(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る車両内装用天井構造について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下で引用する図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両内装用天井構造の概略を示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態の車両内装用天井構造1は、繊維構造体層10を備えている。また、繊維構造体層10は、車両内装用天井構造1の面内方向に亘って配置されている。なお、車両内装用天井構造の面内方向は、図中矢印Zで示す車両内装用天井構造の厚み方向に垂直な方向である。
【0014】
そして、図示しないが、繊維構造体層は、第1の合成樹脂製の非弾性捲縮短繊維及び第2の合成樹脂製の熱接着性複合短繊維を混在した状態で含んでいる。また、図示しないが、繊維構造体層において、非弾性捲縮短繊維及び熱接着性複合短繊維は、それぞれの繊維長さ方向が図中矢印Zで示す車両内装用天井構造の厚み方向に沿った状態で配置されている。さらに、図示しないが、熱接着性複合短繊維は、その表面に熱融着成分を有しており、熱融着成分を介して非弾性捲縮短繊維と接合している。このように熱接着性複合短繊維と非弾性捲縮短繊維とが接合して不織布構造を形成している。また、図示しないが、繊維構造体層において、非弾性捲縮短繊維及び熱接着性複合短繊維の合計含有量に対する熱接着性複合短繊維の含有量の割合が、10質量%以上40質量%以下である。さらに、図示しないが、繊維構造体層の目付けが、200g/m
2以上800g/m
2以下である。
【0015】
このような構成とすることにより、優れた断熱性及び遮音性を有する車両内装用天井構造となる。
【0016】
これに対して、繊維構造体層が、上述した所定の非弾性捲縮短繊維及び熱接着性複合短繊維を混在した状態で含まない場合には、均一な不織布構造を形成することができない。そのため、優れた断熱性や遮音性を有する車両内装用天井構造とならない。
【0017】
また、繊維構造体層が、上述した所定の構造を有しない場合には、所定の非弾性捲縮短繊維及び熱接着性複合短繊維は、それぞれの繊維長さ方向が車両内装用天井構造の面内方向に沿った状態で配置されることとなる。そのため、優れた断熱性や遮音性を有する車両内装用天井構造とならない。
【0018】
さらに、繊維構造体層が、上述した所定の非弾性捲縮短繊維及び熱接着性複合短繊維を所定の含有割合で含まない場合には、優れた断熱性や遮音性を有する車両内装用天井構造を成形することができない。
【0019】
さらにまた、繊維構造体の目付けが、上述した所定の範囲内でない場合には、優れた断熱性や遮音性を有する車両内装用天井構造とならない。
【0020】
ここで、本発明で「目付け」とは、単位面積当たりの質量の割合をいう。そして、目付けは、例えば、日本工業規格における織物及び編物の生地試験方法(JIS L 1096)の単位面積当たりの質量に準拠して測定されるものである。
【0021】
また、特に限定されるものではないが、より優れた断熱性及び遮音性が得られるという観点からは、繊維構造体層の目付けは、400g/m
2以上800g/m
2以下であることが好ましい。
【0022】
さらに、特に限定されるものではないが、優れた断熱性及び遮音性が得られるとともに、優れた部品の成形性が得られるという観点からは、熱融着成分の融点は、110℃以上130℃以下であることが好ましい。
【0023】
また、
図1に示すように、車両内装用天井構造1は、必要に応じて付加されるガラスクロス層20、通気止め層30及び装飾用不織布層40を更に備えている。さらに、車両内装用天井構造1は、繊維構造体層10、ガラスクロス層20、通気止め層30及び装飾用不織布層40を含み、これらが矢印Zで示す車両内装用天井構造の厚み方向に積層された積層構造を有している。特に限定されるものではないが、図示例においては、繊維構造体層10の一方の面側にガラスクロス層20及び通気止め層30がこの順で配置されており、繊維構造体層10の他方の面側にガラスクロス層20及び装飾用不織布層40がこの順で配置されている。
【0024】
さらに、車両内装用天井構造1は、装飾用不織布層40が車室空間側に配置される。
【0025】
そして、特に限定されるものではないが、ガラスクロス層を構成するガラスクロスとしては、例えば、繊維構造体層を補強し得る従来公知のガラスクロスを適用することができる。
【0026】
