特許第6979595号(P6979595)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6979595プロテインキナーゼ阻害剤としてのアミノチアゾール化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979595
(24)【登録日】2021年11月18日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】プロテインキナーゼ阻害剤としてのアミノチアゾール化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 417/14 20060101AFI20211202BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20211202BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20211202BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20211202BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20211202BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   C07D417/14CSP
   A61K31/506
   A61K31/5377
   A61P43/00 111
   A61P35/00
   A61P35/02
【請求項の数】22
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2019-568372(P2019-568372)
(86)(22)【出願日】2018年6月13日
(65)【公表番号】特表2020-523348(P2020-523348A)
(43)【公表日】2020年8月6日
(86)【国際出願番号】US2018037221
(87)【国際公開番号】WO2018231910
(87)【国際公開日】20181220
【審査請求日】2021年1月5日
(31)【優先権主張番号】62/518,855
(32)【優先日】2017年6月13日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516348555
【氏名又は名称】ナショナル ヘルス リサーチ インスティチューツ
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シー チュアン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ウィアー−トーン
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ ホイ−ジェン
【審査官】 奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−507302(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/143466(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0225880(US,A1)
【文献】 特表2008−543754(JP,A)
【文献】 CHRISTOPHER,L.J. et al,Metabolism and disposition of dasatinib after oral administration to humans,Drug Metabolism and Disposition,2008年,Vol.36, No.7,p.1357-1364
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 417/14
A61K 31/506
A61K 31/5377
A61P 43/00
A61P 35/00
A61P 35/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩:
【化1】
(式中、
1は、C16アルキル又はC16チオアルキルであり、
XはO又はNRaであり、ここでRaは、H又はC16アルキルであり、
YはCRbc又はNRdであり、ここでRb及びRcは各々独立して、H、ハロ、C16アルキル、C16アルコキシル若しくはアミノであるか、又はRbはRaと、Rbに結合した炭素原子と、Raに結合した窒素原子と共にC310ヘテロシクロアルキルであり、RdはH若しくはC16アルキルであるか、又はRdはRaと、Rd及びRaに結合した窒素原子と共にC310ヘテロシクロアルキルであり、
2は−CH2CH2e又はNRfgであり、ここでReはH、ハロ、C16アルキル又はORhであり、Rf及びRgは各々独立して、C16アルキル又はC38シクロアルキルであり、RhはH若しくはC16アルキルであるか、又はRhはRdと、Rhに結合した酸素原子と、Rdに結合した窒素原子と共にC310ヘテロシクロアルキルであり、
31つ以上の(CH2nZ部分(ここで、nは0又は1であり、ZはH、ハロ、CN、OH、CF3、C16アルキル又はC16アルコキシルである)で独立して置換された6員のヘテロアリールであるか、又はハロ、CN、OH、CF3、C16アルキル及びC16アルコキシルからなる群から独立して選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよいフェニル環と縮合した6員のヘテロアリールである)。
【請求項2】
前記化合物が、式(II):
【化2】
(式中、R1はC16アルキルである)のものである、請求項1に記載の化合物又は塩。
【請求項3】
XがOであり、YがNRdであり、R2が−CH2CH2eであり、ここでReはORhであり、RhはRdと、Rhに結合した酸素原子と、Rdに結合した窒素原子と共にC310ヘテロシクロアルキルである、請求項2に記載の化合物又は塩。
【請求項4】
XがNRaであり、YがCRbc又はNRdであり、ここでRaはRbと、Raに結合した窒素原子と、Rbに結合した炭素原子と共にC310ヘテロシクロアルキルであり、RcはH、ハロ、C16アルキル、C16アルコキシル又はアミノであり、RdはRaと、Ra及びRdに結合した窒素原子と共にC310ヘテロシクロアルキルである、請求項2に記載の化合物又は塩。
【請求項5】
XがNRaであり、YがCRbcであり、R2がNRfgであり、ここでRaはRbと、Raに結合した窒素原子と、Rbに結合した炭素原子と共にC310ヘテロシクロアルキルであり、RcはH、ハロ、C16アルキル、C16アルコキシル又はアミノであり、Rf及びRgは各々、C16アルキルである、請求項4に記載の化合物又は塩。
【請求項6】
XがNRaであり、YがNRdであり、R2が−CH2CH2eであり、ここでRaはRdと、Ra及びRdに結合した窒素原子と共にC310ヘテロシクロアルキルであり、ReはH、ハロ又はORhであり、RhはH又はC16アルキルである、請求項4に記載の化合物又は塩。
【請求項7】
3が1つ以上の(CH2nZ部分(ここで、nは0又は1であり、ZはH、ハロ、CN、OH、CF3、C16アルキル又はC16アルコキシルである)で独立して置換された6員のヘテロアリールである、請求項に記載の化合物又は塩。
【請求項8】
3がピリジル又はピリミジルである、請求項に記載の化合物又は塩。
【請求項9】
3がピリジル又はピリミジルである、請求項に記載の化合物又は塩。
【請求項10】
前記化合物が、
【化3】
である、請求項に記載の化合物又は塩。
【請求項11】
3がピリジル又はピリミジルである、請求項に記載の化合物又は塩。
【請求項12】
前記化合物が、
【化4】
である、請求項11に記載の化合物又は塩。
【請求項13】
3がピリジル又はピリミジルである、請求項に記載の化合物又は塩。
【請求項14】
前記化合物が以下の化合物:
【化5】
の1つである、請求項13に記載の化合物又は塩。
【請求項15】
前記化合物が以下の化合物:
【化6】
の1つである、請求項1に記載の化合物又は塩。
