(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光輝性顔料分散体(Y)が、さらに着色顔料(D)を、鱗片状光輝性顔料(B)の合計量100質量部を基準として0.05〜400質量部含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の複層塗膜。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の複層塗膜は、被塗物上に、着色塗膜、光輝性塗膜及びクリヤー塗膜が順次形成され、ハイライトからシェードまで全体に明度が高い白い金属調の質感を有するものである。本発明の複層塗膜は、被塗物に着色塗料(X)を塗装して着色塗膜を形成し、該着色塗膜上に、後述する光輝性顔料分散体(Y)を塗装して光輝性塗膜を形成し、さらにクリヤー塗料(Z)を塗装してクリヤー塗膜を形成して得ることができる。具体的には、シェード領域の明度L*110、鏡面光沢度、粒子感、及びフリップフロップ値がそれぞれ以下に示す数値範囲内の塗膜を形成する。
【0013】
シェード領域の明度
本明細書において、シェード領域の明度L*110は具体的には、塗膜に対して45度の角度から照射した光を正反射光に対して110度の角度で受光した分光反射率から計算されたL*a*b*表色系における明度L*を意味する。本発明の複層塗膜形成方法で得られる複層塗膜のL*110は、60〜90の範囲内である。
【0014】
鏡面光沢度(60°グロス)
鏡面光沢度とは、物体表面からの鏡面反射と基準面(屈折率1.567のガラス)からの鏡面反射光との比を意味し、JIS−Z8741に定義された数値である。具体的には、測定試料面に規定された入射角で規定の開き角の光束を入射し、鏡面反射方向に反射する規定の開き角の光束を受光器で測るもので、いわゆる光沢計を使用して測定される数値である。本明細書においては、光沢計(micro−TRI−gloss、BYK−Gardner社製)を用いて測定した60度鏡面光沢度(60°グロス)として定義するものとする。本発明の複層塗膜の60°グロス値は、105〜180の範囲内である。
【0015】
粒子感
粒子感は、Hi−light Graininess値(以下、「HG値」と略記する)によって表される。HG値とは、微視的に観察した場合における質感であるミクロ光輝感の尺度の一つで、ハイライト(塗膜を入射光に対して正反射近傍から観察)側の粒子感を表わすパラメータである。塗膜を入射角15度/受光角0度にてCCDカメラで撮像し、得られたデジタル画像データ、すなわち2次元の輝度分布データを2次元フーリエ変換処理し、得られたパワースペクトル画像から、粒子感に対応する空間周波数領域のみを抽出し、算出した計測パラメータを、さらに0から100の数値を取り且つ粒子感との間に直線的な関係が保たれるように変換して得られるものである。具体的には、ミクロ光輝感測定装置を使用して測定することができる。測定方法の詳細については、“塗料の研究”(関西ペイント技報)、No.138、2002年8月:p.8−p.24“及び“塗料の研究”(関西ペイント技報)、No.132、2002年8月:p.8−p.24“に記載している。本発明の複層塗膜のHG値は、10〜40範囲内である。
【0016】
フリップフロップ(FF)値
観察角度による明度変化の大きさを示す数値である。具体的には、多角度分光測色計MA−68II(商品名、ビデオジェットX−Rite社製)を用いて、塗膜に対して45度の角度から照射した光を、正反射光に対して受光角15度及び受光角45度の分光反射率を測定し、分光反射率から計算されたXYZ表色系におけるY値(それぞれY15、Y45とする)を計算し、下記の式によって求めた数値として定義するものとする。
フリップフロップ値(FF値)=2×(Y15−Y45)/(Y15+Y45)
本発明の複層塗膜のFF値は、1.0〜1.8の範囲内である。
【0017】
被塗物
本発明の複層塗膜は、以下に示す被塗物上に形成される。被塗物としては、鉄、亜鉛、アルミニウム等の金属やこれらを含む合金などの金属材、及びこれらの金属による成型物、ならびに、ガラス、プラスチックや発泡体などによる成型物等を挙げることができる。これら素材に応じて適宜、脱脂処理や表面処理して被塗物とすることができる。該表面処理としては例えばリン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等が挙げられる。さらに、上記被塗物の素材が金属であれば、表面処理された金属素材の上にカチオン電着塗料等によって下塗り塗膜が形成されていることが好ましい。また、被塗物の素材がプラスチックである場合には、脱脂処理されたプラスチック素材の上にプライマー塗料によってプライマー塗膜が形成されていることが好ましい。
【0018】
着色塗料(X)
着色塗料(X)としては、具体的には、ビヒクル形成樹脂、顔料ならびに有機溶剤及び/又は水等の溶媒を主成分とするそれ自体既知の熱硬化性塗料を使用することができる。上記熱硬化性塗料としては、例えば中塗り塗料及びベース塗料等が挙げられる。
【0019】
着色塗料(X)に使用されるビヒクル形成樹脂としては、熱硬化性樹脂、常温硬化性樹脂等が挙げられるが、耐水性、耐薬品性、耐候性等の観点から、熱硬化性樹脂であることが望ましい。ビヒクル形成樹脂としては基体樹脂と架橋剤を併用していることが好ましい。
【0020】
基体樹脂は、耐候性及び透明性等が良好である樹脂が好適であり、具体的には、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。
【0021】
上記アクリル樹脂としては、例えば、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸、水酸基、アミド基、メチロール基等の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル、及びその他の(メタ)アクリル酸エステル、スチレン等を共重合して得られる樹脂を挙げることができる。
【0022】
ポリエステル樹脂としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの多価アルコールと、アジピン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸などの多価カルボン酸成分との縮合反応によって得られるポリエステル樹脂等を使用することができる。
【0023】
エポキシ樹脂としては、例えばエポキシ基と不飽和脂肪酸との反応によって、エポキシエステルを合成し、この不飽和基にα,β−不飽和酸を付加する方法や、エポキシエステルの水酸基と、フタル酸やトリメリット酸のような多塩基酸とをエステル化する方法等によって得られるエポキシエステル樹脂等が挙げられる。
【0024】
ウレタン樹脂としては、例えば上記アクリル樹脂、ポリエステル樹脂又はエポキシ樹脂にジイソシアネート化合物を反応させて高分子量化したものを挙げることができる。
【0025】
着色塗料(X)としては、水性塗料、溶剤系塗料のいずれであってもよいが、塗料の低VOC化の観点から、水性塗料であることが望ましい。着色塗料(X)が水性塗料である場合、上記基体樹脂は、樹脂を水溶性化もしくは水分散するのに十分な量の親水性基、例えばカルボキシル基、水酸基、メチロール基、アミノ基、スルホン酸基、ポリオキシエチレン結合等、最も一般的にはカルボキシル基を含有するものを使用し、該親水性基を中和してアルカリ塩とすることにより水溶性化もしくは水分散化することができる。その際の親水性基、例えばカルボキシル基の量は特に制限されず、水溶性化もしくは水分散化の程度に応じて任意に選択することができるが、一般には、酸価に基づいて約10mgKOH/g以上、好ましくは30〜200mgKOH/gの範囲内とすることができる。また中和に用いるアルカリ性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、アミン化合物等を挙げることができる。
【0026】
また、上記樹脂の水分散化は、上記モノマー成分を界面活性剤や水溶性樹脂の存在下で乳化重合せしめることによっても行うことができる。さらに、上記樹脂を例えば乳化剤などの存在下で水中に分散することによっても得られる。この水分散化においては、基体樹脂中には前記親水性基を全く含んでいなくてもよく、あるいは上記水溶性樹脂よりも少なく含有することができる。
