【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような熱交換器の例が、例えば米国特許第5732981 号明細書の文献に見出されることができ、この文献は、高温の非冷却パイプと冷却パイプとの間のジョイントを開示しており、非冷却パイプの端部は断面で二又に分かれており、その間に可撓性要素、例えばOリングを有しており、冷却パイプの表面及び非冷却パイプの内部の表面に密に載置されている。しかしながら、この先行技術の装置の不利点は、前記管状連結部材の内側壁部分が高温の反応ガスの通過により軸方向に膨張するとき、密閉部材が押しつぶされる場合があるので、密閉部材が破損する場合があるということである。適切に密閉されなければ、高温の反応ガスは、このように同様に破損する場合がある耐火性充填材料が充填された中間空間に漏れる場合がある。
【0004】
米国特許出願公開第2010/0319888 号明細書には、反応ガスを冷却するための先行技術の熱交換器の別の例が開示されている。密閉部材を更に保護しようとして、管状連結部材の内側から密閉部材にこれ以上到達することができず、一定期間後に前記密閉部材の交換が必要であることが判明した場合、例えば摩耗の場合、前記密閉部材の交換が著しく複雑になる。
【0005】
これらの先行技術の熱交換器の別の問題は、前記耐火性充填材料が、前記管状連結部材の内側壁部分と外側壁部分との熱膨張差により破損するか、又は押しつぶされる場合があるということである。
【0006】
更なる問題として、冷却可能な前記二重壁管の前記内側管状壁及び前記外側管状壁によって画定される空間に冷媒が効率的に流れないということがある。
【0007】
本発明の目的は、前述した問題の一又は複数を解決又は緩和することである。特に、本発明の第1の態様は、プロセスの全ての段階の様々な温度範囲で耐火性充填材料を効果的に密閉する、反応ガスを急冷するための改善された熱交換器を提供することを目的とする。本発明の別の目的は、必要な場合に効率的に修理することができる熱交換器を提供することである。本発明の第2の態様は、前記管状連結部材の内側壁部分と外側壁部分との熱膨張差を補償する、反応ガスを急冷するための改善された熱交換器を提供することを目的とする。本発明の第3の態様は、冷却可能な前記二重壁管の前記内側管状壁及び前記外側管状壁によって画定される前記空間に冷媒を効率的に流すことができる、反応ガスを急冷するための改善された熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これらの目的のために、本発明の第1の態様によれば、反応ガスを急冷するための熱交換器において、− 内側管状壁及び外側管状壁を有する冷却可能な二重壁管であって、前記内側管状壁は、急冷する前記反応ガスを搬送すべく構成されており、前記内側管状壁及び前記外側管状壁によって画定される空間が冷媒を搬送すべく構成されている前記二重壁管と、− 耐火性充填材料が充填された中間空間を画定する外側壁部分及び内側壁部分を含み、二又に分かれている長手断面を有する管状連結部材であって、前記管状連結部材の合流端部が、冷却不可能な反応ガスを搬送するパイプと連結して配置されており、前記外側壁部分は、冷却可能な前記二重壁管の前記外側管状壁と連結されており、前記内側壁部分と冷却可能な前記二重壁管の前記内側管状壁との間に軸方向の間隙が残されている前記管状連結部材と、− 前記内側壁部分と冷却可能な前記二重壁管の前記内側管状壁との間の前記軸方向の間隙を密閉すべく構成されている密閉部材とを備えており、前記密閉部材と係合する前記内側管状壁の縁部が、前記密閉部材と係合する斜面を含む、少なくとも部分的に傾斜した縁部を有していることを特徴とする熱交換器が提供される。特に、前記密閉部材と係合する前記内側管状壁の縁部は、前記密閉部材と係合する斜面を含む、少なくとも部分的に傾斜した縁部を有している。密閉部材が前記内側管状壁の少なくとも部分的に傾斜した縁部の斜面と係合するので、密閉部材は、前記管状連結部材の前記内側壁部分の軸方向の熱膨張中に前記斜面に沿って徐々に移動し得るため、前記管状連結部材の前記内側壁部分と前記外側壁部分との熱膨張差が部分的に補償される。このようにして、前記内側管状壁の縁部と前記管状連結部材の軸方向に膨張する内側壁部分との間での前記密閉部材の押しつぶしが回避され得る。