【請求項16】
前記化合物が式(III):
【化7】
(式中、R1はC16アルキルである)のものである、請求項1に記載の化合物又は塩。
【請求項17】
薬学的に許容可能な担体と請求項1に記載の化合物又は塩とを含む医薬組成物。
【請求項18】
請求項1に記載の化合物又は塩を含む、チロシンキナーゼ阻害剤。
【請求項19】
チロシンキナーゼと関連する癌を治療するための医薬組成物であって、請求項1に記載の化合物又は塩を含む、医薬組成物。
【請求項20】
前記チロシンキナーゼがFMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)、FMS様チロシンキナーゼ4、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)、コロニー刺激因子1受容体(CSF1R)、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)A、PDGFR B、チロシン−プロテインキナーゼKit(c−KIT)、c−Src(SRC)、チロシン−プロテインキナーゼLyn(LYN) A、LYN B、トランスフェクション時に再編成したチロシンキナーゼ(RET)、リンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ、ガードナー−ラシードネコ肉腫ウイルス癌遺伝子ホモログ、ジスコイジンドメイン受容体1、キナーゼ挿入ドメイン受容体、Bリンパ球キナーゼ、チロシン−プロテインキナーゼYes、アベルソンマウス白血病ウイルス癌遺伝子ホモログ1(ABL1)、チロシン受容体キナーゼTRKA、TRKB、TRKC、ZAK/MLTK、IRAK4、RET V804L、RET Y791F、FLT3 D835Y、PDGFR A V561D又はABL1 T315Iである、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記チロシンキナーゼがFLT3、VEGFR又はc−KITである、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記癌が、急性骨髄性白血病、緑色腫、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、骨髄異形成症候群、膵癌、膀胱癌、結腸直腸癌、乳癌、男性生殖器癌、腎癌、肝細胞癌、肺癌、卵巣癌、子宮頸癌、子宮癌、妊娠性絨毛性疾患、胃癌、胆管癌、胆嚢癌、小腸癌、食道癌、中咽頭癌、下咽頭癌、眼癌、神経癌、頭頸部癌、黒色腫、形質細胞腫、内分秘腺新生物、神経内分泌癌、脳腫瘍、骨癌、又は肉腫である、請求項21に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
プロテインキナーゼは、分化、増殖、移動及びアポトーシスを含む様々な細胞機能を調節する細胞シグナル経路において重要である。プロテインキナーゼの脱調節(Deregulation)は、癌及び多数の他の疾患に関わる。
【0002】
プロテインキナーゼのサブクラスであるチロシンキナーゼは、ATPから標的タンパク質のチロシンのヒドロキシル基へのホスフェートの転移により標的タンパク質機能を調節する。FMS様チロシンキナーゼ3(「FLT3」)、血管内皮増殖因子受容体(「VEGFR」)及びチロシン−プロテインキナーゼKit(「c−Kit」)は、癌治療における魅力的な治療標的として研究されている3つのチロシンキナーゼである。
【0003】
受容体チロシンキナーゼであるFLT3の突然変異は、癌、例えば急性骨髄性白血病の発症につながる可能性がある。非特許文献1を参照されたい。
【0004】
シグナルタンパク質である血管内皮増殖因子は、VEGFRに結合し、それをリン酸基転移によって活性化することで新生血管の成長を刺激する。VEGFRは、腫瘍の血管新生の主要調節因子として同定されている。非特許文献2を参照されたい。
【0005】
同様に受容体チロシンキナーゼであるc−Kitは、細胞内シグナル伝達に関与する。c−Kitの突然変異型は、一部の癌の発生において重要な役割を果たす。c−Kitの阻害は、消化管間質腫瘍、急性骨髄性白血病及び黒色腫の治療に効果的であることが証明されている。非特許文献3を参照されたい。
【0006】
強力なチロシンキナーゼ阻害剤として幅広く調査されているアミノチアゾール化合物は、薬物候補としての幾つかの課題を示す。アミノチアゾール化合物は、キナーゼ選択性が低く、毒性研究において動物の死を引き起こすことが多く、概して前臨床研究又は臨床研究において望ましい有効性を発揮するのに十分なin vivo曝露を欠く。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Pratz et al., Current Drug Targets, 2010, 11(7), 781-9
【非特許文献2】Hicklin et al., J Clin Oncol., 2005, 23, 1011-1027
【非特許文献3】Babaei et al., Drug Des Devel Ther., 2016 10, 2443-2459
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
或る特定のチロシンキナーゼを特異的に阻害し、望ましい安全性プロファイルを示し、標的癌の治療において十分なin vivo有効性を発揮する新たなアミノチアゾール化合物を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、或る特定のアミノチアゾール化合物が複数のチロシンキナーゼ、例えばFLT3、VEGFR及びc−Kitを効果的に阻害するという予期せぬ発見に基づく。
【0010】
一態様では、本発明は、式(I)のアミノチアゾール化合物:
【化1】
(式中、
1は、C16アルキル又はC16チオアルキルであり、
XはO又はNRaであり、ここでRaは、H又はC16アルキルであり、
YはCRbc又はNRdであり、ここでRb及びRcは各々独立して、H、ハロ、C16アルキル、C16アルコキシル若しくはアミノであるか、又はRbはRaと、Rbに結合した炭素原子と、Raに結合した窒素原子と共にC310ヘテロシクロアルキルであり、RdはH若しくはC16アルキルであるか、又はRdはRaと、Rd及びRaに結合した窒素原子と共にC310ヘテロシクロアルキルであり、
2は−CH2CH2e又はNRfgであり、ここでReはH、ハロ、C16アルキル又はORhであり、Rf及びRgは各々独立して、C16アルキル又はC38シクロアルキルであり、RhはH若しくはC16アルキルであるか、又はRhはRdと、Rhに結合した酸素原子と、Rdに結合した窒素原子と共にC310ヘテロシクロアルキルであり、
3はヘテロアリールである)に関する。
【0011】
本明細書における「アルキル」という用語は、−CH3又は分岐−C37等の飽和した直鎖又は分岐炭化水素部分を指す。「シクロアルキル」という用語は、シクロヘキシル、シクロヘキセン−3−イル又はアダマンチル等の非芳香族の単環式、二環式、三環式又は四環式炭化水素部分を指す。「アルコキシル」という用語は、−O−アルキルラジカルを指す。アルコキシルの例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ及びtert−ブトキシが挙げられるが、これらに限定されない。「チオアルキル」という用語は、−S−アルキルラジカルを指す。チオアルキルの例としては、メチルチオール、エチルチオール及びベンジルチオールが挙げられるが、これらに限定されない。「ヘテロシクロアルキル」という用語は、1つ以上の環ヘテロ原子(例えばN、O又はS)を有する非芳香族の単環式、二環式、三環式又は四環式部分を指す。ヘテロシクロアルキルの例としては、4−モルホリニル、1−ピペラジニル、4−テトラヒドロピラニル及び4−ピラニルが挙げられるが、これらに限定されない。「ヘテロアリール」という用語は、少なくとも1つのヘテロ原子(例えばN、O又はS)を含有する1つ以上の芳香環を有する部分を指す。ヘテロアリール部分の例としては、フリル、フリレン、フルオレニル、ピロリル、チエニル、オキサゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピリミジニル、キナゾリニル、キノリル、イソキノリル、及びインドリルが挙げられる。