【0027】
前記架橋剤は、上記基体樹脂を加熱により架橋硬化させるためのものであり、例えばアミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、エポキシ基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、ヒドラジド基含有化合物、セミカルバジド基含有化合物などが挙げられる。これらのうち、水酸基と反応し得るアミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物及びブロック化ポリイソシアネート化合物、カルボキシル基と反応し得るカルボジイミド基含有化合物が好ましい。上記架橋剤は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0028】
具体的には、メラミン、ベンゾグアナミン、尿素等とホルムアルデヒドとの縮合もしくは共縮合又は、さらに低級1価アルコールでエーテル化する等によって得られるアミノ樹脂が好適に用いられる。また、ポリイソシアネート化合物もしくはブロックポリイソシアネート化合物も好適に使用できる。
【0029】
着色塗料(X)における上記各成分の比率は、必要に応じて任意に選択することができるが、耐水性、仕上がり性等の観点から、基体樹脂及び架橋剤は、一般には、該両成分の合計質量に基づいて、前者が60〜90質量%、特に70〜85質量%、後者が10〜40質量%、特に15〜30質量%の範囲内とすることが好ましい。
【0030】
前記顔料は、着色塗料(X)により形成される着色塗膜に色彩、下地隠蔽性を与えるものである。該顔料の種類や配合量を調整することによって、着色塗料(X)によって得られる塗膜の明度L*値を70〜95、好ましくは75〜95の範囲内となるように調整することができる。該顔料としては例えば、メタリック顔料、防錆顔料、着色顔料、体質顔料等を挙げることができ、なかでも着色顔料を使用することが好ましく、複層塗膜に白い金属調を付与する等の観点から、酸化チタン顔料を使用することがさらに好ましい。
【0031】
酸化チタン顔料は、屈折率が高いことから白色顔料として広く使用されているものであり、結晶形によってルチル型とアナターゼ型があり、本発明においてはいずれを使用しても良いが、耐候性の点からルチル型を使用することができる。また、分散性や耐候性を向上させることを目的として、表面をシリカ、ジルコニウム、アルミニウム等の無機化合物で処理したものを使用しても良い。塗膜の隠蔽力の点から、一次粒子径が100〜500nmの範囲内のものを使用することが好ましく、さらに好ましくは、200〜400nmの範囲内のものである。
【0032】
本発明の着色塗料(X)においては、さらに、下地の隠蔽性、所望の色彩等に応じて上記酸化チタン顔料以外の着色顔料を適宜の組合せで使用することができる。
【0033】
着色塗料(X)における顔料の種類や配合量は、着色塗膜のL*を上記範囲内となるように調整することが好ましく、具体的には、基体樹脂及び架橋剤の合計量100質量部を基準として、酸化チタン顔料50〜200質量部、好ましくは80〜150質量部配合せしめることが好ましい。
【0034】
着色塗料(X)により得られる着色塗膜の硬化膜厚は、下地の隠蔽性及び複層塗膜の金属調光沢感等の観点から、15μm〜50μmであり、好ましくは18〜45μm、より好ましくは20〜40μmである。
【0035】
着色塗料(X)の塗装は、通常の方法に従って行なうことができ、着色塗料(X)が水性塗料である場合には例えば、着色塗料(X)に脱イオン水、必要に応じ増粘剤、消泡剤などの添加剤を加えて、固形分を30〜70質量%程度、粘度を500〜6000cps/6rpm(B型粘度計)に調整した後、前記被塗物面に、スプレー塗装、回転霧化塗装等により行うことができる。塗装の際、必要に応じて静電印加を行うこともできる。
【0036】
着色塗料(X)は、色安定性等の観点から、白黒隠蔽膜厚が80μm以下、好ましくは10〜60μm、さらに好ましくは15〜50μmであることが好適である。本明細書において、「白黒隠蔽膜厚」とは、JIS K5600−4−1の4.1.2に規定される白黒の市松模様の隠蔽率試験紙を、鋼板に貼り付けた後、膜厚が連続的に変わるように塗料を傾斜塗りし、乾燥又は硬化させた後、拡散昼光の下で塗面を目視で観察し、隠蔽率試験紙の市松模様の白黒の境界が見えなくなる最小の膜厚を電磁式膜厚計で測定した値である。
【0037】
本発明の複層塗膜形成方法においては、着色塗料(X)を塗装し、常温〜約150℃の温度で架橋硬化せしめた後に、形成された硬化塗膜上に、光輝性顔料分散体(Y)を塗装して光輝性塗膜を形成させることができるが、複層塗膜の付着性や耐水性の観点から、着色塗料(X)を塗装して着色塗膜を形成し、形成される未硬化の塗膜上に、光輝性顔料分散体(Y)を塗装して光輝性塗膜を形成し、形成される未硬化の光輝性塗膜上に、クリヤー塗料(Z)を塗装して未硬化のクリヤー塗膜を形成し、これら3つの未硬化の塗膜を加熱することによって、同時に硬化させることが好ましい。
【0038】
光輝性顔料分散体(Y)
光輝性顔料分散体(Y)は、水、表面調整剤(A)、平均厚さ0.01〜0.2μmの鱗片状光輝性顔料(B)及び粘性調整剤(C)を含有する。
【0039】
表面調整剤(A)
表面調整剤(A)は、被塗物への光輝性顔料分散体の塗装時に、水に分散された鱗片状光輝性顔料(B)を被塗物上に一様に配向するのを支援するために使用される。
【0040】
表面調整剤(A)は、イソプロパノール/水/表面調整剤(A)=4.5/95/1の割合で混合した液体を、温度20℃にて、B型粘度計でローター回転速度60rpmでの粘度が150mPa・sとなるように調整し予め脱脂したブリキ板(パルテック社製)上に10μL滴下し10秒経過後に測定したときの、ブリキ板に対する接触角が8〜20°、好ましくは9〜19°、さらに好ましくは10〜18°となるものであれば特に制限なく用いることができる。粘度の調整は、具体的には、Acrysol ASE−60(商品名、ポリアクリル酸系粘性調整剤、ダウケミカル社製、固形分:28%)及びジメチルエタノールアミンを添加することで行なう。
【0041】
4.5/95/1というイソプロパノール/水/表面調整剤(A)の比は、表面調整剤の評価用の光輝性顔料分散体(Y)の成分の比に相当する。B型粘度計でのローター回転速度60rpmにおける150mPa・sの粘度は、被塗物への塗装時の通常の値である。また、上記の8〜20°というブリキ板に対する接触角は、標準的な塗装条件における液体の濡れ広がりを指している。接触角が8°以上であると、液体は広がり過ぎることなく被塗物上に塗装され、20°以下であると液体ははじき過ぎることなく被塗物上に一様に塗装される。
【0042】
表面調整剤(A)としては、例えばシリコーン系、アクリル系、ビニル系、フッ素系等の表面調整剤が挙げられる。上記表面調整剤はそれぞれ単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0043】
表面調整剤(A)の市販品は例えば、ビックケミー社製のBYKシリーズ、エヴォニック社製のTegoシリーズ、共栄社化学社製のグラノールシリーズ、ポリフローシリーズ、楠本化成社製のディスパロンシリーズ等が挙げられる。
【0044】
表面調整剤(A)としては、なかでも得られる塗膜の金属光沢感及び耐水性等の観点から、シリコーン系の表面調整剤が好ましい。シリコーン系の表面調整剤としては、ポリジメチルシロキサンやこれを変性した変性シリコーン系のものが使用される。変性シリコーン系としては、ポリエーテル変性体、アクリル変性体、ポリエステル変性体などが挙げられる。
【0045】
表面調整剤(A)はその動的表面張力が50〜70mN/m、好ましくは53〜68mN/m、さらに好ましくは55〜65mN/mであることが好適である。本明細書において動的表面張力は、最大泡圧力法による周波数10Hzでの表面張力値をいう。
【0046】
また、表面調整剤(A)はその静的表面張力が15〜30mN/m、好ましくは18〜27mN/m、さらに好ましくは20〜24mN/mであることが好適である。本明細書において動的表面張力は、白金リング法(DCAT測定)による表面張力値をいう。
【0047】
さらに、表面調整剤(A)はそのラメラ長が6.0〜9.0mm、好ましくは6.5〜8.5mm、さらに好ましくは7.0〜8.0mmであることが好適である。
