(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979501
(24)【登録日】2021年11月17日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】車両サスペンション
(51)【国際特許分類】
B60G 3/28 20060101AFI20211202BHJP
【FI】
B60G3/28
【請求項の数】14
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-165543(P2020-165543)
(22)【出願日】2020年9月30日
(62)【分割の表示】特願2016-566974(P2016-566974)の分割
【原出願日】2015年5月8日
(65)【公開番号】特開2021-4034(P2021-4034A)
(43)【公開日】2021年1月14日
【審査請求日】2020年10月15日
(31)【優先権主張番号】1408114.5
(32)【優先日】2014年5月8日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】509257444
【氏名又は名称】ゴードン・マレー・デザイン・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 俊和
(72)【発明者】
【氏名】コパック,フランク
【審査官】
浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】
特表2012−519621(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0061937(US,A1)
【文献】
特開平02−074408(JP,A)
【文献】
実開昭63−052603(JP,U)
【文献】
特開2003−146038(JP,A)
【文献】
特開2006−130999(JP,A)
【文献】
実開昭63−115806(JP,U)
【文献】
実開昭58−182810(JP,U)
【文献】
米国特許第05845926(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハブキャリア及び支持アームのアセンブリであり、前記支持アームが、進行方向において互いに間隔が置かれた2つのポイントで前記ハブキャリアと接続されるアームであると共に、シャーシへの取付けのための支持アーム接続ポイントへ向けて前記2つのポイントから内側へ向けて延びるアームであるアセンブリと、
前記シャーシへの取付けのためのトレーリングリンク接続ポイントへ向けて前記アセンブリから前記支持アームを横断する方向に延びるトレーリングリンクと、
前記2つのポイントから縦方向に間隔が置かれた単一の位置で前記ハブキャリアに接続されると共に、前記シャーシへの取付けのための単一接続ポイントへ向けて前記単一の位置から内側へ向けて延びるトーコントロールリンクと、
を有し、
前記支持アームが、前記支持アーム接続ポイントから前記2つのポイントのそれぞれへと分岐して延びる一対のアームを有し、
前記トーコントロールリンクがシャーシに接続される前記単一接続ポイントが、前記支持アームがシャーシに接続される支持アーム接続ポイントよりも内側に位置する、車両サスペンション。
【請求項2】
前記トレーリングリンクが前記アセンブリから前方方向に向けて延びる、請求項1に記載の車両サスペンション。
【請求項3】
シャーシへの取付けのための接続ポイントへ向けて上方に延びるストラットを更に有する、請求項1又は請求項2に記載の車両サスペンション。
【請求項4】
前記ストラットがスプリングを有する、請求項3に記載の車両サスペンション。
【請求項5】
前記ストラットがショックアブソーバーを有する、請求項3又は請求項4に記載の車両サスペンション。
【請求項6】
前記ハブキャリアが前後方向に延びる枢動ピンを含むと共に、前記2つのポイントを規定する2つの枢動ポイントであり前記支持アーム上の2つの枢動ポイントを、前記枢動ピンが貫通する、請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載の車両サスペンション。
【請求項7】
前記支持アーム接続ポイントの取付けは、前記支持アームが前記シャーシに対してすべての方向に運動可能な取付けである、請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載の車両サスペンション。
【請求項8】
ラバーブッシングを介してスタッドに取り付けられた円筒部分で、前記支持アームがシャーシに取り付けられる、請求項1〜7のうちのいずれか1項に記載の車両サスペンション。
【請求項9】
前記トレーリングリンクがハブキャリアに接続されている、請求項1〜8のうちのいずれか1項に記載の車両サスペンション。
【請求項10】
