(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6979622
(24)【登録日】2021年11月18日
(45)【発行日】2021年12月15日
(54)【発明の名称】燻製食品および飲料の作成方法
(51)【国際特許分類】
A23B 4/052 20060101AFI20211202BHJP
A23L 3/00 20060101ALI20211202BHJP
【FI】
A23B4/052 C
A23L3/00 103
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-516101(P2019-516101)
(86)(22)【出願日】2017年6月6日
(65)【公表番号】特表2019-517824(P2019-517824A)
(43)【公表日】2019年6月27日
(86)【国際出願番号】US2017036217
(87)【国際公開番号】WO2017214195
(87)【国際公開日】20171214
【審査請求日】2020年5月19日
(31)【優先権主張番号】62/346,478
(32)【優先日】2016年6月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518123523
【氏名又は名称】エドリントン ディスティラーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】EDRINGTON DISTILLERS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス ビー ホール
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ エム ギルガッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ ジェイ ボープレ
【審査官】
福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2007/142086(WO,A1)
【文献】
登録実用新案第3094680(JP,U)
【文献】
特開平06−292503(JP,A)
【文献】
特開2004−016020(JP,A)
【文献】
特開2005−013183(JP,A)
【文献】
特開2013−081443(JP,A)
【文献】
米国特許第00889828(US,A)
【文献】
特表2001−524325(JP,A)
【文献】
特開2006−070234(JP,A)
【文献】
特開平04−145009(JP,A)
【文献】
特開昭60−216820(JP,A)
【文献】
特開昭60−031813(JP,A)
【文献】
特開2015−202105(JP,A)
【文献】
特開2002−065239(JP,A)
【文献】
特開平09−207954(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0164300(US,A1)
【文献】
実開昭62−139285(JP,U)
【文献】
特開昭59−012112(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第102078007(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23B
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燻製香を木材チップフレーバーキャリアに付与し、その後前記木材チップフレーバーキャリアが蒸留酒に燻製香を付与するのに用いられる多段式煙凝集および捕集装置であって、
煙を発生させる手段と、
前記煙を発生させる手段に直接接続されたホルダとを備え、
前記ホルダは閉鎖系であり、ホルダに入る煙の一部を凝集するためのホルダ内の第1のチャンバと、予め凝集した煙を前記木材チップフレーバーキャリア上に吸収するための第2のチャンバとを含み、
前記煙を発生させる手段と前記ホルダとの間の管から凝集を除去する手段をさらに備え、前記凝集を除去する手段がドレイン、バルブ、またはトラップであることを特徴とする多段式装置。
【請求項2】
前記ホルダの全体の温度を低下させる冷却手段をさらに備える、請求項1に記載の多段式装置。
【請求項3】