【0012】
本明細書で言及されるアルキル、チオアルキル、アルコキシル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、及びヘテロアリールは、他の特定が無い限り置換及び非置換の部分の両方を含む。シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、及びヘテロアリール上の考えられる置換基としては、C110アルキル、C210アルケニル、C210アルキニル、C320シクロアルキル、C320シクロアルケニル、C120ヘテロシクロアルキル、C120ヘテロシクロアルケニル、C110アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、アミノ、C110アルキルアミノ、C120ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヒドロキシル、ハロゲン、チオ、C110アルキルチオ、アリールチオ、C110アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アシルアミノ、アミノアシル、アミノチオアシル、アミジノ、グアニジン、ウレイド、シアノ、ニトロ、アシル、チオアシル、アシルオキシ、カルボキシル、及びカルボン酸エステルが挙げられる。一方、アルキル上の考えられる置換基としては、C110アルキル、C210アルケニル、及びC210アルキニル以外の上述の全ての置換基が挙げられる。シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、及びヘテロアリールは互いに縮合してもよい。
【0013】
上記のアミノチアゾール化合物には化合物自体、並びに該当する場合にそれらの塩、プロドラッグ及び溶媒和物が含まれる。塩は例えば、陰イオンとアミノチアゾール化合物上の正に帯電した基(例えばアミノ)との間で形成され得る。好適な陰イオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、クエン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、酢酸イオン、リンゴ酸イオン、トシル酸イオン、酒石酸イオン、フマル酸イオン、グルタミン酸イオン、グルクロン酸イオン、乳酸イオン、グルタル酸イオン及びマレイン酸イオンが挙げられる。同様に、塩は、陽イオンとアミノチアゾール化合物上の負に帯電した基(例えばカルボキシレート)との間でも形成され得る。好適な陽イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、及びテトラメチルアンモニウムイオン等のアンモニウム陽イオンが挙げられる。アミノチアゾール化合物には第四級窒素原子を含有する塩も含まれる。プロドラッグの例としては、被験体に投与した後に活性アミノチアゾール化合物をもたらすことが可能なエステル及び他の薬学的に許容可能な誘導体が挙げられる。溶媒和物は、活性アミノチアゾール化合物と薬学的に許容可能な溶媒との間で形成される複合体を指す。薬学的に許容可能な溶媒の例としては、水、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸及びエタノールアミンが挙げられる。
【0014】
別の態様では、本発明は、チロシンキナーゼ、例えばFLT3、VEGFR及びc−Kitを阻害する方法に関する。該方法は、チロシンキナーゼと有効量の上記の1つ以上のアミノチアゾール化合物とを接触させることを含む。
【0015】
チロシンキナーゼと関連する癌を治療する方法も本発明の範囲に含まれる。該方法は、有効量の上記の1つ以上の式(I)のアミノチアゾール化合物を、それを必要とする被験体に投与することを含む。
【0016】
癌に関連付けられるチロシンキナーゼは、野生型又は突然変異型であり得る。チロシンキナーゼの例としては、FLT3、FLT4、VEGFR、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)A、PDGFR B、c−Kit、c−Src(SRC)、チロシン−プロテインキナーゼLyn(LYN) A、LYN B、トランスフェクション時に再編成した(rearranged during transfection)チロシンキナーゼ(RET)、リンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ、ガードナー−ラシードネコ肉腫ウイルス癌遺伝子ホモログ、ジスコイジンドメイン受容体1、キナーゼ挿入ドメイン受容体、Bリンパ球キナーゼ、チロシン−プロテインキナーゼYes、アベルソンマウス白血病ウイルス癌遺伝子ホモログ1(ABL1)、チロシン−プロテインキナーゼTek、RET V804L、RET Y791F、FLT3 D835Y、PDGFR A V561D又はABL1 T315Iが挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
例示的な方法では、式(I)のアミノチアゾール化合物は、FLT3、VEGFR又はc−Kitと関連する癌の治療に使用される。
【0018】
前記癌の例としては、急性骨髄性白血病、緑色腫、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、骨髄異形成症候群、膵癌、膀胱癌、結腸直腸癌、乳癌、男性生殖器癌、腎癌、肝細胞癌、肺癌、卵巣癌、子宮頸癌、子宮癌、妊娠性絨毛性疾患、胃癌、胆管癌、胆嚢癌、小腸癌、食道癌、中咽頭癌、下咽頭癌、眼癌、神経癌、頭頸部癌、黒色腫、形質細胞腫、内分秘腺新生物、神経内分泌癌、脳腫瘍、骨癌、及び肉腫(例えば消化管間葉系腫瘍、すなわちGIST)が挙げられる。
【0019】
上記の1つ以上の式(I)のアミノチアゾール化合物を含有する医薬組成物が更に本発明の範囲に含まれる。該医薬組成物は、癌の治療に使用することができる。
【0020】
本発明は、癌の治療のための薬剤の製造への上記の1つ以上の式(I)のアミノチアゾール化合物の使用も包含する。
【0021】
「治療する」又は「治療」という用語は、1つ以上のアミノチアゾール化合物を、上記の疾患、すなわち癌、かかる疾患の症状又はかかる疾患になりやすい傾向を有する被験体に、治療効果をもたらす、例えば上記の疾患、その症状又はそれになりやすい傾向を治癒する、軽減する、変化させる、それらに影響を及ぼす、改善する又は予防する目的で投与することを指す。「有効量」は、治療効果をもたらすために必要とされる活性化合物の量を指す。有効用量は、当業者に認識されるように、治療する疾患の種類、投与経路、賦形剤の使用、及び他の治療処置との併用(co-usage)の可能性に応じて異なる。
【0022】
本発明の方法を実行するために、上記の1つ以上のアミノチアゾール化合物を含む組成物を非経口的に、経口的に、経鼻的に、直腸に、局所的に又は口腔に投与することができる。「非経口的」という用語は本明細書で使用される場合、皮下、皮内、静脈内、腹腔内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液嚢内、胸骨内(intrasternal)、髄腔内、病巣内又は頭蓋内注射、更には任意の好適な注入法を指す。
【0023】
滅菌注射用組成物は、1,3−ブタンジオール溶液等の非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤又は溶媒中の溶液又は懸濁液であり得る。用いることができる許容可能なビヒクル及び溶媒には、マンニトール、水、リンガー液及び等張塩化ナトリウム溶液がある。加えて、不揮発性油が溶媒又は懸濁媒として従来用いられる(例えば、合成モノグリセリド又はジグリセリド)。オレイン酸等の脂肪酸及びそのグリセリド誘導体が、オリーブ油及びヒマシ油等の天然の薬学的に許容可能な油、特にそれらのポリオキシエチル化バージョンと同様、注射剤の調製に有用である。これらの油の溶液又は懸濁液は、長鎖アルコール希釈剤又は分散剤、カルボキシメチルセルロース、若しくは同様の分散剤を含有していてもよい。Tween及びSpan等の他の一般に使用される界面活性剤、又は薬学的に許容可能な固体、液体若しくは他の剤形の製造に一般に使用される他の同様の乳化剤若しくはバイオアベイラビリティ増強剤(bioavailability enhancers)を配合目的で使用することもできる。
