【実施例】
【0034】
以下に本発明の実施例に係る嚥下能力検査装置について
図1乃至
図12を参照して詳細に説明する。
【0035】
本実施例係る嚥下能力検査装置1は、
図1に示すように、被検者Mの首(頸部)2の周りにおける喉頭隆起3の領域に密着配置し、喉頭周辺領域の動きの経時的変化に応じた検出信号を出力する詳細は後述する検出器及びこの検出器を保持するとともに被検者Mの首2の周りに巻装可能な検出器装着具5を具備する検出手段4を有している。
【0036】
ここで、前記検出手段4について、
図1、
図5(a)を参照して詳述する。
【0037】
前記検出手段4は、検出器装着具5に対して各々センサー用クッション材10を介在させつつ検出器である中エアーパッドセンサー11、左エアーパッドセンサー12、右エアーパッドセンサー13を横配列に取り付けるとともに、前記中エアーパッドセンサー11の下部位置に被検者Mの喉頭隆起を目視又は指で確認するための喉頭隆起位置確認穴5aを設け、さらに、前記被検者Mの喉頭領域の嚥下音を検出する音検出エアーパッドセンサー16を設けた構成としている。
尚、音検出エアーパッドセンサー16は喉頭周辺の動きの測定に関連付けて嚥下関連音を収集するものなので、嚥下関連音の収集が不要な場合は設けなくてもよい。
【0038】
前記中エアーパッドセンサー11は、空気袋を使って被検者Mの喉頭隆起の変位を空気圧の変化として又は空気袋の振動として捉えこれを検出信号としてエアーチューブ11bから後述するデータ処理手段46に送るように構成している。
【0039】
前記左エアーパッドセンサー12、右エアーパッドセンサー13も同様にエアーチューブ12b、13bから検出信号を後述するデータ処理手段46に送るように構成している。また、前記音検出エアーパッドセンサー16も検出信号をエアーチューブ16bから後述するデータ処理手段46に送るように構成している。
【0040】
尚、前記中エアーパッドセンサー11、左エアーパッドセンサー12、右エアーパッドセンサー13、さらには前記音検出エアーパッドセンサー16としては、上述した場合の他、変位センサー、振動センサー、加速度センサー、感音センサー、光センサー、筋電センサー、静電容量センサー、超音波センサー等、喉頭隆起の変位、動き、音、電流等を用いることも可能であり、この場合センサーの種類に応じて後述するデータ処理手段46の圧電素子51は省略可能である。
【0041】
さらに
図1に示す前記検出手段4について詳述すると、前記検出手段4は、喉頭隆起3の動きの方向に沿ってこの喉頭隆起3上に密着配置する中エアーパッドセンサー11と、前記中エアーパッドセンサー11の左側に配置した左エアーパッドセンサー12と、前記中エアーパッドセンサー11の右側に配置した右エアーパッドセンサー13と、前記右エアーパッドセンサー13の近傍位置に配置した前記音検出エアーパッドセンサー16とを具備している。
【0042】
前記中エアーパッドセンサー11は、気密性を有する柔軟なゴム、樹脂、布等で作製された可撓性素材内に被検者Mの筋肉、骨等の動きを検出する検出手段4を構成する空気袋を内装した密閉空気式で、筋肉、骨等の動きを検出する空気袋を内装したものであり、また、左エアーパッドセンサー12、右エアーパッドセンサー13、前記音検出エアーパッドセンサー16も同様に構成したものであり、これらを横配列の3連式とし、また、前記音検出エアーパッドセンサー16のみを被検者の頸部側面に配置し、各可撓性素材からエアーチューブ11b、12b、13b、16bを外部に導出した構成からなるものである。
尚、音検出エアーパッドセンサー16は頸部前面よりも頸部側面に配置した方が喉頭隆起の拳上によるノイズの影響を受けずに正確に検出が可能である。
【0043】