【0048】
表面調整剤(A)の含有量は、水、表面調整剤(A)、鱗片状光輝性顔料(B)及び粘性調整剤(C)の合計量100質量部を基準として、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.2〜8質量部、さらに好ましくは0.4〜6質量部である。
【0049】
鱗片状光輝性顔料(B)
光輝性顔料分散体(Y)における鱗片状光輝性顔料(B)としては、例えば、蒸着金属フレーク顔料、アルミニウムフレーク顔料、光干渉性顔料等を挙げることができる。中でも金属調光沢に優れた塗膜を得る観点から、蒸着金属フレーク顔料が好適である。
【0050】
蒸着金属フレーク顔料は、ベース基材上に金属膜を蒸着させ、ベース基材を剥離した後、蒸着金属膜を粉砕することにより得られる。上記基材としては、例えばフィルム等を挙げることができる。
【0051】
上記金属の材質としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、真鍮、チタン、クロム、ニッケル、ニッケルクロム、ステンレス等が挙げられる。なかでも特に入手しやすさ及び取扱いやすさ等の観点から、複層塗膜に白い金属感を付与する観点からアルミニウムが好適である。本明細書では、アルミニウムを蒸着して得られた蒸着金属フレーク顔料を「蒸着アルミニウムフレーク顔料(B−1)」と呼ぶ。
【0052】
上記蒸着アルミニウムフレーク顔料(B−1)として使用できる市販品としては例えば、「METALURE」シリーズ(商品名、エカルト社製)、「Hydroshine」シリーズ(商品名、エカルト社製)、「Decomet」シリーズ(商品名、シュレンク社製)、「Metasheen」シリーズ(商品名、BASF社製)等を挙げることができる。
【0053】
上記蒸着金属フレーク顔料の平均厚さは、0.01〜0.2μm、好ましくは、0.02〜0.1μmであることが好適である。
【0054】
上記蒸着金属フレーク顔料の平均粒子径(D50)は1〜50μm、好ましくは5〜25μmであることが好適である。
【0055】
蒸着アルミニウムフレーク顔料(B−1)としては、各種表面処理がなされたものを使用することができるが、光輝性顔料分散体(Y)の貯蔵安定性の観点から、シリカ処理されているものを用いることが好適である。
【0056】
アルミニウムフレーク顔料は、一般にアルミニウムをボールミルやアトライターミル中で粉砕媒液の存在下、粉砕助剤を用いて粉砕、摩砕して製造され、塗料用としては通常平均粒子径(D50)が1〜50μm程度、特に5〜25μm程度のものが、塗料中における安定性や形成される塗膜の仕上がりの点から使用される。上記平均粒子径は、長径を意味する。粉砕助剤としては、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸等の高級脂肪酸のほか、脂肪族アミン、脂肪族アミド、脂肪族アルコールが使用される。粉砕媒液としてはミネラルスピリットなどの脂肪族系炭化水素が使用される。
【0057】
鱗片状光輝性顔料(B)の含有量は、水、表面調整剤(A)、鱗片状光輝性顔料(B)及び粘性調整剤(C)の合計量100質量部を基準として、好ましくは0.05〜3.0質量部、より好ましくは0.2〜1.5質量部、さらに好ましくは0.3〜0.6質量部である。
【0058】
粘性調整剤(C)
光輝性顔料分散体(Y)における粘性調整剤(C)としては、既知のものを使用できるが、例えば、シリカ系微粉末、鉱物系粘性調整剤、硫酸バリウム微粒化粉末、ポリアミド系粘性調整剤、有機樹脂微粒子粘性調整剤、ジウレア系粘性調整剤、ウレタン会合型粘性調整剤、アクリル膨潤型であるポリアクリル酸系粘性調整剤、セルロース系粘性調整剤等を挙げることができる。なかでも金属調光沢に優れた塗膜を得る観点から特に、鉱物系粘性調整剤、ポリアクリル酸系粘性調整剤、セルロース系粘性調整剤を使用することが好ましい。
【0059】
鉱物系粘性調整剤としては、その結晶構造が2:1型構造を有する膨潤性層状ケイ酸塩が挙げられる。具体的には、天然又は合成のモンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチブンサイト、バイデライト、ノントロナイト、ベントナイト、ラポナイト等のスメクタイト族粘土鉱物や、Na型テトラシリシックフッ素雲母、Li型テトラシリシックフッ素雲母、Na塩型フッ素テニオライト、Li型フッ素テニオライト等の膨潤性雲母族粘土鉱物及びバーミキュライト、又はこれらの置換体や誘導体、或いはこれらの混合物が挙げられる。
【0060】
ポリアクリル酸系粘性調整剤としては、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等を挙げることができる。
【0061】
該ポリアクリル酸系粘性調整剤の市販品として、例えば、ダウケミカル社製の「プライマルASE−60」、「プライマルTT615」、「プライマルRM5」(以上、商品名)、サンノプコ社製の「SNシックナー613」、「SNシックナー618」、「SNシックナー630」、「SNシックナー634」、「SNシックナー636」(以上、商品名)等が挙げられる。ポリアクリル酸系粘性調整剤の固形分酸価としては、30〜300mgKOH/g、好ましくは80〜280mgKOH/gの範囲内のものを使用することができる。
【0062】
セルロース系粘性調整剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドリキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びメチルセルロース、セルロースナノファイバーゲル等が挙げられる。なかでも得られる塗膜の金属調光沢に優れる観点から、特にセルロースナノファイバーゲルが好ましい。市販品として例えば第一工業製薬社製の「レオクリスタ」(商品名)等が挙げられる。
【0063】
これらの粘性調整剤はそれぞれ単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0064】
粘性調整剤(C)の含有量は、金属調光沢に優れた塗膜を得る点から、鱗片状光輝性顔料(B)の含有量100質量部に基づいて、0.1〜26質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10質量部の範囲内であり、特に好ましくは1.0〜5.0質量部の範囲内である。
【0065】
その他の成分
光輝性顔料分散体(Y)には、さらに必要に応じて、有機溶剤、着色顔料(D)、顔料分散剤、沈降防止剤、消泡剤、紫外線吸収剤、前記表面調整剤(A)以外の表面調整剤等を適宜配合しても良い。
【0066】
光輝性顔料分散体(Y)は、得られる塗膜の付着性や貯蔵安定性の観点から基体樹脂や架橋剤及び分散樹脂を含むことができるが、これらを実質的に含まなくても本発明の効果を発揮することができる。
【0067】
着色顔料(D)としては、複層塗膜に白い金属感を付与する観点から、光を散乱する効果を持つ白色顔料である酸化チタン顔料、酸化亜鉛顔料及びシリカ顔料等を使用することができるが特に、前述の着色塗料(X)に配合することができると記載した酸化チタン顔料を使用することが好ましい。
【0068】
該着色顔料(D)は、粉体として光輝性顔料分散体(Y)に配合することができるが、着色顔料を樹脂組成物と混合分散して予め着色顔料分散体を調製し、これを他の成分と共に混合することにより光輝性顔料分散体(Y)を調製することもできる。着色顔料分散体の調製にあたっては、必要に応じて、消泡剤、分散剤、表面調整剤等の慣用の塗料添加剤を使用することができる。
【0069】
上記基体樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。
【0070】
上記架橋剤としては、メラミン樹脂、メラミン樹脂誘導体、尿素樹脂、(メタ)アクリルアミド、ポリアジリジン、ポリカルボジイミド、ブロック化されていてもされていなくてもよいポリイソシアネート化合物などが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0071】
上記分散樹脂としては、アクリル樹脂系、エポキシ樹脂系、ポリカルボン酸樹脂系、ポリエステル系などの、既存の分散樹脂の使用が可能である。
【0072】
