(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0013】
なお、出願人は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0014】
(実施形態)
本開示の一実施形態に係る蛍光体ホイールを搭載した蛍光体ホール装置、光変換装置、プロジェクタ(投射型表示装置)100について、
図1〜
図11を用いて説明すれば以下の通りである。
【0015】
(プロジェクタ100の構成)
図1は、本開示の実施形態に係る投射型表示装置を示す概略図である。プロジェクタ(投射型表示装置)100は、映像信号に応じて光を変調する1つの空間光変調素子(例えば、DMD(Digital Mirror Device)(表示素子)7)を搭載したDLP(Digital Light Processing)方式の映像表示装置である。プロジェクタ100は、青色LD(Laser Diode)(光源)2a,2bと、各種光学部品、レーザ光によって励起された蛍光を出射する蛍光体ホイール装置10を含む光変換装置20を備えている。
【0016】
なお、本実施形態のプロジェクタ100は、R・G・B3原色に対応する3つのDMD7を搭載した3チップDLP方式を採用しているが、
図1では説明の便宜上、1つのDMD7だけを示しているものとする。
【0017】
本実施形態のプロジェクタ100は、
図1に示すように、光源として、2つの青色LD2a,2b、光学部品として、分離ミラー3a、ミラー3b,3c、ダイクロイックミラー3d、ミラー3e,3f,3g、レンズ4a〜4g、ロッドインテグレータ5、TIR(Total Internal Reflection)(全反射)プリズム6a、カラープリズム6b、DMD7、および投射レンズ8、および光変換装置20を備えている。
【0018】
青色LD2a,2bは、プロジェクタ100の光源であって、縦横それぞれ複数(m×n個)のLDを含むように構成されている。青色LD2aと青色LD2bとは、互いに直交する向きで配置されている。これにより、青色LD2a,2bから出射される光は、互いに直交する方向に進む。
【0019】
分離ミラー3aは、2つの青色LD2a,2bから出射されたレーザ光が交差する交点付近に設けられており、それぞれの青色LD2a,2bから出射されたレーザ光を2方向へ分離する。
【0020】
ミラー3b,3cは、分離ミラー3aによって分離された2方向に進むレーザ光の進行方向を、それぞれ90度変換する。
【0021】
ダイクロイックミラー3dは、特殊な光学素材を用いて構成されており、特定の波長の光を反射するとともに、その他の波長の光を透過させる。本実施形態では、青色LD2a,2bから出射された青色レーザ光を透過させるとともに、後述する蛍光体ホイール装置10において青色レーザ光が変換された赤色光、緑色光を反射する。
【0022】
ミラー3e,3f,3gは、ダイクロイックミラー3dを透過、あるいは反射してきたR・G・B3原色の光を、最下流側に配置された投射レンズ8へと導く。
【0023】
レンズ4a〜4gは、光源としての青色LD2a,2bから出射された青色レーザ光、蛍光体ホイール装置10において青色レーザ光が変換された赤色光、緑色光を、集光あるいは平行化する。
【0024】
ロッドインテグレータ5は、入射光の照度を均一化する。ロッドインテグレータ5に入射された光は、ロッドインテグレータ5の内周面において全反射を繰り返し、出射面において均一な照度分布となって出射される。ロッドインテグレータ5は、ミラー3eにおいて反射した光が入射する位置に設けられる。
【0025】
TIRプリズム6aは、全反射を利用して、入射してきた光の進行方向を変換する。
【0026】
カラープリズム6bは、入射してきた光を、R・G・B3原色に分離して、下流側に配置された各色に対応する3つのDMD7に反射させる。
【0027】
DMD7は、R・G・B3原色の1色ずつに対応するように3つ設けられている。そして、DMD7は、入射される光を映像信号で変調し、変調した光を、カラープリズム6bを介して投射レンズ8に対して出射する。
【0028】
投射レンズ8は、プロジェクタ100に搭載された光学部品の最下流側に配置されており、TIRプリズム6a、DMD7、カラープリズム6bを介して入射された光を、図示しないスクリーンに拡大して投射する。
【0029】
光変換装置20は、後述する青色LD2a,2bから照射された青色光を、蛍光体によって赤色光と緑色光とに変換する装置であって、蛍光体ホイール装置10を備えている。なお、蛍光体ホイール装置10を含む光変換装置20の構成については、後段において詳述する。
