特許第6979620号(P6979620)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6979620発電設備監視システム、発電設備監視方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979620
(24)【登録日】2021年11月18日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】発電設備監視システム、発電設備監視方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/34 20200101AFI20211202BHJP
   F03D 1/06 20060101ALI20211202BHJP
   F03D 17/00 20160101ALI20211202BHJP
【FI】
   G01R31/34 A
   F03D1/06 A
   F03D17/00
【請求項の数】7
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2018-516982(P2018-516982)
(86)(22)【出願日】2017年5月2日
(86)【国際出願番号】JP2017017222
(87)【国際公開番号】WO2017195698
(87)【国際公開日】20171116
【審査請求日】2020年4月27日
(31)【優先権主張番号】特願2016-94060(P2016-94060)
(32)【優先日】2016年5月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田淵 伸
(72)【発明者】
【氏名】金井 聡
【審査官】 田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−288352(JP,A)
【文献】 特開2015−215275(JP,A)
【文献】 特表2014−516154(JP,A)
【文献】 特開平05−196702(JP,A)
【文献】 特開2000−184658(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0278282(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0357207(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0062350(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 31/34、
F03D 17/00、
H02P 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子の回転エネルギーを電気エネルギーに変換して基準周波数の交流電圧を出力する発電設備の出力電流を計測する計測装置から、前記出力電流の波形を表す波形データを取得する取得部と、
前記発電設備の前記回転子に動力を与える回転ブロックの異常の有無を、前記取得部で取得された前記波形データを用いて判定する判定部と、を備え、
前記判定部は、前記出力電流の周波数スペクトルにおいて、周波数軸上で前記基準周波数に対して前記回転子の回転数に応じた間隔で並ぶ少なくとも1つの特定周波数の成分に基づいて、前記異常の有無を判定するように構成されており、
前記発電設備は、電機子巻線を有する固定子を備え、前記固定子に対して前記回転子が相対的に回転することによって、前記交流電圧を発生するように構成されており、
前記計測装置は、前記電機子巻線の出力を前記出力電流として計測するように構成されており、
前記回転子は界磁巻線を有しており、
少なくとも前記界磁巻線の出力を用いて前記回転子の回転数を求める推定部を、更に備える
ことを特徴とする発電設備監視システム。
【請求項2】
前記判定部は、2つ以上の前記特定周波数の成分に基づいて、前記異常の有無を判定するように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の発電設備監視システム。
【請求項3】
前記推定部は、前記界磁巻線の出力に加えて前記電機子巻線の出力を用いて、前記回転子の回転数を求めるように構成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の発電設備監視システム。
【請求項4】
回転子の回転エネルギーを電気エネルギーに変換して基準周波数の交流電圧を出力する発電設備の出力電流を計測する計測装置から、前記出力電流の波形を表す波形データを取得する取得ステップと、
前記発電設備の前記回転子に動力を与える回転ブロックの異常の有無を、前記取得ステップで取得された前記波形データを用いて判定する判定ステップと、を有し、
前記判定ステップでは、前記出力電流の周波数スペクトルにおいて、周波数軸上で前記基準周波数に対して前記回転子の回転数に応じた間隔で並ぶ少なくとも1つの特定周波数の成分に基づいて、前記異常の有無を判定し、
前記発電設備は、電機子巻線を有する固定子を備え、前記固定子に対して前記回転子が相対的に回転することによって、前記交流電圧を発生するように構成されており、
前記計測装置は、前記電機子巻線の出力を前記出力電流として計測するように構成されており、
前記回転子は界磁巻線を有しており、
少なくとも前記界磁巻線の出力を用いて前記回転子の回転数を求める推定ステップを、更に有する
ことを特徴とする発電設備監視方法。
【請求項5】
前記判定ステップでは、2つ以上の前記特定周波数の成分に基づいて、前記異常の有無を判定する
ことを特徴とする請求項4に記載の発電設備監視方法。
【請求項6】
前記推定ステップでは、前記界磁巻線の出力に加えて前記電機子巻線の出力を用いて、前記回転子の回転数を求める
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の発電設備監視方法。
【請求項7】
コンピュータを、
回転子の回転エネルギーを電気エネルギーに変換して基準周波数の交流電圧を出力する発電設備の出力電流を計測する計測装置から、前記出力電流の波形を表す波形データを取得する取得部、
前記取得部で取得された前記波形データを用い、前記出力電流の周波数スペクトルにおいて、周波数軸上で前記基準周波数に対して前記回転子の回転数に応じた間隔で並ぶ少なくとも1つ特定周波数の成分に基づいて、前記発電設備の前記回転子に動力を与える回転ブロックの異常の有無を判定する判定部、
及び、前記回転子の回転数を求める推定部、
として機能させ、
前記発電設備は、電機子巻線を有する固定子を備え、前記固定子に対して前記回転子が相対的に回転することによって、前記交流電圧を発生するように構成されており、
前記計測装置は、前記電機子巻線の出力を前記出力電流として計測するように構成されており、
前記回転子は界磁巻線を有しており、
前記推定部は、少なくとも前記界磁巻線の出力を用いて前記回転子の回転数を求める
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に発電設備監視システム、発電設備監視方法、及びプログラムに関し、より詳細には、回転子の回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電設備の監視に用いられる発電設備監視システム、発電設備監視方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、振動センサを用いて、風力発電装置のような発電設備の異常の有無を検知する発電設備監視システム(風力発電装置の状態監視装置)が記載されている。特許文献1に記載の風力発電装置は、タワーの上部に設置されたナセルと、ブレードが取り付けられた回転体(ロータヘッド)とを有しており、回転体には、ナセルの内部に導入される主軸が接続されている。主軸は、出力軸に発電機が接続される増速機の入力軸に連結されている。
【0003】
特許文献1に記載の発電設備監視システムは、主軸用の軸受の機械的な振動を検出する振動センサ、及び風力発電装置に生じる機械的な振動を検出する振動センサを備えている。この発電設備監視システムは、これらの振動センサの出力を用いて、軸受の異常、又はタワーの機械強度(剛性)の低下などを監視する。これらの振動センサは、例えば圧電素子を用いた加速度センサによって構成され、風力発電装置で生じる機械的な振動を検出するために、振動の発生場所の近傍、つまりナセルの内部又はナセルの近傍に設けられる。
【0004】
しかし、上述したような従来の発電設備監視システムでは、振動センサを、振動の発生場所の近傍に設置する必要がある。したがって、例えば風力発電装置の場合には、ナセルなどの高所に振動センサを設置する必要があるため、振動センサの設置に非常に手間がかかり、発電設備監視システムの導入の妨げとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−72006号
【発明の概要】
【0006】
本発明は上記事由に鑑みてなされており、導入が容易な発電設備監視システム、発電設備監視方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【0007】
本発明の第1の態様に係る発電設備監視システムは、取得部と、判定部と、を備えている。前記取得部は、発電設備の出力電流を計測する計測装置から、前記出力電流の波形を表す波形データを取得する。前記発電設備は、回転子の回転エネルギーを電気エネルギーに変換して基準周波数の交流電圧を出力する。前記判定部は、前記発電設備の前記回転子に動力を与える回転ブロックの異常の有無を、前記取得部で取得された前記波形データを用いて判定する。前記判定部は、前記出力電流の周波数スペクトルにおいて、周波数軸上で前記基準周波数に対して前記回転子の回転数に応じた間隔で並ぶ少なくとも1つの特定周波数の成分に基づいて、前記異常の有無を判定するように構成されている。前記発電設備は、電機子巻線を有する固定子を備え、前記固定子に対して前記回転子が相対的に回転することによって、前記交流電圧を発生するように構成されている。前記計測装置は、前記電機子巻線の出力を前記出力電流として計測するように構成されている。前記回転子は界磁巻線を有している。前記発電設備監視システムは、少なくとも前記界磁巻線の出力を用いて前記回転子の回転数を求める推定部を、更に備える。
