(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ジョセフソン・デバイスのセットであり、前記セットの中のそれぞれのジョセフソン・デバイスが、対応するマイクロ波周波数動作帯域幅を有し、異なる動作帯域幅が、対応する異なる中心周波数を有する、前記ジョセフソン・デバイスのセットと、
前記セットの中の第1のジョセフソン・デバイスと前記セットの中のn番目のジョセフソン・デバイスとの間の直列結合であり、前記直列結合により、前記第1のジョセフソン・デバイスが、前記直列結合内の第1の信号流れ方向において、周波数多重化マイクロ波信号から第1の周波数の信号を分離し、前記n番目のジョセフソン・デバイスが、前記直列結合内の前記第1の信号流れ方向において、前記周波数多重化マイクロ波信号からn番目の周波数の信号を分離する、前記直列結合と
を備える、カスケーディング・マイクロ波分離器。
前記直列結合内の前記セットの中の(n−1)番目のジョセフソン・デバイスをさらに備え、nが1よりも大きく、前記(n−1)番目のジョセフソン・デバイスが、前記第1のジョセフソン・デバイスと前記n番目のジョセフソン・デバイスとの間の前記直列結合に含まれており、前記(n−1)番目のジョセフソン・デバイスが、前記第1の信号流れ方向において、前記周波数多重化マイクロ波信号から(n−1)番目の周波数の信号を分離する、
請求項1に記載のカスケーディング・マイクロ波分離器。
前記第1のジョセフソン・デバイスに対応する第1のマイクロ波周波数動作帯域幅が、少なくとも一部の周波数について、前記n番目のジョセフソン・デバイスに対応するn番目のマイクロ波周波数動作帯域幅と重なっていない、
請求項1に記載のカスケーディング・マイクロ波分離器。
前記直列結合内の前記セットの中の(n−1)番目のジョセフソン・デバイスをさらに備え、nが1よりも大きく、前記(n−1)番目のジョセフソン・デバイスが、前記第1のジョセフソン・デバイスと前記n番目のジョセフソン・デバイスとの間の前記直列結合に含まれており、前記(n−1)番目のジョセフソン・デバイスが、前記第1の信号流れ方向において、前記周波数多重化マイクロ波信号から(n−1)番目の周波数の信号を分離する、
請求項12に記載の超電導体製造システム。
前記第1のジョセフソン・デバイスに対応する第1のマイクロ波周波数動作帯域幅が、少なくとも一部の周波数について、前記n番目のジョセフソン・デバイスに対応するn番目のマイクロ波周波数動作帯域幅と重なっていない、
請求項12に記載の超電導体製造システム。
【背景技術】
【0002】
使用されている箇所で特に識別されていない限り、本明細書では以降、句の語の中の接頭辞「Q」が、量子コンピューティング文脈においてその語または句に言及していることを示す。
【0003】
分子および亜原子粒子(subatomic particle)は量子力学の法則に従う。量子力学は、物質界(physical world)がどのように機能しているのかを最も基本的なレベルで探究する物理学の一部門である。このレベルで、粒子は不思議な振舞いを示し、同時に2つ以上の状態をとり、非常に遠く離れた別の粒子と相互作用する。量子コンピューティングはこれらの量子現象を利用して情報を処理する。
【0004】
現在我々が使用しているコンピュータは、古典的コンピュータ(本明細書では「従来型」コンピュータまたは従来型ノード(conventional node)ないし「CN」とも呼ぶ)として知られている。従来型コンピュータは、半導体材料および半導体技術、半導体メモリ、ならびに磁気または固体記憶デバイスを使用して製造された従来型のプロセッサを、フォン・ノイマン型アーキテクチャとして知られてアーキテクチャ内で使用する。具体的には、従来型コンピュータのプロセッサは、2進プロセッサ、すなわち1および0で表された2進データに対して演算を実施するプロセッサである。
【0005】
量子プロセッサ(qプロセッサ)は、エンタングルされた(entangled)キュービット・デバイス(本明細書では簡潔に「キュービット」(「qubit」、複数形は「qubits」)と呼ぶ)の変わった性質を使用して、計算タスクを実行する。量子力学が機能する特定の領域において、物質の粒子は、例えば「オン」状態、「オフ」状態、および同時に「オン」と「オフ」の両方の状態など、多数の状態で存在しうる。半導体プロセッサを使用する2進コンピューティングは、(2進コードの1および0と等価の)オン状態およびオフ状態だけを使用することに限定されているが、量子プロセッサは、物質のこれらの量子状態を利用して、データ・コンピューティングで使用可能な信号を出力する。
【0006】
従来型コンピュータは、情報をビットとしてコード化する。それぞれのビットは値1または0をとることができる。これらの1および0は、コンピュータ機能を最終的に駆動するオン/オフ・スイッチの働きをする。他方、量子コンピュータはキュービットに基づき、キュービットは、量子物理学の鍵となる2つの原理、すなわち重ね合わせ(superposition)およびエンタングルメント(entanglement)に従って動作する。重ね合わせは、それぞれのキュービットが1と0の両方を同時に表すことができることを意味する。エンタングルメントは、重ね合わせのキュービットを古典的でない手法で互いに相関させることができること、すなわち、1つの状態(それが1なのかもしくは0なのかまたはその両方であるのかは問わない)が別の状態に依存しうること、および2つのキュービットがエンタングルされているときの方が、それらの2つのキュービットが個別に処理されるときよりも、それらの2つのキュービットに関して確認することができるより多くの情報が存在することを意味する。
【0007】
これらの2つの原理を使用して、キュービットは、従来型コンピュータを使用することによっては手に負えない難しい問題を量子コンピュータが解決することを可能にする手法で量子コンピュータが機能することを可能にする、より洗練された情報プロセッサとして動作する。IBM(R)は、超電導キュービットを使用した量子プロセッサを構築し、その動作可能性(operability)を示すことに成功した(IBMは、米国および他の国におけるInternational Business Machines社の登録商標である)。
【0008】
超電導キュービットはジョセフソン接合を含む。ジョセフソン接合は、2つの薄膜超電導金属層を非超電導材料によって分離することによって形成される。超電導層の金属を、例えばその金属の温度を指定された極低温まで下げることによって超電導性にすると、非超電導層を通して一方の超電導層からもう一方の超電導層へ電子の対がトンネリングすることができる。キュービットでは、分散非線形インダクタとして機能するジョゼフソン接合が、1つまたは複数の容量性デバイスと並列に電気的に結合されて、非線形マイクロ波発振器を形成する。この発振器は、キュービット回路のインダクタンスおよび静電容量の値によって決まる共振/遷移周波数を有する。使用されている箇所で特に識別されていない限り、用語「キュービット」への言及は、ジョゼフソン接合を使用した超電導キュービット回路への言及である。
