特許第6979613号(P6979613)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979613
(24)【登録日】2021年11月18日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】ハンマードリル
(51)【国際特許分類】
   B25D 11/12 20060101AFI20211202BHJP
   B25D 16/00 20060101ALI20211202BHJP
   B25D 17/08 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
   B25D11/12
   B25D16/00
   B25D17/08
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-72690(P2017-72690)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-171694(P2018-171694A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2020年1月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関野 文昭
【審査官】 山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−156756(JP,A)
【文献】 実開平04−018788(JP,U)
【文献】 特開平11−320451(JP,A)
【文献】 特開2005−193353(JP,A)
【文献】 特開平10−170381(JP,A)
【文献】 特開2007−211864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25D 1/00 − 17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側に先端工具が装着可能なスピンドルと、
前記スピンドルが挿入された筒状のシリンダ、及び前記スピンドルと前記シリンダとを結合する結合部材を有し、前記スピンドルを回転させるように構成された回転機構と、
前記スピンドルの後端側から前記スピンドルを打撃するように構成された打撃機構と、
前記シリンダの内周面から突出するように設けられた規制部と、
前記シリンダ内において前記規制部よりも前記シリンダの一端部側に配置され、前記規制部と前記スピンドルの前記後端との間に位置する緩衝部材と、を備え、
前記シリンダの前記内周面において周方向に沿って形成された溝が設けられており、
前記溝の底部には、貫通部が設けられており、
前記規制部は、弾性変形可能に構成され、前記溝に嵌め込まれたC型部材であり、
前記スピンドルは、前記緩衝部材よりも前記シリンダの前記一端部側に位置しており、前記結合部材による前記シリンダとの結合が解除された状態では、前記シリンダの前記一端部側から抜き差し可能である
ことを特徴とするハンマードリル。
【請求項2】
前記C型部材は、周方向の両端部に一対の貫通孔が形成されたC型止め輪である
ことを特徴とする請求項1に記載のハンマードリル。
【請求項3】
前記シリンダの前記一端部は、前記シリンダの一端面に近付くにつれて開口が大きくなるように形成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のハンマードリル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にハンマードリルに関し、より詳細には装着された先端工具を回転させつつ打撃するハンマードリルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、先端工具を回転させつつ打撃するハンマードリルが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のハンマードリルは、固定ホルダ(シリンダ)と、可動ホルダ(スピンドル)と、緩衝部材と、ストップリング(規制部)と、を備えている。
【0004】
固定ホルダは、円筒状に形成されている。固定ホルダは、内周面における先端側の部分に内向きフランジを有している。固定ホルダは、内周面におけるほぼ中央の部分にリング溝を有している。
【0005】