光輝性顔料分散体(Y)が基体樹脂や架橋剤及び分散樹脂を含む場合、その合計配合量は、鱗片状光輝性顔料の配合量100質量部を基準として、0.01〜500質量部、好ましくは5〜300質量部、さらに10〜200質量部とすることが好ましい。
【0073】
光輝性顔料分散体(Y)の各成分の配合量
光輝性顔料分散体(Y)は、水、表面調整剤(A)、鱗片状光輝性顔料(B)及び粘性調整剤(C)を含む。該光輝性顔料分散体(Y)において各成分の配合割合(固形分質量)は、金属調光沢に優れる塗膜を得る観点から、下記の範囲内であることが好ましい。
【0074】
水、表面調整剤(A)、鱗片状光輝性顔料(B)及び粘性調整剤(C)の合計量100質量部を基準として、
水:70〜99質量部、好ましくは80〜99質量部、さらに好ましくは90〜99質量部、
表面調整剤(A):0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜8質量部、さらに好ましくは0.4〜6質量部、
鱗片状光輝性顔料(B):0.05〜3.0質量部、好ましくは0.2〜1.5質量部、さらに好ましくは0.3〜0.6質量部、
粘性調整剤(C):0.1〜26質量部、好ましくは0.5〜10質量部、さらに好ましくは1.0〜5.0質量部。
【0075】
光輝性顔料分散体(Y)が着色顔料(D)として酸化チタン顔料を含む場合、その配合量は、鱗片状光輝性顔料(B)の配合量100質量部を基準として、好ましくは酸化チタン顔料0.05〜400質量部、より好ましくは100〜400質量部、さらに好ましくは200〜400質量部とすることが、複層塗膜に白い金属感を付与する点から好ましい。
【0076】
光輝性顔料分散体(Y)の塗装
光輝性顔料分散体(Y)は、前述の成分を混合分散せしめることによって調製される。金属調光沢に優れる塗膜を得る観点から、塗装時の固形分含有率を、光輝性顔料分散体(Y)に基づいて、0.1〜15質量%、好ましくは0.2〜5.0質量%に調整しておくことが好ましい。
【0077】
光輝性顔料分散体(Y)の粘度は、金属調光沢に優れる塗膜を得る観点から、温度20℃においてB型粘度計で測定する60rpmで1分後の粘度(本明細書では「B60値」ということがある)が30〜1000mPa・sであることが好適である。このとき、使用する粘度計は、LVDV−I(商品名、BROOKFIELD社製、B型粘度計)である。
【0078】
光輝性顔料分散体(Y)は、静電塗装、エアスプレー、エアレススプレーなどの方法で塗装することができる。本発明の複層塗膜形成方法においては、特に回転霧化式の静電塗装が好ましい。
【0079】
光輝性顔料分散体(Y)を塗装して得られた光輝性塗膜は乾燥していることが好ましい。上記光輝性塗膜を乾燥させる方法に特に制限はないが、例えば、常温で15〜30分間放置する方法、50〜100℃の温度で30秒〜10分間プレヒートを行なう方法等が挙げられる。
【0080】
光輝性顔料分散体(Y)が被塗物に付着してから30秒後の膜厚は、金属調光沢に優れる塗膜を得る観点から、3〜25μm、好ましくは4〜24μm、さらに好ましくは5〜23μmであることが好適である。
【0081】
光輝性塗膜の厚さは、乾燥膜厚として、0.05〜2.0μm、好ましくは0.08〜1.6μmであることが好適である。
【0082】
本発明の複層塗膜形成工程においては、光輝性顔料分散体(Y)を塗装して得られた光輝性塗膜上に、クリヤー塗料(Z)を塗装してクリヤー塗膜を形成する。
【0083】
クリヤー塗料(Z)
クリヤー塗料(Z)は、公知の熱硬化性クリヤーコート塗料組成物をいずれも使用できる。該熱硬化性クリヤーコート塗料組成物としては、例えば、架橋性官能基を有する基体樹脂及び硬化剤を含有する有機溶剤型熱硬化性塗料組成物、水性熱硬化性塗料組成物、粉体熱硬化性塗料組成物等を挙げることができる。
【0084】
上記基体樹脂が有する架橋性官能基としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、シラノール基等を挙げることができる。基体樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等を挙げることができる。硬化剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、カルボキシル基含有化合物、カルボキシル基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、エポキシ基含有化合物等を挙げることができる。
【0085】
クリヤー塗料(Z)の基体樹脂/硬化剤の組み合わせとしては、カルボキシル基含有樹脂/エポキシ基含有樹脂、水酸基含有樹脂/ポリイソシアネート化合物、水酸基含有樹脂/ブロック化ポリイソシアネート化合物、水酸基含有樹脂/メラミン樹脂等が好ましい。
【0086】
また、上記クリヤー塗料(Z)は、一液型塗料であってもよいし、二液型塗料等の多液型塗料であってもよい。
【0087】
なかでもクリヤー塗料(Z)として好ましくは、得られる塗膜の付着性の観点から下記の水酸基含有樹脂及びポリイソシアネート化合物を含有する2液型クリヤー塗料である。
【0088】
クリヤー塗料(Z)として水酸基含有樹脂及びイソシアネート基含有化合物を含有する2液型クリヤー塗料を使用する場合は、貯蔵安定性から、水酸基含有樹脂とポリイソシアネート化合物とが分離した形態であることが好ましく、使用直前に両者を混合して調整される。
【0089】
クリヤー塗料(Z)としては、1液型塗料を使用する場合、1液型塗料における基体樹脂/硬化剤の組み合わせとしては、カルボキシル基含有樹脂/エポキシ基含有樹脂、水酸基含有樹脂/ブロック化ポリイソシアネート化合物、水酸基含有樹脂/メラミン樹脂等がある。
【0090】
水酸基含有樹脂
水酸基含有樹脂としては、水酸基を含有するものであれば従来公知の樹脂が制限なく使用できる。該水酸基含有樹脂としては例えば、水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有ポリエステル樹脂、水酸基含有ポリエーテル樹脂、水酸基含有ポリウレタン樹脂などを挙げることができ、好ましいものとして、水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有ポリエステル樹脂を挙げることができ、特に好ましいものとして水酸基含有アクリル樹脂を挙げることができる。
【0091】
水酸基含有アクリル樹脂の水酸基価は、塗膜の耐擦り傷性や耐水性の観点から、80〜200mgKOH/gの範囲内であるのが好ましく、100〜180mgKOH/gの範囲内であるのがさらに好ましい。
【0092】
水酸基含有アクリル樹脂の重量平均分子量は、塗膜の耐酸性や平滑性の観点から、2500〜40000の範囲内であるのが好ましく、5000〜30000の範囲内であるのがさらに好ましい。
【0093】
なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフで測定したクロマトグラムから標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出した値である。ゲルパーミエーションクロマトグラフは、「HLC8120GPC」(東ソー社製)を使用した。カラムとしては、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」、「TSKgel G−2000HXL」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1cc/分、検出器;RIの条件で行った。
【0094】
水酸基含有アクリル樹脂のガラス転移温度は−40℃〜20℃、特に−30℃〜10℃の範囲内であることが好ましい。ガラス転移温度が−40℃未満であると塗膜硬度が不十分な場合があり、また、20℃を越えると塗膜の塗面平滑性が低下する場合がある。
【0095】
ポリイソシアネート化合物
ポリイソシアネート化合物は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物であって、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、該ポリイソシアネートの誘導体などを挙げることができる。
【0096】
