んで被検者の反対側に位置して検査を行う。ジョイスティック8および表示部10は、検者側の位置に配置されている。ジョイスティック8は、架台3上に設けられている。表示部10は、ヘッド部4の検者側の面に設けられている。表示部10は、たとえば、液晶ディスプレイなどのフラットパネルディスプレイである。表示部10は、タッチパネル式の表示画面10aを有する。
【0015】
ヘッド部4は、ジョイスティック8の傾倒操作によって前後左右に移動される。また、ヘッド部4は、ジョイスティック8をその軸に対して回転させることにより上下方向に移動される。これら操作によって、顔受け部5に保持されている被検者の顔に対するヘッド部4の位置が変わる。なお、左右方向の移動は、たとえば、眼科装置1による検査対象を左眼から右眼にまたは右眼から左眼に切り替えるために行われる。
【0016】
眼科装置1には外部装置11が接続されている。外部装置11は、任意の装置であってよく、また、眼科装置1と外部装置11との間の接続態様(通信形態など)も任意であってよい。外部装置11は、たとえば、レンズの光学特性を測定するための眼鏡レンズ測定装置を含む。眼鏡レンズ測定装置は、被検者が装用する眼鏡レンズの度数などを測定し、この測定データを眼科装置1に入力する。また、外部装置11は、他の任意の眼科装置であってよい。また、外部装置11は、記録媒体から情報を読み取る機能を有する装置(リーダ)や、記録媒体に情報を書き込む機能を有する装置(ライタ)であってよい。
【0017】
外部装置11の他の例として、当該医療機関内にて使用されるコンピュータがある。このような院内コンピュータは、たとえば、病院情報システム(Hospital Information System:HIS)サーバ、DICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine)サーバ、医師端末などを含む。外部装置11は、当該医療機関の外部にて使用されるコンピュータを含んでよい。このような院外コンピュータは、たとえば、モバイル端末、個人端末、眼科装置1のメーカ側のサーバや端末、クラウドサーバなどがある。
【0018】
(光学系の構成)
眼科装置1は被検眼の検査を行うための光学系を有する。この光学系の構成例について
図2〜
図6を参照して説明する。光学系はヘッド部4内に設けられている。光学系は、観察系12と、固視標投影系13と、他覚式測定系14と、自覚式測定系15と、アライメント系16および17とを含む。処理部9は、各種の処理を実行する。
【0019】
観察系12は、被検眼Eの前眼部を観察するための機能を有する。固視標投影系13は、被検眼Eに固視標を提示するための機能を有する。他覚式測定系14は、他覚検査を行うための機能を有する。本例の他覚式測定系14は、被検眼Eの眼底Efに所定の測定パターンを投影する機能と、眼底Efに投影された測定パターンの像を検出する機能とを有する。自覚式測定系15は、自覚検査を行うための機能を有する。本例の自覚式測定系15は、被検眼Eに視標を提示する機能を有する。アライメント系16および17は、被検眼Eに対する光学系の位置合わせ(アライメント)を行うための機能を有する。アライメント系16は、観察系12の光軸に沿う方向(前後方向)のアライメントを行うための機能を有する。アライメント系17は、観察系12の光軸に直交する方向(上下方向、左右方向)のアライメントを行うための機能を有する。
【0020】
(観察系12)
観察系12は、対物レンズ12aと、ダイクロイックフィルタ12bと、ハーフミラー12cと、リレーレンズ12dと、ダイクロイックフィルタ12eと、結像レンズ12fと、撮像素子(CCD)12gとを含む。撮像素子12gの出力は、処理部9に入力される。処理部9は、撮像素子12gから入力された信号に基づいて、表示部10に前眼部像E´を表示させる。
【0021】
対物レンズ12aと被検眼Eとの間には、ケラト板12hが設けられている。ケラト板12hは、角膜形状を測定するためのリング状光束を被検眼Eの角膜Cに投影するために用いられる。ケラト板12hの構成例を
図6に示す。
【0022】
(アライメント系16および17)
ケラト板12hの後方にはアライメント系16が設けられている。前述したように、アライメント系16は、前後方向のアライメントに用いられる。アライメント系16は、アライメント光源16aと、投影レンズ16bとを有する。投影レンズ16bは、アライメント光源16aから出力された光束を平行光束に変換して角膜Cに投影する。ユーザまたは処理部9は、アライメント系16により角膜Cに投影された像(輝点像)を参照してヘッド部4を前後方向に移動させることによりアライメントを行う。
【0023】
アライメント系17は、ハーフミラー12cを介して観察系12から分岐した光路を形成している。前述したように、アライメント系17は、上下方向および左右方向のアライメントに用いられる。アライメント系17は、アライメント光源17aと、投影レンズ17bとを有する。投影レンズ17bは、アライメント光源17aから出力された光束を平行光束に変換する。この平行光束は、ハーフミラー12cにより反射され、観察系12の光路を通じて角膜Cに投影される。ユーザまたは処理部9は、アライメント系17により角膜Cに投影された像(輝点像)に基づいてヘッド部4を上下方向および左右方向に移動させることによりアライメントを行う。
【0024】
図2などに示すように、表示画面10aには、前眼部像E´とともに、アライメントマークALと輝点像Brとが表示される。前後方向のアライメントは、たとえば、アライメント光源17aによる輝点像Brのピントが合うようにヘッド部4の位置を調整することにより行われる。また、アライメント光源16aによる2個の輝点像の間隔とケラトリング像の径の比率が所定範囲になるようにヘッド部4の位置を調整することによって、前後方向のアライメントを行ってもよい。
【0025】
手動でアライメントを行う場合、ユーザは、たとえば、表示画面10aに表示されている情報を参照しつつジョイスティック8を操作してヘッド部4の位置調整を行う。このとき、処理部9は、たとえば、上記比率からアライメントのずれ量を算出し、このずれ量を表示画面10aに表示させてよい。処理部9は、アライメントが完了したことに対応して測定を開始するように制御を行うことができる。
【0026】
自動でアライメントを行う場合、処理部9は、たとえば、上記比率からアライメントのずれ量を算出し、このずれ量がキャンセルされるように電動の機構を制御してヘッド部4を移動させる。この機構は、駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力をヘッド部4に伝達する部材とを含む。処理部9は、アライメントが完了したことに対応して測定を開始するように制御を行うことができる。
【0027】
(固視標投影系13、自覚式測定系15)
固視標投影系13(自覚式測定系15)は、白色光を発生するLED光源13aと、色補正フィルタ13bと、コリメータレンズ13b´と、チャート板13cと、ハーフミラー13dと、リレーレンズ13eと、反射ミラー13fと、合焦レンズ13gと、リレーレンズ13hと、フィールドレンズ13iと、バリアブルクロスシリンダレンズ(VCC)13jと、反射ミラー13kと、ダイクロイックフィルタ13mおよび12bと、対物レンズ12aとを含む。また、自覚式測定系15は、被検眼Eにグレア光を照射するグレア光源13nを有する。
【0028】
チャート板13cには、固視標と、視標チャートとが形成されている。固視標は、被検眼Eを固視させるための視標である。本例の固視標は、たとえば風景チャートである。視標チャートは、被検眼Eの視力値や矯正度数(遠用度数、近用度数等)を自覚的に測定するための視標である。本例では、複数の視標チャートがチャート板13cに形成されている。
【0029】
他覚検査(他覚屈折測定など)においては、風景チャートが眼底Efに投影される。この風景チャートを被検者に凝視させつつアライメントが行われ、雲霧視状態で眼屈折力が測定される。
【0030】
(他覚式測定系14)
他覚式測定系14は、リング状光束投影系14Aと、リング状光束受光系14Bとを含む。リング状光束投影系14Aは、リング状の測定パターンを眼底Efに投影する。リング状光束受光系14Bは、この測定パターンの眼底Efからの反射光を検出する。
【0031】
リング状光束投影系14Aは、レフ測定ユニット部14aと、リレーレンズ14bと、瞳リング14cと、フィールドレンズ14dと、穴開きプリズム14eと、ロータリープリズム14fと、ダイクロイックフィルタ13mおよび12bと、対物レンズ12aとを含む。レフ測定ユニット部14aは、レフ測定用の光源(LED)14hと、コリメータレンズ14iと、円錐プリズム14jと、リング状測定パターン形成板14kとを含む。
【0032】
リング状光束受光系14Bは、対物レンズ12aと、ダイクロイックフィルタ12bと、ダイクロイックフィルタ13mと、ロータリープリズム14fと、穴開きプリズム14eと、フィールドレンズ14mと、反射ミラー14nと、リレーレンズ14pと、合焦レンズ14qと、反射ミラー14rと、ダイクロイックフィルタ12eと、結像レンズ12fと、撮像素子(CCD)12gとを含む。
【0033】
眼科装置1の各部は処理部9によって制御される。たとえば、処理部9は、LED光源13a、光源14h、グレア光源13n、アライメント光源16aおよび17a、ケラト板12hのケラトリング光源12h´、レフ測定ユニット部14a、合焦レンズ13gおよび14q、チャート板13c、バリアブルクロスシリンダレンズ13j、表示部10などを制御する。
【0034】
(角膜形状測定機能)
図2を参照する。ダイクロイックフィルタ12bは、角膜Cに投影された角膜形状測定用リング状光束と、アライメント系16および17からの光束とを透過させる。処理部9によってこれら光束が出力されると、撮像素子12gによって前眼部像E´と、虚像(図示を略す)と、輝点像Brとが取得される。
【0035】
(他覚測定機能)
図3および
図4を参照する。他覚測定モードが選択されたことに対応し、処理部9は光源14hを点灯させる。また、レフ測定ユニット部14aが光軸方向に移動され、かつ、これに対応して合焦レンズ14qが光軸方向に移動される。
【0036】
リング状の測定パターン(光束)は、
図3に示すように、リレーレンズ14b、瞳絞り14c、フィールドレンズ14d、穴開きプリズム14eの反射面14e´を経由してダイクロイックフィルタ13mに導かれる。ダイクロイックフィルタ13mにより反射された測定パターンは、ダイクロイックフィルタ12bを経由して対物レンズ12aに導かれ、眼底Efに投影される。
【0037】
眼底Efに形成されたリング状の測定パターンは、