【0030】
<プロジェクタ100による映像の投影>
2つの青色LD2a,2bから出射されたレーザ光は、その2本のレーザ光の交点付近に配置された分離ミラー3aによって、2方向に振り分けられる。
【0031】
そのうち、第1の青色レーザ光は、レンズ4c、ミラー3c、レンズ4dを介して、ダイクロイックミラー3dを透過する。その後、レンズ4eを通過した後、ミラー3eにおいて90度方向に反射されて、ロッドインテグレータ5へ入射する。
【0032】
第2の青色レーザ光は、レンズ4a、ミラー3b、レンズ4bを介して、ダイクロイックミラー3dを透過して、蛍光体ホイール装置10の蛍光体ホイール13の蛍光体層13bに照射される。このとき、第2の青色レーザ光は、蛍光体層13bの赤色蛍光体および緑色蛍光体をそれぞれ励起させて赤色光と緑色光とに変換される。
【0033】
このとき、蛍光体ホイール13は、モータ14(
図2参照)によって回転駆動されているため、青色レーザ光が赤色蛍光体および緑色蛍光体を照射する際の焼き付きを防止することができる。
【0034】
変換された赤色光および緑色光は、ダイクロイックミラー3dにおいて90度方向に反射されて、レンズ4eを通過した後、ミラー3eにおいてさらに90度方向に反射されてロッドインテグレータ5へ入射する。
【0035】
R・G・B3原色のレーザ光は、ロッドインテグレータ5において混合され、レンズ4f、ミラー3f,3gを介して、TIRプリズム6aの境界層に入射する。TIRプリズム6aでは、全反射角であるため、R・G・B3原色のレーザ光は反射されてカラープリズム6bへ進む。
【0036】
カラープリズム6bでは、R・G・B3原色に分離された光が、それぞれ3個のDMD7に入射する。
【0037】
DMD7において画像を形成して反射された光線は、カラープリズム6bによって合成され、TIRプリズム6aの境界層を通過し、投射レンズ8に入射され、投影画面上へ映像が投影される。
【0038】
本実施形態のプロジェクタ100では、励起光源としての青色LD2a,2bから出射される青色レーザ光は、蛍光体ホイール13の表面に設けられた蛍光体層13bに含まれる赤色蛍光体および緑色蛍光体を励起して、赤色光および緑色光を生じさせる。このとき、青色レーザ光の全てのエネルギーが蛍光発光に変換されるのではなく、その一部が熱エネルギーに変換されて、赤色蛍光体および緑色蛍光体の温度を上昇させてしまう。
【0039】
ここで、蛍光体は、温度が上昇すると光変換効率が低下する。また、蛍光体の温度が上昇することで、蛍光体を蛍光体ホイール13上に固定して蛍光体層13bを形成するバインダが熱変色等を起こしたりしてしまうおそれがある。このため、蛍光体ホイール13をモータ14によって回転駆動させることで、蛍光体の温度上昇を抑制している。
【0040】
しかしながら、プロジェクタ100の高輝度化に伴って励起光の光も強くなり、蛍光体ホイール13を回転させるだけでは、蛍光体の部分の冷却性能が十分ではない。そのため、蛍光体層13bの部分に冷却風を当てて蛍光体を積極的に冷却する必要がある。
【0041】
このため、本実施形態では、
図5に示すように、円板状の第1の面に円環状に設けられた蛍光体層13bに対して冷却風を送り込むために、羽根部(第1の羽根部)33a、および羽根部(第2の羽根部)33bを備えた蛍光体ホイール13を用いている。羽根部33aは、第1の面において開口部13cに隣接する位置に設けられている。羽根部33bは、第1の面とは反対側の第2の面側に設けられている。
【0042】
なお、蛍光体ホイール装置10およびこれを備えた光変換装置20の構成については、後段にて詳述する。
【0043】
(光変換装置20の構成)
図2は、
図1の投写型表示装置に含まれる光変換装置の要部の構成を示す図である。
図3は、
図2の光変換装置の外観斜視図である。
【0044】
本実施形態の光変換装置20は、
図2に示すように、後述する蛍光体ホイール装置10、吸熱器21、排熱器22、光学レンズ23、およびヒートパイプ24を備えている。
【0045】
蛍光体ホイール装置10は、光変換装置20において、入射してきた青色レーザ光を、蛍光体に照射することで赤色光と緑色光とに変換する。なお、蛍光体ホイール装置10の詳細な構成については、後段において詳述する。
【0046】
図4Aは、
図2の光変換装置の内部に配置された吸熱器と吸熱器に熱的に接続された排熱器との構成を示す斜視図である。
図4Bは、
図4Aの平面図である。
【0047】
吸熱器21は、
図2に示すように、蛍光体ホイール装置10のケース部11の内部に配置されている。そして、吸熱器21は、光変換装置20内に形成される空気流が通過するフィン構造を有しており、蛍光体ホイール13の蛍光体層13bにおいて生じた熱を含む空気流から熱を吸収する。そして、吸熱器21は、