【0009】
キュービットによって処理された情報は、マイクロ波周波数範囲のマイクロ波信号/光子の形態で搬送または伝送される。それらのマイクロ波信号は、その中にコード化された量子情報を解読するために捕捉、処理および解析される。読出し回路は、キュービットの量子状態を捕捉し、読み出し、測定するためにキュービットに結合された回路である。読出し回路の出力は、計算を実行するためにqプロセッサによって使用可能な情報である。
【0010】
超電導キュービットは2つの量子状態、すなわち|0>および|1>を有する。これらの2つの状態は、原子の2つのエネルギー状態、例えば人工超電導原子(超電導キュービット)の基底状態(|g>)および第1の励起状態(|e>)とすることができる。他の例には、核スピンまたは電子スピンのスピンアップとスピンダウン、結晶欠陥の2つの位置、量子ドットの2つの状態などがある。このシステムは量子性を有するため、これらの2つの状態の任意の組合せが許容され、有効である。
【0011】
キュービットを使用した量子コンピューティングを信頼性の高いものにするためには、量子回路、例えばキュービット自体、キュービットに関連した読出し回路および量子プロセッサの他の部分が、エネルギーを注入しもしくは放散させることなどによって、キュービットのエネルギー状態をあまり変更してはならず、またはキュービットの|0>状態と|1>状態の間の相対位相に影響を与えてはならない。量子情報を使用して動作する回路に対するこの動作上の制約は、このような回路で使用される半導体および超電導構造体を製造する際に特別な考慮を必要とする。
【0012】
マイクロ波分離器は、一方向においては、振幅をあまり減衰させることなしにマイクロ波光波を通過させ(伝搬させ)、反対方向においては、マイクロ波光波が通過しようとするとマイクロ波光波を妨げまたは著しく減衰させるデバイスである。本明細書で「分離器」への言及は、マイクロ波分離器への言及である。言い換えると、分離器は、マイクロ波光の方向性ゲート(directional gate)として動作する。このことは、デバイスの応答が、デバイス内をマイクロ波光が伝搬する方向に依存することを意味する。量子コンピューティングにおいて、分離器は、量子プロセッサに入るマイクロ波信号および量子プロセッサを出たマイクロ波信号を指定された流れ方向に導くために使用される。
【0013】
本明細書では以降、非縮退3波混合ジョセフソン・デバイスに基づくマルチパス干渉ジョセフソン分離器を、簡潔に、かつ相互に交換可能に、マルチパス干渉ジョセフソン分離器(Multi−Path Interferometric Josephson ISolator:MPIJIS)と呼ぶ。MPIJISデバイスを、超電導量子回路内のマイクロ波分離器として実装することができる。デバイスを駆動している2つのポンプ・トーン(pump tone)間の位相差を否定する(negate)ことによって、MPIJIS内の分離の方向をインサイチュ−(in situ)で逆にすることができる。
【0014】
周波数変換(frequency conversion)(無光子利得(no photon gain))モードで動作させることにより、超電導非縮退3波混合デバイスをMPIJISの一部として使用することができる。この非縮退3波混合器をジョセフソン・パラメトリック変換器(Josephson parametric converter:JPC)とすることができる。
【0015】
超電導非縮退3波混合器は3つのポートを有する。この3つのポートは、周波数f
Sのマイクロ波信号を入力することができる信号ポート(S)、周波数f
Iのアイドラ(idler)マイクロ波信号を入力することができるアイドラ・ポート(I)、および周波数f
P、位相φ
pのマイクロ波信号を入力することができるポンプ・ポート(P)である。(一般性を失わない)1つの構成では、f
P、f
Sおよびf
Iを互いに比較したときに、f
Iが高周波数、f
Pが低周波数、f
Sが中間周波数(すなわちf
I>f
S>f
P)である。この超電導非縮退3波混合器が非縮退と特徴づけられるのは、この混合器が、空間とスペクトルの両方に関して異なる2つのモード、すなわちSモードおよびIモードを有するためである。
【0016】
アイドラ・ポートから信号ポートへは、周波数f
2のアイドラ・マイクロ波信号がアイドラ・ポートに入り、ダウンコンバートされ、周波数f
1で信号ポートを出る。信号ポートからアイドラ・ポートへは、周波数f
1の信号マイクロ波信号が信号ポートに入り、アップコンバートされ、周波数f
2でアイドラ・ポートを出る。ポンプ・マイクロ波信号は、周波数アップ・コンバージョンおよび周波数ダウン・コンバージョンのためのエネルギーを供給する。ポンプ周波数はf
Pであり、f
P=f
I−f
S=f
2−f
1である。
【0017】
共振に関して、この非縮退3波混合器(例えばJPC)は、無雑音周波数変換(noiseless frequency conversion)で動作させたときに、以下の散乱行列(scattering matrix)を満たす。
【数1】
【0018】
非縮退3波混合器は、50:50ビーム・スプリッタ動作点(working point)で動作する。ここで
【数2】
および
【数3】
である。
【0019】
このモードはポンプ振幅に依存し、このモードが機能可能となるためにはポンプ振幅が適切に設定されていなければならない。ポンプの位相φ
p(後に、2つの異なる非縮退3波混合器に入る2つのポンプ信号に対してφ
1およびφ
2として示される)は、本明細書に記載された実施形態に従って利用される。ポートSからポートIへ伝搬している信号には位相φ
pが加えられ、ポートIからポートSへ伝搬している信号からは位相φ
pが差し引かれる。
【0020】
それぞれ50:50ビーム・スプリッティング・モードで動作する非縮退3波混合器の適当な2つの表現物(manifestation)が、例示的な実施形態に基づくMPIJIS内の1つの構成要素として使用される。JPCは、非限定的なそのような1つの表現物である。
【0021】