また、特に限定されるものではないが、通気止め層を構成する通気止め部材としては、例えば、車両内装用天井構造が天井に配置された空間内における汚れを防止し得る従来公知のフィルムなどの通気止め部材を適用することができる。
【0027】
さらに、特に限定されるものではないが、装飾用不織布層を構成する装飾用不織布としては、例えば、車両内装用天井構造が天井に配置された空間における天井面を装飾し得る従来公知の不織布を適用することができる。
【0028】
ここで、繊維構造体層における各構成について更に詳細に説明する。
【0029】
特に限定されるものではないが、繊維構造体層を構成する繊維構造体に含まれる非弾性捲縮短繊維を構成する第1の合成樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ−1,4−ジメチルシクロヘキサンテレフタレート、ポリピバロラクトンを挙げることができる。また、これらに限定されるものではなく、例えば、これらの共重合体や混合体を挙げることができる。その中でも、繊維形成性等の観点から、ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートを適用することが好ましい。さらに、このような非弾性捲縮短繊維としては、例えば、第1の合成樹脂成分のうちの2種類以上からなる複合短繊維を適用することもできる。
【0030】
また、特に限定されるものではないが、捲縮付与方法としては、例えば、以下の(1)〜(3)の方法を用いればよい。
【0031】
(1)熱収縮率の異なる合成樹脂をサイドバイサイド型に張り合わせた複合繊維を用いてスパイラル状捲縮を付与する。
【0032】
(2)異方冷却によってスパイラル状捲縮を付与する。
【0033】
(3)押し込み捲縮法によってジグザグ状捲縮を付与する。
【0034】
その中でも、嵩高性、製造コスト等の面から異方冷却によってスパイラル状捲縮を付与するのが好ましい。
【0035】
さらに、特に限定されるものではないが、非弾性捲縮短繊維の繊維長は、5mm以上であることが好ましく、30mm以上100mm以下であることがより好ましい。非弾性捲縮短繊維の繊維長が5mm未満である場合には、繊維構造体層において十分な剛性が得られない可能性がある。また、非弾性捲縮短繊維の繊維長が100mm超である場合には、生産性が低下する可能性がある。
【0036】
また、特に限定されるものではないが、繊維構造体層を構成する繊維構造体に含まれる熱接着性複合短繊維としては、例えば、サイドバイサイド型、芯鞘型などの複合形態を有する熱接着性複合短繊維を適用することができる。その中でも、芯鞘型の複合形態を有する熱接着性複合短繊維を適用することが好ましい。
【0037】
芯鞘型の複合形態を有する熱接着性複合短繊維においては、例えば、非弾性ポリエステルを芯部として適用することができる。しかしながら、これに限定されるものではなく、芯鞘型の複合形態を有する熱接着性複合短繊維においては、例えば、上述した第1の合成樹脂を芯部として適用することもできる。
【0038】
また、芯鞘型の複合形態を有する熱接着性複合短繊維においては、芯部の中心が繊維の中心とほぼ同じ位置に配置されている同心円状の形状であっても良く、芯部の中心が繊維の中心と異なる位置に配置されている偏心状の形状であっても良い。特に偏心状の形状を有する芯鞘型の複合形態を有する熱接着性複合短繊維においては、スパイラル状捲縮が発現するので、より好ましい。
【0039】
さらに、特に限定されるものではないが、熱接着性複合短繊維の熱融着成分として配される合成樹脂としては、例えば、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、非弾性ポリエステル系ポリマー及びその共重合物、ポリオレフィン系ポリマー及びその共重合物、ポリビニルアルコール系ポリマーを挙げることができる。
【0040】
ポリウレタン系エラストマーとしては、例えば、分子量が500〜6000程度の低融点ポリオールと、分子量500以下の有機ジイソシアネートと、分子量500以下の鎖伸長剤との反応により得られる合成樹脂を挙げることができる。
【0041】
分子量が500〜6000程度の低融点ポリオールとしては、例えば、ジヒドロキシポリエーテル、ジヒドロキシポリエステル、ジヒドロキシポリカーボネート、ジヒドロキシポリエステルアミドを挙げることができる。
【0042】
また、分子量500以下の有機ジイソシアネートとしては、例えば、p,p’−ジフェニールメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート水素化ジフェニールメタンイソシアネート、キシリレンイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート、ヘキサメチレンジイソシアネートを挙げることができる。