図4に示すように、対物レンズ12aにより集光され、ダイクロイックフィルタ12bおよび13m、ロータリープリズム14f、穴開きプリズム14eの穴部14e´´、フィールドレンズ14m、反射ミラー14n、リレーレンズ14p、合焦レンズ14q、反射ミラー14r、ダイクロイックフィルタ12eを経由し、結像レンズ12fによって撮像素子12gに結像される。これにより、撮像素子12gがリング状の測定パターンの像(図示を略す)を検出する。
【0038】
(自覚測定機能)
図5を参照する。自覚測定モードが選択されると、処理部9はLED光源13aを点灯させる。LED光源13aから出力された光束は、色補正フィルタ13bを介してチャート板13cを照明する。チャート板13cには、各種の視標(チャート)が設けられている。また、処理部9は、他覚測定の結果に応じた位置に合焦レンズ13gを移動させる。同様に、処理部9は、他覚測定で得られた被検眼Eの乱視状態(乱視度数、乱視軸角度)に基づいて、この乱視状態が矯正されるようにバリアブルクロスシリンダレンズ13jを制御する。乱視度数は、バリアブルクロスシリンダレンズ13jを構成する2つのシリンダレンズを独立に互いに逆方向に回転させることにより変更可能である。乱視軸角度は、バリアブルクロスシリンダレンズ13jを構成する2つのシリンダレンズを同方向に同じ角度だけ回転させることにより変更可能である。
【0039】
検者または処理部9により視標が選択されると、処理部9は、選択された視標が光路に配置されるようにチャート板13cを制御する。この視標を経由した光束は、ハーフミラー13d、リレーレンズ13e、反射ミラー13f、合焦レンズ13g、リレーレンズ13h、フィールドレンズ13i、バリアブルクロスシリンダレンズ13j、反射ミラー13k、ダイクロイックフィルタ13mおよび12b、対物レンズ12aを経由して眼底Efに投影される。
【0040】
被検者は、眼底Efに投影された視標に対する応答を行う。視標の選択とそれに対する応答が、検者または処理部9の判断により繰り返し行われる。検者または処理部9は、被検者からの応答に基づいて処方値を決定する。
【0041】
たとえば、処理部9が処方値を決定する場合、処理部9は、まず、他覚測定の結果に応じた基準位置に合焦レンズ13gを移動させるとともに、他覚測定の結果に応じた回転角度にバリアブルクロスシリンダレンズ13jを構成する2つのシリンダレンズを回転させる。次に、被検者からの応答に基づき合焦レンズ13gの位置が決定されると、処理部9は、上記の基準位置を基準として合焦レンズ13gの移動量に応じた球面度数の補正分を求める。処理部9は、求められた補正分を用いて、他覚測定により得られた球面度数を補正することにより新たな球面度数を求める。次に、乱視軸角度を測定するための視標チャートを被検者に提示させ、この視標チャートが提示された被検者の応答に基づきバリアブルクロスシリンダレンズ13jの回転角度が決定されると、処理部9は、当該決定された回転角度により乱視軸角度を補正する。次に、乱視度数を測定するためのクロスシリンダチャートを被検者に提示させ、このクロスシリンダチャートが提示された被検者の応答に基づきバリアブルクロスシリンダレンズ13jを構成する2つのシリンダレンズの回転角度が決定されると、処理部9は、当該決定された2つのシリンダレンズの回転角度により乱視度数を補正する。次に、両眼バランスを測定するためのレッドグリーンチャートを被検者に提示させ、このレッドグリーンチャートが提示された被検者の応答に基づき合焦レンズ13gの位置が決定されると、処理部9は、上記の基準位置を基準として合焦レンズ13gの移動量に応じた球面度数の補正分を再び求め、上記と同様に球面度数を補正することにより新たな球面度数を求める。以上のように、処理部9は、被検者からの応答に基づいて、自覚検査による球面度数、乱視度数、および乱視軸角度を決定する。
【0042】
また、グレア検査が行われる場合、処理部9はグレア光源13nを点灯させる。そして、この状態で自覚測定が行われる。
【0043】
他覚式測定系14の構成、自覚式測定系15の構成、アライメント系16および17の構成、ケラト系の構成、眼屈折力(レフ)の測定原理、自覚測定の測定原理、角膜形状の測定原理などは公知であるので、詳細な説明は省略する。
【0044】
(情報処理系の構成)
眼科装置1の情報処理系について説明する。眼科装置1の情報処理系の機能的構成の例を
図7に示す。情報処理系は、制御部100と、検査部110と、記憶部120と、表示部130と、操作部140と、通信部150とを含む。制御部100は、検査部110、表示部130および通信部150を制御する。
【0045】
(検査部110)
検査部110は、複数の異なる種別の検査を行うことが可能である。
図2などに示す構成を有する眼科装置1においては、他覚屈折測定、自覚屈折測定(遠用検査、近用検査、コントラスト検査、グレア検査など)、角膜形状測定を含む、複数の検査を実行することができる。検査部110は、自覚測定部111と、他覚測定部112とを含む。自覚測定部111は、被検眼Eに対して自覚測定を実施することにより測定値(自覚測定値)を取得する。自覚測定部111は、視標提示部111aと、屈折力適用部111bとを含む。視標提示部111aは、自覚屈折測定の種別に応じた視標を被検眼Eに提示する。屈折力適用部111bは、変更可能な屈折力を被検眼Eに適用する。他覚測定部112は、被検眼Eに対して他覚測定を実施することにより測定値(他覚測定値)を取得する。
【0046】
検査部110は、
図2などに示す光学系、部材を駆動する機構を含む。また、検査部110は、光学系によって取得されたデータを解析することにより検査結果を求める機能を含んでよい。その場合、検査部110は、
図2などに示す処理部9の少なくとも一部を含む。
【0047】
(記憶部120)
記憶部120は、各種のコンピュータプログラムやデータを記憶する。コンピュータプログラムには、各種の検査を眼科装置1に実行させるための演算プログラムや制御プログラムが含まれる。制御部100は、CPU(Central Processing Unit)を有する。CPUは、記憶部120に記憶されたコンピュータプログラムを読み出し、当該プログラムにしたがって処理を実行することにより眼科装置1に各種の検査を実行させる。データには、過去に実施された測定により取得された被検眼Eの眼屈折力の測定値が含まれる。過去に実施された測定には、過去に実施された他覚測定や、過去に実施された自覚測定が含まれる。また、この実施形態では、記憶部120は、過去に実施された測定により取得された測定値(他覚測定値、自覚測定値)を少なくとも記憶する。記憶部120は、測定値と異なる1以上の屈折値をあらかじめ記憶してもよい。
【0048】
(表示部130、操作部140)
表示部130は、制御部100による制御を受けて情報を表示する。表示部130は、
図1などに示す表示部10を含む。
【0049】
操作部140は、眼科装置1を操作するために使用される。操作部140は、眼科装置1に設けられた各種のハードウェアキー(ジョイスティック8、ボタン、スイッチなど)を含む。また、操作部140は、タッチパネル式の表示画面10aに表示される各種のソフトウェアキー(ボタン、アイコン、メニューなど)を含む。
【0050】
表示部130および操作部140の少なくとも一部が一体的に構成されていてもよい。その典型例として、タッチパネル式の表示画面10aがある。
【0051】
(通信部150)
通信部150は、
図1に示す外部装置11と通信するための機能を有する。通信部150は、たとえば処理部9に設けられている。通信部150は、外部装置11との通信の形態に応じた構成を有する。
【0052】
(制御部100)
情報処理系は、制御部100を中心に構成される。制御部100は、演算処理や制御処理など、各種の情報処理を実行する。制御部100は、
図2などに示す処理部9の少なくとも一部を含む。
【0053】
この実施形態では、制御部100は、被検眼Eに適用される屈折力の変更指示の入力に対応して、測定値と、当該測定値と異なる1以上の屈折値とを選択的に被検眼に適用するように屈折力適用部111bを制御する。1以上の屈折値は、当該測定値に基づいて算出された算出値を含んでいてよい。この場合、制御部100は、算出部101を有する。なお、1以上の屈折値の少なくとも一部を外部から取得することも可能である。1以上の屈折値の全部を外部から取得する場合、算出部101は不要になる。
【0054】
制御部100は、被検眼Eに適用される屈折力の変更指示を行うための1の操作部に対する操作が行われるごとに、測定値と1以上の屈折値とを順次に被検眼に適用するように屈折力適用部111bを制御することが可能である。測定値と1以上の屈折値を被検眼に適用する順序は、あらかじめ決められている。この順序は、事後的に変更可能である。また、制御部100は、被検眼Eに適用される屈折力の変更指示を行うための1の操作部に対する操作が行われるごとに、測定値と1以上の屈折値とを巡回的に被検眼に適用するように屈折力適用部111bを制御することが可能である。
【0055】
(算出部101)
算出部101は、過去に実施された測定(他覚測定または自覚測定)により取得された測定値(他覚測定値または自覚測定値)に基づいて、1以上の算出値を算出する。算出部101により算出された1以上の算出値は、記憶部120に保存される。この実施形態では、測定値は、球面度数と、乱視度数と、乱視軸角度とを含み、算出部101により算出された1以上の算出値は、被検眼Eの等価球面度数を含む。被検眼Eの球面度数をSとし、被検眼Eの乱視度数をCとすると、算出部101は、次の式(1)にしたがって被検眼Eの等価球面度数SEを算出する。
SE=S+(C/2) ・・・(1)
【0056】
当該測定値に基づき1つの算出値が算出された場合、制御部100は、被検眼Eに適用される屈折力の変更指示を行うための操作が1の操作部に対して行われるごとに、測定値と当該測定値に基づき算出された式(1)の算出値とを順次にまたは巡回的に(つまり交互に)被検眼に適用するように屈折力適用部111bを制御する。
【0057】
処方値として測定値が採用された場合、被検者は、球面度数、乱視度数、および乱視軸角度を矯正パラメータとして含む屈折矯正器具(眼鏡、コンタクトレンズ、眼内レンズ(Intraocular lens:IOL)など)を装着することになる。これに対して、処方値として算出値が採用された場合、被検者は、等価球面度数を矯正パラメータとして含む(つまり、矯正パラメータとして乱視度数および乱視軸角度を含まない)屈折矯正器具を装着することになる。しかしながら、前者の屈折矯正器具(トーリックIOLなど)は、後者の屈折矯正器具(IOLなど)より高価であるのが一般的である。そのため、被検者は、実際の見え方とコストとを勘案しつつ、どちらの屈折矯正器具を選択するかを判断したい場合がある。
【0058】