量子回路では、マイクロ波信号が2つ以上の周波数を含みうる。一般に、マイクロ波信号は1つの周波数帯域にわたって広がる。MPIJISは一般に、そのMPIJISがそれに合わせて調整された中心周波数の周囲の比較的に幅の狭い周波数帯域で動作する。例示的な実施形態は、たとえ信号の周波数が単一のMPIJISの動作周波数帯域の外側にある場合であっても、異なる周波数を有する全てのまたは一部のマイクロ波信号を分離することができる、新しい分離器設計が求められていることを認識している。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明を説明するために使用される例示的な実施形態は一般に、一部または全部の周波数多重化マイクロ波信号を分離する上述の必要性を対象とし、そのような必要性を解決する。例示的な実施形態は、帯域幅が重なっていないカスケ−ディング・マルチパス干渉ジョセフソン分離器を含む分離器デバイスを提供し、この分離器は、非縮退3波混合ジョセフソン・デバイスに基づく。本明細書では、このようなカスケ−ディング分離器デバイスを、簡潔に、カスケ−ディングMPIJISと呼ぶ。
【0038】
1つの周波数または複数の周波数に関して実施すると本明細書に記載された動作は、その1つの周波数または複数の周波数の信号に関して実施すると解釈されるべきである。使用されている箇所で特に識別されていない限り、「信号」への言及は全て、マイクロ波信号への言及である。
【0039】
用語「周波数多重化信号(frequency multiplexed signal)」は、さまざまな周波数の多数の信号を含む複合信号を指し、したがって、この用語は、一緒に多重化されたさまざまな周波数の複数の信号を指す複数形の用語「周波数多重化信号(frequency multiplexed signals)」と異なるものではない。したがって、これらの2つの用語は相互に交換可能に使用され、多重化された異なる周波数の2つ以上の信号、またはデバイスに対してもしくは動作において一緒に示された異なる周波数の2つ以上の信号を意味する。
【0040】
一実施形態は、カスケ−ディングMPIJISの構成を提供する。別の実施形態は、カスケーディングMPIJISの製造方法を、ソフトウェア・アプリケーションとして実施することができるような形で提供する。製造方法の実施形態を実施するこのアプリケーションは、リソグラフィ・システムなどの既存の超電導体製造システムとともに機能するように構成することができる。
【0041】
説明を分かりやすくするため、その説明に限定される含意なしに、例示的な実施形態は、いくつかの例示的な構成を使用して説明される。この開示から、当業者は、記載された目的を達成するための記載された構成の多くの改変、適合および変更を考案することができ、例示的な実施形態の範囲内で同じことが企図される。
【0042】
さらに、図および例示的な実施形態では、例示的な混合器、ハイブリッド(hybrid)および他の回路構成要素の簡略図が使用される。実際の製造または回路には、例示的な実施形態の範囲を逸脱することなく、本明細書に示されていないもしくは本明細書に記載されていない追加の構造体もしくは構成要素、または、示された構造体もしくは構成要素とは異なるが本明細書に記載された目的にかなう構造体もしくは構成要素が存在することがある。
【0043】
さらに、実際のまたは仮定の特定の構成要素に関して、例示的な実施形態は単なる例として記載されている。例示的なさまざまな実施形態によって説明されたステップを、カスケーディングMPIJIS内の記載された機能を提供することを目的としうる、またはそのような機能を提供するために転用しうるさまざまな構成要素を使用して回路を製造するように適合させることができ、そのような適合は、例示的な実施形態の範囲に含まれることが企図される。
【0044】
例示的な実施形態は、あるタイプの材料、電気特性、ステップ、数、周波数、回路、構成要素および用途に関して、単なる例として説明される。これらのアーチファクトおよび他の同様のアーチファクトの特定の表現物が本発明を限定することは意図されていない。例示的な実施形態の範囲内で、これらのアーチファクトおよび他の同様のアーチファクトの適当な表現物を選択することができる。
【0045】
本開示の例は、説明を分かりやすくするためだけに使用され、例示的な実施形態を限定するものではない。本明細書に挙げられた利点は、単なる例であり、それらの利点が例示的な実施形態を限定することは意図されていない。特定の例示的な実施形態によって追加の利点または異なる利点を実現することができる。さらに、特定の例示的な実施形態は、上に挙げた利点の一部もしくは全部を有することがあり、または上に挙げた利点を1つも持たないことがある。
【0046】
図1を参照して、この図は、カスケードの中で使用可能な例示的な実施形態に従うMPIJISの例示的な構成のブロック図を示す。MPIJIS構成100は、非縮退3波混合器102Aと非縮退3波混合器102Bの対102を含む。非縮退3波混合器102Aおよび非縮退3波混合器102Bはそれぞれビーム・スプリッタ動作点で動作している。
【0047】
非縮退3波混合器102Aは、物理ポートa1(信号ポートSに対応)、b1(信号ポートIに対応)、p1(信号ポートPに対応)およびb1’(信号ポートIに対応)を備えるように構成されている。ポンプ周波数(f
P)は、アイドラ周波数(f
2)と入力信号周波数(f
1)の差であり、式108に従う。物理ポートb1’は、コールド・ターミネータ(cold terminator)を使用して終端されている。例えば、ポートb1’のコールド・ターミネーション(cold termination)を50オーム終端とすることができる。
【0048】
同様に、非縮退3波混合器102Bは、物理ポートa2、b2、p2およびb2’、ポンプ周波数(f
P)ならびにコールド・ターミネータを備えるように構成されている。混合器102Aのポートb1と混合器102Bのポートb2は伝送線103を使用して互いに結合されている。
【0049】
90°ハイブリッド104のポート1および2はそれぞれ、本明細書に記載されたMPIJIS100のポート1および2を形成する。非縮退3波混合器102Aのポートa1はハイブリッド104のポート3に結合されている。非縮退3波混合器102Bのポートa2はハイブリッド104のポート4に結合されている。
【0050】
非縮退3波混合器102Aおよび102Bのこの構成100、ならびに記載された構成要素を使用した同様の目的の他の可能な構成は、記号110として簡潔に表現される。例えば、
図2は、記載された構成要素を使用した同様の目的の別の可能な構成を示す。記号110の枠内の曲線矢印は、記号110内におけるポート1からポート2への信号の非分離(伝搬)方向を表している。言い換えると、MPIJIS110は、ポート2からポート1への信号は分離するが、ポート1からポート2への信号は通過させる。
【0051】
