(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
<<吸水性樹脂架橋剤組成物>>
本発明の吸水性樹脂架橋剤組成物は、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂と反応しうる、水溶率が95%以下である架橋剤、及び、水と、水よりも沸点が高い親水性溶媒との混合溶媒を含むことを特徴とする。
【0018】
<架橋剤>
本発明で用いる架橋剤は、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂との反応性を有し、水溶率が95%以下であることを特徴とする。ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂との反応性とは、ポリアクリル酸(塩)系樹脂が有する2つのカルボン酸基及び/又はカルボン酸塩基と反応し両者を架橋させる活性をいう。
【0019】
架橋剤は、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂との反応性を有し、水溶率が95%以下であれば特に限定されない。このような架橋剤としては、例えば、エポキシ化合物、多価アミン化合物、ポリイソシアネート化合物、アルキレンカーボネート化合物、ハロエポキシ化合物、ハロヒドリン化合物、多価オキサゾリン化合物、シランカップリング剤、多価金属化合物等を挙げることができる。これらの架橋剤は、1種のみを用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0020】
上記エポキシ化合物としては、例えば、コハク酸グリシジルエステル、アジピン酸グリシジルエステル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリシドール等を挙げることができる。これらの中でも、水溶率を調整しやすいソルビトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、コハク酸ジグリシジルエステルが好ましい。中でも、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂との親和性が高く、架橋条件の許容範囲が広いという観点でエステル結合を含むエポキシ化合物が好ましく、コハク酸グリシジルエステルがより好ましい。
【0021】
上記多価アミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン、これら多価アミン化合物の無機塩又は有機塩(アジチニウム塩等)等を挙げることができる。
【0022】
上記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等を、上記多価オキサゾリン化合物としては、例えば、1,2−エチレンビスオキサゾリン等を挙げることができる。
【0023】
上記アルキレンカーボネート化合物としては、例えば、1,3−ジオキソラン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−エチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,3−ジオキサン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキサン−2−オン、4,6−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−オン等を挙げることができる。
【0024】
上記ハロエポキシ化合物としては、例えば、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、α−メチルエピクロロヒドリンやその多価アミン付加物(例、ハーキュレス社製カイメン(登録商標))等を挙げることができる。
【0025】
また、その他公知の架橋剤として、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤や、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄、ジルコニウム等の水酸化物や塩化物等の多価金属化合物等も用いることができる。
【0026】
架橋剤の水溶率とは、25℃で水90重量部に、架橋剤10重量部を溶解したときの溶解率をいう。本発明で用いる架橋剤の水溶率は95%以下であり、20〜95%が好ましく、25〜80%がより好ましい。前述した架橋剤は、2種以上を併用しても良く、2種以上を併用するときにはその混合物の水溶率が95%以下であればよい。例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテルは単独では水溶率が95%を超えるが、エチレングリコールジグリシジルエーテルとコハク酸グリシジルエステルを重量比2:1で混合した混合物は水溶率が95%であり、本発明の組成物において好適に使用できる。このような架橋剤の混合物としては、前述した以外にエチレングリコールジグリシジルエーテルとトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテルとソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテルとコハク酸グリシジルエステルなどが挙げられる。
【0027】
