(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例えば特許文献1のように、第1,第2スリットダイの吐出口を、基材を間に挟んで対向させて、第1,第2スリットダイから塗工液を同時に吐出させながら、基材の両面に塗膜を形成し、また同時に乾燥させることで基材両面に極板を一括で形成する方法では、スリットダイごとに吐出圧力が異なる場合は、基材位置がその影響を受け変位しやすく、上面と下面の塗工液の塗布厚みに差異が生じるという課題がある。
【0009】
また、別の形態として例えば特許文献2のように、下面はバックアップロールにより基材を支持しながらスリットダイにより塗膜を形成し、その基材を水平方向に搬送して走行させ、基材の鉛直下面に鉛直上方に吐出口を有したダイを設置し、基材の下面に塗膜を形成することで基材両面に極板を一括で形成する方法が提案されている。
【0010】
しかしながらこの方法においては、連続的に塗膜を形成する場合には適しているものの、間欠的に塗膜を形成する場合には、基材と塗膜重量による基材の撓み、及び間欠時における塗工液がスリットダイ内部に引く際の表面張力によって基材が引き込まれやすいことから基材の幅方向の中央部が、スリットダイと基材間の距離、つまり、塗工ギャップが安定せず、
図7に示すように、基材4に塗工液が塗布された塗工部Bと塗工部Bの間に、塗工液を塗布しないはずの未塗工部Cを形成しようとした場合に、塗工液を塗布しないはずの未塗工部Cに、先行する塗工部Bの終端の塗工液を引き連れながら徐々に塗工液供給が停止することで、塗工部Bの終端に尾引き5が発生して、塗工部の終端10の形状が悪化するという課題がある。
図8に塗工部の終端10の形状の良い事例を示す。
【0011】
本発明は、上記課題を鑑み、基材にスリットダイを用いて塗工液を間欠的にかつ均一な厚みにて塗工しながら、基材の撓みが発生しても尾引きが無い良好な電池極板を形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の塗工方法は、基材に間欠的に塗膜を形成する塗工方法であって、水平に走行している前記基材に対して、前記基材の下面に対向して配置したスリットダイの上流側スリットダイと
、前記スリットダイの下流側スリットダイ
との間の吐出口より上方に向かって塗工液を吐出することで前記基材の下面に塗膜を形成し、
前記スリットダイの前記上流側スリットダイと前記基材の下面との距離は変更せずに前記下流側スリットダイを下方に移動させ、その後に前記スリットダイを上方に移動させて前記上流側スリットダイを前記基材の下面に接触させ、その後に前記スリットダイへの前記塗工液の供給を停止させ、前記塗膜を乾燥させる
ことを特徴とする。
【0014】
また、
基材に間欠的に塗膜を形成する塗工方法であって、水平に走行している前記基材に対して、前記基材の下面に対向して配置したスリットダイの上流側スリットダイと、前記スリットダイの下流側スリットダイとの間の吐出口より上方に向かって塗工液を吐出することで前記基材の下面に塗膜を形成し、前記下流側スリットダイが下降を開始し、前記下流側スリットダイが下降を終了する前に前記スリットダイの全体が上昇を開始し、そして前記上流側スリットダイを前記基材の下面に接触させ、その後に前記スリットダイへの前記塗工液の供給を停止
させ、前記塗膜を乾燥させることを特徴とする。
【0015】
また、
基材に間欠的に塗膜を形成する塗工方法であって、水平に走行している前記基材に対して、前記基材の下面に対向して配置したスリットダイの上流側スリットダイと、前記スリットダイの下流側スリットダイとの間の吐出口より上方に向かって塗工液を吐出することで前記基材の下面に塗膜を形成し、前記スリットダイを上方に移動させて前記上流側スリットダイを前記基材の下面に接触させ、その後に前記下流側スリットダイを下方に移動させ、前記上流側スリットダイを前記基材の下面に接触させた状態で前記スリットダイへの前記塗工液の供給を停止
させ、前記塗膜を乾燥させることを特徴とする。
【0016】
また、