【0024】
経口投与用の組成物は、カプセル、錠剤、エマルション、並びに水性懸濁液、分散液及び溶液を含む任意の経口的に許容可能な剤形とすることができる。錠剤の場合、一般に使用される担体としては、ラクトース及びトウモロコシデンプンが挙げられる。ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤も通例添加される。カプセル形態での経口投与については、有用な希釈剤として、ラクトース及び乾燥トウモロコシデンプンが挙げられる。水性懸濁液又はエマルションを経口投与する場合、乳化剤又は懸濁化剤と合わせた油相中に有効成分を懸濁又は溶解することができる。必要に応じて、或る特定の甘味料、香料又は着色料を添加してもよい。
【0025】
鼻エアロゾル又は吸入用組成物は、医薬配合物の技術分野で既知の技法に従って調製することができる。例えば、かかる組成物は、ベンジルアルコール若しくは他の好適な保存料、バイオアベイラビリティを増強するための吸収促進剤、フルオロカーボン、及び/又は当該技術分野で既知の他の可溶化剤若しくは分散剤を用いて、生理食塩水溶液として調製することができる。
【0026】
上記の1つ以上のアミノチアゾール化合物を含む組成物は、直腸投与用の坐剤の形態で投与することもできる。
【0027】
医薬組成物中の担体は、組成物の有効成分に適合し(好ましくは、有効成分を安定させることが可能であり)、治療対象の被験体に有害でないという意味で「許容可能」でなければならない。1つ以上の可溶化剤を活性1,5−ジフェニル−ペンタ−1,4−ジエン−3−オン化合物の送達のための医薬賦形剤として用いることができる。他の担体の例としては、コロイド状酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、セルロース、ラウリル硫酸ナトリウム及びD&C Yellow #10が挙げられる。
【0028】
本発明の1以上の実施形態の詳細を以下の明細書において説明する。本発明の他の特徴、目的及び利点は明細書及び特許請求の範囲から明らかである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
式(I):
【化2】
(式中、可変部R1、R2、R3、X及びYは、上の発明の概要の節に規定される)のアミノチアゾール化合物を詳細に開示する。
【0030】
通例、式(I)の化合物は、1つ以上の(CH2nZ部分(ここで、nは0又は1であり、ZはH、ハロ、CN、OH、CF3、C16アルキル又はC16アルコキシルである)で独立して置換された5員若しくは6員のヘテロアリールであるR3を有するか、又はH、ハロ、CN、OH、CF3、C16アルキル及びC16アルコキシルからなる群から独立して選択される1つ以上の置換基で置換されたフェニル環と縮合した5員若しくは6員のヘテロアリールであるR3を有する。例示的な化合物は、1つ以上の(CH2nZ部分(ここで、nは0又は1であり、ZはH、ハロ、CN、OH、CF3、C16アルキル又はC16アルコキシルである)で独立して置換された6員のヘテロアリールであるR3を有する。R3の2つの例は、ピリジル及びピリミジルである。
【0031】
上に記載される新規のアミノチアゾール化合物の群は、式(II):
【化3】
(式中、R1はC16アルキルである)の化合物である。
【0032】
1つのサブセットでは、式(II)の化合物は、OであるX、NRdであるY、及び−CH2CH2eであるR2を有し、ここでReはORhであり、RhはRdと、Rhに結合した酸素原子と、Rdに結合した窒素原子と共にC310ヘテロシクロアルキルである。このサブセットの化合物は、1つ以上の(CH2nZ部分(ここで、nは0又は1であり、ZはH、ハロ、CN、OH、CF3、C16アルキル又はC16アルコキシルである)で独立して置換された5員若しくは6員のヘテロアリールであるか、又はH、ハロ、CN、OH、CF3、C16アルキル及びC16アルコキシルから独立して選択される1つ以上の置換基で置換されたフェニル環と縮合した5員若しくは6員のヘテロアリールであるR3を有し得る。例えば、R3はピリジル又はピリミジルであり得る。例示的な化合物としては、以下の化合物:
【化4】
が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
別のサブセットでは、式(II)の化合物は、NRaであるX及びCRbc又はNRdであるYを有し、ここでRaはRbと、Raに結合した窒素原子と、Rbに結合した炭素原子と共にC310ヘテロシクロアルキルであり、RcはH、ハロ、C16アルキル、C16アルコキシル又はアミノであり、RdはRaと、Ra及びRdに結合した窒素原子と共にC310ヘテロシクロアルキルである。
【0034】
注目すべきことに、これらの化合物は、NRaであるX、CRbcであるY及びNRfgであるR2を有していてもよく、ここでRaはRbと、Raに結合した窒素原子と、Rbに結合した炭素原子と共にC310ヘテロシクロアルキルであり、RcはH、ハロ、C16アルキル、C16アルコキシル又はアミノであり、Rf及びRgは各々、C16アルキルである。これらの化合物は、一般に、1つ以上の(CH2nZ部分(ここで、nは0又は1であり、ZはH、ハロ、CN、OH、CF3、C16アルキル又はC16アルコキシルである)で独立して置換された5員若しくは6員のヘテロアリールであるか、又はH、ハロ、CN、OH、CF3、C16アルキル及びC16アルコキシルから独立して選択される1つ以上の置換基で置換されたフェニル環と縮合した5員若しくは6員のヘテロアリールであるR3を有する。R3はピリジル又はピリミジルであり得る。例示的な化合物としては、以下の化合物:
【化5】
が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
一方、このサブセットの化合物は、NRaであるX、NRdであるY及び−CH2CH2eであるR2を有していてもよく、ここでRaはRdと、Ra及びRdに結合した窒素原子と共にC310ヘテロシクロアルキルであり、ReはH、ハロ又はORhであり、RhはH又はC16アルキルである。これらの化合物は、一般に、1つ以上の(CH2nZ部分(ここで、nは0又は1であり、ZはH、ハロ、CN、OH、CF3、C16アルキル又はC16アルコキシルである)で独立して置換された5員若しくは6員のヘテロアリールであるか、又はH、ハロ、CN、OH、CF3、C16アルキル及びC16アルコキシルから独立して選択される1つ以上の置換基で置換されたフェニル環と縮合した5員若しくは6員のヘテロアリールであるR3を有する。例えば、R3はピリジル又はピリミジルである。例示的な化合物としては、以下の化合物:
【化6】
が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
上に記載される新規のアミノチアゾール化合物の別の群は、式(III):
【化7】
(式中、R1はC16アルキルである)の化合物である。
【0037】
式(III)の例示的な化合物は、
【化8】
である。
【0038】
化合物番号を各々割り当てた本発明の例示的な化合物を下に挙げる。
【化9】
【0039】
1つ以上の式(I)のアミノチアゾール化合物を含有する癌を治療するための医薬組成物も本発明の範囲に含まれる。
【0040】
癌を治療する方法であって、有効量の式(I)の化合物を、それを必要とする被験体に投与することを含む、方法が本発明に更に包含される。
【0041】