水溶率が95%以下の架橋剤、及び、水と水よりも沸点が高い水溶性溶媒との混合溶媒からなる架橋剤組成物を使用することにより、加熱による架橋時に、水が蒸発するまでは水に溶解した成分が優先して吸水性樹脂に含浸しながら架橋が進み、表面に第一の架橋層が生成する。さらに、水が少なくなり親水性溶媒がリッチになった段階では、水不溶の成分が親水性溶媒に溶解し、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂に含浸し、第一の架橋層の内側で架橋が進み、第二の架橋層が生成する。その結果、全体として適切な深度で均一な架橋層が形成され、吸水性樹脂の内部の架橋密度が高くなり過ぎず、膨潤性が高まり、FSCが高くなる。さらに、2つの均一な架橋層により吸水性樹脂の強度が高まり、CRCとAULが向上し、逆戻り量が低下する。架橋剤の水溶率が95%を超えると内部での架橋により架橋剤が消費されて表面での架橋が不十分となり、強度を向上できない傾向がある。
【0028】
吸水性樹脂架橋剤組成物中の架橋剤の含有量は、0.01〜20重量%が好ましく、0.02〜10重量%がより好ましく、0.05〜5重量%がさらに好ましい。20重量%を超えるとポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂に添加した際に均一に樹脂表面に架橋剤組成物が付着せず、架橋が不均一となる傾向があり、
0.01重量%未満では混合溶媒によりポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂が凝集し、架橋が不均一となる傾向がある。
【0029】
<混合溶媒>
本発明では混合溶媒として、水と水よりも沸点が高い親水性溶媒との混合物を用いる。親水性溶媒の沸点は、130℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましく、180℃以上がさらに好ましい。沸点の上限は特に限定されないが、300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましく、200℃以下がさらに好ましい。
【0030】
親水性溶媒としては特に限定されないが、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂に対し不活性なものが好ましい。例えば、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン等の多価アルコール類、ジアセチン、トリアセチン等のグリセリンアセテート類、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジグライム等のアルキレングリコールアルキルエーテル類;ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ε−カプロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキサイド等のスルホキサイド類等を挙げることができる。これらの中でも、架橋剤中の水不溶成分やポリアクリル酸との親和性という観点で多価アルコール類、アルキレングリコールアルキルエーテル類が好ましく、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等がより好ましい。これらの親水性溶媒は、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0031】
混合溶媒中、親水性溶媒の含有量は5〜60重量%が好ましく、10〜50重量%がより好ましい。また、吸水性樹脂架橋剤組成物全体に対する混合溶媒の含有量は、80〜99.99重量%が好ましく、90〜99.98重量%がより好ましく、95〜99.95重量%がさらに好ましい。
【0032】
<任意成分>
本発明の吸水性樹脂架橋剤組成物は、架橋剤と混合溶媒に加えて、任意に他の成分を含有していても良い。他の成分としては、例えば、界面活性剤、多価金属塩、有機酸及び/又は無機酸等が挙げられる。
【0033】
界面活性剤としては、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂に対し不活性なものであれば特に限定されないが、例えば、ソルビタンモノラウラート、ラウリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩、アシルグルタミン酸・ラウロイルメチルアラニンナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム等が挙げられる。これらの界面活性剤は、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0034】
多価金属塩としては、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂に対し不活性なものであれば特に限定されないが、例えば、硫酸アルミニウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等が挙げられる。これらの多価金属塩は、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0035】
有機酸及び/又は無機酸としては、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂に対し不活性なものであれば特に限定されないが、例えば、乳酸、クエン酸、p−トルエンスルホン酸、リン酸、硫酸、亜硫酸、塩酸等が挙げられる。これらの有機酸及び/又は無機酸は、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0036】