図3に示すように、蛍光体ホイール装置10のケース部11に含まれる外筒部11b、底部11dにネジを用いて固定されている。また、吸熱器21は、ヒートパイプ24を介して、排熱器22と熱的に接続されている。吸熱器21は、
図4Aおよび
図4Bに示すように、複数のフィン21a、固定壁21bを有している。
【0048】
複数のフィン21aは、熱伝導率の高い金属によって構成されており、
図4Bに示すように、平面視において放射状に配置されている。これにより、蛍光体ホイール13を貫通する複数の開口部13cを介して蛍光体ホイール13と蓋部11aとの間の隙間へ進入して来た空気流を、径方向外側へ誘導することができる。
【0049】
このとき、蓋部11aと対向する蛍光体ホイール13の面(第1の面)には、蛍光体層13bが設けられているため、蛍光体層13b付近に効果的に送風することで蛍光体において生じる熱を効率よく冷却することができる。そして、複数のフィン21aの間を空気流が通過した際に、空気流に含まれる熱がフィン21a側へ移動することで、空気流の温度を低下させることができる。
【0050】
固定壁21bは、羽根部33a,33bの外周側に固定配置された吸熱器21の内周面の一部であって、蛍光体ホイール13の回転時に羽根部33a,33bによって生じた空気流が回転中心から放射方向に流れることを制限する。
【0051】
これにより、蛍光体ホイール13の回転時に、羽根部33a,33bによって生じた空気流を、効率よく蛍光体ホイール13の開口部13cを通して、蛍光体層13bが形成された側へと誘導することができる。
【0052】
排熱器22は、
図2に示すように、蛍光体ホイール装置10のケース部11の外部に配置されている。そして、排熱器22は、
図3等に示すように、ヒートパイプ24を介して、吸熱器21と熱的に接続されており、吸熱器21において吸熱した空気流の熱を、ケース部11の外へ排熱する。また、排熱器22は、外周面に配置された複数のフィン22aを含むフィン構造を有している。
【0053】
複数のフィン22aは、熱伝導率の高い金属によって構成されており、
図4Aおよび
図4Bに示すように、ヒートパイプ24の長手方向に直交する方向に沿って複数配置されており、ケース部11の外部の空気に対して排熱する。
【0054】
光学レンズ23は、
図2および
図3に示すように、ケース部11の蓋部11aに形成された開口部分に、光学レンズ保持部品23aを介して取り付けられている。そして、光学レンズ23は、
図1に示すように、蛍光体ホイール13の蛍光体層13bの蛍光体を励起させる励起光を通過させるとともに、蛍光体層13bの蛍光体から発せられた発光光を集光して、ダイクロイックミラー3dの方向へ導く。
【0055】
ヒートパイプ24は、
図4Aおよび
図4Bに示すように、吸熱器21と排熱器22とを熱的に接続する。ヒートパイプ24の内部には、中空空間が形成されている。この中空空間には少量の水が封入されている。封入された水は、吸熱器21側において熱を受け取ると気化して水蒸気として排熱器22側へ移動する。排熱器22側へ移動した水蒸気は、排熱器22において冷却されて液化し、水となる。ここで、排熱器22側において冷却されて水となった後、その水は毛細管現象によって中空空間内を移動して、再び吸熱器21側へと移動する。
【0056】
つまり、ヒートパイプ24の内部では、少量の水が、吸熱器21側で気化されるとともに、排熱器22側で液化されることで、冷却媒体として機能する。
【0057】
(蛍光体ホイール装置10の構成)
本実施形態の蛍光体ホイール装置10は、青色LD2a,2bから出射された青色光(励起光)を赤色光、緑色光に変換するための装置であって、
図2に示すように、ケース部11、蛍光体ホイール13、モータ14、加圧ファン15を備えている。
【0058】
図5は、
図2の光変換装置の内部の構成を示す断面図である。
【0059】
ケース部11は、
図2、
図5に示すように、蛍光体ホイール13、モータ14、および吸熱器21等を収納する密閉空間を、円筒形状(
図3参照)の内部空間に形成する。そして、ケース部11の内部には、
図5に示すように、蛍光体ホイール13の回転時に、羽根部33a,33bによって生じる空気流の循環経路が形成される。また、ケース部11は、
図5に示すように、略同心円状に2重に配置された、外筒部11bおよび内筒部11cを有している。ケース部11の内部は、外筒部11bおよび内筒部11cによって軸X方向における両端同士が連通するとともに、その間に空気流の循環経路が形成される。
【0060】