可動ホルダは、ビット挿入孔を有する筒状に形成されている。可動ホルダは、外周面における後端側の部分に内向きフランジと向かい合う外向きフランジを有している。
【0006】
緩衝部材は、固定ホルダの内向きフランジと可動ホルダの外向きフランジとの間に配置されている。
【0007】
ストップリングは、固定ホルダのリング溝に嵌合されている。ストップリングは、リング溝に嵌合された状態において、可動ホルダの後方側への摺動限界位置を規制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−271879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1のハンマードリルでは、固定ホルダ、可動ホルダ、及び緩衝部材を組み立てる際に、固定ホルダの後方側から緩衝部材、可動ホルダを順に挿入し、ストップリングをリング溝に嵌め込むことで可動ホルダ、緩衝部材等の位置決めをしている。ハンマードリルのメンテナンスにおいて、緩衝部材を交換するためには、固定ホルダの内側のストップリングを取り外す必要があり、緩衝部材の交換に手間がかかるおそれがあった。
【0010】
本発明は、上記事由に鑑みてなされており、その目的は、メンテナンス性の向上を図ることができるハンマードリルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様に係るハンマードリルは、スピンドルと、回転機構と、打撃機構と、規制部と、緩衝部材と、を備える。前記スピンドルは、先端側に先端工具が装着可能である。前記回転機構は、前記スピンドルが挿入された筒状のシリンダ、及び前記スピンドルと前記シリンダとを結合する結合部材を有する。前記回転機構は、前記スピンドルを回転させるように構成されている。前記打撃機構は、前記スピンドルの後端側から前記スピンドルを打撃するように構成されている。前記規制部は、前記シリンダの内周面から突出するように設けられている。前記緩衝部材は、前記シリンダ内において前記規制部よりも前記シリンダの一端部側に配置され、前記規制部と前記スピンドルの前記後端との間に位置する。前記シリンダの前記内周面において周方向に沿って形成された溝が設けられている。前記溝の底部には、貫通部が設けられている。前記規制部は、弾性変形可能に構成され、前記溝に嵌め込まれたC型部材である。前記スピンドルは、前記緩衝部材よりも前記シリンダの前記一端部側に位置しており、前記結合部材による前記シリンダとの結合が解除された状態では、前記シリンダの前記一端部側から抜き差し可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のハンマードリルでは、メンテナンス性の向上を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るハンマードリルにおけるボディ及びギアケースの一部を取り外した状態の要部の正面図である。
図2図2は、同上のハンマードリルにおける要部の断面図である。
図3図3は、同上のハンマードリルにおける要部の分解斜視図である。
図4図4は、本発明の一実施形態の変形例に係るハンマードリルのC型止め輪の正面図である。
図5図5は、本発明の一実施形態の変形例に係るハンマードリルにおける要部の断面図である。
図6図6は、本発明の一実施形態の変形例に係るハンマードリルの規制部及びシリンダの断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の様々な実施形態の一つに過ぎない。下記の実施形態は、本発明の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0015】
<概要>
図1に、ハンマードリル1におけるボディ101及びギアケース102の一部を取り外した状態における要部の正面図を示す。図2に、ハンマードリル1における要部の断面図を示す。図2では、図1に示したボディ101、チャック部材70、先端工具8等の図示を省略している。
【0016】
本実施形態のハンマードリル1は、コンクリート等の作業対象への穴あけ作業が可能な電動工具である。ハンマードリル1は、スピンドル7を回転させるように構成された回転機構2と、スピンドル7を打撃するように構成された打撃機構4と、を備えている。ハンマードリル1は、回転機構2と打撃機構4とを動作させ、スピンドル7の先端部に取り付けられた先端工具8(例えば、ドリルビット等)を回転させつつ打撃することで、作業対象に穴をあけることができる。
【0017】