【0043】
さらに、分子量500以下の鎖伸長剤としては、例えば、グリコールアミノアルコール、やトリオールを挙げることができる。
【0044】
その中でも、ポリオールとして、ポリテトラメチレングリコール、ポリ−ε−カプロラクタム又はポリブチレンアジペートを用いたポリウレタンが特に好ましい。また、この場合の有機ジイソシアネートとしては、例えば、p,p’−ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,4−ブタンジオールを挙げることができる。
【0045】
また、ポリエステル系エラストマーとしては、例えば、熱可塑性ポリエステルをハードセグメントとし、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールをソフトセグメントとして共重合してなるポリエーテルエステル共重合体を挙げることができる。
【0046】
より具体的には、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸又はこれらのエステル形成性誘導体などから選ばれたジカルボン酸の少なくとも1種と、1,4−ブタンジオール、エチレングリコールトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール等の脂肪族ジオール若しくは1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンメタノール等の脂環式ジオール、又はこれらのエステル形成性誘導体などから選ばれたジオール成分の少なくとも1種、及び平均分子量が約400〜5000程度のポリエチレングリコール、ポリ(1,2−および1,3−ポリプロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランとの共重合体等のポリ(アルキレンオキサイド)クリコールのうち少なくとも1種から構成される三元共重合体を挙げることができる。
【0047】
特に、接着性や温度特性、強度の観点から、ポリブチレン系テレフタレートをハード成分とし、ポリオキシブチレングリコールをソフトセグメントとするブロック共重合ポリエーテルエステルが好ましい。この場合、ハードセグメントを構成するポリエステル部分は、主たる酸成分がテレフタル酸、主たるジオール成分がブチレングリコール成分であるポリブチレンテレフタレートである。なお、この酸成分の一部(通常30mol%以下)は他のジカルボン酸成分やオキシカルボン酸成分で置換されていても良く、同様にグリコール成分の一部(通常30mol%以下)はブチレングリコール成分以外のジオキシ成分で置換されていても良い。また、ソフトセグメントを構成するポリエーテル部分はブチレングリコール以外のジオキシ成分で置換されたポリエーテルであって良い。
【0048】
共重合ポリエステル系ポリマーとしては、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸類及び/又はヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂環式ジカルボン酸類と、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、パラキシレングリコールなどの脂肪族や脂環式ジオール類とを所定量含有し、所望に応じてパラヒドロキシ安息香酸などのオキシ酸類を添加した共重合エステル等を挙げることができる。例えば、テレフタル酸とエチレングリコールとにおいて、イソフタル酸及び1,6−ヘキサンジオールを添加共重合させたポリエステルが好ましい。
【0049】
また、ポリオレフィンポリマーとしては、例えば低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等を挙げることができる。
【0050】
上述した熱融着成分の中でも、共重合ポリエステル系ポリマーや熱可塑性ポリエステル系エラストマーが好ましく、良好な消音性能を有するという観点から、ポリエステル系エラストマーを用いることが特に好ましい。
【0051】
また、特に限定されるものではないが、熱接着性複合短繊維の繊維長は、5mm以上であることが好ましく、30mm以上100mm以下であることがより好ましい。熱接着性複合短繊維の繊維長が5mm未満である場合には、繊維構造体層において十分な剛性が得られない可能性がある。また、熱接着性複合短繊維の繊維長が100mm超である場合には、生産性が低下する可能性がある。
【0052】
