(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ケーソン躯体を削孔して形成した複数の拡径縦孔に柱状緩衝材を圧縮状態で収容して配置したことを特徴とする、請求項1乃至3の何れか一項に記載のケーソン堤体構造物の防砂構造。
前記拡径縦孔が隣り合うケーソンの端側面の何れか一方の端側面、または両端側面に跨って削孔して形成した断面円形孔であることを特徴とする、請求項6に記載のケーソン堤体構造物の防砂方法。
柱状緩衝材の編地内を透過する波の透過抵抗と、押波および引波に伴う拡径縦孔内での柱状緩衝材の拡縮変形抵抗と、拡径縦孔の形成箇所で目地幅が拡幅したことによる波速の低減作用とにより波力エネルギーを減衰することを特徴とする、請求項6または7に記載のケーソン堤体構造物の防砂方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
<1>特許文献1に開示されたモルタル等の固結材を目地部内に充填して封鎖するシール構造は、固結材製の目地材が無筋構造であるために波力で粉砕され易い問題や、不等沈下や地震等により隙間の拡張方向にケーソンが変位すると目地材がこの変位に追従できずに新たな目地部が生じるといった問題がある。
さらに、固結材を袋詰めの形態で使用することから、目地部の隅々まで目地材が封鎖されているかどうかを外部から把握できず遮水に対する信頼性の点で問題がある。
<2>ロール状に巻いた遮水性シート製の目地材を使用する特許文献3に記載の遮水構造はつぎの多くの問題点を内包している。
波浪や潮汐変動等に対する目地材の耐久性が低く短期間で損傷する。
さらに、ロール状に巻いた遮水性シートの形状復元力が弱いために目地部の止水性が弱い。
さらに、目地部の上下部での間隔が異なるように目地部が変位した場合に目地材の追従性が悪い。
さらに、目地材の下部と凹凸のある基礎捨石マウンドの上面との間に隙間を生じて、十分な遮水効果を発揮できない。
さらに、老朽化した目地材を交換する際に、遮水性シートの中心部を縮径方向に巻回すると遮水シート全体が供回りをして縮径できず、目地材の撤去が技術的に難しい。
<3>特許文献4に開示された帯状の編地と位置決めガイド材の柱状緩衝材を目地部内に残置させる構造にあっては、適用可能な目地幅が6cm以上であり、目地幅が6cmより狭い狭小幅では設置が不能であった。
【0007】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところはつぎのケーソン堤体構造物の防砂構造および防砂方法を提供することにある。
<1>目地部の目地幅寸法の影響を受けずに、目地部に目地材を簡易に設置できること。
<2>目地部の拡狭変化に対する目地材の追従性能が高いこと。
<3>コンクリートや鋼材等の剛性の目地材と比べて波力による損傷を受け難く、長期間に亘って防砂機能を持続できること。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、隣り合うケーソンの端側面間に形成された目地部を防砂板で閉鎖した既設のケーソン堤体構造物の防砂構造であって、前記目地部に面してケーソン躯体を削孔して形成した単数または複数の拡径縦孔を有し、前記拡径縦孔内で膨縮変形し得るように、拡径縦孔内に編地製の柱状緩衝材を圧縮状態で収容して目地部の空間を画成し、編地の復元力で拡径縦孔内に柱状緩衝材を位置決めしたものである。
編地製の柱状緩衝材を圧縮状態で設置することで、柱状緩衝材に疑似弾力性が生じる。
本発明の他の形態において、前記拡径縦孔が隣り合うケーソンの端側面に跨って削孔して形成した断面円形孔である。
本発明の他の形態において、前記柱状緩衝材は拡径縦孔内に防砂板の設置高さ以上の高さまで収容する。
本発明の他の形態において、ケーソン躯体を削孔して形成した複数の拡径縦孔に柱状緩衝材を圧縮状態で収容して配置する。