さらに、ケース部11は、外気に接する箇所の少なくとも一部が金属によって形成されている。これにより、ケース部11内に設置された蛍光体ホイール13の蛍光体層13bの蛍光体部分に生じた熱によってケース部11内が温められた場合でも、ケース部11が熱伝導率の高い金属によって形成されているため、効率よく熱を外部へ放出することができる。
【0061】
なお、金属によって形成されるケース部11の一部としては、例えば、蛍光体ホイール13側の蓋部11aであることが好ましい。
【0062】
すなわち、蛍光体ホイール13の蛍光体層13bに近接配置された蓋部11aの近傍では、
図5に示すように、蛍光体層13bの蛍光体の部分において発生した熱が伝達された空気流が、吸熱器21に入る前に通過する。
【0063】
これにより、蛍光体ホイール13の蛍光体層13b付近を通過して加熱された空気流によって蓋部11aが加熱された場合でも、蓋部11aの熱を効果的に外部へ放出することができる。この結果、ケース部11を構成する他の部材(外筒部11b、内筒部11c、底部11d)と比較して、蓋部11aはより効果的に、空気流の熱を外部へ放出することができる。
【0064】
蓋部11aは、
図3に示すように、略四角形の板状の部材であって、ケース部11における蛍光体ホイール13の蛍光体層13b側の面(第1の面)を覆うように取り付けられている。また、蓋部11aには、上述した光学レンズ23が装填される開口部11aa(
図2参照)が形成されている。
【0065】
開口部11aaは、蓋部11aにおける蛍光体ホイール13の蛍光体層13bに対向する位置に形成された貫通穴であって、光学レンズ保持部品23aを介して、青色レーザ光および励起光(赤色、緑色)が通過する光学レンズ23が取り付けられる。
【0066】
図6Aは、
図2の変換装置のケース部の内面に形成されたガイドを示す斜視図である。
図6Bは、
図6Aの平面図である。
【0067】
外筒部11bは、
図3、
図6Aおよび
図6Bに示すように、ケース部11の側面を形成する略円筒状の部材である。そして、外筒部11bには、ケース部11の内部に収納される吸熱器21がケース部11の外部に設けられる排熱器22と接続される側に、開放部分が設けられている。開放部分は、蓋によって閉じられて、ケース部11内が密閉される。
【0068】
内筒部11cは、
図5に示すように、外筒部11bと同心円状に配置された円筒状の部材であって、外筒部11bの内周側に配置されている。そして、内筒部11cは、吸熱器21の内周側に隣接する位置に配置されている。さらに、内筒部11cは、
図5に示すように、外筒部11bよりも軸X方向における寸法が小さくなるように形成されている。
【0069】
これにより、
図5に示す断面視において、外筒部11bと内筒部11cとの間には、軸X方向における両端において連通した状態が形成される。
【0070】
よって、蛍光体ホイール13の回転に伴って羽根部33a,33bによって生じる空気流は、内筒部11cの内周側から蛍光体ホイール13側の連通部分を通過して、蛍光体ホイール13の蛍光体層13bの付近を通過しながら径方向外側へ導かれる。そして、空気流は、
図5に示すように、軸X方向下向きに移動しながら、吸熱器21の内部を通過して冷却される。吸熱器21を通過して冷却された空気流は、蛍光体ホイール13とは反対側の連通部から再び内筒部11cの内周面側へ戻される。
【0071】
底部11dは、
図5に示すように、ケース部11における蓋部11aに対して軸X方向における反対側の面を覆うように取り付けられている。
【0072】
気流上昇ガイド11eは、
図5に示すように、吸熱器21を通過して冷却された空気流を反転上昇させるためのガイド部材であって、底部11dにおけるケース部11の内部空間側の面に設けられている。そして、気流上昇ガイド11eは、軸Xを中心とする略円錐形状を有しており、外周側から内周側へ流れてきた空気流を、羽根部33bおよび加圧ファン15の風力によって上昇させるように導く。
【0073】
(蛍光体ホイール13)
図7Aは、
図2の光変換装置に含まれる蛍光体ホイール装置の蛍光体ホイールの第1の面側を示す斜視図である。
図7Bは、
図7Aの蛍光体ホイールの第2の面側を示す斜視図である。
【0074】
蛍光体ホイール13は、
図7Aおよび
図7Bに示すように、モータ14によって回転駆動される円板状の回転部材であって、円板状の基板13aと、円板状部材33とを組み合わせて構成されている。
【0075】
基板13aは、蛍光体層13bと開口部13cとを有している。
【0076】
円板状部材33は、羽根部33a(第1の羽根部の一例)と、羽根部33b(第2の羽根部の一例)とを有している。