【0008】
本発明の第2の態様に係る発電設備監視システムは、第1の態様において、前記判定部は、2つ以上の前記特定周波数の成分に基づいて、前記異常の有無を判定するように構成されている。
【0011】
本発明の第の態様に係る発電設備監視システムは、第1又は2の態様において、前記推定部は、前記界磁巻線の出力に加えて前記電機子巻線の出力を用いて、前記回転子の回転数を求めるように構成されている。
【0012】
本発明の第の態様に係る発電設備監視方法は、取得ステップと、判定ステップと、を有する。前記取得ステップでは、回転子の回転エネルギーを電気エネルギーに変換して基準周波数の交流電圧を出力する発電設備の出力電流を計測する計測装置から、前記出力電流の波形を表す波形データを取得する。前記判定ステップでは、前記発電設備の前記回転子に動力を与える回転ブロックの異常の有無を、前記取得ステップで取得された前記波形データを用いて判定する。前記判定ステップでは、前記出力電流の周波数スペクトルにおいて、周波数軸上で前記基準周波数に対して前記回転子の回転数に応じた間隔で並ぶ少なくとも1つの特定周波数の成分に基づいて、前記異常の有無を判定する。前記発電設備は、電機子巻線を有する固定子を備え、前記固定子に対して前記回転子が相対的に回転することによって、前記交流電圧を発生するように構成されている。前記計測装置は、前記電機子巻線の出力を前記出力電流として計測するように構成されている。前記回転子は界磁巻線を有している。前記発電設備監視方法は、少なくとも前記界磁巻線の出力を用いて前記回転子の回転数を求める推定ステップを、更に有する。
【0013】
本発明の第の態様に係る発電設備監視方法は、第の態様において、前記判定ステップでは、2つ以上の前記特定周波数の成分に基づいて、前記異常の有無を判定する。
【0016】
本発明の第の態様に係る発電設備監視方法は、第4又は5の態様において、前記推定ステップでは、前記界磁巻線の出力に加えて前記電機子巻線の出力を用いて、前記回転子の回転数を求める。
【0017】
本発明の第の態様に係るプログラムは、コンピュータを、取得部、判定部、及び推定部として機能させるためのプログラムである。前記取得部は、回転子の回転エネルギーを電気エネルギーに変換して基準周波数の交流電圧を出力する発電設備の出力電流を計測する計測装置から、前記出力電流の波形を表す波形データを取得する。前記判定部は、前記取得部で取得された前記波形データを用い、前記発電設備の前記回転子に動力を与える回転ブロックの異常の有無を判定する。前記判定部は、前記出力電流の周波数スペクトルにおいて、周波数軸上で前記基準周波数に対して前記回転子の回転数に応じた間隔で並ぶ少なくとも1つ特定周波数の成分に基づいて、前記異常の有無を判定する。前記発電設備は、電機子巻線を有する固定子を備え、前記固定子に対して前記回転子が相対的に回転することによって、前記交流電圧を発生するように構成されている。前記計測装置は、前記電機子巻線の出力を前記出力電流として計測するように構成されている。前記回転子は界磁巻線を有している。前記推定部は、少なくとも前記界磁巻線の出力を用いて前記回転子の回転数を求める。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施形態1に係る発電設備監視システムの基本構成を示すブロック図である。
図2図2は、同上の発電設備監視システムの具体的構成を示すブロック図である。
図3図3Aは、異常有りの場合の電機子巻線の出力電流の周波数スペクトルを示すグラフである。図3Bは、異常無しの場合の電機子巻線の出力電流の周波数スペクトルを示すグラフである。
図4図4は、回転子の回転数と特定間隔との関係を示すグラフである。
図5図5は、界磁巻線の出力電流の周波数スペクトルを示すグラフである。
図6図6は、実施形態1に係る発電設備監視システムの適用例を示す概略図である。
図7図7は、図6に示す適用例における発電設備監視システムの動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施形態1)
(1)概要
本実施形態に係る発電設備監視システム1は、図1に示すように、回転子442の回転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電設備4の監視に用いられる。この種の発電設備4としては、例えば風の力で風車を回転させる風力発電設備、水の力によって発電用水車を回転させる水力発電設備、蒸気又は燃焼ガスによってタービンを回転させる火力発電設備及び原子力発電設備などがある。他に、地熱発電設備、揚水発電設備、波力発電設備などもある。
【0020】
この種の発電設備4は、回転子442を回転させて電気エネルギーを発生させるため、回転子442に動力を与える回転ブロック41を備えている。ここでいう回転ブロック41は、回転体410(風力発電設備の場合は風車)と、回転体410又は回転子442の回転に関連する部品(例えば軸、軸受及び増速機413など)とを含む。この種の発電設備4においては、回転ブロック41に含まれる少なくとも1つの部品の経年劣化等に起因して、回転ブロック41に異常が発生する可能性がある。ここでいう「回転ブロック41の異常」は、回転ブロック41に関する異常全般を含んでおり、回転体410自体の異常(変形、破損等)の他、例えば主軸411(図2参照)、軸受412(図2参照)又は増速機413(図2参照)などの異常も含んでいる。回転ブロック41の異常の具体例については、下記「(2.2)回転ブロックの異常」の欄で説明する。そして、回転ブロック41に異常がある状態で発電設備4が運転を継続すると、損傷の拡大などにより、発電設備4の深刻な損傷につながる可能性がある。
【0021】
そこで、本実施形態に係る発電設備監視システム1は、発電設備4における回転ブロック41の異常の有無を判定することにより、回転ブロック41の異常の早期の発見を可能とする。発電設備監視システム1で回転ブロック41に異常があると判定された場合、ユーザは、発電設備4に深刻な損傷が発生する前に、発電設備4のメンテナンス(点検及び補修を含む)などの対策をとることができる。すなわち、発電設備監視システム1にて発電設備4の監視がなされることにより、ユーザにおいては、発電設備4の損傷の予兆を検知し、発電設備4に深刻な損傷が発生するより前に適切な対策をとることで、損傷の拡大を防止することなどが可能である。ここでいう「ユーザ」は、例えば発電設備4の運営又は管理を行う事業主であって、企業等の組織であってもよいし、個人であってもよい。
【0022】
(2)詳細
以下、本実施形態に係る発電設備監視システム1について詳しく説明する。
【0023】
(2.1)発電設備について
以下ではまず、本実施形態の発電設備監視システム1の監視対象である発電設備4について説明する。本実施形態では発電設備4が風力発電設備である場合を例示する。
【0024】
発電設備4は、図2に示すように複数枚のブレード415を有する風車を回転体410として備えた、プロペラ形の風力発電設備である。この発電設備4は、回転体410の他に、回転体410を回転可能に保持するナセル42と、ナセル42を支持するタワー43と、を備えている。ナセル42は、タワー43の上端部に取り付けられることで、地上数十メートル程度の高所に設置される。発電設備4は、回転体410と共に回転ブロック41を構成する主軸411、軸受412、増速機413、及びブレーキ装置414を、ナセル42内に備えている。さらに、発電設備4は、ナセル42内に発電機44を備えている。
【0025】
図2の例においては、回転体410は、複数枚(ここでは3枚)のブレード415、及びハブ416を有している。複数枚のブレード415は、ハブ416を中心にして放射状に配置されており、ハブ416によって主軸411と連結されている。主軸411は、ナセル42内の軸受412にて回転可能に保持され、増速機413の入力軸に連結されている。増速機413の出力軸はブレーキ装置414を介して発電機44に接続されている。これにより、複数枚のブレード415が風を受けて回転体410が回転すると、回転体410の回転が増速機413にて増速されて発電機44へ伝達される。
【0026】
発電機44は、固定子441(ステータ)と、回転子442(ロータ)と、を備えている。図1に示すように、固定子441は電機子巻線451を有しており、回転子442は界磁巻線452を有している。回転子442は、ブレーキ装置414を介して増速機413の出力軸に接続されており、増速機413の出力軸が回転することにより、固定子441に対して回転子442が相対的に回転する。電機子巻線451は、電機子側電路541を介して電力供給路52に電気的に接続されている。界磁巻線452は、界磁側電路542及び電力変換器51を介して電力供給路52に電気的に接続されている。電力変換器51は、例えばBTB(Back To Back)方式のように、双方向型のインバータからなる。
【0027】
ここで、電機子側電路541は、発電機44と電力供給路52との間の電路のうち、電力供給路52における電力変換器51との接続点から見て電機子巻線451側の電路からなる。界磁側電路542は、発電機44と電力供給路52との間の電路のうち、電力変換器51から見て界磁巻線452側の電路、つまり電力変換器51と界磁巻線452との間の電路からなる。界磁側電路542はスリップリングを含んでいる。図1においては、電機子巻線451は固定子441に含まれることとして、同一の部位に対し固定子の参照符号「441」と電機子巻線の参照符号「451」とを付している。
【0028】