本発明の他の形態において、前記柱状緩衝材がラッセル網である。
さらに本発明は、隣り合うケーソンの端側面間に形成された目地部を防砂板で閉鎖した既設のケーソン堤構造物の防砂方法であって、目地部のケーソン躯体を削孔して目地空間に面した単数または複数の拡径縦孔を形成し、前記拡径縦孔内に編地製の柱状緩衝材を圧縮状態で収容して目地部の空間を画成し、前記編地の復元力で柱状緩衝材を拡径縦孔内に位置決めしたものである。
本発明の他の形態において、前記拡径縦孔が隣り合うケーソンの端側面の何れか一方の端側面、または両端側面に跨って削孔して形成した断面円形孔である。
本発明の他の形態において、柱状緩衝材の編地内を透過する波の透過抵抗と、押波および引波に伴う拡径縦孔内での柱状緩衝材の拡縮変形抵抗と、拡径縦孔の形成箇所で目地幅が拡幅したことによる波速の低減作用とにより波力エネルギーを減衰するものである。
本発明の他の形態において、複数の拡径縦孔に柱状緩衝材を圧縮状態で収容して配置してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は少なくとも次のひとつの効果を得ることができる。
<1>編地の復元力を利用して目地部に形成した拡径縦孔内に柱状緩衝材を位置決めすることができる。
したがって、目地幅寸法の影響を受けずに目地部内に目地材である柱状緩衝材を簡易に設置することができる。
<2>柱状緩衝材を圧縮状態で拡径縦孔内に収容することで、編地に疑似弾力性が生じる。
そのため、柱状緩衝材の追従性が高くなり、目地部の間隔が大きく変化しても柱状緩衝材の追従変形が可能である。
<3>柱状緩衝材が編地製であるため、コンクリートや鋼材等の剛性目地材と比べて波力による損傷を受け難く、長期間に亘って防砂機能を持続できる。
<4>拡径縦孔内に柱状緩衝材を設置することで目地部内に浸入する波力を効率よく減衰できて防砂板または防砂シートの延命化を図ることができる。
したがって、臨海部における空洞の発生または空洞の拡張を抑制できて、空洞に起因した突発的な臨海部の陥没事故の発生を低減することができる。
<5>柱状緩衝材が拡径縦孔内で膨縮変形をすることで目地部内に浸入した透過波を効率よく減衰できると共に、防砂板に到達する波力を減衰することができる。
<6>圧縮状態で収容された編地製の柱状緩衝材が高い防砂機能を発揮するので、既設の防砂板や防砂シートと協働して埋立土の吸い出し防止効果が向上する。
<7>柱状緩衝材が編地製であるため、柱状緩衝材の設置作業を簡単に行えるだけでなく、柱状緩衝材の撤去も簡単に行える。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照しながら本発明について説明するが、まず本発明が前提とするケーソン堤体構造物と、目地材として使用する柱状緩衝材について説明する。
【0012】
<1>前提とするケーソン堤体構造物
図1,2を参照して説明する。本発明は既設のケーソン堤体構造物を対象とする。
ケーソン堤体構造物は護岸や岸壁等であり、捨石マウンド20上に敷き並べた複数のケーソン10からなる。
【0013】
<2>ケーソン
ケーソン10は内部に土砂等の中詰材を充填したケーソン本体11と、ケーソン本体11の上口を閉鎖した場所打ちコンクリート製の上部工12とよりなる。
【0014】
<2.1>目地幅
隣り合うケーソン10の端側面13間には目地部G(目開き)を形成していて、海側の開口を通じ目地部G内への波の浸入が可能である。
【0015】
<2.2>ケーソンの既設防砂手段
ケーソン堤体構造物は防砂手段である防砂板23と防砂シート24とを具備している。
防砂板23は公知のゴム製や樹脂製等の帯板であって、隣り合うケーソン10の陸側の背面に縦向きに取り付けてある。
ケーソン10の陸側は礫や砕石等の裏込材21で埋め戻し、裏込材21の後方は防砂シート24を介して埋立土22で埋め戻した構造になっている。