この実施形態では、被検眼Eに適用される屈折力の変更指示の入力に対応して、測定値と当該測定値と異なる屈折値(算出値)とを巡回的に被検眼に適用するようにしたので、被検者は、適用される屈折力の相違に応じた見え方の違いを実際に確認して屈折矯正器具を選択することが可能になる。
【0059】
(使用形態)
この実施形態に係る眼科装置1の使用形態について説明する。前述したように、眼科装置1は、被検者の左眼および右眼を個別に検査することが可能である。
【0060】
図8に、第1実施形態に係る眼科装置1を用いた検査のフローチャートを示す。本例では、右眼に対して他覚測定(他覚屈折測定)と自覚測定(自覚屈折測定)とがこの順序で行われ、さらに、左眼に対して他覚測定と自覚測定とがこの順序で行われる。自覚測定では、遠用検査と近用検査とがこの順序で行われる。
【0061】
(S1)
被検者の顔を顔受け部5で固定した後、検査部110(ヘッド部4)が右眼の検査位置に移動される。検査位置とは、被検眼の検査を行うことが可能な位置である。前述のアライメントを介して被検眼が検査位置に配置される。検査部110の移動は、ユーザによる操作若しくは指示または制御部100による指示にしたがって、制御部100によって実行される。すなわち、右眼の検査位置への検査部110の移動と、他覚屈折測定を行うための準備とが行われる。
【0062】
(S2)
検査部110が右眼の検査位置に配置された後、右眼の他覚測定が実行される。制御部100は、右眼に対する他覚測定により取得された他覚値(測定値)を記憶部120に記憶させる。
【0063】
(S3)
制御部100は、ステップS2で取得された右眼の他覚値に基づく制御を行う。この制御処理は、たとえば、引き続き行われる自覚屈折測定(遠用検査、近用検査)において最初に提示される視標を選択する処理を含む。
【0064】
(S4)
検査部110は、ユーザまたは制御部100からの指示にしたがって、各種の視標を選択的に右眼に提示する。ユーザまたは眼科装置1は、提示された視標に対する被検者の応答に基づいて、右眼の遠用視力値(および/または処方レンズの遠用度数:以下同様)を求める。制御部100は、求められた遠用視力値を記憶部120に記憶させる。
【0065】
(S5)
次に、制御部100は、S2の他覚測定またはS4の自覚測定(遠用検査)により取得された測定値と、当該測定値に基づく算出値とを巡回的に(交互に)右眼に適用するように屈折力適用部111bを制御する。これにより、被検者は、S2の他覚測定またはS4の自覚測定により取得された測定値(球面度数、乱視度数および乱視軸角度)や当該測定値に基づく算出値(等価球面度数)について、それぞれの見え方の違いを確認することが可能になる。制御部100は、S5において右眼に適用された測定値または算出値のうち被検者自身が所望する測定値または算出値を、右眼の遠用視力値(処方値)として記憶部120に記憶させる。なお、S5における制御部100による制御例については、後述する(
図9などを参照)。
【0066】
(S6)
右眼の比較検査が終了したら、右眼の近用検査に移行する。制御部100は、検査部110を制御することにより近用検査を行うための準備を行う。次に、検査部110は、ユーザまたは制御部100からの指示にしたがって、各種の視標を選択的に右眼に提示する。ユーザまたは眼科装置1は、提示された視標に対する被検者の応答に基づいて、右眼の近用視力値(および/または処方レンズの近用度数:以下同様)を求める。制御部100は、求められた近用視力値を記憶部120に記憶させる。
【0067】
(S7)
右眼の近用検査の終了後、検査部110が左眼の検査位置に移動される。
【0068】
(S8)
検査部110が左眼の検査位置に配置された後、左眼の他覚屈折測定が実行される。制御部100は、左眼に対する他覚測定により取得された他覚値(測定値)を記憶部120に記憶させる。
【0069】
(S9)
制御部100は、ステップS3と同様に、ステップS8で取得された左眼の他覚値に基づく制御を行う。この制御処理は、たとえば、引き続き行われる自覚屈折測定(遠用検査、近用検査)において最初に提示される視標を選択する処理を含む。
【0070】
(S10)
右眼の場合と同様にして左眼の遠用検査が行われ、それにより取得された遠用視力値が記憶部120に記憶される。
【0071】
(S11)
次に、制御部100は、S8の他覚測定またはS10の自覚測定(遠用検査)により取得された測定値と、当該測定値に基づき算出された算出値とを巡回的に左眼に適用するように屈折力適用部111bを制御する。これにより、被検者は、S8の他覚測定またはS10の自覚測定により取得された測定値(球面度数、乱視度数および乱視軸角度)や当該測定値に基づき算出された算出値(等価球面度数)について、それぞれの見え方の違いを確認することが可能になる。制御部100は、S8において左眼に適用された測定値または算出値のうち被検者自身が所望する測定値または算出値を、左眼の遠用視力値(処方値)として記憶部120に記憶させる。S11における制御部100による制御は、S5と同様である。
【0072】
(S12)
左眼の比較査が終了したら、右眼の場合と同様にして左眼の近用検査が行われ、それにより取得された近用視力値が記憶部120に記憶される。以上で、本例の処理は終了となる。
【0073】
図8では、S5およびS11において、遠用視力値に基づく比較検査を行う場合について説明したが、これに代えて、またはこれに加えて、S6またはS12における近用検査後に近用視力値に基づく比較検査を行うようにしてもよい。これにより、近用検査により得られた近用視力値(球面度数、乱視度数および乱視軸角度)が適用されたときの見え方と、この近用視力値から算出された算出値(等価球面度数)が適用されたときの見え方との比較が可能になる。
【0074】
また、
図8に示すフローチャートにおける任意のタイミングでコントラスト検査やグレア検査が行われてもよい。
【0075】
たとえば、右眼の近用検査(S6)の終了後に、右眼に対するコントラスト検査を行うための指示をユーザが入力したとする。この指示を受けた制御部100は、コントラスト検査を行うための準備を行う。そして、右眼のコントラスト検査が行われ、それにより取得されたコントラスト視力値が記憶部120に記憶される。
【0076】
コントラスト検査の終了後に、右眼に対するグレア検査を行うための指示をユーザが入力したとする。この指示を受けた制御部100は、グレア検査を行うための準備を行う。この準備には、右眼の他覚値に基づく制御が含まれる。また、制御部100は、右眼の診療情報(白内障の状態に関する情報など)を電子カルテから取得し、これを表示部130に表示させることができる。準備が終了した後、右眼のグレア検査が行われ、その検査結果が記憶部120に記憶される。
【0077】
同様に、左眼の近用検査(S12)の終了後に、左眼に対するコントラスト検査を行うための指示をユーザが入力したとする。この指示を受けた制御部100は、左眼の検査位置に検査部110を移動させる。また、制御部100は、左眼の他覚値に基づく制御など、右眼に対して次に実行される検査(コントラスト検査)の準備を行う。そして、左眼のコントラスト検査が行われ、それにより取得されたコントラスト視力値が記憶部120に記憶される。
【0078】
コントラスト検査の終了後に、左眼に対するグレア検査を行うための指示をユーザが入力したとする。この指示を受けた制御部100は、グレア検査を行うための準備を行う。この準備には、左眼の他覚値に基づく制御が含まれる。また、制御部100は、左眼の診療情報(白内障の状態に関する情報など)を電子カルテから取得し、これを表示部130に表示させることができる。準備が終了した後、左眼のグレア検査が行われ、その検査結果が記憶部120に記憶される。
【0079】
図9に、
図8のS5における比較検査のフローチャートを示す。
図8のS11においても、
図9と同様のフローで比較検査が行われる。
図9は、制御部100が、測定値と当該測定値に基づく1つの算出値とを巡回的に右眼に適用するように屈折力適用部111bを制御する例を表す。
【0080】
(S21)
図8のS5では、算出部101が、S2における他覚測定またはS4における自覚測定により取得された測定値に基づいて算出値を算出する。この実施形態では、算出部101は、S2またはS4において取得された球面度数および乱視度数から、式(1)にしたがって等価球面度数を算出値として算出する。制御部100は、算出部101により求められた算出値を記憶部120に記憶させる。なお、この算出処理が行われるタイミングは、S22の直前には限定されず、後述するS24の実行前の任意のタイミングであってよい。
【0081】
(S22)
制御部100は、操作部140を用いたユーザからの屈折力の変更指示があるまで待機する(S22:N)。操作部140を用いたユーザからの屈折力の変更指示があったとき(S22:Y)、制御部100による制御はS23に移行する。
【0082】
(S23)
操作部140を用いたユーザからの屈折力の変更指示があったとき(S22:Y)、制御部100は、S2における他覚測定またはS4における自覚測定により取得された測定値が右眼に適用されているか否かを判別する。測定値が右眼に適用されていると判別されたとき(S23:Y)、制御部100による制御は、S24に移行する。測定値が右眼に適用されていると判別されなかったとき(S23:N)、制御部100による制御は、S25に移行する。
【0083】
(S24)
測定値が右眼に適用されていると判別されたとき(S23:Y)、制御部100は、S21において算出された算出値を右眼に適用するように屈折力適用部111bを制御する。制御部100による制御は、S26に移行する。
【0084】
(S25)
測定値が右眼に適用されていると判別されなかったとき(S23:N)、制御部100は、S21において算出された算出値が右眼に適用されていると判断し、S2またはS4において取得された測定値を右眼に適用するように屈折力適用部111bを制御する。制御部100による制御は、S26に移行する。
【0085】
(S26)
制御部100は、たとえば、操作部140を用いたユーザからの指示に基づき、比較検査を終了するか否かを判別する。比較検査を終了すると判別されたとき(S26:Y)、制御部100による制御は、S27に移行する。比較検査を終了しないと判別されたとき(S26:N)、制御部100による制御は、S22に移行する。
【0086】
(S27)
比較検査を終了すると判別されたとき(S26:Y)、制御部100は、被検者により指定された測定値または算出値を右眼の処方値として決定し、決定された右眼の処方値を記憶部120に記憶させる。以上で、比較検査に関する制御は、終了となる(エンド)。
【0087】
図10および
図11に、S5の比較検査における表示画面10aの例を示す。
図10は、右眼に測定値が適用されたときの表示画面10aの例を表す。
図11は、右眼に算出値が適用されたときの表示画面10aの例を表す。
図11において、