このMPIJISデバイスのこの直列接続は、直観的には理解できない。電気要素または電子要素の通常の直列結合では、直列のパラメータ(例えば直列の帯域幅)が、直列鎖の中のそのパラメータの最弱/最小/最低値によって制限される。それらの要素の直列全体はその最弱/最小/最低値で動作する。対照的に、MPIJISデバイスのカスケードでは、カスケードの中で使用されているMPIJISデバイスの特別な特性のため、帯域外信号(デバイスの帯域幅に含まれない周波数の信号)に作用が及ばず、帯域外信号は、単純に通過することが許される。それぞれのデバイスは、信号のうち、そのデバイスの帯域幅内にある部分にだけ作用し(そのような部分だけを分離し)、したがって、その帯域幅において非直観的な付加的スパン(additive span)を提供する。
【0052】
図2を参照して、この図は、カスケードの中で使用可能な例示的な実施形態に従うMPIJISの別の代替構成を示す。ハイブリッド204は90°ハイブリッドである。ハイブリッド204は、
図1のハイブリッド104が非縮退3波混合器102Aおよび102Bを備えるように構成されているのと実質的に同様に、ハイブリッドレスJPC(hybrid−less JPC)202AおよびハイブリッドレスJPC202Bを備えるように構成されている。構成200は、単一のポンプ・ドライブをハイブリッド206とともに使用して、ハイブリッドレスJPC202AおよびハイブリッドレスJPC202Bにポンプ入力を供給する。構成200も記号110によって表される。
【0053】
図3〜
図5は、異なる周波数を有する全ての周波数多重化マイクロ波信号を伝搬させるためまたは分離するためのカスケーディング構成および該カスケーディング構成を動作させる方式を説明する。
図6〜
図8は、全てでない一部の周波数多重化マイクロ波信号を選択的に伝搬させるためまたは分離するための異なるカスケーディング構成および該カスケーディング構成を動作させる方式を説明する。
【0054】
図3を参照して、この図は、例示的な実施形態に従うカスケーディングMPIJISの例示的な構成および非分離動作のブロック図を示す。このカスケーディング構成は、異なる周波数を有する全ての周波数多重化マイクロ波信号を伝搬させる。MPIJISデバイス302
1、302
2...302
Nはそれぞれ、記号110に従うMPIJISである。MPIJISデバイス302
1〜302
Nは、構成300の中のカスケードされたN個(N>1)のMPIJISデバイスを表す。
【0055】
MPIJISデバイスのカスケーディングは、MPIJISデバイスの直列接続であり、この直列接続によって、マイクロ波信号入力を受け取るために(カスケード300は曲線矢印によって示された非分離方向に動作していると仮定する)、最初のMPIJIS(302
1)のポート1が外部回路に結合され、最初のMPIJIS(302
1)のポート2が次のMPIJIS(302
2)のポート1に結合され、次のMPIJIS(302
2)のポート2が次のMPIJISのポート1に結合され、以下同様に結合され、最終的にN−1番目のMPIJISのポート2が最後のMPIJIS(302
N)のポート1に結合され、最後のMPIJIS(302
N)のポート2が、カスケード300がマイクロ波信号出力を提供する先の外部回路に結合される。
【0056】
カスケード300のそれぞれのMPIJIS302
1〜302
Nは、それぞれのMPIJIS302
1〜302
Nが、同じ方向(それらのそれぞれの記号の中の曲線矢印の方向。矢印は全て同じ方向を向いている)に入力信号を通過させ、同じ反対方向(それらのそれぞれの記号の中の曲線矢印の方向とは反対の方向)では入力信号を分離するように構成されている。
【0057】
さらに、カスケード300の中のそれぞれのMPIJIS302
1〜302
Nは、実質的に重なっていない周波数帯域で動作する。例えば、MPIJIS302
1は、中心周波数がf
1である狭い帯域幅(BW
1)内で動作する。すなわちBW
1の半分はf
1以下であり、BW
1の半分はf
1よりも大きい。したがって、BW
1は[f
1−BW
1/2からf
1+BW
1/2]である。同様に、MPIJIS302
2は、中心周波数f
2および[f
2−BW
2/2からf
2+BW
2/2]のBW
2を有する。セットの中のMPIJISデバイスは同様の方式で規定され、MPIJIS302
Nは、中心周波数f
Nおよび[f
N−BW
N/2からf
N+BW
N/2]のBW
Nを有する。BW
1...BW
Nは重なっていないか、またはわずかな量だけ重なっている。
【0058】
カスケーディング構成300の中のMPIJISは、そのMPIJISがそれに合わせて調整された周波数帯域幅内の信号に対してだけ動作する。言い換えると、MPIJISは、(ポート2からポート1への方向に流れる)そのMPIJISの動作帯域幅内に含まれる周波数の信号を分離する。MPIJISは、そのMPIJISの動作帯域幅の外側の周波数の信号を、両方向に、実質的に損失が生じない方式で通過させる。
【0059】
例えば、MPIJIS302
2のポート2からMPIJIS302
2のポート1に信号が流れる場合、MPIJIS302
2は、BW
2内の周波数の信号だけを分離し(その信号がMPIJIS302
2を通過することを実質的に妨げ)、BW
1、BW
3、BW
4...BW
N内の周波数の信号が実質的に損失が生じない方式で分離方向に通過することは許す。非分離方向において、MPIJIS302
2は、BW
2内の周波数の信号だけでなく、BW
1、BW
3、BW
4...BW
N内の周波数の信号も、実質的に損失が生じない方式で通過することを許す。構成300の中のそれぞれのMPIJIS302
1...302
Nは、そのそれぞれの動作帯域幅に対して、およびその動作帯域幅の外側の周波数に対して同様の方式で動作する。
【0060】
構成300において、MPIJIS302
1は、周波数f
1の信号が非分離方向に通過することを許す。これは、MPIJIS302
1がBW
1内の周波数の信号を通過させ、f
1がBW
1内の周波数であるためである。MPIJIS302
1は、周波数f
2...f
Nが通過することを許す。これは、それらの周波数がBW
1の外側の周波数であるためである。同様に、MPIJIS302
2は、周波数f
2の信号が非分離方向に通過することを許す。これは、MPIJIS302
2がBW
2内の周波数の信号を通過させ、f
2がBW
2内の周波数であるためである。MPIJIS302
2は、周波数f
1、f
i...f
Nの信号が通過することを許す。これは、それらの周波数がBW
2の外側の周波数であるためである。MPIJIS302
Nは、周波数f
Nの信号が非分離方向に通過することを許す。これは、MPIJIS302
NがBW
N内の周波数の信号を通過させ、f
NがBW
N内の周波数であるためである。MPIJIS302
Nは、周波数f
1...f
N−1の信号が通過することを許す。これは、それらの周波数がBW
Nの外側の周波数であるためである。したがって、この図に示されているとおり、関与するMPIJISデバイス302
1...302
Nの非分離方向において、周波数f
1、f
2...f