本実施形態では一例として、発電機44は二次励磁誘導発電機(DFIG:Doubly Fed Induction Generator)である。この種の発電機44は、界磁巻線452に流す電流を電力変換器51にて制御して可変速度運転を行うことで、電力系統7と同じ周波数(例えば50〔Hz〕)の交流電圧を電力供給路52へ出力する。電力変換器51は、回転子442の回転数(回転速度)が同期速度未満である場合(次同期動作)、つまり、すべりが正の値である場合、電力供給路52から界磁巻線452へ電力を供給する。ここでいう「すべり」は、同期速度から回転子442の回転数を減算した値を、同期速度で除算した値である。一方、回転子442の回転数が同期速度以上である場合(超同期動作)、つまり、すべりが負の値である場合、電力変換器51は、界磁巻線452から電力供給路52へ電力を供給する。ここでいう「回転数」及び「同期速度」の単位は、いずれも「rpm」である。このように、発電機44においては、すべり周波数の交流電力を界磁巻線452に供給する「すべり周波数制御」により、回転体410の回転数が一定でなくても、発電周波数を電力系統7と同じ周波数に維持することが可能である。
【0029】
電機子側電路541は、タワー43内を通して、ナセル42内の発電機44と、電力供給路52との間を電気的に接続している。電力変換器51は、タワー43の下部においてタワー43内に設置されている。界磁側電路542は、タワー43内を通して、ナセル42内の発電機44と、電力変換器51との間を電気的に接続している。ここでは、電力系統7としてU相、V相、W相の三相交流を想定しており、電機子巻線451及び界磁巻線452は各々、三相交流に対応して3個ずつ設けられている。また、電力供給路52、電機子側電路541及び界磁側電路542についても、各々、三相交流に対応した三線式の被覆電線からなる。
【0030】
発電機44には、電力供給路52を介して系統連系設備6が電気的に接続されている。これにより、発電設備4で発電された電力は、電力供給路52を通して系統連系設備6へと送られることになる。言い換えれば、発電機44には、電力供給路52を介して系統連系設備6という「負荷」が電気的に接続されている。
【0031】
系統連系設備6は、発電設備4を電力系統7に連系させるための設備である。ここでは一例として、系統連系設備6はトランス61を備えている。電力供給路52はトランス61の一次巻線に電気的に接続されている。トランス61の二次巻線は電力系統7に電気的に接続されている。発電設備4の出力は、電力系統7の電圧及び周波数に合わせて電力系統7に出力される。系統連系設備6は、解列器を含む保護装置を備えていてもよい。
【0032】
上述した構成の発電設備4においては、回転子442が回転すると、系統連系設備6には、電力供給路52を介して発電機44から電力(電気エネルギー)が出力される。言い換えれば、発電設備4は、回転ブロック41から回転子442に与えられる動力により回転子442が回転し、このときの回転子442の回転エネルギーを電気エネルギーに変換する。ここで、発電設備4は、基準周波数の交流電圧を出力する。基準周波数は、電力系統7と同じ周波数(例えば50〔Hz〕)である。
【0033】
この発電設備4においては、風向き及び風速を計測する風向計及び風速計がナセル42に設けられており、風向き及び風速に応じた制御を行っている。つまり、発電設備4は、例えばヨー駆動装置にて、風向きに応じてナセル42を水平面に沿って回転させることにより、風向きに追従して効率的な発電を行う。また、発電設備4は、風速に応じてブレード415の取付角(ピッチ角)を変化させることにより、発電機44の出力(電力)を定格値に制御する。
【0034】
(2.2)回転ブロックの異常
上記「(2.1)発電設備について」の欄で説明した構成の発電設備4においては、回転ブロック41に、例えば以下に説明するような異常が生じる可能性がある。
【0035】
すなわち、発電設備4においては、例えば回転ブロック41に含まれる部品の経年劣化等に起因して、回転ブロック41に異常が発生する可能性がある。とくに風力発電設備のように自然エネルギーを利用して回転体410が回転する発電設備では、回転体410に作用する力の向き及び大きさが変化しやすいため、経年劣化は避けられない問題である。
【0036】
例えば、下から上に向かって突風が吹いた(吹き上がった)場合、風力発電設備において、回転体410には主軸411を傾ける向きの力が作用し、主軸411が軸受412をこじるようにして軸受412にストレスが掛かることになる。このようなストレスが繰り返し軸受412に掛かることで、軸受412が転がり軸受であれば、フレーキングによる損傷を生じることがある。ここでいう「フレーキング」とは、転がり疲れによって転動面又は軌道面に生じる剥離等である。
【0037】
軸受412にフレーキングが生じると、軸受412で発生する損失が大きくなるので、発電設備4の発電効率が低下する。それだけでなく、このような状態で発電設備4が運転を継続していると、主軸411が傾いてミスアライメントが生じ、例えば増速機413の歯車にずれが生じて歯車同士がこすれ、歯車に欠け又は傷等の損傷を生じる可能性がある。このような損傷は、増速機413だけでなく、ブレーキ装置414及び発電機44でも生じ得る。
【0038】
要するに、回転ブロック41に何らかの異常(例えば軸受412のフレーキング)がある状態で、発電設備4が運転していると、発電設備4の発電効率が低下するだけでなく、損傷の拡大などにより、発電設備4の深刻な損傷につながる可能性もある。そこで、本実施形態に係る発電設備監視システム1は、回転ブロック41の異常の有無を判定し判定結果をユーザに報知することにより、回転ブロック41の異常を早期にユーザに認識させる。
【0039】
(2.3)発電設備監視システムの構成
次に、発電設備監視システム1の構成について説明する。
【0040】
発電設備監視システム1は、図1に示すように、回転ブロック41の異常の有無を判定する判定装置10を備えている。判定装置10は、発電設備4の出力電流を計測する計測装置2から波形データを取得し、この波形データを用いて、回転ブロック41の異常の有無を判定するように構成されている。
【0041】
本実施形態においては、図2に示すように、判定装置10と計測装置2とは、例えばインターネットなどのネットワーク8に接続されており、互いに通信可能に構成されている。そのため、判定装置10は、計測装置2からの波形データを、ネットワーク8を介して取得することができる。また、ネットワーク8には、ユーザの管理下にある管理サーバ91が接続されている。これにより、判定装置10は、回転ブロック41の異常の有無の判定結果を、ネットワーク8を介して管理サーバ91に出力することが可能である。したがって、管理サーバ91においては、回転ブロック41の異常の有無の判定結果をユーザに提示することが可能となる。その結果、ユーザは、発電設備に深刻な損傷が発生する前に、発電設備のメンテナンス(点検及び補修を含む)などの対策をとることができる。本実施形態では、ユーザは、発電設備4の運営又は管理を行う事業主であって、企業等の組織であると仮定する。
【0042】
また、本実施形態では計測装置2は発電設備監視システム1の構成要素に含まれないこととして説明するが、計測装置2は発電設備監視システム1の構成要素に含まれていてもよい。同様に、発電設備4は発電設備監視システム1の構成要素に含まれないこととして説明するが、発電設備4は発電設備監視システム1の構成要素に含まれていてもよい。すなわち、発電設備監視システム1は、少なくとも判定装置10を備えていればよく、計測装置2と発電設備4との少なくとも一方を更に備えていてもよい。
【0043】
(2.3.1)計測装置について
計測装置2は、図1に示すように、第1センサ211、第2センサ212及び信号処理部25を有している。計測装置2は、発電設備4の出力電流を計測し、発電設備4の出力電流の波形を表す波形データを、判定装置10に対して出力する。
【0044】
第1センサ211及び第2センサ212の各々は、例えばCT(Current Transformer)センサなどの電流センサである。第1センサ211は、発電設備4のタワー43(図2参照)内に設置されており、電機子側電路541に取り付けられて、電機子側電路541に流れる電流を検出する。第2センサ212は、発電設備4のタワー43内に設置されており、界磁側電路542に取り付けられて、界磁側電路542に流れる電流を検出する。第1センサ211及び第2センサ212は、いずれも信号処理部25に電気的に接続されている。ここで、第1センサ211及び第2センサ212は、それぞれ三相交流に対応した3線式の電機子側電路541及び3線式の界磁側電路542の少なくとも1本に取り付けられていればよい。例えば、第1センサ211は、電機子側電路541のいずれか1本にのみ取り付けられていてもよいし、2本又は3本の電機子側電路541に取り付けられていてもよい。
【0045】
信号処理部25は、第1センサ211の出力から、電機子巻線451の出力の電流波形を表す波形データ(以下、「電機子側データ」ともいう)を生成する。また、信号処理部25は、第2センサ212の出力から、界磁巻線452の出力の電流波形を表す波形データ(以下、「界磁側データ」ともいう)を生成する。計測装置2は、このようにして信号処理部25で生成した波形データ(電機子側データ及び界磁側データ)を、判定装置10に送信するように構成されている。
【0046】
本実施形態においては、発電設備4の出力には、電機子巻線451の出力と、界磁巻線452の出力との2系統の出力があるが、単に発電設備4の出力電流という場合には、電機子巻線451の出力を指すこととする。言い換えれば、計測装置2は、電機子巻線451の出力を、発電設備4の出力電流として計測するように構成されている。
【0047】
次に、計測装置2のより具体的な構成について、図2を参照して説明する。
【0048】
計測装置2は、第1センサ211及び第2センサ212に加えて、第1通信ユニット22、第2通信ユニット23及びゲートウェイ24を、更に有している。以下では、信号処理部25(図1参照)の機能は第1通信ユニット22に含まれていることとする。
【0049】