なお、上述の第1の合成樹脂及び第2の合成樹脂中には、各種安定剤、紫外線吸収剤、増粘分岐剤、艶消し剤、着色剤、その他各種の改良剤等も必要に応じて配合されていても良い。
【0053】
ここで、上述した車両内装用天井構造における繊維構造体層を構成する繊維構造体の製造方法について好適例を挙げて説明する。なお、
図2は、繊維構造体を製造する方法において用いられる熱処理機の一例を示す側面図である。
図2に示すように、熱処理機100は、コンベア110とヒータ120とを備えている。
【0054】
まず、非弾性捲縮短繊維と熱接着性複合短繊維とを所定の含有割合となるように混綿し、ローラーカードにより均一な繊維シート(ウェッブ)12として紡出する。しかる後、
図2に示すような熱処理機100を用いて、コンベア110によって繊維シート(ウェブ)12をアコーディオン状に折り畳みながらヒータ120によって加熱処理する。これにより、熱接着性複合短繊維の表面の熱融着成分を介して、熱接着性複合短繊維と非弾性捲縮短繊維とが熱融着されて接合し、不織布構造が形成された繊維構造体で構成された繊維構造体層10が得られる。
【0055】
このようにして得られる繊維構造体層は、繊維シートを含み、かつ、繊維シートが車両内装用天井構造の面内方向のうちの一方向(例えば、長さ方向である。)に積層された構造を有している。このような繊維構造体層を備えた車両内装用天井構造は、優れた断熱性及び遮音性が得られるとともに、優れた部品の成形性が得られるという観点から好ましい。
【0056】
また、このようにして得られる繊維構造体層は、繊維シートを含み、かつ、繊維シートが折り畳まれた構造を有している。このような繊維構造体層を備えた車両内装用天井構造は、優れた断熱性及び遮音性が得られるとともに、優れた部品の成形性が得られるという観点から好ましい。
【0057】
なお、上述した車両内装用天井構造における繊維構造体層を製造する方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を任意に採用すれば良い。また、上述した車両内装用天井構造は、このような製造方法を用いて得られるものに限定されるものではない。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。しかしながら、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0059】
(実施例1)
異方冷却により立体捲縮を付与した単繊維繊度3.3dtex、繊維長51mmのポリエチレンテレフタレート短繊維(非弾性捲縮短繊維)と、融点が110℃の熱可塑性ポリエーテルエステル系エラストマー(熱融着成分)を表面である鞘成分に配し、ポリブチレンテレフタレートを芯成分に配した、単繊維繊度3.3dtex、繊維長51mmである芯鞘型の複合短繊維(熱融着性複合短繊維)とを、質量比で70:30となるように混綿し、ローラーカードにより均一な繊維シート(ウェッブ)を得た。
【0060】
得られた繊維シート(ウェッブ)を軽くニードルパンチングした後、
図2に示す熱処理機を用いて、繊維シート(ウェッブ)をアコーディオン状に折り畳みながら200℃で加熱処理し、非弾性捲縮短繊維と熱接着性複合短繊維とを熱融着成分を介して接合させて繊維構造体から構成される繊維構造体層(目付け:200g/m
2)を得た。
【0061】
得られた繊維構造体に対して、
図1に示すように、車室内側から、装飾用不織布層/ガラスクロス層/繊維構造体層/ガラスクロス層/通気止め層となるように、装飾用不織布、ガラスクロス、繊維構造体及び通気止めフィルムを積層して、本例の車両内装用天井構造を得た。
【0062】
(実施例2)
実施例1において、熱処理機のコンベア速度を変更し、繊維構造体層の目付けを400g/m
2に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の車両内装用天井構造を得た。
【0063】
(実施例3)
実施例1において、熱処理機のコンベア速度を変更し、繊維構造体層の目付けを600g/m
2に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の車両内装用天井構造を得た。
【0064】
(実施例4)
実施例1において、熱処理機のコンベア速度を変更し、繊維構造体層の目付けを800g/m
2に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の車両内装用天井構造を得た。
【0065】
(実施例5)