上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトヘキサン酸メチル(慣用名:リジンジイソシアネート)などの脂肪族ジイソシアネート;2,6−ジイソシアナトヘキサン酸2−イソシアナトエチル、1,6−ジイソシアナト−3−イソシアナトメチルヘキサン、1,4,8−トリイソシアナトオクタン、1,6,11−トリイソシアナトウンデカン、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアナトヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナト−5−イソシアナトメチルオクタンなどの脂肪族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0097】
前記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4−メチル−1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート(慣用名:水添TDI)、2−メチル−1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−もしくは1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、メチレンビス(4,1−シクロヘキサンジイル)ジイソシアネート(慣用名:水添MDI)、ノルボルナンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート;1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,6−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)−ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタンなどの脂環族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0098】
前記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンビス(4,1−フェニレン)ジイソシアネート(慣用名:MDI)、1,3−もしくは1,4−キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω'−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−又は1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物などの芳香脂肪族ジイソシアネート;1,3,5−トリイソシアナトメチルベンゼンなどの芳香脂肪族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0099】
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート(慣用名:2,4−TDI)もしくは2,6−トリレンジイソシアネート(慣用名:2,6−TDI)もしくはその混合物、4,4'−トルイジンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタン−4,4',4''−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエンなどの芳香族トリイソシアネート;4,4'−ジフェニルメタン−2,2',5,5'−テトライソシアネートなどの芳香族テトライソシアネートなどを挙げることができる。
【0100】
また、前記ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネートのダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)、クルードTDIなどを挙げることができる。該ポリイソシアネートの誘導体は、単独で用いてもよく又は2種以上併用してもよい。
【0101】
上記ポリイソシアネート及びその誘導体は、それぞれ単独で用いてもよく又は2種以上併用してもよい。
【0102】
脂肪族ジイソシアネートのなかでもヘキサメチレンジイソシアネート系化合物、脂環族ジイソシアネートのなかでも4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)を好適に使用することができる。その中でも特に、付着性、相溶性等の観点から、ヘキサメチレンジイソシアネートの誘導体が最適である。
【0103】
また、前記ポリイソシアネート化合物としては、上記ポリイソシアネート及びその誘導体と、該ポリイソシアネートと反応し得る、例えば、水酸基、アミノ基などの活性水素基を有する化合物とを、イソシアネート基過剰の条件で反応させてなるプレポリマーを使用してもよい。該ポリイソシアネートと反応し得る化合物としては、例えば、多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂、アミン、水等が挙げられる。
【0104】
また、ポリイソシアネート化合物として、上記ポリイソシアネート及びその誘導体中のイソシアネート基をブロック剤でブロックした化合物であるブロック化ポリイソシアネート化合物を使用することもできる。
【0105】
上記ブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチル等のフェノール系;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタム等のラクタム系;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコール等の脂肪族アルコール系;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノール等のエーテル系;ベンジルアルコール、グリコール酸、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチル、乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等のアルコール系;ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系;ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミド等のイミド系;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N−フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミン等のアミン系;イミダゾール、2−エチルイミダゾール等のイミダゾール系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素等の尿素系;N−フェニルカルバミン酸フェニル等のカルバミン酸エステル系;エチレンイミン、プロピレンイミン等のイミン系;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリ等の亜硫酸塩系;アゾール系の化合物等が挙げられる。上記アゾール系の化合物としては、ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチルピラゾール、4−ベンジル−3,5−ジメチルピラゾール、4−ニトロ−3,5−ジメチルピラゾール、4−ブロモ−3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−フェニルピラゾール等のピラゾール又はピラゾール誘導体;イミダゾール、ベンズイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾールまたはイミダゾール誘導体;2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾリン誘導体等が挙げられる。
【0106】
ブロック化を行なう(ブロック剤を反応させる)にあたっては、必要に応じて溶剤を添加して行なうことができる。ブロック化反応に用いる溶剤としてはイソシアネート基に対して反応性でないものが良く、例えば、アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル類、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)のような溶剤を挙げることができる。