図10と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0088】
操作部140としての各種のソフトウェアキーが配置される表示画面10aには、表示領域700と、操作領域710とが設けられる。
【0089】
表示領域700には、右眼自覚測定値表示領域701Rと、右眼算出値表示領域702Rと、右眼他覚測定値表示領域703Rと、左眼自覚測定値表示領域701Lと、左眼算出値表示領域702Lと、左眼他覚測定値表示領域703Lとが設けられる。制御部100は、これら各種表示領域に、対応する情報を表示させる。
【0090】
右眼自覚測定値表示領域701Rには、右眼の自覚測定により取得された測定値が表示される。右眼算出値表示領域702Rには、右眼の測定値から算出された算出値と、この算出値の種別とが表示される。右眼他覚測定値表示領域703Rには、右眼の他覚測定により取得された測定値が表示される。右眼の自覚測定中には、右眼自覚測定値表示領域701Rが他の表示領域と識別可能に表示される。右眼の他覚測定中には、右眼他覚測定値表示領域703Rが他の表示領域と識別可能に表示される。右眼の比較検査中において、右眼に測定値が適用されているとき、右眼自覚測定値表示領域701Rが他の表示領域と識別可能に表示され、右眼に算出値が適用されているとき、右眼算出値表示領域702Rが他の表示領域と識別可能に表示される。
【0091】
左眼自覚測定値表示領域701Lには、左眼の自覚測定により取得された測定値が表示される。左眼算出値表示領域702Lには、左眼の測定値から算出された算出値と、この算出値の種別とが表示される。左眼他覚測定値表示領域703Lには、左眼の他覚測定により取得された測定値が表示される。左眼の自覚検査中には、左眼自覚測定値表示領域701Lが他の表示領域と識別可能に表示される。左眼の他覚測定中には、左眼他覚測定値表示領域703Lが他の表示領域と識別可能に表示される。左眼の比較検査中において、左眼に測定値が適用されているとき、左眼自覚測定値表示領域701Lが他の表示領域と識別可能に表示され、左眼に算出値が適用されているとき、左眼算出値表示領域702Lが他の表示領域と識別可能に表示される。
【0092】
操作領域710には、右眼測定表示部711Rと、左眼測定表示部711Lと、変更指示部712とが設けられている。右眼測定表示部711Rは、現在の測定対象が右眼であることを表示するための領域である。左眼測定表示部711Lは、現在の測定対象が左眼であることを表示するための領域である。制御部100による制御に基づき
図8に示すフローにしたがって検眼測定が自動で行われる場合、検査対象が右眼のとき、制御部100からの指示を受け、右眼測定表示部711Rが左眼測定表示部711Lと識別可能に表示される。また、検査対象が左眼のとき、制御部100からの指示を受け、左眼測定表示部711Lが右眼測定表示部711Rと識別可能に表示される。或いは、光学系が右眼の前に位置しているか左眼の前に位置しているかを検出し、この検出結果を受けて制御部100が、検査対象が右眼であるか左眼であるかを判定することも可能である。この場合、検査対象が右眼のとき、制御部100による判定結果に基づく指示を受け、右眼測定表示部711Rが左眼測定表示部711Lと識別可能に表示される。また、検査対象が左眼のとき、制御部100による判定結果に基づく指示を受け、左眼測定表示部711Lが右眼測定表示部711Rと識別可能に表示される。
図8に示すフローにしたがって検眼測定が検者による手動で行われる場合、検査対象が右眼のとき、検者からの指示を受け、右眼測定表示部711Rが左眼測定表示部711Lと識別可能に表示される。また、検査対象が左眼のとき、検者からの指示を受け、左眼測定表示部711Lが右眼測定表示部711Rと識別可能に表示される。変更指示部712は、被検眼に適用されている屈折力の変更を指示するための操作部である。変更指示部712(操作部140)は、「被検眼Eに適用される屈折力の変更指示を行うための1の操作部」の一例である。制御部100は、変更指示部712に対する操作に基づき、被検眼に適用されている屈折力の変更指示の有無を判断する。
【0093】
図10および
図11は、右眼測定表示部711Rが左眼測定表示部711Lと識別可能に表示され、測定対象が右眼であるときの比較検査における表示画面10aの例を表している。S5において右眼に測定値が適用されているときの表示画面10a(
図10)において、ユーザが変更指示部712に対して操作(たとえば、タッチ操作)を行うと、制御部100は、
図9に示すフローにしたがって、右眼に算出値を適用するように屈折力適用部111bを制御する。これにより、
図11に示すように、表示画面10aにおいて、右眼算出値表示領域702Rが右眼自覚測定値表示領域701Rと識別表示される。
【0094】
S5において右眼に算出値が適用されているときの表示画面10a(
図11)において、ユーザが変更指示部712に対して操作を行うと、制御部100は、
図9に示すフローにしたがって、右眼に測定値を適用するように屈折力適用部111bを制御する。これにより、
図10に示すように、表示画面10aにおいて、右眼自覚測定値表示領域701Rが右眼算出値表示領域702Rと識別表示される。
【0095】
以上のように、ユーザが変更指示部712に対する操作を行うごとに、制御部100は、被検眼に適用される屈折力を測定値または算出値に巡回的に切り替える。これにより、被検者は、測定値が適用されたときの見え方と算出値が適用されたときの見え方とを比較することが容易になり、被検者とって最適な処方値の選択が可能になる。
【0096】
(作用・効果)
実施形態に係る眼科装置の作用および効果について説明する。
【0097】
実施形態に係る眼科装置1は、屈折力適用部111bと、記憶部120と、制御部100とを含む。屈折力適用部111bは、被検眼Eに適用する屈折力を変更可能に構成される。記憶部120は、被検眼Eに対して過去に実施された測定により取得された眼屈折力の測定値を少なくとも記憶する。制御部100は、被検眼Eに適用される屈折力の変更指示の入力に対応して、測定値と、測定値と異なる1以上の屈折値とを選択的に被検眼Eに適用するように屈折力適用部111bを制御する。
【0098】
このような構成によれば、変更指示の入力により測定値と当該測定値と異なる1以上の屈折値とを選択的に被検眼に適用することができるようになる。これにより、測定値が適用された見え方と屈折値が適用された見え方とを比較することが容易になり、被検者にとって最適な処方値の選択が可能になる。
【0099】
1以上の屈折値は、測定値に基づき算出された算出値を含んでもよい。このような構成によれば、変更指示の入力により測定値と当該測定値に基づき算出された算出値とを選択的に被検眼に適用することができるようになる。これにより、測定値が適用された見え方と算出値が適用された見え方とを比較することが容易になり、被検者にとって最適な処方値の選択が可能になる。
【0100】
眼科装置1は、被検眼Eに適用される屈折力の変更指示を行うための変更指示部712(1の操作部)を含んでもよい。制御部100は、変更指示部712に対する操作が行われるごとに、測定値と1以上の屈折値とを順次に被検眼Eに適用するように屈折力適用部111bを制御するようにしてもよい。このような構成によれば、変更指示部712に対する操作を行うごとに、測定値と当該測定値と異なる1以上の屈折値とを順次に被検眼に適用することができるようになる。これにより、測定値が適用された見え方と屈折値が適用された見え方とを比較することがより一層容易になり、被検者にとって最適な処方値の選択が可能になる。
【0101】
制御部100は、変更指示部712に対する操作が行われるごとに、測定値と1以上の屈折値とを巡回的に被検眼Eに適用するように屈折力適用部111bを制御するようにしてもよい。このような構成によれば、変更指示部712に対する操作を行うごとに、測定値と当該測定値と異なる1以上の屈折値とを巡回的に被検眼に適用することができるようになる。これにより、測定値が適用された見え方と屈折値が適用された見え方とを比較することがより一層容易になり、被検者にとって最適な処方値の選択が可能になる。
【0102】
眼科装置1は、算出部101を含んでもよい。算出部101は、測定値に基づき1以上の算出値を算出する。このような構成によれば、測定値が適用された見え方と算出値が適用された見え方との比較が容易な眼科装置の小型化を図ることが可能になる。
【0103】
記憶部120は、1以上の屈折値をあらかじめ記憶してもよい。このような構成によれば、測定値が適用された見え方と算出値が適用された見え方とを容易に比較することが可能な眼科装置を提供することができる。
【0104】
測定値は、他覚測定により取得された他覚測定値を含んでもよい。このような構成によれば、他覚測定値が適用された見え方と屈折値が適用された見え方とを比較することが容易になり、被検者にとって最適な処方値の選択が可能になる。
【0105】
眼科装置1は、他覚測定部112を含んでもよい。他覚測定部112は、被検眼Eに対して他覚測定を実施する。このような構成によれば、他覚測定値が適用された見え方と屈折値が適用された見え方との比較が容易な眼科装置の小型化を図ることが可能になる。
【0106】
測定値は、球面度数と、乱視度数と、乱視軸角度とを含み、1以上の屈折値は、被検眼Eの等価球面度数を含んでもよい。このような構成によれば、球面度数、乱視度数、および乱視軸角度が適用された見え方と被検眼Eの等価球面度数が適用された見え方との比較が可能な眼科装置を提供することができる。
【0107】
眼科装置1は、視標提示部111aを含んでもよい。視標提示部111aは、被検眼Eに視標を提示する。このような構成によれば、被検眼Eに視標を提示することが可能で、且つ、測定値が適用された見え方と屈折値が適用された見え方とを比較することが可能な眼科装置を提供することができる。
【0108】
眼科装置1は、視標提示部111aと、記憶部120と、制御部100とを含んでもよい。視標提示部111aは、被検眼Eに視標を提示する。記憶部120は、被検眼Eに対して過去に実施された測定により取得された眼屈折力の測定値を少なくとも記憶する。制御部100は、操作部140からの指示に基づいて、測定値と測定値と異なる1以上の屈折値とを選択的に被検眼Eに適用するように視標提示部111aを制御する。たとえば、視標提示部111aは、固視標投影系13の合焦レンズ13gを移動させることにより視標を提示させる。このような構成によれば、たとえば合焦レンズ13gなどの光学系を制御することにより、測定値と当該測定値と異なる1以上の屈折値とを選択的に被検眼に適用することができるようになる。これにより、測定値が適用された見え方と屈折値が適用された見え方とを比較することが容易になり、被検者にとって最適な処方値の選択が可能になる。
【0109】
〔第1実施形態の第1変形例〕