第1センサ211及び第2センサ212は、タワー43内のうち、電力変換器51に近いタワー43下部に設置されている。言い換えれば、第1センサ211及び第2センサ212は地上付近に設置されている。第1センサ211及び第2センサ212は、いずれも第1通信ユニット22と電気的に接続されており、検出結果を第1通信ユニット22に出力可能に構成されている。第1センサ211及び第2センサ212としては、種々のセンサを適用可能であるが、例えばクランプ式のセンサ等、電機子側電路541及び界磁側電路542の接続を解除することなく後付け可能な構成であることが好ましい。
【0050】
第1通信ユニット22は、第2通信ユニット23との間で、互いにデータを伝送可能に構成されている。第1通信ユニット22と第2通信ユニット23との間の通信は、例えば免許を必要としない小電力無線(特定小電力無線)等の無線通信であってもよい。この種の小電力無線については、用途等に応じて使用する周波数帯域及び空中線電力などの仕様が各国で規定されている。日本国においては、920MHz帯又は420MHz帯の電波を使用する小電力無線が規定されている。ただし、第1通信ユニット22と第2通信ユニット23との間の通信方式は、この例に限らず、例えば、通信事業者が提供する3G(第3世代)回線等の携帯電話網(キャリア網)を用いた通信であってもよいし、有線通信であってもよい。
【0051】
ゲートウェイ24は、第2通信ユニット23と電気的に接続されている。さらに、ゲートウェイ24は、いわゆるモバイルルータのように、通信事業者が提供する3G(第3世代)回線等の携帯電話網(キャリア網)を通してネットワーク8(例えばインターネット)に接続する機能を備えている。ただし、ゲートウェイ24は、この構成に限らず、携帯電話網を介さずにネットワーク8に接続される構成であってもよい。
【0052】
上述した構成により、計測装置2では、信号処理部25で生成された波形データ(電機子側データ及び界磁側データ)が、第1通信ユニット22から第2通信ユニット23、ゲートウェイ24、及びネットワーク8を介して、判定装置10に送信される。また、ゲートウェイ24は、第1通信ユニット22から取得(収集)した波形データを保存するデータロガーとしての機能を有している。
【0053】
計測装置2の動作電力は、電力系統7から供給されていてもよいし、発電設備4から供給されていてもよい。
【0054】
ところで、計測装置2は、定期的に波形データを判定装置10に出力するように構成されている。計測装置2は、所定の計測周期(例えば4時間)で発電設備4の出力電流の計測を行い、波形データを判定装置10に出力する。計測周期は、第1センサ211及び第2センサ212に設けられたタイマにて計時されていてもよいし、ゲートウェイ24に設けられたタイマにて計時されてもよい。ゲートウェイ24のタイマで計測周期を計時する場合には、管理サーバ91にてゲートウェイ24にアクセスすることにより、計測周期が遠隔で設定(変更)可能となる。
【0055】
(2.3.2)判定装置について
判定装置10は、図2に示すように、取得部11と、判定部12と、出力部13と、記憶部14と、推定部15と、を有している。判定装置10は、計測装置2から波形データを取得部11にて取得し、回転ブロック41の異常の有無を判定部12にて判定する。判定装置10は、プロセッサ及びメモリを有するコンピュータを主構成としており、メモリに記録されたプログラムを、プロセッサで実行することにより、判定装置10としての機能を実現する。
【0056】
取得部11は、計測装置2から、少なくとも発電設備4の出力電流の波形を表す波形データ(電機子側データ)を取得するように構成されている。ここでは、取得部11は、ネットワーク8を介して計測装置2のゲートウェイ24から波形データを取得するように構成されている。取得部11が取得する波形データは、電流波形に対し圧縮等を除いて加工が施されておらず、電流波形そのものを表す生データである。ここでは、所定時間(例えば数秒から1分程度)に第1センサ211又は第2センサ212で検出された電流の波形が、1つの波形データを構成する。本実施形態では、波形データは一例として1相につき200〔Kbyte〕程度のwavファイルである。
【0057】
判定部12は、回転ブロック41の異常の有無を、取得部11で取得された波形データを用いて判定するように構成されている。判定部12は、取得部11で取得された波形データを解析し、判定条件に従って、回転ブロック41の異常の有無を判定する。判定部12は、発電設備4の出力電流の周波数解析結果に基づいて、回転ブロック41の異常の有無を判定する。具体的には、判定部12は、発電設備4の出力電流の波形を表す波形データ(電機子側データ)に対して、例えば高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)等のフーリエ変換を施すことにより、出力電流の周波数スペクトルを求める。そして、判定部12は、この周波数スペクトルを解析し、判定条件に従って異常の有無を判定する。判定部12での判定のアルゴリズムについては、「(2.4)判定アルゴリズム」の欄で詳しく説明する。
【0058】
出力部13は、判定部12の判定結果を出力する。出力部13は、ネットワーク8を介して管理サーバ91へ判定結果を送信するように構成されている。出力部13が出力する判定結果は、少なくとも回転ブロック41の異常の有無を表すデータであり、例えば、異常の発生箇所、異常のレベル(異常の度合い)、及び対策などを表すデータを含んでいてもよい。ここでいう判定結果の出力には、判定結果の提示(例えば、表示、音声出力及び印刷等)及び通知などを含む。
【0059】
記憶部14は、取得部11で取得された波形データを複数記憶する。ここでいう複数の波形データは、1つの第1センサ211(又は第2センサ212)で複数回検出して得られた複数の波形データであってもよいし、複数の第1センサ211(又は第2センサ212)の出力から得られた複数の波形データであってもよい。さらに、複数の第1センサ211(又は第2センサ212)で複数回計測することによって得られた複数の波形データであってもよい。第1センサ211(又は第2センサ212)が複数ある例については、「(2.6)発電設備監視システムの適用例」の欄で説明する。
【0060】
推定部15は、発電設備4における回転子442の回転数を求めるように構成されている。すなわち、発電設備4においては、回転子442の回転数(回転速度)は一定ではなく、例えば風速などによって変化する。発電設備4によっては、回転子442の回転数を監視する回転数モニタが付設されている場合もあるが、回転数モニタが無くても、推定部15は、回転子442の回転数を推定することが可能である。
【0061】
本実施形態では、推定部15は、少なくとも界磁巻線452の出力を用いて回転子442の回転数を求めるように構成されている。つまり、推定部15は、回転子442の回転数の推定に、少なくとも、取得部11で取得された波形データのうち界磁巻線452の出力の電流波形を表す波形データ(界磁側データ)を用いる。さらに、推定部15は、界磁巻線452の出力に加えて電機子巻線451の出力を用いて、回転子442の回転数を求めるように構成されている。つまり、推定部15は、回転子442の回転数の推定に、界磁側データだけでなく、電機子巻線451の出力の電流波形を表す波形データ(電機子側データ)も用いる。推定部15での回転子442の回転数の推定のアルゴリズムについては、「(2.5)回転数推定アルゴリズム」の欄で詳しく説明する。
【0062】
上述した構成により、判定装置10では、計測装置2から取得した波形データを用いて、発電設備4における回転ブロック41の異常の有無を判定することができ、その判定結果を管理サーバ91に出力できる。したがって、管理サーバ91においては、回転ブロック41の異常の有無の判定結果をユーザに提示することが可能となる。その結果、ユーザは、発電設備4に深刻な損傷が発生する前に、発電設備4のメンテナンス(点検及び補修を含む)などの対策をとることができる。
【0063】
ただし、判定装置10は、発電設備4が運転中である場合に限って、判定結果を出力するように構成されていてもよい。発電設備4が運転中か否かの判断は、例えば、判定装置10にて、計測装置2から取得した波形データに基づいて行われる。発電設備4において所定の最低電力値以上の電力が生成されている状態にあれば、判定装置10は、発電設備4が運転中であると判断する。発電設備4が運転中でなければ、判定装置10は、回転ブロック41の異常の有無の判定を行わず、例えば、異常の有無の判定ができないことを表す情報を出力する。
【0064】
ところで、判定装置10は、判定部12で用いられる判定条件として、デフォルトで規定されている所定の条件を適用してもよいし、随時更新される条件を適用してもよい。判定条件が随時更新される場合、例えば、判定部12は、記憶部14に記憶された複数の波形データに基づいて判定条件を更新する。言い換えれば、判定部12での判定のためのアルゴリズムは、機械学習により自動的に変更されることになる。多数の波形データが記憶部14に記憶されている場合には、これら多数の波形データ、いわゆるビッグデータに基づいて、判定条件が自動的に更新されてもよい。
【0065】
(2.4)判定アルゴリズム
次に、回転ブロック41の異常の有無を判定するための判定部12の動作、つまり判定部12での判定のアルゴリズムについて、詳しく説明する。
【0066】
ここでは、発電設備4の出力電流の波形を表す波形データ(電機子側データ)に対する判定部12での高速フーリエ変換により、図3A及び図3Bに例示するような周波数スペクトルが得られた場合を想定する。図3A及び図3Bでは、横軸が周波数(Hz)、縦軸が強度(成分の大きさ)を表しており、図3Aが異常無しの場合(つまり正常の場合)、図3Bが異常有りの場合を表している。
【0067】
図3A及び図3Bから明らかなように、回転ブロック41に異常が生じると、発電設備4の出力電流の波形には何らかの変化が生じるため、周波数スペクトルにも変化が生じる。そこで、判定部12は、周波数スペクトルの変化を検出することにより、異常の有無を判定することが可能である。
【0068】