【0107】
ポリイソシアネート化合物は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0108】
ポリイソシアネート化合物は、単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。本発明において、塗膜の硬化性及び耐擦り傷性等の観点から、水酸基含有樹脂の水酸基とポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の当量比(OH/NCO)は好ましくは0.5〜2.0、さらに好ましくは0.8〜1.5の範囲内である。
【0109】
クリヤー塗料(Z)には、さらに必要に応じて、水や有機溶剤等の溶媒、硬化触媒、消泡剤、紫外線吸収剤等の添加剤を適宜配合することができる。
【0110】
上記クリヤー塗料(Z)には、透明性を損なわない範囲内において、着色顔料を適宜配合することができる。着色顔料としては、インク用、塗料用として従来公知の顔料を1種あるいは2種以上を組み合わせて配合することができる。その添加量は、適宜決定されて良いが、該クリヤー塗料(Z)中のビヒクル形成樹脂組成物100質量部に対して、30重量部以下、好ましくは0.01〜10重量部である。
【0111】
クリヤー塗料(Z)の形態は特に制限されるものではないが、通常、有機溶剤型の塗料組成物として使用される。この場合に使用する有機溶剤としては、各種の塗料用有機溶剤、例えば、芳香族又は脂肪族炭化水素系溶剤;エステル系溶剤;ケトン系溶剤;エーテル系溶剤等が使用できる。使用する有機溶剤は、水酸基含有樹脂等の調製時に用いたものをそのまま用いても良いし、更に適宜加えても良い。
【0112】
クリヤー塗料(Z)の固形分濃度は、30〜70質量%程度であるのが好ましく、40〜60質量%程度の範囲内であるのがより好ましい。
【0113】
前記光輝性塗膜上に、前述のクリヤー塗料(Z)の塗装が行なわれる。クリヤー塗料(Z)の塗装は、特に限定されず前記着色塗料と同様の方法で行うことができ、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、回転霧化塗装、カーテンコート塗装などの塗装方法により行なうことができる。これらの塗装方法は、必要に応じて、静電印加してもよい。これらのうち静電印加による回転霧化塗装が好ましい。クリヤー塗料(Z)の塗布量は、通常、硬化膜厚として、10〜50μm程度となる量とするのが好ましい。
【0114】
また、クリヤー塗料(Z)の塗装にあたっては、クリヤー塗料(Z)の粘度を、塗装方法に適した粘度範囲、例えば、静電印加による回転霧化塗装においては、20℃でフォードカップNo.4粘度計による測定で、15〜60秒程度の粘度範囲となるように、有機溶剤等の溶媒を用いて、適宜、調整しておくことが好ましい。
【0115】
本発明の複層塗膜形成方法においては、未硬化の着色塗膜、未硬化の光輝性塗膜及び未硬化のクリヤー塗膜を加熱することによって、これら3つの塗膜を同時に硬化させることができる。加熱は公知の手段により行うことができ、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉を適用できる。加熱温度は70〜150℃、好ましくは80〜140℃の範囲内にあることが適している。加熱時間は、特に制限されるものではないが、10〜40分間、好ましくは20〜30分間の範囲内であるのが好適である。
【実施例】
【0116】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。
【0117】
製造例1:ポリエステル樹脂の製造
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン109質量部、1,6−ヘキサンジオール141質量部、ヘキサヒドロ無水フタル酸126質量部及びアジピン酸120質量部を仕込み、160℃から230℃に達するまでの時間を3時間となるように昇温させた後、230℃で4時間縮合反応させた。次いで、得られた縮合反応生成物にカルボキシル基を付加するために、さらに無水トリメリット酸38.3質量部を加え、170℃で30分間反応させた後、2−エチル−1−ヘキサノールで希釈し、固形分濃度70%であるポリエステル樹脂溶液を得た。得られたポリエステル樹脂は、酸価が46mgKOH/g、水酸基価が150mgKOH/g、重量平均分子量が6,400であった。ここで重量平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって標準ポリスチレンの検量線を用いて測定したものを意味する。
【0118】
製造例2:着色顔料分散体の調製
撹拌混合容器に、製造例1で得られたポリエステル樹脂5部(固形分3.5部)、JR−903(商品名、ルチル型酸化チタン顔料 テイカ社製)35部及び脱イオン水60部を入れ、均一に混合し、更に、2−(ジメチルアミノ)エタノールを添加して、pH7.5に調整した。得られた混合物を225ml容の樹脂性のビンに入れ、1.5mm径のジルコニアビーズ130部を投入して密栓し、振とう型ペイントコンディショナーを使用して120分分散した。分散後100メッシュの金網濾過を行なってジルコニアビーズを除去して、着色顔料分散体を得た。
【0119】
製造例3:アクリル樹脂エマルションの製造
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水130質量部、アクアロンKH−10(商品名、界面活性剤、第一工業製薬社製)0.52質量部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温した。次いで下記のモノマー乳化物(1)のうちの全量の1%量及び6%過硫酸アンモニウム水溶液5.3質量部とを反応容器内に導入し80℃で15分間保持した。その後、残りのモノマー乳化物(1)を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成を行なった。その後、下記のモノマー乳化物(2)を1時間かけて滴下し、1時間熟成した後、5%ジメチルエタノールアミン水溶液40質量部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、平均粒子径100nm(サブミクロン粒度分布測定装置「COULTER N4型」(ベックマン・コールター社製)を用いて、脱イオン水で希釈し20℃で測定した。)、固形分濃度30%のアクリル樹脂エマルションを得た。得られたアクリル樹脂エマルションは、酸価が33mgKOH/g、水酸基価が25mgKOH/gであった。
モノマー乳化物(1):脱イオン水42質量部、アクアロンKH−10 0.72質量部、メチレンビスアクリルアミド2.1質量部、スチレン2.8質量部、メチルメタクリレート16.1質量部、エチルアクリレート28質量部及びn−ブチルアクリレート21質量部を混合攪拌して得られたモノマー乳化物(1)。
モノマー乳化物(2):脱イオン水18質量部、アクアロンKH−10 0.31質量部、過硫酸アンモニウム0.03質量部、メタクリル酸5.1質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート5.1質量部、スチレン3質量部、メチルメタクリレート6質量部、エチルアクリレート1.8質量部及びn−ブチルアクリレート9質量部を混合攪拌して得られたモノマー乳化物(2)。
【0120】
製造例4:光輝性顔料分散体(Y−1)の調製
蒸留水 92部、表面調整剤A−1(注1) 1部、Hydroshine WS−3004(商品名、水性用蒸着アルミニウムフレーク顔料、Eckart社製、固形分:10%、内部溶剤:イソプロパノール、平均粒子径D50:13μm、厚さ:0.05μm、表面がシリカ処理されている)5部(固形分で0.5部)、Acrysol ASE−60(ポリアクリル酸系粘性調整剤、ダウケミカル社製、固形分:28%)1.7部(固形分で0.48部)、ジメチルエタノールアミン 0.17部を配合して攪拌混合し、光輝性顔料分散体(Y−1)を得た。
注1:表面調整剤A−1:商品名「BYK348」、BYK社製、シリコーン系表面調整剤