第1実施形態では、当該測定値と異なる1以上の屈折値が、当該測定値に基づき算出された算出値を含む場合について説明したが、第1実施形態に係る眼科装置は、これに限定されるものではない。
【0110】
この変形例では、第1実施形態における制御部100が、測定値と被検眼Eの裸眼値とを選択的に被検眼Eに適用するように屈折力適用部111bを制御する。すなわち、第1実施形態において、当該測定値と異なる1以上の屈折値は、被検眼Eの裸眼値を含んでもよい。裸眼値は、過去に実施された他覚測定により得られた他覚測定値または過去に裸眼状態で実施された自覚測定により得られた自覚測定値である。この裸眼値は、球面度数と、乱視度数と、乱視軸角度とを含んでもよい。
【0111】
この変形例に係る眼科装置は、第1実施形態と同様である。すなわち、この変形例に係る眼科装置は、
図1〜
図7に示す構成と同様の構成を有する。このような構成を有する眼科装置を用いて、
図8に示すフローチャートにしたがって検査を行うことが可能である。
【0112】
記憶部120は、測定値と異なる1以上の屈折値として、右眼および左眼の少なくとも一方の裸眼値をあらかじめ記憶する。
図9に示すフローでは、S21における算出値の算出を行うことなく、S24において被検眼の裸眼値が適用される。
【0113】
この変形例によれば、ユーザが変更指示部712に対する操作を行うごとに、制御部100は、被検眼に適用される屈折力を測定値または被検眼Eの裸眼値に巡回的に切り替える。これにより、被検者は、測定値が適用されたときの見え方と裸眼状態の見え方とを比較することが容易になり、被検者とって最適な処方値の選択が可能になる。
【0114】
〔第1実施形態の第2変形例〕
第1実施形態の第1変形例では、当該測定値と異なる1以上の屈折値が、被検眼Eの裸眼値を含む場合について説明したが、第1実施形態に係る眼科装置は、これに限定されるものではない。
【0115】
この変形例では、第1実施形態における制御部100が、測定値と被検者が装用している屈折矯正器具の屈折力である装用値(レンズデータなど)とを選択的に被検眼Eに適用するように屈折力適用部111bを制御する。すなわち、第1実施形態において、当該測定値と異なる1以上の屈折値は、被検者が装用している屈折矯正器具の屈折力である装用値(レンズデータなど)を含んでもよい。
【0116】
この変形例に係る眼科装置は、第1実施形態と同様である。すなわち、この変形例に係る眼科装置は、
図1〜
図7に示す構成と同様の構成を有する。このような構成を有する眼科装置を用いて、
図8に示すフローチャートにしたがって検査を行うことが可能である。
【0117】
記憶部120は、測定値と異なる1以上の屈折値として、右眼および左眼の少なくとも一方の装用値(レンズデータなど)をあらかじめ記憶する。
図9に示すフローでは、S21における算出値の算出を行うことなく、S24において装用値が適用される。
【0118】
この変形例によれば、ユーザが変更指示部712に対する操作を行うごとに、制御部100は、被検眼に適用される屈折力を測定値または装用値に巡回的に切り替える。これにより、被検者は、測定値が適用されたときの見え方と過去に被検者が装用している屈折矯正器具の屈折力である装用値の見え方とを比較することが容易になり、被検者とって最適な処方値の選択が可能になる。
【0119】
〔第2実施形態〕
第1実施形態では、算出部101は、測定値から1つの算出値を算出し、制御部100が、測定値と算出値とを交互に被検眼に適用するように屈折力適用部111bを制御する場合について説明したが、これに限定されるものではない。第2実施形態では、算出部101は、測定値から複数の算出値を算出し、制御部100が、測定値および複数の算出値を巡回的に被検眼に適用するように屈折力適用部111bを制御する。
【0120】
第2実施形態に係る眼科装置は、第1実施形態と同様である。すなわち、第2実施形態に係る眼科装置は、
図1〜
図7に示す構成と同様の構成を有する。このような構成を有する眼科装置を用いて、
図8に示すフローチャートにしたがって検査を行うことが可能である。以下では、第2実施形態に係る眼科装置について、第1実施形態の符号をそのまま用いて、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0121】
図12に、第2実施形態に係るS5における比較検査のフローチャートを示す。第2実施形態では、
図8のS11においても、
図12と同様のフローで比較検査が行われる。
図12は、制御部100が、測定値と当該測定値に基づき算出された複数の算出値とを巡回的に右眼に適用するように屈折力適用部111bを制御する例を表す。
【0122】
(S31)
S5では、算出部101が、S2における他覚測定またはS4における自覚測定により取得された測定値に基づいて複数の算出値を算出する。算出部101は、S2またはS4において取得された測定値から、所定の計算式にしたがって算出値を算出する。また、たとえば、算出部101は、S2またはS4において取得された球面度数および乱視度数から、式(1)にしたがって等価球面度数を求め、求められた等価球面度数に複数の補正値を加算することにより複数の算出値を算出するようにしてもよい。制御部100は、算出部101により算出された複数の算出値を各算出値の種別情報とともに記憶部120に記憶させる。以下、算出部101が、あらかじめ決められた所定の計算式にしたがって、S2における他覚測定またはS4における自覚測定により取得された測定値に基づいて第1算出値および第2算出値を算出するものとする。たとえば、第1算出値は、式(1)にしたがって求められた等価球面度数とし、第2算出値は、第1算出値に所定の補正値を加算することにより求められた値とすることが可能である。なお、算出部101による算出値の算出処理が行われるタイミングは、S32の直前には限定されず、後述するS34またはS36の実行前の任意のタイミングであってよい。
【0123】
(S32)
制御部100は、操作部140を用いたユーザからの屈折力の変更指示があるまで待機する(S32:N)。操作部140を用いたユーザからの屈折力の変更指示があったとき(S32:Y)、制御部100による制御はS33に移行する。
【0124】
(S33)
操作部140を用いたユーザからの屈折力の変更指示があったとき(S32:Y)、制御部100は、S2における他覚測定またはS4における自覚測定により取得された測定値が右眼に適用されているか否かを判別する。測定値が右眼に適用されていると判別されたとき(S33:Y)、制御部100による制御は、S34に移行する。測定値が右眼に適用されていると判別されなかったとき(S33:N)、制御部100による制御は、S35に移行する。
【0125】
(S34)
測定値が右眼に適用されていると判別されたとき(S33:Y)、制御部100は、S31において算出された第1算出値を右眼に適用するように屈折力適用部111bを制御する。制御部100による制御は、S38に移行する。
【0126】
(S35)
測定値が適用されていると判別されなかったとき(S33:N)、制御部100は、S31において算出された第1算出値が右眼に適用されているか否かを判別する。第1算出値が右眼に適用されていると判別されたとき(S35:Y)、制御部100による制御は、S36に移行する。第1算出値が右眼に適用されていると判別されなかったとき(S35:N)、制御部100による制御は、S37に移行する。
【0127】
(S36)
第1算出値が右眼に適用されていると判別されたとき(S35:Y)、制御部100は、S31において算出された第2算出値を右眼に適用するように屈折力適用部111bを制御する。制御部100による制御は、S38に移行する。
【0128】
(S37)
第1算出値が右眼に適用されていると判別されなかったとき(S35:N)、制御部100は、S31において算出された第2算出値が右眼に適用されていると判断し、S2またはS4において取得された測定値を右眼に適用するように屈折力適用部111bを制御する。制御部100による制御は、S38に移行する。
【0129】
(S38)
制御部100は、たとえば、操作部140を用いたユーザからの指示に基づき、比較検査を終了するか否かを判別する。比較検査を終了すると判別されたとき(S38:Y)、制御部100による制御は、S39に移行する。比較検査を終了しないと判別されたとき(S38:N)、制御部100による制御は、S32に移行する。
【0130】
(S39)
比較検査を終了すると判別されたとき(S38:Y)、制御部100は、被検者により指定された測定値または算出値を右眼の処方値として決定し、決定された右眼の処方値を記憶部120に記憶させる。以上で、比較検査に関する制御は、終了となる(エンド)。
【0131】
(作用・効果)
実施形態に係る眼科装置の作用および効果について説明する。
【0132】
実施形態に係る眼科装置1は、屈折力適用部111bと、記憶部120と、制御部100とを含む。屈折力適用部111bは、被検眼Eに適用する屈折力を変更可能に構成される。記憶部120は、被検眼Eに対して過去に実施された測定により取得された眼屈折力の測定値を少なくとも記憶する。制御部100は、被検眼Eに適用される屈折力の変更指示の入力に対応して、測定値と測定値に基づき算出された複数の算出値とを選択的に被検眼Eに適用するように屈折力適用部111bを制御する。
【0133】
このような構成によれば、変更指示の入力により測定値と当該測定値に基づき算出された複数の算出値とを選択的に被検眼に適用することができるようになる。これにより、測定値が適用された見え方と当該測定値に基づき算出された算出値が適用された見え方とを比較することが容易になり、被検者にとって最適な処方値の選択が可能になる。
【0134】
〔第3実施形態〕
第1実施形態および第2実施形態では、自覚測定または他覚測定により取得された測定値と、当該測定値から算出された1以上の算出値とがユーザからの変更指示に対応して巡回的に被検眼に適用される場合について説明したが、これに限定されるものではない。第3実施形態では、遠用検査により取得された遠用度数(遠用視力値)と、近用検査により取得された近用度数(近用視力値)とがユーザからの変更指示に対応して交互に被検眼に適用される。
【0135】
第3実施形態に係る眼科装置は、第1実施形態と同様である。すなわち、第3実施形態に係る眼科装置は、
図1〜
図7に示す構成と同様の構成を有する。このような構成を有する眼科装置を用いて、次のような示すフローチャートにしたがって検査を行うことが可能である。以下では、第3実施形態に係る眼科装置について、第1実施形態の符号をそのまま用いて、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0136】