【0009】
好ましい実施形態では、前記密閉部材は、摺動自在に重なる薄肉端部を有してもよい。前記摺動自在に重なる薄肉端部を結合すると、リング状の密閉部材が形成され得る。密閉部材が設けられる、前記内側管状壁と前記管状連結部材の前記内側壁部分との間の軸方向に制限された空間により、前記密閉部材の熱膨張は特に、前記密閉部材の周方向の膨張になり、このような膨張は、前記摺動自在に重なる薄肉端部によって補償され得るため、優れた密閉性を、閉ループ密閉部材より効率的な方法で異なる温度範囲で得ることができる。加えて、前記管状連結部材の前記内側壁部分の軸方向の熱膨張中に前記密閉部材が前記斜面に沿って徐々に移動するため、前記摺動自在に重なる薄肉端部は、前記リング状の密閉部材の直径の僅かな変化をも補償し得る。
【0010】
有利には、前記密閉部材は、前記内側管状壁の前記少なくとも部分的に傾斜した縁部に対して前記密閉部材を押し付けるために配置されたばね状要素を有し得る。前記ばね状要素の弾性は、全ての温度範囲で優れた密閉性を保証し得る。特に前記ばね状要素は、温度の急激な低下が伴うシャットダウン中に密閉部材が元の形状に迅速に戻ることを保証し得る。
【0011】
更に好ましい実施形態では、前記内側管状壁の前記縁部は径方向の内側に傾斜していてもよい。このような径方向の内側への傾斜は、前記管状連結部材の内側から密閉部材に到達することができる位置に設けられ得るため、保守が必要な場合に保守を容易にするという利点を有する。或いは、前記内側管状壁の前記縁部は更に径方向の外側に傾斜していてもよい。
【0012】
まだ更に好ましい実施形態では、前記密閉部材と係合する前記内側壁部分の縁部が、前記内側管状壁の前記縁部の側の前記少なくとも部分的に傾斜した縁部から径方向に間隔を空けて、前記少なくとも部分的に傾斜した縁部と実質的に平行な斜面を含む部分的に傾斜した縁部を有してもよい。前記内側壁部分の熱膨張中、前記内側壁部分、特に前記斜面は径方向及び軸方向の両方に膨張してもよく、従って、前記管状連結部材の内側と耐火性充填材料が充填された前記中間空間との間の第2の密閉部分を形成する前記内側管状壁の前記縁部の側の前記少なくとも部分的に傾斜した縁部と係合する。両方の斜面の径方向及び/又は軸方向への離隔距離が、好ましくは前記管状連結部材の最大の熱膨張差以下であることが当業者には明らかである。
【0013】
前記密閉部材は、好ましくは前記管状連結部材の前記内側壁部分の前記部分的に傾斜した縁部の傾斜していない部分と係合してもよい。このように密閉部材が、一方の軸方向の側で前記内側管状壁の少なくとも部分的に傾斜した縁部の斜面と係合し、他方の軸方向の側で前記管状連結部材の前記内側壁部分の前記部分的に傾斜した縁部の傾斜していない部分と係合するので、傾斜していない部分は、前記管状連結部材の前記内側壁部分の軸方向の熱膨張中に前記密閉部材の比較的自由で容易な径方向の移動を可能にする一方、前記管状連結部材の前記内側壁部分の前記部分的に傾斜した縁部の前記傾斜していない部分での前記密閉部材の比較的良好な支持を維持する。
【0014】
有利な実施形態では、前記耐火性充填材料は、軸方向及び径方向に延びている少なくとも2つのスリットによって分離した耐火性充填材料の少なくとも2つの扇形部分を有してもよい。前記管状連結部材の径方向により膨張する内側壁部分と前記管状連結部材の径方向にあまり膨張しない外側壁部分との間に押しつぶされる場合がある前記耐火性充填材料の破損を回避するために、前記少なくとも2つのスリットは前記耐火性充填材料の周方向の熱膨張を吸収することができ、膨張差は高温の反応ガスへの近さの差によるものである。耐火性充填材料は、例えば180 °の2つの扇形部分、若しくは例えば120 °の3つの扇形部分に均等に分割されてもよく、又は不均等な扇形部分に分割されてもよい。この特徴は、それ自体で発明とみなされ得る。