基材に間欠的に塗膜を形成する塗工方法であって、水平に走行している前記基材に対して、前記基材の下面に対向して配置したスリットダイの上流側スリットダイと、前記スリットダイの下流側スリットダイとの間の吐出口より上方に向かって塗工液を吐出することで前記基材の下面に塗膜を形成し、前記スリットダイ
の上昇を開始
させ、前記上流側スリットダイが前記基材に当接する前に前記下流側スリットダイ
の下降を開始
させ、
前記上流側スリットダイを前記基材の下面に接触させた状態で前記スリットダイへの前記塗工液の供給を停止
させ、前記塗膜を乾燥させることを特徴とする。
【0017】
また、前記上流側スリットダイを前記基材の下面に接触させた状態は、前記基材の幅方向全てで前記上流側スリットダイが接触している、ことが好ましい。
【0018】
本発明の塗工装置は、上手から下手へ向かって走行中の基材に間欠的に塗膜を形成する塗工装置であって、上流側スリットダイと下流側スリットダイ
との間の吐出口から前記基材の下方の面に対して塗工液を供給するスリットダイと、前記スリットダイへの前記塗工液の供給を停止する前に、前記スリットダイの上流側スリットダイを前記基材の下面に接触させて支持するように前記スリットダイに移動を指示する制御部とを有
し、前記制御部は、前記スリットダイを上方に移動させて前記上流側スリットダイを前記基材の下面に接触させ、その後に前記下流側スリットダイを下方に移動させ、前記上流側スリットダイを前記基材の下面に接触させた状態で前記スリットダイへの前記塗工液の供給を停止させる、ことを特徴とする。
【0020】
また、
上手から下手へ向かって走行中の基材に間欠的に塗膜を形成する塗工装置であって、上流側スリットダイと下流側スリットダイとの間の吐出口から前記基材の下方の面に対して塗工液を供給するスリットダイと、前記スリットダイへの前記塗工液の供給を停止する前に、前記スリットダイの上流側スリットダイを前記基材の下面に接触させて支持するように前記スリットダイに移動を指示する制御部とを有し、前記制御部は、前記下流側スリットダイの下降を開始させ、前記下流側スリットダイが下降を終了する前に前記スリットダイの全体の上昇を開始させ、そして前記上流側スリットダイを前記基材の下面に接触させ、その後に前記スリットダイへの前記塗工液の供給を停止させる、こと
を特徴とする。
【0022】
また、
上手から下手へ向かって走行中の基材に間欠的に塗膜を形成する塗工装置であって、上流側スリットダイと下流側スリットダイとの間の吐出口から前記基材の下方の面に対して塗工液を供給するスリットダイと、前記スリットダイへの前記塗工液の供給を停止する前に、前記スリットダイの上流側スリットダイを前記基材の下面に接触させて支持するように前記スリットダイに移動を指示する制御部とを有し、前記制御部は、前記スリットダイの上昇を開始させ、前記上流側スリットダイが前記基材に当接する前に前記下流側スリットダイの下降を開始させ、前記上流側スリットダイを前記基材の下面に接触させた状態で前記スリットダイへの前記塗工液の供給を停止させる、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の塗工方法および塗工装置によれば、スリットダイを基材に接触させることで、スリットダイと基材との隙間である塗工ギャップを幅方向で強制的に一定とすることで、間欠時における終端の尾引きが無い、良好な電池極板を製造することができる。
【0024】
このような構成にすることにより、塗膜形成工程の生産性を上げることができることから、電池の高容量化を安価で実現できる。また両面に塗膜が形成されている方が、塗膜を含む基材の重量が大きくなることから、基材の走行方向のたわみも大きくなる。したがって、スリットダイを基材に接触させることで、スリットダイと基材との隙間である塗工ギャップを幅方向で強制的に一定とすることで、間欠時における終端の尾引きが改善される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の各実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
各実施の形態の説明に先立って、従来の塗工方法では塗工部の終端形状が悪化する原理について説明する。
【0028】
塗工装置は、