ハンマードリル1は、動作モードとしてハンマーモードと、ドリルドライバーモードとを有している。ハンマードリル1の動作モードの設定は、作業者が操作可能な切替レバーで行われる。ハンマードリル1は、動作モードがハンマーモードである場合、回転機構2と打撃機構4との両方を動作させることにより、先端工具8を回転させつつ打撃する。ハンマーもーどは、例えば作業対象への穴あけ作業を行う際に設定される。ハンマードリル1は、動作モードがドリルドライバーモードである場合、回転機構2のみを動作させることにより、先端工具8を回転させる。ドリルドリアバーモードは、例えばねじ締め作業を行う際に設定される。
【0018】
本実施形態のハンマードリル1は、電池パックを装着可能な可搬型の充電式電動工具である。ハンマードリル1は、電池パックから供給される電力によって回転するモータ103を備えている。モータ103は、回転機構2及び打撃機構4を駆動させる駆動部であり、制御部によって動作が制御される。制御部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)及びメモリを有するマイクロコンピュータ(マイコン)で構成されており、CPUがメモリに格納されているプログラムを実行することにより、モータ103の動作を制御する。制御部は、作業者が操作可能なトリガスイッチの引き込み量に応じた速度で、モータ103を回転させるように構成されている。電池パックは、例えばリチウムイオン電池等の二次電池を備えており、充電器等を用いて充電可能である。
【0019】
<詳細>
以下に、ハンマードリル1の詳細な構成について説明する。以下の説明では、ハンマードリル1のボディ101に対して先端工具8側を前方、先端工具8と反対側を後方として説明する。
【0020】
ハンマードリル1のボディ101は、例えば樹脂等で構成されており、内部にモータ103、制御部、ギアケース102等を収納している。ギアケース102は、例えば金属等で構成されており、回転機構2及び打撃機構4を収納している。
【0021】
回転機構2は、シリンダ3と、結合部材35と、第1動力伝達部21と、を備えている。
【0022】
シリンダ3は、前後方向に貫通した円筒状に形成されている。シリンダ3には、スピンドル7の後端部が挿入されている。シリンダ3とスピンドル7とは、結合部材35によって結合されている。シリンダ3、結合部材35、スピンドル7の詳細な構成については後述する。
【0023】
第1動力伝達部21は、モータ103の回転をシリンダ3に伝達するように構成されている。第1動力伝達部21は、第1スパーギア211、ベベルピニオンシャフト212、ベベルギア213、クラッチリング214、及びクラッチばね215を有している(図1参照)。
【0024】
第1スパーギア211は、モータ103のシャフト131に設けられたピニオン132と噛み合うように構成されている。第1スパーギア211は、ベベルピニオンシャフト212に結合されている。
【0025】
ベベルピニオンシャフト212は、先端のピニオン部がベベルギア213と噛み合うように構成されている。また、ベベルピニオンシャフト212には、第1スパーギア211を挟んで2つのベアリング217,218が取り付けられている。
【0026】
ベベルギア213は、円形の貫通孔が形成されており、当該貫通孔にシリンダ3が貫通するように配置されている。ベベルギア213の前方には、クラッチリング214が配置されている。
【0027】
クラッチリング214は、リング状に形成されており、貫通孔にシリンダ3が貫通するように配置されている。ベベルギア213の前端面、及びクラッチリング214の後端面には、互いに嵌合可能な凹凸部が形成されている。クラッチリング214は、ベベルギア213と嵌合した状態では、ベベルギア213の回転に応じて回転するように構成されている。
【0028】
また、クラッチリング214の内周面には、周方向に沿って複数の突部が形成されている。また、シリンダ3の外周面には、周方向に所定の間隔で複数の溝34が形成されている(図1,3参照)。複数の溝34の各々は、前後方向に沿って形成されている。クラッチリング214は、内周面に形成された複数の突部がシリンダ3の外周面に形成された複数の溝34に嵌まることにより、シリンダ3に結合されている。したがって、クラッチリング214が回転することによって、シリンダ3も回転する。
【0029】