実施例1において、熱融着性複合短繊維として、融点が120℃の熱可塑性ポリエーテルエステル系エラストマー(熱融着成分)を表面である鞘成分に配し、ポリブチレンテレフタレートを芯成分に配した、単繊維繊度3.3dtex、繊維長51mmである芯鞘型の複合短繊維(熱融着性複合短繊維)を用いるともに、熱処理機のコンベア速度を変更し、繊維構造体層の目付けを800g/m
2に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の車両内装用天井構造を得た。
【0066】
(実施例6)
実施例1において、熱融着性複合短繊維として、融点が130℃の熱可塑性ポリエーテルエステル系エラストマー(熱融着成分)を表面である鞘成分に配し、ポリブチレンテレフタレートを芯成分に配した、単繊維繊度3.3dtex、繊維長51mmである芯鞘型の複合短繊維(熱融着性複合短繊維)を用いるともに、熱処理機のコンベア速度を変更し、繊維構造体層の目付けを800g/m
2に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の車両内装用天井構造を得た。
【0067】
(実施例7)
実施例1において、非弾性捲縮短繊維と熱融着性複合短繊維とを、質量比で90:10となるように混綿するとともに、熱処理機のコンベア速度を変更し、繊維構造体層の目付けを600g/m
2に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の車両内装用天井構造を得た。
【0068】
(実施例8)
実施例1において、非弾性捲縮短繊維と熱融着性複合短繊維とを、質量比で90:10となるように混綿するとともに、熱処理機のコンベア速度を変更し、繊維構造体層の目付けを800g/m
2に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の車両内装用天井構造を得た。
【0069】
(実施例9)
実施例1において、非弾性捲縮短繊維と熱融着性複合短繊維とを、質量比で60:40となるように混綿するとともに、熱処理機のコンベア速度を変更し、繊維構造体層の目付けを600g/m
2に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の車両内装用天井構造を得た。
【0070】
(比較例1)
実施例1において、熱処理機のコンベア速度を変更し、繊維構造体層の目付けを100g/m
2に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の車両内装用天井構造を得た。
【0071】
(比較例2)
実施例1において、非弾性捲縮短繊維と熱融着性複合短繊維とを、質量比で10:90となるように混綿するとともに、熱処理機のコンベア速度を変更し、繊維構造体層の目付けを100g/m
2に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の車両内装用天井構造を得た。
上記各例の仕様の一部を表1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
[性能評価]
上記各例の車両内装用天井構造について、以下の性能を評価した。
【0074】
(断熱性能)
上記各例の車両内装用天井構造について、JIS A 1412−2に準拠して、熱伝導率(W/mK))を測定した。実施例1の実測値に対する相対値として得られた結果を表1に併記した。なお、各例の相対値は、以下の式(1)より算出した。また、実施例1の結果は全て、「Ref」と記載した。さらに、以下の性能評価においても同様である。但し、遮音性能及びカット性能の性能評価においては、式(1)における「(各例の実測値)−(実施例1の実測値)」を「(実施例1の実測値)−(各例の実測値)」に変更した。
【0075】
【数1】
【0076】
(遮音性能)
上記各例の車両内装用天井構造について、通気止め層側を車体外板側に、不織布層側を車室内側に配置し、マイクを車室内に乗員が乗車した際の耳の位置に配置し、車体外板を叩いて音を出し、車室内へ入ってくる透過音(dB)マイクを測定した。実施例1の実測値に対する相対値として得られた結果を表1に併記した。
【0077】
(吸音性能)
上記各例の車両内装用天井構造について、JIS A 1405−1に準拠して、2000Hzにおける吸音率(%)を測定した。実施例1の実測値に対する相対値として得られた結果を表1に併記した。
【0078】
(重量変化)
上記各例の車両内装用天井構造について、精密天秤を用いて、重量を測定した。実施例1の実測値に対する相対値として得られた結果を表1に併記した。
【0079】
(カーテンエアバック性能)