図2は変形例の検出手段4Aを示すものであり、この検出手段4Aは、基本的構成は前記検出手段4の場合と同様であるが、検出器装着具5に対して被検者Mの喉頭隆起の移動方向(上下方向)に沿って2個構成、すなわち、既述した場合と同様な構成からなる中1エアーパッドセンサー14、中2エアーパッドセンサー15を喉頭隆起に密着するように配置したものである。尚、
図2においては前記音検出エアーパッドセンサー16の図示を省略する。
【0044】
前記中1エアーパッドセンサー14、中2エアーパッドセンサー15からはエアーチューブ14b、エアーチューブ15bを導出している。
【0045】
また、前記検出器装着具5には、中1エアーパッドセンサー14の下部に位置する配置で喉頭隆起位置確認穴5aを設けている。
【0046】
図3は、前記中エアーパッドセンサー11、左エアーパッドセンサー12,右エアーパッドセンサー13、及び、喉頭隆起位置確認穴5aの配置に対応する被検者Mの頸部内各筋を概略的に示すものである。
【0047】
前記中エアーパッドセンサー11は、被検者Mの喉頭隆起の動きを中心に検出する為に喉頭隆起の上部に対応する位置に、また、左エアーパッドセンサー12,右エアーパッドセンサー13はその左右に配置し、さらに、前記喉頭隆起位置確認穴5aは、被検者Mの喉頭隆起の動きを確認するために配置している。
【0048】
図4は、被検者Mの口腔部、頸部を縦断面状態とした場合における中エアーパッドセンサー11(丸数字1で示す)、喉頭隆起位置確認穴5a(丸数字2で示す)の配置(喉頭隆起(咽仏)の領域)を示すものである。
【0049】
図5(a)乃至(c)は本実施例に係る嚥下能力検査装置1において、前記検出手段4の詳細構造を示すものである。
【0050】
また、
図6(a)乃至(d)は本実施例に係る嚥下能力検査装置1において、前記検出手段4の首2への装着状態を示すものである。
【0051】
前記検出手段4における検出器装着具5は、ベルト状に形成されるとともに、その中央部内壁面に対して、
図5(a)に示すように、各々センサー用クッション材10を介在させつつ検出器である中エアーパッドセンサー11、左エアーパッドセンサー12、右エアーパッドセンサー13を横配列に取り付けるとともに、前記中エアーパッドセンサー11の下部位置に被検者Mの喉頭隆起を目視又は指で確認するための喉頭隆起位置確認穴5aを設けている。
【0052】
さらに、前記検出器装着具5においては、前記各センサーと喉頭隆起位置確認穴5aとの間の領域にこの検出器装着具5の長さ方向に切り込み部6を設けている。
【0053】
そして、前記切り込み部6の下段側は被検者Mの前頸部に検出器装着具5を密着するための前頸固定部領域とし、上段側は被検者Mの喉頭隆起が前記検出器に接触可能なように配置された検出器固定部領域として機能させるように構成している。さらに、前記切り込み部6の
図5(a)において右隅位置の下側には
前記音検出エアーパッドセンサー16を配置している。
尚、前記音検出エアーパッドセンサー16は左隅位置の下側に配置してもよい。
【0054】
図5(b)は、前記検出器装着具5に対して切り込み部6を一本設け、下段側の前頸固定部領域に下部クッション材7を接着などで固着した構成を示すものである。
【0055】
また、
図5(c)は、前記検出器装着具5に対して上下配置に切り込み部6、6を二本設け、下側の切り込み部6の下段側の前頸固定部領域に下部クッション材7を接着等で固着するとともに、上側の切り込み部6の上部を占める検出器固定部領域に上部クッション材8を接着などで固着する例を示している。
【0056】