【0077】
蛍光体層13bは、光学レンズ23に対向する面に、円環状に蛍光体が塗布されて形成されている。そして、蛍光体層13bは、青色LD2a,2bから出射された青色レーザ光を、赤色光と緑色光とに変換する。
【0078】
これにより、蛍光体ホイール13から、赤色光と緑色光とを出射させることができる。
【0079】
羽根部33bは、
図5に示すように、ケース部11内において、蛍光体ホイール13の蛍光体層13bの蛍光体を励起させた際に生じる熱を排出するための空気流を形成する。そして、羽根部33bは、
図7Bに示すように、蛍光体ホイール13における蛍光体層13bが形成された第1の面とは反対側の第2の面において、径方向に沿って延伸するように、複数設けられている。
【0080】
図8Aは、
図7A等に示す蛍光体ホイールを回転させて生じる空気流の流れる方向を示す側面図である。
図8Bは、
図8Aの平面図である。
【0081】
ここで、蛍光体ホイール13が回転駆動されると、蛍光体ホイール13と一体化した羽根部33bによって、
図8Aに示すように、軸X方向上向きに空気流が発生する。
【0082】
本実施形態では、蛍光体ホイール13における羽根部33bに対応する位置に、開口部13cが形成されている。このため、羽根部33bによって生じた空気流は、開口部13cを介して蛍光体ホイール13の蛍光体層13b側へ送られる。
【0083】
また、羽根部33bによって生じた空気流は、ケース部11内に形成される密閉空間において、蛍光体ホイール13の蛍光体層13b付近で加熱された後、外筒部11bと内筒部11cとの間の空間に配置された吸熱器21を通過する。
【0084】
このとき、加熱された空気が吸熱器21に接続されたヒートパイプ24内の少量の水との間で熱交換を行って冷却される。その後、冷却された空気が、内筒部11cの内周側において移動し、開口部13cを介して、蛍光体ホイール13の蛍光体層13b側に向けて送出される。
【0085】
開口部13cは、
図7Aに示すように、蛍光体ホイール13の第1の面に設けられた円環状の蛍光体層13bの内周側に複数設けられている。そして、開口部13cは、軸Xに近い方の底辺が短い台形形状を有しており、軸Xを中心に周方向に沿って複数配置されている。開口部13cは、上述した羽根部33bが取り付けられた位置に対応する位置にそれぞれ設けられている。なお、開口部13cの形状は台形に限定されるものではなく、略扇形形状であってもよい。
【0086】
これにより、羽根部33bによって軸X方向に沿って生じた空気流は、
図8Bに示すように、開口部13cを通過して、蛍光体層13bが形成された第1の面側へと導かれるとともに、羽根部33aによって径方向外側へ移動する。
【0087】
図9は、
図7A等に示す蛍光体ホイールの蛍光体層の部分に近接配置されるレンズを示す側面図である。
【0088】
モータ14は、
図9に示すように、蛍光体ホイール13の回転軸と接続されており、蛍光体ホイール13および羽根部33a,33bを回転駆動させる。そして、モータ14は、
図5に示すように、吸熱器21によって冷却された空気流の流路上に配置されている。
【0089】
これにより、蛍光体ホイール13を連続回転させる際に、モータ14に熱が生じた場合でも、モータ14を冷却風によって効果的に冷やすことができる。
【0090】
加圧ファン15は、
図5に示すように、ケース部11内に形成される空気流の循環経路内に配置されており、循環経路における空気流の流れる方向に沿って送風する。すなわち、加圧ファン15は、羽根部33bによって生成される空気流の流れる方向に沿って、送風するように配置されている。また、加圧ファン15は、ケース部11内における蛍光体ホイール13と気流上昇ガイド11eとの間の位置に配置されている。
【0091】
これにより、羽根部33bによって軸X方向に沿って形成される空気流の循環経路において、最も下流側に加圧ファン15を配置することで、羽根部33bによって生成された空気流が最も弱くなる最下流側の位置において空気流を強めることができる。
【0092】
この結果、ケース部11内において熱が発生する蛍光体ホイール13の蛍光体層13bの付近、モータ14の付近等における空気流の流速を上昇させて、冷却効果をさらに高めることができる。
【0094】
羽根部33aは、
図10Aおよび
図10Bに示すように、蛍光体層13bが設けられた側の面(第1の面)、つまり羽根部33bとは反対側の面において、開口部13cに隣接するように、径方向に沿って延伸するように設けられている。そして、羽根部33aは、
図5に示すように、ケース部11内において、蛍光体ホイール13の蛍光体層13bの蛍光体を励起させた際に生じる熱を排出するために、径方向外側に向かう空気流を形成する。