<<吸水剤>>
本発明の吸水剤は、上記吸水性樹脂架橋剤組成物で表面架橋されたポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を含むことを特徴とする。
【0037】
<吸水性樹脂>
本発明で用いるポリアクリル酸(塩)系の吸水性樹脂としては、ポリアクリル酸部分中和物架橋物、自己架橋型ポリアクリル酸部分中和物、でんぷん―アクリル酸グラフト重合体が挙げられる。
【0038】
吸水性樹脂の主要な構成単位はアクリル酸とアクリル酸塩である。アクリル酸とアクリル酸塩との合計量中、アクリル酸が10〜40モル%であり、アクリル酸塩が90〜60モル%であることが好ましい。アクリル酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられ、特に、ナトリウム塩が好ましい。
【0039】
吸水性樹脂を得る際には、必要に応じて、アクリル酸(塩)以外の単量体を併用していてもよい。アクリル酸(塩)以外の単量体としては、例えば、メタクリル酸、マレイン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸などのアニオン性不飽和単量体およびその塩;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルピロリジンなどのノニオン性の親水基含有不飽和単量体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、およびこれらの四級塩のようなカチオン性不飽和単量体が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。
【0040】
アクリル酸(塩)以外の単量体を用いる場合、その使用量は、主成分として用いるアクリル酸(塩)との合計量に対して30モル%以下が好ましく、10モル%以下がより好ましい。この範囲で用いることにより、得られる吸水性樹脂の吸水特性がより一層向上するとともに、吸水性樹脂をより一層安価に得ることができる。
【0041】
吸水性樹脂の製造時には、内部架橋剤の存在下に吸水性樹脂の構成単位を重合させることによって、吸水性樹脂を架橋させることができる。また、吸水性樹脂の構成単位の重合後に内部架橋剤を加えて、吸水性樹脂を架橋させることもできる。内部架橋剤として、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、N,N−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ポリエチレンイミン、およびグリシジル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの内部架橋剤は、1種のみを用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0042】
吸水性樹脂の製造方法及び形状は特に限定されないが、例えば、逆相懸濁重合法、これにより得られるパール状の吸水性樹脂粒子、水溶液重合法、この重合後の乾燥物を粉砕して得られるリン片状、塊状、岩状、顆粒状、無定形状の吸水性樹脂を挙げることができる。
【0043】
本発明の吸水性樹脂架橋剤組成物により吸水性樹脂の表面架橋をする際、吸水性樹脂架橋剤組成物の使用量は、吸水性樹脂100重量部に対し、架橋剤が0.001〜10重量部となる量が好ましく、0.005〜5重量部となる量がより好ましく、0.01〜3重量部となる量がさらに好ましい。吸水性樹脂100重量部に対し、使用する架橋剤が0.001重量部未満であると、吸水性樹脂の架橋を有効に行うことができず、加圧下での十分な吸水性向上効果が得られないことがあり、10重量部を超えると、架橋密度が高くなりすぎることにより、得られる吸水剤の吸水能力や吸水速度が低下することがある。
【0044】
吸水性樹脂架橋剤組成物と吸水性樹脂とは、例えば、吸水性樹脂架橋剤組成物を吸水性樹脂に噴霧した後、円筒型混合機、V字型混合機、リボン型混合機、スクリュー型混合機、双腕型混合機、粉砕型ニーダー等を用いて公知の方法で混合するのが適当である。このとき、必要に応じて界面活性剤を添加することができる。
【0045】
吸水性樹脂を架橋する際、必要に応じて、水、親水性溶媒又はこれらの混合物からなる混合溶媒を添加しても良い。かかる親水性溶媒としては、吸水性樹脂架橋剤組成物に含まれるものと同様の親水性溶媒を挙げることができる。これらの親水性溶媒は1種であっても、2種以上の混合溶媒であっても良い。
【0046】
表面架橋時の加熱温度は、吸水性樹脂の種類等に応じて適宜変更すれば良いが、通常、40℃〜250℃である。加熱温度が前記範囲内の場合、吸水性樹脂が劣化することなく、吸水性樹脂の表面が均一に架橋され、常圧下での吸水倍率と加圧下での吸水倍率のバランスに優れ、吸水能力の高い吸水剤を得ることができる。加熱時間も、吸水性樹脂の種類等により適宜調整すれば良いが、通常、0.2時間〜3時間である。
【0047】
更に、吸水剤は、種々の機能を付与する目的で、消毒剤、消臭剤、抗菌剤、香料、各種の無機粉末、発泡剤、顔料、染料、親水性短繊維、肥料、酸化剤、還元剤、水、及び塩類等の他の添加剤を含有していても良い。これら他の添加剤の添加量は当業者により適切に選択される。また、これら他の添加剤は、吸水性樹脂架橋剤組成物に添加した後に、吸水性樹脂と混合しても良く、吸水性樹脂架橋剤組成物と別々に添加することもできる。
【0048】
<吸収剤の物性>