式(I)の化合物の合成に用いられる合成化学変換及び保護基の方法論(保護及び脱保護)は、当該技術分野で既知である。例えば、R. Larock, Comprehensive Organic Transformations (2nd Ed., VCH Publishers 1999)、P. G. M. Wuts and T. W. Greene, Greene's Protective Groups in Organic Synthesis (4th Ed., John Wiley and Sons 2007)、L. Fieser and M. Fieser, Fieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis (John Wiley and Sons 1994)、L. Paquette, ed., Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis (2nd ed., John Wiley and Sons 2009)及びG. J. Yu et al., J. Med. Chem. 2008, 51, 6044-6054を参照されたい。
【0042】
そのように調製される式(I)の化合物は、初めに生化学アッセイ、例えば下記実施例2〜4に記載のキナーゼアッセイ、又は細胞アッセイ、例えば下記実施例5に記載のin vitro抗癌活性アッセイを用いて、チロシンキナーゼを阻害するか、又は或る特定のチロシンキナーゼを発現する癌細胞の成長を阻害する効力についてスクリーニングすることができる。化合物を続いてin vivoアッセイ、例えば異種移植片動物モデルアッセイを用いて、哺乳動物における腫瘍成長を抑制する活性について評価することができる。選択された化合物を癌の治療における有効性を検証するために更に試験することができる。例えば、癌を有する動物(例えばマウス)に化合物を投与することができ、その治療効果を続いて評価する。結果に基づいて、適切な投与量範囲及び投与経路を調査し、決定することができる。
【0043】
更なる詳細な説明がなくとも、当業者であれば上記の説明に基づいて本発明を最大限に利用することができると考えられる。したがって、以下の具体的な例は、単なる例示として解釈すべきであり、いかなる形にも本開示の残りの部分を限定するものではない。本明細書に引用される全ての文献は、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
【0044】
13種の式(I)の例示的な化合物の合成及び特性評価を下記実施例1に示す。そのように調製される化合物の分析データも実施例1に記載し、これらの化合物を試験するための手順をその後の実施例2〜5に記載する。
【0045】
全ての化学物質及び溶媒は商業供給業者から購入し、そのまま(as received)使用した。全ての反応を乾燥窒素の雰囲気下で行った。反応を、Merckの60 F254シリカゲルガラス支持プレート(5×10cm)を使用してTLCによってモニタリングし、ゾーンを紫外線照射(254nm)下で、又はリンモリブデン酸試薬(Aldrich)を吹き付け、続いて80℃で加熱することによって視覚的に検出した。全てのフラッシュカラムクロマトグラフィーを、MerckのKieselgel 60、No.9385、230メッシュ〜400メッシュASTMシリカゲルを固定相として用いて行った。プロトン(1H)核磁気共鳴スペクトルをVarian Mercury−300又はVarian Mercury−400分光計で測定した。化学シフトを、溶媒ピークの共鳴に対するデルタ(δ)スケールでのパーツパーミリオン(ppm)で記録した。カップリングを表すために以下の略語を使用した:s=シングレット;d=ダブレット;t=トリプレット;q=カルテット;quin=クインテット;br=ブロード;及びm=マルチプレット。LCMSデータは、AgilentのMSD−1100 ESI−MS/MS、Agilentの1200シリーズLC/MSD VL及びWatersのAcquity UPLC−ESI−MS/MSシステムで測定した。
【実施例】
【0046】
実施例1:化合物1〜13の合成
化合物1〜13は、下記スキーム1に示す合成経路に従って調製した。列挙した試薬において、TEAはトリエチルアミンであり、KOAcは酢酸カリウムであり、Pd(PPh34はテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)であり、DMAcはN,N−ジメチルアセトアミドであり、CsFはフッ化セシウムであり、HClは塩酸であり、NaHCO3は重炭酸ナトリウムであり、NaHは水素化ナトリウムであり、NMPは1−メチル−2−ピロリジノンであり、KOHは水酸化カリウムであり、DMSOはジメチルスルホキシドである。
【化10】
スキーム1. 試薬及び条件:(a)TEA、CH2Cl2、0℃〜室温;(b)KOAc、Pd(PPh34、DMAc、150℃(Py=ピリジン−2−イルの場合に、KOAcはCsFに置き換えられる);(c)12N HCl、H2O、還流;(d)NaHCO3、H2O、室温;(e)NaH、NMP、0℃;(f)DMSO、RH、100℃、又はRH=4−(2−ヒドロキシエチル)−モルホリンの場合にジグリム、KOH、160℃;及び(g)6N HCl、0℃。
【0047】
工程I. 2,2−ジメチル−N−チアゾール−2−イル−プロピオンアミドBの合成
無水CH2Cl2(250mL)中の2−アミノチアゾールA(300mmol)及びトリエチルアミン(330mmol)の混合物に、0℃でトリメチルアセチルクロリド(310mmol)を添加し、混合物を室温、アルゴン雰囲気下で1時間撹拌した。混合物を6N HCl(60mL)で洗浄し、有機層を分離し、硫酸マグネシウム(MgSO4)で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(20%EtOAc/ヘキサン)によって精製して、表題の生成物Bをオフホワイト色の固体として得た(72%)。1H NMR(300MHz,DMSO−d6):δ11.75(s,1H)、7.46(d,J=6.0Hz,1H)、7.17(d,J=6.0Hz,1H)、1.22(s,9H);MS(ES+)m/z C8122OSについての算出値:184.07;実測値:185.1(M+H+)。
【0048】
工程II. 化合物C(Py=ピリジン−3−イル、ピリジン−4−イル及びピリミジン−5−イル)の合成
N,N−ジメチルアセトアミド(60mL)中の2,2−ジメチル−N−チアゾール−2−イル−プロピオンアミドB(30mmol)、クロロピリジン(30mmol)、酢酸カリウム(120mmol)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1.5mmol)の混合物を150℃、アルゴン雰囲気下で24時間加熱した。溶媒の大部分を蒸留(120℃/160mmHg)によって除去し、残渣を水(250mL)で洗浄した。沈殿物を濾過によって回収し、10%CH3OH/CH2Cl2(200mL)に再溶解し、セライトパッドに通して濾過した。濾液を減圧下で濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(1%MeOH/CH2Cl2)によって精製して、所望の生成物をオフホワイト色の固体として得た(40%〜85%)。
【0049】
工程II. 化合物C(Py=ピリジン−2−イル)の合成
ジメチルスルホキシド(20mL)中の2,2−ジメチル−N−チアゾール−2−イル−プロピオンアミドB(10mmol)、クロロピリジン(10mmol)、フッ化セシウム(20mmol)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.5mmol)の混合物を160℃、アルゴン雰囲気下で16時間加熱した。得られた混合物を0.5N HCl(150mL)及びCH2Cl2(150mL)で分配した。有機層を分離し、MgSO4で乾燥させ、減圧下で濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(3%アセトン/CH2Cl2)によって精製して、所望の生成物を淡褐色の固体として得た(20%)。
【0050】
Cの1つのみを、そのNMRスペクトル及び質量を示すために選択した。
【化11】
2,2−ジメチル−N−(5−ピリジン−4−イル−チアゾール−2−イル)−プロピオンアミド。1H NMR(400MHz,CDCl3):δ9.28(bs,1H)、8.61(dd,J=4.8、1.6Hz,2H)、7.84(s,1H)、7.42(dd,J=4.8、1.6Hz,2H)、1.38(s,9H);MS(ES+)m/z C13153OSについての算出値:261.09;実測値:262.1(M+H+)。