【0095】
より詳細には、羽根部33aは、上述した羽根部33bおよび加圧ファン15によって軸X方向に沿って形成され、蛍光体ホイール13に形成された複数の開口部13cを介して蛍光体層13bが形成された側の面に移動してきた空気流に対して、径方向外側へ向かうように誘導する。
【0096】
これにより、蛍光体ホイール13の蛍光体層13bの表面付近における空気流の流速を上昇させて、従来よりも効果的に冷却効果を向上させることができる。
【0097】
また、羽根部33aは、
図9に示すように、蛍光体層13bが設けられた面における光学レンズ23に対向する位置に、光学レンズ23に近接して配置されている。このため、羽根部33aの高さは、光学レンズ23に接触しない程度の高さであることが求められる。
【0098】
これにより、蛍光体層13bが設けられた側の面に光学レンズ23が近接して配置された構成であっても、蛍光体層13bの冷却効果を向上させた構成とすることができる。
【0099】
本実施形態の蛍光体ホイール13では、
図10Cに示すように、上述した空気流を形成するために設けられた羽根部33a,33bを、1枚のアルミ製の円板状の部材を切り起こすことで形成している。つまり、羽根部33a,33bは、共通の部材の一部として形成されている。
【0100】
すなわち、
図10Cに示すように、羽根部33a,33bは、それぞれ開口部13cを形成するために切り込まれた部分を、それぞれ蛍光体層13b側と、その反対側とに折り曲げることで形成されている。
【0101】
図11は、
図10A等に示す蛍光体ホイールを構成する円板状部材の構成を示す斜視図である。
【0102】
そして、蛍光体ホイール13は、
図11に示すアルミ製の円板状部材33と、開口部13cが形成された円板状の基板13aとを組み合わせて構成されている。
【0103】
円板状部材33は、
図11に示すように、中心部分に中心孔33cを有しており、中心孔33cを中心として、径方向に沿って延伸する向きで、複数の羽根部33a,33bが周方向に沿ってそれぞれ形成されている。
【0104】
円板状部材33は、同じく中心部分に開口部が形成された円板状の基板13aに対して、中心孔33cを合わせて重ねることで位置合わせすることができる。そして、基板13a側の開口部13cに対して羽根部33aが挿入されるように重ねることで、周方向における位置決めも行うことができる。
【0105】
なお、円板状部材33と基板13aとは、互いに重ね合わせられた状態で、軸X方向において上下から固定部材で挟み込むことで固定される。
【0106】
<羽根部33a,33bによって生じた空気流の循環>
本実施形態では、上述したように、蛍光体ホイール装置10に搭載された蛍光体ホイール13の第1の面側に設けられた羽根部33aと、第2の面側に設けられた羽根部33bとが、蛍光体ホイール13の回転に伴って一体化した状態で回転することで、ケース部11内において空気流を生じさせる。
【0107】
すなわち、羽根部33bによって生じた空気流は、
図5に示すように、図中上向きに形成され、蛍光体ホイール13の開口部13cを通過する。
【0108】
なお、羽根部33a,33bによって形成された空気流は、遠心力等によって径方向外側へ移動する流れを持つが、羽根部33bの径方向外側に近接配置された吸熱器21の固定壁21bによって、径方向外側への流れが抑制される。これにより、羽根部33bの径方向外側への空気の流れを抑制して、空気流を効率よく開口部13cへと導くことができる。
【0109】
次に、蛍光体ホイール13の開口部13cを通過した空気流は、羽根部33aによって、回転軸を中心とする径方向外側へと送られる。
【0110】
このとき、蛍光体ホイール13の蛍光体層13bに沿って移動する空気流は、蛍光体層13bの表面付近を通過する際に、蛍光体の熱によって加熱される。
【0111】
次に、蛍光体によって加熱された空気流は、蓋部11aの内側の面によって、
図5中の下向きに移動して、吸熱器21のフィン21aの隙間を通過する。
【0112】
このとき、吸熱器21は、加熱された空気流から熱を吸収して冷却する。
【0113】
次に、吸熱器21において冷却された空気流は、吸熱器21の軸X方向における下端部から底部11dの面に沿って移動し、気流上昇ガイド11eによって蛍光体ホイール13側へと誘導される。
【0114】
このとき、
図5に示すように、気流上昇ガイド11eによって上昇した空気流は、加圧ファン15によって流速を上げて移動する。
【0115】
次に、加圧ファン15によって流速が上がった空気流は、モータ14の付近を流れてモータ14を冷却した後、再び、羽根部33bへと移動する。