イソプロパノール/水/表面調整剤(A−1)=4.5/95/1の割合で混合した液体を、温度20℃にて、B型粘度計でローター回転速度60rpmでの粘度が100mPa・sとなるように調整し、予め脱脂したブリキ板(パルテック社製)上に10μL滴下し10秒経過後に接触角計(CA−X150、商品名、協和界面科学社製)を用いて測定したときの接触角に対する接触角=13°、動的表面張力(mN/m)=63.9、静的表面張力(mN/m)=22.2、ラメラ長=7.45mm。
【0121】
製造例5〜9:光輝性顔料分散体(Y−2)〜(Y−6)の製造
表1に示す配合割合とする以外は製造例4と同様にして、光輝性顔料分散体(Y−2)〜(Y−6)を得た。
【0122】
【表1】
【0123】
製造例10:リン酸基含有樹脂溶液の製造
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器にメトキシプロパノール27.5部及びイソブタノール27.5部の混合溶剤を入れ、110℃に加熱した後、110℃に保持しつつ、スチレン25部、n−ブチルメタクリレート27.5部、分岐高級アルキルアクリレート(商品名「イソステアリルアクリレート」、大阪有機化学工業社製)20部、4−ヒドロキシブチルアクリレート7.5部、下記リン酸基含有重合性モノマー15部、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート12.5部、イソブタノール10部及びtert−ブチルパーオキシオクタノエート4部からなる混合物121.5部を4時間かけて上記混合溶剤に滴下し、さらにtert−ブチルパーオキシオクタノエート0.5部とイソプロパノール20部とからなる混合物を1時間滴下した。その後、1時間攪拌熟成して固形分50%のリン酸基含有樹脂溶液を得た。リン酸基含有樹脂は、酸価が83mgKOH/g、水酸基価が29mgKOH/g、重量平均分子量が10,000であった。
リン酸基含有重合性モノマー:温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器にモノブチルリン酸57.5部及びイソブタノール41部を入れ、90℃に昇温させた。その後、グリシジルメタクリレート42.5部を2時間かけて滴下した後、さらに1時間攪拌熟成した。次いで、イソプロパノ−ル59部を加えて、固形分50%のリン酸基含有重合性モノマー溶液を得た。得られたモノマーの酸価は285mgKOH/gであった。
【0124】
製造例11:高濃度アルミニウム顔料液の調製
ステンレス製ビーカー内において、アルペースト6360NS(商品名、鱗片状アルミニウム顔料、平均粒子径12μm、アルミニウム含有量70%、東洋アルミニウム社製)14.3部(固形分10部)、製造例6で得られたリン酸基含有樹脂溶液8部(固形分4部)、2−エチル−1−ヘキサノール(20℃において100gの水に溶解する質量:0.1g)37.7部、及び2−(ジメチルアミノ)エタノール0.5部を均一に混合して、高濃度アルミニウム顔料液を得た。
【0125】
製造例12:メタリックベース塗料1の調製
製造例3で得られたアクリル樹脂エマルション100部、製造例1で得られたポリエステル樹脂溶液57.1部、製造例11で得られた高濃度アルミニウム顔料液を72.6部及びサイメル325(商品名、日本サイテックインダストリーズ社製、メラミン樹脂、固形分80%)37.5部を均一に混合し、さらに、プライマルASE−60(商品名、ロームアンドハース社製、ポリアクリル酸系増粘剤)、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を加えてpH8.0、塗料固形分25%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度40秒の水性塗料組成物を得た。
【0126】
製造例13:メタリックベース塗料2の調製
製造例3で得られたアクリル樹脂エマルション100部、製造例1で得られたポリエステル樹脂溶液57.1部、製造例11で得られた高濃度アルミニウム顔料液を72.6部、製造例2で得られた着色顔料分散体68.6部及びサイメル325(商品名、日本サイテックインダストリーズ社製、メラミン樹脂、固形分80%)37.5部を均一に混合し、さらに、プライマルASE−60(商品名、ロームアンドハース社製、ポリアクリル酸系増粘剤)、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を加えてpH8.0、塗料固形分25%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度40秒の水性塗料組成物を得た。
【0127】
製造例14:メタリックベース塗料3の調製
製造例3で得られたアクリル樹脂エマルション100部、製造例1で得られたポリエステル樹脂溶液57.1部、Xirallic T60−10WNT CrystalSilver(商品名、酸化チタン被覆アルミナフレーク顔料、メルク社製)7部及びサイメル325(商品名、日本サイテックインダストリーズ社製、メラミン樹脂、固形分80%)37.5部を均一に混合し、さらに、プライマルASE−60(商品名、ロームアンドハース社製、ポリアクリル酸系増粘剤)、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を加えてpH8.0、塗料固形分25%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度40秒の水性塗料組成物を得た。
【0128】
製造例15:(被塗物1の作製)
脱脂及びリン酸亜鉛処理した鋼板(JISG3141、大きさ400×300×0.8mm)にカチオン電着塗料「エレクロン9400HB」(商品名:関西ペイント社製、アミン変性エポキシ樹脂系カチオン樹脂に硬化剤としてブロックポリイソシアネート化合物を使用したもの)を硬化塗膜に基づいて膜厚20μmになるように電着塗装し、170℃で20分加熱して架橋硬化させて被塗物1を得た。
【0129】
(実施例1)
被塗物1上に、着色塗料(X−1)「WP−522H N−9.0」(商品名、関西ペイント社製、ポリエステル樹脂系水性中塗り塗料、得られる塗膜のL*値:90)を回転霧化型のベル型塗装機を用いて、硬化膜厚30μmになるように静電塗装し、3分間放置後、80℃で3分間プレヒートし、さらにその上に、前述のように作成した光輝性顔料分散体(Y−1)を、ABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で、乾燥塗膜として、0.2μmとなるように塗装した。その後、80℃にて3分間放置し、ついで、クリヤー塗料(Z−1)「KINO6500」(商品名:関西ペイント株式会社、水酸基/イソシアネート基硬化型アクリル樹脂・ウレタン樹脂系2液型有機溶剤型塗料)をABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で乾燥塗膜として、30μmとなるように塗装した。塗装後、室温にて15分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内にて、140℃で30分間加熱し、複層塗膜を同時に乾燥させて試験板とした。
ここで、乾燥塗膜の膜厚は、下記式から算出した。以下の実施例及び比較例についても同様である。
x=sc/sg/S*10000
x:膜厚[μm]
sc:塗着固形分[g]
sg:塗膜比重[g/cm
3]
S:塗着固形分の評価面積[cm
2]
(実施例2〜8、比較例1、5、6)
表2に記載の被塗物及び塗料とする以外は全て実施例1と同様にして試験板を得た。
【0130】
【表2】
【0131】
(比較例2)
被塗物1上に、着色塗料(X−1)「WP−522H N−9.0」(商品名、関西ペイント社製、ポリエステル樹脂系水性中塗り塗料、得られる塗膜のL*値:90)を回転霧化型のベル型塗装機を用いて、硬化膜厚30μmになるように静電塗装し、3分間放置後、80℃で3分間プレヒートし、さらにその上に、製造例8で作成したメタリックベース塗料1を、ABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で、乾燥塗膜として、15μmとなるように塗装した。その後、80℃にて3分間放置し、ついで、この乾燥塗面に、クリヤー塗料(Z−1)「KINO6500」(商品名:関西ペイント株式会社、水酸基/イソシアネート基硬化型アクリル樹脂・ウレタン樹脂系2液型有機溶剤型塗料)をABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で乾燥塗膜として、25〜35μmとなるように塗装した。塗装後、室温にて15分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内を使用して、140℃で30分間加熱し、複層塗膜を同時に乾燥せしめて試験板とした。