【0051】
工程III. 化合物Dの合成
水(5mL)中のC(5mmol)及び12N HCl(5mL)の混合物を2時間加熱還流した。溶媒の大部分を減圧下で除去し、残渣をCH3OH(15mL)で希釈した。溶媒の大部分を蒸留によって除去し、残渣を真空で乾燥させ、Dの塩酸塩を淡褐色の固体として得た。
【0052】
水(30mL)中の上記の固体の撹拌懸濁液を、室温で重炭酸ナトリウムによりpH=7に調整し、混合物を50℃で2時間撹拌した。沈殿物を濾過によって回収し、真空で乾燥させ、所望の生成物Dを淡褐色の固体として得た(85%〜90%)。
【0053】
Dの1つのみを、そのNMRスペクトル及び質量を示すために選択した。
【化12】
5−ピリジン−4−イル−チアゾール−2−イルアミン。1H NMR(300MHz,DMSO−d6):δ8.41(dd,J=4.8、1.5Hz,2H)、7.73(s,1H)、7.48(s,2H)、7.35(dd,J=4.8、1.5Hz,2H);MS(ES+)m/z C873Sについての算出値:177.04;実測値:178.1(M+H+)。
【0054】
工程IV. 化合物Eの合成
1−メチル−2−ピロリジノン(20mL)中のD又は市販の4−ピリジン−3−イル−チアゾール−2−イルアミン(4mmol)及び4,6−ジクロロ−2−メチルピリミジン(8mmol)の混合物に、0℃で水素化ナトリウム(油中60%、10mmol)を添加し、混合物を0℃、アルゴン雰囲気下で1時間撹拌した。反応を水(100mL)により0℃でクエンチし、6N HClでpH=2に調整した。スラリーを重炭酸ナトリウムでpH=7に調整し、沈殿物を濾過によって回収し、水(50mL)で洗浄し、真空で乾燥させた。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(20%EtOAc/CH2Cl2、次いで5%→10%のMeOH/CH2Cl2の勾配)によって精製して、所望の生成物Eを褐色の固体として得た(45%〜60%)。
【0055】
Eの1つのみを、そのNMRスペクトル及び質量を示すために選択した。
【化13】
(6−クロロ−2−メチル−ピリミジン−4−イル)−(5−ピリジン−4−イル−チアゾール−2−イル)−アミン。1H NMR(300MHz,DMSO−d6):δ12.15(s,1H)、8.53(dd,J=4.5、1.5Hz,2H)、8.18(s,1H)、7.59(dd,J=4.5、1.5Hz,2H)、6.90(s,1H)、2.59(s,3H);MS(ES+)m/z C1310ClN5Sについての算出値:303.03;実測値:304.1(M+H+)。
【0056】
工程V. 化合物1〜4及び7〜13の合成
ジメチルスルホキシド(2mL)中の化合物E(2mmol)及び1−エチルピペラジン(8mmol)の混合物を100℃で1時間加熱した。室温まで冷却した後、混合物を水(50mL)で希釈した。沈殿物を濾過によって回収し、水(10mL)で洗浄し、真空で乾燥させた。残渣を酸化アルミニウムクロマトグラフィー(0.5%→1.5%のMeOH/CH2Cl2の勾配)によって精製して、化合物1〜4及び7〜13の各々の遊離塩基をオフホワイト色の固体として得た。
【0057】
撹拌した6N HCl(10mL)に0℃で上記の固体を添加し、溶液を0.45μm PVDF膜に通して濾過した。撹拌した濾液にアセトン(40mL)を1時間にわたって滴加し、0℃で更に1時間撹拌した。沈殿物を濾過によって回収し、アセトン(15mL)で洗浄し、真空で乾燥させ、化合物1〜4及び7〜13の各々のHCl塩を黄色の固体として得た(90%〜95%)。
[6−(4−エチル−ピペラジン−1−イル)−2−メチル−ピリミジン−4−イル]−(5−ピリジン−4−イル−チアゾール−2−イル)−アミン塩酸塩(化合物1)。1H NMR(400MHz,DMSO−d6):δ11.55(bs,1H)、8.72(d,J=5.6Hz,2H)、8.61(s,1H)、8.14(d,J=5.2Hz,2H)、6.27(s,1H)、4.35(d,J=13.2Hz,2H)、3.55(d,J=12.0Hz,2H)、3.45(t,J=13.0Hz,2H)、3.13(t,J=5.8Hz,2H)、3.02(q,J=10.0Hz,2H)、2.50(s,3H)、1.28(t,J=6.8Hz,3H);MS(ES+)m/z C19237Sについての算出値:381.17;実測値:382.2(M+H+)。
{6−[4−(2−フルオロ−エチル)−ピペラジン−1−イル]−2−メチル−ピリミジン−4−イル}−(5−ピリジン−4−イル−チアゾール−2−イル)−アミン塩酸塩(化合物2)。1H NMR(300MHz,DMSO−d6):δ11.89(bs,1H)、8.73(d,J=6.3Hz,2H)、8.62(s,1H)、8.15(d,J=5.7Hz,2H)、6.26(s,1H)、4.95(d,J=47.4Hz,2H)、4.38(s,2H、水のピークと重複)、3.70〜3.35(m、6H)、3.18(bs,2H)、2.50(s,3H);MS(ES+)m/z C1922FN7Sについての算出値:399.16;実測値:400.1(M+H+)。
2−{4−[2−メチル−6−(5−ピリジン−4−イル−チアゾール−2−イルアミノ)−ピリミジン−4−イル]−ピペラジン−1−イル}−エタノール塩酸塩(化合物3)。1H NMR(400MHz,DMSO−d6):δ11.03(s,1H)、8.73(d,J=7.2Hz,2H)、8.63(s,1H)、8.15(d,J=7.2Hz,2H)、6.26(s,1H)、4.34(d,J=12.4Hz,2H)、3.82(t,J=5.2Hz,2H)、3.62(d,J=12.0Hz,2H)、3.43(t,J=12.4Hz,2H)、3.30〜3.09(m、4H)、2.49(s,3H);MS(ES+)m/z C19237OSについての算出値:397.17;実測値:398.1(M+H+)。
[6−(4−ジメチルアミノ−ピペリジン−1−イル)−2−メチル−ピリミジン−4−イル]−(5−ピリジン−4−イル−チアゾール−2−イル)−アミン塩酸塩(化合物4)。1H NMR(300MHz,DMSO−d6):δ11.07(s,1H)、8.73(d,J=6.9Hz,2H)、8.62(s,1H)、8.15(d,J=6.9Hz,2H)、6.25(s,1H)、4.43(d,J=12.9Hz,2H)、3.44(quin、J=5.2Hz,1H)、2.94(t,J=12.5Hz,2H)、2.69(d,J=4.5Hz,6H)、2.49(s,3H)、2.15(d,J=10.5Hz,2H)、1.60(q,J=11.0Hz,2H);MS(ES+)m/z C20257Sについての算出値:395.19;実測値:396.1(M+H+)。
[6−(4−エチル−ピペラジン−1−イル)−2−メチル−ピリミジン−4−イル]−(5−ピリジン−3−イル−チアゾール−2−イル)−アミン塩酸塩(化合物7)。1H NMR(400MHz,DMSO−d6):δ11.23(bs,1H)、9.15(s,1H)、8.68(d,J=5.2Hz,1H)、8.60(d,J=8.0Hz,1H)、8.19(s,1H)、7.93(t,J=6.2Hz,1H)、6.21(s,1H)、4.35(d,J=14.4Hz,2H)、3.55(d,J=11.6Hz,2H)、3.40(t,J=13.2Hz,2H)、3.13(t,J=5.8Hz,2H)、3.01(q,J=6.9Hz,2H)、2.50(s,3H)、1.28(t,J=6.6Hz,3H);MS(ES+)m/z C19237Sについての算出値:381.17;実測値:382.2(M+H+)。
{6−[4−(2−フルオロ−エチル)−ピペラジン−1−イル]−2−メチル−ピリミジン−4−イル}−(5−ピリジン−3−イル−チアゾール−2−イル)−アミン塩酸塩(化合物8)。1H NMR(400MHz,DMSO−d6):δ11.80(bs,1H)、9.16(s,1H)、8.68(d,J=5.6Hz,1H)、8.62(d,J=8.0Hz,1H)、8.20(s,1H)、7.95(t,J=6.8Hz,1H)、6.22(s,1H)、4.98(d,J=46.8Hz,2H)、4.34(bs,2H)、3.70〜3.35(m、6H)、3.16(bs,2H)、2.49(s,3H);MS(ES+)m/z C1922FN7Sについての算出値:399.16;実測値:400.1(M+H+)。