【0116】
これにより、羽根部33bによって軸X方向に沿って生じた空気流と、開口部13cを介して蛍光体層13b側の面に移動した後、羽根部33aによって径方向外側に向かって生じる空気流とによって、蛍光体ホイール13の蛍光体層13bの蛍光体が発生させる熱を効果的に冷却することができる。
【0117】
ここで、蛍光体ホイール13の蛍光体層13bにおいて発生する熱を効果的に冷却するためには、蛍光体層13bの正面から直接的に送風する位置にファンを設けるのが一般的である。しかし、このような構成では、ファンの配置によって、
図9に示すように、蛍光体ホイール13の蛍光体層13bに対して近接配置される光学レンズ23を設けるスペースが確保できなくなる、あるいは装置が大型化してしまうおそれがある。
【0118】
本実施形態の蛍光体ホイール装置10およびこれを備えた光変換装置20では、上述したように、蛍光体ホイール13の蛍光体層13bを冷却するための空気流を形成するための羽根部33a,33bを、蛍光体ホイール13における蛍光体層13b側の面とその反対側の面とにそれぞれ設けている。さらに、本実施形態では、羽根部33bによって生じる空気流を、羽根部33aが設けられた蛍光体層13b側に導くために、蛍光体ホイール13の羽根部33bに対応する位置に開口部13cを設けている。
【0119】
これにより、蛍光体ホイール13の蛍光体層13b側には光学レンズ23を設けるスペースを確保するとともに、蛍光体層13b側の第1の面に設けられた羽根部33aによって、蛍光体層13b付近を通過する空気流を形成することができる。
【0120】
この結果、装置の大型化を招くことなく、羽根部33a,33bと光学レンズ23とを共存させるとともに、蛍光体層13bの蛍光体において生じる熱を効果的に冷却することができる。
【0121】
なお、本開示に係る構成を用いた実験結果によれば、羽根部33a,33bを設けたことで、約4%の温度上昇を抑制する効果が確認された。
【0122】
[他の実施形態]
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0123】
(A)
上記実施形態では、蛍光体ホイール13の蛍光体層13bが形成された側の面(第1の面)に羽根部33a、その裏面(第2の面)に羽根部33bを設けた構成を例として挙げて説明した。しかし、本開示はこれに限定されるものではない。
【0124】
例えば、蛍光体ホイール13の蛍光体層13bが形成された側とは反対側の面(第2の面)には羽根部を設けることなく、蛍光体層13bが設けられた側の面(第1の面)にだけ羽根部33aが設けられた構成であってもよい。
【0125】
この場合でも、加圧ファン15によって、蛍光体ホイール13の開口部13cを介して軸X方向に沿って上昇してきた空気流を、羽根部33aによって径方向外側へと導くことができる。よって、蛍光体ホイール13の蛍光体層13bの表面に沿って空気流を送り込むことで、蛍光体層13bにおいて生じた熱を効果的に冷却することができる。
【0126】
(B)
上記実施形態では、開口部13cにおける互いに対向する辺に、それぞれ羽根部33aと羽根部33bとを略平行な方向に沿って設けた蛍光体ホイール13を例として挙げて説明した。しかし、本開示はこれに限定されるものではない。
【0128】
例えば、
図12A〜
図12Cに示すように、羽根部33bに対向する位置に配置された羽根部133aを、羽根部33bに対して斜めに配置した蛍光体ホイール113を用いてもよい。
【0130】
また、
図13A〜
図13Cに示すように、羽根部33bと同じ辺側に、羽根部233aを設けた蛍光体ホイール213を用いてもよい。
【0132】
また、
図14A〜
図14Cに示すように、1つの開口部13cに対して、1つの羽根部33bと、2つの羽根部333aa,333abとを設けた蛍光体ホイール313を用いてもよい。
【0133】
この場合には、蛍光体層13bが設けられた面側に、1つの開口部13cに対して2つの羽根部333aa,333abが設けられているため、より効果的に蛍光体層13b付近における空気流を強めて冷却効果を向上させることができる。
【0135】
また、
図15A〜
図15Cに示すように、径方向に対して斜めに延伸するように配置された羽根部433bと同じ辺側に、羽根部433aを設けた蛍光体ホイール413を用いてもよい。
【0137】
また、
図16A〜
図16Cに示すように、径方向に対して斜めに延伸するように配置された羽根部433bに対して、対向する辺側に設けられた羽根部533aaと同じ辺側に設けられた羽根部533abとを含む蛍光体ホイール513を用いてもよい。