前記トレーリングリンクが前記枢動ピンの端部に接続されている、請求項6に記載の車両サスペンション。
【請求項11】
前記ハブキャリアに支持された軸を更に有する、請求項1〜10のうちのいずれか1項に記載の車両サスペンション。
【請求項12】
前記軸が駆動軸である、請求項11に記載の車両サスペンション。
【請求項13】
前記軸に装着された車輪を更に有する、請求項12に記載の車両サスペンション。
【請求項14】
シャーシと少なくとも2つの車輪を有する車両であって、
前記2つの車輪を前記車両の片側に1つずつ有し、
前記車輪のそれぞれが前記シャーシに、請求項11又は請求項12に記載の車両サスペンションを介して取り付けられている、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のサスペンションに関する。
【背景技術】
【0002】
車両が走行している表面に車輪を接触させ続けるため、かつ、その表面内の凹凸の少なくとも一部から車体を保護するためには、車両にサスペンション機構が必要である。前者の要請は車両の安全で有効な操作を保証するのに必要であり、後者の要請は乗車の快適性の必要レベルを提供するために必要である。一般的に、これらの要請は相反する方向に働くため、サスペンション機構は両者の間の妥協点である。様々なサスペンション機構が知られている。
【0003】
マクファーソンストラットサスペンションは、しばしばフロントサスペンションに用いられ、第2のリンクによって安定化されたウィッシュボーン又は実質的な圧縮リンクを含み、ホイールハブ又は車軸の下方取付位置を提供する。この下方アーム機構は、車輪の横方向及び長手方向の配置を提供する。ハブの上部はスプリング付きかつダンパー付きのストラットの内側部分に強固に取り付けされており、そのストラットは車両のボディシェルの取付部の方へ真っ直ぐ上方に延びている。
【0004】
ダブルウィッシュボーンサスペンションは、それぞれが「A」又はウィッシュボーンの形である2つ(上方及び下方)のアームを使用することにより、車輪を位置決めしている。それぞれのアームは、シャーシ上に2つの搭載ポイントと、ナックルにおける1つのジョイントとを有する。ショックアブソーバーとコイルスプリングが、ウィッシュボーンに搭載され、縦方向の移動を抑制している。ダブルウィッシュボーンの設計によって、エンジニアは、キャンバー角、キャスター角、トーパターン、ロールセンター高さ、スクラブ半径、スカッフ、その他のようなパラメータを調節することで、サスペンションの運動域に亘って車輪の運動を慎重に調整することができる。
【0005】
マルチリンクサスペンションは、3つ以上の横方向のアームと、1つ以上の長手方向のアームと共に使用することにより、ホイールハブの運動を規定し、制約する。これらのアームは、長さが等しくある必要はなく、『明らかな』方向から傾斜していてもよい。典型的には、それぞれのアームは、各端部において、球状ジョイント(ボールジョイント)又はラバーブッシングを有しており、そのため、曲げではなく、引張及び圧縮によりそれ自体の長さに沿って負荷に対し反作用する。マルチリンクの中には、1つの端部に2つのブッシングを有するトレーリングアーム又はウィッシュボーンを用いるものもある。
【0006】
すべては相対的に有利な効果と不利な効果を有しており、典型的には、コストや機構の複雑さに対して達成可能な、乗車快適性又はハンドリングのレベルのバラツキを反映している。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、有意に少ないパーツ数を用いつつ、現在設定されている要求基準を満足する又は上回る乗車快適性及び/又はハンドリングのレベルを提供する車両用サスペンション機構を提供することを目的とする。
【0008】
このようなパーツ数の減少は、使用に大きく有利な効果をもたらす。作製及び組立てが必要なパーツ数が少なければ、結果として組立て費用が直接的に減少することから、直接的な有利な効果は、当然ながら、機構のコスト面にある。しかしながら、組立て業者やディーラーに求められるパーツの在庫レベルの低下、材料使用量の低下、機構及び車両の重量の低下等、パーツ数の減少により他の有利な効果も生じる。これらの要因は、車両の製造コストを低下させると共に、燃料消費、サービスコスト、及び環境への影響の点で、車両のランニングコストの低下に直接貢献する。
【0009】
そこで、本発明は、ハブキャリア及び支持アームのアセンブリであり、前記支持アームが、進行方向において互いに間隔が置かれた2つのポイントで前記ハブキャリアと接続されるアームであると共に、シャーシへの取付けのための支持アーム接続ポイントへ向けて前記2つのポイントから内側へ向けて延びるアームであるアセンブリと、前記シャーシへの取付けのためのトレーリングリンク接続ポイントへ向けて前記アセンブリから前記支持アームとを横断する方向に延びるトレーリングリンクと、前記2つのポイントから縦方向に間隔が置かれた単一の位置で前記ハブキャリアに接続されると共に、前記シャーシへの取付けのための単一接続ポイントへ向けて前記単一の位置から内側へ向けて延びるトーコントロールリンクと、を有する、車両サスペンションを提供するものである。