また、クラッチリング214は、溝34に沿って前後方向に移動可能である。クラッチばね215は、シリンダ3に巻かれるように設けられたコイルばねであり、シリンダ3の外周面から全周にわたって突出するように設けられたスラスト板216と、クラッチリング214との間に配置されている。クラッチばね215は、クラッチリング214に対してベベルギア213に向かって弾性力を与えている。
【0030】
クラッチリング214は、クラッチばね215によってベベルギア213に向かって弾性力が加えられているので、ベベルギア213と嵌合する。これにより、ベベルギア213の回転に応じてクラッチリング214が回転しシリンダ3も回転する。
【0031】
このように、第1動力伝達部21は、モータ103の回転に応じてシリンダ3を回転させることにより、シリンダ3に結合されたスピンドル7を回転させるように構成されている。これにより、スピンドル7に装着された先端工具8が回転する。
【0032】
ここで、シリンダ3の回転負荷が過度に大きくなった場合、ベベルギア213によって押し出されるようにクラッチばね215がシリンダ3の溝34に沿って前方に移動し、クラッチリング214とベベルギア213との嵌合状態が解除される。これにより、シリンダ3の回転負荷が過度に大きい場合、シリンダ3の回転動作が停止され、モータ103に過負荷がかかることが抑制される。
【0033】
次に、スピンドル7を後側から打撃する打撃機構4について説明する。打撃機構4は、ピストン41と、ハンマー42と、ストライカ43と、第2動力伝達部44と、を備えている(図2参照)。
【0034】
ピストン41は、後端側に底部411を有する有底円筒状に形成されており、シリンダ3に収納されている。ピストン41は、シリンダ3の後端部302側からシリンダ3に挿入されており、シリンダ3内において、前後方向に移動可能に構成されている。
【0035】
第2動力伝達部44は、モータ103の回転によってピストン41を前後方向に往復移動させるように構成されている。第2動力伝達部44は、第2スパーギア441、切替クラッチ442、クランクシャフト443、及びコネクティングロッド444を有している(図1参照)。
【0036】
第2スパーギア441は、モータ103のシャフト131に設けられたピニオン132と噛み合うように構成されている。第2スパーギア441の貫通孔には、クランクシャフト443が貫通している。
【0037】
切替クラッチ442は、クランクシャフト443と結合している。切替クラッチ442は、第2スパーギア441に対して移動可能に構成されており、第2スパーギア441に結合した状態と、第2スパーギア441に結合していない状態とに切り替え可能である。図1では、切替クラッチ442が第2スパーギア441に結合された状態を示している。切替クラッチ442は、作業者が操作可能な切替レバーの操作に応じて移動するように構成されている。
【0038】
クランクシャフト443は、切替クラッチ442に結合されており、切替クラッチ442が第2スパーギア441と結合した状態では、第2スパーギア441の回転に応じて回転するように構成されている。また、クランクシャフト443には、第2スパーギア441及び切替クラッチ442を挟んで2つのベアリング445,446が取り付けられている。
【0039】
コネクティングロッド444は、後端部がクランクシャフト443に対して回転可能に構成されている。また、コネクティングロッド444は、前端部がピストン41の底部411に設けられたピストンピン412(図2参照)に対して回転可能に構成されている。
【0040】
ピストン41は、コネクティングロッド444を介してクランクシャフト443に連結されており、クランクシャフト443が回転することによって前後方向に往復移動する。図2では、ピストン41の移動範囲における前端にピストン41が位置している状態を示している。ピストン41の内側には、ハンマー42が配置されている。
【0041】
ハンマー42は、円柱状の大径部421と、大径部421の前方に形成され大径部421よりも外径が小さい円柱状の小径部422とを有する。ハンマー42は、大径部421の外径が、ピストン41の内径よりも僅かに小さい。大径部421の外周面には、周方向に沿って溝423が形成されており、この溝423にOリング424が嵌め込まれている。ハンマー42は、ピストン41内を前後方向に移動可能に構成されている。ピストン41が前後方向に往復移動することによって、ピストン41の内部においてハンマー42の後方空間の空気密度(気圧)が変化する。これにより、ハンマー42も前後方向に往復移動する。ピストン41には、ハンマー42の後方空間の空気密度(気圧)を調整するための空気穴として貫通孔413が形成されている。ハンマー42の前方には、ストライカ43が配置されている。ハンマー42は、前後方向に往復移動することによって、ストライカ43への衝突を繰り返すように構成されている。