図13に、第3実施形態に係る眼科装置を用いた検査のフローチャートを示す。本例では、右眼に対して他覚測定(他覚屈折測定)と自覚測定(自覚屈折測定)とがこの順序で行われ、さらに、左眼に対して他覚測定と自覚測定とがこの順序で行われる。自覚測定では、遠用検査と近用検査とがこの順序で行われる。
【0137】
(S41)
被検者の顔を顔受け部5で固定した後、検査部110(ヘッド部4)が右眼の検査位置に移動される。検査部110の移動は、ユーザによる操作若しくは指示または制御部100による指示にしたがって、制御部100によって実行される。すなわち、右眼の検査位置への検査部110の移動と、他覚屈折測定を行うための準備とが行われる。
【0138】
(S42)
検査部110が右眼の検査位置に配置された後、右眼の他覚測定が実行される。制御部100は、右眼に対する他覚測定により取得された他覚値(測定値)を記憶部120に記憶させる。
【0139】
(S43)
制御部100は、ステップS42で取得された右眼の他覚値に基づく制御を行う。この制御処理は、たとえば、引き続き行われる自覚屈折測定(遠用検査、近用検査)において最初に提示される視標を選択する処理を含む。
【0140】
(S44)
検査部110は、ユーザまたは制御部100からの指示にしたがって、各種の視標を選択的に右眼に提示する。ユーザまたは眼科装置1は、提示された視標に対する被検者の応答に基づいて、右眼の遠用度数(遠用視力値)を求める。制御部100は、求められた遠用度数を記憶部120に記憶させる。
【0141】
(S45)
右眼の遠用検査が終了したら、右眼の近用検査に移行する。制御部100は、検査部110を制御することにより近用検査を行うための準備を行う。次に、検査部110は、ユーザまたは制御部100からの指示にしたがって、各種の視標を選択的に右眼に提示する。ユーザまたは眼科装置1は、提示された視標に対する被検者の応答に基づいて、右眼の近用度数(近用視力値)を求める。制御部100は、求められた近用度数を記憶部120に記憶させる。
【0142】
(S46)
次に、制御部100は、S44の遠用検査により得られた測定値(遠用度数)とS45の近用検査により得られた測定値(近用度数)とを交互に右眼に適用するように屈折力適用部111bを制御する。これにより、被検者は、遠用度数と近用度数とについて、それぞれの見え方の違いを確認することが可能になる。制御部100は、S46において右眼に適用された遠用度数と近用度数のうち被検者自身が所望する視力値を、右眼の処方値として記憶部120に記憶させる。なお、S46における制御部100による制御例については、後述する(
図14などを参照)。
【0143】
(S47)
右眼の近用検査の終了後、検査部110が左眼の検査位置に移動される。
【0144】
(S48)
検査部110が左眼の検査位置に配置された後、左眼の他覚屈折測定が実行される。制御部100は、左眼に対する他覚測定により取得された他覚値(測定値)を記憶部120に記憶させる。
【0145】
(S49)
制御部100は、ステップS43と同様に、ステップS48で取得された左眼の他覚値に基づく制御を行う。この制御処理は、たとえば、引き続き行われる自覚屈折測定(遠用検査、近用検査)において最初に提示される視標を選択する処理を含む。
【0146】
(S50)
右眼の場合と同様にして左眼の遠用検査が行われ、それにより取得された遠用度数が記憶部120に記憶される。
【0147】
(S51)
左眼の遠用検査が終了したら、右眼の場合と同様にして左眼の近用検査が行われ、それにより取得された近用度数が記憶部120に記憶される。
【0148】
(S52)
次に、制御部100は、S50の遠用検査により取得された遠用度数とS51の近用検査により取得された近用度数とを交互に左眼に適用するように屈折力適用部111bを制御する。これにより、被検者は、遠用度数と近用度数とについて、それぞれの見え方の違いを確認することが可能になる。制御部100は、S52において左眼に適用された遠用度数と近用度数のうち被検者自身が所望する度数を、左眼の処方値として記憶部120に記憶させる。S52における制御部100による制御は、S46と同様である。以上で、本例の処理は終了となる。
【0149】
図13において、
図8と同様に、遠用視力値に基づく比較検査を行うようにしてもよい。また、S46またはS51における近用検査に近用視力値に基づく比較検査を行うようにしてもよい。
【0150】
また、
図8と同様に、
図13に示すフローチャートにおける任意のタイミングでコントラスト検査やグレア検査が行われてもよい。
【0151】
図14に、
図13のS46における比較検査のフローチャートを示す。
図13のS52においても、
図14と同様のフローで比較検査が行われる。
【0152】
(S61)
図13のS46における制御が開始される前に、制御部100は、右眼の遠用度数と近用度数とを記憶部120に記憶させている。制御部100は、操作部140を用いたユーザからの屈折力の変更指示があるまで待機する(S61:N)。操作部140を用いたユーザからの屈折力の変更指示があったとき(S62:Y)、制御部100による制御はS62に移行する。
【0153】
(S62)
操作部140を用いたユーザからの屈折力の変更指示があったとき(S61:Y)、制御部100は、S44における遠用検査により取得された遠用度数が右眼に適用されているか否かを判別する。遠用度数が右眼に適用されていると判別されたとき(S62:Y)、制御部100による制御は、S63に移行する。遠用度数が右眼に適用されていると判別されなかったとき(S62:N)、制御部100による制御は、S64に移行する。
【0154】
(S63)
遠用度数が右眼に適用されていると判別されたとき(S62:Y)、制御部100は、S45における近用検査により取得された近用度数を右眼に適用するように屈折力適用部111bを制御する。制御部100による制御は、S65に移行する。
【0155】
(S64)
遠用度数が右眼に適用されていると判別されなかったとき(S62:N)、制御部100は、S45において取得された近用度数が右眼に適用されていると判断し、S44において取得された遠用度数を右眼に適用するように屈折力適用部111bを制御する。制御部100による制御は、S65に移行する。
【0156】
(S65)
制御部100は、たとえば、操作部140を用いたユーザからの指示に基づき、比較検査を終了するか否かを判別する。比較検査を終了すると判別されたとき(S65:Y)、制御部100による制御は、S66に移行する。比較検査を終了しないと判別されたとき(S65:N)、制御部100による制御は、S61に移行する。
【0157】
(S66)
比較検査を終了すると判別されたとき(S65:Y)、制御部100は、被検者により指定された遠用度数または近用度数を右眼の処方値として決定し、決定された右眼の処方値を記憶部120に記憶させる。以上で、比較検査に関する制御は、終了となる(エンド)。
【0158】
以上のように、ユーザが変更指示部712に対する操作を行うごとに、制御部100は、被検眼に適用される屈折力を遠用度数と近用度数とを交互に切り替える。これにより、被検者は、遠用検査により取得された遠用度数が適用されたときの見え方と近用検査により取得された近用度数が適用されたときの見え方とを比較することが容易になり、被検者とって最適な処方値の選択が可能になる。
【0159】
(作用・効果)
実施形態に係る眼科装置の作用および効果について説明する。
【0160】
眼科装置1は、視標提示部111aと、屈折力適用部111bと、記憶部120と、制御部100とを含む。視標提示部111aは、被検眼Eに近用視標を提示する。屈折力適用部111bは、被検眼Eに適用する屈折力を変更可能に構成される。記憶部120は、被検眼Eに対して過去に実施された測定により取得された遠用度数および近用度数を記憶する。制御部100は、被検眼Eに適用される屈折力の変更指示の入力に対応して、遠用度数と近用度数とを交互に被検眼Eに適用するように屈折力適用部111bを制御する。
【0161】
このような構成によれば、変更指示の入力により、遠用度数と近用度数とを交互に被検眼に適用することができるようになる。これにより、遠用度数が適用された見え方と近用度数が適用された見え方とを比較することが容易になり、被検者にとって最適な処方値の選択が可能になる。
【0162】
〔第4実施形態〕
第1実施形態〜第3実施形態では、空間的にまたは光学的に第1距離(たとえば5メートルなど)を介して配置された視標を用いた遠用検査と、空間的にまたは光学的に第2距離(たとえば30センチメートルなど)を介して配置された視標を用いた近用検査とを行う場合について説明したが、本発明に係る実施形態は、これに限定されるものではない。第4実施形態に係る眼科装置は、空間的にまたは光学的に所定の第3距離(第1距離より短く、且つ、第2距離より長い。たとえば1メートル、2メートル、3メートルなど)を介して配置された視標を用いて、被検眼の視力や、処方レンズの度数を求めるための中距離の検査が可能な装置である。
【0163】
第4実施形態に係る眼科装置は、遠用検査および近用検査に加えて、
図2〜
図5における合焦レンズ13gを移動させることにより、光学的に第3距離を介して配置された視標を用いて、被検眼の視力や処方レンズの度数を求めるための中距離の検査が可能である。
【0164】
たとえば、
図10または
図11に示す表示画面10aにおける操作領域710に、中距離検査モード切替指示部を設けることが可能である。検者が当該中距離検査モード切替指示部に対して操作を行うと、制御部100は、光学的に第3距離を介して視標が配置される位置に合焦レンズ13gを移動させる。視標が光学的に第3距離を介して配置された中距離検査モードに設定された状態において、制御部100は、被検眼Eに適用される屈折力の変更指示の入力に対応して、測定値と、当該測定値と異なる1以上の屈折値とを選択的に被検眼に適用するように屈折力適用部111bを制御する。
【0165】
また、たとえば、
図10または
図11に示す表示画面10aにおける操作領域710に、検査モード切替指示部を設けることが可能である。検者が当該検査モード切替指示部に対して操作を行うごとに、制御部100は、光学的に第1距離を介して視標が配置される第1位置、光学的に第2距離を介して視標が配置される第2位置、および光学的に第3距離を介して視標が配置される第3位置に巡回的に合焦レンズ13gを移動させる。合焦レンズ13gが第1位置に配置された遠用検査モード、合焦レンズ13gが第2位置に配置された近用検査モード、および合焦レンズ13gが第3位置に配置された中距離検査モードのそれぞれにおいて、制御部100は、被検眼Eに適用される屈折力の変更指示の入力に対応して、測定値と、当該測定値と異なる1以上の屈折値とを選択的に被検眼に適用するように屈折力適用部111bを制御する。なお、制御部100は、検査モードに応じて、被検眼に適用される加入度数を変更するように屈折力適用部111bを制御してもよい。