このような構成により、従来被検者Mの喉頭隆起を検出器装着具で全体で固定してしまうと、喉頭隆起の動きを阻害することになり正確な口頭隆起の動きを検出できないという問題があったが、本実施例では前頸固定部領域と検出器固定部領域とを分けて構成することで、前頸固定部領域で検出器装着具5をしっかりと首2に固定し、検出器固定部領域で正確に被検者Mの自然な喉頭隆起の動き検出することが可能となる(切り込み部6の両端上方辺を固定端として検出器固定部領域が頸部径方向に動き易くなる)という利点がある。
【0057】
さらに、前記検出器装着具5の両端部には、この検出器装着具5の所要部位が被検者Mの頸部と密着接触するように、一対の面ファスナー9を対向配置に設けている。
【0058】
また、前記検出器固定部領域には、センサー用クッション材10に載置された中エアーパッドセンサー11、左エアーパッドセンサー12、右エアーパッドセンサー13が配置されており、これら中エアーパッドセンサー11、左エアーパッドセンサー12、右エアーパッドセンサー13の上面の高さと、下部クッション材7の上面の高さとはほぼ同じ高さに設定している。
【0059】
前記各エアーチューブ11b、12b、13b、16bは検出器装着具5の内側若しくは外側に沿ってデータ処理手段46に接続されるように構成している。
【0060】
尚、前記切り込み部6は一本に限定するものでなく二本以上であってもよい。
図5(c)に示すように二本の切り込み部6を必要とするか否かは被検者Mの体格の違いにより選択することが可能である。
【0061】
例えば、子供や女性等の被検者Mのように喉頭隆起が拳上した場合に喉頭隆起と舌骨の間のスペースが確保できない場合は
図5(b)に示すような一本の切り込み部6を設けた構成が適している。
【0062】
一方、成人男性等の被検者Mの場合には、比較的喉頭隆起と舌骨の間のスペースが確保されているので
図5(c)に示すような二本の切り込み部6を設けた構成が適している。
【0063】
また、
図5(a)乃至(c)に示す検出器装着具5のように、前記中エアーパッドセンサー11、左エアーパッドセンサー12、右エアーパッドセンサー13を横一列に配置することで、喉頭拳動の勢いに加え、喉頭隆起左右の筋肉の能力の測定が可能となる利点がある。
【0064】
さらに、既述した
図2に示す変形例の検出手段4Aのように、中1エアーパッドセンサー14、中2エアーパッドセンサー15を喉頭隆起の移動方向に沿って配置することで、喉頭拳上の変位をより詳細に測定することが可能となる。
【0065】
さらにまた、中1エアーパッドセンサー14、中2エアーパッドセンサー15を左右一対にして二組以上配置すれば、喉頭挙動の勢い、喉頭挙動の変位、喉頭隆起左右の筋肉の能力、喉頭蓋の開閉等、各種嚥下能力の測定を実現できる。
【0066】
この他、
図5(d)乃至
図5(f)に示すように、一つの中エアーパッドセンサー11、切り込み部6、喉頭隆起位置確認穴5aを設けた別の変形例の検出手段を構成する検出器装着具5Aのように、一つの中エアーパッドセンサー11のみを設けた構成としても、一つの中エアーパッドセンサー11及び喉頭隆起位置確認穴5aによって喉頭隆起の挙動の確認ができるので、喉頭隆起の挙動ピークから次の挙動ピークまでの時間を抽出することで、食物の飲み込み速さ(勢い)を検出することが可能である。
【0067】
前記検出器装着具5Aの残余の構成は、前記前記検出器装着具5の場合と同様である。尚、
図5(d)においては前記音検出エアーパッドセンサー16の図示を省略する。
【0068】
図6(a)乃至(d)は、本実施例に係る嚥下能力検査装置1において、前記検出器装着具5を被検者Mの首2へ装着した状態を示すものであり、このうち
図6(a)、(b)は、
図5(a)に示す検出器装着具5で、
図5(b)に示すように下部クッション材7を付加したものを使用した例を示している。
【0069】
また、
図6(c)、(d)は、
図5(a)に示す検出器装着具5で、