Nの信号を多重化した入力信号は、カスケード300を、実質的に損失が生じない方式(ゼロ減衰またはごくわずかな減衰)で通過する。
【0061】
構成300は、カスケーディングMPIJIS302として簡潔に表現される。したがって、カスケーディングMPIJIS302が動作することができる有効帯域幅は下記のとおりである。
BW={[f
1−BW
1/2からf
1+BW
1/2],[f
2−BW
2/2からf
2+BW
2/2],...[f
N−BW
N/2からf
N+BW
N/2]}
【0062】
カスケーディングMPIJIS302の通過帯域幅BWは、構成300の中のどの単一のMPIJISの通過帯域幅よりも大きい。したがって、カスケーディングMPIJIS302は、単一のMPIJISの動作帯域幅よりも幅広い帯域幅にわたって動作可能である。カスケーディングMPIJIS302の非分離動作は、周波数f
1、f
2...f
Nの多重化信号が、(カスケードの最初のMPIJISのポート1である)カスケーディングMPIJIS302のポート1から(カスケードの最後のMPIJISのポート2である)カスケーディングMPIJIS302のポート2まで通過することを示す。
【0063】
図4を参照して、この図は、例示的な実施形態に従うカスケーディングMPIJISの例示的な分離動作のブロック図を示す。このカスケーディング構成は、カスケードされた任意のMPIJISデバイスの帯域幅内の全ての周波数多重化マイクロ波信号を分離する。カスケード300、MPIJISデバイス302
1、302
2...302
NおよびカスケーディングMPIJIS302は
図3と同じものである。周波数f
1は、MPIJIS302
1のBW
1内の周波数、f
2は、MPIJIS302
2のBW
2内の周波数、...f
Nは、MPIJIS302
NのBW
N内の周波数である。
【0064】
この図の分離動作では、周波数f
1、f
2...f
Nの信号がカスケード300のポート2、すなわちカスケード300の最後のMPIJIS(302
N)のポート2に入力される。カスケード300では、MPIJIS302
Nが、周波数f
Nの信号を遮断し、帯域幅BW
Nの外側の周波数f
N−1...f
1の信号が分離方向に通過することを許す。これは、MPIJIS302
NがBW
N内の信号周波数だけ遮断し、f
NがBW
N内の周波数であるためである。このように動作すると、MPIJIS302
Nは、多重化入力マイクロ波信号から周波数f
Nの信号を事実上除去する。同様に、N−1番目のMPIJISは周波数f
N−1の信号を遮断し、帯域幅BW
N−1の外側の周波数f
N−2...f
1の信号が分離方向に通過することを許す。周波数f
Nの信号はすでにMPIJIS302
Nが除去しており、ここではN−1番目のMPIJISが周波数f
N−1の信号を除去する。
【0065】
このように動作すると、それぞれのMPIJISは、そのMPIJISの帯域幅内の周波数の信号を除去または遮断する。したがって、MPIJIS302
2は周波数f
2の信号を事実上除去し、MPIJIS302
1は、多重化入力マイクロ波信号から周波数f
1の信号を事実上除去し、周波数f
1...f
Nの多重化入力信号の中でカスケード300のポート1に到達するものはない。したがって、この図に示されているように、関与するMPIJISデバイス302
1...302
Nの分離方向において、周波数f
1、f
2...f
Nの周波数多重化入力信号は、カスケード300によって実質的に分離される(完全な分離またはごくわずかな通過を伴う分離)。
【0066】
構成300に従うカスケーディングMPIJIS302は、カスケーディングMPIJIS302が分離することができる下記の有効帯域幅を有する。
BW={[f
1−BW
1/2からf
1+BW
1/2],[f
2−BW
2/2からf
2+BW
2/2],...[f
N−BW
N/2からf
N+BW
N/2]}
【0067】
この場合も、カスケーディングMPIJIS302の分離帯域幅BWは、構成300の中のどの単一のMPIJISの分離帯域幅よりも大きい。したがって、カスケーディングMPIJIS302は、単一のMPIJISの動作帯域幅よりも幅広い帯域幅にわたる周波数多重化信号を分離するように動作可能である。カスケーディングMPIJIS302の分離動作は、(カスケードの最後のMPIJISのポート2である)カスケーディングMPIJIS302のポート2から、(カスケードの最初のMPIJISのポート1である)カスケーディングMPIJIS302のポート1までの間に、周波数f
1、f
2...f
Nの周波数多重化信号が分離されることを示す。
【0068】
図5を参照して、この図は、帯域幅が重なっていないカスケーディング・マルチパス干渉ジョセフソン分離器を使用して、周波数多重化マイクロ波入力内の周波数の全ての信号を伝搬させるためまたは分離するための、例示的な実施形態に従う例示的なプロセスの流れ図を示す。プロセス500は、
図3および
図4に記載された動作のためにカスケーディングMPIJIS302を使用して実施することができる。
【0069】
ジョゼフソン・デバイスのセットの中のそれぞれのジョゼフソン・デバイスをMPIJISとして構成する(ブロック502)。1つのMPIJISを別のMPIJISに直列接続で接続することにより、これらのMPIJISデバイスをカスケードとして接続する(ブロック504)。この直列接続の中のMPIJISデバイスは、直列の中の全てのMPIJISデバイスが、カスケード内の反対の信号流れ方向において、それらのそれぞれの周波数のマイクロ波信号を分離するように構成される。このカスケードは、セットの中の全てのMPIJISデバイスをこのように直列に追加することによって構築される(ブロック506)。
【0070】
このカスケードは、直列の中のいずれかのMPIJISデバイスの帯域幅に対応する周波数を有する入力マイクロ波信号を(
図3の場合のように)通過させるように、または(
図4の場合のように)分離するように動作する(ブロック508)。
【0071】
次に、
図6〜
図8は、周波数多重化マイクロ波信号の中の全てでない一部の周波数の信号を選択的に伝搬させるためまたは分離するための異なるカスケーディング構成および該カスケーディング構成を動作させる方式を説明する。
【0072】
図6を参照して、この図は、例示的な実施形態に従うカスケーディングMPIJISの例示的な構成および選択的分離動作のブロック図を示す。このカスケーディング構成は、周波数多重化マイクロ波信号の中の一部の周波数の信号だけを分離する。MPIJISデバイス602
1、602
2...602
Nはそれぞれ、記号110に従うMPIJISである。MPIJISデバイス602
1〜602
Nは、構成600の中のカスケードされたN個(N>1)のMPIJISデバイスを表す。
【0073】