【0166】
さらに、たとえば、検者が操作部140に対する操作を行うことにより、合焦レンズ13gを任意の位置に移動させることが可能である。検者の操作により合焦レンズ13gを任意の位置に配置させた状態で、制御部100は、被検眼Eに適用される屈折力の変更指示の入力に対応して、測定値と、当該測定値と異なる1以上の屈折値とを選択的に被検眼に適用するように屈折力適用部111bを制御する。なお、制御部100は、合焦レンズ13gの位置に応じて、被検眼に適用される加入度数を変更するように屈折力適用部111bを制御してもよい。
【0167】
この実施形態においても、測定値と異なる1以上の屈折値は、被検眼Eの裸眼値、被検者が装用している屈折矯正器具の屈折力である装用値、および測定値に基づく算出値のうちの1つ以上を含んでいてよい。
【0168】
一般に、遠用から近用までの範囲を網羅する累進レンズは、近用で視野が狭くなる。ところが、被検者が屈折矯正器具を装用する用途を絞ると、たとえば、近々両用のように視野を広げることができ、用途にあった屈折矯正器具の作成が可能になる。たとえば、遠用から近用までの範囲を網羅したい場合には遠近両用レンズ、家の中だけで屈折矯正器具を装用する場合には中近両用レンズ、または細かい作業を行わない場合には近々両用レンズを作成する。この実施形態によれば、眼鏡などの屈折矯正器具を作成する際に、その用途に応じた距離検査が可能になる。
【0169】
〔第5実施形態〕
第1実施形態〜第4実施形態では、
図1〜
図7に示す構成を有し、自覚測定および他覚測定が可能な眼科装置を例に説明したが、本発明に係る実施形態における眼科装置はこれらに限定されるものではない。第5実施形態に係る眼科装置は、自覚測定のみが可能な装置である。
【0170】
図15に、第5実施形態に係る眼科装置の外観構成を概略的に示す。なお、
図15では、眼科装置を操作するための操作手段として1つのタブレット端末およびコントローラが図示されているが、第5実施形態に係る眼科装置の操作手段は、タブレット端末またはコントローラのいずれか1つであればよい。
図16に、
図15の眼科装置における制御系の構成例の機能ブロック図を示す。
図16において、
図15と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0171】
眼科装置1aは、光学素子を通して被検者の眼(被検眼)に視標を提示することにより視力や視機能などを検査するための装置である。眼科装置1aは、測定ヘッド(レフラクタ、フォロプタ)810と、視標提示装置820と、メイン制御装置840と、コントローラ850と、タブレット端末860とを有する。眼科装置1aは、測定ヘッド810、視標提示装置820、メイン制御装置840、コントローラ850、およびタブレット端末860のすべてを含んで構成されていなくてもよい。
【0172】
測定ヘッド810、視標提示装置820、メイン制御装置840、およびコントローラ850は、電源線および通信線を含むケーブルを介して電気的に接続されている。電源線は、メイン制御装置840から各部に電源を供給するために用いられる。通信線は、メイン制御装置840と各部との間の通信を行うために用いられる。タブレット端末860は、無線の通信路を介して、メイン制御装置840との通信が可能に構成される。メイン制御装置840は、1以上のタブレット端末860との無線の通信の接続が可能に構成される。
【0173】
図15では、眼科装置1aは、検眼用テーブル803を有する。検眼用テーブル803は、測定ヘッド810の支持やコントローラ850の載置などのための机である。検眼用テーブル803は、支持部804によって床の上に支持された状態で設置される。なお、
図15では、検眼用テーブル803にコントローラ850およびタブレット端末860が載置されている。
【0174】
たとえば、検眼用テーブル803には、支柱805が立設される。支柱805は、横アーム806の一方の端部に設けられた中空状の支持部807に挿入される。支柱805は、垂直方向(矢印方向h)に横アーム806を移動可能に支持するとともに、軸回り方向(矢印方向j、矢印方向k)に横アーム806を回動可能に支持する。横アーム806の他方の端部には、測定ヘッド810が保持される。この端部には、操作アーム808が、この端部から突出するように設けられている。操作アーム808は、操作者による操作を受け、横アーム806および測定ヘッド810を支柱805の軸回り方向に回動させることが可能である。なお、横アーム806は、水平方向の軸回りに測定ヘッド810を回動させる機構を有していてもよい。支持部804の側面には格納部809が設けられ、メイン制御装置840などが格納される。なお、検眼用テーブル803の構成は、
図15に示す構成に限定されるものではない。
【0175】
この実施形態では、タブレット端末860やコントローラ850は、眼科装置1aを制御するための操作手段である。測定ヘッド810は、タブレット端末860やコントローラ850に対する操作者による操作を受け、複数の光学素子を被検眼に選択的に適用する。視標提示装置820は、タブレット端末860やコントローラ850に対する操作者による操作を受け、たとえば、複数の視標を被検眼に選択的に提示する。メイン制御装置840は、タブレット端末860やコントローラ850に対する操作を受け、測定ヘッド810および視標提示装置820の少なくとも一方を制御する。
【0176】
メイン制御装置840は、所定の期間内に略同時に受け付けられたコントローラ850に対する操作とタブレット端末860に対する操作とに対して優先制御を行うことなく、測定ヘッド810または視標提示装置820を制御することが可能である。また、メイン制御装置840は、事前に設定された優先順位に従って、所定の期間内に略同時に受け付けられたコントローラ850に対する操作とタブレット端末860に対する操作とに対して優先制御を行ってもよい。この場合、メイン制御装置840は、優先制御により優先順位が高く設定された操作に基づいて、測定ヘッド810または視標提示装置820を制御する。
【0177】
(測定ヘッド)
測定ヘッド810は、被検眼に複数の光学素子を選択的に配置可能である。測定ヘッド810は、左眼用検眼ユニット810Lと右眼用検眼ユニット810Rとを有する。左眼用検眼ユニット810Lおよび右眼用検眼ユニット810Rのそれぞれは、被検眼に選択的に適用する複数の光学素子を内蔵する。左眼用検眼ユニット810Lは、複数の光学素子の中から選択された光学素子を被検者の左眼(左被検眼)に適用する。右眼用検眼ユニット810Rは、複数の光学素子の中から選択された光学素子を被検者の右眼(右被検眼)に適用する。左眼用検眼ユニット810Lおよび右眼用検眼ユニット810Rには、それぞれ検眼窓811L、811Rが形成されている。タブレット端末860やコントローラ850に対する操作を受け、複数の光学素子が検眼窓811L、811Rに選択的に配置される。左被検眼は、視標提示装置820により提示された視標を検眼窓811Lを通じて視認する。右被検眼は、視標提示装置820により提示された視標を検眼窓811Rを通じて視認する。
【0178】
左眼用検眼ユニット810Lおよび右眼用検眼ユニット810Rは、個別に動作可能に構成される。各検眼ユニットは、複数の光学素子と駆動機構とを有する。
【0179】
各検眼ユニットが有する複数の光学素子は、被検眼の視機能を検査するための各種レンズからなる集合であり、たとえば、球面レンズ、円柱レンズ、累進レンズ、およびプリズムレンズのうち少なくとも1つを含む。複数の光学素子は、検眼パラメータの種別ごとに組分けされる。
【0180】
検眼パラメータは、被検眼の視機能を検査するための検査条件を示すものである。たとえば、検眼パラメータの種別は、球面度数、乱視度数、乱視軸角度、加入度数、瞳孔間距離、プリズム度数、およびプリズム方向のうち少なくとも1つを含む。検眼パラメータの種別ごとの組分けとして、球面度数の組は、複数の球面レンズを含み、それぞれ異なる球面度数の球面レンズにより構成される。乱視度数の組は、複数の円柱レンズを含み、それぞれ異なる乱視度数の円柱レンズにより構成される。なお、乱視度数の組は、さらに乱視軸角度ごとに組分けされてもよい。加入度数の組は、複数の累進レンズを含み、それぞれ異なる加入度数の累進レンズにより構成される。プリズム度数の組は、複数のプリズムレンズを含み、それぞれ異なるプリズム度数のプリズムレンズにより構成される。なお、プリズム度数の組は、さらにプリズム方向ごとに組分けされてもよい。瞳孔間距離は、被検眼の瞳孔間距離に合わせて設定される検査条件である。瞳孔間距離は、左眼用検眼ユニット810Lと右眼用検眼ユニット810Rの一方または双方が、水平方向(
図15の矢印方向m)にスライドすることにより設定される。
【0181】
各検眼ユニットが有する駆動機構は、複数の光学素子のそれぞれを検眼窓に配置させ、且つ、検眼窓から退避させることが可能に構成される。たとえば、駆動機構は、複数のターレット板を有する。ターレット板は、円板形状である。ターレット板は、駆動機構において、円の中心を軸として円周回りに回動可能に構成される。ターレット板は、縁の近傍に複数の孔を有し、孔には、光学素子が嵌め込まれている。駆動機構は、ターレット板を回動させることにより、複数の光学素子のそれぞれを検眼窓に配置させ、且つ、検眼窓から退避させる。
【0182】
測定ヘッド810は、メイン制御装置840からの制御を受けて光学素子を切り替えることにより、球面度数、乱視度数、乱視軸角度、加入度数、瞳孔間距離、プリズム度数、およびプリズム方向のうち少なくとも1つを切り替えて被検眼に適用することが可能である。以上のように、測定ヘッド810は、被検眼に適用する屈折力を変更可能に構成される。測定ヘッド810は、この実施形態における「屈折力適用部」の一例である。
【0183】
(視標提示装置)
視標提示装置820は、測定ヘッド810の前方の所定距離の位置に配置される。視標提示装置820は、1または複数の切り替え可能な視標を表示することによって、被検眼に視標を提示する。視標提示装置820は、メイン制御装置840からの制御信号を受け、視力検査視標、赤緑検査視標、乱視検査視標などの視標を表示することが可能である。視標提示装置820は、メイン制御装置840からの制御信号により、あらかじめ決められた順序で視標を表示したり、当該制御信号により指定された視標を表示したりすることが可能である。以上のように、視標提示装置820は、被検眼に近用視標を含む複数の視標を提示する。視標提示装置820は、この実施形態における「視標提示部」の一例である。
【0184】
(メイン制御装置)