2−{4−[2−メチル−6−(5−ピリジン−3−イル−チアゾール−2−イルアミノ)−ピリミジン−4−イル]−ピペラジン−1−イル}−エタノール塩酸塩(化合物9)。1H NMR(400MHz,DMSO−d6):δ11.02(bs,1H)、9.18(s,1H)、8.69(s,1H)、8.64(d,J=7.6Hz,1H)、8.22(s,1H)、7.96(d,J=5.2Hz,1H)、6.25(s,1H)、4.33(d,J=11.2Hz,2H)、3.80(s,1H)、3.60(d,J=11.6Hz,2H)、3.19(s,2H)、3.13(s,2H)、2.48(s,3H);MS(ES+)m/z C19237OSについての算出値:397.17;実測値:398.1(M+H+)。
[6−(4−ジメチルアミノ−ピペリジン−1−イル)−2−メチル−ピリミジン−4−イル]−(5−ピリジン−3−イル−チアゾール−2−イル)−アミン塩酸塩(化合物10)。1H NMR(400MHz,DMSO−d6):δ11.27(bs,1H)、9.18(s,1H)、8.69(d,J=5.2Hz,1H)、8.64(d,J=8.0Hz,1H)、8.23(s,1H)、7.97(t,J=6.8Hz,1H)、6.36(bs,1H)、4.42(d,J=8.8Hz,2H)、3.43(bs,1H)、2.99(t,J=12.4Hz,2H)、2.68(s,3H)、2.67(s,3H)、2.55(s,3H)、2.17(d,J=10.8Hz,2H)、1.64(q,J=9.2Hz,2H);MS(ES+)m/z C20257Sについての算出値:395.19;実測値:396.2(M+H+)。
[6−(4−エチル−ピペラジン−1−イル)−2−メチル−ピリミジン−4−イル]−(5−ピリジン−2−イル−チアゾール−2−イル)−アミン塩酸塩(化合物11)。1H NMR(300MHz,DMSO−d6):δ11.34(s,1H)、8.54(d,J=4.8Hz,1H)、8.32(s,1H)、8.01〜7.96(m、2H)、7.40〜7.34(m、1H)、6.31(s,1H)、4.37(d,J=13.2Hz,2H)、3.62〜3.38(m、4H)、3.20〜2.90(m、4H)、2.47(s,3H)、1.26(t,J=7.4Hz,3H);MS(ES+)m/z C19237Sについての算出値:381.17;実測値:382.2(M+H+)。
[6−(4−エチル−ピペラジン−1−イル)−2−メチル−ピリミジン−4−イル]−(5−ピリミジン−5−イル−チアゾール−2−イル)−アミン塩酸塩(化合物12)。1H NMR(400MHz,DMSO−d6):δ11.35(bs,1H)、9.20〜9.03(m、3H)、8.09(s,1H)、6.28(s,1H)、4.40(s,2H)、3.56(d,J=12.4Hz,2H)、3.44(d,J=7.4Hz,2H)、3.13(bs,2H)、3.02(d,J=8.0Hz,2H)、1.28(bs,3H);MS(ES+)m/z C18228Sについての算出値:382.17;実測値:383.3(M+H+)。
[6−(4−エチル−ピペラジン−1−イル)−2−メチル−ピリミジン−4−イル]−(4−ピリジン−3−イル−チアゾール−2−イル)−アミン塩酸塩(化合物13)。1H NMR(400MHz,DMSO−d6):δ11.80(bs,1H)、11.54(bs,1H)、9.28(s,1H)、8.94(d,J=8.4Hz,1H)、8.84(d,J=5.2Hz,1H)、8.15〜8.07(m、2H)、6.31(bs,2H)、4.35(d,J=14.0Hz,2H)、3.55(d,J=12.0Hz,2H)、3.45(t,J=13.0Hz,2H)、3.15〜3.07(m、2H)、3.00(q,J=10.0Hz,2H)、2.49(s,3H)、1.27(t,J=7.4Hz,3H);MS(ES+)m/z C19237Sについての算出値:381.17;実測値:382.1(M+H+)。
【0058】
工程V. 化合物5及び6の合成
ジグリム(1mL)中の化合物E(1mmol)及び4−(2−ヒドロキシエチル)−モルホリン(4mmol)の混合物に、100℃で水酸化カリウム(10mmol)を添加し、混合物を160℃、アルゴン雰囲気下で10分間撹拌した。反応を水(20mL)により0℃でクエンチし、6N HClでpH=2に調整した。スラリーを重炭酸ナトリウムでpH=7に調整し、沈殿物を濾過によって回収し、水(10mL)で洗浄し、真空で乾燥させた。残渣を酸化アルミニウムクロマトグラフィー(0.5%→1.5%のMeOH/CH2Cl2の勾配)によって精製して、化合物6の遊離塩基をオフホワイト色の固体として得た。
【0059】
MeOH(10mL)中の上記の固体の懸濁液に、0℃で6N HCl(1mL)を撹拌しながら添加した。溶媒の大部分を減圧下で除去し、残渣をEtOH(10mL)で処理した。沈殿物を濾過によって回収し、アセトン(10mL)で洗浄し、真空で乾燥させ、化合物5及び6の各々のHCl塩を黄色の固体として得た(45%〜50%)。
[2−メチル−6−(2−モルホリン−4−イル−エトキシ)−ピリミジン−4−イル]−(5−ピリジン−4−イル−チアゾール−2−イル)−アミン塩酸塩(化合物5)。1H NMR(400MHz,DMSO−d6):δ11.61(s,1H)、8.74(d,J=5.2Hz,2H)、8.64(s,1H)、8.17(d,J=5.2Hz,2H)、6.37(s,1H)、4.72(s,2H)、4.00〜3.80(m、4H)、3.64〜3.42(m、4H)、3.16(bs,2H)、2.59(s,3H);MS(ES+)m/z C192262Sについての算出値:398.15;実測値:399.2(M+H+)。
[2−メチル−6−(2−モルホリン−4−イル−エトキシ)−ピリミジン−4−イル]−(5−ピリジン−3−イル−チアゾール−2−イル)−アミン塩酸塩(化合物6)。1H NMR(400MHz,DMSO−d6):δ11.51(bs,1H)、9.20(s,1H)、8.71(d,J=5.6Hz,1H)、8.66(d,J=8.4Hz,1H)、8.24(s,1H)、7.98(dd,J=8.0、5.6Hz,1H)、6.35(s,1H)、4.72(t,J=4.8Hz,2H)、3.96(d,J=10.8Hz,2H)、3.85(t,J=12.0Hz,2H)、3.55(bs,2H)、3.47(d,J=12.4Hz,2H)、3.19(bs,2H)、2.59(s,3H);MS(ES+)m/z C192262Sについての算出値:398.15;実測値:399.1(M+H+)。
【0060】
実施例2:FLT3活性の阻害
研究を以下のように行い、実施例1に従って調製した或る特定の化合物をFLT3活性の阻害において試験した。
【0061】
FLT3キナーゼ触媒ドメイン(残基Y567〜S993)を含有するGST−FLT3−KDWTを、pBac−PAK8−GST−FLT3−KDプラスミドを含有するバキュロウイルスをトランスフェクトしたSf9昆虫細胞において発現させた。FLT3WTキナーゼ−Gloアッセイを96ウェルプレートにおいて30℃で4時間行い、化合物を以下の構成要素:75ngのGST−FLT3−KDWTタンパク質、25mM HEPES(pH7.4)、4mM MnCl2、10mM MgCl2、2mM DTT、0.02%Triton X−100、0.1mg/mlウシ血清アルブミン、25μM Her2ペプチド基質、0.5mM Na3VO4及び1μM ATPを含む50μlの最終容量で試験した。インキュベーション後に、50μlのKinase−Glo Plus試薬(Promega、米国ウィスコンシン州マディソン)を各ウェルに添加し、混合物を25℃で20分間インキュベートした。各反応混合物の70μLアリコートを黒色マイクロタイタープレートに移し、発光をWallac Vector 1420マルチラベルカウンター(PerkinElmer、米国コネチカット州シェルトン)で測定した。
【0062】
複数の化合物を試験した。予期せぬことに、化合物1〜11は、100nM未満のIC50(応答が半減する阻害剤の濃度)値を示した。