【0015】
より有利な実施形態では、前記少なくとも2つのスリットは、高温用途でよく知られているセラミックペーパーの層を有し得る。比較的軟質の充填材料であるセラミックペーパーの前記層は、前記管状連結部材の前記内側壁部分と前記外側壁部分との周方向の熱膨張差を吸収することができる。或いは、前記少なくとも2つのスリットは薄層のセラミック材料を有してもよい。
【0016】
セラミックペーパーの層が、前記耐火性充填材料と前記管状連結部材の前記外側壁部分との間に設けられていることが好ましい。前記層の厚さは、前記管状連結部材の前記内側壁部分と前記外側壁部分との径方向の熱膨張差を適切に補償する機能という点で選択されてもよい。代替例として、セラミックペーパーの前記層は、処理しにくいドライアウトプロセス中にガス化する無灰の熱分解性ポリマー材料と取り換えられてもよい。
【0017】
前記耐火性充填材料は、好ましくは異なる熱伝導率を有する耐火性充填材料の少なくとも2つの層を軸方向に有してもよく、前記耐火性充填材料の少なくとも2つの層の熱伝導率は、冷却可能な前記二重壁管に向かって減少する。このようにして、断熱性が冷却可能な二重壁管に向かって高まる一方、管状連結部材の合流端部に対する応力が減少し得る。
【0018】
好ましい実施形態では、冷却可能な前記二重壁管の前記外側管状壁は、少なくとも部分的にマンガン及び/又はモリブデンから形成されている。これらの材料の一方又は両方を使用することにより、前記外側管状壁の厚さが減少して長さが増加する可能性がもたらされ、その結果、冷却可能な前記二重壁管の前記内側管状壁と前記外側管状壁との熱膨張差による前記内側管状壁の軸方向の圧縮が減少する。或いは、炭素鋼が冷却可能な前記二重壁管の前記外側管状壁のために更に使用されてもよく、又は当業者に周知の他の適切な材料が使用されてもよい。
【0019】
有利な実施形態では、冷却可能な前記二重壁管は、前記管状連結部材に近い冷却可能な前記二重壁管の下端部側で、冷却可能な前記二重壁管の前記内側管状壁及び前記外側管状壁によって画定される前記空間に冷媒を流入させるべく配置された冷媒入口ノズルを有している。このようにして、冷媒は、前記内側管状壁内の高温の気体が依然として最も高い温度を有して冷媒を最も必要とするレベルで二重壁管に流入する。
【0020】
より有利な実施形態では、前記冷媒入口ノズルは、冷却可能な前記二重壁管の前記外側管状壁と前記管状連結部材の前記外側壁部分との間に延びて冷却可能な前記二重壁管の前記内側管状壁を囲んでいる冷媒ボックスに含まれている。冷媒ボックスを冷却可能な前記二重壁管と前記管状連結部材との間に挿入することにより、例えばより厚い外側管状壁を必要とする、冷媒入口ノズルと関連する構造上の制約にその部分が比較的容易に適用され得る。或いは、冷却可能な前記二重壁管の前記外側管状壁は、冷媒入口ノズルを直接有し得る。
【0021】
熱交換器は、好ましくは冷却可能な前記二重壁管の前記内側管状壁及び前記外側管状壁によって画定される前記空間への冷媒の流れを導くために配置された少なくとも1つのバッフルを有してもよい。このようなバッフルは、冷媒の流れを規制することにより冷却の効果を高め得る。更に、バッフルは冷媒の流れの滞留を防ぐことができ、前記冷媒入口ノズルの反対側で冷却可能な二重壁管の底レベルでのアンダー析出腐食を防ぐことができる。アンダー析出腐食は、冷媒に存在する少量の塩が沈殿し得る場合に生じる。塩が沈殿する領域が熱流束を受ける場合、冷媒、例えば水が蒸発し、塩が後に残る。このような高濃度の塩は、沈殿物の真下の水空間の表面を攻撃する。
【0022】