【0042】
ストライカ43は、シリンダ3内において前後方向に移動可能であり、前方にスピンドル7が配置されている。ストライカ43は、ハンマー42が後方側から衝突することによって前方に移動し、スピンドル7を後側から打撃するように構成されている。ストライカ43の詳細な構成については後述する。
【0043】
このように、第2動力伝達部44は、モータ103の回転に応じてピストン41を往復移動させることにより、ピストン41の内部に配置されたハンマー42をストライカ43に衝突させ、ストライカ43でスピンドル7を打撃するように構成されている。これにより、ハンマードリル1は、スピンドル7に装着された先端工具8を介して、コンクリートなどの作業対象を打撃することができる。
【0044】
また、シリンダ3の内側には、ストライカ43を保持するストライカホルダ62、ストライカ43による後方側への衝撃を低減させる緩衝部材6等が設けられている。以下に、シリンダ3、ストライカ43、緩衝部材6等の構成について、図3の分解斜視図を参照して詳細に説明する。
【0045】
シリンダ3は、円筒状に形成されており、両端が開口している。シリンダ3の内周面300における先端部301(一端部)側には、溝31が形成されている。溝31は、シリンダ3の内周面300において、周方向に沿って環状に形成されている。
【0046】
溝31には、規制部5としてC型部材51が嵌め込まれている。本実施形態では、C型部材51は、略C字状に形成されたC型リングで構成されている。C型部材51は、例えば、ばね鋼等の線材で構成されている。C型部材51は、ばね性(弾性)を有しており、弾性変形が可能に構成されている。C型部材51は、弾性変形した状態でシリンダ3の先端部301側からシリンダ3内に挿入され、溝31に嵌め込まれる。これにより、C型部材51がシリンダ3に固定される。C型部材51は、溝31に嵌め込まれた状態では、シリンダ3の内周面300から突出している。つまり、C型部材51は、シリンダ3の溝31に嵌め込まれた状態では、内径がシリンダ3の内径よりも小さい。C型部材51の内径とは、C型部材51の内周面を周方向に延長した仮想円の直径である。
【0047】
また、シリンダ3における溝31の底部には、2つの貫通孔32が形成されている。2つの貫通孔32は、シリンダ3の中心軸に直交する一直線上に形成されている。シリンダ3の外側から2つの貫通孔32を介して治具等でC型部材51を弾性変形させることにより、C型部材51をシリンダ3の溝31から取り外すことができる。
【0048】
ゴムホルダ61は、有底円筒状に形成されており、後端部に底部を有する。また、ゴムホルダ61の底部には、開口形状が円形の貫通孔611が形成されている。また、ゴムホルダ61の先端部には、フランジ612が形成されている。フランジ612は、ゴムホルダ61の先端部における外周面の全周から外向きに突出するように形成されている。
【0049】
ゴムホルダ61は、その中心軸がシリンダ3の中心軸と略同軸となるようにシリンダ3の内側に配置されている。ゴムホルダ61は、フランジ612の後面が規制部5(C型部材51)に接触することにより、後方への移動が規制される。
【0050】
ゴムホルダ61の内側には、Oリング613が配置されている。Oリング613は、例えばゴム等で構成されている。Oリング613は、開口の中心がゴムホルダ61の中心軸と重なるようにゴムホルダ61の内側における底部側に配置されている。ゴムホルダ61の貫通孔611、及びOリング613には、ハンマー42の小径部422が通される。
【0051】
ゴムホルダ61の前方には緩衝部材6が配置されている。緩衝部材6は、例えばOリングである。緩衝部材6は、円環状に形成されており、例えばゴム等で構成されている。緩衝部材6は、ゴムホルダ61の先端面と接触するようにシリンダ3の内側に配置されている。
【0052】
緩衝部材6の前方には、ストライカホルダ62が配置されている。ストライカホルダ62は、スピンドル7に衝突して跳ね返ったストライカ43を受けるように構成されている。ストライカホルダ62は、前後方向に貫通した円筒状に形成された筒部621と、筒部621の先端部に形成されたフランジ622と、を有する。フランジ622は、筒部621の先端部における外周面の全周から外向きに突出するように形成されている。また、筒部621の先端部は、先端面に近付くにつれて開口が大きくなるようにテーパ状に形成されている。