異常が生じると周波数スペクトルには種々の変化が生じるが、本発明者らは、異常が生じると少なくとも1つの特定周波数の成分に変化が現れる、という知見を得た。すなわち、発電設備4の出力電流においては、少なくとも1つの特定周波数の成分に、回転ブロック41の異常に起因した特徴的な変化が現れる。ここでいう「特定周波数」は、周波数軸上で基準周波数に対して回転子442の回転数に応じた間隔(以下、「特定間隔」ともいう)で並ぶ周波数である。ここでいう「間隔」は、周波数スペクトル上での周波数同士の間隔であるから、2つの周波数同士の間隔は、2つの周波数間の差分値に相当する。基準周波数は、発電設備4が出力する交流電圧の周波数(図3A及び図3Bの例では50〔Hz〕)であって、電力系統7と同じ周波数である。
【0069】
図3A及び図3Bの例では、周波数軸(横軸)上において、強度が最大となる基準周波数fs1(50〔Hz〕)を中心として、基準周波数fs1及び4つの特定周波数f1〜f4が特定間隔Fi1で並んでいる。周波数軸(横軸)上において、基準周波数fs1の高周波側には、2つの特定周波数f1,f2が特定間隔Fi1で並ぶように配置されている(f1<f2)。また、周波数軸(横軸)上において、基準周波数fs1の低周波側には、2つの特定周波数f3,f4が特定間隔Fi1で並ぶように配置されている(f3>f4)。言い換えれば、特定周波数f1と、基準周波数fs1及び特定間隔Fi1との間には「f1=fs1+Fi1」の関係が成り立つ。同様に、特定周波数f2と、基準周波数fs1及び特定間隔Fi1との間には「f2=fs1+2×Fi1」の関係が成り立つ。また、特定周波数f3と、基準周波数fs1及び特定間隔Fi1との間には「f3=fs1−Fi1」の関係が成り立つ。同様に、特定周波数f4と、基準周波数fs1及び特定間隔Fi1との間には「f4=fs1−2×Fi1」の関係が成り立つ。
【0070】
そして、特定周波数f1〜f4に着目すると、図3Aに示すような異常無し(正常)の場合に比べて、図3Bに示すような異常有りの場合に、各々の成分の強度が大きくなっている。つまり、図3Bの例では、周波数スペクトルは、特定周波数f1〜f4の各々において極大となる。そのため、図3Bに示すように、周波数スペクトルにおいては、基準周波数fs1を中心に特定間隔Fi1で複数の極大点が生じることになる。
【0071】
このように、周波数軸上で基準周波数fs1に対して回転子442の回転数に応じた間隔(特定間隔Fi1)で並ぶ少なくとも1つの特定周波数f1〜f4の成分に、回転ブロック41の異常に起因した特徴的な変化が現れることは、実験によって確認されている。さらに、このことは数学的にも説明できる。要するに、発電設備4の回転ブロック41に異常が生じた場合、回転子442の回転には周期的な角速度変化が生じると考えられ、発電設備4の出力電流には、周期的な歪み(基準周波数fs1の理想的な正弦波に対する「ずれ」)が生じると考えられる。ここでいう「歪み」の周期は、回転子442の回転数に応じた周期である。したがって、出力電流の周期的な歪みを「信号」、基準周波数fs1の理想的な正弦波を「搬送波」とみなせば、搬送波を信号によって変調した場合と同様に、搬送波(基準周波数fs1)の高周波側及び低周波側には少なくとも1つの側帯波が生じる。ここで、側帯波の間隔は信号(出力電流の周期的な歪み)の周波数であるので、特定間隔Fi1は回転子442の回転数に応じて決まる。側帯波が生じることは、周波数変調又は振幅変調の式から明らかである。
【0072】
そこで、判定部12は、上述したような少なくとも1つの特定周波数f1〜f4の成分に基づいて、回転ブロック41の異常の有無を判定する。ここで、特定周波数f1〜f4を特定するためには、回転子442の回転数を特定する必要がある。すなわち、特定間隔Fi1と回転子442の回転数とは相関関係にあり、図4に例示するように、回転子442の回転数が大きくなると、特定間隔Fi1も大きくなる。図4では、横軸が回転子442の回転数〔rpm〕を表し、縦軸が特定間隔〔Hz〕を表している。よって、回転子442の回転数が特定されれば、特定間隔Fi1が求まるので、判定部12では、既知である基準周波数fs1と特定間隔Fi1とから、特定周波数f1〜f4の特定が可能である。
【0073】
図4に例示するような特定間隔Fi1と回転子442の回転数との関係は、例えば、以下に説明する複数のサンプルデータからから特定可能である。複数のサンプルデータの各々は、回転ブロック41に異常がある発電設備4について、回転子442の回転数を変えながら各回転数について得られる出力電流の周波数スペクトルである。特定間隔Fi1と回転子442の回転数との関係は、複数のサンプルデータの各々と回転子442の回転数との対応関係から、特定可能である。
【0074】
本実施形態では、判定部12は、推定部15にて推定される回転子442の回転数から、特定間隔Fi1を求め、この特定間隔Fi1を用いて特定周波数f1〜f4を特定する。判定部12は、発電設備4の出力電流の周波数スペクトルから特定周波数f1〜f4の成分を抽出し、抽出した少なくとも1つの特定周波数f1〜f4の成分に基づいて、異常の有無を判定する。
【0075】
少なくとも1つの特定周波数f1〜f4の成分に基づいて、異常の有無を判定する具体的な手法(判定条件)は様々であるが、一例として、判定部12は、閾値との大小比較によって、異常の有無を判定する。この場合に、判定部12は、波形データ(電機子側データ)から少なくとも1つの特定周波数f1〜f4の成分を抽出し、この成分の強度が閾値未満であれば「異常無し」と判定し、閾値以上であれば「異常有り」と判定することができる。
【0076】
ここで、判定部12は、異常有り、と判定する場合、異常のレベル(異常の度合い)をも評価する構成であってもよい。つまり、たとえば「1」〜「99」の99段階で異常のレベルを評価することで、判定部12は、軽度の異常と重度の異常とを区別して判定することができる。異常のレベルは、例えば、少なくとも1つの特定周波数f1〜f4の成分の強度と閾値との差分値などに応じて決定される。
【0077】
また、他の例として、判定部12での判定の具体的な手法は、マハラノビス−タグチ法(Mahalanobis-Taguchi Method)などであってもよい。又は、判定部12は、例えばk近傍法(k-Nearest Neighbor Algorithm)、サポートベクターマシン(Support Vector Machine: SVM)、及びニューラルネットワーク(Neural Network)などの機械学習アルゴリズムによって、判定を行ってもよい。ここでいう「ニューラルネットワーク」は、ディープラーニング(Deep Learning)を含む。ただし、ここで挙げた判定の具体的な手法は一例に過ぎず、判定の具体的な手法については適宜変更可能である。
【0078】
また、判定部12は、少なくとも1つの特定周波数f1〜f4の成分に基づいて、異常の有無を判定すればよいので、例えば、1つの特定周波数f1の成分のみから判定を行ってもよいし、2つ以上の特定周波数f1〜f4の成分から判定を行ってもよい。さらに、図3Bの例では、基準周波数fs1を中心として高周波側に2つ、低周波側に2つで計4つの特定周波数f1〜f4があると仮定しているが、特定周波数は基準周波数fs1の高周波側、又は低周波側の一方のみにあってもよい。さらにまた、特定周波数は、5つ以上あってもよい。
【0079】
ところで、周波数スペクトルは、理論上、上述した通り特定周波数f1〜f4の各々において極大となるため、基準周波数fs1を中心に特定間隔Fi1で複数の極大点が生じる。ただし、例えば、計測装置2の計測誤差等の影響で、周波数スペクトルにおける極大点は、特定周波数f1〜f4の各々からずれた周波数に生じることがある。すなわち、周波数スペクトル上での極大点同士の間隔が、特定間隔Fi1と一致しない場合がある。この場合、基準周波数fs1を中心に特定間隔Fi1で規定される周波数ではなく、周波数スペクトル上で実際に極大点となる周波数が、特定周波数f1〜f4の各々として用いられてもよい。例えば、「fs1+Fi1」で規定される周波数の近傍(一例として、高周波側に僅かにずれた周波数)に極大点が生じる場合には、「fs1+Fi1」で規定される周波数の近傍であって極大点となる周波数が、特定周波数f1として用いられてもよい。特定周波数f2〜f4についても同様に、基準周波数fs1を中心に特定間隔Fi1で規定される周波数の近傍であって、かつ周波数スペクトル上で実際に極大点となる周波数が、特定周波数f2〜f4の各々として用いられてもよい。
【0080】
(2.5)回転数推定アルゴリズム
次に、回転子442の回転数を推定するための推定部15の動作、つまり推定部15での回転数の推定のアルゴリズムについて、詳しく説明する。
【0081】
本発明者らは、すべり周波数の交流電力を界磁巻線452に供給する「すべり周波数制御」により、発電周波数を一定(基準周波数fs1)に維持している発電設備4においては、界磁巻線452の出力に、すべり周波数の情報が含まれる、という知見を得た。推定部15での回転数の推定のアルゴリズムは、この知見に基づいている。すなわち、推定部15は、取得部11で取得された波形データのうち界磁巻線452の出力の電流波形を表す波形データ(界磁側データ)から、回転子442の回転数を推定する。
【0082】
具体的には、推定部15は、界磁側データに対して高速フーリエ変換を施すことにより、界磁巻線452の出力電流の周波数スペクトルを求める。そして、推定部15は、この周波数スペクトルを解析し、すべり周波数を抽出する。推定部15は、このようにして界磁巻線452の出力電流の周波数スペクトルから求めたすべり周波数fc1を用いて、回転子442の回転数を求める。すなわち、回転子442の回転数Ra〔rpm〕、発電機44の極数P1、及びすべり周波数fc1〔Hz〕を用いると、基準周波数fs1は下記数1の式で表される。ただし、下記数1の式における、すべり周波数fc1は絶対値である。
【0083】
【数1】
【0084】
ここで、発電機44の極数P1(例えば「P1=4」)、及び基準周波数fs1は既知であるので、すべり周波数fc1が求まると、数1の式より、回転子442の回転数Raが求まる。このようにして、推定部15では、回転子442の回転数Raの推定が可能になる。
【0085】