図9(a)に示すように、巻装体40から引き出されてバックアップロール7と基材支持装置3を経由して移送されている基材4は、基材支持装置3の後段に設けられた乾燥装置6を通過して完成した両面塗工基材が巻き取りリール41に巻き取られている。バックアップロール7の位置には、基材4の上面に塗工液を塗る第一ダイヘッド1が設けられている。バックアップロール7と基材支持装置3の間の位置には、基材4の下面に塗工液を塗る第二ダイヘッド2が設けられている。Xは第二ダイヘッド2と基材4との隙間である塗工ギャップを示している。
【0029】
図9(b)に基材支持装置3の位置でのA−A矢視図を示す。3a,3bは基材支持装置3を構成する押し付けローラで、基材4の両縁部を支持している。Aは第一ダイヘッド1によって塗工された上面塗工部、Bは第二ダイヘッド2によって塗工された下面塗工部である。
【0030】
図9(c)に第二ダイヘッド2の位置でのB−B断面図を示す。
【0031】
図9(b)に示すように、塗工前の状態では、基材4の両縁部を基材支持装置3で把持しつつ流れ方向のテンション調整を行うことなどにより、基材4の流れ方向・幅方向共に基材4の撓みは無い。
図9(c)に示すように、幅方向の塗膜重量精度に影響するスリットダイ2と基材4との隙間である塗工ギャップXは塗工幅方向において一定となっている。
【0032】
図10(a)に連続間欠塗工中の状態を示す。
図10(b)に基材支持装置3の位置でのA−A矢視図を示す。
図10(c)に第二ダイヘッド2の位置でのB−B断面図を示す。
図10(d)に塗工後の塗工幅方向における下面塗工膜の断面形状の詳細図を示す。
【0033】
しかしながら塗工を継続すると、
図10(a)(b)に示すように塗工された塗工液による基材4の重量増加に対し、基材4の両縁部を基材支持装置3で把持しつつ流れ方向のテンション調整を行うことだけでは、基材4を塗工前の状態と同様の高さを保ちながら走行することが困難となり、基材4の長手方向および幅方向の両者において基材4の撓みが発生する。
【0034】
その結果、
図10(c)に示すように、幅方向の塗膜重量精度に影響するスリットダイ2と基材4との隙間である塗工ギャップXが狭くなり、塗工幅方向において不均一となることから、
図10(d)に示すように、塗工幅方向中央部の厚みが両端部付近に比べて薄くなって、幅方向の塗膜重量精度が悪化する問題がある。
【0035】
つまり、塗工を続けると基材4の両端部と中央部では、塗工ギャップが変化してしまう。基材4の幅方向の両端部と中央部におけるスリットダイ2の吐出口の状態の違いを説明する。
【0036】
基材4の両端部の状態を
図11に、基材4の中央部の状態を
図12に示す。
【0037】
基材4の両端部では、
図11(a)に示すように基材4に対して鉛直下方に設置したスリットダイ2に塗工液を供給して塗工する状態から、塗工液の供給を停止すると、
図11(b)に示すように、塗工液の表面張力により基材4にはスリットダイ2の吐出口側に引き込まれる方向に力が働くことから、基材4が鉛直下方に変位する。そして、
図11(c)に示すように、基材4の両端部では塗工ギャップが確保されているため塗工液が切れて、
図11(d)に示すように時間の経過とともに塗工液はスリットダイ2の内部に戻る。
【0038】
しかしながら、基材4の中央部では、
図12(a)に示すように、基材4の撓みの影響で塗工ギャップが狭くなっている。そして、塗工液の供給を停止すると、
図12(b)に示すように、塗工液の表面張力により基材4にはスリットダイ2の吐出口側に引き込まれる方向に力が働くことから、基材4が鉛直下方に変位し更に塗工ギャップが狭くなり、上流側スリットダイ上部に液溜まり8が形成される。そのため
図12(c)に示すように、液溜まり8が基材4と離脱しづらくなり、
図12(d)に示すように尾引きが発生した状態で塗工される。従って、基材4に塗工された状態は
図12(e)に示すように、基材中央部の終端に尾引き5が発生する。
【0039】
(実施の形態1)
図1〜
図4は本発明の塗工方法を実行する塗工装置を示す。
【0040】
この塗工装置は、二次電池や燃料電池などの電極の芯体となる基材4の両面に、塗工液を塗工するものである。搬送方向9の上流側から下流側に向けて、バックアップロール7および上面塗工用のスリットダイ1、下面塗工用スリットダイ2、基材支持装置3および乾燥装置6を有している。スリットダイ2は、搬送方向9に向かって角度θだけ傾けて配置されている。