【0138】
(C)
上記実施形態では、羽根部33a,33bによって生じる空気流をケース部11内において効率よく循環させるために、
図5等に示すように、蛍光体ホイール13の下部空間に、加圧ファン15を設けた例を挙げて説明した。しかし、本開示はこれに限定されるものではない。
【0139】
例えば、ケース部内に加圧ファンを持たない蛍光体ホイール装置、光変換装置であってもよい。
【0140】
この場合には、蛍光体ホイールに設けられた羽根部によって生じる空気流によって、蛍光体層において発生した熱を含む空気を吸熱器において冷却すればよい。
【0141】
ただし、吸熱器内を通過する空気流を効率よく循環させるためには、羽根部によって生じる風力だけでは弱い場合がある。このため、例えば、圧力損失が大きいフィン構造を有する吸熱器の場合には、上記実施形態のように、羽根部33bによって生じる空気流と同じ方向に送風する加圧ファン15を設けることがより好ましい。
【0142】
(D)
上記実施形態では、
図5等に示すように、ケース部11内における蛍光体ホイール13の下部空間であって底部11dの上面に、空気流を上昇させるための気流上昇ガイド11eを設けた例を挙げて説明した。しかし、本開示はこれに限定されるものではない。
【0143】
例えば、気流上昇ガイドを持たない蛍光体ホイール装置、光変換装置であってもよい。
【0144】
この場合には、吸熱器を通過した空気流を軸方向に沿って上昇させるための力が、羽根部33aによる風力だけに依存する構成となるため、十分に空気流を循環させることが困難になるおそれがある。
【0145】
このため、上記実施形態のように、羽根部33bによって生じる空気流と同じ方向に送風する加圧ファン15を設けてもよい。これにより、気流上昇ガイドを持たない構成であっても、ケース部11内において空気流を十分に循環させることができる。
【0146】
(E)
上記実施形態では、
図2等に示すように、蛍光体ホイール13の蛍光体層13bにおいて生じた熱を、空気を媒体として吸熱器21において吸熱した後、吸熱器21とヒートパイプ24を介して熱的に接続された排熱器22から外部へ排出する例を挙げて説明した。しかし、本開示はこれに限定されるものではない。
【0147】
例えば、蛍光体ホイール装置および光変換装置を内包するケース部の外面に、外壁フィンを設けて、蛍光体ホイールの蛍光体層において生じる熱を、外壁フィンを介して放熱してもよい。
【0148】
この構成では、排熱器における排熱機能に加えて、ケース部の外壁フィンからの放熱機能も備えることができるため、さらに効率よく、蛍光体層の部分で生じる熱を外部へと排出することができる。
【0149】
(F)
上記実施形態では、蛍光体ホイール13の蛍光体層13bにおいて生じた熱を、ヒートパイプ24を介して熱的に接続された吸熱器21と排熱器22とによって外部へ排出する例を挙げて説明した。しかし、本開示はこれに限定されるものではない。
【0150】
例えば、吸熱器と排熱器とが直接接続されており、ヒートパイプを持たない構成の光変換装置であってもよい。
【0151】
この場合でも、吸熱器と排熱器とが、ケース部の隔壁を貫いて熱的に接続されているため、蛍光体ホイールの蛍光体層において生じた熱を、羽根部によってケース部内を循環させながら吸熱器および排熱器において外部へ排出することができる。
【0152】
(G)
上記実施形態では、3つのDMD7を含む3チップDLP方式のプロジェクタ100に、本開示の蛍光体ホイール13、蛍光体ホイール装置10および光変換装置20を搭載した例を挙げて説明した。しかし、本開示はこれに限定されるものではない。
【0153】
例えば、1つのDMDとカラーホイールとを組み合わせた1チップDLP方式のプロジェクタに、本開示の蛍光体ホイール装置10、光変換装置20を搭載してもよい。
【0154】
(H)
上記実施形態では、DLP方式のプロジェクタ100に、本開示の蛍光体ホイール装置10および光変換装置20を搭載した例を挙げて説明した。しかし、本開示はこれに限定されるものではない。
【0155】
例えば、LCD(Liquid Crystal Display)やLCOS(Liquid Crystal on Silicon)を用いた液晶方式のプロジェクタに、本開示の蛍光体ホイール装置10、光変換装置20を搭載してもよい。
【0156】
(I)
上記実施形態では、本開示に係る投射型表示装置として、プロジェクタ100を例として挙げて説明した。しかし、本開示はこれに限定されるものではない。
【0157】
例えば、プロジェクタ以外にも、リアプロジェクションテレビ等、他の投射型表示装置に対して本開示の構成を適用してもよい。