一例として、界磁側データに対する推定部15での高速フーリエ変換により、図5に例示するような周波数スペクトルが得られた場合を想定する。図5では、横軸が周波数(Hz)、縦軸が強度(成分の大きさ)を表している。図5から明らかなように、界磁巻線452の出力電流においては、周波数スペクトルは、すべり周波数fc1にて極大となる。そのため、図5に示すように、周波数スペクトルにおいては、すべり周波数fc1で極大点が生じることになる。図5の例では、すべり周波数fc1は3.875〔Hz〕である。この場合に、発電機44の極数P1が「4」、基準周波数fs1が50〔Hz〕であると仮定すると、数1の式から、回転子442の回転数Raは1616.25〔rpm〕となる。
【0086】
ここにおいて、回転子442の回転数Raを精度よく求めるためには、推定部15は、数1の式の右辺第2項、つまり、すべり周波数fc1の項について、符号(+/−)を特定する必要がある。そこで、推定部15は、回転子442の回転数の推定に、界磁側データだけでなく、電機子巻線451の出力の電流波形を表す波形データ(電機子側データ)も用いている。具体的には、推定部15は、電機子側データに対して高速フーリエ変換を施すことにより、電機子巻線451の出力電流の周波数スペクトルを求める。そして、推定部15は、この周波数スペクトルを解析し、基準周波数fs1の成分の強度(以下、「ピークレベル」という)を抽出する。
【0087】
推定部15は、抽出したピークレベルの大きさによって、数1の式の右辺第2項について、符号を決定する。回転子442の回転数Raが大きくなると、発電設備4の出力は大きくなるので、ピークレベルは大きくなる。したがって、推定部15は、ピークレベルが所定値以上であれば、回転子442の回転数Raが同期速度以上である判断し、上記符号として「−」を選択する。ピークレベルが所定値未満であれば、推定部15は、回転子442の回転数Raが同期速度未満であると判断し、上記符号として「+」を選択する。ここで、ピークレベルと比較される所定値は、統計データに基づいて決定される値である。
【0088】
上述したような回転数Raの推定処理は、判定部12での異常の有無の判定に先立って実行される。つまり、判定部12が異常の有無を定期的に判定する場合、1回の判定につき、推定部15が回転数Raを求め、判定部12が異常の有無を判定する一連の処理が行われることになる。ただし、電機子側データに対する高速フーリエ変換は、判定部12でも実行されるので、推定部15にて、改めて電機子側データに対する高速フーリエ変換を行うことは必須ではない。つまり、判定部12及び推定部15は、電機子側データに対する高速フーリエ変換の結果(周波数スペクトル)を共用してもよい。
【0089】
また、上述した回転数推定アルゴリズムに比べて推定精度は劣るが、推定部15は、電機子巻線451の出力の電流波形を表す波形データ(電機子側データ)のみに基づいて、回転子442の回転数を推定することも可能である。例えば、推定部15は、電機子巻線451の出力電流の周波数スペクトルを解析し、基準周波数fs1の成分の強度(ピークレベル)から、回転子442の回転数を推定することができる。つまり、上述したように回転子442の回転数が大きくなるほどピークレベルは大きくなるので、ピークレベルと回転数との対応関係が既知であれば、ピークレベルから回転数の推定が可能である。
【0090】
(2.6)発電設備監視システムの適用例
(2.6.1)構成
次に、上述したような発電設備監視システム1の具体的な適用例について、図6を参照して説明する。
【0091】
図6の例では、発電設備監視システム1は、互いにデータを伝送する第1装置31と第2装置32とを含んでいる。そして、判定装置10を構成する取得部11、判定部12、出力部13、記憶部14、及び推定部15は、第1装置31と第2装置32とに分散して設けられている。ここでは、少なくとも記憶部14は第1装置31に設けられ、判定部12は第2装置32に設けられている。第1装置31には、記憶部14の他に、取得部11及び出力部13が設けられている。第2装置32には、判定部12の他に、推定部15が設けられている。
【0092】
これにより、第1装置31は、発電設備監視システム1(判定装置10)の機能のうち、波形データの蓄積、及び判定結果の出力(提示、通知)の機能を担うことになる。さらに、第1装置31は、ユーザを識別するためのユーザID(identification)、及びログデータを管理する機能を有している。一方、第2装置32は、発電設備監視システム1(判定装置10)の機能のうち、波形データの解析、回転ブロック41の異常の有無の判定、及び回転子442の回転数の推定の機能を担うことになる。すなわち、発電設備監視システム1の機能は第1装置31と第2装置32とに分散して実装されており、第1装置31と第2装置32とが協働することによって発電設備監視システム1が実現される。
【0093】
本実施形態では、第1装置31及び第2装置32は、それぞれクラウド(クラウドコンピューティング)によって実現されている。さらに詳しく説明すると、第1装置31は「A国」に設置及び構築されたパブリッククラウド、第2装置32は「B国」に設置及び構築されたプライベートクラウドである。つまり、判定装置10は、パブリッククラウドとプライベートクラウドとを組み合わせた、いわゆるハイブリッドクラウドにて実現される。ここでいう「A国」は、発電設備4が設置された国であって、ユーザの属する国でもある。一方、「B国」は、「A国」とは別の国である。つまり、第1装置31と第2装置32とは異なる国に設置されているが、インターネットからなるネットワーク8を通じて互いに通信可能である。ここで、第1装置31は、記憶部14を含む関係上、第2装置32に比べてストレージ容量の大きなクラウドが用いられる。
【0094】
また、第1装置31は、計測装置2との間で暗号化されていない状態のデータ、つまり平文を用いて通信を行う。同様に、第1装置31は、第2装置32との間でも、平文を用いて通信を行う。これにより、法令などによって平文の使用が義務付けられている国又は地域であっても、第1装置31の運用が可能となる。したがって、例えば「A国」で平文の使用が義務付けられているとしても、第1装置31の運用が可能となる。ただし、暗号化されたデータを用いた通信が許容されている国又は地域においては、この限りではなく、第1装置31は、暗号化された状態のデータを用いて通信してもよい。
【0095】
また、図6の例では、発電設備4は、複数基の風力発電装置401,402,403,…40nを有している。複数基の風力発電装置401,402,403,…40nの各々は、「(2.1)発電設備について」の欄で説明した発電設備4と同様に、固定子441及び回転子442を具備する発電機44を有している。つまり、図6の例における発電設備4は、回転子442のエネルギーを電気エネルギーに変換する発電機44を複数有している。
【0096】
複数基の風力発電装置401,402,403,…40nは「発電設備群」を構成する。「発電設備群」を構成する複数基の風力発電装置401,402,403,…40nは、例えば数十〔m〕〜数〔km〕の間隔で設置されている。
【0097】
さらに、計測装置2は、複数のセンサ201,202,203,…20nを有している。複数のセンサ201,202,203,…20nの各々は、「(2.3.1)計測装置について」の欄で説明した第1センサ211及び第2センサ212の組み合わせに相当する。つまり、複数のセンサ201,202,203,…20nの各々は、電機子側電路541及び界磁側電路542を流れる電流をそれぞれ検出する。
【0098】
ここで、複数のセンサ201,202,203,…20nは、複数基の風力発電装置401,402,403,…40nに一対一に対応して設けられている。言い換えれば、複数のセンサ201,202,203,…20nは、複数の(風力発電装置401,402,403,…40nの)発電機44(図1参照)と一対一に対応して設けられている。つまり、複数のセンサ201,202,203,…20nは、それぞれ対応する風力発電装置401,402,403,…40nにおける電機子側電路541及び界磁側電路542に取り付けられている。複数のセンサ201,202,203,…20nは「センサ群」を構成する。図6では、複数のセンサ201,202,203,…20nが、複数基の風力発電装置401,402,403,…40nに繋がっているように表されているが、これは両者の対応関係を模式的に表しているに過ぎない。実際には、複数のセンサ201,202,203,…20nは、複数基の風力発電装置401,402,403,…40n内に設置されている。
【0099】
複数のセンサ201,202,203,…20nの各々には、第1通信ユニット22(図2参照)が接続されている。ゲートウェイ24には、第2通信ユニット23(図2参照)が1台接続されている。これにより、「センサ群」を構成する複数のセンサ201,202,203,…20nとゲートウェイ24との間において、多対一の通信が可能になる。
【0100】
したがって、複数基の風力発電装置401,402,403,…40nの出力電流の波形データは、複数のセンサ201,202,203,…20nの各々に接続された第1通信ユニット22から第2通信ユニット23に送信され、ゲートウェイ24に集約される。このようにして、計測装置2は、複数基の風力発電装置401,402,403,…40nにて計測された波形データを、1台のゲートウェイ24にて収集する。
【0101】
ここで、複数基の風力発電装置401,402,403,…40nの個々を特定するための識別子が予め設定されており、複数のセンサ201,202,203,…20nの各々には、対応する風力発電装置の識別子が対応付けられている。さらに、複数基の風力発電装置401,402,403,…40nの各々には、識別子に加えて、それぞれの運営及び管理を行う事業主のユーザIDが対応付けられている。これにより、発電設備監視システム1は、ユーザIDに基づき、ユーザに対し、ユーザ自らが運営、管理する風力発電装置401,402,403,…40nの異常の有無の情報を、提示することが可能である。
【0102】