【0010】
トレーリングリンクは、アセンブリから前方方向に向けて延びていることが好ましく、それにより、トレーリングリンクを張力を受ける状態に置くこと、座屈する可能性を低下させること、そして、より軽量で、製造原料がより少量である細身の部材とすること、ができる。
【0011】
シャーシへの取付けのための接続ポイントへ向けて上方に延びるストラットを設けることができ、(好ましくは)通常のスプリング及びダンパーと共に、サスペンションの必要な縦方向の位置を提供することができる。
【0012】
トーコントロールリンクは、支持アームがハブキャリアに接続される2つのポイントよりも外側に位置するポイントでハブキャリアに接続されていることが好ましい。同様に、トーコントロールリンクがシャーシに接続される単一接続ポイントが、支持アームがシャーシに接続される支持アーム接続ポイントよりも内側に位置することが望ましい。
【0013】
支持アームは、接続ポイントから2つのポイントのそれぞれへと分岐して延びる一対のアームを有していてもよい。これらの2つのアームのうち、一方がトーコントロールリンクよりも短いことが好ましい。これは、実質的に、ウィッシュボーン型であるが、通常の向きとは異なる向きに取り付けられている。支持アーム接続ポイントの取付けは、支持アームがシャーシに対してすべての方向に運動可能な取付けであることが好ましく、例えば、ラバーブッシングを介してスタッドに取り付けられた円筒部分で支持アームが取り付けられる取付けであることが好ましい。
【0014】
ハブキャリアは、前後方向に延びる枢動ピンを含むと共に、2つのポイントを規定する2つの枢動ポイントであり、支持アーム上の2つの枢動ポイントを枢動ピンが貫通していてもよい。枢動ピンの適切な端部は、トレーリングリンクをハブキャリアへ接続するための適当な位置を提供する。このような配置は、発明者等による国際特許出願公開第2010/100412号に示されている。または、支持アームの2つのアームのそれぞれをハブキャリアへ接続するためにボールジョイントを用いることができる。
【0015】
ハブキャリアは軸を支持していることが好ましく、その軸は、エンジン、又は適切なディファレンシャル若しくは他のギアボックスから延びる駆動シャフトによって駆動されていてもよい。
【0016】
トーコントロールリンクは、スポーツ車や高性能車においてしばしば称される高負荷条件下で、特に、追加の動的形状制御を提供する。
【0017】
本発明は、更に、シャーシと少なくとも2つの車輪を有する車両であって、前記2つの車輪を前記車両の片側に1つずつ有し、前記車輪のそれぞれが前記シャーシに、上述のサスペンションを介して取り付けられている、車両に関する。
【0018】
この種の設計は、サスペンションを狭い領域内に搭載することができることから、軌道が狭い車両において特に有利な効果を奏する。これは、また、サスペンションが必要とする空間がより抑えられることから、エンジン及びパワートレインのためのより広い空間が得られるため、リアエンジン又はミッドエンジンパワートレイン(横置きもインラインも)を搭載する車両に特に適したサスペンションとすることができる。多くの設計者は、サスペンション、ドライブシャフト、及びパワートレインを、利用可能な空間の中に収めることに苦慮しており、複雑な金属プレスサスペンションを採用しなければならない。
【0019】
本願において、参照される方向又は向きは、サスペンションが取り付けられる、若しくは取り付けられようとしている車両に対してのものと解釈されることが意図されている。すなわち、「前方」又は「前」の方向とは、車両の前を向く方向であり、「後方」又は「後ろ」の方向も、同様にして解釈されるべきである。同様に、「内側」のような方向は、車両の中心線を向く方向であり、「外側」はその反対を意味する。(特段指摘しない限り)厳密な幾何学的整列は意図されていない;そのため、「前方」方向は必ずしも車両の進行方向に正確に整列した方向に限定されるわけではないが、後方又は内側方向に対して前方方向であることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0020】
以下の添付図面を参照しつつ、本発明の一形態を実施例によって説明する。
【
図1】
図1は、サスペンション機構の斜視図を示す。
【
図2】
図2は、サスペンション機構の上方からの図を示す。
【
図3】
図3は、サスペンション機構の後方からの図を示す。
【
図4】
図4は、本発明のサスペンション機構が装着された車両の後部の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