目地部Gを通じて波力が繰り返し作用することで、防砂板23や防砂シート24の損傷を誘発する。
【0016】
<2.3>拡径縦孔
本発明では目地部G(目開き)の幅が6cmより狭い狭小幅である場合でも、目地部G内に繊維製の柱状緩衝材30を設置することが可能である。
目地部Gに目地部Gの目地幅より大径断面の目地材を設置するため、ケーソン10の目地部Gに拡径縦孔14を削孔する。
拡径縦孔14は目地材である柱状緩衝材30を収容するための収容形孔であり、上部工12とケーソン本体11に跨って形成する。
拡径縦孔14はその下端が目地部Gの底面(捨石マウンド20)に到達する。
拡径縦孔14は目地部Gの幅寸法より大径で、目地部Gの内空と連通して形成している。
【0017】
拡径縦孔14の断面形は、本例で例示した円形に限定されず、方形や菱形等の角形であってもよい。
拡径縦孔14の断面形が円形や角形であっても、柱状緩衝材30を構成する編地が可撓性を有していることから、圧縮状態で収容した柱状緩衝材30の外周面は拡径縦孔14の孔壁面と面接触が可能となる。
拡径縦孔14と柱状緩衝材30との周面接触面積が大きくなるほど、後述する柱状緩衝材30の保形性、定置性、位置決め性能等の特性がよくなる。
【0018】
本例では隣り合うケーソン10,10の相対向する端側面13,13を削孔して拡径縦孔14を形成した形態について説明するが、拡径縦孔14は何れか一方の端側面13に半円形の溝を形成して構成してもよい。
【0019】
<3>柱状緩衝材
本発明では目地材として繊維製の柱状緩衝材30を使用する。
【0020】
<3.1>柱状緩衝材の構成
柱状緩衝材30は可撓性および通水性を有する繊維製のメッシュ(網地)構造を呈する編地を卷回する等して柱状に形成する。
柱状緩衝材30は細幅の帯状編地を巻き取って柱状に形成してもよい。
さらに柱状緩衝材30の取扱性をよくするため、撤去可能な棒状の芯材に編地を巻き付けて柱状緩衝材30を製作し、柱状緩衝材30の設置後に芯材のみを抜き取るようにしてもよい。
【0021】
<3.2>編地素材
柱状緩衝材30は波力を繰り返し受ける過酷な環境下で使用することから、適度の可撓性と優れた耐久性が求められる。
図3を参照して説明すると、柱状緩衝材30の素材としては、例えば編糸を一重又は二重以上に編成した緩衝編地31(例えばラッセル網、無結節網等)を使用できる。
この緩衝編地31は複数の束糸32で囲まれた六角形または菱形形の網目33を有する。
緩衝編地31の編糸としては、例えばポリエステル繊維糸、ポリアミド繊維糸、ポリアクリル繊維糸等の合成繊維糸、又は綿糸、麻糸等の天然繊維糸等を単独又は混繊して使用できる。実用上はポリエステル等の合成繊維糸で編成したラッセル網を使用できる。
【0022】
<3.3>編地を使用した理由
柱状緩衝材30の素材として繊維素材の編地を使用したのは、つぎのすべての特性1〜6を満たすためである。
〔特性1〕耐衝撃性:波力により破壊されないこと。
〔特性2〕耐腐食性:腐食による機能喪失がないこと。
〔特性3〕緩衝性能:剛性が小さく波力エネルギーの減衰効果が高いこと。
〔特性4〕定置性:自己劣化(経年劣化)がし難く、引波等を受けてもバラケない。
〔特性5〕追従性:地震時等においてケーソンの変位に追従できること。
〔特性6〕設置容易性:様々な現場形状が異なっていても適応が可能であること。
【0023】
柱状緩衝材30の素材として紐状体または糸状体を用いることも考えられるが、紐状体または糸状体であると保形性が得られないことから、拡径縦孔14に投入しても容易に流出してしまい、上記した機能はまったく得られない。
【0024】
[柱状緩衝材の設置方法]
つぎに
図4を参照しながら、柱状緩衝材30の設置方法について説明する。
【0025】
<1>拡径縦孔の形成(
図4(A),(B))
図4(A)は柱状緩衝材30の設置前におけるケーソン10の目地部Gの平面を示していて、目地部Gの奥部に防砂板23が設けてある。