CRC(遠心分離機保持容量)は、吸水剤に荷重をかけずに生理食塩水(0.9%の塩化ナトリウム水溶液)を吸収させ、その後150Gの遠心分離により水切りを行った後の吸水性を、実施例に記載の方法で測定して求められる。本発明の吸水剤は、CRCが5〜50g/gであることが好ましく、25〜40g/gであることがより好ましい。
【0049】
AUL(加圧下の吸水倍率)は、吸水剤に荷重をかけたときの生理食塩水の吸収性を、実施例に記載の方法で測定して求められる。本発明の吸水剤は、AULが10〜30g/gであることが好ましく、11〜25g/gであることがより好ましい。
【0050】
FSC(自由膨潤倍率)は、吸水剤に荷重をかけないときの生理食塩水の吸収性を、実施例に記載の方法で測定して求められる。本発明の吸水剤は、FSCが30〜100g/gであることが好ましく、40〜70g/gであることがより好ましい。
【0051】
<<衛生用品>>
本発明の吸水剤は、紙おむつや生理用品などの衛生用品に好適に使用できる。衛生用品として、例えば、バックシート、吸収体、及びトップシートがこの順に積層された積層体が挙げられる。吸収体は本発明の吸水剤を含んでおり、必要に応じて吸水紙やパルプを含んでいてもよい。
【0052】
<衛生用品の物性>
吸収量は、吸水性樹脂とパルプから作成した吸水性樹脂/パルプ混合吸収体が生理食塩水を吸収した量を実施例に記載の方法で測定して求められる。
【0053】
保水量は、吸水性樹脂とパルプから作成した吸水性樹脂/パルプ混合吸収体が生理食塩水を吸収させ、その後150Gの遠心分離により水切りを行った後の吸水性を実施例に記載の方法で測定して求められる。
【0054】
吸水速度は、吸水性樹脂とパルプから作成した吸水性樹脂/パルプ混合吸収体が80gの生理食塩水を完全に吸収するのに必要な時間を実施例に記載の方法で測定して求められる。
【0055】
逆戻り量は、上記吸収速度を測定した後の吸水性樹脂/パルプ混合吸収体上にろ紙を載せ、さらにその上から3.5kgの荷重を3分間与えた際に、ろ紙に染み出した水の量を実施例に記載の方法で測定して求められる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。以下、「部」又は「%」は特記ない限り、それぞれ「重量部」又は「重量%」を意味する。
【0057】
(1)使用材料
1.吸水性樹脂の原料モノマー
アクリル酸(三菱ケミカル社製)
2.内部架橋剤
ペンタエリスリトールトリアリルエーテル(ダイソー株式会社製)
3.重合開始剤
・過酸化水素水溶液(保土谷化学工業株式会社製)
・アスコルビン酸(丸紅ケミックス製)
・2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド](富士フイルム和光純薬株式会社)
4.中和剤
水酸化ナトリウム(東ソー株式会社)
5.表面架橋剤
・エチレングリコールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、EX−810、プロピレングリコールへの溶解率100%、水溶率100%)
・コハク酸グリシジルエステル(ナガセケムテックス社製、GSR−105、プロピレングリコールへの溶解率100%、水溶率70%)
・ソルビトールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、EX−614B、プロピレングリコールへの溶解率100%、水溶率94%)
・ジグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、EX−421、プロピレングリコールへの溶解率100%、水溶率88%)
・トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、EX−321、プロピレングリコールへの溶解率100%、水溶率27%)
6.親水性溶媒
プロピレングリコール(富士フイルム和光純薬社製)
【0058】
(2)吸水性樹脂の重合および内部架橋
アクリル酸155質量部(2.15モル部)、内部架橋剤としてペンタエリスリトールトリアリルエーテル0.6225質量部(0.0024モル部)、及び脱イオン水340.27質量部を撹拌・混合しながら1℃に保った。この混合物中に窒素を流入して溶存酸素量を0.1ppm以下とした後、1質量%過酸化水素水溶液0.31質量部、1質量%アスコルビン酸水溶液1.1625質量部及び0.5質量%の2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]水溶液2.325質量部を添加・混合して重合を開始させた。混合物の温度が85℃に達した後、85±2℃で約10時間重合することにより含水ゲルを得た。次に、この含水ゲル502.27質量部をミンチ機(ROYAL社製、「12VR−400K」)で細断しながら48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液128.42質量部を添加して混合し、さらにエチレングリコールジグリシジルエーテルの1質量%水溶液3質量部を添加して混合して細断ゲルを得た。さらに細断ゲルを通気型バンド乾燥機{200℃、風速5m/秒}で乾燥し、乾燥体を得た。乾燥体をジューサーミキサー(Oster社製、「OSTERIZERBLENDER」)にて粉砕した後、目開き150μm及び710μmのふるいを用いて150μm〜710μmの粒度に調整することにより、乾燥体粒子を得た。
【0059】
(3)表面架橋(実施例1〜4、比較例1)