ここで、発電設備監視システム1(第1装置31及び第2装置32)は、複数の発電機44の各々について、複数のセンサ201,202,203,…20nのうち対応するセンサで検出された出力電流を用いて、異常の有無を判定するように構成されている。すなわち、本実施形態においては、発電設備監視システム1は、複数基の風力発電装置401,402,403,…40nの各々について、回転ブロック41の異常の有無を個別に判定することができる。この場合、出力部13は、少なくとも回転ブロック41の異常の有無に加え、複数基の風力発電装置401,402,403,…40nのうちの判定の対象としている風力発電装置を特定する情報(識別子)を、判定結果として出力する。
【0103】
また、図6の例においては、管理サーバ91に接続可能なモニタ92及び携帯端末93が設けられている。モニタ92及び携帯端末93は、ユーザの管理下にあり、管理サーバ91に接続することで、管理サーバ91のユーザインタフェースとして機能する。したがって、管理サーバ91は、判定装置10の判定結果を受けた場合に、この判定結果をモニタ92又は携帯端末93に表示させることにより、判定結果をユーザに提示することができる。ここで、モニタ92及び携帯端末93には、判定装置10の判定結果だけでなく、記憶部14に記憶されている波形データなども表示可能である。携帯端末93は、管理サーバ91との間で通信可能な情報端末であり、例えばスマートフォン、タブレット端末等である。
【0104】
また、図6の例では、発電設備監視システム1(第1装置31及び第2装置32)の保守、管理を行うための保守端末94が設けられている。保守端末94は、第1装置31及び第2装置32の各々との間で通信可能に構成されている。保守端末94はネットワーク8を介して第1装置31及び第2装置32に接続されていてもよいし、専用回線を介して第1装置31及び第2装置32に接続されていてもよい。保守端末94は、発電設備監視システム1を運営する管理者によって管理されており、第1装置31又は第2装置32との通信により、発電設備監視システム1の各種設定の変更、又はユーザ(ユーザID)の登録若しくは変更などを行う。また、保守端末94は、発電設備監視システム1の判定結果等、発電設備監視システム1の動作状態を確認する機能も有している。
【0105】
(2.6.2)動作
次に、図6に示すように構成された発電設備監視システム1の動作について、図7を参照して説明する。
【0106】
計測装置2は、定期的に電流波形を計測し、この電流波形を表す波形データをゲートウェイ24から、ネットワーク8経由で発電設備監視システム1の第1装置31に送信する(S1)。このとき、計測装置2は、複数のセンサ201,202,203,…20nの各々で計測された電流波形をゲートウェイ24にてバッファリングし、第1装置31に送信する。また、波形データには、複数基の風力発電装置401,402,403,…40nのうち計測対象の風力発電装置を特定する情報(識別子)が、補足データとして付加されている。
【0107】
第1装置31は、ゲートウェイ24から波形データを受信すると、この波形データを記憶部14に蓄積する(S2)。このとき、第1装置31は、波形データを、風力発電装置401,402,403,…40nごとに、時系列に沿って記憶する。第1装置31にて記憶された波形データは、自動的に消去されることはなく、保守端末94にて所定の操作がなされるまで記憶部14に残ることになる。さらに、第1装置31は、波形データをネットワーク8経由で第2装置32に送信する(S3)。
【0108】
第2装置32は、第1装置31から波形データを受信すると、判定部12にて、この波形データを解析し、回転ブロック41の異常の有無の判定を行う(S4)。このとき、第2装置32は、波形データと、波形データの解析により得られた解析データとをストレージに一時的に記憶し、基本的には、判定結果が出た時点でストレージ上の波形データ及び解析データを自動的に消去する。第2装置32は、判定結果をネットワーク8経由で第1装置31に送信する(S4)。
【0109】
第1装置31は、第2装置32から判定結果を受信すると、出力部13にて、判定結果を出力するための電子メールを作成する(S6)。ここで、第1装置31は、Webサーバとして、判定結果を表すWebページを提供する。そのため、電子メールには、インターネット上の判定結果を表すWebページのURL(Uniform Resource Locator)が含まれている。第1装置31は、作成した電子メールを通知メールとして、ネットワーク8経由で管理サーバ91へ送信する(S7)。
【0110】
管理サーバ91は、通知メールを受信すると、モニタ92又は携帯端末93へ通知メールを転送する。これにより、ユーザにおいては、モニタ92又は携帯端末93を操作することで、通知メール内のURLより、判定結果を表すWebページにアクセス可能となる。ユーザが、URLにアクセスすると、管理サーバ91から第1装置31にリクエストが送信される(S8)。その結果、モニタ92又は携帯端末93のWebブラウザ機能により、Webページ上の判定結果が閲覧可能になる。つまり、この場合、管理サーバ91は、モニタ92又は携帯端末93と、ネットワーク8との間に、Webアクセス制御を行うプロキシ(Proxy)サーバとして機能する。
【0111】
(3)まとめ
以上説明したように、第1の態様に係る発電設備監視システム1は、取得部11と、判定部12と、を備えている。取得部11は、回転子442の回転エネルギーを電気エネルギーに変換して基準周波数の交流電圧を出力する発電設備4の出力電流を計測する計測装置2から、上記出力電流の波形を表す波形データを取得する。判定部12は、発電設備4の回転子442に動力を与える回転ブロック41の異常の有無を、取得部11で取得された上記波形データを用いて判定する。判定部12は、上記出力電流の周波数スペクトルにおいて、周波数軸上で上記基準周波数に対して回転子442の回転数に応じた間隔で並ぶ少なくとも1つの特定周波数の成分に基づいて、上記異常の有無を判定するように構成されている。
【0112】
この態様によれば、発電設備4の出力電流の波形を表す波形データを監視し、この波形データに表れる異常の兆候から、回転ブロック41の異常の有無を判定する。そのため、発電設備監視システム1で回転ブロック41に異常があると判定された場合、ユーザは、発電設備4に深刻な損傷が発生する前に、発電設備4のメンテナンス(点検及び補修を含む)などの対策をとることができる。すなわち、この発電設備監視システム1によれば、ユーザは、発電設備4の損傷の予兆を検知し、発電設備4に深刻な損傷が発生するより前に適切な対策をとることで、損傷の拡大などを防止可能である。言い換えれば、発電設備監視システム1では発電設備4の損傷を予測しているので、ユーザは、発電設備4の保守、管理を計画的に行うことができる。その結果、発電設備4の深刻な損傷による発電設備4の運転停止を回避可能となり、発電設備4の稼働率の向上にも寄与する。
【0113】
しかも、この発電設備監視システム1では、発電設備4で生じる機械的な振動を検出することなく、回転ブロック41の異常の有無を判定することができる。つまり、本実施形態の発電設備監視システム1においては、回転ブロック41の異常の有無は、発電設備4の出力電流の波形を表す波形データに基づいて判定できる。具体的には、判定部12は、出力電流の周波数スペクトルにおいて、少なくとも1つの特定周波数の成分に基づいて、異常の有無を判定する。したがって、本実施形態の発電設備監視システム1では、電流波形を計測するためのセンサ(第1センサ211)が、発電設備4の出力電路(電機子側電路541)に設置されていればよい。よって、従来例のように振動センサを用いる場合とは異なり、振動の発生場所の近傍に計測装置2を設置する必要がなく、本実施形態の構成によれば、発電設備監視システム1の導入が容易になる、という利点がある。
【0114】
第2の態様に係る発電設備監視システム1として、第1の態様において、判定部12は、2つ以上の上記特定周波数の成分に基づいて、上記異常の有無を判定するように構成されていることが好ましい。この態様によれば、判定部12は、1つの特定周波数の成分のみから判定する場合に比べて、多様な手法での判定が可能となり、異常の有無の判定精度の向上を図ることができる。ただし、判定部12が2つ以上の特定周波数の成分に基づいて異常の有無を判定することは、発電設備監視システム1に必須の構成ではなく、判定部12は1つの特定周波数の成分のみから判定を行ってもよい。
【0115】
第3の態様に係る発電設備監視システム1として、第1又は2の態様において、発電設備4は、電機子巻線451を有する固定子441を備え、固定子441に対して回転子442が相対的に回転することによって、交流電圧を発生する。この場合に、計測装置2は、電機子巻線451の出力を上記出力電流として計測するように構成されていることが好ましい。この態様によれば、判定部12は、回転ブロック41の異常に起因した変化が顕著に現れる電機子巻線451の出力から、異常の有無を判定するので、異常の有無の判定精度の向上を図ることができる。ただし、判定部12が電機子巻線451の出力から異常の有無を判定することは、発電設備監視システム1に必須の構成ではなく、判定部12は界磁巻線452の出力から異常の有無を判定してもよい。
【0116】
第4の態様に係る発電設備監視システム1として、第3の態様において、回転子442は界磁巻線452を有している。この場合に、発電設備監視システム1は、少なくとも界磁巻線452の出力を用いて回転子442の回転数を求める推定部15を、更に備えることが好ましい。この態様によれば、発電設備4に付設された回転数モニタが無い場合でも、推定部15にて、回転子442の回転数を推定することが可能である。また、判定部12では、推定部15にて推定される回転子442の回転数から、特定間隔を求め、この特定間隔を用いて特定周波数を特定することができる。したがって、回転数モニタが無い場合でも、判定部12での異常の有無の判定が可能である。ただし、推定部15は発電設備監視システム1に必須の構成ではなく、推定部15は省略されていてもよい。
【0117】