【0053】
ストライカホルダ62は、筒部621の中心軸がシリンダ3の中心軸と略同軸となり、筒部621の後端部がゴムホルダ61に入るようにシリンダ3の内側に配置されている。ストライカホルダ62のフランジ622は、緩衝部材6を介してゴムホルダ61のフランジ612と前後方向に対向している。つまり、緩衝部材6は、ストライカホルダ62とゴムホルダ61とで挟まれており、ストライカホルダ62がストライカ43から受けた衝撃を低減させる。
【0054】
ストライカホルダ62の前方には、スピンドル7が配置されている。スピンドル7は、円筒状に形成されており、先端711側に先端工具8(図1参照)を装着可能に構成されている。スピンドル7は、前側筒部71と後側筒部72とを有する。
【0055】
前側筒部71は、後側筒部72の前方に形成されており、後側筒部72よりも内径及び外径が小さく形成されている。スピンドル7は、前側筒部71に挿入された先端工具8(例えばドリルビット等)を保持するように構成されている。具体的には、前側筒部71には、チャック部材70(図1参照)が設けられている。チャック部材70は、スピンドル7が前側筒部71に挿入された先端工具8を保持している状態のロック及び解除が可能に構成されている。
【0056】
後側筒部72は、円筒状に形成されており、スピンドル7の内側においてストライカホルダ62の前方に位置している。後側筒部72の外径は、シリンダ3の内径よりも僅かに小さい。したがって、スピンドル7は、シリンダ3の先端部301側からシリンダ3への抜き差しが可能である。後側筒部72の後端721は、ストライカホルダ62のフランジ622の前面と対向している。後側筒部72及びストライカホルダ62の内側の空間において、ストライカ43は、前後方向に移動可能である。
【0057】
ストライカ43は、円柱状の小径部431と、小径部431の前方に形成され小径部431よりも外径が大きい円柱状の大径部432とを有する。小径部431は、ストライカホルダ62の内側を通るように構成されている。大径部432は、スピンドル7の後側筒部72の内側を通るように構成されている。ストライカ43は、大径部432の後端部がストライカホルダ62に接触することにより、後方への移動が規制される。ストライカ43は、小径部431の後端面にハンマー42の小径部422の前端面が衝突することによって前方に移動し、大径部432の前端部がスピンドル7の前側筒部71の後端部を打撃するように構成されている。大径部432の外周面には、周方向に沿って溝433が形成されている。溝433には、Oリング434が嵌め込まれている。
【0058】
後側筒部72は、結合部材35によってシリンダ3に結合されている。結合部材35は、円柱状のピンで構成されており、シリンダ3の先端部301に形成された貫通孔33、及びスピンドル7の後側筒部72に形成された凹部73に嵌まり込むように構成されている。結合部材35は、軸方向の寸法が、貫通孔33の軸方向の寸法と凹部73の深さ寸法とを足した寸法よりも短い。つまり、結合部材35は、貫通孔33及び凹部73内に配置された状態で、シリンダ3の外周面から突出しないように構成されている。本実施形態では、シリンダ3の周方向に略等間隔で4つの貫通孔33が形成されている。また、スピンドル7の後側筒の周方向に略等間隔で4つの凹部73が形成されている。ハンマードリル1は、4つの結合部材35を備えており、4つの結合部材35の各々が、貫通孔33及び凹部73に嵌まり込むように配置されている。
【0059】
シリンダ3の先端部301における外周面側には、ベアリング36が設けられている。ベアリング36は、シリンダ3が前後方向に貫通するようにシリンダ3に嵌められており、4つの貫通孔33を覆うように配置されている。これにより、結合部材35が抜け止めされる。また、ベアリング36の外周面にはOリング37が設けられている。ベアリング36は、ギアケース102によって保持されている。
【0060】
<メンテナンス方法>
次に、ハンマードリル1のメンテナンス方法の一例について説明する。以下では、シリンダ3に収納されている緩衝部材6のメンテナンス、具体的には緩衝部材6の交換方法について説明する。
【0061】
まず、ボディ101、及びギアケース102を分解し、ギアケース102からシリンダ3を取り出す。そのご、シリンダ3に取り付けられているベアリング36を取り外し、4つの結合部材35の各々を、スピンドル7の凹部73、及びシリンダ3の貫通孔33から抜く。これにより、シリンダ3とスピンドル7との結合状態が解除される。そして、シリンダ3の先端部301側からスピンドル7、ストライカ43、ストライカホルダ62、及び緩衝部材6を順に取り外し、緩衝部材6を交換する。