前記煙を発生させる手段と前記ホルダとの間の管内に冷却手段をさらに備える、請求項1に記載の多段式装置。
【請求項4】
燻製香を木材チップフレーバーキャリアに付与し、その後前記木材チップフレーバーキャリアを蒸留酒に燻製香を付与するのに用いる方法であって、
閉鎖系内で煙を発生させるステップと、
煙の発生する場所とホルダとを接続する管からドレイン、バルブ、またはトラップを介して凝集を除去するステップと、
発生した煙をホルダ内に向けるステップとを含み、
前記ホルダは、閉鎖系であり、ホルダに入る煙の一部を凝集するためのホルダ内の第1のチャンバと、予め凝集した煙を前記木材チップフレーバーキャリア上に吸収するための第2のチャンバとを含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
前記ホルダの全体の温度を冷却するステップをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
煙の発生する場所とホルダとを接続する管を冷却するステップを更に含む、請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2016年6月6日に出願された米国仮特許出願第62/346,478号の優先権を主張する。
【0002】
(連邦政府の助成による研究に関する陳述)
該当なし。
【0003】
(共同研究契約の当事者名)
該当なし。
【0004】
(コンパクトディスクにより提出された資料の援用)
該当なし。
【技術分野】
【0005】
本発明は、一般に、食品に関する。より詳細には、本発明は、燻製食品および飲料の作成方法に関する。
【背景技術】
【0006】
燻製食品は、長い間、多くの文化の食事に欠かせないものであった。しかしながら、伝統的な燻製は、一貫性を統制することが困難な長い加工であり、食品に到達する前に複数の段階の凝集を受けなかった煙からのあまり望ましくない風味を与えうる。
【0007】
しかし、望ましいのは、伝統的な燻製の方法を用いると食品または飲料に付与する可能性のある望ましくない風味の全く無い、非常に力強い燻製風味を付与することができるシステムである。
【発明の概要】
【0008】
本発明の要旨構成は以下のとおりである。
(1)多段式煙凝集および捕集装置であって、
煙を発生させる手段と、
前記煙を発生させる手段に直接接続されたホルダとを備え、
前記ホルダは閉鎖系であり、ホルダに入る煙の一部を凝集するためのホルダ内の第1のチャンバと、予め凝集した煙をフレーバーキャリア上に吸収するための第2のチャンバとを含むことを特徴とする多段式装置。
(2)前記ホルダの全体の温度を低下させる冷却手段をさらに備える、(1)に記載の多段式装置。
(3)前記煙を発生させる手段と前記ホルダとの間の管内に冷却手段をさらに備える、(1)に記載の多段式装置。
(4)前記煙を発生させる手段と前記ホルダとの間の管から凝集を除去する手段をさらに備える、(1)に記載の多段式装置。
(5)前記凝集を除去する手段は、ドレイン、バルブ、またはトラップとすることができる、(4)に記載の多段式装置。
(6)前記フレーバーキャリアは、木材チップ、ゼオライト、または食品である、(1)に記載の多段式装置。
(7)燻製香をフレーバーキャリアに付与する方法であって、
閉鎖系内で煙を発生させるステップと、
発生した煙をホルダ内に向けるステップとを含み、
前記ホルダは、閉鎖系であり、ホルダに入る煙の一部を凝集するためのホルダ内の第1のチャンバと、予め凝集した煙をフレーバーキャリア上に吸収するための第2のチャンバとを含むことを特徴とする方法。
(8)前記ホルダの全体の温度を冷却するステップをさらに含む、(7)に記載の方法。
(9)煙の発生する場所とホルダとを接続する管を冷却するステップを更に含む、(7)に記載の方法。
(10)煙の発生する場所とホルダとを接続する管から凝集を除去するステップをさらに含む、(7)に記載の方法。
(11)前記凝集は、ドレイン、バルブ、またはトラップを介して除去される、(10)に記載の方法。
(12)前記フレーバーキャリアは、木材チップ、ゼオライト、および食品のうちの少なくとも1つである、(7)に記載の方法。
(13)前記フレーバーキャリアは、その後に蒸留酒に燻製香を付与するのに用いられる木材チップである、(12)に記載の方法。
(14)多段式煙凝集および捕集装置であって、
底部に吸気口を有し、入口と出口の両方を上部の互いに反対側に有する容器と、
空気ラインを介して前記容器の入口に接続された空気ポンプと、