メイン制御装置840は、眼科装置1aの各部を制御する。メイン制御装置840は、コントローラ850に対する操作に対応した操作情報をコントローラ850から受けて、眼科装置1aの各部を制御する。具体的には、メイン制御装置840は、ケーブルを介して、コントローラ850との有線の通信の接続を確立する。メイン制御装置840は、コントローラ850との通信の接続が確立された状態において、コントローラ850によって受け付けられた操作に対応した操作情報をコントローラ850から受信する。メイン制御装置840は、受信された操作情報に基づいて、測定ヘッド810と視標提示装置820の一方または双方を制御する。
【0185】
また、メイン制御装置840は、タブレット端末860に対する操作に対応した操作情報をタブレット端末860から受けて、眼科装置1aの各部を制御する。具体的には、メイン制御装置840は、無線の通信路を介して、タブレット端末860との通信の接続を確立する。メイン制御装置840は、タブレット端末860との無線の通信の接続が確立された状態において、タブレット端末860によって受け付けられた操作に対応した操作情報をタブレット端末860から受信する。メイン制御装置840は、受信された操作情報に基づいて、測定ヘッド810と視標提示装置820の一方または双方を制御する。
【0186】
メイン制御装置840は、あらかじめ決められた視標とその提示順序とが設定された視標制御情報にしたがって視標を被検眼に提示させるように視標提示装置820を制御する。また、メイン制御装置840は、タブレット端末860またはコントローラ850に対する操作により指定された視標を被検眼に提示させるように視標提示装置820を制御することができる。
【0187】
このようなメイン制御装置840は、中央演算処理装置(Central Processing Unit:以下、CPU)および記憶装置を有するコンピュータを備えた眼科装置である。記憶装置には、あらかじめ眼科装置制御プログラムが記憶されており、CPUが記憶装置から読み出された眼科装置制御プログラムにしたがって処理を実行することにより、測定ヘッド810および視標提示装置820の制御を行う。また、記憶装置は、被検眼に対して過去に実施された測定により取得された眼屈折力の測定値を記憶する。なお、メイン制御装置840は、専用のハードウェアによって測定ヘッド810および視標提示装置820を制御するようにしてもよい。
【0188】
(コントローラ)
コントローラ850は、操作部と、表示部とを有する。操作部は、複数のスイッチと1つのダイヤルとを有し、スイッチの押下やダイヤルの回転などの操作を受け付ける。複数のスイッチには、検査パラメータを切り替えるためのスイッチ、検査パラメータの切り替え方向を変更するためのスイッチ、検査対象眼を切り替えるためのスイッチ、切り替え対象を移動させるためのスイッチ、検査種別を切り替えるためのスイッチなどがある。切り替え方向には、検査パラメータを所定の方向に変更する+側と、検査パラメータを+側とは反対方向に変更する−側とがある。ダイヤルは、回転操作量に応じた分だけ、検眼パラメータの値や検眼パラメータの種別を変更する。このような操作部に対する操作者による操作を受けて、コントローラ850は、操作内容に対応した操作情報をメイン制御装置840に送る。メイン制御装置840は、コントローラ850に対する操作に対応した操作情報をコントローラ850から受けて、測定ヘッド810や視標提示装置820を制御する。
【0189】
表示部には、測定ヘッド810の検眼窓にセットされている光学素子の光学特性のパラメータである検眼パラメータの値が、検眼パラメータの種別ごとに光学特性データとして表示される。また、表示部には、視標提示装置820により提示された視標または視標チャートが表示される。表示部には、切り替え可能な検眼パラメータの値、検眼パラメータの種別、視標、視標チャートなども表示されてもよい。メイン制御装置840は、各種情報を表示部に表示させるように制御する。
【0190】
(タブレット端末)
タブレット端末860は、タッチパネル機能を有する表示パネルを有する。表示パネルは、操作画面を表示する表示部として機能するとともに、表示パネルに対する操作者によるジェスチャー操作(タッチ操作)を受け付ける操作部として機能する。タッチ操作は、操作面に触れることにより行われる操作として説明するが、操作面に触れることなく操作面の近傍で行われる操作を含んでもよい。表示部としての表示パネルに表示された操作画面は、コントローラ850の操作部に設けられた複数のスイッチのうちの少なくとも一部の機能を実現するための操作画面である。
【0191】
操作部としての表示パネルは、操作者の指やスタイラスなどによるタッチ操作の検出が可能な操作面(検知面)を有する。ジェスチャー操作には、たとえば、操作面に対するピンチイン操作、ピンチアウト操作、フリック操作、タップ操作、ドラッグ操作、スワイプ操作などが含まれる。ピンチイン操作は、操作者が操作面に触れながら2本の指を近付ける操作である。ピンチアウト操作は、操作者が操作面に触れながら2本の指を遠ざける操作である。フリック操作は、操作者が操作面を払うように触れる操作である。タップ操作は、操作者が操作面を叩くように触れる操作である。ドラッグ操作は、操作者が操作面に触れたまま、触れた点から他の点まで引きずるように操作面に触れる操作である。スワイプ操作は、操作者が操作面を掃くように触れる操作である。たとえば、タブレット端末における操作部は、静電容量方式、抵抗膜方式、表面弾性波方式などの検知方式によって、タッチ操作を検知する。
【0192】
タブレット端末860は、このような表示パネルに対する操作者によるジェスチャー操作を受け、事前に通信の接続が確立された通信路を介して、このジェスチャー操作に応じた操作情報(制御信号)をメイン制御装置840に送る。
【0193】
このようなタブレット端末860は、CPUおよび記憶装置を有するコンピュータを備えた眼科装置用コントローラである。記憶装置には、あらかじめ検眼装置制御プログラムが記憶されており、CPUが記憶装置から読み出された眼科装置制御プログラムに従って処理を実行することにより、測定ヘッド810および視標提示装置820の切り替えを指示するための制御信号を出力する。また、タブレット端末860は、専用のハードウェアによって測定ヘッド810および視標提示装置820の切り替えを指示するための制御信号を出力するようにしてもよい。
【0194】
コントローラ850またはタブレット端末860は、上記実施形態における屈折力の変更指示を入力するための「変更指示部(操作部)」の一例である。
【0195】
図15および
図16に示す構成において、メイン制御装置840は、第1実施形態または第2実施形態に係る記憶部120の機能および制御部100の機能を有する。すなわち、メイン制御装置840は、被検眼に対して過去に実施された測定により取得された眼屈折力の測定値を記憶する記憶部と、被検眼に適用される屈折力の変更指示の入力に対応して、測定値と当該測定値と異なる屈折値とを巡回的に被検眼に適用するように屈折力適用部を制御する制御部とを有する。
【0196】
また、
図15および
図16に示す構成において、メイン制御装置840は、第3実施形態に係る記憶部120の機能および制御部100の機能を有してもよい。すなわち、メイン制御装置840は、被検眼に対して過去に実施された測定により取得された遠用度数および近用度数を記憶する記憶部と、被検眼に適用される屈折力の変更指示の入力に対応して、遠用度数と近用度数とを交互に被検眼に適用するように屈折力適用部を制御する制御部とを有する。
【0197】
以上のように、測定ヘッド810に対してユーザが変更指示部に対する操作を行うごとに、メイン制御装置840は、自覚測定により取得された測定値と当該測定値に基づき算出された1以上の算出値とを巡回的に被検眼に適用するように屈折力適用部を制御することができる。これにより、被検者は、測定値が適用されたときの見え方と算出値が適用されたときの見え方とを比較することが容易になり、被検者とって最適な処方値の選択が可能になる。
【0198】
或いは、測定ヘッド810に対してユーザが変更指示部に対する操作を行うごとに、メイン制御装置840は、遠用度数と近用度数とを交互に被検眼に適用するように屈折力適用部を制御することができる。これにより、被検者は、遠用検査により取得された遠用度数が適用されたときの見え方と近用検査により取得された近用度数が適用されたときの見え方とを比較することが容易になり、被検者とって最適な処方値の選択が可能になる。
【0199】
この実施形態に係る眼科装置も、第1実施形態またはその変形例、第2実施形態、第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0200】
(その他の変形例)
以上に示された実施形態は、この発明を実施するための一例に過ぎない。この発明を実施しようとする者は、この発明の要旨の範囲内において任意の変形、省略、追加等を施すことが可能である。
【0201】
上記実施形態において、測定値から算出される算出値として、球面度数および乱視度数と等価球面度数とを例に説明したが、これに限定されるものではない。
【0202】
上記の実施形態またはその変形例では、ユーザ(検者)による変更指示の入力に対応して、測定値と、当該測定値と異なる1以上の屈折値とを選択的に被検眼に適用する場合について説明したが、これに限定されるものではない。たとえば、被検者による変更指示の入力に対応して、測定値と、当該測定値と異なる1以上の屈折値とを選択的に被検眼に適用するようにしてもよい。また、たとえば、制御部100が、あらかじめ決められたタイミングまたは任意のタイミングで、測定値と、当該測定値と異なる1以上の屈折値とを選択的に被検眼に適用するようにしてもよい。
【0203】
上記の実施形態またはその変形例では、少なくとも自覚屈折測定が可能であり、さらに他覚屈折測定(および角膜形状測定)が可能な眼科装置について説明した。しかし、この発明を適用可能な眼科装置はこれらに限定されるものではない。たとえば、眼圧測定機能、眼底撮影機能、前眼部撮影機能、光干渉断層撮影(OCT)機能、超音波検査機能など、眼科分野において使用可能な任意の機能を有する装置に対して、この発明を適用することが可能である。なお、眼圧測定機能は眼圧計等により実現され、眼底撮影機能は眼底カメラや走査型検眼鏡(SLO)等により実現され、前眼部撮影機能はスリットランプ等により実現され、OCT機能は光干渉断層計等により実現され、超音波検査機能は超音波診断装置等により実現される。また、このような機能のうち2つ以上を具備した装置(複合機)に対してこの発明を適用することも可能である。
【0204】
また、第1実施形態〜第5実施形態や第1実施形態の変形例において説明した構成を任意に組み合わせることが可能である。たとえば、第1実施形態〜第5実施形態や第1実施形態の変形例のうち2以上の実施形態または変形例の適用が可能なシステムにおいて、当該2以上の実施形態または変形例のうち所望の実施形態または変形例を動作モードの切り替えにより択一的に適用にすることが可能である。