MPIJISデバイスのカスケーディングは、MPIJISデバイスの直列接続であり、この直列接続によって、直列の中のMPIJISを、そのMPIJIS内の非分離(伝搬)方向が直列内の信号流れ方向と一致するように、またはそのMPIJIS内の分離(遮断)方向が直列内の信号流れ方向と一致するように接続することができる。例えば、非限定的な例示的なカスケード600は、周波数多重化マイクロ波信号入力を受け取るために最初のMPIJIS(602
1)のポート1を外部回路に結合することによって形成され、この場合には、MPIJIS602
1内の伝搬方向が
図6の信号流れ方向と一致する。最初のMPIJIS(602
1)のポート2は次のMPIJIS(602
2)のポート2に結合され、この場合には、MPIJIS602
2内の分離方向が
図6の信号流れ方向と一致する。MPIJIS602
2のポート1は次のMPIJISのポート1に結合され、この場合には、この次のMPIJIS内の伝搬方向が
図6の信号流れ方向と一致する。以下同様に結合され、最終的にN−1番目のMPIJISのポート2が最後のMPIJIS(602
N)のポート1に結合され、最後のMPIJIS(602
N)のポート2が、カスケード600がマイクロ波信号出力を提供する先の外部回路に結合される。
【0074】
限定する一切の含意なしに、単に説明を分かりやすくするために、例示的な構成600は、逆向きに接続された1つだけのMPIJIS(602
2)を有するように示されている(このMPIJISの伝搬方向はカスケード内の信号流れ方向とは反対である)。ある周波数の信号を選択的に除去するカスケードを構築するために、任意の数のMPIJISデバイスを、それらのそれぞれの伝搬方向を信号流れ方向と整列させて直列に結合し、任意の数のMPIJISデバイスを、それらのそれぞれの伝搬方向を信号流れ方向とは反対にして直列に結合することができる。このように構築されたカスケードは、信号流れ方向とは反対の伝搬方向を有するMPIJISデバイスに対応する周波数を有する信号を除去(遮断または分離)し、このように構築されたカスケードは、信号流れ方向と整列した伝搬方向を有するMPIJISデバイスに対応する周波数を有する信号を通過(伝搬)させる。
【0075】
したがって、周波数多重化マイクロ波信号のどのグループを伝搬させなければならないのかに応じて、一部のMPIJIS602
1〜602
Nが、入力信号の中のそれらの周波数の信号を、信号流れ方向(それらのそれぞれの記号の中の曲線矢印の方向。矢印は全て信号流れ方向と同じ方向を向いている)に通過させるように、それらの周波数多重化マイクロ波信号の周波数に対応する帯域を有する1つまたは複数のMPIJIS602
1〜602
Nが、カスケード600として構成される。また、周波数多重化マイクロ波信号のどのグループを分離しなければならないのかに応じて、それらの一部のMPIJISが、信号流れ方向において分離を実施するように(それらのそれぞれの記号の中の曲線矢印の方向は信号流れ方向とは反対である)、それらの周波数多重化マイクロ波信号の周波数に対応する帯域を有する1つまたは複数のMPIJIS602
1〜602
Nが、カスケード600として構成される。
【0076】
さらに、カスケード600の中のそれぞれのMPIJIS602
1〜602
Nは、実質的に重なっていない周波数帯域で動作する。例えば、MPIJIS602
1は、中心周波数がf
1である比較的に狭い帯域幅(BW
1)内で動作する。すなわちBW
1の半分はf
1以下であり、BW
1の半分はf
1よりも大きい。したがって、BW
1は[f
1−BW
1/2からf
1+BW
1/2]である。同様に、MPIJIS602
2は、中心周波数f
2および[f
2−BW
2/2からf
2+BW
2/2]のBW
2を有する。セットの中のMPIJISデバイスは同様の方式で規定され、(N−1)番目のMPIJISは、中心周波数f
N−1および[f
N−1−BW
N−1/2からf
N−1+BW
N−1/2]のBW
N−1を有し、MPIJIS602
Nは、中心周波数f
Nおよび[f
N−BW
N/2からf
N+BW
N/2]のBW
Nを有する。BW
1...BW
Nは重なっていないか、またはわずかな量だけ重なっている。
【0077】
カスケーディング構成600の中のMPIJISは、そのMPIJISがそれに合わせて調整された周波数帯域幅内の信号だけを分離する。言い換えると、MPIJISは、(そのMPIJISのポート2からポート1への方向に流れる)その動作帯域幅内に含まれる周波数の信号を分離する。MPIJISは、そのMPIJISの動作帯域幅の外側の周波数の信号を、両方向に、実質的に損失が生じない方式で通過させる。
【0078】
例えば、MPIJIS602
2は、MPIJIS602
2のポート2からMPIJIS602
2のポート1に信号が流れる場合、BW
2内の周波数の信号だけを分離し(その周波数の信号がMPIJIS602
2を通過することを実質的に妨げるかまたはその周波数の信号をかなり減衰させ)、BW
1、BW
3、BW
4...BW
N−1、BW
N内の周波数の信号が実質的に損失が生じない方式で分離方向に通過することは許す。非分離方向(ポート1からポート2の方向)において、MPIJIS602
2は、BW
2内の周波数の信号だけでなく、BW
1、BW
3、BW
4...BW
N−1、BW
N内の周波数の信号も、実質的に損失が生じない方式で通過することを許す。構成600の中のそれぞれのMPIJIS602
1...602
Nは、そのそれぞれの動作帯域幅に対して、およびその動作帯域幅の外側の周波数に対して同様の方式で動作する。
【0079】
構成600において、MPIJIS602
1は、周波数f
1の信号が非分離方向に通過することを許す。これは、MPIJIS602
1がBW
1内の周波数の信号を通過させ、f
1がBW
1内の周波数であるためである。MPIJIS602
1は、周波数f
2...f
Nの信号が通過することを許す。これは、それらの周波数がBW
1の外側の周波数であるためである。しかしながら、MPIJIS602
2は、カスケード600の中で分離方向に構成されており(矢印604の方向が矢印606の方向とは逆である)、したがって周波数f
2の信号を分離する。これは、MPIJIS602
2が、ポート2からポート1の方向においてBW
2内の周波数の信号を分離し、f
2がBW
2内の周波数であるためである。MPIJIS602
2は、周波数f
1、f
i...f
N−1、f
Nの信号が通過することを許す。これは、それらの周波数がBW
2の外側の周波数であるためである。伝搬方向において、f
1、f
3...f
i...f
N−1、f
Nを含む(f
2は含まない)多重化信号がMPIJIS602
Nに到達するように、カスケード600の中の全ての他のMPIJISデバイスが構成されていると仮定すると、MPIJIS602