第5の態様に係る発電設備監視システム1として、第4の態様において、推定部15は、界磁巻線452の出力に加えて電機子巻線451の出力を用いて、回転子442の回転数を求めるように構成されていることが好ましい。この態様によれば、「(2.5)回転数推定アルゴリズム」の欄で説明したように、推定部15では、すべり周波数の符号を特定することができ、回転子442の回転数の推定精度の向上を図ることができる。ただし、推定部15が回転子442の回転数の推定に電機子巻線451の出力を用いることは、発電設備監視システム1に必須の構成ではなく、推定部15は界磁巻線452の出力のみから回転子442の回転数を求めてもよい。
【0118】
(4)変形例
上述した発電設備監視システム1は、本発明の一例に過ぎず、本発明は、実施形態1に限定されることはなく、実施形態1以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0119】
発電設備監視システム1の監視対象は、以下の構成の発電設備4であればよい。つまり、監視対象の発電設備4は、電力変換器51を介して電力供給路52に電気的に接続された界磁巻線452を回転子442に含み、回転子442の回転エネルギーを電気エネルギーに変換し、電気エネルギーを電力供給路52に出力する構成であればよい。そのため、監視対象は風力発電設備に限らず、例えば水力発電設備、火力発電設備、原子力発電設備、地熱発電設備、揚水発電設備、又は波力発電設備などが、発電設備監視システム1の監視対象であってもよい。発電設備4が、二次励磁誘導発電機以外の発電設備の場合、例えば同期発電機の場合には、回転体410の回転数によって、発電設備4が出力する交流電圧の基準周波数が変動する。つまり、発電設備4が出力する交流電圧の基準周波数は、一定でなく変動してもよい。
【0120】
また、推定部15で求められる回転子442の回転数の情報は、判定部12での異常の有無の判定に限らず、その他の目的で使用されてもよい。この場合、発電設備監視システム1は、少なくとも取得部11及び推定部15を備えていればよく、判定部12が省略されていてもよい。回転数の情報が判定部12での異常の有無の判定以外の目的で使用される場合、推定部15で推定された回転子442の回転数の情報は、例えば、出力部13にてネットワーク8を介して管理サーバ91へ送信される。これにより、管理サーバ91においては、回転子442の回転数をユーザに提示することが可能となる。
【0121】
また、第1装置31及び第2装置32の各々は、クラウド(クラウドコンピューティング)に限らず、例えばサーバ等のコンピュータによって実現されていてもよい。さらに、発電設備監視システム1は、第1装置31と第2装置32とを含んでいればよく、発電設備監視システム1の機能は3台以上の装置に分散されていてもよい。さらにまた、発電設備監視システム1は、第1装置31と第2装置32とを含む構成に限らず、発電設備監視システム1の機能は1台の装置で実現されていてもよい。さらに、第1装置31及び第2装置32は同一国内に設置されていてもよい。
【0122】
また、発電設備監視システム1の各機能の第1装置31及び第2装置32への割り当ては、上述した例に限らず、例えば出力部13が第1装置31ではなく第2装置32にあってもよい。この場合、判定部12での判定結果は、第1装置31に返されることなく、第2装置32の出力部13から出力されることになる。
【0123】
また、計測装置2は、波形データを定期的に出力する構成に限らず、ユーザからの計測要求を受けて、計測要求への応答として波形データを判定装置10に出力するように構成されていてもよい。この場合、例えばユーザが携帯端末93に対して所定の操作を行うことにより、管理サーバ91から計測装置2に計測要求が送信され、この計測要求をトリガにして、計測装置2が波形データを判定装置10へ送信する。
【0124】
また、計測装置2は、発電設備4が運転中か否かを、発電設備4から出力される状態信号により判断する構成に限らず、例えば第1センサ211又は第2センサ212の出力にて判断する構成であってもよい。
【0125】
また、発電設備監視システム1は、例えば竜巻による回転ブロック41の破損など、突発的に生じる損傷についても、回転ブロック41の異常と判定するように構成されていてもよい。この場合、出力部13は、突発的に生じる損傷と、軸受412のフレーキングのように、正常に発電設備4が使用されているうちに回転ブロック41に生じる経年劣化とを、区別して提示することが好ましい。
【0126】
また、計測装置2における第1センサ211及び第2センサ212は、発電設備4のタワー43内に設置される構成に限らず、タワー43の外部に設置されてもよい。
【0127】
(5)発電設備監視方法、及びプログラム
発電設備4の監視にあたり、以下の発電設備監視方法を採用することで、専用の判定装置10を用いなくても、実施形態1(変形例を含む)に係る発電設備監視システム1の具現化が可能である。ここでいう発電設備4は、回転子442の回転エネルギーを電気エネルギーに変換して基準周波数の交流電圧を出力するように構成されている。
【0128】
すなわち、発電設備監視方法は、発電設備4の出力電流を計測する計測装置から、上記出力電流の波形を表す波形データを取得する取得ステップと、判定ステップと、を有している。判定ステップでは、発電設備4の回転子442に動力を与える回転ブロック41の異常の有無を、取得ステップで取得された上記波形データを用いて判定する。判定ステップでは、上記出力電流の周波数スペクトルにおいて、周波数軸上で上記基準周波数に対して回転子442の回転数に応じた間隔で並ぶ少なくとも1つの特定周波数の成分に基づいて、上記異常の有無を判定する。すなわち、取得ステップは、取得部11で行われる処理に相当し、判定ステップは、「(2.4)判定アルゴリズム」の欄で説明した判定部12で行われる処理に相当する。
【0129】
この発電設備監視方法によれば、専用の判定装置10を用いなくても実施形態1(変形例を含む)に係る発電設備監視システム1の具現化が可能であり、発電設備監視システム1の導入が容易になる、という利点がある。
【0130】
また、発電設備監視システム1がコンピュータを主構成とする場合、コンピュータのメモリに記録されるプログラムは、コンピュータを取得部11、及び判定部12として機能させるためのプログラムである。取得部11は、回転子442の回転エネルギーを電気エネルギーに変換して基準周波数の交流電圧を出力する発電設備4の出力電流を計測する計測装置2から、上記出力電流の波形を表す波形データを取得する。判定部12は、取得部11で取得された上記波形データを用い、発電設備4の回転子442に動力を与える回転ブロック41の異常の有無を判定する。判定部12は、上記出力電流の周波数スペクトルにおいて、周波数軸上で上記基準周波数に対して回転子442の回転数に応じた間隔で並ぶ少なくとも1つ特定周波数の成分に基づいて、上記異常の有無を判定する。
【0131】
このプログラムによれば、専用の判定装置10を用いなくても実施形態1(変形例を含む)に係る発電設備監視システム1の具現化が可能であり、発電設備監視システム1の導入が容易になる、という利点がある。プログラムは、コンピュータのメモリに予め記録されていてもよいが、この例に限らず、電気通信回線を通じて提供されてもよいし、メモリカードなどの記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0132】
また、発電設備監視方法及びプログラムによって、実施形態1(変形例を含む)に係る発電設備監視システム1が具現化される場合でも、上述した種々の構成、及び下記の実施形態2で説明する構成を適宜組み合わせて適用可能である。すなわち、例えば、発電設備監視方法において、判定ステップでは、2つ以上の特定周波数の成分に基づいて、異常の有無を判定してもよい。また、発電設備監視方法は、少なくとも界磁巻線452の出力を用いて回転子442の回転数を求める推定ステップを、更に有していてもよい。推定ステップは、「(2.5)回転数推定アルゴリズム」の欄で説明した推定部15で行われる処理に相当する。つまり、推定ステップでは、界磁巻線452の出力に加えて電機子巻線451の出力を用いて、回転子442の回転数を求めてもよい。
【0133】
(実施形態2)
本実施形態に係る発電設備監視システム1は、判定部12が、推定部15にて推定される回転子442の回転数を用いずに、回転ブロック41の異常の有無を判定する点で、実施形態1の発電設備監視システム1と相違する。以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
【0134】
すなわち、本実施形態では、判定部12は、例えば回転数モニタなど、推定部15以外の装置から回転子442の回転数の情報を取得する。そして、判定部12は、回転子442の回転数から特定間隔Fi1を求め、この特定間隔Fi1を用いて特定周波数f1〜f4を特定する。判定部12は、発電設備4の出力電流の周波数スペクトルから特定周波数f1〜f4の成分を抽出し、抽出した少なくとも1つの特定周波数f1〜f4の成分に基づいて、異常の有無を判定する。
【0135】
以上説明したように、例えば回転数モニタが発電設備4に付設されている場合には、判定部12は、回転数モニタの出力を用いて、回転ブロック41の異常の有無を判定することができる。したがって、本実施形態の発電設備監視システム1では、推定部15は省略可能である。ただし、推定部15で推定された回転子442の回転数の情報は、判定部12での異常の有無の判定以外の目的で使用されてもよいので、本実施形態の発電設備監視システム1においても、推定部15が備わっていてもよい。
【0136】
実施形態2で説明した構成は、実施形態1で説明した種々の構成(変形例を含む)と適宜組み合わせて適用可能である。
【符号の説明】
【0137】
1 発電設備監視システム
11 取得部
12 判定部
15 推定部
2 計測装置
4 発電設備
41 回転ブロック
441 固定子
442 回転子
451 電機子巻線
452 界磁巻線
fs1 基準周波数
f1〜f4 特定周波数
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7