【0026】
目地部Gに目地幅より大径の柱状緩衝材30を設置するには、まずケーソン10の目地部Gに縦向きに単数または複数の拡径縦孔14を開設する。
公知のボーリングマシンやウォータージェット等を使用してケーソン本体11と上部工12に跨って拡径縦孔14を削孔する。
目地部Gに複数の拡径縦孔14を形成する場合は、適宜の間隔を隔てて並設する。
【0027】
本例では隣り合うケーソン10,10の相対向する端側面13,13を削孔した形態について説明するが、何れか一方の端側面13に形成した半円形の溝により拡径縦孔14を構成してもよい。
【0028】
なお、拡径縦孔14の削孔径は任意の寸法でよいが、ケーソン躯体に強度的な悪影響がでない程度の寸法とする。
【0029】
<2>柱状緩衝材の縮設(
図4(C))
拡径縦孔14に繊維製の柱状緩衝材30を圧縮状態で収容する。
柱状緩衝材30の下部は捨石マウンド20に着床させて、目地部Gの空間を柱状緩衝材30により画成する。
柱状緩衝材30の設置高さは、波浪条件等を考慮して適宜選択するものとし、例えば、拡径縦孔14の全域に亘って設置してもよい。
少なくとも、防砂板23の保護の観点から防砂板23の設置高さより高い位置まで柱状緩衝材30が設置してあればよい。
【0030】
<2.1>柱状緩衝材の縮設方法
柱状緩衝材30は単に拡径縦孔14内に収容するのではなく、圧縮状態で収容する。
拡径縦孔14内に柱状緩衝材30を圧縮状態で収容するには、例えばつぎの方法を採用できる。
【0031】
〔編地の押し込み方法〕
柱状緩衝材30を構成する編地を突き棒等で押し込みながら拡径縦孔14内に縮設する方法である。
拡径縦孔14内に編地を直接縮設することも可能であるが、図外のガイド筒を拡径縦孔14内に先行して挿入し、ガイド筒内に編地を押し込むことも可能である。
押し込みに使用したガイド筒は編地の押込み後に抜き取り、拡径縦孔14内に残置した柱状緩衝材30が自己復元力により孔壁に圧着する。
【0032】
〔凍結方法〕
予め圧縮状態で柱状緩衝材30を凍結しておき、凍結状態の柱状緩衝材30を拡径縦孔14内に挿入する方法である。
自然解凍した柱状緩衝材30が拡径縦孔14内で膨張することで、柱状緩衝材30が孔壁に圧着する。
【0033】
〔拘束方法〕
紐材またはシート材等の拘束部材を巻き付けて柱状緩衝材30を強制圧縮させ、圧縮状態で柱状緩衝材30を拡径縦孔14内に挿入し、拡径縦孔14内で柱状緩衝材30の無圧縮を開放することで、柱状緩衝材30が拡径縦孔14の孔壁に圧着する。
挿入後に拘束部材の一部を引っ張ることで拘束を解除できるように巻き付けたり、拘束部材の素材に水溶性または生分解性の素材を用いたりすることも可能である。
【0034】
このように柱状緩衝材30を拡径縦孔14内に圧縮状態で設置するには、大型重機や専用機材が不要であり、作業員による人力で以て短時間のうちに簡単に設置できる。
【0035】
<2.2>柱状緩衝材を縮設する理由
柱状緩衝材30を拡径縦孔14内に縮設するのはつぎの複数の理由からである。
いずれも柱状緩衝材30の復元力を利用したことによるものである。
ア)拡径縦孔14から流出させずに、目地部Gの定位置に柱状緩衝材30を位置決めするため。
イ)緩衝編地のバラケをなくして柱状緩衝材30の形態保持性を高めるため。
ウ)柱状緩衝材30の復元力を利用してケーソン10の目地部Gの間隔が拡狭変化したときに柱状緩衝材30を追従変化させるため。
エ)柱状緩衝材30の消波性能および防砂性能を高めるため等。
【0036】
[柱状緩衝材の作用]
つぎに柱状緩衝材30の各種作用について説明する。
【0037】
<1>柱状緩衝材の位置決め作用
図4(C)を参照して説明すると、拡径縦孔14内に圧縮状態で設置した柱状緩衝材30は、自己復元性により、柱状緩衝材30の外周面の一部が拡径縦孔14の孔壁に接面して圧着し、柱状緩衝材30の外周面の残りの部位が目地部Gに面して露出している。