【0041】
バックアップロール7および下面塗工用スリットダイ1は水平方向に対向している。基材4は下方からバックアップロール7と下面塗工用スリットダイ1の対向部に移動して、さらにバックアップロール7によって向きを変えられてそれ以後は水平方向に一定速度で移動させられる。スリットダイ1は活物質が含有された塗工液を基材4の上面に塗工するための装置である。スリットダイ2は活物質が含有された塗工液を基材4の下面に塗工するための装置である。
【0042】
乾燥装置6は、塗工液が塗工された基材4を乾燥するための装置である。乾燥装置6内では、塗工面を乾燥させるための気体を噴出する気体噴射ノズル60が上下に設けられており、両面塗工された両面塗工基材が噴出される気体によって浮遊状態で搬送される。
【0043】
図2に基材4の幅方向の両端部におけるスリットダイ2の動作を示す。
図4に基材4の幅方向の中央部におけるスリットダイ2の動作を示す。
【0044】
図2(a)に示すように、スリットダイ2は上流側スリットダイ2Uと下流側スリットダイ2Lを有している。基材4の下面に対向するスリットダイ2の吐出口が、上流側スリットダイ2Uの先端と下流側スリットダイ2Lの先端の間に形成されている。スリットダイ2の上流ギャップH1および下流ギャップH2は、用いられる塗工液の特性によっても異なるが、一般的には、0.01mm以上1.0mm以下程度設けられる。
【0045】
11は制御部で、基材4の下面に対する上流側スリットダイ2Uの上下位置と、基材4の下面に対する下流側スリットダイ2Lの上下位置を、上流側スリットダイ2Uと下流側スリットダイ2Lを一緒に、または別々に独立して設定位置へ移動させるように制御する。更に制御部11は、スリットダイ2への塗工液の供給/停止のタイミングを指示する。
【0046】
上流ギャップH1とは、
図3に示すように上流側スリットダイ2Uの頂点P1から基材4の鉛直方向下面までの距離である。
【0047】
下流ギャップH2とは、下流側スリットダイ2Lの頂点P2から基材4の鉛直方向下面までの距離である。
【0049】
図2(a)は基材4の幅方向両端部での塗工中の状態を示している。
【0050】
基材4に塗工液が塗布された塗工部Bと塗工部Bの間に、塗工液を塗布しない未塗工部Cを形成する間欠塗工をするため、制御部11は、塗工液の供給を停止する前に、先ず、
図2(b)に示すように下流側スリットダイ2Lを、下流ギャップH2が大きくなるように鉛直下方に移動させる。上流側スリットダイ2Uは
図2(a)の塗工中の位置から動かさない。これによって、液溜まりが下流側に移動する。下流側スリットダイ2Lを鉛直下方に下げる量は0.01mm以上0.5mm以下程度である。
【0051】
その後に制御部11が、スリットダイ2の全体を鉛直上方に移動させて、上流側スリットダイ2Uの一部P3を
図2(c)に示すように基材4の下面に接触させる。
【0052】
さらにその後に制御部11が、スリットダイ2への塗工液の供給を停止する。塗工液の供給が停止されると、
図2(d)に示すように塗工液の表面張力により基材4にはスリットダイ2の吐出口側に引き込まれる方向に力が働くことから、搬送方向9に向かって走行中の基材4の一部が鉛直下方に変位する。
【0053】
その後、
図2(e)(f)に示すように時間の経過とともに塗工液が切れる。Bが下面塗工部、10が下面塗工部Bの終端である。
【0054】
その後のタイミングに制御部11が、上流側スリットダイ2Uと下流側スリットダイ2Lを
図2(a)に示す上流ギャップH1と下流ギャップH2に戻し、塗工と間欠を繰り返す。
【0055】
制御部11がスリットダイ2を
図2(a)〜(f)のように運転した場合の基材4の幅方向の中央部における塗工中のスリットダイ2の動作を、
図4(a)〜(f)に示す。
【0056】
図4(a)のように、基材4の幅方向中央部の塗工中の上流ギャップH1及び下流ギャップH2は、基材4の撓みの影響で、
図2(a)と同様に基材4の両端部より狭くなっている。
【0057】
塗工液の供給を停止する前に、