現代的で、軽量かつ高効率の超コンパクトシティカーにおいては、優れたキャンバー及びトーのコントロールを有する、独立した軽量のリアサスペンションが必要である。実装の理由から、横置きのリアエンジンと変速機を近接させて搭載することを許容するサスペンションとする必要もある。通常の慣行では、トレーリングアーム、セミトレーリングアーム、ド・ディオン又はセミド・ディオン型のサスペンションのいずれかが用いられる。しかしながら、これらは極めて重量であり、高価であり、タイヤの接触面においてキャンバー及びトーのコントロールが極めて不十分である。多くの場合、左右の独立は提供されない。従来のマクファーソンストラット機構の有利な効果をすべて提供し、横方向のコンプライアンスと長手方向のコンプライアンスとをいっそう効果的に分離する追加の有利な効果を有する機構を設計することを目指している。
【0022】
図1は、本発明の一形態を示しており、車輪とそれに接続されたサスペンションの形で、使用時には接続される車両シャーシから分離されて示されている。
【0023】
そのため、リム14上に装着されたタイヤ12を有する車輪10は、ホイールハブ16にボルト止めされている。これは軸に接続されており、そのアセンブリは、ハブキャリア20上で回転可能に支持されている。ドライブシャフト21は、ディファレンシャルから軸18に通じており、車輪10に駆動トルクを伝達し、車両を推進させる。
【0024】
ハブキャリア20は、軸18及びハブ16のためのマウントであって、その上で回転可能とするための適切なベアリング(図示せず)を含むマウントと、内側に伸びる補強フランジであって、ハブキャリア20に剛性を与え、サスペンション要素のための取付ポイントを提供する補強フランジと、を含む。上方フランジ22はハブキャリア20の上方端から延びており、また、前方フランジ24及び後方フランジ26としての2つの側方フランジと、下方フランジ27とが延びている。これらのフランジには、以下の主要なサスペンション要素が接続されている。
【0025】
第一に、反転したウィッシュボーン28は、機構に横方向のコンプライアンスをもたらす。これは、シャーシとの接続ポイント30が単一となるよう反転しており、通常の慣行とは異なっている。単一の接続ポイント30からは、2本のウィッシュボーンアーム32、34が(それぞれ)下方フランジ27上の前方接続ポイント36及び後方接続ポイント38へ向けて延びており、その近傍において、下方フランジ27はハブキャリア20のそれぞれの側方フランジ24、26と接合している。それぞれの接続ポイント30は、接続に適切な調節を提供するボールジョイントを介するものである。
【0026】
前方接続ポイント及び後方接続ポイントの別形態は、側方フランジ24、26の開口部を通り、かつ、ウィッシュボーンアーム32、34の端部において対応する円筒形部分を通るロッドである。すなわち、ウィッシュボーンアーム32、34はロッド40に取り付けられており、車輪が上下に移動した場合に必要な相対回転が可能である。このような配置は、発明者らの先願である国際公開第2010/100412号に示されている。
【0027】
類似のボールジョイントは、シャーシとの接続ポイント30に含まれており、前後の調整を可能とするために縦方向を向いている。これは、シャーシ上で適切なスタッド42(
図1に図示せず)等に取り付けられており、すべての方向へのウィッシュボーンアーム28の運動を制限可能とするラバーブッシング44を介して取り付けられている。
【0028】
前後のコンプライアンスを提供するために、トレーリングリンク46も設けられている。これは、ラバーブッシング52を介して、類似のスタッドに取り付けられた横方向に位置合わせされた円筒リンク48によって、シャーシに接続されている。これにより、車輪10が上下に移動する際に縦方向の面内においてトレーリングリンク46の容易な回転が可能となり、かつ、サスペンション形状を調整するために他の方向における運動も可能となる。
【0029】
その他方の端部において、トレーリングリンク46は、別のボールジョイントを介して下方フランジ27の前方端に接続されている。または、トレーリングアームは、発明者らの先願である国際公開第2010/100412号に示されているように接続されていてもよい。
【0030】
第3の主要なサスペンション要素は、ストラット60である。これは、従来のスプリング及びダンパーのユニットであり、トップマウント62を介してシャーシに接続されており、かつ、ストラット60の下端で固定されると共に、前方フランジ24に2か所でボルト留めされたブラケット64を介して、ハブキャリア20に接続されている。これにより、ストラットは、概ね縦方向におけるハブキャリアの配置を維持すると共に、車輪10の地面との接触を維持するための下方向の力と、車輪10の上方向及び下方向への運動の減衰と、を提供する。
【0031】