そのため、海側から目地部G内に透過波(押波)が浸入して柱状緩衝材30に衝当しても、柱状緩衝材30が孔外へずれ動いて抜け出すことがない。
柱状緩衝材30は拡径縦孔14内に収容された状態を維持する。
【0038】
<2>波力エネルギーの減衰作用
図5,6を参照して柱状緩衝材30による波力エネルギーの減衰作用について説明する。
目地部G内に浸入した波は防砂板23へ到達する前に、柱状緩衝材30に浸透する。
【0039】
透過波は柱状緩衝材30を構成する編地に浸透して通過する際の浸透抵抗(透過抵抗)と、目地幅が拡径縦孔14の形成箇所で拡幅したことによる波速の低減作用により、波力エネルギーと波圧を効果的に減衰できる。
目地部Gに複数の柱状緩衝材30を設置した場合は、各柱状緩衝材30において波力エネルギーと波圧の減衰作用が行われる。
【0040】
柱状緩衝材30による波力の緩衝作用は単なる編地の空隙内の透過抵抗による減衰作用だけではなく、押波および引波に伴う柱状緩衝材30を構成する編地の収束変形と展開変形(膨縮変形)の繰り返しの拡縮変形抵抗に基づく減衰作用との併用により、波力エネルギーを効率よく吸収できる。
【0041】
<2.1>押波の透過時
図6(A)は、透過波である押波が柱状緩衝材30を透過する際の減衰モデル図を示している。
押波が透過する際、柱状緩衝材30を構成する編地が収束方向に変形することで編地が密実となることから、柱状緩衝材30の緩衝効果が高くなる。
柱状緩衝材30を浸透する際に波力エネルギーが減衰されるため、防砂板23に大きな波力エネルギーを保有した押波が直撃せずに済み、しかも防砂板23に到達した波によって大きな反射波も生じない。
押波が柱状緩衝材30を透過することで、柱状緩衝材30の背面陸側の水位が高くなる。
【0042】
<2.2>引波の透過時
図6(B)は、目地部G内に浸入した押波が引波に変わる際の波力エネルギーを減衰するモデル図を示している。
目地部G内に浸入した押波が引波に変わると、柱状緩衝材30が目地部G内で拡幅方向へ向けて拡がり、浸み込んだ水が柱状緩衝材30から緩やかに浸み出る。
押波が柱状緩衝材30を透過することで、柱状緩衝材30の背面陸側の水位が高くなるが、押波が引波に変わることで、柱状緩衝材30の背面陸側の水位が下がる。
【0043】
なお、
図6(A),(B)では、説明の便宜上、柱状緩衝材30の外周面を拡径縦孔14の孔壁から離隔して表記しているが、実際には柱状緩衝材30の外周面が拡径縦孔14の孔壁に圧着した状態を保持しつつ、押波および引波に伴い柱状緩衝材30が収束変形または展開変形をする。
【0044】
<2.3>柱状緩衝材の疑似弾力性
押波および引波に伴い、柱状緩衝材30は拡径縦孔14内で収束と展開を繰り返す。
柱状緩衝材30が拡径縦孔14内で横向きに収束方向に圧縮変形をすると、柱状緩衝材30の全長が僅かに高くなる。
反対に、柱状緩衝材30が拡径縦孔14内で横向きに拡張方向に変形すると、柱状緩衝材30の全長が僅かに低くなる。
【0045】
このように、柱状緩衝材30には横方向へ向けた変形抵抗と縦方向へ向けて変形抵抗が生じることで、柱状緩衝材30に疑似弾力性が生成される。
柱状緩衝材30に生じる疑似弾力性は、波力要素と柱状緩衝材30の圧縮要素により生成され、拡径縦孔14内における柱状緩衝材30の位置決め作用と、柱状緩衝材30による波力エネルギーの減衰作用に対する貢献度が大きい。
柱状緩衝材30の疑似弾力性は、波力要素または柱状緩衝材30の圧縮要素の何れか一方が存在しなければ生成されない。
【0046】
<2.4>柱状緩衝材の透過率
このように、目地部G内に押波と引波が生じる都度、柱状緩衝材30の編地内を透過する透過抵抗と、押波および引波に伴う拡径縦孔14内での柱状緩衝材30の拡縮変形抵抗と、拡径縦孔14の形成箇所で目地幅が拡幅したことによる波速の低減作用とにより波力エネルギーを効率よく減衰することができる。
通常時の透過波の透過率8割に対して、柱状緩衝材30を使用した場合は、最大、平均両振幅にして透過率2割以下に透過波を低減することができる。
【0047】
<2.5>柱状緩衝材の損傷回避
柱状緩衝材30は波力の減衰時に変形するので、大きな波力を受けても柱状緩衝材30の編地が損傷を受け難い。
【0048】
<2.6>既設防砂板の防護
以上説明したように、柱状緩衝材30が波力に対して減衰作用を発揮するので、防砂板23における波力エネルギーの負担がきわめて小さくなって、既設の防砂板23が防砂機能を発揮できる耐用期間が大幅に延びる。
換言すれば柱状緩衝材30が防砂板23の保護部材として機能するので、防砂板23の損傷リスクが大幅に低減する。
防砂板23の耐用期間の大幅延長に伴い、既設の防砂シート24の耐用期間も大幅に延びて、空洞の発生要因である土砂の吸い出しリスクを長期間に亘って抑制することができる。
【0049】
<3>土砂の吸い出し防止作用
目地部G内に設置した柱状緩衝材30は、土砂の吸い出し防止作用も発揮する。
仮に防砂板23および防砂シート24の一部に損傷が生じていて、埋立土22内に浸水したとしても、柱状緩衝材30が埋立土22に対する押波や引波の伝播を弱めるので、埋立土22内の土砂が吸い出され難くなる。
【0050】
柱状緩衝材30は拡径縦孔14内に圧縮状態で収容している。
そのため、万一、防砂板23の破損個所を通じて土砂が目地部G内に吸い出されても、柱状緩衝材30が土砂の透過を阻止するので、目地部G内から外海へ向けた土砂の流出を規制する。
土砂の吸い出し防止作用は柱状緩衝材30が既設の防砂板23から離隔していても発揮するが、柱状緩衝材30を防砂板23に当接させておくと、土砂の吸い出し防止効果がさらに向上する。
【0051】
<4>柱状緩衝材の変形追従性
柱状緩衝材30の設置後に地震や台風等によりケーソン10が移動して目地部Gの幅寸法が変化する場合がある。
【0052】
図7はケーソン10の目地部Gの目地幅が変位したモデル図を示している。
柱状緩衝材30は拡縮変形が可能な編地素材で構成されているので、柱状緩衝材30は目地部Gの目地幅の拡幅変位に追従して水平方向に拡張するとともに、目地部Gの目地幅の狭小変位に対しては圧縮して追従する。
したがって、ケーソン10の目地部Gの幅寸法が変化した場合でも、柱状緩衝材30による各種機能を維持できる。
【0053】
<5>柱状緩衝材の自己補填性
時間の経過に伴い柱状緩衝材30を構成する編地の一部が摩滅して消失しても、自重により柱状緩衝材30が沈降して、消失分を補填する。
そのため、柱状緩衝材30の一部が空洞化して残ることがない。
したがって、柱状緩衝材30による波力の緩衝作用および土砂の吸い出し防止作用を良好な状態で長期間に亘って持続することができて、定期的なメンテナンスは不要である。
【0054】
<6>編地の追加挿入
編地の消失が累積して柱状緩衝材30の高さが低くなったときは、拡径縦孔14内に別途の編地を追加挿入するだけの簡単な操作で、柱状緩衝材30の高さ調整を行うことができる。
【0055】
<7>柱状緩衝材の交換作業性
老朽化等により柱状緩衝材30を新たな編地と交換したいときは、老朽化した柱状緩衝材30を構成する編地を拡径縦孔14から引き上げ、新たな柱状緩衝材30に交換する。
柱状緩衝材30が可撓性を有する編地で構成されていることから、編地を真上に引き上げることで簡単に老朽化した柱状緩衝材30を抜き取ることができる。
柱状緩衝材30の交換作業は柱状緩衝材30のみの交換で済むため短時間のうちに簡単に行うことができる。
【解決手段】目地部Gに面して既設のケーソン躯体を削孔して拡径縦孔14を形成し、拡径縦孔14内に、編地製の柱状緩衝材30を圧縮状態で収容し、編地の復元力で拡径縦孔14内に柱状緩衝材30を位置決めした。編地製の柱状緩衝材を圧縮状態で設置することで、柱状緩衝材30に疑似弾力性が生じる。