前記容器の出口に接続された外向き管と、
前記容器とは反対側で外向き管の端部に接続された外部ポットと、
前記外部ポットの内部に配置され、外向き管に接続されたホルダとを備え、
前記外部ポットは、外部ポットの底部側で外向き管に接続されており、外部ポットを閉鎖するための蓋または同様の手段を有し、
前記ホルダは、ホルダを閉鎖するための蓋または同様の手段を有し、ホルダの断面積にまたがり、ホルダの全高の少なくとも10%の距離で、ホルダの底部の上方に配置された、液体および気体透過性の篩がホルダ内にあることを特徴とする装置。
(15)前記容器内に、煙を容器の底部から上部に上昇するように向けるスプリング管または有孔管をさらに備える、(14)に記載の装置。
(16)前記外部ポットの内部と前記ホルダの外部との間の空間内に氷をさらに備える、(14)に記載の装置。
(17)前記外向き管上に冷却手段をさらに備える、(14)に記載の装置。
(18)前記冷却手段は氷パックである、(17)に記載の装置。
(19)前記冷却手段は水またはグリコールラインである、(17)に記載の装置。
(20)前記外向き管内にドレインをさらに備える、(14)に記載の装置。
(21)前記ドレインは、外部ポットより容器に近く配置されており、外向き管の全長の10%〜50%の距離以内である、(20)に記載の装置。
本発明の様々な例示的な実施形態は、説明が進むにつれてより明らかになるであろうが、以下の詳細な説明において添付の図面と併せて説明する。
【符号の説明】
【0010】
図面において、類似の参照符号は、全ての図面を通して類似の要素を示す。以下に、参照符号と関連する要素の一覧を示す。
【0011】
1 空気ポンプ
2 空気ライン
3 空気管
4 スプリング管または有孔管
5 空気吸入口
6 木材ペレット
7 容器
8 外向き管
9 ドレイン
10 冷却手段のための空間
11 外部ポット
12 ホルダ
13 外向き管端
14 篩
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、燻製食品および飲料を製造するための多段式煙凝集および捕集装置である。装置は、煙を発生させる手段と、煙を発生させる手段に直接接続されたホルダとを備える。ホルダは閉鎖系であり、ホルダに入る煙の一部を凝集するためのホルダ内の第1のチャンバと、予め凝集した煙をフレーバーキャリア上に吸収するための第2のチャンバとを含み、フレーバーキャリアは、木材チップ、ゼオライト(商業的吸着剤および触媒として一般的に使用される微孔質、アルミノケイ酸塩鉱物)、食品、またはそれらの組み合わせである。
【0013】
例示的な実施形態では、多段装置は、煙を発生させる手段とホルダとの間に管を含むこともできる。グリコールライン、氷、冷水等の冷却手段は、管と相互作用し、それによって管の内部の温度を低下させるように配置することができる。
【0014】
また、多段装置は、煙を発生させる手段とホルダとの間の管からの凝集を除去する手段を有することもできる。このような凝集を除去する手段は、ドレイン、バルブ、またはトラップとすることができる。
【0015】
図1は、本発明の特定の変形の実施形態を示す。
【0016】
この装置は、木材ペレットが置かれる容器を含む。容器は、容器の底部に吸気口を有する。容器自体の内部には、最終的な煙が容器の上部に向かって上昇することを可能にするスプリング管または有孔管があってもよい。
【0017】
容器の上部に向かって、入口を介して容器に入る空気ラインがある。入口および空気ラインは、容器の上部領域の空気管に接続することができる。空気管は、存在する場合には、入口を介して容器内に、および空気管内に空気を吹き込む空気ポンプに接続される。任意選択の空気管は、好ましくは、容器全体にわたって延在はしていない。
【0018】
入口の反対側で、容器の上部に出口があることが好ましい。空気管は、存在する場合には、出口に向けられるが、空気管の端部と出口との間に開放された空間を有することが好ましい。
【0019】
木材ペレットまたは他の可燃物を容器内に置くことができる。木材ペレットは、容器の底部にある吸気口を通して点火される。木材ペレットが燃焼するにつれて、煙は容器の上部に向かって上方に向けられ、そこでは、空気ラインを介して吸入される空気が煙を容器の出口に向ける。
【0020】
容器の出口は外向き管に接続され、外向き管は外部ポットの底面につながる。外部ポットは、外部ポットの内容物を封じ込めるための蓋または他の同様の手段を有することが好ましい。