図5(c)に示すように下部クッション材7及び上部クッション材8を付加したものを使用した例を示している。
【0070】
図6(a)に示すドクター等の指の部分は、喉頭隆起位置確認穴5aを貫いて被検者の喉頭隆起3の位置に接触できるので、ドクター等は指の感触により喉頭隆起3の位置を確認でき、又は、喉頭隆起位置確認穴5aの内方を外側から覗くことで目視によって確認ができ、これにより測定精度、再現精度を高めることができる。
【0071】
すなわち、
図6(a)のように前記喉頭隆起位置確認穴5aを利用して目視又は指で平常時の喉頭隆起の位置を確認し、検出器装着具5を首に巻きつけて面ファスナー9で固定する。同時に、下部クッション材7で前頸部が密着固定されるとともに、センサー用クッション材10に載置された中エアーパッドセンサー11は喉頭隆起3の挙動を検出することができる。
【0072】
被検者Mの喉頭隆起3の挙動があると、
図6(b)に示すように中エアーパッドセンサー11と喉頭隆起3とが接触し、嚥下の開始から終了までの挙動を前記中エアーパッドセンサー11で測定することができる。また、その時の挙動ピークを捉えることが可能となる。
【0073】
この時、切り込み部6によって検出器固定部領域が喉頭隆起の動きを阻害することなくフリーになるので、正確に被検者Mの自然な喉頭隆起の動き検出することが可能となる。
【0074】
図6(c)、(d)は、下部クッション材7に加えて上部クッション材8を備える検出器装着具5を使用する場合を示すものであり、このような検出器装着具5を使用する場合においても、
図6(a)、(b)に示す場合と同様な使用態様によって、上述した場合と同様な作用、効果を発揮させることができる。
【0075】
図7は、本実施例係る嚥下能力検査装置1の全体構成を、
図8は嚥下能力検査装置1におけるデータ処理手段46の詳細構成を示すものである。
前記嚥下能力検査装置1は、被検者Mの首2の周りに装着される前記検出手段4と、前記検出手段4からの検出信号を基に、被検者Mの嚥下能力を検査するためのコンピュータ装置41とを有している。
【0076】
前記コンピュータ装置41は、
図7に示すように、前記嚥下能力検査装置1の動作制御、データ処理、画像処理を行うためのプログラムを格納したプログラムメモリ42と、嚥下能力検査装置1全体の制御を行う制御部43と、各種データを記憶する主記憶部44と、閾値電圧設定、計測時間設定等のための文字、数字等を入力するためのキーボード45と、前記中エアーパッドセンサー11、左エアーパッドセンサー12、右エアーパッドセンサー13、音検出エアーパッドセンサー16を含む検出手段4からの検出信号をデータ処理し、前記検出信号に対応する波形データを出力するデータ処理手段46と、前記波形データに対応する波形情報等を視認可能に出力する液晶ディスプレイ等の表示手段47と、を有している。
【0077】
次に、前記データ処理手段46について、
図8を参照して詳述する。
尚、本実施例においては、前記検出手段4における、前記中エアーパッドセンサー11、左エアーパッドセンサー12、右エアーパッドセンサー13及び音検出エアーパッドセンサー16からの各検出信号を処理する4系統構成として以下の説明を行う。
【0078】
前記データ処理手段46は、
図8に示すように、前記中エアーパッドセンサー11、左エアーパッドセンサー12、右エアーパッドセンサー13及び音検出エアーパッドセンサー16から各エアーチューブ11b、12b、13b、16bを経て伝送される検出信号(空気変動信号)を圧電変換により電気信号に変換する3個の圧電素子51と、各圧電素子51からの電気信号を増幅する3個の増幅器52と、この増幅器52により増幅された前記各検出信号に対応する電気信号に対するフィルター処理を行い、例えば、4.4kHz以上の信号をカットして、前記検出信号に対応する筋肉、舌骨、喉頭隆起3の動きを示す波形データとする3個の低域通過フィルター53と、前記波形データを取り込みデジタル波形データに変換する3個のA/D変換器54と、3個のA/D変換器54により変換された各デジタル波形データに対する詳細は後述する平滑化処理を行い、極低周波信号データを出力する3個の平滑化処理手段55と、3個の嚥下運動測定処理部56からなる嚥下運動測定処理手段57と、前記嚥下運動測定処理手段57の処理結果を記憶するデータ記憶手段58と、前記データ記憶手段58により記憶した各種データを処理して表示手段47に送る出力処理部59とを有している。
さらに、前記データ処理手段46は、前記音検出エアーパッドセンサー16からの検出信号を圧電変換により電気信号に変換する1個の圧電素子51と、この圧電素子51からの電気信号を増幅する1個の増幅器52と、前記増幅器52の出力信号のうち、可聴音周波数の領域の出力信号を通過させる可聴音通過フィルター63と、可聴音通過フィルター63からの出力信号をデジタル信号に変換するA/D変換器54と、を有し、前記A/D変換器54の出力信号を被検者Mの嚥下音情報として前記データ記憶手段58に記憶するように構成している。
このような音検出エアーパッドセンサー16から表示手段47に至る構成により、被検者Mの喉頭周辺の動きの測定と関連付けて嚥下関連音を収集して記録することができ、誤嚥性肺炎が進むと声等が嗄声化すると言われていることから、嚥下関連音を喉頭周辺の動きと関連付けて記録し、波形データとして表示することが可能となり、嚥下能力検査をより効果的に行うことができる嚥下能力検査装置を提供することが可能となる。
尚、前記中エアーパッドセンサー11、左エアーパッドセンサー12、右エアーパッドセンサー13、前記音検出エアーパッドセンサー16に関して、空気袋の振動を検出構成の場合には、前記圧電素子51に替えて例えばコンデンサマイクのような振動・電気変換素子を使用してもよい。
また、喉頭周辺の動きの測定と関連付けて記録された嚥下関連音は、波形データとして表示する表示手段に替えて、スピーカ等から発音する手段であってもよい。
【0079】
前記嚥下運動測定処理手段57の嚥下運動測定処理部56は、
図9に示すように、前記閾値信号と測定時間信号とを基に、平滑化処理後の波形データを基に被検者Mの所定の測定時間内の嚥下回数を測定し出力する嚥下回数測定部61と、平滑化処理後の波形データを出力する波形データ伝送部62とを具備している。
【0080】
図10は、被検者Mにおける唾液、水や食塊(以下「食塊S」という)の嚥下時における口腔期、喉頭期、食道期の説明図であり、
図10左欄に示す口腔期においては、食べ物は噛み砕かれて唾液と混ぜ合わせて食塊S(飲み込みやすい塊)となり、口からのど(咽頭)へと送り込まれる。
【0081】
次に、
図10中欄に示す喉頭期においては、舌尖が持ち上がり食塊Sが咽頭に達すると、舌骨が持ち上げられ同時に喉頭も上前方に持ち上げられ喉頭蓋が下がり気管の入口を塞ぐ。
【0082】
さらに、
図10右欄に示す食道期においては、食塊Sが咽頭から送られてくると食道入口部が一過性に開大して蠕動運動が誘発され、食塊Sを食道下方に送り込む。被検者Mの上述した一連の嚥下動作に伴い喉頭隆起3は変位することになる。
【0083】
次に、
図11、
図12を参照して本実施例に係る嚥下能力検査装置1における前記平滑化処理手段55による検出信号の平滑化処理、及び、前記嚥下運動測定処理部56の測定処理について説明する。
【0084】
前記平滑化処理手段55は、
図11上覧に示す例えば前記中エアーパッドセンサー11からの検出信号(中エアーパッドセンサー11の空気袋の空気圧の変化を圧電素子51を用いて電気信号に変換された出力電圧の波形データ)を詳細は後述するような平滑化処理を行い、
図11下覧に示す低周波の波形データに変換する。
【0085】
尚、
図11において横軸は測定時間を、縦軸は波形データの電圧を示す。
【0086】
また、前記嚥下運動測定処理手段57の嚥下回数測定部61は、前記キーボード45の操作により設定される閾値電圧、測定時間に応じて被検者Mの当該測定時間内の嚥下回数を測定する。
【0087】
前記閾値電圧は、測定者が被検者Mの喉頭隆起3の挙動を確認し、嚥下とみなされる事実を確認したレベルに任意に設定することができる。また、予め多くの被検者Mの検査から得られたデータを基に工場出荷時に固定設定することも可能である。
【0088】
図11上覧に示す平滑化処理を行う前の波形データでは、例えば前記中エアーパッドセンサー11の検出信号の変化状況を示すもの形であるが、詳しくは圧電素子51の出力データを増幅器52で増幅し、低域通過フィルター(20Hz以上を通過するフィルター)53を通しA/D変換器54で変換したデジタルデータを基に生成される波形データである。
【0089】
図11下覧に示す平滑化処理後の波形データは、処理前の波形データに対して平滑化処理によるデータ処理を行って極低周波信号を抽出し、被検者Mの嚥下にかかる喉頭隆起3(又はその周辺)の動きを視認可能な波形データとして生成したものである。
【0090】
図11上覧に示す波形データでは、閾値設定のための閾値電圧を設けた場合、特徴点が4ヵ所(同図に黒丸部分)抽出されるが、最初および最初から二つ目の特徴点は、喉頭隆起3の挙動はあるものの、実際には嚥下が行なわれておらず、正確な嚥下能力を検出できていない。
【0091】
一方、
図11下覧に示す波形データでは、平滑化処理による極低周波信号を抽出した波形データであり、閾値設定のための閾値電圧を設定することで嚥下が実際に行なわれた最後及び最後から2番目の2カ所のみを特徴点を抽出することができる。
すなわち、このように極低周波信号を抽出した波形データと前記閾値電圧によって、被検者Mの実際の嚥下回数を前記嚥下回数測定部61により自動的にかつ正確に測定し、表示手段による表示に供することが可能となり、被検者Mの正確な嚥下能力測定を実現できる。
【0092】
さらに前記測定時間を予め設定しておくことで、その設定時間内での特徴点の数をデータ処理手段58で自動計測することが可能になり、嚥下回数の自動計測が可能となる。
【0093】
尚、
図11では被検者Mの食事開始から6秒後乃至26秒後までの波形データを示している。
【0094】
次に前記平滑化処理について
図12を参照して概説する。
【0095】
図12上欄において横軸は時間、縦軸は前記圧電素子51の出力値に対応する数値をf(x)として実線で示している。また、
図12下欄において横軸は時間、縦軸は平滑化処理後の波形データの数値をg(x)として点線で示している。
【0096】
前記平滑化処理は5点平滑化処理であり、経過する時間ごとの5つの出力値を、平均値に置き換えていくものである。
【0097】
例えば
図12下欄の最初から3番目の数値19は、
図12上欄の最初から5番目までの数値に着目してこれらの和(12+15+38+14+17)を求め、これを5で割ってその平均値19を採用するものである。
【0098】
尚、
図12下欄の最初から1番目及び2番目の数値12、15は、
図12上欄の最初から1番目及び2番目の数値12、15をそのまま採用するものである。
【0099】
このような演算処理を5点ずつ、かつ、一点ずつずれながら連続していく数値に対して次々と繰り返すことで
図12下欄に点線で示す波形データを取得するものである。
【0100】
上述した5点平滑化処理の一般式は、下記数1で表すことができる。
【0101】
【数1】