最後に、トーコントロールリンク66も設けられている。これは、ハブキャリア20からシャーシのハードポイント(図示せず)に向けて延びる固いロッドであり、後部のウィッシュボーンアーム34と概ね平行であるが、そこから上方に間隔を空けて配置されている。両端部のそれぞれにおいて、接続に調節を可能とするボールジョイント又は従来のブッシュ70を介して接続が形成されている。このリンク66は、ウィッシュボーン28及びストラット60によって規制された状態で、高負荷条件下での動的形状の制御を向上させる。これは、低負荷条件下では形状に影響を与えないものの、高負荷の下で追加の支持及び剛性を提供することにより一時的なゆがみを抑制し、それにより形状が正常に維持されることを保証する。
【0032】
図3は、機構を一方から示している。車輪10がハブ16に取り付けられた状態が、模式的に示されている。反転したウィッシュボーン28は、車両の前方へ向けて上方に角度が付けられているように図示されているロッド40に接続された状態で示されている。同様に、トレーリングアーム46は、そのシャーシマウント50からロッド40のU断面ブラケット54へ向けて下方に角度が付けられている。ストラットは、僅かに前方に角度が付けられており、トップマウント62はブラケット64よりも僅かに前方に位置している。これらの角度や配向は、所望のハンドリング性能を提供するために、サスペンション機構の設計上で調整することができる。
【0033】
図2は、機構を上方から示しており、トップマウント62がブラケット64の僅かに前方に位置しており、僅かに前方に角度が付けられたストラット60の角度が図示されている。後方ウィッシュボーンアーム34は前方ウィッシュボーンアーム32よりも短く、シャーシへの接続ポイント30が車輪の中央線よりも後方にあることを意味する。これにより、ドライブシャフト21が、接続ポイント30の前方かつウィッシュボーンアーム32の上方を通って、ホイールハブ16に到達するための空間を確保することができる。
【0034】
図3は、機構を後方から示しており、ドライブシャフト21が反転したウィッシュボーン28の上方を通っている。後方ウィッシュボーンアーム34の接続ポイント38が、前方ウィッシュボーンアーム32の接続ポイント36よりも僅かに低くなっているように図示されている。これら及び他の角度、並びに配向は、当然ながら、所望のハンドリング性能を提供するためにサスペンション機構の設計上で調整することができる。
【0035】
図2及び
図3に図示されているように、トーコントロールリンク66は、前方ウィッシュボーンアーム32及び後方ウィッシュボーンアーム34のそれぞれよりも長くなっている。ブッシュ70を介して接続されているシャーシのハードポイントは、ウィッシュボーン28のシャーシへの接続ポイントよりも内側に位置している。同様に、ハブ16への接続ポイントは、前方ウィッシュボーンアーム32及び後方ウィッシュボーンアーム34のそれぞれの接続ポイントよりも外側に位置している。これらの長さ及び取付ポイントは、負荷がかかった際のサスペンションの運動に影響し、上述の有利な効果の提供を助けるものである。
【0036】
図4は、上述のサスペンション機構が搭載されたコンパクトタウンカーの後方からの模式図を示している。シャーシ72は、必要な取付ポイントを提供し、エンジン及びギアボックス74を収容する。一対のドライブシャフト21が、車両の両側のホイールハブ16へ向けて、ギアボックス72から外側に両方向に突出している。1つの車輪10がそれぞれのホイールハブ16に取り付けられており、反転したウィッシュボーン28、ストラット60、及びトレーリングアーム(
図4に図示せず)を含む上述のサスペンション機構によって、各車輪が支持されている。
【0037】
図4から明らかなように、図示されている機構は、リアエンジン・リア駆動構成の後輪における要請を満足するよう設計されたものである。しかしながら、これは、例えば、駆動輪若しくは非駆動輪である前輪駆動(又は他の)配置等の他の構成に適用可能である。
【0038】
この『反転したウィッシュボーン』機構は、独立型サスペンション機構の乗車及びハンドリングに有利な効果をもたらすだけでなく、乗車及び快適性のための前後方向のコンプライアンスと、車両のハンドリング制御(キャンバー制御及びトー制御)のための縦方向のコンプライアンスと、の分離を可能とするために2つの部分でのリンク(反転したウィッシュボーン28に加えてトレーリングリンク46)を有するよう設計されている。ストラット60及びトーコントロールアーム66を有することで、機構全体が極めて軽量であり、かつ、車両の側面あたり3つのリンクと、車両の側面あたり4つの対応した要素とを備えるだけであるため製造コストが低い。
【0039】
説明された機構は、シャーシへの少数の接続ポイントしか必要とせず、それら接続ポイントをドライブシャフトから十分な空間を取って配置することができる。これは、構成要素のための空間が制限され、車輪がエンジン、ギアボックス等の近傍に搭載され得る、小型の高効率のタウンカーに特に適した機構である。
【0040】
上述の実施形態には、本発明の範囲から逸脱しない限りにおいて様々な変更がなされ得ることは、当然ながら理解されるであろう。