図2(b)で下流側スリットダイ2Lを鉛直下方に移動させると、基材4の幅方向の中央部でも
図4(b)に示すように液溜まりが下流側に移動する。
【0058】
図2(c)でスリットダイ2の全体を鉛直上方に移動させると、基材4の幅方向の中央部でも上流スリットダイ2Uと基材4の下面とが
図4(c)に示すように接触することで、基材両端部の塗工ギャップが
図2(c)と同じになる。
【0059】
その後に制御部11が、スリットダイ2への塗工液の供給を停止すると、
図4(d)に示すように、塗工液の表面張力により基材4にはスリットダイ2の吐出口側に引き込まれる方向に力が働くことから、基材4が鉛直下方に変位する。その後、
図4(e)(f)に示すように時間の経過とともに液が切れる。
【0060】
なお、
図2(c)〜
図2(e)の期間には、上流スリットダイ2Uの一部P3が、基材4の幅方向全てで接触している。
【0061】
図2(f)から
図2(a)のように制御部11が基材両端部の上流ギャップH1と下流ギャップH2を塗工中の状態に戻すと、基材中央部の上流ギャップH1と下流ギャップH2が
図4(a)の塗工中の状態に戻る。その後は塗工と間欠を繰り返す。
【0062】
つまり、幅方向全ての塗工ギャップを強制的に一定にすることが可能になり、
図8に示すように下面塗工部Bの終端10に尾引きがない良好な電池極板を製造することができる。
【0063】
なお、実施の形態1では
図2(b)で下流側スリットダイ2Lを下降させた後に、
図2(c)でスリットダイ2の全体を上昇させて基材4を上流側スリットダイ2Uで支持するように制御部11を構成したが、
図2(a)から下流側スリットダイ2Lが下降を開始し、下流側スリットダイ2Lが下降を終了する前にスリットダイ2の全体が上昇を開始し、そして上流側スリットダイ2Uを基材4の下面に接触させて基材4を上流側スリットダイ2Uで支持し、その後にスリットダイ2への塗工液の供給を停止するように制御部11を構成しても、同様の効果を期待できる。
【0064】
(実施の形態2)
図5と
図6は実施の形態2を示す。実施の形態1とは制御部11の構成が異なる。その他は実施の形態1と同じである。
【0065】
制御部11の構成を
図5に基づいて説明する。
【0066】
図5は基材4の両端部におけるスリットダイ2の動作を示す。
【0067】
図5(a)に示すように上流ギャップH1及び下流ギャップH2は、用いられる塗工液の特性によっても異なるが、一般的には、0.01mm以上1.0mm以下程度設けられる。
【0068】
図5(a)は塗工中の状態を示している。間欠塗工をするため、スリットダイ2への塗工液の供給を停止する前に、
図5(b)に示すようにスリットダイ2の全体を制御部11が鉛直上方に移動させることで、上流側スリットダイ2Uの一部P3を基材4の下面に接触させる。
【0069】
その後、
図5(c)に示すようにスリットダイ2の一部を基材4に接触させた状態で下流側スリットダイ2Lだけを制御部11が鉛直下方に移動させることで、液溜まりが下流側に移動する。下流側スリットダイ2Lを鉛直下方に下げる量は0.01mm以上0.5mm以下程度である。
【0070】
さらにその後、制御部11がスリットダイ2への塗工液の供給を停止すると、
図5(d)に示すように、塗工液の表面張力により基材にはスリットダイの吐出口側に引き込まれる方向に力が働くことから、基材4の一部が鉛直下方に変位する。
【0071】
そして
図5(e)(f)に示すように時間の経過とともに液が切れる。その後は
図5(a)に示す上流ギャップH1と下流ギャップH2に戻し、塗工と間欠を繰り返す。
【0072】
制御部11がスリットダイ2を
図5(a)〜(f)のように運転した場合の基材4の幅方向の中央部における塗工中のスリットダイ2の動作を、
図6(a)〜(f)に示す。
【0073】
図6(a)に示すように、基材4の中央部の上流ギャップH1及び下流ギャップH2は、基材4の撓みの影響で、基材両端部より狭くなっている。しかし、
図4(b)において制御部11がスリットダイ2の全体を鉛直上方に移動させて上流側スリットダイ2Uの一部P3を基材4の下面に接触させることによって、基材4の中央部でも上流側スリットダイ2Uの一部P3が