上記各例の車両内装用天井構造について、カーテンエアバックを作動させ、展開時間(sec)を測定した。実施例1の実測値に対する相対値として得られた結果を表1に併記した。
【0080】
(カット性能)
上記各例の車両内装用天井構造について、成形後の外形のウォーターカットに要した時間を測定した。実施例1の実測値に対する相対値として得られた結果を表1に併記した。なお、「カット性能」の結果における「不可」とは、カット面に繊維ほつれが生じたために不可としたことを意味する。
【0081】
(自動搬送性能)
上記各例の車両内装用天井構造について、成形、外形カット後の自動搬送(針挿入)時間を測定した。実施例1の実測値に対する相対値として得られた結果を表1に併記した。
【0082】
(弾性率)
上記各例の車両内装用天井構造について、圧縮試験機を用いて、成形後1日経過した後における弾性率(N/m
2)を測定した。実施例1の実測値に対する相対値として得られた結果を表1に併記した。なお、「弾性率」の結果における「測定不可」とは、熱接着性複合短繊維の含有割合が高いことに起因するサンプル表面のべたつきによって、圧縮試験機の治具に張り付き、正確に測定できなかったため測定不可としたことを意味する。
【0083】
(成形性能)
上記各例の車両内装用天井構造について、ノギスを用いて、成形後の厚みを測定した。実施例1の実測値に対する相対値として得られた結果を表1に併記した。なお、この成形性能は、部品の成形性、特に剛性に関連する。また、「成形性能」の結果における「測定不可」とは、熱接着性複合短繊維の含有割合が高いことに起因するサンプル表面のべたつきによって、型から取り出す際に厚みが変化してしまい、正確に測定できなかったため測定不可としたことを意味する。
【0084】
(成形サイクル性能)
上記各例の車両内装用天井構造について、成形から搬送までに要した時間を測定した。実施例1の実測値に対する相対値として得られた結果を表1に併記した。なお、「成形サイクル性能」の結果における「測定不可」とは、熱接着性複合短繊維の含有割合が高いことに起因するサンプル表面のべたつきによって、型から取り出す際の時間が加算され、さらに、成形時間にバラツキが生じ、正確に測定できなかったため測定不可としたことを意味する。
【0085】
表1より、本発明の範囲に属する実施例1〜実施例9は、本発明外の比較例1及び比較例2と比較して、熱伝導率の相対値が低く、透過音の相対値が高いので、優れた断熱性能及び遮音性能を有することが分かる。
【0086】
また、表1より、繊維構造体層の目付けが、400g/m
2以上800g/m
2以下である実施例2〜実施例9は、実施例1よりも透過音の相対値が高いので、優れた遮音性能を有しており、より優れた断熱性能及び遮音性能を有することが分かる。
【0087】
さらに、表1より、熱融着成分の融点が、110℃以上130℃以下である実施例1〜実施例9は、優れた断熱性能及び遮音性能を有することが分かる。また、ウォーターカット時間の相対値が低く、弾性率の相対値が高いので、カット性能や弾性率が高いという副次的な効果を奏することが分かる。これらの観点から、優れた成形性を有するという副次的な効果を奏することが分かる。
【0088】
また、表1より、自動搬送時間の相対値が低く、保持厚みの相対値がある程度の範囲内であり、成形サイクル時間の相対値がある程度の範囲内であるため、自動搬送性能、成形性能、成形サイクル性能などが優れるという副次的な効果を奏することが分かる。これらの観点から、工場での取り扱い性が良いという副次的な効果を奏することが分かる。
【0089】
さらに、表1より、本発明の範囲に属する実施例1〜実施例9は、本発明外の比較例1及び比較例2と比較して、成形性能を示す保持厚みの相対値がある程度の範囲内であるため、優れた剛性を有するという副次的な効果を奏することが分かる。
【0090】
また、表1より、本発明の範囲に属する実施例1〜実施例9は、本発明外の比較例1及び比較例2と比較して、吸音率の相対値が高いので、優れた吸音性能を有するという副次的な効果を奏することが分かる。
【0091】
さらに、表1より、本発明の範囲に属する実施例1〜実施例9は、本発明外の比較例1及び比較例2と比較して、重量変化の相対値がある程度の範囲内であるため、重量が増加することによる製品価値の低下が抑制されるという副次的な効果を奏することが分かる。また、重量の増加が抑制されており、車両内装用天井構造として好適であることが分かる。
【0092】
さらにまた、表1より、本発明の範囲に属する実施例1〜実施例9は、本発明外の比較例1及び比較例2と比較して、優れたカーテンエアバック性能を有するという副次的な効果を奏することが分かる。この観点から、車両内装用天井構造として好適であることが分かる。