【0063】
実施例3:VEGFR2活性の阻害
研究を以下のように行い、実施例1に従って調製した或る特定の化合物をVEGFR2活性の阻害において試験した。VEGFR2がVEGFRの3つの主要サブタイプの1つであることに留意されたい。
【0064】
キナーゼドメインを含有する組み換えGST−VEGFR2(残基V789〜V1356)をSf9昆虫細胞において発現させた。キナーゼアッセイを、96ウェルプレートにおいて以下の構成要素:25mM HEPES(pH7.4)、10mM MgCl2、4mM MnCl2、0.5mM Na3VO4、2mM DTT、0.02%Triton X100、0.01%BSA、1μM ATP、2μMポリGlu4:Tyrペプチド、50ng〜100ngの組み換えVEGFR2を含む50μlの反応物の最終容量で試験化合物を用いて30℃で120分間行った。インキュベーション後に、50μlのKinase−Glo Plus試薬(Promega、米国ウィスコンシン州マディソン)を各ウェルに添加し、混合物を25℃で20分間インキュベートした。各反応混合物の70μLアリコートを黒色マイクロタイタープレートに移し、発光をWallac Vector 1420マルチラベルカウンター(PerkinElmer、米国コネチカット州シェルトン)で測定した。
【0065】
複数の化合物をVEGFR2アッセイにおいて試験した。化合物1、9及び10は予期せぬことに、30nM未満のIC50値を示した。
【0066】
実施例4:c−Kit活性の阻害
研究を以下のように行い、実施例1に従って調製した或る特定の化合物をc−Kit活性の阻害において試験した。
【0067】
Sf9バキュロウイルス−昆虫細胞発現系において発現させたN末端Hisタグ付きヒトc−Kit(残基T544〜V976)組換えタンパク質を、c−Kit ADP Kinase−Gloアッセイのために精製した。c−Kit−ADP Kinase−Gloアッセイを40mM Tris(pH7.4)、20mM MgCl2、2mM MnCl2、2mM DTT、0.01%BSA、20μM ATP、20μMポリ(Glu,Tyr)4:1ペプチド、0.1mM Na3VO4、250ngの組み換えc−Kitタンパク質及び指定濃度の試験化合物を含む10μlの最終容量で96ウェルプレートにおいて30℃で150分間行った。25℃で5μlのADP−Glo(商標)試薬(Promega、米国ウィスコンシン州マディソン)を添加し、40分間インキュベーションすることによって反応を停止させ、続いて10μlのキナーゼ検出試薬を添加し、更に30分間インキュベートした。最後に、各反応混合物の30μLアリコートを黒色マイクロタイタープレートに移し、発光をWallac Vector 1420マルチラベルカウンター(PerkinElmer、米国コネチカット州シェルトン)で測定した。
【0068】
複数の化合物を試験した。予期せぬことに、化合物1〜7及び11〜12は、100nM未満のIC50値を示した。
【0069】
実施例5:in vitro抗癌活性
研究を以下のように行い、実施例1に従って調製した或る特定の化合物のin vitro抗癌活性を、細胞株及びMTS細胞生存性アッセイ(MTSは、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウムを表す)を用いて評価した。
【0070】
白血病細胞株MOLM−13、MV4:11及びKasumin−1は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC、米国バージニア州マナサス)から購入した。ヒト消化管間質腫瘍GIST−T1細胞株は、コスモ・バイオ株式会社(日本、東京都)から購入した。全ての白血病細胞株を10%ウシ胎仔血清(FBS)、10U/mlペニシリン及び10g/mlストレプトマイシンを添加したRPMI 1640培地中、37℃及び5%CO2で維持した。細胞株GIST−T1は、10%FBS、0.01%非必須アミノ酸、10U/mlペニシリン及び10g/mlストレプトマイシンを添加したDMEM培地中で培養した。
【0071】
GIST882、GIST48及びGIST430細胞は全て、37℃及び5%CO2で維持したインキュベーター内で培養した。GIST882は、20%ウシ胎仔血清(FBS)を添加したRPMI−1640中で培養した。GIST48は、20%FBS、0.5%Mitoシーラムエクステンダー(BD Bioscience、355006)及び1%ウシ脳下垂体抽出物(BD Bioscience、354123)を添加したF10を用いて培養した。GIST430は、20%FBSを添加したIMDM中で培養した。GIST882、GIST430及びGIST48細胞は、Jonathan A. Fletcher博士(ハーバードメディカルスクール(Harvard Medical School)、米国)によって提供された。
【0072】
MOLM−13、MV4:11及びKasumin−1のMTSアッセイ
細胞を96ウェル培養プレートに1×104細胞/100μl/ウェルの密度にて三連で播種し、1nM〜10μMの範囲の指定濃度の試験化合物で72時間処理した。比色CellTiter 96(商標) Aqueous One Solution Cell Proliferationアッセイ(MTSアッセイ;Promega、米国ウィスコンシン州マディソン)を用いて細胞毒性を決定した。492nmでの光学密度を、マイクロプレート光度計(Victor2;Perkin-Elmer、米国マサチューセッツ州ウォルサム)を用いて測定した。細胞を試験化合物で72時間処理した場合のIC50値をMTSアッセイによって決定し、GraphPad Prism 6で算出した。各実験を三連とした。
【0073】
GIST−T1のMTSアッセイ
GIST−T1細胞を96ウェル培養プレートに8000細胞/100μl/ウェルの密度にて三連で播種し、1nM〜10μMの範囲の指定濃度の試験化合物で72時間処理した。比色CellTiter 96(商標) Aqueous One Solution Cell Proliferationアッセイ(MTSアッセイ;Promega、米国ウィスコンシン州マディソン)を用いて細胞毒性を決定した。492nmでの光学密度を、マイクロプレート光度計(Victor2;Perkin-Elmer、米国マサチューセッツ州ウォルサム)を用いて測定した。細胞を試験化合物で72時間処理した場合のIC50値をMTSアッセイによって決定し、GraphPad Prism 6で算出した。各実験を三連とした。
【0074】
GIST882、GIST48及びGIST430のMTSアッセイ
GIST細胞(4×104個)を異なる用量の化合物で処理した。処理したGIST882細胞は144時間インキュベートし、GIST48及びGIST430細胞は5%CO2中、37℃で120時間インキュベートした。細胞をメチレンブルー(Clontech、米国カリフォルニア州)と共に1時間インキュベートすることによって細胞増殖を決定した。吸光度は、SpectraMax M5マイクロプレートリーダー(Molecular Devices、米国)を用いて450nmで測定した。
【0075】
或る特定の式(I)の化合物のGI50(細胞増殖の最大阻害の50%についての濃度)値を下記表に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
その他の実施形態
本明細書に開示される全ての特徴は、あらゆる組み合わせで組み合わせることができる。本明細書に開示される各々の特徴は、同じ目的、同等の目的又は同様の目的にかなう代替となる特徴によって置き換えられてもよい。このように、特に明示的に述べられない限り、開示される各々の特徴は、包括的な一連の同等の特徴又は同様の特徴のうちの単なる一例である。
【0078】
上記明細書から、当業者であれば、本発明の本質的な特性を容易に特定することができ、その趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な使用法及び条件に適合するために本発明の様々な変更及び修正を行うことができる。このように、その他の実施形態も添付の特許請求の範囲内である。