Nは、周波数f
Nの信号が非分離方向に通過することを許す。これは、MPIJIS602
NがBW
N内の周波数の信号を通過させ、f
NがBW
N内の周波数であるためである。MPIJIS602
Nは、周波数f
1、f
3...f
i...f
N−1の信号が通過することを許す。これは、それらの周波数がBW
Nの外側の周波数であるためである。したがって、この図に示されているとおり、周波数f
1、f
2...f
Nの入力信号は、選択された周波数f
1、f
3...f
i...f
Nについては実質的に損失が生じない方式(ゼロ減衰またはごくわずかな減衰)でカスケード600を通過し、f
2の信号周波数は、入力信号から選択的に分離される。
【0080】
一般化すると、(カスケードのポート1の)入力信号が周波数f
A、f
B、f
C、f
D、f
E、f
F、f
Gおよびf
Hを有し、(f
Aの信号を分離する)MPIJIS A、(f
Cの信号を分離する)C、(f
Eの信号を分離する)E、(f
Gの信号を分離する)Gが、カスケードの中で、信号流れ方向に伝搬させるような向きに配置されており、(f
Bの信号を分離する)MPIJIS B、(f
Dの信号を分離する)D,(f
Fの信号を分離する)F、(f
Hの信号を分離する)Hが、カスケードの中で、信号流れ方向において分離を実施するような向きに配置されている場合、(カスケードのポート2の)出力信号はf
A、f
C、f
Eおよびf
Gの信号だけを含む。
【0081】
したがって、カスケード600がある周波数の信号を選択的に分離することができる有効帯域幅は下記のとおりである。
BW={[f
1−BW
1/2からf
1+BW
1/2],[f
2−BW
2/2からf
2+BW
2/2],...[f
N−BW
N/2からf
N+BW
N/2]}
【0082】
カスケード600の通過帯域幅または分離帯域幅BWは、構成600の中のどの単一のMPIJISの通過帯域幅または分離帯域幅よりも大きい。したがって、カスケード600は、単一のMPIJISの動作帯域幅よりも幅広い帯域幅にわたる周波数多重化信号に対して動作可能である。
【0083】
図7を参照して、この図は、例示的な実施形態に従うカスケーディングMPIJISの例示的な選択的伝搬動作のブロック図を示す。このカスケーディング構成は、全てでない一部の周波数多重化マイクロ波信号を選択的に伝搬させる。カスケード600およびMPIJISデバイス602
1、602
2...602
Nは
図6と同じものである。周波数f
1は、MPIJIS602
1のBW
1内の周波数、f
2は、MPIJIS602
2のBW
2内の周波数、...f
N−1は、(N−1)番目のMPIJISのBW
N−1内の周波数、f
Nは、MPIJIS602
NのBW
N内の周波数である。
【0084】
この図の選択的伝搬動作では、周波数f
1、f
2...f
Nの信号が、示された信号流れ方向に、カスケード600のポート2、すなわちカスケード600の最後のMPIJIS(602
N)のポート2に入力される。カスケード600のこの動作では、MPIJIS602
Nが、周波数f
Nの信号を遮断し、帯域幅BW
Nの外側の周波数f
N−1...f
1の信号が分離方向に通過することを許す。これは、MPIJIS602
NがBW
N内の周波数の信号だけを遮断し、f
NがBW
N内の周波数であるためである。このように動作すると、MPIJIS602
Nは、多重化入力マイクロ波信号から周波数f
Nの信号を事実上除去する。同様に、N−1番目のMPIJISは周波数f
N−1の信号を遮断し、帯域幅BW
N−1の外側の周波数f
N−2...f
1の信号が分離方向に通過することを許す。周波数f
Nの信号はすでにMPIJIS602
Nが除去しており、ここではN−1番目のMPIJISが周波数f
N−2の信号を除去する。
【0085】
このように動作すると、カスケード600内のMPIJDAの向きに応じて、それぞれのMPIJISは、そのMPIJISの帯域幅の範囲内の周波数の信号を除去または遮断する。MPIJIS602
2は信号流れ方向に伝搬させるため、MPIJIS602
2は周波数f
2の信号を伝搬させる。MPIJIS602
2はf
1の信号を伝搬させる。これは、f
1がBW
2の外側の周波数であるためである。MPIJIS602
1は、周波数f
1の信号を、残りの周波数多重化入力マイクロ波信号から事実上除去し、f
2を伝搬させる。これは、f
2がBW
1の外側の周波数であるためである。したがって、カスケード600のポート1、すなわちMPIJIS602
1のポート1に現れる出力信号は、周波数f
1...f
Nの周波数多重化入力信号の中から選択的に伝搬された周波数f
2の信号だけである。したがって、この図に示されているように、関与するMPIJISデバイス602
1...602
Nの選択的伝搬方向において、カスケード600は、周波数f
1、f
2...f
Nの入力信号を選択的に伝搬させる(一部の周波数だけを通過させる)。
【0086】
カスケード600は、カスケーディングMPIJIS602が選択的に伝搬させることができる下記の有効帯域幅を有する。
BW={[f
1−BW
1/2からf
1+BW
1/2],[f
2−BW
2/2からf
2+BW
2/2],...[f
N−BW
N/2からf
N+BW
N/2]}
【0087】
この場合も、カスケ−ド600の選択的伝搬帯域幅BWは、構成600の中のどの単一のMPIJISの伝搬帯域幅よりも大きい。したがって、カスケード600は、単一のMPIJISの動作帯域幅よりも幅広い帯域幅にわたる周波数多重化信号の中の一部の周波数の信号を選択的に伝搬させるように動作可能である。
【0088】
この場合も、限定する一切の含意なしに、単に説明を分かりやすくするために、例示的な構成600は、カスケード内の信号流れ方向と整列した伝搬方向を有するように接続された1つだけのMPIJIS(602
2)を有するように示されている。ある周波数の信号を選択的に伝搬させるカスケードを構築するために、任意の数のMPIJISデバイスを、それらのそれぞれの伝搬方向を信号流れ方向と整列させて直列に結合し、任意の数のMPIJISデバイスを、それらのそれぞれの伝搬方向を信号流れ方向とは反対にして直列に結合することができる。このように構築されたカスケードは、信号流れ方向とは反対の伝搬方向を有するMPIJISデバイスに対応する周波数の信号を除去(遮断または分離)し、信号流れ方向と整列した伝搬方向を有するMPIJISデバイスに対応する周波数の信号を通過(伝搬)させる。
【0089】
一般化すると、(カスケードのポート2の)入力信号が、周波数f
A、f
B、f
C、f
D、f
E、f
F、f
Gおよびf
Hの信号を有し、(f
Aの信号を分離する)MPIJIS A、(f
Cの信号を分離する)C、(f
Eの信号を分離する)E、(f