(比較例3,4)
表2に記載の被塗物及び塗料とする以外は全て比較例2と同様にして試験板を得た。
【0132】
塗膜評価
上記のようにして得られた各試験板について外観及び性能を評価し、表2にその結果を示した。
【0133】
外観評価
塗膜外観は、シェード領域の明度、鏡面光沢度(60°グロス)、粒子感、フリップフロップ値を評価した。
【0134】
シェード領域の明度
シェード領域の明度L*110は、塗膜に対して45度の角度から照射した光を正反射光に対して110度の角度で受光した分光反射率から計算されたL*a*b*表色系における明度L*である。60〜90の範囲の数値が合格である。
【0135】
鏡面光沢度(60°グロス)
上記で得られた試験板について、光沢計(micro−TRI−gloss、BYK−Gardner社製)を用いて60°グロス値を測定した。数値105以上180以下が合格である。
【0136】
粒子感
粒子感は、Hi−light Graininess値(以下、「HG値」と略記する)によって表される。HG値とは、微視的に観察した場合における質感であるミクロ光輝感の尺度の一つで、ハイライト(塗膜を入射光に対して正反射近傍から観察)側の粒子感を表わすパラメータである。塗膜を入射角15度/受光角0度にてCCDカメラで撮像し、得られたデジタル画像データ、すなわち2次元の輝度分布データを2次元フーリエ変換処理し、得られたパワースペクトル画像から、粒子感に対応する空間周波数領域のみを抽出し、算出した計測パラメータを、さらに0から100の数値を取り且つ粒子感との間に直線的な関係が保たれるように変換して得られるものである。10〜40の範囲の数値が合格である。
【0137】
フリップフロップ値
観察角度による明度変化の大きさを示す数値である。具体的には、多角度分光測色計MA−68(商品名、ビデオジェットX−Rite社製)を用いて、塗膜に対して45度の角度から照射した光を、正反射光に対して受光角15度及び受光角45度の分光反射率を測定し、分光反射率から計算されたXYZ表色系におけるY値(それぞれY15、Y45とする)を計算し、下記の式によって求めた数値として定義するものとする。
フリップフロップ値(FF値)=2×(Y15−Y45)/(Y15+Y45)1.0〜1.8の範囲の数値が合格である。
【0138】
なお、本発明は以下のような構成を取ることも可能である。
【0139】
項1.被塗物上に、着色塗膜、光輝性塗膜及びクリヤー塗膜が順次形成された複層塗膜であって、形成された複層塗膜は、
塗膜面に対して45度の角度から照射した光を正反射光に対して110度の角度で受光した分光反射率に基づく明度L*110が60〜90の範囲内であり、
60度鏡面光沢度が105〜180の範囲内であり、
粒子感HGが10〜40の範囲内にあり、且つ
フリップフロップ値が1.0〜1.8の範囲内である
複層塗膜。
【0140】
項2.着色塗膜は、被塗物上に、着色塗料(X)を塗装して形成されたものであり、
45度の角度から照射した光を正反射光に対して45度の角度で受光した分光反射率に基づく着色塗膜の明度L*45が70〜95の範囲内である
項1に記載の複層塗膜。
【0141】
項3.光輝性塗膜は、着色塗膜上に、光輝性顔料分散体(Y)を塗装して形成されたものであり、
光輝性塗膜の乾燥塗膜に基づく膜厚が0.05〜2.0μmの範囲内である
項1又は2に記載の複層塗膜。
【0142】
項4.光輝性顔料分散体(Y)が、水、表面調整剤(A)、厚さ0.01〜0.2μmの鱗片状光輝性顔料(B)及び粘性調整剤(C)を含有し、
表面調整剤(A)が、イソプロパノール/水/表面調整剤(A)=4.5/95/1の重量比で混合した液体を、温度20℃にて、B型粘度計でローター回転速度60rpmでの粘度が150mPa・sとなるように調整し、予め脱脂したブリキ板(パルテック社製)上に10μL滴下し10秒経過後に測定したときのブリキ板に対する接触角が8〜20°であることを特徴とする項1〜3のいずれか1項に記載の複層塗膜。
【0143】
項5.鱗片状光輝性顔料(B)が蒸着アルミニウム顔料(B−1)である項1〜4のいずれか1項に記載の複層塗膜。
【0144】
項6.光輝性顔料分散体(Y)が、さらに着色顔料(D)を、鱗片状光輝性顔料(B)の合計量100質量部を基準として0.05〜400質量部含む項1〜5のいずれか1項に記載の複層塗膜。
【0145】
項7.表面調整剤(A)の含有量は、水、表面調整剤(A)、鱗片状光輝性顔料(B)及び粘性調整剤(C)の合計量100質量部を基準として0.1〜10質量部である項1〜6のいずれか1項に記載の複層塗膜。
【0146】
項8.表面調整剤(A)の含有量は、水、表面調整剤(A)、鱗片状光輝性顔料(B)及び粘性調整剤(C)の合計量100質量部を基準として0.2〜8質量部である項1〜6のいずれか1項に記載の複層塗膜。
【0147】
項9.表面調整剤(A)の含有量は、水、表面調整剤(A)、鱗片状光輝性顔料(B)及び粘性調整剤(C)の合計量100質量部を基準として0.4〜6質量部である項1〜6のいずれか1項に記載の複層塗膜。
【0148】
項10.鱗片状光輝性顔料(B)の含有量は、水、表面調整剤(A)、鱗片状光輝性顔料(B)及び粘性調整剤(C)の合計量100質量部を基準として0.05〜3.0質量部である項1〜9のいずれか1項に記載の複層塗膜。
【0149】
項11.鱗片状光輝性顔料(B)の含有量は、水、表面調整剤(A)、鱗片状光輝性顔料(B)及び粘性調整剤(C)の合計量100質量部を基準として0.2〜1.5質量部である項1〜9のいずれか1項に記載の複層塗膜。
【0150】
項12.鱗片状光輝性顔料(B)の含有量は、水、表面調整剤(A)、鱗片状光輝性顔料(B)及び粘性調整剤(C)の合計量100質量部を基準として0.3〜0.6質量部である項1〜9のいずれか1項に記載の複層塗膜。
【0151】
項13.粘性調整剤(C)の含有量は、鱗片状光輝性顔料(B)の含有量100質量部に基づいて、0.1〜26質量部の範囲内である項1〜12のいずれか1項に記載の複層塗膜。
【0152】
項14.粘性調整剤(C)の含有量は、鱗片状光輝性顔料(B)の含有量100質量部に基づいて、0.5〜10質量部の範囲内である項1〜12のいずれか1項に記載の複層塗膜。
【0153】
項15.粘性調整剤(C)の含有量は、鱗片状光輝性顔料(B)の含有量100質量部に基づいて、1.0〜5.0質量部の範囲内である項1〜12のいずれか1項に記載の複層塗膜。
【0154】
項16.光輝性顔料分散体(Y)が、着色顔料(D)を、鱗片状光輝性顔料(B)の合計量100質量部を基準として100〜400質量部含む項6〜15のいずれか1項に記載の複層塗膜。
【0155】
項17.着色顔料(D)が酸化チタン顔料を含む項6〜16のいずれか1項に記載の複層塗膜。
【0156】
項18.被塗物上に、着色塗料(X)を塗装して着色塗膜を形成し、
形成される未硬化の着色塗膜上に、光輝性顔料分散体(Y)を塗装して光輝性塗膜を形成し、
形成される未硬化の光輝性塗膜上に、クリヤー塗料(Z)を塗装して未硬化のクリヤー塗膜を形成し、
前記着色塗膜、前記光輝性塗膜、および前記クリヤー塗膜の3つの未硬化の塗膜を加熱することによって、同時に硬化させる複層塗膜形成方法であって、形成された複層塗膜は、
塗膜面に対して45度の角度から照射した光を正反射光に対して110度の角度で受光した分光反射率に基づく明度L*110が60〜90の範囲内であり、
60度鏡面光沢度が105〜180の範囲内であり、
粒子感HGが10〜40の範囲内にあり、且つ
フリップフロップ値が1.0〜1.8の範囲内である
複層塗膜形成方法。
【0157】
項19.クリヤー塗料(Z)が、水酸基含有樹脂及びポリイソシアネート化合物を含有する2液型クリヤー塗料である項7に記載の複層塗膜形成方法。
【0158】
項20.複層塗膜が項2〜17のいずれか1項に記載の複層塗膜である18または19に記載の複層塗膜形成方法。