【0062】
次に、交換後の緩衝部材6、ストライカホルダ62、ストライカ43、スピンドル7の順に先端部301側からシリンダ3に挿入する。その後、4つの結合部材35の各々を、スピンドル7の凹部73、及びシリンダ3の貫通孔33に挿入する。これにより、シリンダ3とスピンドル7とが結合され、スピンドル7と規制部5との間でゴムホルダ61、緩衝部材6、及びストライカホルダ62が位置決めされる。その後、ベアリング36をシリンダ3に取り付ける。シリンダ3をギアケース102に収納し、当該ギアケース102をボディ101に収納する。
【0063】
このように、本実施形態のハンマードリル1では、シリンダ3の外側のベアリング36を取り外し、結合部材35をスピンドル7の凹部73、及びシリンダ3の貫通孔33から抜くことで、スピンドル7とシリンダ3との結合状態を解除することができる。そして、スピンドル7とシリンダ3との結合状態が解除された状態では、スピンドル7、緩衝部材6をシリンダ3の先端部301側から取り外すことができる。つまり、本実施形態のハンマードリル1では、緩衝部材6を交換するために、シリンダ3の内側に設けられた規制部5(C型部材51)を外す必要がない。また、シリンダ3からピストン41、ハンマー42等を取り外すことなく、スピンドル7、緩衝部材6等の取り外し及び組み立てが可能となる。これらにより、本実施形態のハンマードリル1では、メンテナンス性の向上を図ることが可能となる。
【0064】
<変形例>
次に、本実施形態のハンマードリル1の変形例について説明する。
【0065】
上述した例では、C型部材51(規制部5)は、略C字状に形成された線材であるC型リングで構成されているが、これに限らない。変形例の規制部5A(C型部材51A)は、図4に示すように、周方向の両端部に一対の貫通孔511が形成されたC型止め輪510で構成されている。C型部材51Aは、穴用C型止め輪であり、外径が略一定となるように略C字状に形成されている。C型部材51Aの外径とは、C型部材51Aの外周面を周方向に延長した仮想円の直径である。また、C型部材51Aは、周方向の両端部に内側へ突出した突出部512が形成されており、この突出部512を含む部分に貫通孔511が形成されている。
【0066】
C型部材51Aは、貫通孔511を有するC型止め輪である。したがって、作業者は、C型部材51Aの貫通孔511にプライヤ等の工具を挿し込んで、C型部材51Aを変形させることができる。したがって、シリンダ3に対してC型部材51Aの取り付け、及び取り外しが容易となる。また、C型部材51Aは、シリンダ3の内周面300における先端部301側に形成された溝31に嵌め込まれているため、プライヤ等の工具をシリンダ3の先端部301側から入れてC型部材51Aを取り外す作業が行いやすい。
【0067】
図4に示したC型部材51Aは、周方向の両端部に内側へ突出した突出部512が形成されているが、この形状に限らず、内径(内周面を周方向に延長した仮想円の直径)が略一定となるように形成されていてもよい。これにより、C型部材51Aの内側を通るストライカ43の小径部431等の外径の拡大化を図ることが可能となる。
【0068】
また、上述した例では、シリンダ3の先端部301は、内径が一定となるように形成されているが、これに限らない。変形例のシリンダ3Aは、図5に示すように、先端部301がテーパ状に形成されている。シリンダ3Aは、先端部301における内周面300の一部にテーパ面303が形成されている。テーパ面303は、シリンダ3Aの内周面300の周方向の全周にわたって形成されており、シリンダ3の先端面304に近付くにつれて開口が大きくなるように形成されている。言い換えれば、シリンダ3Aの先端部301は、後方に向かうにつれて内径が小さくなるように形成されている。これにより、C型部材51(51A)をシリンダ3Aに挿入する際に、C型部材51(51A)がテーパ面303に沿って弾性変形するので、C型部材51(51A)をシリンダ3Aに挿入しやすくなる。
【0069】
また、上述した例では、規制部5は、シリンダ3とは別体のC型部材51で構成されているが、シリンダ3と一体に構成されていてもよい。変形例の規制部5Bは、図6に示すように、シリンダ3Bと一体に形成されたフランジ52で構成されている。フランジ52は、シリンダ3Bの内周面300における周方向の全周にわたって、内周面300から突出するように形成されている。フランジ52は、周方向に交差する断面形状が矩形状となるように形成されている。