表1に記載の架橋剤、水、および親水性溶媒を混合して、吸水性樹脂架橋剤組成物を調製した。重合および内部架橋後の吸水性樹脂100重量部に対し、各吸水性樹脂架橋剤組成物を6重量部噴霧し、十分に混合した。混合物を120℃で30分間加熱して、表面架橋した吸水剤を得た。この吸水剤のAUL、FSC、CRCの測定結果を表1に示す。
【0060】
(4)紙おむつの製造
バッチ型空気抄造装置で、10gの吸水剤と10gの木材粉砕パルプを混合しながら、40cm×12cmの吸水剤/パルプ混合吸収体を作成した。吸水剤/パルプ混合吸収体の上下をティッシュペーパーで挟み、15kgローラーで10往復加圧して、吸収層を得た。吸収層をサーマルボンド不織布(18gsm)とポリエチレンシートで挟み、周囲をガムテープで固定して、紙おむつサンプルとした。
【0061】
(5)吸水剤の物性評価
(5−1)AUL(加重下吸収倍量)
測定試料を30メッシュふるいと60メッシュふるいを用いて250〜500μmの範囲にふるい分けした。ふるい分けした測定試料0.16gを、目開き63μm(JIS Z8801−1:2006)のナイロン網を底面に貼った円筒型プラスチックチューブ(内径:25mm、高さ:34mm)内に秤量した。円筒型プラスチックチューブを垂直にしてナイロン網上に測定試料がほぼ均一の厚さになるように整えた後、測定試料の上に分銅(重量:310.6g、外径:24.5mm)をのせた。この円筒型プラスチックチューブ全体の重量(M1)を計量した後、生理食塩水(食塩濃度0.9重量%)60mlの入ったシャーレの中に測定試料及び分銅の入った円筒型プラスチックチューブを垂直に立ててナイロン網側を下面にして浸し、60分静置した。60分後に、円筒型プラスチックチューブをシャーレから引き上げ、これを斜めに傾けて底部に付着した水を一箇所に集めて水滴として垂らすことで余分な水を除去した後、測定試料及び分銅の入った円筒型プラスチックチューブ全体の重量(M2)を計量し、下記式から加圧下吸収倍量を求めた。なお、使用した生理食塩水及び測定雰囲気の温度は25℃±2℃であった。
AUL(g/g)={(M2)−(M1)}/0.16
【0062】
(5−2)FSC(自由膨潤倍率)
目開き63μm(JIS Z8801−1:2006)のナイロン網で作製したティーバッグ(縦20cm、横10cm)に測定試料1.00gを入れ、生理食塩水(食塩濃度0.9重量%)1,000ml中に無撹拌下、1時間浸漬した後、15分間吊るして水切りした。ティーバックを含めた重量(h1)を測定し次式から保水量を求めた。なお、使用した生理食塩水及び測定雰囲気の温度は25℃±2℃であった。
FSC(g/g)=(h1)−(h2)
なお、(h2)は、測定試料の無い場合について上記と同様の操作により計測したティーバックの重量である。
【0063】
(5−3)CRC(遠心分離機保持容量)
FSCの測定後、ティーバッグごと、遠心分離器にいれ、150Gで90秒間遠心脱水して余剰の生理食塩水を取り除き、ティーバックを含めた重量(h3)を測定し次式から保水量を求めた。
CRC(g/g)=(h3)−(h4)
なお、(h4)は、測定試料の無い場合について上記と同様の操作により計測したティーバックの重量である。
【0064】
(6)紙おむつの物性評価
(6−1)吸収量
(4)で作成した紙おむつを生理食塩水(食塩濃度0.9重量%)10,000ml中に無撹拌下、1時間浸漬した後、15分間吊るして水切りした。重量(h5)を測定し次式から吸収量を求めた。なお、使用した生理食塩水及び測定雰囲気の温度は25℃±2℃であった。
吸収量(g/枚)=(h5)−(h6)
なお、(h6)は、浸漬前の紙おむつ重量である。
【0065】
(6−2)保水量
吸収量の試験後、遠心分離器にいれ、150Gで90秒間遠心脱水して余剰の生理食塩水を取り除き、重量(h7)を測定し次式から保水量を求めた。
保水量(g/枚)=(h7)−(h6)
【0066】
(6−3)吸収速度
(4)で作成した紙おむつをトップシートが上側になるように水平面上に置き、中心部分に測定用の筒付きステンレスプレート(重量200g)を乗せ、中心部の円筒中に生理食塩水(食塩濃度0.9重量%)80gを一気に流し込む。筒内の生理食塩水が紙おむつ中に吸収されるのに要する時間を測定し吸水速度とする。
【0067】
(6−4)逆戻り量
吸収速度の試験後、5分間放置した後、測定用の筒付きステンレスプレートを取り外し、約20gの濾紙(重量を精秤し、W1gとする)を乗せ、更に3.5kgの錘を乗せて3分間加圧する。3分後、濾紙を取り除き、その重量を測定する(W2g)。以下の式で逆戻り量を求める。
逆戻り量(g)=W2−W1
【0068】
(6−3)と(6−4)の操作をさらに2回繰り返し、全部で3回の測定を行う。なお、逆戻り量の測定において、2回目の測定に使用するろ紙は約30g、3回目の測定に使用するろ紙は約40gとする。
【0069】
【表1】
【0070】
比較例1では使用した架橋剤の水溶率が95%を超過していたため、紙おむつの逆戻り量が2〜3回目において増大した。実施例1では、AULが比較例1と同等ながら、FSCおよびCRCを向上させることが出来た。さらに、実施例2〜4では、比較例よりもAULを向上させた上で、FSC、CRCも向上させることが出来た。また、実施例1〜4では、紙おむつの吸収量、保水量、吸収速度を比較例1と同等かそれ以上に向上させたうえで、逆戻り量を大きく低減できた。
【解決手段】ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂との反応性を有し、水溶率が95%以下である架橋剤、及び、水と、水よりも沸点が高い親水性溶媒との混合溶媒を含む、吸水性樹脂架橋剤組成物。