前記少なくとも1つのバッフルは、好ましくは冷却可能な前記二重壁管の前記内側管状壁の外側に固定して連結されてもよい。このように、前記少なくとも1つのバッフルは、冷却可能な前記二重壁管の前記内側管状壁と前記外側管状壁との間で冷媒を搬送する環状空間内に設けられており、前記内側管状壁の周りで冷媒を効率的に流す。或いは、前記少なくとも1つのバッフルは更に、冷却可能な前記二重壁管の外側管状壁、又は前記冷媒ボックスの壁、特に前記冷媒入口ノズルの壁に固定されてもよい。
【0023】
好ましい実施形態では、少なくとも1つのバッフルは前記冷媒入口ノズルの方向に延びてもよい。この少なくとも1つのバッフルは、前記管状連結部材に近い冷却可能な二重壁管の前記内側管状壁の下端部側の周りの前記冷媒入口ノズルから入る冷媒の流れを分離して導くことを促進し得る。代替例では、前記少なくとも1つのバッフルは、例えば前記冷媒ボックスの前記冷媒入口ノズルの真上で、前記二重壁管の前記内側管状壁及び前記外側管状壁によって画定される前記環状空間の別の位置に更に配置されてもよい。
【0024】
前記少なくとも1つのバッフルが、前記冷媒入口ノズルの中心軸に対して偏心していることが有利である。このようにして、前記二重壁管の前記内側管状壁の周りの均一でない渦が生成されて、冷却効果を高めることができる。
【0025】
より有利な実施形態では、前記熱交換器は、入ってくる前記冷媒の流れが2つの横断方向に導かれるように少なくとも2つの交差して配置されたバッフルを有してもよく、前記二重壁管の前記内側管状壁の周りで流れる冷媒の渦巻き効果を高める。
【0026】
本発明の第2の態様によれば、反応ガスを急冷するための熱交換器において、− 内側管状壁及び外側管状壁を有する冷却可能な二重壁管であって、前記内側管状壁は、急冷する前記反応ガスを搬送すべく構成されており、前記内側管状壁及び前記外側管状壁によって画定される空間が冷媒を搬送すべく構成されている前記二重壁管と、− 耐火性充填材料が充填された中間空間を画定する外側壁部分及び内側壁部分を含み、二又に分かれている長手断面を有する管状連結部材であって、前記管状連結部材の合流端部が、冷却不可能な反応ガスを搬送するパイプと連結して配置されており、前記外側壁部分は、冷却可能な前記二重壁管の前記外側管状壁と連結されており、前記内側壁部分と冷却可能な前記二重壁管の前記内側管状壁との間に軸方向の間隙が残されている前記管状連結部材と、− 前記内側壁部分と冷却可能な前記二重壁管の前記内側管状壁との間の前記軸方向の間隙を密閉すべく構成されている密閉部材とを備えており、前記耐火性充填材料は、軸方向及び径方向に延びている少なくとも2つのスリットによって分離した耐火性充填材料の少なくとも2つの扇形部分を有していることを特徴とする熱交換器が提供される。このような熱交換器は、前述した利点の一又は複数を有し得る。
【0027】
本発明の第3の態様によれば、反応ガスを急冷するための熱交換器において、− 内側管状壁及び外側管状壁を有する冷却可能な二重壁管であって、前記内側管状壁は、急冷する前記反応ガスを搬送すべく構成されており、前記内側管状壁及び前記外側管状壁によって画定される空間が冷媒を搬送すべく構成されている前記二重壁管と、− 耐火性充填材料が充填された中間空間を画定する外側壁部分及び内側壁部分を含み、二又に分かれている長手断面を有する管状連結部材であって、前記管状連結部材の合流端部が、冷却不可能な反応ガスを搬送するパイプと連結して配置されており、前記外側壁部分は、冷却可能な前記二重壁管の前記外側管状壁と連結されており、前記内側壁部分と冷却可能な前記二重壁管の前記内側管状壁との間に軸方向の間隙が残されている前記管状連結部材と、− 前記内側壁部分と冷却可能な前記二重壁管の前記内側管状壁との間の前記軸方向の間隙を密閉すべく構成されている密閉部材と、− 冷却可能な前記二重壁管の前記内側管状壁及び前記外側管状壁によって画定される前記空間への冷媒の流れを導くために配置された少なくとも2つの互いに交差して配置されたバッフルとを備えていることを特徴とする熱交換器が提供される。このような熱交換器は、前述した利点の一又は複数を有し得る。
【0028】
本発明を、例示的な実施形態の図面を参照して更に説明する。対応する要素は対応する参照符号で示されている。