【0021】
ここまでの
図1の説明は、煙を生成するための例示的な手段を示している。
【0022】
外向き管は、捕集したい煙の種類に基づいて様々な長さと形状とすることができる。本発明の実施例では、外向き管を有することは、容器の高さの少なくとも1.5倍に等しいか、またはそれ以上の長さを有することが、これまでに見出されている。
【0023】
外向き管は、外部ポットより容器に近い距離、この例示的な実施形態においては、外向き管の全長の50%〜10%の距離以内で凝集を除去するためのドレインまたはその他の手段を有することができる。開いている場合は、ドレインは、外向き管内の油および凝集を、容器に逆流することなく、かつ、燃焼する木材ペレットを排出することなく取り出すための出口である。また、ドレインは外向き管が閉塞しないように維持する役目も果たす。
【0024】
外部ポットの後、外向き管は、外部ポット内に配置されたホルダにつながる。外部ポットと同様に、ホルダは、好ましくは、ホルダの内容物を封じ込める蓋または他の同様の手段を有する。
【0025】
ホルダの底に孔があり、それを通して外部管が接続される。孔の上には、ホルダの断面積にまたがる液体および気体透過性の篩がある。そして、この例示的な実施形態では、篩は、ホルダの内側の全高の少なくとも10%の距離でホルダの底部の上に配置される。
【0026】
上記のホルダは、篩によって分離された2つのチャンバを有する。しかし、これは本発明を説明するための複数の方法のうちの1つに過ぎない。
【0027】
木材ペレットまたは他の可燃物が容器内に配置され、吸気口を介して点火される。ペレットが燃焼すると、結果として生じる煙は容器の上部に向かって漂流し、出口を通って外向き管に導かれる。空気ポンプから容器に供給される空気は、煙をこの方向に導くのを補助する。
【0028】
外向き管は容器よりも冷たいので、煙は外向き管内で凝集し始める。外向き管内の煙からの凝集の一部は、ドレインを介して除去することができる。
【0029】
外向き管内で凝集しない煙は、ホルダ内にまで上向きに進み続ける。外部ポットの内側とホルダの外側との間の空間は、氷、水、冷却空気、グリコールライン、または氷浴の形態の冷却手段を含む。好ましい実施形態では、冷却手段は、氷または氷浴である。
【0030】
木材チップは、例えば、ホルダ内で篩の上に配置される。煙がホルダに入り篩を通って流れるので、煙は、ここでは木材チップとしてのフレーバーキャリアに与えられる。ホルダ内で凝集した煙は、ホルダの底部を流れ、および/または、外部管に戻ることができる。また、凝集をホルダ内で篩の下に集めることもできる。
【0031】
次いで、煙のフレーバーを、独自および公知の方法を通して抽出することができる清浄な煙で飽和された、例えば、木材チップやゼオライト等のフレーバーキャリアを用いることによって、直接的または間接的に、飲料または食品に付与することができる。
【0032】
別の方法では、ホルダ内のチップを特定の食品または飲料で置換し、直接煙を吸収させる。
【0033】
付与された煙を有する木材チップの使用の1つは、ウィスキー、バーボン、ラム等の蒸留酒にスモーキーな香りを与えるための、蒸留酒業界での使用である。付与された煙を有する木材チップは、当業者に公知の方法で蒸留酒に導入される。
【0034】
(実施例1)
本容器と同様であるものからの煙を、氷および外部ポットで囲まれたホルダに直接供給する商業的に公知の装置によって、木材チップに付与された煙とともに木材チップを用いて蒸留酒、ラムを作った。
【0035】
(実施例2)
第2の蒸留酒、ラムを、本発明による装置で木材チップを用いて作った。
【0036】
実施例1のラムおよび実施例2のラムを対にした比較ブラインド試験で試験した。これは、21〜39歳のアメリカ人からなる無作為標本で試験された。
【0037】
試験の後、実施例1のラム酒は、0が「絶対に買わない」で、10が「必ず買う」である、0〜10の尺度の購買意欲確度で4.6であった。同じ尺度で、実施例2のラムは購買意欲が6.1であった。
【0038】
本発明を上に概説した特定の実施形態と共に説明したが、当業者には多くの代替、変更および変形が可能であることは明らかである。したがって、上記の本発明の好ましい実施形態は、例示的なものであり、限定するものではない。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができる。