(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ベースマットは、複数の軟性シートが積層されてなるものであり、少なくとも一の軟性シートが、遮光性を有する防草シートであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の保護マット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、送電線の鉄塔、リフトやロープウエイ等の塔、電柱などは、山の斜面にも建設されている。こうした鉄塔等の足下の場所(以下、建設場所という)は、建設の際に樹木が伐採されて、地表面が露出することから、上述した雨水による浸食や土砂崩落を防止することが求められている。そのため、鉄塔等の建設場所に、その地表面を覆うように合成樹脂製シートを敷設したり、該地表面にネットを敷設して植栽すること等が行われていた。しかしながら、前記鉄塔等の建設場所に合成樹脂製シートを敷設した場合には、該合成樹脂製シートが高い遮水性を有しているため、雨水がシート上を勢いよく流下して、該シートの下方へ雨水が勢いよく流れ出してしまうために、該下方で浸食や土砂崩壊などを誘発する虞があった。特に、大雨の場合には、多量の雨水が強い勢いで下方へ流れ出てしまうため、該下方で浸食や土砂崩壊の発生が一層懸念されていた。
【0006】
一方、上記した鉄塔などは、人間がほとんど侵入しない山奥にも設置される。こうした山奥では、植栽された草木が鹿などの野生動物に食べられてしまうことも多い。そのため、上記した鉄塔等の建設場所にネットの敷設と植栽とを行った場合に、植栽された草木が食べられてしまうと、該ネットの網目から地盤にしみ込んだ雨水によって土砂崩壊や浸食が生じてしまう虞があった。
【0007】
本発明は、山の斜面に建設された鉄塔等の建設場所に敷設することで、該建設場所での雨水による土砂崩壊や浸食を抑制し得ると共に、該建設場所の下方で、該建設場所から流れた雨水によって土砂崩壊や浸食が発生することも抑制し得る保護マットを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、地表面を覆うように敷設される保護マットであって、吸湿性を有する軟性シートからなるベースマットと、該ベースマットの上面に所定間隔をおいて複数並設され、該ベースマットの上面から突出された長尺状の隆起部と、隣合う隆起部間に設けられ、該隆起部の長手方向に沿って導水可能な複数の導水路とを備え、前記隆起部が、吸湿性を有する軟性シートから形成され、内部に密閉状の空隙を有する長尺状の包袋部と、該包袋部の空隙内に配設された、可撓性を有する長尺状の芯材とから構成されてなるものであることを特徴とする保護マットである。
【0009】
かかる構成にあっては、導水路の方向が斜面の上下方向に対して所定の角度を付けた方向となるように、該斜面に敷設することにより、該斜面に沿って下方へ流れようとする雨水が隆起部に衝突して、該雨水の下方へ流れる勢いを抑制できると共に、該雨水を導水路に沿って導水できる。これにより、敷設された保護マットの下方へ、雨水が勢いよく流れてしまうことを抑制でき、該雨水によって該下方で浸食や土砂崩壊が発生することを可及的に抑制できる。ここで、導水路の方向は、保護マットを敷設する角度に従って定まることから、該保護マットを敷設する場所および周囲の環境などに応じて、所望の方向に適宜定めることが可能である。尚、導水路の方向としては、侵食や土砂崩壊の発生し難い場所に向かう方向とすることが好適であり、これによって、保護マットから流出した雨水により浸食や土砂崩壊が発生することを一層抑制できる。
【0010】
また、本構成は、ベースマットと隆起部の包袋部とによって雨水を吸い込むことができるため、敷設された地盤に該雨水がしみ込むことを抑制できると共に、上記した合成樹脂製シート(ブルーシート)に比して、該雨水の流下する勢いを抑え得る。さらに、降雨の際には、前記のように雨水を吸い込むことで全体の重量が増加するため、敷設された位置で保持され易く、該敷設された状態で上述の作用効果を安定して発揮できる。
【0011】
したがって、本発明の保護マットを、山の斜面に建設された鉄塔等の建設場所に敷設することによって、該建設場所で雨水による浸食や土砂崩壊を安定して抑制できると共に、該建設場所から流出した雨水により該建設場所の下方で浸食や土砂崩壊が発生することも、可及的に抑制できる。また、本発明の保護マットは、ベースマットと包袋部とが軟性シートからなり、さらに芯材が可撓性を有していることから、地表面に合わせて敷設できる。
【0012】
本発明の保護マットにあって、ベースマットの上面に、吸湿性を有する軟性シートからなる上側マットが、重ね合わされて接合され、該上側マットに所定間隔をおいて上方へ突成された複数の畝部と、該ベースマットの上面とによって、各隆起部の包袋部が構成されてなるものが提案される。ここで、ベースマットと上側マットとの接合には、縫合や接着などを適用できる。また、包袋部を構成する軟性シートには、ベースマットと同様の吸水性を有するシートを用いることが可能である。
【0013】
かかる構成にあっては、ベースマットと上側マットとの二重構造であることから、強度が高く、破損し難くなるため、耐久性が向上する。これにより、敷設された状態で、上述した本発明の作用効果を長期に亘って安定して発揮できる。さらに、本構成は、ベースマットと上側マットとの接合により複数の包袋部を形成するものであるから、製造にかかるコストと時間とを低減でき、効率的に製造できるという利点もある。
【0014】
本発明の保護マットにあって、ベースマットの外周縁に、上側マットが重ね合わされていない重ね代部を備えた構成が提案される。
【0015】
本構成の保護マットを複数敷設する際に、隣合う保護マット同士を、夫々の重ね代部が重なるようにして配置することで、両者を隙間無く配置し易い。そして、夫々の重ね代部を重ねて配置した状態で、この重ね代部に所定の鉄ピンを打ち込むことによって、隣合う保護マット同士を結合でき且つ地表面に固定できる。また、隣合う保護マットの各重ね代部が重ねられた部位は、導水路の底部(ベースマットと上側マットとの二層からなる部位)に比して著しく肉厚化しない。これにより、複数の保護マット1を、夫々の導水路が連通するように敷設した場合に、各導水路の底面が比較的滑らかに連なる。そのため、これら連通する複数の導水路に沿って、雨水が流れ易い。
【0016】
本発明の保護マットにあって、ベースマットの軟性シートが、遮光性を有する防草シートである構成が提案される。ここで、防草シートは、その遮光性により、光や紫外線を遮ることにより、草木の光合成を抑えて生長を妨げることができるものである。こうした防草シートは、遮光率(JIS L 1055)が98%以上のものが好適であり、さらには該遮光率が99%以上ものが好ましい。
【0017】
かかる構成にあっては、敷設した場所で草木の生長を防止できることから、生長する草木によって破損が生ずることを可及的に抑制できる。
ここで、草木は、コンクリートを突き破るような極めて強い力で生長する場合もあることから、防草シートを備えない構成では、生長する草木によって破損してしまうことがあり得る。そして、こうした破損を生ずると、敷設した位置の地盤に雨水等がしみ込み、該敷設した場所(前記建設場所)を浸食してしまう虞がある。さらに、敷設する場所が山等の場合には、生長した草木を食するために鹿などの獣が該敷設場所を踏み荒らして、破損が一層大きくなったり、該敷設場所の地盤を痛めてしまう虞がある。そして、こうした獣害によって、敷設場所で雨水等による浸食や土砂崩壊が生じてしまうことが懸念される。
本構成は、ベースマットを構成する防草シートにより、敷設場所下での草木の生長を抑えることができるから、前記した草木による破損を防止すると共に、該草木を食する獣の進入を防ぎ得ることで該獣による破損等を可及的に抑制できる。そのため、比較的長期に亘って、浸食と土砂崩壊とを抑制し且つ所望の方向に導水するという上述した本発明の作用効果が安定して発揮でき得る。
【0018】
本発明の保護マットにあって、ベースマットは、複数の軟性シートが積層されてなるものであり、少なくとも一の軟性シートが、遮光性を有する防草シートである構成が提案される。
【0019】
ここで、防草シートは、上述したように、光や紫外線を遮ることで草木の光合成を抑えて生長を妨げるものであり、遮光率(JIS L 1055)が98%以上のものが好適である。さらには、この遮光率が99%以上の防草シートが好ましい。
また、ベースマットは、全ての軟性シートが吸水性を有するものであっても良いし、吸水性を有する軟性シートと吸水性を有しない軟性シートとを備えたものであっても良い。すなわち、本構成のベースマットは、吸水性を有する軟性シートを含む複数の軟性シートが積層されてなるものと換言できる。
【0020】
かかる構成にあっては、ベースマットを構成する防草シートによって、敷設した場所での草木の生長を防止できることから、上述の構成と同様に、該草木による破損を防止すると共に、該草木を食する獣の進入による破損等を可及的に抑制できる。これにより、前記破損箇所から地盤にしみ込む雨水等による浸食や土砂崩壊などを防止でき、比較的長期に亘って、浸食と土砂崩壊とを抑制し且つ所望の方向に導水するという上述した本発明の作用効果が安定して発揮でき得る。
【0021】
本発明の保護マットにあって、ベースマットは、複数の軟性シートが重ね合わされて縫合されてなるものであって、少なくとも一の軟性シートが遮光性を有する防草シートであり、前記ベースマットの上面に重ね合わされた上側マットが、前記軟性シートの縫い目と互いの縫い目が重ならないように、該ベースマットに縫合されてなるものである構成が提案される。
【0022】
ここで、防草シートは、上述したように、光や紫外線を遮ることで草木の光合成を抑えて生長を妨げるものであり、遮光率(JIS L 1055)が98%以上のものが好適である。さらには、この遮光率が99%以上の防草シートが好ましい。
また、ベースマットは、全ての軟性シートが吸水性を有するものであっても良いし、吸水性を有する軟性シートと吸水性を有しない軟性シートとを備えたものであっても良い。
【0023】
かかる構成によれば、敷設した場所での草木の生長を防止できることから、上述の構成と同様に、該草木による破損を防止すると共に、該草木を食する獣の進入による破損等を可及的に抑制できる。これにより、比較的長期に亘って、浸食と土砂崩壊とを抑制し且つ所望の方向に導水するという上述した本発明の作用効果が安定して発揮でき得る。
また、本構成は、ベースマットを構成する複数の軟性シートを縫合した縫い目と、該ベースマット上に上側マットを縫合した縫い目とが重ならないようにしたものであるから、該縫い目から破損を生じてしまうことを抑制できる。さらに、前記した互いの縫い目が重ならないことから、各縫い目を可及的に小さくすることができ、該縫い目によって防草シートの遮光性が低減してしまうことを可及的に抑制できる。これにより、防草シートの縫い目から草木が生長することを抑制でき、前記した破損を防止又は抑制するという本構成の作用効果が適正に発揮され得る。
【0024】
本発明の保護マットにあって、ベースマットは、ポリエステル繊維製の不織布からなる軟性シートを含むものである構成が提案される。
【0025】
かかる構成の不織布は、耐久性と耐候性とに優れることから、本構成の保護マットも高い耐久性と耐候性とを発揮できる。そのため、敷設後は、上述した本発明の作用効果を長期に亘って安定して発揮できる。また、かかる構成は、軽量となることから、山奥の敷設場所まで作業者が運搬する際に、該運搬に要する負担を軽減することができる。
【0026】
尚、ベースマットが一の軟性シートからなるものである場合には、該軟性シートがポリエステル繊維製の不織布からものであり、一方、該ベースマットが複数の軟性シートからなるものである場合には、少なくとも一の軟性シートがポリエステル繊維製の不織布からなるものである。そして、後者の場合にあって、少なくとも一の軟性シートが防草シートである構成では、該防草シートがポリエステル繊維製の不織布であるものが好適である。こうしたポリエステル繊維性の不織布としては、長繊維不織布と短繊維不織布とのいずれであっても良い。
【発明の効果】
【0027】
本発明の保護マットは、敷設された場所で、地盤に雨水がしみ込むことを抑制でき、浸食と土砂崩壊とを可及的に抑制できると共に、下方へ雨水が勢いよく流れてしまうことを抑制できるため、該下方での浸食や土砂崩壊をも抑制できる。こうした保護マットを、山の斜面に建設された鉄塔の建設場所に敷設することにより、該建設場所および該建設場所よりも下側の場所での浸食や土砂崩壊の発生を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明にかかる実施例を添付図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0030】
図1〜4に、実施例1の保護マット1を示す。本実施例の保護マット1は、ベースマット2と上側マット3とを重ね合わせて接合してなるものであり、該ベースマット2上に、複数の隆起部4が所定間隔wをおいて形成されている。本実施例の保護マット1は、後述するように、主に山の斜面に敷設されて(
図5参照)、雨水の地盤へのしみ込みを抑制することで、浸食や土砂崩壊などの発生を抑制し得るものである。
【0031】
本実施例の保護マット1は、
図1〜3に示すように、略矩形状をなし、その一側縁と略平行な一方向に沿って各隆起部4が夫々形成されてなる。尚、本実施例では、ベースマット2に対して、隆起部4を設けた側を上側とし、逆側を下側として、上下方向を規定している。また、隆起部4の長手方向(前記一方向)を前後方向として規定している。
【0032】
本実施例にあって、ベースマット2と上側マット3とは、ポリエステル長繊維をスパンボンド製法により成形した不織布からなる。そのため、両者ともに、軽量であり、優れた機械的強度(引張強度)や耐候性を有すると共に優れた吸湿性も有する。さらに、柔軟であり、敷設する地表面に倣うように変形させ易い。尚、本実施例のベースマット2と上側マット3とは、同一規格の前記不織布からなるものであり、該不織布が本発明の軟性シートに相当する。
【0033】
ベースマット2と上側マット3とは、
図4に示すように、互いにサイズの異なる略矩形状の上記不織布からなる。上側マット3は、上方へ波形状に湾曲させて突出させた畝部32を、所定間隔w(
図2参照)をおいて複数形成した状態で、ベースマット2の上面に重ね合わされて縫合されて一体化されている。各畝部32は、上側マット3の前後方向に亘って長尺状に形成されている。こうした上側マット3は、ベースマット2の外周縁と所定幅で重ならないようにして、該ベースマット2上に重ね合わされる。そして、上側マット3の外周を周回するように、ベースマット2に縫い合わされると共に、各畝部32の両側縁もベースマット2に縫い合わされる。これにより、各畝部32を囲繞するように縫い合わされ、各畝部32と、ベースマット2の、該畝部32の直下に位置する非接上面部22とによって、密閉状の空隙が前後方向に沿って長尺状に形成される。ここで、畝部32と前記非接上面部22とにより、本発明にかかる包袋部11が構成されてなる(
図2参照)。
【0034】
ここで、上側マット3は、ベースマット2に縫合された状態で、隣合う畝部32間の中平坦部33と、両側に位置する畝部32,32の外側にある側平坦部34,34とが、該ベースマット2の上面に積み重ねられる。ベースマット2にあって、上側マット3の各中平坦部33と夫々重なる部位が、中上面部23であり、各側平坦部34と夫々重なる部位が、側上面部24である。そして、
図2に示すように、保護マット1にあって、中平坦部33と中上面部23とにより二層構造をなす部位が、後述する導水路6の路底部13であり、側平坦部34と側上面部24とにより二層構造をなす部位が、側底部14である。
【0035】
さらに、ベースマット2の外周縁には、上述したように、上側マット3を重ね合わせていない部位が、所定幅で設けられており、当該部位により、本発明の重ね代部21が構成されている。この重ね代部21は、ベースマット2のみで構成されていることから、該ベースマット2と上側マット3との二層構造をなす上記の路底部13および側底部14に比して、半分の厚みとなる。
【0036】
一方、上記した各包袋部11の空隙内には、
図2に示すように、該包袋部11と略同じ長さの芯材9が夫々収容されて配設される。本実施例の芯材9は、断面円形の丸棒状に形成された発泡ウレタンフォームからなるものであり(
図4参照)、可撓性を有する硬質性スポンジ部材である。この芯材9が前記空隙内に配設されることで、包袋部11とその内部の芯材9とよりベースマット2上に突出した上記の隆起部4が形作られる。ここで、包袋部11の畝部32は上記の不織布であることから、芯材9が隆起部4の骨格を成している。
【0037】
こうした保護マット1には、
図1〜3に示すように、隣合う隆起部4間に、溝状の導水路6が夫々設けられている。各導水路6は、隣合う二個の隆起部4,4と、当該隆起部4,4間の路底部13とにより構成される。
図2に示すように、本実施例の導水路6は、その幅が、上記した隆起部4の間隔wに相当し、その深さが、隆起部4の高さtに相当する。尚、本実施例にあって、各隆起部4は、その長手方向がベースマット2の互いに対向する二辺と略平行となるように設けられてなり、各導水路6も、該二辺と略平行に設けられてなる。
【0038】
本実施例の保護マット1は、後述するように、山の斜面に敷設されて、該斜面に沿って流下する雨水の勢いを、各隆起部4で弱め、さらに、雨水を導水路6の前後方向へ向けて導水させるようにするものである(
図5,6参照)。本実施例では、かかる作用効果が十分に発揮されるように、隆起部4の高さ(導水路6の深さ)t、隆起部4の間隔(導水路6の幅)w、隆起部4の単位面積当りの配設個数などを設定する。ここで、隆起部4の高さtは、雨水の勢いを止める効果に大きく寄与し、隆起部4の間隔wは、雨水の導水効果に大きく寄与し、隆起部4の配設個数は、雨水の勢いを止める効果と導水効果との両者に寄与する。
【0039】
具体的には、隆起部4の高さtを、3cm〜10cmとし、隆起部4の間隔wを、6cm〜25cmとし、隆起部4の配設個数を、単位面積当り(1m
2当り)で3個〜8個とするように設定している。詳述すると、隆起部4の高さtは、前記範囲よりも小さければ、雨水の勢いを止める効果が小さく、また、前記範囲より大きくしても、雨水の勢いを止める効果に著しい差が生じ難いため、製造のし易さやコスト低減等を考慮して、前記範囲に設定することが好適である。また、隆起部4の間隔wは、前記範囲より広くすると、導水する効果が小さく、また、前記範囲より狭くすると、導水する効果が小さくなることに加えて、雨水が隆起部4を乗り越え易くなってしまう。そのため、前記範囲に設定することが好適である。また、隆起部4の配設個数は、前記範囲よりも少なくすると、相対的に導水路6の幅が広くなるため、導水路6により導水させる効果が小さくなる一方、前記範囲よりも多くすると、相対的に導水路6の幅が狭くなるため、雨水が隆起部4を乗り越え易くなって、導水する効果が小さくなる。そのため、前記範囲に設定することが好適である。これら隆起部4の高さt、間隔w、配設個数の各設定値は、敷設される斜面の勾配などに応じて適宜設定可能であるが、前記範囲内で設定することにより、様々な斜面で上記作用効果を発揮し得る。
【0040】
尚、上記した隆起部4の高さt、間隔w、配設個数は、上記のように具体的数値で設定する以外にも、該高さtと間隔wとの相対的な関係によって設定することも可能である。これは、隆起部4の間隔wが、上述したように、雨水の勢いを止める効果と導水効果との両方に寄与すること、および該間隔wより、隆起部4の単位面積当りの配設個数が定まることに因る。具体的には、隆起部4の間隔wを高さtの1.5倍〜6倍の範囲とすることが好適であり、さらには、間隔wを高さtの1.8倍〜2.5倍の範囲とすることが好適である。かかる範囲で間隔wと高さtとを設定することにより、上記した作用効果が十分に発揮され得る。
【0041】
次に、上述した本実施例1の保護マット1を敷設する態様について、説明する。
本実施例1の保護マット1は、一辺の長さが約1mである略正方形状をなし、五個の隆起部4が形成されてなる。そして、隆起部4の高さ(導水路6の深さ)tが約5cm、該隆起部4の間隔(導水路6の幅)wが約12cmとなっている。
【0042】
山の斜面で、送電線の鉄塔などが建設された建設場所に、
図5に示すように、複数の保護マット1が敷設される。この建設場所は、上述したように、樹木が伐採されて地表面Gが露出することから、該地表面Gを覆うように、複数の保護マット1が敷き詰められる。各保護マット1は、導水路6(隆起部4の前後方向)が水平方向に対して所定角度で傾斜するように、縦横に並んで敷設される。そして、縦横に隣合う保護マット1同士は、互いの重ね代部21が重なり合うように敷設され、地表面Gを隙間無く覆う。そして、各保護マット1を、隣合う保護マット1同士で重ね合わせた重ね代部21に所定の鉄ピン(図示せず)を打設することで、斜面に固定する。尚、本実施例のベースマット2は、不織布の軟性シートからなるものであり、シート表面が比較的粗いことから、地表面G上で滑り難く、所望の位置に配置し易い。
【0043】
ここで、保護マット1は、上述したように柔軟な不織布からなるベースマット2および上側マット3と、可撓性を有する発泡ウレタンフォームからなる芯材9とから構成されたものであるから、斜面の形状に倣うようにして敷設できる。また、隣合う保護マット1同士で重ねられた夫々の重ね代部21は、上述したように、側底部14の略半分の厚みであることから、重ね合わせることで、側底部14と略同じ厚みとなる。そのため、前後方向に並べた保護マット1では、前後方向に連続した導水路6,6の底面が滑らかに連なる。これにより、連続する導水路6に沿って雨水が流れ易い。同様に、導水路6と平行に並べた保護マット1,1では、互いの側底部14,14とその間で重なった重ね代部21とによって一の導水路6’を形成でき、この導水路6’も各保護マット1の導水路6と略同じ深さをなすと共に、該導水路6’の底面も比較的滑らかに形成される。そのため、こうした導水路6’にあっても、保護マット1の導水路6と同様の導水効果を生じさせ得る。
【0044】
さらに、上記した保護マット1の導水路6を傾斜させる角度は、該導水路6を導水させようとする方向に応じて適宜定められる。すなわち、導水路6を流れた雨水によって、その流れた先で浸食や土砂崩壊が発生しない又は発生し難いように、前記角度を設定する。また、この角度を急角度とすると、導水路6が斜面の勾配に近づくことから、該導水路6を流れる雨水の勢いが強くなるため、水平方向に近い角度とすることが好適である。具体的には、浸食等の発生を抑制できる場所に向けて、前記角度を5度〜30度の範囲で設定することが好ましい。
【0045】
このように複数の保護マット1が敷設された状態で雨が降ると、
図6に示すように、斜面に沿って下方へ流れる雨水が、各保護マット1で間隔をおいて並ぶ複数の隆起部4に衝突し、雨水の下方へ流れようとする勢いを徐々に弱めることができる。そして、隆起部4に衝突した雨水の一部が、該隆起部4を乗り越えられず、導水路6に沿って流れる。これにより、雨水が、保護マット1を敷設した場所(前記建設場所)の下方へ斜面に沿って勢いよく流れてしまうことを抑制でき、該下方に流れた雨水によって浸食や土砂崩壊が生ずることを可及的に抑制できる。さらに、雨水を、保護マット1の導水路6に沿って流すことができるから、斜面に沿って前記建設場所の下方へ流れる雨水の量を低減できるため、該建設場所の下方に流れた雨水によって浸食や土砂崩壊が生ずることを抑制するという前記効果が一層向上する。特に、大雨の場合には、斜面に沿って流れる水量が著しく多くなることもあり、隆起部4のみで流れの勢いを止めるには限界があるものの、導水路6により雨水を導水させることによって、降水量が多くとも、前記した下方へ流れた雨水によって浸食等の発生を抑制する効果が十分かつ安定して発揮でき得る。また、導水路6の方向(前後方向)を、上記のように浸食等の発生を抑制できる場所に向けることで、該場所へ雨水を誘導できるため、前記した浸食等の発生を抑制する効果がさらに向上する。尚、本実施例にあっては、上述したように隆起部4の高さt、間隔w、および単位面積当りの配設個数が設定されていることから、前記した雨水の勢いを抑える効果と、該雨水を導水路6に沿って流す効果とが確実かつ安定して発揮され得る。
【0046】
また、保護マット1は、不織布からベースマット2と上側マット3とにより構成されていることから、雨水を吸い込むことができるため、敷設した場所の地盤に該雨水がしみ込むことを抑制できる。そして、吸い込んだ雨水によって重量が増加することから、降雨の際に斜面を流れる雨水よって、敷設された位置から動いてしまうことを防止でき、該位置で安定して保持できる。さらに、ベースマット2を構成する軟性シートは、前記のように表面が比較的粗いことから、降雨の際にも滑り難いため、一層安定して保持され得る。
【0047】
上述したように本実施例1の保護マット1によれば、山の斜面等に敷設することで、該斜面に沿って流れる雨水が地盤にしみ込むことを抑制でき、敷設した場所(前記建設場所)で浸食や土砂崩壊が生ずることを抑制できる。さらに、保護マット1の敷設場所の下方へ雨水が勢いよく流れてしまうことを抑制できるため、該下方で、該敷設場所から流れた雨水により浸食や土砂崩壊が生ずることも可及的に抑制できる。そして、導水路6に沿って雨水を流すことができるため、該導水路6を、雨水による浸食等の発生が生じ難い場所に向けて配することで、浸食や土砂崩壊の発生を抑制する効果が一層安定して生ずる。このように本実施例の保護マット1を敷設した場合には、敷設した場所での浸食等を抑制できるだけでなく、該保護マット1の敷設によって浸食等が敷設場所の下方で発生することも抑制できる。したがって、上述した送電線の鉄塔の建設場所に敷設することにより、該鉄塔の足下および該足下よりも下方の場所で浸食や土砂崩壊が発生することを抑制できる。かかる作用効果は、豪雨等の雨量が多い場合にあっても、十分に発揮され得る。
【0048】
さらに、保護マット1は、ポリエステル長繊維製の不織布と発泡ウレタンフォームとからなるものであるから、耐水、耐候、耐腐食、耐熱性などに優れる。そのため、敷設後は、上述した本発明の作用効果を長期に亘って維持できる。そして、メンテナンスや交換を要しない期間を比較的長く設定できるため、これらに要するコストを著しく低減できる。
【0049】
また、本実施例1の保護マット1は、上述したように不織布と発泡ウレタンフォームとからなるものであるから、極めて軽量である。そのため、送電線の鉄塔が建設さらる山奥等のように、作業者が運搬しなければならない場所であっても、該運搬による作業者の負担を軽減できる。さらに、敷設する作業も比較的容易に行うことができ得る。
【実施例2】
【0050】
実施例2の保護マット1は、ベースマット2が、遮光性を有する防草シートのみからなるものである。ベースマット2を構成する防草シートは、ポリエステル短繊維製の短繊維不織布からなり、高い遮光性に加えて、優れた機械的強度(引張強度)や耐候性を有する。さらに、軽量かつ柔軟であり、優れた吸湿性も有する。こうしたベースマット2を備えた保護マット1は、上述した実施例1と同様に、敷設する場所の地表面に倣うように変形させ易い。
【0051】
ここで、本実施例2にあって、ベースマット2を構成する防草シートは、上記の短繊維不織布からなるフェルト状の比較的厚いものであり、遮光率(JIS L 1055)が99%以上のものである。ベースマット2が高い遮光性を有する防草シートであることから、本実施例の保護マット1を敷設した場所では、光や紫外線を遮ることができ、草木の光合成を抑制できる。尚、本実施例2のベースマット2は、上述した実施例1のベースマット(不織布)2に比して、高い遮光率を有する高密度のものであるが、短繊維不織布であることから、吸水性も有する。そして、吸水できない分を透水する透水性も有している。
【0052】
尚、本実施例2にあっては、ベースマット2が上記した防草シートからなること以外は上述の実施例1と同じであることから、同じ構成要素には同じ符号を記し、その説明を適宜省略する。
【0053】
本実施例2の保護マット1は、上述した実施例1と同様に敷設することができる(
図5参照)。具体的には、山の斜面で、送電線の鉄塔などが建設された建設場所に、複数敷設される。ここで、複数の保護マット1は、導水路6が水平方向に対して所定角度で傾斜するように縦横に並んで敷設されて、前記建設場所の地表面Gを隙間無く覆う。そして、実施例2の保護マット1は、ベースマット2が柔軟性を有していることから、上述した実施例1と同様に、斜面の形状に倣うように敷設できる。また、保護マット1のベースマット2が、フェルト状の防草シートからなるものであるため、地面に敷設した際にズレ難く、所望位置に配置し易い。さらに、降雨の際に地面が滑り易くなっても、敷設した位置に比較的安定して保持され得る。
【0054】
こうして本実施例2の保護マット1が敷設された状態で雨が降ると、上述した実施例1と同様に、斜面に沿って下方へ流れる雨水の勢いを徐々に弱めることができると共に、導水路6に沿って流すことができる。そのため、雨水が建設場所の下方へ斜面に沿って勢いよく流れてしまうことを抑制でき、該下方に流れた雨水によって浸食や土砂崩壊が生ずることを可及的に抑制できる。さらに、導水路6の方向(前後方向)を、浸食等の発生を抑制できる場所に向けることにより、該場所に雨水を誘導できるため、前記した浸食等の発生を抑制する効果がさらに向上する。このように本実施例2の構成にあっても、上述した実施例1と同様の作用効果を奏し得る。
【0055】
さらに、本実施例2の構成は、ベースマット2が防草シートであるから、該ベースマット2により覆われた地面における草木の生長を防止でき、該生長する草木によって当該保護マット1が破損してしまうことを可及的に抑制できる。
詳述すると、保護マット1は、上側マット3およびベースマット2が不織布であることから、降雨の際に雨水が地面にある程度しみ込むと共に、敷設した場所よりも上方から雨水がしみ込む。そのため、保護マット1で覆った地面に光や紫外線が届くと、光合成を行うことができるため、草木が生長して、該保護マット1に破損を生ずる虞がある。そして、仮に破損すると、該破損箇所より多くの雨水が地盤にしみ込み易くなり、敷設した場所が浸食される虞もある。さらに、保護マット上に草木が生長してしまうと、該草木を食するために鹿などの獣が進入して、該獣によって保護マット1が踏み荒らされて、該保護マット1の破損が一層大きくなると共に、敷設した場所(前記建設場所)の地盤が痛む。保護マット1の破損が大きくなると、草木が一層生長し易くなるため、さらに鹿などが進入する傾向が強くなる。これにより、保護マットの交換サイクルが短くなって、該交換の費用と労力とが増大するという問題を生ずる。さらにまた、前記のように地盤が痛むと、雨水によって浸食や土砂崩壊も生じ易くなることが懸念される。
かかる問題に対して、本実施例2の保護マット1は、透光率が99%以上の防草シートによりベースマット2を構成していることから、光や紫外線を遮ることができ、当該保護マット1で覆った地面における草木の生長を抑えることができる。これにより、草木が保護マット1を破損することを防止でき、かつ該保護マット上に草木が生長することも防止できる。そのため、鹿等の獣が保護マット1上に進入することを抑制でき、該獣による破損等の発生を可及的に抑制できる。
尚、保護マット1は、縦横に隣合うもの同士の重ね代部21を重ね合わせて所定の鉄ピンを打設することで斜面に固定するものであるから、ベースマット2を重ねた部位に該鉄ピンが打設される。これにより、鉄ピンの打設(地面への固定手段)による遮光性の低減を、ベースマット2を二重にすることで可及的に抑制できるため、所望の防草効果を安定して発揮できる。
【0056】
このように本実施例2の構成は、ベースマット2が防草シートであることから、敷設した場所(建設場所)での草木の生長を抑制でき、該草木の生長による破損と該草木を食する獣による破損とを防止できる。そのため、破損の発生による浸食や土砂崩壊を抑制できると共に、導水路6により所望の方向に導水するという効果が安定して発揮され得る。したがって、本実施例2の保護マット1によれば、上述した実施例1と同様の作用効果を奏し得ることに加え、該作用効果を比較的長期に亘って安定して保つがことができる。
【実施例3】
【0057】
実施例3の保護マット1は、
図7に示すように、ベースマット2が、遮光性を有する防草シート2aと、該防草シート2aと異なる軟性シート2bとを重ね合わせた二層構造からなるものである。本実施例3のベースマット2は、矩形状の軟性シート2bの下面に、該軟性シート2bと同じ矩形状の防草シート2aを重ね合わせてなるものである。そして、軟性シート2bは、上述した実施例1と同じポリエステル長繊維製の不織布からなり、防草シート2aは、上述した実施例2と同じポリエステル短繊維製の短繊維不織布からなる。すなわち、防草シート2aは、遮光率(JIS L 1055)が99%以上である高い遮光性を有する。これに対して、軟性シート2bは、該遮光率が95%未満であり、防草シート2aに比して遮光性が低い。そのため、当該軟性シート2bのみでは、光や紫外線を十分に遮ることができず、草木の生長を抑えることが難しい。尚、遮光性の他の機能については、上述した実施例1,2に記載したため省略する。
【0058】
本実施例3のベースマット2は、軟性シート2bの下面に防草シート2aを重ね合わせて、両者を縫合することにより一体化されてなる。ここで、軟性シート2bと防草シート2aとの縫合は、外周縁に沿って行われ、
図8(B)に示すように、縫い目41が外周端部に矩形状に形成される。こうして形成されたベースマット2の上面に、上述した実施例1と同様に上側マット3が縫合されることにより、本実施例3の保護マット1が形成される(
図3参照)。ここで、上側マット3は、ベースマット2の外周縁と所定幅で重ならないようにして、該ベースマット2上に重ねられて縫合される。そのため、
図8(A)に示すように、上側マット3とベースマット2とを縫合した縫い目42は、前記した軟性シート2bと防草シート2aとの縫い目41と重ならない。尚、当然ながら、上側マット3の各畝部32とベースマット2の各非接上面部22とにより構成される各包袋部11には、芯材9が夫々収容される(
図4参照)。
【0059】
このように本実施例3の構成は、ベースマット2が防草シート2aと軟性シート2bとを重ね合わせた構造とし、さらに、該防草シート2aと軟性シート2bとの縫い目41が、該ベースマット2と上側マット3との縫い目42に重ならないようにしたものである。こうした構成以外については、上述した実施例1と同じであることから、同じ構成要素には同じ符号を記し、その詳細を適宜省略した。
【0060】
本実施例3の保護マット1は、上述した実施例1,2と同様に敷設することができる(
図5参照)。ここで、保護マット1は、地表面Gと接触するベースマット2の下面が、フェルト状の防草シート2aにより構成されていることから、実施例2と同様に、敷設した際にズレ難くいために所望の位置に配置し易く、さらに、降雨の際にも敷設位置に比較的安定して保持され得る。そして、前記のように敷設された状態で雨が降ると、上述した実施例1と同様に、斜面に沿って流れる雨水の勢いを弱めると共に導水路6に沿って所望の方向へ流すことができるため、敷設した場所(前記建設場所)の下方で浸食や土砂崩壊が生ずることを可及的に抑制できる。このように本実施例3の構成にあっても、実施例1と同様の作用効果を奏し得る。
さらに、実施例3の構成は、ベースマット2が防草シート2aを備えてなるものであるから、上述した実施例2と同様に、敷設した場所で草木の生長を防止できる。これにより、草木の生長による保護マット1の破損を防止できると共に、生長した草木を食する獣による該保護マット1の破損等を可及的に抑制できる。
【0061】
また、本実施例3の構成にあっては、ベースマット2を構成する防草シート2aと軟性シート2bとを縫合した縫い目41が、該ベースマット2と上側マット3との縫い目42に重ならないものであるから、これら縫い目41,42からの破損を可及的に抑制することができる。さらに、複数の縫い目が重なることで該縫い目が大きくなってしまうことを防止して、ベースマット2に生ずる各縫い目41,42を可及的に小さくできるため、該縫い目41,42からの光や紫外線の進入を抑制でき、該縫い目41,42による防草シート2aの遮光性低減を可及的に抑制できる。加えて、本構成では、防草シート2a上に軟性シート2bが重ね合わされていることから、該軟性シート2bによって該防草シート2aの前記縫い目41,42が覆い隠されるため、前記防草シート2aの遮光性低減を抑制する効果に寄与できる。さらに、ベースマット2の縫い目41が重ね代部21にあることから、敷設された状態で、隣合う重ね代部21が重なって防草シート2aが二重になっており、各防草シート2aの縫い目41からの光や紫外線の進入を一層抑制できる。一方、縫い目42では、ベースマット2上に上側マット3が重なっているため、光や紫外線の進入が抑制される。こうしたことから、本実施例3の構成によれば、ベースマット2の縫い目41による防草シート2aの遮光性低減を可及的に抑制できるため、該縫い目41から草木が生長することを抑制でき、上記した保護マット1の破損を防止するという作用効果が適正に発揮され得る。
尚、本実施例3にあっても、上述した実施例2と同様に、所定の鉄ピンを重ね代部21に打設することで斜面に固定するものであり、該打設による遮光性の低減を抑制できる。
【0062】
このように本実施例3の構成にあっては、敷設した場所(建設場所)での草木の生長を抑制でき、該草木による破損と獣による破損とを防止できるため、該破損による浸食や土砂崩壊を抑制できると共に導水路6により所望の方向に導水するという効果が安定して発揮される。したがって、本実施例3の保護マット1によれば、上述した実施例1および実施例2と同様の作用効果が発揮され得る。
【実施例4】
【0063】
実施例4の保護マット1は、
図9に示すように、遮光性を有する防草シート2aを、該防草シート2aと異なる軟性シート2bの上面に重ね合わせた二層構造からなるものであり、該軟性シート2bと防草シート2aとが同じ矩形状をなす。ここで、本実施例の防草シート2aは、ポリエステル長繊維製の高密度長繊維不織布からなり、上述した実施例2,3の防草シートに比して、薄厚であり、かつ表面が比較的滑らかである。かかる防草シート2aは、実施例2,3と形態が異なるものの、遮光率(JIS L 1055)が99%以上であり、高い遮光性を有する。そのため、本実施例の保護マット1を敷設することにより、実施例2,3と同様に、光や紫外線を遮ることができ、草木の生長を防止できる。また、軟性シート2bは、上述した実施例3と同じものである。
尚、本実施例の防草シート2aは、軽量かつ柔軟であり、優れた機械的強度や耐候性を有しているが、実施例2,3の防草シートに比して吸水性が低い。そして、透水性を有していることから、本実施例のベースマット2では、防草シート2aを透水した雨水が軟性シート2bに吸水され得る。
【0064】
実施例4のベースマット2は、上述のように、軟性シート2bの上面に防草シート2aを重ね合わせてなる。詳述すると、防草シート2aがシート表面が比較的滑らかであることから、実施例3と同様に軟性シート2bの下面に配した場合には、地面に敷設した際に滑り易く配置し難い。さらに、降雨の際に地面が滑り易くなると、敷設した位置からズレてしまう虞もある。こうしたことから、本実施例のベースマット2は、シート表面が比較的粗い軟性シート2bを下側に配することによって、所望の位置に敷設し易く、さらに、降雨の際にも敷設位置で安定して保持され得る。
【0065】
また、本実施例の構成にあっても、上述の実施例3と同様に、軟性シート2bと防草シート2aとを外周縁に沿って縫合し、この縫い目41が、ベースマット2と上側マット3とを縫合した縫い目42に重ならないようにしたものである(
図8参照)。
【0066】
このように実施例4の構成は、高密度長繊維不織布からなる防草シート2aを軟性シート2bの上面に重ね合わせたベースマット2を備えたものであり、これ以外は上述の実施例3と同じであることから、同じ構成要素には同じ符号を記し、その詳細を適宜省略した。
【0067】
本実施例4の保護マット1は、上述した実施例1〜3と同様に敷設することができる(
図5参照)。この保護マット1は、ベースマット2が軟性シート2bと防草シート2aとを重ね合わせた構成であることから、上述した実施例3と同様に、敷設した場所(前記建設場所)での草木の生長を抑制でき、該草木による破損や獣による破損とを防止できるため、該破損による浸食や土砂崩壊を抑制できると共に導水路6により所望の方向に導水するという効果が安定して発揮される。したがって、本実施例4の構成にあっても、上述した実施例2,3と同様の作用効果を奏し得る。
【0068】
本発明にあっては、上述した実施例1〜4に限定されるものではなく、上述の実施例以外の構成についても本発明の趣旨の範囲内で適宜変更して実施可能である。
上述した本実施例1〜4では、保護マット1を、導水路6を水平方向に対して5度〜30度の範囲となるように敷設したが、この角度に必ずしも限定されず、該導水路6によって雨水を所望の方向へ流すことができるように、該角度を適宜設定できる。例えば、水平方向に対して45度としたり、60度としても良い。また、斜面に沿って流れる雨水の勢いを弱める効果を最大限に発揮できるように、隆起部4を略水平方向に沿うように配設することも可能である。
【0069】
また、上述した実施例1〜4の構成は、各隆起部4および導水路6がベースマット2の互いに対向する二辺と略平行に設けられてなるものであるが、これに限らず、該二辺に対して所定角度で傾いているものであっても良い。例えば、
図10に示す別例の保護マット101のように、各隆起部104がベースマット2の互いに対向する二辺に対して10度〜15度傾けた角度θで設けられた構成とすることもできる。そして、この構成では、各導水路106も、前記隆起部104と同様に、前記二辺に対して10度〜15度傾けた角度θで設けられる。こうした別例の構成は、各隆起部104と導水路106とを形成する上側マット103によって構成される。尚、ベースマット2は、実施例1〜4のいずれかと同じ構成であると共に、上側マット103は、実施例1と同じポリエステル長繊維製の不織布からなる。かかる別例の保護マット101は、山の斜面に並設することにより、該斜面に対して所定角度θで傾斜する導水路を形成できる。さらに、
図11に示すように、上述した実施例1の保護マット1と別例の保護マット101とを夫々敷設することもできる。このように角度の異なる導水路6,106を備えた保護マット1,101を用いることにより、所望の方向へ導水する導水路106を斜面の形状に応じて形成し易く、該導水路106により安定して導水することができる。さらに、これら保護マット1,101を用いることにより、様々な形状の斜面に縦横に並べて敷設し易く、敷設作業の作業性が向上するという利点もある。尚、当然ながら、実施例2〜4の保護マット1と別例の保護マット101とを夫々敷設することも可能である(
図11参照)。
【0070】
また、上述した実施例3,4は、ベースマット2が軟性シート2bと防草シート2aとを重ね合わせた二層構造としたものであるが、これに限らず、三層構造や五層構造などの多層構造であっても良い。そして、三層以上の多層構造のベースマットは、少なくとも一の防草シート2aを備えていれば良く、複数の防草シート2aを備えた構成であっても良い。複数の防草シート2aを備えた構成では、同一種類の防草シート2aを備えていても良いし、異なる種類の防草シート2aを備えた構成であっても良い。同様に、複数の軟性シート2bを備えた構成では、同一種類の軟性シート2bを備えた構成であっても良いし、異なる種類の軟性シート2bを備えた構成であっても良い。