【0070】
規制部5Bをフランジ52で構成することにより、シリンダ3BへのC型部材51の取り付け作業が不要となり、ハンマードリル1の組立工数の削減を図ることが可能となる。また、シリンダ3BからC型部材51を取り外すための貫通孔32を穴あけ加工によりシリンダ3Bに形成する必要がなく、コストの削減を図ることが可能となる。また、シリンダ3BにC型部材51を嵌め込むための溝31が不要となるので、シリンダ3B全体の肉厚を薄型化しハンマードリル1の軽量化を図ることができる。
【0071】
<まとめ>
第1態様に係るハンマードリル(1)は、スピンドル(7)と、回転機構(2)と、打撃機構(4)と、規制部(5,5A,5B)と、緩衝部材(6)と、を備える。スピンドル(7)は、先端(711)側に先端工具(8)が装着可能である。回転機構(2)は、スピンドル(7)が挿入された筒状のシリンダ(3,3A,3B)、及びスピンドル(7)とシリンダ(3,3A,3B)とを結合する結合部材(35)を有する。回転機構(2)は、スピンドル(7)を回転させるように構成されている。打撃機構(4)は、スピンドル(7)の後端(721)側からスピンドル(7)を打撃するように構成されている。規制部(5,5A,5B)は、シリンダ(3,3A,3B)の内周面(300)から突出するように設けられている。緩衝部材(6)は、シリンダ(3,3A,3B)内において規制部(5,5A,5B)よりもシリンダ(3,3A,3B)の一端部(先端部301)側に配置され、規制部(5,5A,5B)とスピンドル(7)の後端(721)との間に位置する。スピンドル(7)は、緩衝部材(6)よりもシリンダ(3,3A,3B)の一端部(301)側に位置しており、結合部材(35)によるシリンダ(3,3A,3B)との結合が解除された状態では、シリンダ(3,3A,3B)の一端部(301)側から抜き差し可能である。
【0072】
上記構成により、ハンマードリル(1)は、シリンダ(3,3A,3B)に規制部(5,5A,5B)が設けられた状態で、シリンダ(3,3A,3B)の一端部(301)側からスピンドル(7)及び緩衝部材(6)の取り外し及び組み立てを行うことができる。これにより、ハンマードリル(1)で、メンテナンス性の向上を図ることが可能となる。
【0073】
第2態様に係るハンマードリル(1)では、第1態様において、規制部(5,5A)は、シリンダ(3,3A)の内周面(300)において周方向に沿って形成された溝(31)に嵌め込まれたC型部材(51,51A)である。
【0074】
上記構成により、ハンマードリル(1)は、シリンダ(3,3A)の内周面(300)に規制部(5,5A)を容易に設けることが可能となる。
【0075】
第3態様に係るハンマードリル(1)では、第2態様において、C型部材(51A)は、C型止め輪(510)である。
【0076】
上記構成により、ハンマードリル(1)は、プライヤ等の工具を用いてシリンダ(3,3A)からC型部材(51A)を容易に取り外すことが可能となる。
【0077】
第4態様に係るハンマードリル(1)では、第2又は第3態様において、シリンダ(3A)の一端部(301)は、シリンダ(3A)の一端面(先端面304)に近付くにつれて開口が大きくなるように形成されている。
【0078】
上記構成により、ハンマードリル(1)は、シリンダ(3A)の一端部(301)が誘い込み部として機能し、C型部材(51,51A)をシリンダ(3A)に取り付けやすくなる。
【0079】
第5態様に係るハンマードリル(1)は、第1態様において、規制部(5B)は、シリンダ(3B)と一体に形成されたフランジ(52)である。
【0080】
上記構成により、ハンマードリル(1)は、C型部材(51,51A)を規制部(5,5A)としてシリンダ(3B)に取り付ける作業が不要となり、組立工数の削減を図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0081】
1 ハンマードリル
2 回転機構
3,3A,3B シリンダ
300 内周面
301 先端部(一端部)
304 先端面(一端面)
35 結合部材
31 溝
4 打撃機構
5,5A,5B 規制部
51,51A C型部材
510 C型止め輪
52 フランジ
6 緩衝部材
7 スピンドル
711 先端
721 後端
8 先端工具
図1
図2
図3
図4
図5
図6