Gの信号を分離する)Gが、カスケードの中で、信号流れ方向に伝搬させるような向きに配置されており、(f
Bの信号を分離する)MPIJIS B、(f
Dの信号を分離する)D,(f
Fの信号を分離する)F、(f
Hの信号を分離する)Hが、カスケードの中で、信号流れ方向において分離を実施するような向きに配置されている場合、(カスケードのポート1の)出力信号はf
A、f
C、f
Eおよびf
Gの信号だけを含む。
【0090】
図8を参照して、この図は、帯域幅が重なっていないカスケーディング・マルチパス干渉ジョセフソン分離器を使用して、周波数多重化マイクロ波信号の中の全てでない一部の周波数の信号を伝搬させるためまたは分離するための、例示的な実施形態に従う例示的なプロセスの流れ図を示す。プロセス800は、
図6および
図7に記載された動作のためにカスケード600を使用して実施することができる。
【0091】
ジョゼフソン・デバイスのセットの中のそれぞれのジョゼフソン・デバイスをMPIJISとして構成する(ブロック802)。1つのMPIJISを別のMPIJISに直列接続で接続することにより、これらのMPIJISデバイスをカスケードとして接続する(ブロック804)。この直列接続の中のMPIJISデバイスは、直列の中の少なくとも一部のMPIJISデバイス(逆向きのMPIJISデバイス)が、カスケード内の信号流れ方向において、それらのそれぞれの周波数のマイクロ波信号を分離するように構成される。このカスケードは、セットの中の全てのMPIJISデバイスをこのように直列に追加することによって構築される(ブロック806)。
【0092】
このカスケードは、直列の中の逆向きのいずれかのMPIJISデバイスに対応する周波数の信号を含む周波数多重化入力マイクロ波信号を(
図6の場合のように)選択的に分離するように、または(
図7の場合のように)選択的に伝搬させるように動作する(ブロック808)。
【0093】
MPIJISデバイスの回路要素およびそれらの回路要素への接続は、超電導材料でできたものとすることができる。対応するそれぞれの共振器および伝送/フィード/ポンプ線は、超電導材料でできたものとすることができる。ハイブリッド・カプラは、超電導材料でできたものとすることができる。(約10〜100ミリケルビン(mK)または約4Kなどの低温で)超電導性である材料の例は、ニオブ、アルミニウム、タンタルなどを含む。例えば、ジョゼフソン接合は超電導材料でできており、それらのトンネル接合は、酸化アルミニウムなどの薄いトンネル障壁でできたものとすることができる。キャパシタは、低損失誘電体材料によって分離された超電導材料でできたものとすることができる。さまざまな要素を接続する伝送線(すなわちワイヤ)は、超電導材料でできたものとすることができる。
【0094】
本明細書では、本発明のさまざまな実施形態が関連図を参照して説明される。本発明の範囲を逸脱することなく代替実施形態を考案することができる。以下の説明および図面には、要素間のさまざまな接続および位置関係(例えば上、下、隣りなど)が記載されているが、たとえ向きが変わっても記載された機能が維持されるときには、本明細書に記載された位置関係の多くは向きとは無関係であることを当業者は理解するであろう。これらの接続もしくは位置関係またはその両方は、特に指定されていない限り、直接的なものであることまたは間接的なものであることができ、本発明は、この点に関して限定を意図したものではない。したがって、実在物の結合は、直接結合または間接結合であることがあり、実在物間の位置関係は、直接的位置関係または間接的位置関係であることができる。間接的位置関係の例として、本明細書の説明に、層「A」を層「B」の上に形成すると記載されているとき、それは、層「A」および層「B」の関連特性および機能が中間層(例えば層「C」)によって実質的に変更されない限りにおいて、層「A」と層「B」との間に1つまたは複数の中間層が存在する状況を含む。
【0095】
特許請求の範囲および本明細書の解釈のために、以下の定義および略語が使用される。本明細書で使用されるとき、用語「備える(comprises)」、「備える(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含有する(contains)」もしくは「含有する(containing)」、またはこれらの用語の他の変異語は、非排他的包含(non−exlusive inclusion)をカバーすることが意図されている。例えば、要素のリストを含む組成物、混合物、プロセス、方法、物品または装置は、必ずしもそれらの要素だけに限定されるわけではなく、明示的にはリストに入れられていない他の要素、あるいはこのような組成物、混合物、プロセス、方法、物品または装置に固有の他の要素を含みうる。
【0096】
さらに、本明細書では、用語「例示的な」が、「例、事例または実例として役立つ」ことを意味するものとして使用されている。本明細書に「例示的」として記載された実施形態または設計は必ずしも、他の実施形態または設計よりも好ましいまたは有利であるとは解釈されない。用語「少なくとも1つの」および「1つまたは複数の」は、1以上の任意の整数、すなわち1、2、3、4などを含むと理解される。用語「複数の」は、2以上の任意の整数、すなわち2、3、4、5などを含むと理解される。用語「接続」は、間接「接続」および直接「接続」を含みうる。
【0097】
本明細書において「一実施形態」、「実施形態」、「例示的な実施形態」などへの言及は、記載されたその実施形態は特定の特徴、構造もしくは特性を含むことができるが、全ての実施形態がその特定の特徴、構造もしくは特性を含むこともありまたは含まないこともあることを示す。さらに、このような句が、同じ実施形態を指しているとは限らない。さらに、実施形態に関して特定の特徴、構造または特性が記載されているとき、明示的に記載されているか否かを問わない他の実施形態に関してそのような特徴、構造または特性に影響を及ぼすことは、当業者の知識の範囲内にあることが提示される。
【0098】
用語「約」、「実質的に」、「およそ」およびこれらの用語の変異語は、特定の数量の測定に関連した、本出願の提出時に利用可能な機器に基づく誤差の程度を含むことが意図されている。例えば、「約」は、所与の値の±8%、5%または2%の範囲を含みうる。
【0099】
本発明のさまざまな実施形態の以上の説明は、例示のために示したものであり、以上の説明が網羅的であること、または、以上の説明が、開示された実施形態だけに限定されることは意図されていない。当業者には、記載された実施形態の範囲および思想を逸脱しない多くの変更および変形が明らかである。本明細書で使用した用語は、実施形態の原理、実用的用途、もしくは市販されている技術にはない技術的改良点を最もよく説明するように、または本明細書に記載された実施形態を当業者が理解できるように選択した。