図6(b)に示すように基材4の下面に接触する。
【0074】
図4(c)において制御部11が下流側スリットダイ2Lを鉛直下方に移動させることで、基材4の中央部でも
図6(c)に示すように液溜まりが下流側に移動して基材両端部の塗工ギャップと同じになる。
【0075】
その後、制御部11が塗工液の供給を停止すると、
図6(d)に示すように、塗工液の表面張力により基材4にはスリットダイ2の吐出口側に引き込まれる方向に力が働くことから、基材4の一部が鉛直下方に変位する。
【0076】
その後、
図6(e)(f)に示すように時間の経過とともに液が切れる。その後は
図6(a)に示す上流ギャップH1と下流ギャップH2に戻し、塗工と間欠を繰り返す。
【0077】
つまり、幅方向全ての塗工ギャップを強制的に一定にすることが可能になり、
図8(b)に示すように、尾引きがない良好な電池極板を製造することができる。
【0078】
なお、
図5(b)〜
図5(e)の期間には、上流スリットダイ2Uの一部P3が、基材4の幅方向全てで接触している。
【0079】
なお、実施の形態2では
図5(b)で基材4をスリットダイ2で支持した後に、
図5(c)で下流側スリットダイ2Lが下降動作を開始するように制御部11を構成したが、
図5(a)からスリットダイ2が上昇を開始し、上流側スリットダイ2Uが基材4に当接する前に下流側スリットダイ2Lが下降を開始し、上流側スリットダイ2Uを基材4の下面に接触させた状態でスリットダイ2への塗工液の供給を停止するように制御部11を構成しても、同様の効果を期待できる。
【0080】
− 実施例 −
実施の形態1および実施の形態2において、実施した結果を下記実施例1および2に示す。また本発明を使用しない従来技術を比較対象とする。
【0081】
本実施例を実施するにあたり、共通条件を以下に記載する。
【0082】
スリットダイ2は、ステンレス鋼材SUS430製で、上流側スリットダイ2Uの先端幅1mm、下流側スリットダイ2Lの先端幅1mm、上流側スリットダイ2Uと下流側スリットダイ2Lの間の間隙0.5mmのものを使用した。基材4は日本電解株式会社製の電解銅箔YB−10(厚み0.01mm)を幅70mmにスリットして使用した。塗工液はB型粘度計で回転速度毎分20回転の条件にて測定した粘度6000cP程度のスラリーを使用した。スラリーは兵神装備株式会社製モーノポンプにて毎分11.7gにて送液し、スリットダイ2から幅45mmにて吐出して塗膜形成を行った。基材搬送速度は毎分1mで、張力は15Nで、1000m塗工した。下流側スリットダイ2Lを鉛直下方に下げる量は、0.05mmに設定した。
【0083】
また尾引きの良否判断は、尾引き長さY=1.5mmを超えるものを不良と定義した。以下に、本発明における実施形態の中のごく一部であるが、本発明における実施例を記載する。
【0084】
(実施例1)
実施の形態1において、塗工開始前における基材中央部の上流ギャップH1=0.24mm、下流ギャップH2=0.3mmに設定した。この時の基材両端部は、上流ギャップH1=0.34mm、下流ギャップH2=0.4mmであり、基材4は撓みの影響で中央部と両端部で0.1mmの差がある。結果を表1に示す。
【0085】
表1に示すように、従来技術では尾引き不良率1.5%に対して、実施の形態1では尾引き不良率0%であった。
【0086】
このように、幅方向全ての塗工ギャップを強制的に一定にすることで、両端部と中央部で基材の撓みの差が0.1mmあっても尾引きが無い良好な電池極板を製造することができることを確認した。
【0087】
【表1】
(実施例2)
実施の形態2で、塗工開始前における基材中央部の上流ギャップH1=0.2mm、下流ギャップH2=0.26mmに設定した。この時の基材両端部は、上流ギャップH1=0.28mm、下流ギャップH2=0.34mmであり、基材は撓みの影響で中央部と両端部で0.08mmの差がある。結果を表2に示す。表2に示すように、従来技術では尾引き不良率1.5%に対して、本発明では尾引き不良率0%であった。このように、幅方向全ての塗工ギャップを強制的に一定にすることで、両端部と中央部で基材の撓みの差が0.08mmあっても尾引きが無い良好な電池極板を製造することができることを確認した。